発泡体層積層体及びその製造方法、並びに該発泡体層積層体を用いた構造材、断熱材又は遮音材
【課題】外力による曲げ変形やねじり変形が加わった場合でも、座屈による布帛層の浮き上がりや発泡体層と布帛層との境界での剥離を確実に防止して十分な強度や剛性を得ることができる発泡体層積層体、及びその製造方法、並びに該発泡体層積層体を用いた構造材、断熱材又は遮音材を提供する。
【解決手段】織物からなる2層の布帛層1A,1Bと、これらの布帛層1A,1B間に設けられた発泡体層2とからなる発泡体層積層体1において、発泡体層2を貫通して各布帛層1A,1B同士の間を適宜間隔に連結する合成繊維のモノフィラメント糸3を備える。
【解決手段】織物からなる2層の布帛層1A,1Bと、これらの布帛層1A,1B間に設けられた発泡体層2とからなる発泡体層積層体1において、発泡体層2を貫通して各布帛層1A,1B同士の間を適宜間隔に連結する合成繊維のモノフィラメント糸3を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体を芯材として用いた発泡体層積層体に関し、詳しくは、織物からなる2層の布帛層とこれらの布帛層間に設けられた発泡体層とからなるものに係る。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリウレタンフォーム等の発泡体をコア材とした発泡体層積層体は、壁パネル、断熱パネル、及び遮音パネルなどの建材をはじめ、自動車用インストルメントパネル、鉄道車両用吸音床構造、制振複合板、衝撃吸収体など、多くの用途に用いられている。要するに、発泡体が有する軽量性、断熱性、制振性、及び遮音性などの機能を利用するものである。
【0003】
この発泡体層積層体は、発泡体層を芯材とし、用途に応じて、FRP、金属板、セラミックなどを表面材として用いたいわゆるサンドイッチ構造をしたものが多い。そして、軽量性の高い発泡体の機能と、表面材の持つ機能とを組み合わせることによって、単一材料では対応できない機能を発揮するようにしたものである。
【0004】
ところで、積層体には強度・剛性機能が基本的機能として重視されている。しかし、発泡体層積層体では、発泡体の構造から、無発泡材料に比べて強度・剛性機能の低下が否めない。
【0005】
そこで、従来より、発泡体層積層体を、表皮シート及び繊維シート等の織物からなる2層の布帛層と、これらの布帛層間に設けられた発泡体層とで構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この発泡体層積層体では、強度・剛性に優れた布帛を組み合わせることで、全体としての強度・剛性機能を向上させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−39078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記従来のものでは、図14に示すように、強化層である布帛層91,92が発泡体層93に対し接着、または溶着等によって接合されただけであるため、外力により曲げ変形やねじり変形が加わると、図14の(a)に示すように、一方の布帛層91(図14では上側の布帛層)の座屈による浮き上がりや、図14の(b)に示すように、他方の布帛層92と発泡体層93との境界で剥離が生じるおそれがあり、これでは発泡体層積層体9としての十分な強度や剛性が得られない。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外力による曲げ変形やねじり変形が加わった場合でも、座屈による布帛層の浮き上がりや発泡体層と布帛層との境界での剥離を防止して十分な強度や剛性を得ることができる発泡体層積層体、及びその製造方法、並びに該発泡体層積層体を用いた構造材、断熱材又は遮音材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明では、織物からなる2層の布帛層と、これらの布帛層間に設けられた発泡体層とからなる発泡体層積層体を前提とする。そして、 上記発泡体層を貫通して上記各布帛層同士の間を適宜間隔に連結する合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルを備えていることを特徴としている。
【0010】
この特定事項により、合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルによって発泡体層を貫通して各布帛層同士の間が適宜間隔に連結されているので、発泡体層積層体の厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性が向上している。また、発泡体層積層体に曲げ変形やねじり変形が生じても、座屈による布帛層の浮き上がりや、布帛層と発泡体層との境界での剥離が確実に防止される。これにより、曲げ変形やねじり変形に対して発泡体層積層体の十分な強度・剛性を得ることが可能となる。
【0011】
また、上記各布帛層を、二重パイル織物を構成する2枚の基布により形成するとともに、上記二重パイル織物を構成するパイルたて糸を上記パイルとして用いてもよい。
【0012】
この場合には、各布帛層が二重パイル織物を構成する2枚の基布により形成されているとともに、その二重パイル織物のパイルたて糸がパイルとして適用されているので、パイルを別途設けて各布帛層同士の間を連結する必要がなく、パイルによる各布帛層同士の連結を簡単に行うことができる。しかも、パイルたて糸で連結された基布の間に発泡体原料を挿入または注入すれば、容易に発泡体層が得られ、発泡体層積層体を簡単に製造することができる。
【0013】
また、上記発泡体層の発泡体として、原料が液状の硬質発泡樹脂を適用することが好ましい。
【0014】
この場合には、液状の硬質発泡樹脂を容易に布帛層間に注入することができる。しかも、硬質発泡樹脂は、クローズドセルで構成されており、強度・剛性などの機械的特性に優れているため、発泡体層の強度・剛性の向上も図られ、耐久性及び制振性に優れた発泡体層を提供することができる。
【0015】
また、上記各布帛層の少なくとも一方の布帛層の反発泡体層側には、この一方の布帛層と対面するように新たな布帛層を設けるとともに、その互いに対面する布帛層同士の間に新たな発泡体層を設ける。そして、上記新たな発泡体層を貫通して上記互いに対面する布帛層同士の間を適宜間隔に連結する合成繊維のモノフィラメント糸からなる新たなパイルを備えていてもよい。
【0016】
この場合には、各布帛層の少なくとも一方の布帛層とこれに対面する新たな布帛層との間にも発泡体層を設けた分厚い発泡体層積層体が得られ、曲げ変形やねじり変形に対してより一層十分な強度・剛性を得ることができる。
【0017】
更に、上記各布帛層として、ガラス繊維を含んだ強化布帛層を適用することが好ましい。
【0018】
この場合には、各布帛層としてガラス繊維を含む強化布帛層を適用することで、各布帛層の強度・剛性がより一層高められ、全体としての発泡体層積層体の強度・剛性機能をさらに向上させることができる。
【0019】
また、上記目的を達成するため、その他の解決手段として、上記発泡体層積層体を備えた構造材、断熱材又は遮音材を提供することを特徴としている。
【0020】
この場合には、厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性が向上しかつ曲げ変形やねじり変形に対して十分な強度・剛性が得られた発泡体層積層体によって、強度・剛性の高い構造材、断熱材又は遮音材を提供することが可能となる。
【0021】
また、上記目的を達成するため、その他の解決手段として、織物からなる2層の布帛層と、これらの布帛層間に設けられる発泡体層とからなる発泡体層積層体の製造方法を前提とする。そして、上記各布帛層同士の間に上記発泡体層を介在させる発泡体層介在工程と、上記発泡体層介在工程により介在された発泡体層を合成繊維のモノフィラメント糸により貫通して上記各布帛層同士の間を適宜間隔に連結する布帛層連結工程と、を有することを特徴としている。
【0022】
この特定事項により、各布帛層同士の間に介在させた発泡体層を合成繊維のモノフィラメント糸により貫通して各布帛層同士の間を連結することで、厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性が向上しかつ曲げ変形やねじり変形に対して十分な強度・剛性が得られた発泡体層積層体を提供することが可能となる。
【0023】
これに対し、発泡体層積層体の製造方法を同様に前提とし、織物である2層の布帛層と、この布帛層同士の間を適宜間隔に連結する合繊繊維のモノフィラメント糸からなるパイルを有する二重パイル織物(基材)を製織する製織工程と、上記パイルによって連結した上記各布帛層同士の端縁を発泡体原料の注入部を除いて封止する端部封止工程と、上記各布帛層同士の間に上記発泡体層が得られるように上記注入部より発泡体を充填する発泡体充填工程と、を有していることを特徴としていてもよい。
【0024】
この場合においても、厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性が向上しかつ曲げ変形やねじり変形に対して十分な強度・剛性が得られた発泡体層積層体を提供することが可能となる。しかも、合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルで連結された各布帛層同士の間に発泡体原料を注入して発泡させたのちに硬化させれば、容易に発泡体層が得られ、発泡体層積層体を簡単に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
以上、要するに、合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルによって発泡体層を貫通して各布帛層同士の間を適宜間隔に連結することで、発泡体層積層体の厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性が向上し、発泡体層積層体に曲げ変形やねじり変形が生じた際の布帛層の座屈による浮き上がりや布帛層と発泡体層との境界での剥離を確実に防止して、曲げ変形やねじり変形に対して発泡体層積層体の十分な強度・剛性を得ることができる。
【0026】
また、上記発泡体層積層体を備えた構造材、断熱材又は遮音材を提供することで、厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性を向上させかつ曲げ変形やねじり変形に対して十分な強度・剛性を得た発泡体層積層体によって、強度・剛性の高い構造材、断熱材又は遮音材を提供することができる。
【0027】
また、各布帛層同士の間に介在させた発泡体層をモノフィラメント糸により貫通して各布帛層同士の間を連結することで、厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性を向上させかつ曲げ変形やねじり変形に対して十分な強度・剛性が得られた発泡体層積層体を提供することができる。
【0028】
これに対し、二重パイル織物(基材)を構成する2枚の基布により各布帛層を形成するとともに、その基材のパイルたて糸を合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルとして用いて各基布同士を適宜間隔に連結し、端縁を発泡体原料の注入部を除いて封止した各基布同士の間に発泡体を充填して発泡体層を得ることで、厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性を向上させかつ曲げ変形やねじり変形に対して十分な強度・剛性が得られた発泡体層積層体を提供することができる。しかも、合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルで連結した各布帛層同士の間に発泡体原料を注入して発泡・硬化させれば容易に発泡体層が得られ、発泡体層積層体を簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る発泡体層積層体を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の発泡体層積層体の布帛層及びモノフィラメント糸から構成される基材をたて糸と平行に切断した状態を具体的に示す断面図である。
【図3】図1の発泡体層積層体と従来の発泡体層積層体とにそれぞれ曲げモーメントによる圧縮荷重が作用している状態を模式的に示す発泡体層積層体の断面図であって、(a)は従来の発泡体層積層体を示し、(b)は図1の発泡体層積層体を示している。
【図4】図1の発泡体層積層体の製造方法の一例を模式的に示す斜視図であって、(a)は製織工程において製織された基材を示し、(b)は端縁封止工程おいて端縁を縫い合わせてから混合液を注入部から注入している状態を示し、(c)は発泡体の硬化後に2辺の端縁を切除した状態を示している。
【図5】実験例1の発泡体層積層体の詳細を示す表である。
【図6】図1の発泡体層積層体の基材を得るための実験例2の製造手順を該基材のたて糸と平行に切断した状態を具体的に示す断面図であって、(a)はベルベット織機で製織された二重パイル編物よりなる基材を示し、(b)は製織したパイル織物の水溶性のよこ糸を溶解させた状態での基材を示し、(c)は溶解したよこ糸によりパイルの長さが約3倍となった状態での基材を示している。
【図7】実験例2の発泡体層積層体の詳細を示す表である。
【図8】比較例1の発泡体層積層体の詳細を示す表である。
【図9】実験例2及び比較例1の発泡体層積層体の厚み方向の圧縮試験での特性を示す特性図である。
【図10】実験例2及び比較例1の発泡体層積層体の曲げ試験での特性を示す特性図である。
【図11】本発明の変形例に係る発泡体層積層体の布帛層に対し合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルを直交させずに連結し、布帛層のたて糸と平行に切断した状態を模式的に示す発泡体層積層体の断面図である。
【図12】本発明のその他の変形例に係る発泡体層積層体の布帛層を互いに熱収縮率の異なるよこ糸により製織し、そのよこ糸と平行に切断した状態を模式的に示す発泡体層積層体の断面図である。
【図13】本発明のその他の変形例に係る発泡体層積層体のパイルの長さを布帛層のたて糸方向に変更し、そのたて糸と平行に切断した状態を模式的に示す発泡体層積層体の断面図である。
【図14】従来例に係る発泡体層積層体を模式的に示す断面図であって、(a)は曲げ変形やねじり変形が加わった際の座屈による布帛層の浮き上がりが生じた状態を示し、(b)は布帛層と発泡体層との境界で剥離が生じた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に係る発泡体層積層体の構成を概略的に示す断面図である。この図1において、発泡体層積層体1の最上面に一方の布帛層1Aが配置され、最下面に他方の布帛層1Bが配置されている。各布帛層1A,1Bは、それぞれ織物により製織されている。発泡体層積層体1は、発泡体層2が一方の布帛層1Aと他方の布帛層1Bとに狭持された3層のサンドイッチ構造を形成する。また、一方の布帛層1Aと他方の布帛層1Bとは、すべての位置で同じ長さの合成繊維のモノフィラメント糸3によって連結されている。このため、一方の布帛層1Aと他方の布帛層1Bとは略平行を保ち、厚さが均一な板状となる。さらに、任意の2本のモノフィラメント糸3は互いに略平行となっている。すなわち、任意の2本のモノフィラメント糸3,3が、一方の布帛層1Aに対しそれぞれ連結される連結点間の距離と、他方の布帛層1Bに対しそれぞれ連結される連結点間の距離とが、ほぼ等しくなっている。よって、発泡体層積層体1は曲率を持たない平板状となる。
【0032】
また、図2は、発泡体層積層体1の布帛層1A,1B及びモノフィラメント糸3から構成された基材11をたて糸と平行に切断した断面図である。この図2に示すように、一方の布帛層1Aと他方の布帛層1Bとがモノフィラメント糸3で連結された発泡体層積層体1としては、2枚の基布11A,11Bをパイル31で連結した二重パイル織物が適用されている。この2枚の基布11A,11Bは、それぞれたて糸12A,12Bと、よこ糸13A,13Bとで構成されている。この場合、図2において、よこ糸13A,13Bの太さをたて糸12A,12B及びパイル31よりもかなり太く図示しているが、基材11の構成を分かりやすくするために便宜上太さに差をつけているに過ぎず、たて糸12A,12B、よこ糸13A,13B及びパイル31の太さは、図示したほどの差がないものとする。
【0033】
パイル31は、上側では基布11Aに織り込まれて当該基布11Aに接合され、下側では基布11Bに織り込まれて当該基布11Bに接合されている。また、パイル31は、一方の基布11Aに織り込まれた後、他方の基布11Bに織り込まれるまでの間で、どちらの基布11A,11Bにも織り込まれない柱状部分を有しており、この柱状部分の長さによって、発泡体層2の厚さが決定される。つまり、パイル31としては、基材11を構成するパイルたて糸が適用されている。なお、図2において、一方の基布11Aが一方の布帛層1Aに、他方の基布11Bが他方の布帛層1Bに、パイル31がモノフィラメント糸3に、それぞれ対応している。また、両基布11A,11B及びパイル糸31によって基材11が構成され、この基材11に発泡体層2となる発泡体20を介在させることで発泡体層積層体1が構成される。
【0034】
一方の布帛層1Aと他方の布帛層1Bとがモノフィラメント糸3で連結された本発明の発泡体層積層体1を構成する二重パイル織物は、例えば、ベルベット織機のナイフスライダ(製織された二重パイル織物のパイルを巻取り前に切断する装置)を取り外して、一方の基布11Aと他方の基布11Bとが、パイル31で連結されたままで巻き取り装置に巻き取らせることで製造できる。なお、基布11A,11Bである織物の組織は、平織、綾織等の三原組織であっても、ドビー組織等の変化組織であってもよい。
【0035】
ここで、布帛層1A,1B及びモノフィラメント糸3について詳細に説明する。
両布帛層1A,1Bを構成する糸は、紡績糸、マルチフィラメント糸、モノフィラメント糸等の製織に使用できる構造のものであればなんでもよい。また、糸を構成する繊維の種類は、綿、麻等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維、又は、炭素繊維、ガラス繊維等の無機繊維が用途に応じて用いられる。更に、混紡、合糸等の周知の方法により、異なる種類の繊維を組み合わせて用いることも可能である。要するに、布帛層1A,1Bを構成する糸の構造および繊維種には種々のものを用いることができるが、発泡体層積層体1の強度・剛性をより重視する場合には、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の高強度で高弾性の繊維が用いられる。また、用途によっては、ポリエステル等の合成繊維のフィラメント糸を用いることが経済的である。
【0036】
また、一方の布帛層1Aと他方の布帛層1Bとをそれぞれ構成する糸についても、同種であってもよく、異なる種類であってもよいが、曲率のない平板状の発泡体層積層体1とするためには、同種の糸を用いることが好ましい。一方、積極的に異なる種類の糸を用いて発泡体層積層体1に厚さ方向の曲率を持たせることも可能である。この点については後に詳述する。
【0037】
そして、モノフィラメント糸3を構成する繊維としては、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、フッ素樹脂、又はポリフェニレンサルファイド等のような合成繊維が用いられる。
【0038】
次に、布帛層1A,1Bを構成する糸およびパイル31を構成するモノフィラメント糸3の太さについて説明する。
基布11A,11Bを構成する糸の太さは、たて糸12A,12B、よこ糸13A,13Bとも、特に限定しないが、ポリエステル製のマルチフィラメント糸を用いた場合には、100〜1000dtexであれば製織が容易である。また、糸の材質によっては、適正な範囲が異なるが、製織可能な範囲で適宜選択することができる。
【0039】
パイル31の太さは、製織可能な範囲で適宜選択され、ポリエステル製のモノフィラメント糸からなるパイルを用いた場合には、100〜800dtexであれば製織可能である。また、発泡体層積層体の厚さ方向の圧縮強度・圧縮剛性を考慮すると200dtexが好ましく、製織の容易さからは600dtex以下が好ましい。また、糸の材質によっては、適正な範囲が異なるが、製織可能な範囲で適宜選択される。
【0040】
図3は、曲げモーメントを受けている従来の発泡体層積層体9及び本発明の発泡体層積層体1の断面をそれぞれ模式的に表したものである。図3の(a)は布帛層91,92及び発泡体層93を接着した従来の発泡体層積層体9、図3の(b)は本発明の発泡体層積層体1の変形状態をそれぞれ表している。図3の(a)に示すように、曲げ変形が生じている発泡体層積層体9には、布帛層91,92に沿って内側では圧縮加重(図中の細矢印)、外側では引張荷重(図中の細矢印)が生じている。これらの布帛層91,92に沿った荷重の合力が発泡体層積層体9の厚さ方向に圧縮荷重(図中の太矢印)を生じさせる。よって、従来の発泡体層積層体9に曲げ変形を加えると、曲げ部で厚さが薄くなり、剛性の低下を来たしていることが分かる。これは、発泡体層93が、空間を薄い壁状又は細い柱状の実部で覆ったセルと呼ばれる構造単位が連なって形成されているために、圧縮荷重に対して壁状又は柱状の実部が低荷重であっても座屈を生じ易いからである。
【0041】
これに対し、本発明の発泡体層積層体1では、図3の(b)に示すように、モノフィラメント糸3からなるパイル31の周りに発泡体20が充填されているため、パイル31の座屈に必要な屈曲の自由度が発泡体により阻害され、結果として、圧縮荷重(図中の太矢印)をモノフィラメント糸3の軸方向で負荷できるようになっている。これにより、モノフィラメント糸3は、厚さ方向の圧縮荷重を支える柱として機能し、発泡体20の曲げ部の厚さが薄くなることを妨げ、発泡体層積層体1の剛性が低下することを防ぐ効果を有している。
【0042】
次に、布帛層の結合にマルチフィラメント糸や紡績糸でなくモノフィラメント糸を用いることによって、布帛層1A,1B同士の間での座屈荷重を高めて発泡体層積層体1の剛性・強度を高めることができる根拠について説明する。
【0043】
座屈荷重Wcは、オイラーの公式によると、
【0044】
【数1】
【0045】
となり、座屈荷重は、柱の断面二次モーメントIに比例する。ここで、nは端末条件係数、πは円周率、Eはヤング率、lはパイルの長さをそれぞれ表す。
ここで、断面が直径d0の円形である単繊維がm本集まって総断面積がAとなっているフィラメント糸について考える。単繊維の断面二次モーメントI0は、次式で表される。
【0046】
【数2】
【0047】
一方、フィラメント糸の断面二次モーメントIは、繊維の断面二次モーメントの総和であるため、I=m・I0である。
【0048】
また、繊維の直径d0と断面積の総和Aとの関係は、
であるので、
【0049】
【数3】
【0050】
よって、同じ断面積(太さ)を持つフィラメント糸であれば、繊維の構成本数mが少ない方が断面二次モーメントが大きくなり、座屈荷重が大きくなる。
【0051】
要するに、フィラメント1本で糸を構成するモノフィラメント糸を用いると、同じ太さのマルチフィラメントや紡績糸を用いるよりも、発泡体層積層体1の曲げ部での厚さ方向の圧縮変形が小さい。
この結果から、パイル31として、細い繊維を集合させたマルチフィラメント糸や紡績糸を使用するよりもモノフィラメント糸3を使用することで、発泡体層積層体1の剛性・強度を向上させる上で有利であることが分かる。
【0052】
次に、両布帛層1A,1Bの間に発泡体層3を形成する発泡体層積層体1の製造方法の一例を図4に基づいて説明する。
【0053】
まず、図4の(a)に示すように、製織工程において、上述したように、一方の布帛層1A及び他方の布帛層1Bを構成する2枚の基布11A,11Bをそれぞれたて糸とよこ糸とで製織し、それぞれの基布11A,11Bをモノフィラメント糸3からなるパイル31で連結した二重パイル織物を適用する。つまり、製織工程では、二重パイル織物を構成する2枚の基布11A,11Bを製織するとともに、パイルたて糸で各布帛層1A,1B同士を適宜間隔に連結して、基材11(二重パイル織物)を製織する。このとき、パイル31は、上側の一方の基布11Aに織り込まれて当該基布11Aに接合されているとともに、下側の他方の基布11Bに織り込まれて当該基布11Bに接合されており、基材11のパイルたて糸がパイル31として用いられている。また、パイル31は、一方の基布11Aに織り込まれた後、他方の基布11Bに織り込まれるまでの間で、どちらの基布11A,11Bにも織り込まれない柱状部分を有している。この柱状部分の長さは、均一としている。この場合、基材11は二重構造布帛であり、その製造方法としては、例えば経緯二重組織を用いた経パイル織物などが挙げられる。
【0054】
次いで、図4の(b)に示すように、端縁封止工程として、製織工程において製織された布帛層1A,1Bの端縁を、発泡体原料を挿入ないし注入する注入部15を除いて封止しておく。例えば、両布帛層1A,1Bの端縁を密着させておき、ミシン等を用いて、注入部15を除いて縫い合わせることで布帛層1A,1Bの端縁を封止する。また、熱融着シートによる溶着、接着剤による接着によっても、注入部15を除いた端縁の封止が可能である。これによって、布帛層1A,1Bの端縁からの発泡体原料の漏れ出しを防止している。
【0055】
発泡体20の材質は、既存のものを使用すればよく、布帛層1A,1Bの間に原料を挿入または注入でき、発泡に必要な加熱、または、反応熱による温度上昇に基材11が耐えられるものであればよい。例えば、硬質ポリウレタンフォームは、発泡・硬化時に反応熱が生じるが、ポリエステル等の合成繊維のガラス転移点(Tg)まで温度上昇しないため、ポリエステル等の合成繊維からなる糸で構成した基材11と硬質ポリウレタンフォームによる発泡体層2とを組み合わせることが可能である。
【0056】
硬質ポリウレタンフォームは、多くの用途に用いられており、経済性に優れる。また、イソシアネートとポリオールとを混合攪拌することで、容易に発泡・硬化させることが可能である。また、硬質ポリウレタンフォームは、独立気泡の割合が90%程度を占めるため、剛性の高い発泡体層積層体とすることができる。更に、硬質ポリウレタンフォームは、自己接着性を有するため、布帛層1A,1B及び合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルと接着して、さらに強固な発泡体層積層体を得ることができる。
【0057】
本発明の発泡体層2に硬質ポリウレタンフォームを用いる場合には、イソシアネートとポリオールとを混合攪拌後、混合液の発泡開始前までに、布帛層1A,1Bの端縁の注入部15にノズル41を差し込んで布帛層1A,1B同士の間に注入器4により混合液を注入する。なお、混合液の注入時、織物である布帛層1A,1Bを透過して混合液が漏れる場合があるが、布帛層1A,1Bつまり基布11A,11Bの織物密度を上げるか、ポリウレタンの原料液を粘度の高いものに変更することによって、混合液の漏れが防止される。
【0058】
また、発泡体原料の漏れの防止手段として、基布11A,11Bの一部をフィルム等でシールした混合液停留部を設けていてもよい。すなわち、図4の(b)に示すように、布帛層1A,1Bを鉛直方向に保持し、上部の注入部15より混合液を注入すると、混合液は、重力により布帛層1A,1Bの下部に溜まる。このとき、布帛層1A,1Bの混合液が溜まる混合液停留部をシールしておけば、混合液を漏らすことなく発泡開始まで布帛層1A,1B同士の間に保持される。
【0059】
発泡を開始した混合液は、布帛層1A,1Bを発泡圧力により押し広げるように膨張しながら、混合液貯留部から布帛層1A,1B同士の間を上方に向かって流動してゆく。なお、発泡しながら流動する混合液は、発泡前に比べて布帛層1A,1Bを透過し難くなるので、布帛層1A,1B全体にシールを施す必要はない。
【0060】
このとき、混合液の注入量が不足すると、布帛層1A,1B全体に発泡体層2を形成できないため、十分な量の混合液を注入する必要がある。例えば、寸法が、長辺x、短辺yの長方形状の基材11であり、その基材11の全体でパイル31の長さが一定値zである場合には、十分な混合液を注入すると、体積がxyzの発泡体層積層体1を形成できる。よって、混合液の発泡倍率をαとすると、xyz/α以上の量の混合液を注入する必要がある。しかし、混合液が膨張する際に、重力に抗して上昇する必要があり、パイル31の隙間を縫って流動する必要があるため、上記計算値より多めに注入することが好ましい。また、発泡倍率αは、温度、湿度等の諸条件で異なることがあるため、注入量は実際の製造条件の下での実験によって求めることが好ましい。
【0061】
また、発泡が布帛層1A,1B上部の注入部15に達する前に、注入部15を塞いでおけば、注入部15からの漏れ出しが防止され、発泡圧で布帛層1A,1B全体のパイル31を伸ばして所望の厚さの発泡体層積層体1が形成される。
【0062】
なお、布帛層1A,1Bの通気度が10〜30cm3/cm2・s程度であれば、発泡時に空気は容易に布帛層1A,1Bを透過して押し出されるが、発泡中の混合液は透過せずに、布帛層1A,1B同士の間に保持されるため、注入部15を塞いでも、布帛層1A,1B全体が発泡体20で満たされる。ただし、発泡体原料の粘度によって最適な通気度は異なるので、製造に際しては、予め試験によって適度な通気度を確認することが好ましい。
【0063】
また、注入量が多すぎる場合には、布帛層1A,1Bの内部で発泡圧が高くなり過ぎるため、余分を注入部15から積極的に漏らすか、圧が一定以上になった場合に発泡した液が漏れ出すような微小な孔を布帛層1A,1Bに設けることが好ましい。
【0064】
そして、図4の(c)に示すように、混合液の発泡・硬化後に、布帛層1A,1Bの端縁を切除し、発泡体層2を貫通して布帛層1A,1B同士をモノフィラメント糸3により連結した3層構造の発泡体層積層体1を得る。
【0065】
本発明の発泡体層積層体の発泡体層の材質としては、上記の硬質ポリウレタンフォームの他に、ポリスチレンフォーム、フェノールフォーム、ユリアフォーム、メラニンフォーム、エポキシフォーム等の樹脂フォームを使用できる。
【0066】
次に、本発明の発泡体層積層体1をそれぞれ異なる材料及び製法により作製した実験例1、2及び比較例1に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の各実験例に限定されるものではない。
【0067】
[実験例1]
ナイフスライダを取り外したベルベット織機(ヴァンデヴィーレ社製VMM−22)で、基布(布帛層)が2層とも平織りの二重パイル織物を製織した。図5に示すように、基布のたて糸にポリエステル製のマルチフィラメント糸(333dtex、構成本数72本、撚り数259T/m)、よこ糸にポリエステル製のマルチフィラメント糸(999dtex、構成本数216本、撚り数912T/m)、パイルにポリエステル製のモノフィラメント糸(280dtex)を用いた。密度は、基布のたて糸が50本/inch、よこ糸が60本/inch、パイルがたて7本/inchである。また、パイルの長さは17mmであり、基材全体で一様のパイル長とした。
製織した二重パイル織物を、30cm×30cmの正方形に切断し基材とした。
【0068】
このときの基材の通気度は、22cm3/cm2・sであった。なお、基布の通気度は、パイルを切断した1枚の基布について、JIS L1096(2010)の通気性試験法(フラジール形法)に従いテクステクト社製通気度試験機FX−3300(圧力設定125Pa)で測定した値である。
【0069】
次いで、基材の端縁を発泡体原料を注入する注入部を除いて両布帛層を重ねてミシンで縫製して端縁の封止を行った。
【0070】
その後、注入部を上にして、布帛層が鉛直になるように基材を保持し、硬質ウレタンフォームの原料液を注入部から注入した。原料はポリオール(シールドエアー社製インスタパックリジッド200ポリウレタンレジン)と、イソシアネート(シールドエアー社製インスタパックリジッド200クルードMDI)をほぼ1:1の割合で液温62°Cにて混合攪拌したものである。注入量は全体で約80gである。
【0071】
原料液は基材の底部に溜まり、約10秒間発泡せずに布帛層から漏れることなく留まっていた。ポリオールの粘度は77mPa・s、イソシアネートの粘度は33mPa・sであった。なお、粘度は東京計器製E型回転粘度計(設定温度62°C、回転数100rpm)で測定した値である。
【0072】
発泡を開始した原料液は、両布帛層の間を膨張しながら流動して基材の上部に達した。その際、膨張・流動する原料液は両基布を透過して漏れることはなかった。
また、基材の注入部をクリップで塞いでいたため、発泡により生じる膨張圧力で、基布同士の間のパイルが緊張状態となり、一定厚さを有する板状となった。このとき、基布同士の間にあった空気は布帛層を通して容易に排出され、基布同士の間に硬質ウレタンフォームが充填された。
【0073】
発泡体20の硬化後、発泡体層積層体の端縁を切断して、厚さが20mmで均一な、25cm角の平板状の発泡体層積層体を得た。
【0074】
[実験例2]
実験例1と同一の織機で、図6の(a)に示すように、たて糸方向の断面が図のとおりである二重パイル織物を製織した。図7に示すように、51は基材11の基布11A,11Bのたて糸(ポリエステル製のマルチフィラメント糸333dtex、構成本数72本、撚り数259T/m)、52は基布11A,11Bのよこ糸(ポリエステル製のマルチフィラメント糸999dtex、構成本数216本、撚り数912T/m)、53は基布11A,11Bのよこ糸(水溶性ビニロン製の紡績糸193dtex)、54はパイル(ポリエステル製のモノフィラメント糸(220dtex))である。密度は、基布11A,11Bのたて糸51が50本/inch、よこ糸52,53が60本/inch、パイル54がたて7本/inch、よこ14本/inchである。パイル54の長さは、17mmであり、基材11全体で一様のパイル長とした。
【0075】
図6の(b)に示すように、製織したパイル織物を70°Cの熱湯中でかき混ぜて基布11A,11Bのよこ糸53を溶解させて、たて糸方向の断面が図のとおりである基材11とした。つまり、図6の(c)に示すように、水溶性のよこ糸53を溶かすことによって、製織したパイル織物の約3倍のパイル長を有する基材11を作成した。基材11のパイル54の長さは50mmとなった。乾燥させた基布11A,11Bの通気度は23cm3/cm2・sであった。
【0076】
次に、実験例1と同様に注入部を除いて端縁の封止を行い、原料液停留部の漏れ防止を施した。
【0077】
注入量が約120gであること以外は、実験例1と同様に硬質ウレタンフォームの原料液を注入し、厚さが50mmで25cm角の平板状の発泡体層積層体を得た。このとき、布帛層の通気度は、実験例1より若干大きいが、発泡後、膨張・流動する原料液が布帛層から漏れることはなかった。
【0078】
[比較例1]
実験例2と同様の発泡ポリウレタン原料を用いて、一辺が25cmの正方形で、厚さが50mmの硬質ポリウレタンフォームの成型品を作製した。また、図8に示すように、実験例2で使用したものと同一の基材のパイルを切断して、パイルのない2枚の基布を作製した。これらの基布が成型品の両面に接着されるように成型前に型内に仮止めし、基布同士の間に発泡ウレタンを充填させることで、基布同士がパイルにより連結されない従来例と同様の発泡体層積層体を作製した。
【0079】
実験例2及び比較例1の発泡体層積層体の厚み方向の圧縮試験を次の方法により行った。すなわち、発泡体層積層体の布帛層と直角に交わりたて糸と平行な2面と、同様に布帛層と直角に交わりよこ糸と平行な2面に沿って発泡体層積層体を切断して、50mm×50mmの正方形の平面と、元の発泡体層積層体の厚さ(50mm)を有するブロック状の試料を作製した。JIS K7220(2006)に準ずる方法で、厚さ方向の圧縮試験を行い、荷重−変位曲線を得た。試験には、インストロン5569型万能材料試験機を用いた。なお、圧縮速度(試験機クロスヘッドの移動速度)を5mm/分とした。得られた荷重−変位曲線を図9に示す。
【0080】
この荷重−変位曲線の初期の傾きは、実験例2では、比較例1に比べて大きい。よって、合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルが柱となって荷重を支えていることが分かる。
また、降伏点荷重(発泡体のセルを構成する柱状又は壁状の実部、及び、パイルが座屈し始める荷重)に達すると、変位が増加しても、圧縮荷重は上昇せずに微小な上下動を呈するようになるが、このときの荷重も実験例2では、比較例1に比べて大きい。よって、モノフィラメント糸からなるパイルが圧縮強度を向上させていることが分かる。
【0081】
次に、実験例2及び比較例1の発泡体層積層体の曲げ試験を次の方法により行った。
【0082】
先ず、基材のよこ糸方向が長手方向となる長さ220mm、幅50mm、厚さ50mmの試験片を作製し、JIS K7221−1及び2(2006)に準ずる方法で、厚さ方向の三点曲げ試験を行った。このとき、支点間距離を180mmとした。また、試験には、インストロン5569型万能材料試験機を用いた。更に、支点での発泡体層の局所的な陥没を極力抑えるようにするため、加圧くさびと支点とをそれぞれ半径15mmの円柱状とした。なお、曲げ速度(試験機クロスヘッドの移動速度)を20mm/分とした。
【0083】
得られた荷重−変位曲線を図10に示す。この荷重−変位曲線の初期の傾きは、実験例2では、比較例1に比べて大きい。よって、実験例1では、モノフィラメント糸からなるパイルが柱となって厚さ方向に生じる圧縮荷重を支えることから、厚さが薄くならない結果、曲げ剛性が向上することが分かる。
【0084】
また、比較例1では、曲げ変形が大きくなると、上面(曲げの内側)で布帛層が一部剥離したが、実験例2では、布帛層の剥離は生じなかった。
【0085】
ここで、実験例2及び比較例1の発泡体層積層体の見かけ密度について説明する。
【0086】
実験例2及び比較例1の発泡体層積層体の見かけ密度をJIS K7222(2005)に準ずる方法で求めた。なお、重量と体積の測定に用いた試験片は、圧縮試験に用いたものと同様に作製した。
【0087】
実験例2の発泡体層積層体の見かけ密度は、59.1kg/m3であった。また、比較例1の発泡体層積層体の見かけ密度は、61.9kg/m3であった。
【0088】
この結果から、実験例2の方が、見かけ密度が低いことから発泡倍率が若干大きいものと考えられる。一般的に、発泡倍率が大きければ、強度・剛性は小さくなると考えられる。従って、実験例2の方が、比較例1よりも強度・剛性が高い結果となったのは、発泡倍率の違いではないことが証明された。
【0089】
したがって、上記実施の形態では、合成繊維のモノフィラメント糸3によって発泡体層2を貫通して各布帛層1A,1B同士の間が適宜間隔に連結されているので、発泡体層積層体1の厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性が向上している。このため、発泡体層積層体に曲げ変形やねじり変形を加えても、厚さが薄くなることを防止でき、優れた強度・剛性を得ることができる。また、発泡体層積層体1に曲げ変形やねじり変形が生じても、布帛層1A,1Bの座屈による浮き上がりや、布帛層1A,1Bと発泡体層2との境界での剥離が確実に防止される。これにより、曲げ変形やねじり変形に対して発泡体層積層体1の十分な強度・剛性を得ることができる。
【0090】
また、各布帛層1A,1Bが二重パイル織物を構成する2枚の基布11A,11Bにより形成されているとともに、その基材11のパイルたて糸がパイル31(モノフィラメント糸3)として適用されているので、モノフィラメント糸3を別途設けて各布帛層1A,1B同士の間を連結する必要がなく、モノフィラメント糸3による各布帛層1A,1B同士の連結を簡単に行うことができる。しかも、パイルたて糸(パイル31)で連結された2枚の基布11A,11Bの間に発泡体原料を挿入または注入すれば、容易に発泡体層2が得られ、発泡体層積層体1を簡単に製造することができる。
【0091】
また、発泡体層2の原料として液状の硬質発泡樹脂が適用されているので、液状の硬質発泡樹脂を布帛層1A,1Bの間に注入して安易に発泡体層2を得ることができる。しかも、硬質発泡樹脂によって発泡体層2の強度・剛性の向上も図られ、耐久性及び制振性に優れた発泡体層積層体1を提供することができる。
【0092】
また、各布帛層1A,1Bとしてガラス繊維を含んだ強化布帛層が適用されていれば、各布帛層1A,1Bの強度・剛性がより一層高められ、全体としての発泡体層積層体1の強度・剛性機能をさらに向上させることができる。
【0093】
更に、織物である2層の布帛層1A,1Bと、この布帛層1A,1B同士の間を適宜間隔に連結する合繊繊維のモノフィラメント糸3からなるパイル31を有する二重パイル織物(基材)を製織する製織工程と、モノフィラメント糸3によって連結した各布帛層1A,1B同士の端縁を発泡体原料の注入部15を除いて封止する端部封止工程と、各布帛層1A,1B同士の間に注入部15より発泡体を充填して発泡硬化後に発泡体層2を得る発泡体充填工程とにより発泡体層積層体1が製造されているので、厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性が向上しかつ曲げ変形やねじり変形に対して十分な強度・剛性が得られた発泡体層積層体1を提供することができる。しかも、合成繊維のモノフィラメント糸3からなるパイル31で連結された各布帛層1A,1B同士の間に発泡体原料を注入して容易に発泡体層2が得られ、発泡体層積層体1を簡単に製造することができる。
【0094】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、上記実施の形態では、各布帛層を二重パイル織物(基材)を構成する2枚の基布により形成し、その基材のパイルたて糸をモノフィラメント糸として用いたが、各基布の間に板状に形成された発泡体を介在させた状態で、発泡体を貫通させて各布帛層同士を合成繊維のモノフィラメント糸により連結することで、発泡体層積層体が製造されるようにしてもよい。具体的には、織物からなる各基布同士の間に予め形成された発泡体層を介在させる発泡体層介在工程と、この発泡体層介在工程により介在された発泡体層を合成繊維のモノフィラメント糸により貫通して各布帛層同士の間を適宜間隔に連結する布帛層連結工程とを具備する。この場合においても、厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性が向上しかつ曲げ変形やねじり変形に対して十分な強度・剛性が得られた発泡体層積層体を提供することが可能となる
【0095】
また、上記実施の形態では、2枚の布帛層1A,1Bと発泡体層2とで三層構造の発泡体層積層体1を構成したが、各布帛層の少なくとも一方の布帛層の反発泡体層側に、その一方の布帛層と対面するように新たな布帛層を設けるとともに、この互いに対面する布帛層同士の間に新たな発泡体層を設け、その新たな発泡体層を貫通して上記互いに対面する布帛層同士の間を適宜間隔に連結する合成繊維のモノフィラメント糸からなる新たなパイルを備えていてもよい。この場合には、各布帛層の少なくとも一方の布帛層とこれに対面する新たな布帛層との間にも発泡体層を設けた分厚い発泡体層積層体が得られ、曲げ変形やねじり変形に対してより一層十分な強度・剛性を得ることが可能となる。
【0096】
また、上記実施の形態では、任意の2つのモノフィラメント糸3,3同士を布帛層1A,1Bに対し直交させて互いに略平行としたが、図11に示すように、全てのモノフィラメント糸32,33が布帛層1A,1Bに対し直交していなくてもよい。つまり、一方のモノフィラメント糸32と他方のモノフィラメント糸33とを布帛層1A,1Bに対し傾斜させて、基材である二重パイル織物において隣り合うパイルとして製織されていてもよい。このモノフィラメント糸32,33は、布帛層1A,1Bのよこ糸方向に順に繰り返し配置されている。この場合、モノフィラメント糸32,33は、布帛層1A,1Bに対して傾斜しているものの、モノフィラメント糸32,33同士が同一角度で反対側に傾斜しているため、力のバランスが取れており、平板状の発泡体層積層体14を形成することが可能となる。
【0097】
また、上記実施の形態では、任意の2本のモノフィラメント糸3を互いに略平行としたが、図12に示すように、任意の2つのモノフィラメント糸34,34同士の間隔を両布帛層1A,1Bとの連結部で異ならせることで、モノフィラメント糸34,34同士が互いに平行にならず、放射状になっていてもよい。すなわち、一方の基布11A(図12では上側の基布)と他方の基布11B(図12では下側の基布)とで互いに熱収縮率の異なる糸をそれぞれのよこ糸として用い、製織後に加熱すると、熱収縮率が高いよこ糸が大きく収縮するため、加工前は同じ長さであった基布11A,11Bによこ糸方向での長さの不均衡が生じる。よって、熱収縮率の高いよこ糸を用いた他方の基布11Bと共にフィラメント糸34,34同士の間隔が狭くなり、このように処理した基材11に発泡体層2を形成すると、熱収縮率の高いよこ糸を用いた他方の基布11Bが内側となるような曲率を持った発泡体層積層体15が形成されていてもよい。
【0098】
また、上記実施の形態では、一方の基布11Aと他方の基布11Bとをすべての位置において同じ長さのパイル糸31によって連結したが、図13に示すように、パイル糸35の長さを基布11A,11Bのたて糸方向で変更し、そのたて糸方向で厚さの異なる部分を有する発泡体層積層体16が形成されていてもよい。この場合、厚さの異なる部分同士の間は、たて糸方向で段階的に長さを異ならせたモノフィラメント糸35によって布帛層同士1A,1Bが連結され、段差が生じないようにしている。
【0099】
また、上記実施の形態では、布帛層1A,1Bを織物により構成したが、布帛層の表面に樹脂層を設けていてもよい。例えば、発泡体が発泡・硬化した後に、エポキシ樹脂を塗布して硬化させることで、布帛層の表面に樹脂層を形成すればよい。この場合には、曲げ変形した際に内側となった布帛層の座屈を防ぐことができ、発泡体層積層体の強度・剛性をさらに高めることが可能となる。
【0100】
また、予め布帛層に樹脂を含浸させて複合材料とした基材に発泡体層を形成することによっても、同様の効果が得られる。
【0101】
また、熱反射シートや化粧板などのような他の機能を持つ材料を積層すれば、本発明の機能に加えて他の機能を併せ持つ発泡体層積層体とすることが可能となる。
【0102】
また、本発明の発泡体層積層体を構成する合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルは、それぞれが、1本のモノフィラメントであっても、2本のモノフィラメントを引き揃えた無撚りの糸から構成されていてもよい。このとき、3本以上のモノフィラメントを用いると、製織の困難性から1本当たりのモノフィラメントの太さを小さくせざるを得ないため、モノフィラメント糸からなるパイルの座屈荷重が小さくなり、発泡体層積層体の剛性を確保することが困難となる。また、複数のモノフィラメントを引き揃えた糸に撚りを加えると、モノフィラメントの直線性がなくなるため、座屈荷重が低下する。これに対し、2本のモノフィラメントを引き揃えた無撚りの糸からなるパイルとした場合は、モノフィラメント1本当たりの太さが十分に太くても(例えば200〜500dtex)、製織の困難性は伴わず、無撚りであるために座屈荷重の低下も生じない。
【0103】
更に、発泡体層積層体を構造材、断熱材又は遮音材に使用すれば、厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性を向上させかつ曲げ変形やねじり変形に対して十分な強度・剛性を得た発泡体層積層体によって、強度・剛性の高い構造材、断熱材又は遮音材を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0104】
1 発泡体層積層体
1A,1B 布帛層
11 基材
11A,11B 基布
15 注入部
2 発泡体層
20 発泡体
3 モノフィラメント糸
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体を芯材として用いた発泡体層積層体に関し、詳しくは、織物からなる2層の布帛層とこれらの布帛層間に設けられた発泡体層とからなるものに係る。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリウレタンフォーム等の発泡体をコア材とした発泡体層積層体は、壁パネル、断熱パネル、及び遮音パネルなどの建材をはじめ、自動車用インストルメントパネル、鉄道車両用吸音床構造、制振複合板、衝撃吸収体など、多くの用途に用いられている。要するに、発泡体が有する軽量性、断熱性、制振性、及び遮音性などの機能を利用するものである。
【0003】
この発泡体層積層体は、発泡体層を芯材とし、用途に応じて、FRP、金属板、セラミックなどを表面材として用いたいわゆるサンドイッチ構造をしたものが多い。そして、軽量性の高い発泡体の機能と、表面材の持つ機能とを組み合わせることによって、単一材料では対応できない機能を発揮するようにしたものである。
【0004】
ところで、積層体には強度・剛性機能が基本的機能として重視されている。しかし、発泡体層積層体では、発泡体の構造から、無発泡材料に比べて強度・剛性機能の低下が否めない。
【0005】
そこで、従来より、発泡体層積層体を、表皮シート及び繊維シート等の織物からなる2層の布帛層と、これらの布帛層間に設けられた発泡体層とで構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この発泡体層積層体では、強度・剛性に優れた布帛を組み合わせることで、全体としての強度・剛性機能を向上させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−39078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記従来のものでは、図14に示すように、強化層である布帛層91,92が発泡体層93に対し接着、または溶着等によって接合されただけであるため、外力により曲げ変形やねじり変形が加わると、図14の(a)に示すように、一方の布帛層91(図14では上側の布帛層)の座屈による浮き上がりや、図14の(b)に示すように、他方の布帛層92と発泡体層93との境界で剥離が生じるおそれがあり、これでは発泡体層積層体9としての十分な強度や剛性が得られない。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外力による曲げ変形やねじり変形が加わった場合でも、座屈による布帛層の浮き上がりや発泡体層と布帛層との境界での剥離を防止して十分な強度や剛性を得ることができる発泡体層積層体、及びその製造方法、並びに該発泡体層積層体を用いた構造材、断熱材又は遮音材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明では、織物からなる2層の布帛層と、これらの布帛層間に設けられた発泡体層とからなる発泡体層積層体を前提とする。そして、 上記発泡体層を貫通して上記各布帛層同士の間を適宜間隔に連結する合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルを備えていることを特徴としている。
【0010】
この特定事項により、合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルによって発泡体層を貫通して各布帛層同士の間が適宜間隔に連結されているので、発泡体層積層体の厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性が向上している。また、発泡体層積層体に曲げ変形やねじり変形が生じても、座屈による布帛層の浮き上がりや、布帛層と発泡体層との境界での剥離が確実に防止される。これにより、曲げ変形やねじり変形に対して発泡体層積層体の十分な強度・剛性を得ることが可能となる。
【0011】
また、上記各布帛層を、二重パイル織物を構成する2枚の基布により形成するとともに、上記二重パイル織物を構成するパイルたて糸を上記パイルとして用いてもよい。
【0012】
この場合には、各布帛層が二重パイル織物を構成する2枚の基布により形成されているとともに、その二重パイル織物のパイルたて糸がパイルとして適用されているので、パイルを別途設けて各布帛層同士の間を連結する必要がなく、パイルによる各布帛層同士の連結を簡単に行うことができる。しかも、パイルたて糸で連結された基布の間に発泡体原料を挿入または注入すれば、容易に発泡体層が得られ、発泡体層積層体を簡単に製造することができる。
【0013】
また、上記発泡体層の発泡体として、原料が液状の硬質発泡樹脂を適用することが好ましい。
【0014】
この場合には、液状の硬質発泡樹脂を容易に布帛層間に注入することができる。しかも、硬質発泡樹脂は、クローズドセルで構成されており、強度・剛性などの機械的特性に優れているため、発泡体層の強度・剛性の向上も図られ、耐久性及び制振性に優れた発泡体層を提供することができる。
【0015】
また、上記各布帛層の少なくとも一方の布帛層の反発泡体層側には、この一方の布帛層と対面するように新たな布帛層を設けるとともに、その互いに対面する布帛層同士の間に新たな発泡体層を設ける。そして、上記新たな発泡体層を貫通して上記互いに対面する布帛層同士の間を適宜間隔に連結する合成繊維のモノフィラメント糸からなる新たなパイルを備えていてもよい。
【0016】
この場合には、各布帛層の少なくとも一方の布帛層とこれに対面する新たな布帛層との間にも発泡体層を設けた分厚い発泡体層積層体が得られ、曲げ変形やねじり変形に対してより一層十分な強度・剛性を得ることができる。
【0017】
更に、上記各布帛層として、ガラス繊維を含んだ強化布帛層を適用することが好ましい。
【0018】
この場合には、各布帛層としてガラス繊維を含む強化布帛層を適用することで、各布帛層の強度・剛性がより一層高められ、全体としての発泡体層積層体の強度・剛性機能をさらに向上させることができる。
【0019】
また、上記目的を達成するため、その他の解決手段として、上記発泡体層積層体を備えた構造材、断熱材又は遮音材を提供することを特徴としている。
【0020】
この場合には、厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性が向上しかつ曲げ変形やねじり変形に対して十分な強度・剛性が得られた発泡体層積層体によって、強度・剛性の高い構造材、断熱材又は遮音材を提供することが可能となる。
【0021】
また、上記目的を達成するため、その他の解決手段として、織物からなる2層の布帛層と、これらの布帛層間に設けられる発泡体層とからなる発泡体層積層体の製造方法を前提とする。そして、上記各布帛層同士の間に上記発泡体層を介在させる発泡体層介在工程と、上記発泡体層介在工程により介在された発泡体層を合成繊維のモノフィラメント糸により貫通して上記各布帛層同士の間を適宜間隔に連結する布帛層連結工程と、を有することを特徴としている。
【0022】
この特定事項により、各布帛層同士の間に介在させた発泡体層を合成繊維のモノフィラメント糸により貫通して各布帛層同士の間を連結することで、厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性が向上しかつ曲げ変形やねじり変形に対して十分な強度・剛性が得られた発泡体層積層体を提供することが可能となる。
【0023】
これに対し、発泡体層積層体の製造方法を同様に前提とし、織物である2層の布帛層と、この布帛層同士の間を適宜間隔に連結する合繊繊維のモノフィラメント糸からなるパイルを有する二重パイル織物(基材)を製織する製織工程と、上記パイルによって連結した上記各布帛層同士の端縁を発泡体原料の注入部を除いて封止する端部封止工程と、上記各布帛層同士の間に上記発泡体層が得られるように上記注入部より発泡体を充填する発泡体充填工程と、を有していることを特徴としていてもよい。
【0024】
この場合においても、厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性が向上しかつ曲げ変形やねじり変形に対して十分な強度・剛性が得られた発泡体層積層体を提供することが可能となる。しかも、合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルで連結された各布帛層同士の間に発泡体原料を注入して発泡させたのちに硬化させれば、容易に発泡体層が得られ、発泡体層積層体を簡単に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
以上、要するに、合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルによって発泡体層を貫通して各布帛層同士の間を適宜間隔に連結することで、発泡体層積層体の厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性が向上し、発泡体層積層体に曲げ変形やねじり変形が生じた際の布帛層の座屈による浮き上がりや布帛層と発泡体層との境界での剥離を確実に防止して、曲げ変形やねじり変形に対して発泡体層積層体の十分な強度・剛性を得ることができる。
【0026】
また、上記発泡体層積層体を備えた構造材、断熱材又は遮音材を提供することで、厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性を向上させかつ曲げ変形やねじり変形に対して十分な強度・剛性を得た発泡体層積層体によって、強度・剛性の高い構造材、断熱材又は遮音材を提供することができる。
【0027】
また、各布帛層同士の間に介在させた発泡体層をモノフィラメント糸により貫通して各布帛層同士の間を連結することで、厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性を向上させかつ曲げ変形やねじり変形に対して十分な強度・剛性が得られた発泡体層積層体を提供することができる。
【0028】
これに対し、二重パイル織物(基材)を構成する2枚の基布により各布帛層を形成するとともに、その基材のパイルたて糸を合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルとして用いて各基布同士を適宜間隔に連結し、端縁を発泡体原料の注入部を除いて封止した各基布同士の間に発泡体を充填して発泡体層を得ることで、厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性を向上させかつ曲げ変形やねじり変形に対して十分な強度・剛性が得られた発泡体層積層体を提供することができる。しかも、合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルで連結した各布帛層同士の間に発泡体原料を注入して発泡・硬化させれば容易に発泡体層が得られ、発泡体層積層体を簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る発泡体層積層体を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の発泡体層積層体の布帛層及びモノフィラメント糸から構成される基材をたて糸と平行に切断した状態を具体的に示す断面図である。
【図3】図1の発泡体層積層体と従来の発泡体層積層体とにそれぞれ曲げモーメントによる圧縮荷重が作用している状態を模式的に示す発泡体層積層体の断面図であって、(a)は従来の発泡体層積層体を示し、(b)は図1の発泡体層積層体を示している。
【図4】図1の発泡体層積層体の製造方法の一例を模式的に示す斜視図であって、(a)は製織工程において製織された基材を示し、(b)は端縁封止工程おいて端縁を縫い合わせてから混合液を注入部から注入している状態を示し、(c)は発泡体の硬化後に2辺の端縁を切除した状態を示している。
【図5】実験例1の発泡体層積層体の詳細を示す表である。
【図6】図1の発泡体層積層体の基材を得るための実験例2の製造手順を該基材のたて糸と平行に切断した状態を具体的に示す断面図であって、(a)はベルベット織機で製織された二重パイル編物よりなる基材を示し、(b)は製織したパイル織物の水溶性のよこ糸を溶解させた状態での基材を示し、(c)は溶解したよこ糸によりパイルの長さが約3倍となった状態での基材を示している。
【図7】実験例2の発泡体層積層体の詳細を示す表である。
【図8】比較例1の発泡体層積層体の詳細を示す表である。
【図9】実験例2及び比較例1の発泡体層積層体の厚み方向の圧縮試験での特性を示す特性図である。
【図10】実験例2及び比較例1の発泡体層積層体の曲げ試験での特性を示す特性図である。
【図11】本発明の変形例に係る発泡体層積層体の布帛層に対し合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルを直交させずに連結し、布帛層のたて糸と平行に切断した状態を模式的に示す発泡体層積層体の断面図である。
【図12】本発明のその他の変形例に係る発泡体層積層体の布帛層を互いに熱収縮率の異なるよこ糸により製織し、そのよこ糸と平行に切断した状態を模式的に示す発泡体層積層体の断面図である。
【図13】本発明のその他の変形例に係る発泡体層積層体のパイルの長さを布帛層のたて糸方向に変更し、そのたて糸と平行に切断した状態を模式的に示す発泡体層積層体の断面図である。
【図14】従来例に係る発泡体層積層体を模式的に示す断面図であって、(a)は曲げ変形やねじり変形が加わった際の座屈による布帛層の浮き上がりが生じた状態を示し、(b)は布帛層と発泡体層との境界で剥離が生じた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に係る発泡体層積層体の構成を概略的に示す断面図である。この図1において、発泡体層積層体1の最上面に一方の布帛層1Aが配置され、最下面に他方の布帛層1Bが配置されている。各布帛層1A,1Bは、それぞれ織物により製織されている。発泡体層積層体1は、発泡体層2が一方の布帛層1Aと他方の布帛層1Bとに狭持された3層のサンドイッチ構造を形成する。また、一方の布帛層1Aと他方の布帛層1Bとは、すべての位置で同じ長さの合成繊維のモノフィラメント糸3によって連結されている。このため、一方の布帛層1Aと他方の布帛層1Bとは略平行を保ち、厚さが均一な板状となる。さらに、任意の2本のモノフィラメント糸3は互いに略平行となっている。すなわち、任意の2本のモノフィラメント糸3,3が、一方の布帛層1Aに対しそれぞれ連結される連結点間の距離と、他方の布帛層1Bに対しそれぞれ連結される連結点間の距離とが、ほぼ等しくなっている。よって、発泡体層積層体1は曲率を持たない平板状となる。
【0032】
また、図2は、発泡体層積層体1の布帛層1A,1B及びモノフィラメント糸3から構成された基材11をたて糸と平行に切断した断面図である。この図2に示すように、一方の布帛層1Aと他方の布帛層1Bとがモノフィラメント糸3で連結された発泡体層積層体1としては、2枚の基布11A,11Bをパイル31で連結した二重パイル織物が適用されている。この2枚の基布11A,11Bは、それぞれたて糸12A,12Bと、よこ糸13A,13Bとで構成されている。この場合、図2において、よこ糸13A,13Bの太さをたて糸12A,12B及びパイル31よりもかなり太く図示しているが、基材11の構成を分かりやすくするために便宜上太さに差をつけているに過ぎず、たて糸12A,12B、よこ糸13A,13B及びパイル31の太さは、図示したほどの差がないものとする。
【0033】
パイル31は、上側では基布11Aに織り込まれて当該基布11Aに接合され、下側では基布11Bに織り込まれて当該基布11Bに接合されている。また、パイル31は、一方の基布11Aに織り込まれた後、他方の基布11Bに織り込まれるまでの間で、どちらの基布11A,11Bにも織り込まれない柱状部分を有しており、この柱状部分の長さによって、発泡体層2の厚さが決定される。つまり、パイル31としては、基材11を構成するパイルたて糸が適用されている。なお、図2において、一方の基布11Aが一方の布帛層1Aに、他方の基布11Bが他方の布帛層1Bに、パイル31がモノフィラメント糸3に、それぞれ対応している。また、両基布11A,11B及びパイル糸31によって基材11が構成され、この基材11に発泡体層2となる発泡体20を介在させることで発泡体層積層体1が構成される。
【0034】
一方の布帛層1Aと他方の布帛層1Bとがモノフィラメント糸3で連結された本発明の発泡体層積層体1を構成する二重パイル織物は、例えば、ベルベット織機のナイフスライダ(製織された二重パイル織物のパイルを巻取り前に切断する装置)を取り外して、一方の基布11Aと他方の基布11Bとが、パイル31で連結されたままで巻き取り装置に巻き取らせることで製造できる。なお、基布11A,11Bである織物の組織は、平織、綾織等の三原組織であっても、ドビー組織等の変化組織であってもよい。
【0035】
ここで、布帛層1A,1B及びモノフィラメント糸3について詳細に説明する。
両布帛層1A,1Bを構成する糸は、紡績糸、マルチフィラメント糸、モノフィラメント糸等の製織に使用できる構造のものであればなんでもよい。また、糸を構成する繊維の種類は、綿、麻等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維、又は、炭素繊維、ガラス繊維等の無機繊維が用途に応じて用いられる。更に、混紡、合糸等の周知の方法により、異なる種類の繊維を組み合わせて用いることも可能である。要するに、布帛層1A,1Bを構成する糸の構造および繊維種には種々のものを用いることができるが、発泡体層積層体1の強度・剛性をより重視する場合には、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の高強度で高弾性の繊維が用いられる。また、用途によっては、ポリエステル等の合成繊維のフィラメント糸を用いることが経済的である。
【0036】
また、一方の布帛層1Aと他方の布帛層1Bとをそれぞれ構成する糸についても、同種であってもよく、異なる種類であってもよいが、曲率のない平板状の発泡体層積層体1とするためには、同種の糸を用いることが好ましい。一方、積極的に異なる種類の糸を用いて発泡体層積層体1に厚さ方向の曲率を持たせることも可能である。この点については後に詳述する。
【0037】
そして、モノフィラメント糸3を構成する繊維としては、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、フッ素樹脂、又はポリフェニレンサルファイド等のような合成繊維が用いられる。
【0038】
次に、布帛層1A,1Bを構成する糸およびパイル31を構成するモノフィラメント糸3の太さについて説明する。
基布11A,11Bを構成する糸の太さは、たて糸12A,12B、よこ糸13A,13Bとも、特に限定しないが、ポリエステル製のマルチフィラメント糸を用いた場合には、100〜1000dtexであれば製織が容易である。また、糸の材質によっては、適正な範囲が異なるが、製織可能な範囲で適宜選択することができる。
【0039】
パイル31の太さは、製織可能な範囲で適宜選択され、ポリエステル製のモノフィラメント糸からなるパイルを用いた場合には、100〜800dtexであれば製織可能である。また、発泡体層積層体の厚さ方向の圧縮強度・圧縮剛性を考慮すると200dtexが好ましく、製織の容易さからは600dtex以下が好ましい。また、糸の材質によっては、適正な範囲が異なるが、製織可能な範囲で適宜選択される。
【0040】
図3は、曲げモーメントを受けている従来の発泡体層積層体9及び本発明の発泡体層積層体1の断面をそれぞれ模式的に表したものである。図3の(a)は布帛層91,92及び発泡体層93を接着した従来の発泡体層積層体9、図3の(b)は本発明の発泡体層積層体1の変形状態をそれぞれ表している。図3の(a)に示すように、曲げ変形が生じている発泡体層積層体9には、布帛層91,92に沿って内側では圧縮加重(図中の細矢印)、外側では引張荷重(図中の細矢印)が生じている。これらの布帛層91,92に沿った荷重の合力が発泡体層積層体9の厚さ方向に圧縮荷重(図中の太矢印)を生じさせる。よって、従来の発泡体層積層体9に曲げ変形を加えると、曲げ部で厚さが薄くなり、剛性の低下を来たしていることが分かる。これは、発泡体層93が、空間を薄い壁状又は細い柱状の実部で覆ったセルと呼ばれる構造単位が連なって形成されているために、圧縮荷重に対して壁状又は柱状の実部が低荷重であっても座屈を生じ易いからである。
【0041】
これに対し、本発明の発泡体層積層体1では、図3の(b)に示すように、モノフィラメント糸3からなるパイル31の周りに発泡体20が充填されているため、パイル31の座屈に必要な屈曲の自由度が発泡体により阻害され、結果として、圧縮荷重(図中の太矢印)をモノフィラメント糸3の軸方向で負荷できるようになっている。これにより、モノフィラメント糸3は、厚さ方向の圧縮荷重を支える柱として機能し、発泡体20の曲げ部の厚さが薄くなることを妨げ、発泡体層積層体1の剛性が低下することを防ぐ効果を有している。
【0042】
次に、布帛層の結合にマルチフィラメント糸や紡績糸でなくモノフィラメント糸を用いることによって、布帛層1A,1B同士の間での座屈荷重を高めて発泡体層積層体1の剛性・強度を高めることができる根拠について説明する。
【0043】
座屈荷重Wcは、オイラーの公式によると、
【0044】
【数1】
【0045】
となり、座屈荷重は、柱の断面二次モーメントIに比例する。ここで、nは端末条件係数、πは円周率、Eはヤング率、lはパイルの長さをそれぞれ表す。
ここで、断面が直径d0の円形である単繊維がm本集まって総断面積がAとなっているフィラメント糸について考える。単繊維の断面二次モーメントI0は、次式で表される。
【0046】
【数2】
【0047】
一方、フィラメント糸の断面二次モーメントIは、繊維の断面二次モーメントの総和であるため、I=m・I0である。
【0048】
また、繊維の直径d0と断面積の総和Aとの関係は、
であるので、
【0049】
【数3】
【0050】
よって、同じ断面積(太さ)を持つフィラメント糸であれば、繊維の構成本数mが少ない方が断面二次モーメントが大きくなり、座屈荷重が大きくなる。
【0051】
要するに、フィラメント1本で糸を構成するモノフィラメント糸を用いると、同じ太さのマルチフィラメントや紡績糸を用いるよりも、発泡体層積層体1の曲げ部での厚さ方向の圧縮変形が小さい。
この結果から、パイル31として、細い繊維を集合させたマルチフィラメント糸や紡績糸を使用するよりもモノフィラメント糸3を使用することで、発泡体層積層体1の剛性・強度を向上させる上で有利であることが分かる。
【0052】
次に、両布帛層1A,1Bの間に発泡体層3を形成する発泡体層積層体1の製造方法の一例を図4に基づいて説明する。
【0053】
まず、図4の(a)に示すように、製織工程において、上述したように、一方の布帛層1A及び他方の布帛層1Bを構成する2枚の基布11A,11Bをそれぞれたて糸とよこ糸とで製織し、それぞれの基布11A,11Bをモノフィラメント糸3からなるパイル31で連結した二重パイル織物を適用する。つまり、製織工程では、二重パイル織物を構成する2枚の基布11A,11Bを製織するとともに、パイルたて糸で各布帛層1A,1B同士を適宜間隔に連結して、基材11(二重パイル織物)を製織する。このとき、パイル31は、上側の一方の基布11Aに織り込まれて当該基布11Aに接合されているとともに、下側の他方の基布11Bに織り込まれて当該基布11Bに接合されており、基材11のパイルたて糸がパイル31として用いられている。また、パイル31は、一方の基布11Aに織り込まれた後、他方の基布11Bに織り込まれるまでの間で、どちらの基布11A,11Bにも織り込まれない柱状部分を有している。この柱状部分の長さは、均一としている。この場合、基材11は二重構造布帛であり、その製造方法としては、例えば経緯二重組織を用いた経パイル織物などが挙げられる。
【0054】
次いで、図4の(b)に示すように、端縁封止工程として、製織工程において製織された布帛層1A,1Bの端縁を、発泡体原料を挿入ないし注入する注入部15を除いて封止しておく。例えば、両布帛層1A,1Bの端縁を密着させておき、ミシン等を用いて、注入部15を除いて縫い合わせることで布帛層1A,1Bの端縁を封止する。また、熱融着シートによる溶着、接着剤による接着によっても、注入部15を除いた端縁の封止が可能である。これによって、布帛層1A,1Bの端縁からの発泡体原料の漏れ出しを防止している。
【0055】
発泡体20の材質は、既存のものを使用すればよく、布帛層1A,1Bの間に原料を挿入または注入でき、発泡に必要な加熱、または、反応熱による温度上昇に基材11が耐えられるものであればよい。例えば、硬質ポリウレタンフォームは、発泡・硬化時に反応熱が生じるが、ポリエステル等の合成繊維のガラス転移点(Tg)まで温度上昇しないため、ポリエステル等の合成繊維からなる糸で構成した基材11と硬質ポリウレタンフォームによる発泡体層2とを組み合わせることが可能である。
【0056】
硬質ポリウレタンフォームは、多くの用途に用いられており、経済性に優れる。また、イソシアネートとポリオールとを混合攪拌することで、容易に発泡・硬化させることが可能である。また、硬質ポリウレタンフォームは、独立気泡の割合が90%程度を占めるため、剛性の高い発泡体層積層体とすることができる。更に、硬質ポリウレタンフォームは、自己接着性を有するため、布帛層1A,1B及び合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルと接着して、さらに強固な発泡体層積層体を得ることができる。
【0057】
本発明の発泡体層2に硬質ポリウレタンフォームを用いる場合には、イソシアネートとポリオールとを混合攪拌後、混合液の発泡開始前までに、布帛層1A,1Bの端縁の注入部15にノズル41を差し込んで布帛層1A,1B同士の間に注入器4により混合液を注入する。なお、混合液の注入時、織物である布帛層1A,1Bを透過して混合液が漏れる場合があるが、布帛層1A,1Bつまり基布11A,11Bの織物密度を上げるか、ポリウレタンの原料液を粘度の高いものに変更することによって、混合液の漏れが防止される。
【0058】
また、発泡体原料の漏れの防止手段として、基布11A,11Bの一部をフィルム等でシールした混合液停留部を設けていてもよい。すなわち、図4の(b)に示すように、布帛層1A,1Bを鉛直方向に保持し、上部の注入部15より混合液を注入すると、混合液は、重力により布帛層1A,1Bの下部に溜まる。このとき、布帛層1A,1Bの混合液が溜まる混合液停留部をシールしておけば、混合液を漏らすことなく発泡開始まで布帛層1A,1B同士の間に保持される。
【0059】
発泡を開始した混合液は、布帛層1A,1Bを発泡圧力により押し広げるように膨張しながら、混合液貯留部から布帛層1A,1B同士の間を上方に向かって流動してゆく。なお、発泡しながら流動する混合液は、発泡前に比べて布帛層1A,1Bを透過し難くなるので、布帛層1A,1B全体にシールを施す必要はない。
【0060】
このとき、混合液の注入量が不足すると、布帛層1A,1B全体に発泡体層2を形成できないため、十分な量の混合液を注入する必要がある。例えば、寸法が、長辺x、短辺yの長方形状の基材11であり、その基材11の全体でパイル31の長さが一定値zである場合には、十分な混合液を注入すると、体積がxyzの発泡体層積層体1を形成できる。よって、混合液の発泡倍率をαとすると、xyz/α以上の量の混合液を注入する必要がある。しかし、混合液が膨張する際に、重力に抗して上昇する必要があり、パイル31の隙間を縫って流動する必要があるため、上記計算値より多めに注入することが好ましい。また、発泡倍率αは、温度、湿度等の諸条件で異なることがあるため、注入量は実際の製造条件の下での実験によって求めることが好ましい。
【0061】
また、発泡が布帛層1A,1B上部の注入部15に達する前に、注入部15を塞いでおけば、注入部15からの漏れ出しが防止され、発泡圧で布帛層1A,1B全体のパイル31を伸ばして所望の厚さの発泡体層積層体1が形成される。
【0062】
なお、布帛層1A,1Bの通気度が10〜30cm3/cm2・s程度であれば、発泡時に空気は容易に布帛層1A,1Bを透過して押し出されるが、発泡中の混合液は透過せずに、布帛層1A,1B同士の間に保持されるため、注入部15を塞いでも、布帛層1A,1B全体が発泡体20で満たされる。ただし、発泡体原料の粘度によって最適な通気度は異なるので、製造に際しては、予め試験によって適度な通気度を確認することが好ましい。
【0063】
また、注入量が多すぎる場合には、布帛層1A,1Bの内部で発泡圧が高くなり過ぎるため、余分を注入部15から積極的に漏らすか、圧が一定以上になった場合に発泡した液が漏れ出すような微小な孔を布帛層1A,1Bに設けることが好ましい。
【0064】
そして、図4の(c)に示すように、混合液の発泡・硬化後に、布帛層1A,1Bの端縁を切除し、発泡体層2を貫通して布帛層1A,1B同士をモノフィラメント糸3により連結した3層構造の発泡体層積層体1を得る。
【0065】
本発明の発泡体層積層体の発泡体層の材質としては、上記の硬質ポリウレタンフォームの他に、ポリスチレンフォーム、フェノールフォーム、ユリアフォーム、メラニンフォーム、エポキシフォーム等の樹脂フォームを使用できる。
【0066】
次に、本発明の発泡体層積層体1をそれぞれ異なる材料及び製法により作製した実験例1、2及び比較例1に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の各実験例に限定されるものではない。
【0067】
[実験例1]
ナイフスライダを取り外したベルベット織機(ヴァンデヴィーレ社製VMM−22)で、基布(布帛層)が2層とも平織りの二重パイル織物を製織した。図5に示すように、基布のたて糸にポリエステル製のマルチフィラメント糸(333dtex、構成本数72本、撚り数259T/m)、よこ糸にポリエステル製のマルチフィラメント糸(999dtex、構成本数216本、撚り数912T/m)、パイルにポリエステル製のモノフィラメント糸(280dtex)を用いた。密度は、基布のたて糸が50本/inch、よこ糸が60本/inch、パイルがたて7本/inchである。また、パイルの長さは17mmであり、基材全体で一様のパイル長とした。
製織した二重パイル織物を、30cm×30cmの正方形に切断し基材とした。
【0068】
このときの基材の通気度は、22cm3/cm2・sであった。なお、基布の通気度は、パイルを切断した1枚の基布について、JIS L1096(2010)の通気性試験法(フラジール形法)に従いテクステクト社製通気度試験機FX−3300(圧力設定125Pa)で測定した値である。
【0069】
次いで、基材の端縁を発泡体原料を注入する注入部を除いて両布帛層を重ねてミシンで縫製して端縁の封止を行った。
【0070】
その後、注入部を上にして、布帛層が鉛直になるように基材を保持し、硬質ウレタンフォームの原料液を注入部から注入した。原料はポリオール(シールドエアー社製インスタパックリジッド200ポリウレタンレジン)と、イソシアネート(シールドエアー社製インスタパックリジッド200クルードMDI)をほぼ1:1の割合で液温62°Cにて混合攪拌したものである。注入量は全体で約80gである。
【0071】
原料液は基材の底部に溜まり、約10秒間発泡せずに布帛層から漏れることなく留まっていた。ポリオールの粘度は77mPa・s、イソシアネートの粘度は33mPa・sであった。なお、粘度は東京計器製E型回転粘度計(設定温度62°C、回転数100rpm)で測定した値である。
【0072】
発泡を開始した原料液は、両布帛層の間を膨張しながら流動して基材の上部に達した。その際、膨張・流動する原料液は両基布を透過して漏れることはなかった。
また、基材の注入部をクリップで塞いでいたため、発泡により生じる膨張圧力で、基布同士の間のパイルが緊張状態となり、一定厚さを有する板状となった。このとき、基布同士の間にあった空気は布帛層を通して容易に排出され、基布同士の間に硬質ウレタンフォームが充填された。
【0073】
発泡体20の硬化後、発泡体層積層体の端縁を切断して、厚さが20mmで均一な、25cm角の平板状の発泡体層積層体を得た。
【0074】
[実験例2]
実験例1と同一の織機で、図6の(a)に示すように、たて糸方向の断面が図のとおりである二重パイル織物を製織した。図7に示すように、51は基材11の基布11A,11Bのたて糸(ポリエステル製のマルチフィラメント糸333dtex、構成本数72本、撚り数259T/m)、52は基布11A,11Bのよこ糸(ポリエステル製のマルチフィラメント糸999dtex、構成本数216本、撚り数912T/m)、53は基布11A,11Bのよこ糸(水溶性ビニロン製の紡績糸193dtex)、54はパイル(ポリエステル製のモノフィラメント糸(220dtex))である。密度は、基布11A,11Bのたて糸51が50本/inch、よこ糸52,53が60本/inch、パイル54がたて7本/inch、よこ14本/inchである。パイル54の長さは、17mmであり、基材11全体で一様のパイル長とした。
【0075】
図6の(b)に示すように、製織したパイル織物を70°Cの熱湯中でかき混ぜて基布11A,11Bのよこ糸53を溶解させて、たて糸方向の断面が図のとおりである基材11とした。つまり、図6の(c)に示すように、水溶性のよこ糸53を溶かすことによって、製織したパイル織物の約3倍のパイル長を有する基材11を作成した。基材11のパイル54の長さは50mmとなった。乾燥させた基布11A,11Bの通気度は23cm3/cm2・sであった。
【0076】
次に、実験例1と同様に注入部を除いて端縁の封止を行い、原料液停留部の漏れ防止を施した。
【0077】
注入量が約120gであること以外は、実験例1と同様に硬質ウレタンフォームの原料液を注入し、厚さが50mmで25cm角の平板状の発泡体層積層体を得た。このとき、布帛層の通気度は、実験例1より若干大きいが、発泡後、膨張・流動する原料液が布帛層から漏れることはなかった。
【0078】
[比較例1]
実験例2と同様の発泡ポリウレタン原料を用いて、一辺が25cmの正方形で、厚さが50mmの硬質ポリウレタンフォームの成型品を作製した。また、図8に示すように、実験例2で使用したものと同一の基材のパイルを切断して、パイルのない2枚の基布を作製した。これらの基布が成型品の両面に接着されるように成型前に型内に仮止めし、基布同士の間に発泡ウレタンを充填させることで、基布同士がパイルにより連結されない従来例と同様の発泡体層積層体を作製した。
【0079】
実験例2及び比較例1の発泡体層積層体の厚み方向の圧縮試験を次の方法により行った。すなわち、発泡体層積層体の布帛層と直角に交わりたて糸と平行な2面と、同様に布帛層と直角に交わりよこ糸と平行な2面に沿って発泡体層積層体を切断して、50mm×50mmの正方形の平面と、元の発泡体層積層体の厚さ(50mm)を有するブロック状の試料を作製した。JIS K7220(2006)に準ずる方法で、厚さ方向の圧縮試験を行い、荷重−変位曲線を得た。試験には、インストロン5569型万能材料試験機を用いた。なお、圧縮速度(試験機クロスヘッドの移動速度)を5mm/分とした。得られた荷重−変位曲線を図9に示す。
【0080】
この荷重−変位曲線の初期の傾きは、実験例2では、比較例1に比べて大きい。よって、合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルが柱となって荷重を支えていることが分かる。
また、降伏点荷重(発泡体のセルを構成する柱状又は壁状の実部、及び、パイルが座屈し始める荷重)に達すると、変位が増加しても、圧縮荷重は上昇せずに微小な上下動を呈するようになるが、このときの荷重も実験例2では、比較例1に比べて大きい。よって、モノフィラメント糸からなるパイルが圧縮強度を向上させていることが分かる。
【0081】
次に、実験例2及び比較例1の発泡体層積層体の曲げ試験を次の方法により行った。
【0082】
先ず、基材のよこ糸方向が長手方向となる長さ220mm、幅50mm、厚さ50mmの試験片を作製し、JIS K7221−1及び2(2006)に準ずる方法で、厚さ方向の三点曲げ試験を行った。このとき、支点間距離を180mmとした。また、試験には、インストロン5569型万能材料試験機を用いた。更に、支点での発泡体層の局所的な陥没を極力抑えるようにするため、加圧くさびと支点とをそれぞれ半径15mmの円柱状とした。なお、曲げ速度(試験機クロスヘッドの移動速度)を20mm/分とした。
【0083】
得られた荷重−変位曲線を図10に示す。この荷重−変位曲線の初期の傾きは、実験例2では、比較例1に比べて大きい。よって、実験例1では、モノフィラメント糸からなるパイルが柱となって厚さ方向に生じる圧縮荷重を支えることから、厚さが薄くならない結果、曲げ剛性が向上することが分かる。
【0084】
また、比較例1では、曲げ変形が大きくなると、上面(曲げの内側)で布帛層が一部剥離したが、実験例2では、布帛層の剥離は生じなかった。
【0085】
ここで、実験例2及び比較例1の発泡体層積層体の見かけ密度について説明する。
【0086】
実験例2及び比較例1の発泡体層積層体の見かけ密度をJIS K7222(2005)に準ずる方法で求めた。なお、重量と体積の測定に用いた試験片は、圧縮試験に用いたものと同様に作製した。
【0087】
実験例2の発泡体層積層体の見かけ密度は、59.1kg/m3であった。また、比較例1の発泡体層積層体の見かけ密度は、61.9kg/m3であった。
【0088】
この結果から、実験例2の方が、見かけ密度が低いことから発泡倍率が若干大きいものと考えられる。一般的に、発泡倍率が大きければ、強度・剛性は小さくなると考えられる。従って、実験例2の方が、比較例1よりも強度・剛性が高い結果となったのは、発泡倍率の違いではないことが証明された。
【0089】
したがって、上記実施の形態では、合成繊維のモノフィラメント糸3によって発泡体層2を貫通して各布帛層1A,1B同士の間が適宜間隔に連結されているので、発泡体層積層体1の厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性が向上している。このため、発泡体層積層体に曲げ変形やねじり変形を加えても、厚さが薄くなることを防止でき、優れた強度・剛性を得ることができる。また、発泡体層積層体1に曲げ変形やねじり変形が生じても、布帛層1A,1Bの座屈による浮き上がりや、布帛層1A,1Bと発泡体層2との境界での剥離が確実に防止される。これにより、曲げ変形やねじり変形に対して発泡体層積層体1の十分な強度・剛性を得ることができる。
【0090】
また、各布帛層1A,1Bが二重パイル織物を構成する2枚の基布11A,11Bにより形成されているとともに、その基材11のパイルたて糸がパイル31(モノフィラメント糸3)として適用されているので、モノフィラメント糸3を別途設けて各布帛層1A,1B同士の間を連結する必要がなく、モノフィラメント糸3による各布帛層1A,1B同士の連結を簡単に行うことができる。しかも、パイルたて糸(パイル31)で連結された2枚の基布11A,11Bの間に発泡体原料を挿入または注入すれば、容易に発泡体層2が得られ、発泡体層積層体1を簡単に製造することができる。
【0091】
また、発泡体層2の原料として液状の硬質発泡樹脂が適用されているので、液状の硬質発泡樹脂を布帛層1A,1Bの間に注入して安易に発泡体層2を得ることができる。しかも、硬質発泡樹脂によって発泡体層2の強度・剛性の向上も図られ、耐久性及び制振性に優れた発泡体層積層体1を提供することができる。
【0092】
また、各布帛層1A,1Bとしてガラス繊維を含んだ強化布帛層が適用されていれば、各布帛層1A,1Bの強度・剛性がより一層高められ、全体としての発泡体層積層体1の強度・剛性機能をさらに向上させることができる。
【0093】
更に、織物である2層の布帛層1A,1Bと、この布帛層1A,1B同士の間を適宜間隔に連結する合繊繊維のモノフィラメント糸3からなるパイル31を有する二重パイル織物(基材)を製織する製織工程と、モノフィラメント糸3によって連結した各布帛層1A,1B同士の端縁を発泡体原料の注入部15を除いて封止する端部封止工程と、各布帛層1A,1B同士の間に注入部15より発泡体を充填して発泡硬化後に発泡体層2を得る発泡体充填工程とにより発泡体層積層体1が製造されているので、厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性が向上しかつ曲げ変形やねじり変形に対して十分な強度・剛性が得られた発泡体層積層体1を提供することができる。しかも、合成繊維のモノフィラメント糸3からなるパイル31で連結された各布帛層1A,1B同士の間に発泡体原料を注入して容易に発泡体層2が得られ、発泡体層積層体1を簡単に製造することができる。
【0094】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、上記実施の形態では、各布帛層を二重パイル織物(基材)を構成する2枚の基布により形成し、その基材のパイルたて糸をモノフィラメント糸として用いたが、各基布の間に板状に形成された発泡体を介在させた状態で、発泡体を貫通させて各布帛層同士を合成繊維のモノフィラメント糸により連結することで、発泡体層積層体が製造されるようにしてもよい。具体的には、織物からなる各基布同士の間に予め形成された発泡体層を介在させる発泡体層介在工程と、この発泡体層介在工程により介在された発泡体層を合成繊維のモノフィラメント糸により貫通して各布帛層同士の間を適宜間隔に連結する布帛層連結工程とを具備する。この場合においても、厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性が向上しかつ曲げ変形やねじり変形に対して十分な強度・剛性が得られた発泡体層積層体を提供することが可能となる
【0095】
また、上記実施の形態では、2枚の布帛層1A,1Bと発泡体層2とで三層構造の発泡体層積層体1を構成したが、各布帛層の少なくとも一方の布帛層の反発泡体層側に、その一方の布帛層と対面するように新たな布帛層を設けるとともに、この互いに対面する布帛層同士の間に新たな発泡体層を設け、その新たな発泡体層を貫通して上記互いに対面する布帛層同士の間を適宜間隔に連結する合成繊維のモノフィラメント糸からなる新たなパイルを備えていてもよい。この場合には、各布帛層の少なくとも一方の布帛層とこれに対面する新たな布帛層との間にも発泡体層を設けた分厚い発泡体層積層体が得られ、曲げ変形やねじり変形に対してより一層十分な強度・剛性を得ることが可能となる。
【0096】
また、上記実施の形態では、任意の2つのモノフィラメント糸3,3同士を布帛層1A,1Bに対し直交させて互いに略平行としたが、図11に示すように、全てのモノフィラメント糸32,33が布帛層1A,1Bに対し直交していなくてもよい。つまり、一方のモノフィラメント糸32と他方のモノフィラメント糸33とを布帛層1A,1Bに対し傾斜させて、基材である二重パイル織物において隣り合うパイルとして製織されていてもよい。このモノフィラメント糸32,33は、布帛層1A,1Bのよこ糸方向に順に繰り返し配置されている。この場合、モノフィラメント糸32,33は、布帛層1A,1Bに対して傾斜しているものの、モノフィラメント糸32,33同士が同一角度で反対側に傾斜しているため、力のバランスが取れており、平板状の発泡体層積層体14を形成することが可能となる。
【0097】
また、上記実施の形態では、任意の2本のモノフィラメント糸3を互いに略平行としたが、図12に示すように、任意の2つのモノフィラメント糸34,34同士の間隔を両布帛層1A,1Bとの連結部で異ならせることで、モノフィラメント糸34,34同士が互いに平行にならず、放射状になっていてもよい。すなわち、一方の基布11A(図12では上側の基布)と他方の基布11B(図12では下側の基布)とで互いに熱収縮率の異なる糸をそれぞれのよこ糸として用い、製織後に加熱すると、熱収縮率が高いよこ糸が大きく収縮するため、加工前は同じ長さであった基布11A,11Bによこ糸方向での長さの不均衡が生じる。よって、熱収縮率の高いよこ糸を用いた他方の基布11Bと共にフィラメント糸34,34同士の間隔が狭くなり、このように処理した基材11に発泡体層2を形成すると、熱収縮率の高いよこ糸を用いた他方の基布11Bが内側となるような曲率を持った発泡体層積層体15が形成されていてもよい。
【0098】
また、上記実施の形態では、一方の基布11Aと他方の基布11Bとをすべての位置において同じ長さのパイル糸31によって連結したが、図13に示すように、パイル糸35の長さを基布11A,11Bのたて糸方向で変更し、そのたて糸方向で厚さの異なる部分を有する発泡体層積層体16が形成されていてもよい。この場合、厚さの異なる部分同士の間は、たて糸方向で段階的に長さを異ならせたモノフィラメント糸35によって布帛層同士1A,1Bが連結され、段差が生じないようにしている。
【0099】
また、上記実施の形態では、布帛層1A,1Bを織物により構成したが、布帛層の表面に樹脂層を設けていてもよい。例えば、発泡体が発泡・硬化した後に、エポキシ樹脂を塗布して硬化させることで、布帛層の表面に樹脂層を形成すればよい。この場合には、曲げ変形した際に内側となった布帛層の座屈を防ぐことができ、発泡体層積層体の強度・剛性をさらに高めることが可能となる。
【0100】
また、予め布帛層に樹脂を含浸させて複合材料とした基材に発泡体層を形成することによっても、同様の効果が得られる。
【0101】
また、熱反射シートや化粧板などのような他の機能を持つ材料を積層すれば、本発明の機能に加えて他の機能を併せ持つ発泡体層積層体とすることが可能となる。
【0102】
また、本発明の発泡体層積層体を構成する合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルは、それぞれが、1本のモノフィラメントであっても、2本のモノフィラメントを引き揃えた無撚りの糸から構成されていてもよい。このとき、3本以上のモノフィラメントを用いると、製織の困難性から1本当たりのモノフィラメントの太さを小さくせざるを得ないため、モノフィラメント糸からなるパイルの座屈荷重が小さくなり、発泡体層積層体の剛性を確保することが困難となる。また、複数のモノフィラメントを引き揃えた糸に撚りを加えると、モノフィラメントの直線性がなくなるため、座屈荷重が低下する。これに対し、2本のモノフィラメントを引き揃えた無撚りの糸からなるパイルとした場合は、モノフィラメント1本当たりの太さが十分に太くても(例えば200〜500dtex)、製織の困難性は伴わず、無撚りであるために座屈荷重の低下も生じない。
【0103】
更に、発泡体層積層体を構造材、断熱材又は遮音材に使用すれば、厚さ方向の圧縮強度及び圧縮剛性を向上させかつ曲げ変形やねじり変形に対して十分な強度・剛性を得た発泡体層積層体によって、強度・剛性の高い構造材、断熱材又は遮音材を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0104】
1 発泡体層積層体
1A,1B 布帛層
11 基材
11A,11B 基布
15 注入部
2 発泡体層
20 発泡体
3 モノフィラメント糸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物からなる2層の布帛層と、これらの布帛層間に設けられた発泡体層とからなる発泡体層積層体であって、
上記発泡体層を貫通して上記各布帛層同士の間を適宜間隔に連結する合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルを備えていることを特徴とする発泡体層積層体。
【請求項2】
上記各布帛層が、二重パイル織物を構成する2枚の基布により形成されているとともに、その二重パイル織物を構成するパイルたて糸が上記パイルとして用いられている請求項1に記載の発泡体層積層体。
【請求項3】
上記発泡体層の発泡体としては、原料が液状の硬質発泡樹脂が適用されている請求項1又は請求項2に記載の発泡体層積層体。
【請求項4】
上記各布帛層の少なくとも一方の布帛層の反発泡体層側には、その一方の布帛層と対面するように新たな布帛層が設けられているとともに、この互いに対面する布帛層同士の間には新たな発泡体層が設けられており、
上記新たな発泡体層を貫通して上記互いに対面する布帛層同士の間を適宜間隔に連結する合成繊維のモノフィラメント糸からなる新たなパイルを備えている請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の発泡体層積層体。
【請求項5】
上記各布帛層としては、ガラス繊維を含んだ強化繊維層が適用されている請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の発泡体層積層体。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の発泡体層積層体を備えたことを特徴とする構造材、断熱材又は遮音材。
【請求項7】
織物からなる2層の布帛層と、これらの布帛層間に設けられる発泡体層とからなる発泡体層積層体の製造方法であって、
上記各布帛層同士の間に上記発泡体層を介在させる発泡体層介在工程と、
上記発泡体層介在工程により介在された発泡体層を合成繊維のモノフィラメント糸により貫通して上記各布帛層同士の間を適宜間隔に連結する布帛層連結工程と、
を有していることを特徴とする発泡体層積層体の製造方法。
【請求項8】
織物からなる2層の布帛層と、これらの布帛層間に設けられる発泡体層とからなる発泡体層積層体の製造方法であって、
上記各布帛層を製織する際に、上記各布帛層を二重パイル織物を構成する2枚の基布により形成するとともに、その二重パイル織物を構成するパイルたて糸を、上記各布帛層同士を適宜間隔に連結する合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルとして用いて、二重パイル織物を製織する製織工程と、
上記パイルによって連結した上記各布帛層同士の端縁を発泡体原料の注入部を除いて封止する端部封止工程と、
上記各布帛層同士の間に上記発泡体層が得られるように上記注入部より発泡体を充填する発泡体充填工程と、
を有していることを特徴とする発泡体層積層体の製造方法。
【請求項1】
織物からなる2層の布帛層と、これらの布帛層間に設けられた発泡体層とからなる発泡体層積層体であって、
上記発泡体層を貫通して上記各布帛層同士の間を適宜間隔に連結する合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルを備えていることを特徴とする発泡体層積層体。
【請求項2】
上記各布帛層が、二重パイル織物を構成する2枚の基布により形成されているとともに、その二重パイル織物を構成するパイルたて糸が上記パイルとして用いられている請求項1に記載の発泡体層積層体。
【請求項3】
上記発泡体層の発泡体としては、原料が液状の硬質発泡樹脂が適用されている請求項1又は請求項2に記載の発泡体層積層体。
【請求項4】
上記各布帛層の少なくとも一方の布帛層の反発泡体層側には、その一方の布帛層と対面するように新たな布帛層が設けられているとともに、この互いに対面する布帛層同士の間には新たな発泡体層が設けられており、
上記新たな発泡体層を貫通して上記互いに対面する布帛層同士の間を適宜間隔に連結する合成繊維のモノフィラメント糸からなる新たなパイルを備えている請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の発泡体層積層体。
【請求項5】
上記各布帛層としては、ガラス繊維を含んだ強化繊維層が適用されている請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の発泡体層積層体。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の発泡体層積層体を備えたことを特徴とする構造材、断熱材又は遮音材。
【請求項7】
織物からなる2層の布帛層と、これらの布帛層間に設けられる発泡体層とからなる発泡体層積層体の製造方法であって、
上記各布帛層同士の間に上記発泡体層を介在させる発泡体層介在工程と、
上記発泡体層介在工程により介在された発泡体層を合成繊維のモノフィラメント糸により貫通して上記各布帛層同士の間を適宜間隔に連結する布帛層連結工程と、
を有していることを特徴とする発泡体層積層体の製造方法。
【請求項8】
織物からなる2層の布帛層と、これらの布帛層間に設けられる発泡体層とからなる発泡体層積層体の製造方法であって、
上記各布帛層を製織する際に、上記各布帛層を二重パイル織物を構成する2枚の基布により形成するとともに、その二重パイル織物を構成するパイルたて糸を、上記各布帛層同士を適宜間隔に連結する合成繊維のモノフィラメント糸からなるパイルとして用いて、二重パイル織物を製織する製織工程と、
上記パイルによって連結した上記各布帛層同士の端縁を発泡体原料の注入部を除いて封止する端部封止工程と、
上記各布帛層同士の間に上記発泡体層が得られるように上記注入部より発泡体を充填する発泡体充填工程と、
を有していることを特徴とする発泡体層積層体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−158039(P2012−158039A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18297(P2011−18297)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(591023594)和歌山県 (62)
【出願人】(594124306)オーヤパイル株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(591023594)和歌山県 (62)
【出願人】(594124306)オーヤパイル株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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