説明

発泡体成形層を有するろ過面体マスク

【課題】マスク使用中のマスク本体圧潰防止に十分な構造的一体性または剛性が得られる一方、圧力低下は小さいので、呼吸抵抗を小さくするとともに着用者の快適性を増大させることができるマスクを提供する。
【解決手段】ろ過面体マスク10は、ハーネス14とマスク本体12とを備える。マスク本体12はエラストマーフェイスシール、ノーズフォーム、又はノーズクリップ等の付加的要素を用いずに好適な顔面適合性を実現できるように構成され、ろ過構造18とカップ状成形層とを備え、後者は複数の流体透過性開口を配置した独立気泡発泡体層を備える。開口は成形層の中間領域を含む成形層の全表面積の少なくとも30%を占める。ろ過構造は成形層上に同一の広がりをもって配置される。成形層は、マスク着用中、マスク本体周縁において着用者の顔と接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一連の開口を配置した発泡体成形層を有するろ過面体マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
マスクは、2つの主要な目的、すなわち(1)着用者の呼吸路への不純物または汚染物質の侵入防止、(2)着用者により吐出された病原体または他の汚染物質に対する曝露からの他の人間または有体物の保護、の少なくとも一方のため、通常、人間の呼吸経路を覆った状態で着用される。第1の場合、マスクは、空気が例えば自動車ボデー販売店など着用者にとって有害な粒子を含んでいる環境において着用される。第2の場合、マスクは、例えば手術室またはクリーンルーム内の他の人間または有体物に対する汚染の危険がある環境において着用される。
【0003】
マスクによっては、マスク本体自体がろ過機構として機能するので「ろ過面体(filtering face−pieces)」として分類されるものもある。着脱自在なフィルタカートリッジまたはフィルタ裏地(例えば、ユスチャク氏等(Yuschak et al.)に対する米国再発行特許第39,493号およびタイェビ氏(Tayebi)に対する米国特許第5,094,236号を参照)またはインサート成型されたフィルタ要素(例えば、ブラウン氏(Braun)に対する米国特許第4,790,306号を参照)とともにゴムまたはエラストマーのマスク本体を用いたマスクとは異なり、ろ過面体マスクは、フィルタ媒体がマスク本体全体の大部分を覆って延びており、フィルタカートリッジを取り付けたり交換したりする必要がない。それ自体として、ろ過面体マスクは相対的に軽量であり、容易に使用できる。
【0004】
ろ過面体マスクは、一般に、2つの種類、すなわち平坦折畳みマスクおよび成形マスクのうち一方に属する。平坦折畳みマスクは平坦状態で保管されるが、継ぎ目、ひだおよび/または折り目を有しているので、マスクを使用のため開いてカップ形状の構成とすることができる。平坦折畳みろ過面体マスクの例は、ボストック氏等(Bostock et al.)に対する米国特許第6,568,392号および6,484,722号、並びにチェン氏(Chen)に対する米国特許第6,394,090号に示されている。
【0005】
対照的に、成形マスクは、顔に適合する所望の構成にほぼ永久的に形成されており、通常、保管および使用中はその構成を保持している。成形ろ過面体マスクは、通常、一般に「成形層(shaping layer)」と呼ばれる成型支持シェル構造を有しており、これは通常、熱結合繊維または透かしプラスチック網目から作製される。成形層は、主としてろ過層の支持を行なうように設計される。ろ過層に対し、成形層は、マスクの内側部分(着用者の顔近傍)に存してもよく、マスクの外側部分、または内側および外側部分の双方に存してもよい。ろ過層を支持するための成形層を開示する特許の例には、ベルク氏(Berg)に対する米国特許第4,536,440号、デュールード氏等(Dyrud et al.)らに対する米国特許第4,807,619号、およびスコフ氏(Skov)に対する米国特許第4,850,347号が含まれる。
【0006】
成形マスク用のマスク本体を構成する際、ろ過層は、典型的に成形層に並置され、組み付けられた層を加熱された雌雄の成型部品の間に配することにより(例えば、ベルク氏に対する米国特許第4,536,440号を参照)、またはそれらの層を重ねた状態で加熱段階に通した後、重ねた層をフェースマスク状に常温成型することにより(クロンツァー氏等(Kronzer et al.)に対する米国特許第5,307,796号およびスコフ氏に対する米国特許第4,850,347号を参照)、組み付けられた層に成型操作が加えられる。
【0007】
既知のろ過面体マスクでは、ろ過層は、上記技術のいずれによりマスク本体に組み込まれるにせよ、一般に接合時に成型された成形層の湾曲した構成を仮定している。マスク本体にハーネスが固定されると、一般に、製品の使用準備ができる。適合性および着用者の快適性を改善するため、マスク本体の周縁にエラストマーフェイスシールが接合される場合もある。マスク着用中、フェイスシールは、径方向内向きに延びて着用者の顔に接触するようになっている。エラストマーフェイスシールの使用を説明する文書には、ボストック氏等に対する米国特許第6,568,392号、スプリンゲット氏等(Springett et al.)に対する米国特許第5,617,849号、マリヤネク氏等(Malyyanek et al.)らに対する米国特許第4,600,002号、およびヤード氏(Yard)に対するカナダ特許第1,296,487号が含まれる。また、顔の輪郭が極度に変化した場合の鼻領域における適合性改善のため、マスク本体にノーズフォームおよびノーズクリップが装着される(例えば、カラトゥーア氏等(Kalatoor et al.)らに対する米国特許出願公報2007/0068529A1、カラトゥーア氏に対する米国特許出願公報2008/0023006A1、シュエ氏等(Xue et al.)に対する国際公報WO2007/024865A1、ゲブレウォルド氏等(Gebrewold et al.)に対する国際公報WO 2008/051726A1、カスティリオーネ氏(Castiglione)に対する米国特許第5,558,089号およびDes.412,573号を参照)。一旦、マスクがその耐用期間の終了を迎えると、ろ過面体マスクにおいてろ過層は交換不能なので、製品は廃棄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国再発行特許第39,493号
【特許文献2】カナダ特許第1,296,487号
【特許文献3】欧州特許公開第1,495,785Al号
【特許文献4】国際公開第2007/024865A1号
【特許文献5】国際公開第2008/051726A1号
【特許文献6】国際公開第2009/038956A2号
【特許文献7】国際公開第96/28216A号
【特許文献8】米国再発行特許第31,285号
【特許文献9】米国再発行特許第37,974号
【特許文献10】米国商標特許第412,573号
【特許文献11】米国特許公開第2007/0068529A1号
【特許文献12】米国特許公開第2008/0023006A1号
【特許文献13】米国特許公開第2009/0078264A1号
【特許文献14】米国特許公開第2009/0193628A1号
【特許文献15】米国特許第4,013,816号
【特許文献16】米国特許第4,215,682号
【特許文献17】米国特許第4,536,440号
【特許文献18】米国特許第4,588,537号
【特許文献19】米国特許第4,600,002号
【特許文献20】米国特許第4,790,306号
【特許文献21】米国特許第4,798,850号
【特許文献22】米国特許第4,807,619号
【特許文献23】米国特許第4,827,924号
【特許文献24】米国特許第4,850,347号
【特許文献25】米国特許第5,094,236号
【特許文献26】米国特許第5,237,986号
【特許文献27】米国特許第5,307,796号
【特許文献28】米国特許第5,325,892号
【特許文献29】米国特許第5,496,507号
【特許文献30】米国特許第5,558,089号
【特許文献31】米国特許第5,617,849号
【特許文献32】米国特許第5,656,368号
【特許文献33】米国特許第5,804,295号
【特許文献34】米国特許第5,908,598号
【特許文献35】米国特許第6,041,782号
【特許文献36】米国特許第6,062,221号
【特許文献37】米国特許第6,119,691号
【特許文献38】米国特許第6,123,077号
【特許文献39】米国特許第6,332,465号
【特許文献40】米国特許第6,375,886号
【特許文献41】米国特許第6,394,090号
【特許文献42】米国特許第6,397,458B1号
【特許文献43】米国特許第6,398,847B1号
【特許文献44】米国特許第6,406,657号
【特許文献45】米国特許第6,409,806Bl号
【特許文献46】米国特許第6,454,986号
【特許文献47】米国特許第6,484,722号
【特許文献48】米国特許第6,492,286号
【特許文献49】米国特許第6,568,392号
【特許文献50】米国特許第6,743,464号
【特許文献51】米国特許第6,783,574号
【特許文献52】米国特許第6,824,718号
【特許文献53】米国特許第6,843,248号
【特許文献54】米国特許第6,854,463号
【特許文献55】米国特許第6,883,518号
【特許文献56】米国特許第6,923,182号
【特許文献57】米国特許第7,013,895号
【特許文献58】米国特許第7,028,689号
【特許文献59】米国特許第7,117,868号
【特許文献60】米国特許第7,188,622号
【特許文献61】米国特許第7,244,291号
【特許文献62】米国特許第7,244,292号
【特許文献63】米国特許第7,311,104号
【特許文献64】米国特許第7,428,903号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ハーネスとマスク本体とを備える成型ろ過面体マスクを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
マスク本体は、エラストマーフェイスシール、ノーズフォーム、またはノーズクリップなどの付加的要素を用いずに好適な顔面適合性を実現できるように構成される。マスク本体は、ろ過構造とカップ状成形層とを備え、後者は、複数の流体透過性開口を配置した独立気泡発泡体層を備える。開口は、成形層の全表面積の少なくとも10%を占める。ろ過構造は、成形層上に同一の広がりをもって配置される。
【0011】
本発明における発泡体成形層の開放的性質にもかかわらず、顔面接触独立気泡発泡体成形層を同一の広がりをもつろ過構造とともに使用すると、マスク使用中のマスク本体圧潰防止に十分な構造的一体性または剛性が得られる一方、圧力低下は十分に小さいので快適な呼吸が可能になる。また、独立気泡発泡体成形層は、周縁において十分な程度の柔軟性を有するので、マスク本体は、エラストマーフェイスシール、ノーズフォーム、またはノーズクリップの装着または使用を伴わずに着用者の顔面に快適かつ好適に適合することができる。
(用語集)
【0012】
以下に述べる用語は、以下に定義するような意味を有する。
【0013】
「頂点領域(apex region)」は、マスクの周縁が平坦表面と接触した状態で平坦表面上に載支されている際の、マスク本体の最高点を囲む領域を意味する。
【0014】
「備える(comprises(またはcomprising))」は、特許用語において標準的な定義を意味し、「含む(includes)」、「有する(having)」、または「含有する(containing)」とほぼ同義の無制限の用語である。「備える」、「含む」、「有する」、および「含有する」およびそれらのバリエーションは、一般的に用いられる無制限の用語であるが、本発明は、意図された機能を実行中に本発明のマスクの性能に対し有害な影響を及ぼすであろう物または要素のみを除外する半制限の用語である「本質的に構成される(consists essentially of)」などの、より狭義の用語を用いて適切に記述されることができる。
【0015】
「清浄な空気(clean air)」は、汚染物質を除去するためにろ過された大気環境空気の体積を意味する。
【0016】
「同一の広がりをもって(coextensively)」は、別の物体と平行に延び、かつ別の物体の表面積の少なくとも80%を覆うことを意味する。
【0017】
「汚染物質(contaminants)」は、粒子(塵、ミスト、および煙霧を含む)および/または一般に粒子とは見なされない他の物質(例えば、有機物蒸気など)であるが呼気流における空気を含む空気中に浮遊可能な物質を意味する。
【0018】
「カバーウエブ(cover web)」は、主として汚染物質ろ過のために設計された不織繊維質層を意味する。
【0019】
「外部気体空間(exterior gas space)」は、呼気がマスク本体および/または呼気弁を通過した後に進入する大気環境気体空間を意味する。
【0020】
「ろ過面体(filtering face−piece)」は、マスク本体自体が、通過する空気をろ過するように設計されていることを意味する。この目的を実現するため、マスク本体に装着または成型された独立して識別可能なフィルタカートリッジ、フィルタ裏地またはインサート成型されたフィルタ要素は存在しない。
【0021】
「フィルタ(filter)」または「ろ過層(filtration layer)」は、それを通る気流から汚染物質(粒子など)を除去するという主要な目的に合わせて構成されている1層以上の空気透過性材料を意味する。
【0022】
「ろ過構造(filtering structure)」は、主として空気をろ過するために設計された構造を意味する。
【0023】
「ハーネス(harness)」は、着用者の顔面上でマスク本体の支持を容易にする構造、または部品の組合せを意味する。
【0024】
「一体(integral)」は、当該部品が、ある1個の部品と同時に作製されたものであり、その後接合される2つの別個の部品ではないことを意味する。
【0025】
「内部気体空間(interior gas space)」は、マスク本体と人の顔面との間の空間を意味する。
【0026】
「マスク本体(mask body)」は、人の鼻および口を覆って適合するように設計され、外部気体空間から分離された内部気体空間の形成を容易にする空気透過性構造を意味する。
【0027】
「中間領域(mid region)」は、頂点領域とマスク本体周縁との間の領域を意味する。
【0028】
「ノーズクリップ(nose clip)」は、少なくとも着用者の鼻の周囲におけるシール状態を改善するためマスク本体上で使用するように構成された機械的装置(ノーズフォーム以外)を意味する。
【0029】
「ノーズフォーム(nose foam)」は、マスク着用の際の鼻に対する適合性および/または着用者の快適性を改善するためマスク本体内側に配置するように構成された多孔質材料を意味する。
【0030】
「不織布(nonwoven)」は、繊維が製織以外の手段で結合されている構造、または構造の部分を意味する。
【0031】
「平行(parallel)」は、ほぼ等距離であることを意味する。
【0032】
「周縁(perimeter)」は、マスクがある人物により着用されている際に着用者の顔面のほぼ最近部に配置されるマスク本体の外縁を意味する。
【0033】
「高分子(polymeric)」または「可塑性(plastic)」は、各々、主として1以上の重合体を含み、他の成分も含有可能な材料を意味する。
【0034】
「複数(plurality)」は、2以上を意味する。
【0035】
「マスク(respirator)」は、人により顔面上に鼻および口を覆って着用され、着用者が呼吸する清浄な空気を供給する空気ろ過装置を意味する。
【0036】
「成形層(shaping layer)」は、通常の取扱いで所望の形状(およびそれにより支持される他の層の形状)を保持するのに十分な構造的一体性を有する層を意味する。
【0037】
「ウエブ(web)」は、2つの次元において第3の次元よりも著しく大きく、かつ空気透過性の構造を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るろ過面体マスク10の斜視図である。
【図2】図1に示すマスク本体12の背面図である。
【図3】図2の線3−3に沿ったマスク本体12の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の実施において、独立気泡発泡体成形層を備えるろ過面体マスクが提供される。マスク着用中、成形層は、マスク本体の周縁において人間の顔面と接触する。成形層は、成形層表面積の少なくとも10%を占める複数の十分な大きさの流体透過性開口を有するので、マスクを人間によって快適に着用可能とするため適切な剛性をもたらすとともに圧力低下を十分に小さくしながら、使用中、マスク本体がその成型されたカップ形状の構成を適切に保持することができる。マスク使用中、着用者の肺は、環境空気を外部気体空間から内部気体空間へマスク本体に通すために必要なエネルギーを供給する。圧力低下が小さい場合、環境空気をろ過するために必要なエネルギーはより少ない。マスクが長時間にわたり着用されている際、圧力低下が小さいことは、清潔な空気を呼吸するために必要な動作またはエネルギーが少ないという点で着用者にとり非常に有益になりうる。圧力低下は、とりわけ特性値(Q)計測の形で粒子透過率と連結された場合に、マスクの性能の確立された尺度となる(例えば、アンガジヴァンド氏等(Angadjivand et al.)に対する米国特許第6,923,182号を参照)。成形層として流体不浸透性独立気泡発泡体材料を用いながら良好な適合性および性能を示す堅牢なろ過面体マスクを提供する本発明の能力は、マスク利用者および製造者にとって特に有益となることがある。
【0040】
図1は、マスク本体12とハーネス14とを備えるろ過面体マスク10を示す。ハーネス14は、弾性材料から作製可能な1以上のストラップ16を備えてもよい。ハーネスストラップは、接着手段、接合手段、または機械的手段を含む様々な手段によりマスク本体に固定してもよい(例えば、カスティリオーネ氏に対する米国特許第6,729,332号を参照)。ハーネスは、マスク本体に例えば超音波溶接可能であり、またはマスク本体にホチキス留め可能である。マスク本体12は、ろ過構造18と成形層とを備える。ろ過構造18は、成形層の外側に配置され、正面から視認可能である。ろ過構造18は、マスク本体周縁19に沿って成形層に接合してもよい。
【0041】
図2は、マスク本体12、とりわけ独立気泡発泡体材料を含む内側成形層20の背面図を示す。成形層20は、マスク着用中、マスク本体周縁19において着用者の顔と接触する。成形層20は、概ね約30ないし70平方センチメートル(cm)、より一般的には、40ないし60cmの等価呼吸開口(Equivalent Breathing Opening (EBO))を成形層に提供するような大きさの複数の開口22を有する。開口は、成形層の全表面積の少なくとも10%、好ましくは、少なくとも20%、より好ましくは、およそ30ないし60%、さらにより好ましくは、およそ35ないし50%を占める。開口22は、マスク本体の中間領域26に加え頂点領域24にも配置されている。開口22は、さらに、マスク本体の周縁領域28にまで延びていてもよい。開口22は、およそ4ないし15ミリメートル(mm)幅、より典型的には、およそ6ないし10mm幅の部材30により相互に隔てられている。開口22は、円形、長円形、楕円形、長斜方形、正方形、矩形、三角形、ダイヤモンド形などを含む様々な形状としてもよい。ろ過面体マスク上に呼気弁を配置する場合、呼気弁を収容するためフレームをマスク本体の頂点領域に成型してもよい(マーティン氏等(Martin et al.)に対する米国特許出願公報2009/0078264A1を参照)。これにより、呼気弁が望ましい場合、ろ過構造を通る流体流を収容するための、成形層に設けられた開口は、呼気弁を収容する頂点領域の一部分、すなわちフレームの配置部分には概ね存在しなくなる。
【0042】
図3は、成形層20が複数の層を備えうることを示す。第1内側コンプライアント層32は、外側構造発泡体層34より密度が低い独立気泡発泡体材料から作製してもよい。内側コンプライアント層は、約0.02ないし0.1g/cmの見かけ密度を示してもよい。内側層32の圧縮強さは、約0.25ないし1キロパスカル(KPa)、より典型的には、約0.3ないし0.5KPaであってもよい。第2外側発泡体層34は、約0.05ないし0.5g/cmの見かけ密度および約0.25ないし3KPa、より一般的には、約1ないし2.5KPaの圧縮強さを示してもよい。内側層32の密度が小さいほど、顔の特徴に対し、より適合度または順応度が高まる傾向があり、好適かつ快適な適合性が得られる。内側発泡体層の代わりとして、不織ウエブを用いて、成形層のためのコンプライアント顔面接触層を設けてもよい。適切な顔面接触層として機能するように、繊維質内側層は、第2外側層に接着可能とし、かつ柔軟な触感を備えるべきであり、特別な快適性をもたらす汗吸収性を有してもよい。繊維質内側層の例としては、カードウエブまたはスパンボンドウエブまたはポリエチレンテレフタレートまたはポリプロピレンまたはポリアミドまたはレーヨンの織物を含んでもよい。これらの層は、化学的および物理的接着を含む様々な技法により相互に接合してもよい。ろ過構造18も、発泡体成形層20の外側または上流に、ろ過層36および内側および外側カバーウエブ38、38’などの不織繊維質材料の1以上の層を備えてもよい。カバーウエブ38、38’は、ろ過層36を保護するとともにろ過層36内の繊維がマスク本体12から離れないように配設してもよい。2つのカバーウエブ38、38’が図示されているが、ろ過構造は、外側カバーウエブ38のみを有するか、まったくカバーウエブを有さないように作製してもよい。マスク使用中、空気は、層38、36、38’および成形層20の開口22を順次通った後、マスクの内側へ入る。このときマスク本体12の内部気体空間内に存する空気が着用者により吸入される可能性がある。着用者が呼気する際、空気は層20、38’、36、および38を順次、逆方向に通過する。代替的に、マスク本体12上に呼気弁(図示せず)を設け、呼気を内部気体空間から急速に一掃して、ろ過構造18を通さずに外部気体空間に送るようにしてもよい。典型的に、カバーウエブ38、38’は、最終製品の重量をほとんど増大させずに圧力低下を小さくする不織材料のうち選択された1つから作製される。ろ過構造とともに使用可能な様々なフィルタ層およびカバーウエブの構成を、より詳細に以下説明する。本発明のろ過面体マスクの圧力低下は、200Pa未満、より好ましくは、150Pa未満、さらにより好ましくは、100Pa未満であってもよい。特性値Qは、0.25より大、0.5より大、さらに0.7より大であってもよい。ろ過構造18と成形層20とを含むマスク本体12(図3)の剛性は、少なくとも2ニュートン(N)、より代表的には少なくとも約2.5Nであってもよい。剛性は、以下に述べるマスク剛性試験にしたがって決定してもよい。
【0043】
本発明とともに使用されるマスク本体は、図1に示すように湾曲した半球形状を有してもよく(デュールード氏等に対する米国特許第4,807,619号を参照)、または様々な異なる形状および構成をとってもよい(例えばジャプンティク氏(Japuntich)に対する米国特許第4,827,924号を参照)。上記のように、成形層は、様々な密度を有する発泡体の1以上の層を備えてもよい。発泡体層は、様々な高分子材料から作製してもよい。内側層、すなわち顔面により近い層は例えば低密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、または天然または合成ゴムから作製してもよい。外側層は、次の重合体、すなわち、ポリプロピレン、酢酸エチルビニル、ポリアミドまたはポリエステル、の1つ以上を含んでもよい。複数層成形層は、例えば、ポリエチレンテレフタレートまたはポリアミドまたはポリプロピレンまたはレーヨンの不織布または織物から作製してもよい。ろ過層とカバーウエブとを含む複数の層を備えたろ過構造を説明してきたが、ろ過構造は、ろ過層の組合せ、またはろ過層とカバーウエブとの組合せを単純に備えるものでもよい。例えば、プレフィルタをより精巧かつ選択的な下流のろ過層の上流に配置してもよい。さらに、活性炭などの吸着性材料を繊維および/またはろ過構造を含む様々な層の間に配置してもよいが、そのような吸着性材料は、望ましい好適な適合性を損なわないように、鼻部領域には配置しなくてもよい。さらに、別個の微粒子ろ過層を吸着層とともに用いて微粒子および蒸気双方のろ過を行なってもよい。ろ過構造は、使用中にカップ形状の構成とすることを容易にする1以上の補強層を備えてもよい。またろ過構造は、その構造的一体性に資する流れ線またはボンド部などの1以上の水平および/または垂直の境界線を有してもよい。
【0044】
本発明のマスク本体で用いられるろ過構造は、粒子捕獲型または気体・蒸気型フィルタとすることができる。また、ろ過構造は、フィルタ層の一方の側から別の側への液体の移転を妨げ、例えば、液体エーロゾルまたは液体飛沫(例えば血液)のフィルタ層貫通を防止するバリヤ層であってもよい。用途の必要に応じ、複数層の類似または相違するフィルタ媒体を用いて本発明のろ過構造を構成してもよい。本発明の層状マスク本体で有利に使用可能なフィルタは、マスク着用者の呼吸動作を最小化するため圧力低下が小さくなっている(例えば、13.8センチメートル毎秒の面速度において、約200ないし300パスカル未満)。また、ろ過層は可撓性および十分なせん断強さを有するので、一般的に予想される使用条件の下でそれらの構造を保持することができる。粒子捕獲フィルタの例には、微細無機繊維(ファイバーグラスなど)または高分子合成繊維の1以上のウエブが含まれる。合成繊維ウエブは、メルトブロー法などのプロセスから製造されるエレクトレット荷電高分子マイクロファイバーを含んでもよい。帯電したポリプロピレンから形成したポリオレフィンマイクロファイバーは、粒子捕獲用途に関して特別な有用性が得られる。
【0045】
ろ過層は、典型的に、望ましいろ過効果を実現するように選択される。ろ過層は、一般に、通過する気体の流れから粒子および/または他の汚染物質を高い割合で除去するであろう。繊維質ろ過層に関して、選択される繊維は、ろ過すべき物質の種類に依存しており、代表的に、製造作業中に相互に結合することがないように選択される。上記したように、ろ過層は、様々な形状および形態で実現してもよく、典型的な厚さは、約0.2ミリメートル(mm)ないし1センチメートル(cm)、より典型的には、約0.3mmないし0.5cmであり、略平面状のウエブとするか、または表面積拡張のため波形とすることができる(例えば、ブラウン氏等(Braun et al.)に対する米国特許第5,804,295号および第5,656,368号を参照)。また、ろ過層は、接着剤または他の手段により接合された複数のろ過層を含んでもよい。ろ過材としては、ろ過層を形成するための既知の(または今後開発される)本質的にいかなる適切な材料も使用可能である。インダストリアルエンジニアリングケミストリー(Industrial Engineering Chemistry)48巻、1342頁以下(1956年)のウェンテ、ヴァン・A.(Wente, Van A.)「超微細熱可塑性繊維(Superfine Thermoplastic Fibers)」において教示されているようなメルトブロー繊維のウエブは、特に持続性帯電(エレクトレット)形態である場合に特に有用である(例えば,クビク氏等(Kubik et al.)に対する米国特許第4,215,682号を参照)。これらメルトブロー繊維は、有効繊維直径が約20マイクロメートル(μm)未満、代表的には約1ないし12μmのマイクロファイバー(「ブローンマイクロファイバー(blown microfiber)」からBMFとして参照される)であってもよい。有効繊維直径は、デーヴィース,C.N.(Davies, C. N.)、「気中浮遊粉塵粒子の分離(The Separation of Airborne Dust Particles)」、機械技術者協会(Institution of Mechanical Engineers)、ロンドン(London)、会報(Proceedings)1B(1952)に従って決定してもよい。特に好ましいのは、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、およびそれらの組合せから形成される繊維を含むBMFウエブである。ヴァン・トゥルンハルト氏(van Turnhaut)の米国再発行特許第31,285号に教示されているような帯電したフィブリル化フィルムも、ロジンウール繊維質ウエブおよびグラスファイバまたは溶液吹込みまたは静電噴霧繊維のウエブとともに、特にマイクロファイバー形態において適切な場合がある。アイツマン氏等(Eitzman et al.)らに対する米国特許第6,824,718号、アンガジヴァンド氏等に対する米国特許第6,783,574号、インスリー氏等(Insley et al.)に対する米国特許第6,743,464号、アイツマン氏等に対する米国特許第6,454,986号および第6,406,657号、アンガジヴァンド氏等に対する米国特許第6,375,886号および第5,496,507号に開示されるように、繊維を水と接触させることにより繊維に電荷を付与することができる。クラッセ氏等(Klasse et al.)に対する米国特許第4,588,537号に開示されるようなコロナ帯電、またはブラウン氏(Brown)に対する米国特許第4,798,850号に開示されるような摩擦帯電により繊維に電荷を付与することもできる。また、ハイドロ帯電プロセスにより作製されたウエブのろ過性能を増大させるため、繊維に添加剤を含有させてもよい(ルソー氏(Rousseau et al.)に対する米国特許第5,908,598号を参照)。とりわけ、油性ミスト環境におけるろ過性能を改善するため、ろ過層内の繊維の表面にフッ素原子を配置することが可能である(ジョーンズ氏等(Jones et al.)に対する米国特許第6,398,847B1号、第6,397,458B1号および第6,409,806Bl号、カーク氏等(Kirk et al.)に対する米国特許第7,244,292号およびスパーツ氏等(Spartz et al.)に対する米国特許第7,244,291号を参照)。エレクトレットBMFろ過層に関する典型的な斤量(基本従量)は、約10ないし100グラム/平方メートル(g/m)である。上記のように帯電および選択的にフッ素処理された場合、斤量は、それぞれ、約20ないし40g/mおよび約10ないし30g/mとなる。
【0046】
マスク本体内の緩んだ繊維を捕捉するため、および審美的理由のため、カバーウエブを用いることもできる。カバーウエブは、典型的に、ろ過構造に対して実質的なろ過の利益をもたらさないが、ろ過層の外側(または上流)に配置された場合、プレフィルタとして作用可能である。カバーウエブは、好ましくは、比較的斤量が小さく、また比較的微細な繊維から形成される。より詳細には、カバーウエブは、約5ないし50g/m(典型的には、10ないし30g/m)の斤量を有するように作製してもよく、また、繊維は、3.5デニール未満(典型的には2デニール未満、より典型的には1デニール未満で0.1デニールより大)であってもよい。カバーウエブに使用される繊維は、多くの場合、平均繊維直径が約5ないし24マイクロメートル、典型的には、約7ないし18マイクロメートル、より典型的には、約8ないし12マイクロメートルである。カバーウエブ材料は、ある程度の弾性(典型的には、中断時(停止時)100ないし200%であるが、必須ではない)を有してもよく、塑性変形可能であってもよい。
【0047】
カバーウエブのための適切な材料は、ブローンマイクロファイバー(BMF)材料、特に、ポリオレフィンBMF材料、例えば、ポリプロピレンBMF材料(ポリプロピレンブレンドおよびポリプロピレンとポリエチレンとのブレンドを含む)であってもよい。カバーウエブのためのBMF材料を製造するための適切なプロセスは、サビー氏等(Sabee et al.)に対する米国特許第4,013,816号に記述されている。平滑な表面、典型的には、平滑表面ドラムまたは回転捕集器上に繊維を捕集することによりウエブを形成してもよい(ベリガン氏等(Berrigan et al.)に対する米国特許第6,492,286号を参照)。また、スパンボンド繊維を用いてもよい。
【0048】
典型的なカバーウエブは、ポリプロピレンまたはポリプロピレンを50重量パーセント以上含有するポリプロピレン/ポリオレフィンブレンドから作製してもよい。これらの材料は、高度の柔軟性および着用者に対する快適性を与えるとともに、フィルタ材料がポリプロピレンBMF材料である場合に、各層の間の接着剤を必要とせずにフィルタ材料に固定されたままになることが分かっている。カバーウエブで用いるのに適したポリオレフィン材料には、例えば、ポリプロピレン単独、ポリプロピレン2種のブレンド、ポリプロピレンとポリエチレンとのブレンド、ポリプロピレンとポリ(4−メチル−1−ペンテン)とのブレンド、および/またはポリプロピレンとポリブチレンとのブレンドが含まれてもよい。カバーウエブ用の繊維の一例は、エクソンコーポレーション(Exxon Corporation)のポリプロピレン樹脂「エスコレン(Escorene)3505G」から作製されたポリプロピレンBMFであり、その斤量は、約25g/m、繊維デニールは、0.2から3.1の範囲内(100本の繊維で計測した平均が約0.8)である。別の適切な繊維は、斤量が約25g/m、平均繊維デニールが約0.8のポリプロピレン/ポリエチレンBMF(「エスコレン3505G」樹脂85%とやはりエクソンコーポレーションのエチレン/α‐オレフィン共重合体「エグザクト(Exact)4023」15%とを含む混合物から製造)である。適切なスパンボンド材料は、ドイツ、パイネ(Peine)のコロビン社(Corovin GmbH)から商品名「コロソフト・プラス(Corosoft Plus)20」、「コロソフト・クラシック(Corosoft Classic)20」、および「コロビンPP−S−14」で入手可能であり、カーディングされたポリプロピレン/ビスコース材料はフィンランド、ナキラ(Nakila)のJ.W.スオミネンOY(J.W.Suominen OY)から商品名「370/15」で入手可能である。
【0049】
本発明で使用されるカバーウエブは、一般に、加工後のウエブ表面から突出する繊維がほとんどなく、従って、平滑な外側表面を有する。本発明で使用可能なカバーウエブの例は、例えば、アンガジヴァンド氏に対する米国特許第6,041,782号、ボストック氏等に対する米国特許第6,123,077号、およびボストック氏等に対するWO96/28216Aに開示されている。
【0050】
ハーネスに用いられるストラップは、熱硬化性ゴム、熱可塑性エラストマー、編組み糸または編み糸/ゴムの組合せ、非弾性編組み要素などの様々な材料から作製可能である。ストラップは、弾性編組み材料などの弾性材料からも作製可能である。ストラップは、好ましくは、その全長の2倍を超えて伸長可能であり、その弛緩状態に戻すことができる。ストラップは、場合によりその弛緩状態の長さの3ないし4倍とすることもでき、張力が除かれると損傷することなく初期状態に戻すことができる。よって弾性限界は、一般にその弛緩状態のときのストラップ長さの2以上、3ないし4倍である。典型的に、ストラップは、長さ約20ないし30cm、幅3ないし10mm、厚さ約0.9ないし1.5mmである。ストラップは、連続したストラップとして第1の側から第2の側まで延びてもよく、または、ストラップは、さらなる留め金具またはバックルにより相互に接合可能な複数の部品を有してもよい。例えば、ストラップは、マスク本体を顔から外す際に着用者により迅速に連結解除可能な留め金具により相互に接合される第1および第2の部品を有してもよい。本発明とともに使用可能なストラップの一例は、シュエ氏等(Xue et al.)に対する米国特許第6,332,465号に示されている。ストラップの1以上の部品を共に接合するために使用可能な締結または捕握機構の例は、例えば以下のブロストロム氏等(Brostrom)に対する米国特許第6,062,221号、セッパラ氏(Seppala)に対する米国特許第5,237,986号、チエン氏(Chien)に対するEP1,495,785Al、およびゲブレウォルド氏等(Gebrewold et al.)に対する米国特許公報2009/0193628A1およびステパン氏等(Stepan et al.)に対する国際公報W0 2009/038956A2に示されている。
【0051】
上記の如く、呼気の内部気体空間からの一掃を容易にするため,マスク本体に呼気弁を装着してもよい。呼気弁を使用して、マスク内側から暖かく湿った呼気を急速に除くことにより着用者の快適性を改善してもよい。例えば、マーティン氏等(Martin et al.)に対する米国特許第7,188,622号、第7,028,689等、および第7,013,895号、ジャプンティク氏等に対する米国特許第7,428,903等、第7,311,104号、第7,117,868号、第6,854,463号、第6,843,248号、および第5,325,892号、ミッテルスターディ氏等(Mittelstadi et al.)に対する米国特許第6,883,518号、およびバワーズ氏(Bowers)に対する米国再発行特許第37,974号を参照のこと。呼気を内部気体空間から外部気体空間へ急速に移動させるため、適切な圧力低下をもたらすとともにマスク本体に適切に固定可能な本質的にいかなる呼気弁も、本発明に関連して使用可能である。
(実施例)
[試験方法]
【0052】
以下の試験方法を用いて、フィルタウエブ、成型された発泡体要素、および完成したマスクを評価した。
[粒子透過率および圧力低下]
【0053】
ミネソタ州セントポール(St.Paul)のTSI社(TSI Incorporated)製のAFT試験機、型番8130を使用して、フィルタウエブおよび完成したマスク双方に関する粒子透過率および圧力低下の計測値を決定した。20ミリグラム毎立方メートル(mg/m)の濃度および13.8センチメートル毎秒(cm/秒)の面速度で送られた塩化ナトリウム(NaCl)チャレンジを試験エアゾールとして使用した。試験中、フィルタウエブまたはマスクの下流側におけるエアゾールの濃度を決定し、チャレンジ濃度と比較した。試験対象の透過率は、塩化ナトリウムの下流濃度をチャレンジの上流濃度で除した百分率として与えられ、透過率として報告される。フィルタ効率に加え、試験対象による圧力低下を記録し、パスカル(Pa)単位で報告した。
[マスク剛性]
【0054】
ノースカロライナ州グリーンズボロ(Greensboro)ハイポイントロード(High Point Road)2620、J.A.キング・アンド・カンパニー(J.A.King & Co.)から入手可能なキング剛性試験機(King Stiffness Tester)型番SASD−672を使用して、マスクの剛性を計測した。剛性は、直径2.54cmの平面プローブをフェースマスクの頂点に押し込むのに必要な力として測定した。試験実施のため、プローブは、取付けプラットホームに載支されたマスクの頂点上方に配置した。次いで、プローブをマスクに向けて32mm/秒のクロスヘッド速度で進展させ、マスクを21ミリメートル圧縮した。プローブの完全進展の終了時、マスク圧縮に必要な力をニュートン(N)単位で記録した。
[見かけ上の発泡体密度]
【0055】
ASTM D3575−08、添え字W、方法Aにより、発泡体材料の見かけ上の密度を測定した。見かけ上の密度の値は、立方センチメートル当りのグラム数(g/cm)として報告される。
[圧縮強さ]
【0056】
ASTM D3575−08、添え字Dにより、発泡体の圧縮強さを測定した。圧縮強さの値は、キロパスカル(kPa)として報告される。
[等価呼吸開口]
【0057】
マスクの等価呼吸開口(EBO)を、マスクの発泡体層を貫通する代表的な呼吸開口の水力半径(動水半径)Rをまず見出すことにより測定した。開口の水力半径は、開口の面積を開口周縁長さで除することにより計算した。代表的開口の面積および長さは、光学的コンパレータ(ユニオンオプティカル社(Union Optical Co., LTD)DZ2高倍率ズーム顕微鏡およびメディアサイバネティクス社(Media Cybernetics, Inc.)のイメージプロ(登録商標)プラス(Image−ProR Plus))を用いて測定した。マスクにおいて、複数の呼吸開口構成を用いた場合、各代表的開口の水力半径は、R(n)(nは特定の開口寸法を表す)として決定される。このときEBOは、以下のように計算される。

(式中、aは特定の寸法nの代表的開口の数であり、R(n)は代表的開口nの水力半径)水力半径がすべて同じn個の開口を有するマスクに関して、EBOは、

として計算されるであろう。
水力半径の値は、センチメートル(cm)単位で与えられ、EBOの計算値は、平方センチメートル(cm)として与えられる。
[実施例1]
【0058】
本発明のカップ形状のマスクは、2つの基本的要素と、構造発泡体成形層と、ろ過用予成形品とから作製される。構造発泡体成形層は、2層の材料、内側コンプライアント層と外側構造層とをまず積層することにより作製した。外側構造層に用いた材料は、韓国デジョン(Daejeon)市、ヨンボケミカル(Yongbo Chemical)により供給された独立気泡ポリプロピレン発泡体、エピロン(EPILON)(登録商標)Q1001.1 Wであった。外側構造層の見かけ密度および圧縮強さは、それぞれ、0.1013g/cmおよび1.14kPaであった。内側コンプライアント層材料は、韓国デジョン市、ヨンボケミカルから入手可能な独立気泡ポリエチレン発泡体、エピロン(登録商標)R3003 Wであった。発泡体の見かけ上の密度および圧縮強さは、それぞれ、0.0322g/cmおよび0.32kPaであった。層の積層は、フレーム積層法により実施した。
【0059】
フレーム積層は、発泡体の表面がおよそ200℃まで加熱される連続ロール積層プロセスにおいて、外側構造発泡体層の一面を制御された炎に曝露するものであった。ラミネータ上のロールから引き出されたコンプライアント発泡体層は、制御されたライン張力の下で、加熱された発泡体表面と、直接、接触せしめられた。さらに、これらの層は、接近角度45度で直径20cmのローリングマンドレルに通された。ライン張力およびローリングマンドレルとの接触の結果としての圧縮の下で、加熱された発泡体を冷却すると、各層の界面において粘着が生じた。ラミネータのライン張力および速度はそれぞれ、3ニュートン毎センチメートル(ライン幅)および15.1メートル毎分であった。積層構造には、ルールダイを用いて、積層体を貫通してカットされた呼吸開口のパターンを穿孔した。
【0060】
呼吸開口は、側長10mmの45度斜方形状の孔であった。マスクの2次元形状を全体的に構成する領域にわたって、45個の均等に離間した開口を形成した。孔のパターンをカットした長円形の領域は、大径が15cm、小径が12cm、面積が141cmであった。マスクのノーズブリッジとなるであろう付近においては、積層体はカットしないままとした。打抜き発泡体積層シートを、成型ステップによりマスクの構造カップ形状の構成に成形した。
【0061】
カットされた積層体の成型は、嵌合する雌型および雄型半体の間で積層された層を押圧することにより行なった。略半球形のマスク成形雌型は、深さ約55mm、体積が310cmであり、型の雄部品は、型の雌半体を忠実に反映したものであった。成型ステップにおいては、型の雄および雌の半体をおよそ105℃まで加熱した。次に、マスクのノーズピースが適切な向きに向くように、積層シートを型の半体の間に配置し、型を隙間2.5mmまで閉じた。およそ10ないし15秒の休止時間を置いた後、型を開いて構造カップを取り出した。成型ステップの後、マスクの代表的な呼吸孔は大きさがほぼ均一であり、Rが0.3cmと測定された。
【0062】
マスクのろ過要素は、予成形品として構成し、これをカップ状成形層に装着した。予成形品は、フィルタと保護カバーウエブとを共に層として構成し、これら層を通じて、成形縁部を超音波溶接することにより作製した。予成形品を構成するため、198cm×202cmの材料シートをカバーウエブ/フィルタウエブ/フィルタウエブ/カバーウエブの順で層として形成した。各層を通じて放物曲線を付加し、その結果得られた形状は、構造発泡体カップの円弧状断面に類似したものであった。予成形品に用いたカバーウエブは、韓国ソウルの東レ尖端素材株式会社(Toray Advanced Material Korea Inc.)から入手可能な30グラム毎平方メートル(gsm)のポリプロピレンスパンボンド、ライブセン(LIVESEN(登録商標))30 SSであった。使用したフィルタウエブは、デーヴィス,C.N.(Davis, C. N.)、「気中浮遊粉塵粒子の分離」、機械技術者協会(ロンドン)、会報1B(1952)に記載の方法に従って計算されるように、有効繊維直径(FED)が9ミクロン(μm)の110グラム毎平方メートル(gsm)ブローンマイクロファイバーウエブであった。マイクロファイバーウエブは、13.8パスカル(Pa)の圧縮荷重をかけた場合の厚さが1.7ミリメートル(mm)であった。マイクロファイバーウエブは、インダストリアルエンジニアリングケミストリー48巻、1342頁以下(1956年)のウェンテ、ヴァン・A.「超微細熱可塑性繊維」において一般に教示された方法を用い、ポリプロピレン(テキサス州ヒューストン(Houston)、フィナ・オイル・アンド・ケミカル社(Fina Oil and Chemical Co.)からのフィナ(Fina)3857)から作製した。持続性帯電(エレクトレット)は、米国特許第6,119,691号に一般的に記述された方法により、マイクロファイバーウエブに誘導した。その結果得られたウエブの透過率は、3.2%、圧力低下は73.5Paであり、特性値Qは、0.46となった。実施例のマスクを形成するため、カバーウエブおよびフィルタ媒体の積層物である予成形品を、フィルタ媒体をカップに向けた状態で展開し、成形層上に配置した。そして組立品を超音波溶接を用いてマスクベースの周囲にエッジ封止し、予成形品を成形層にその外縁において融着させるとともに余分な材料を取り除いた。
【0063】
マスクを耐圧潰性(剛性)、粒子透過率および圧力低下に関して評価した。試験結果を、EBO値を含む表1に示す。
[実施例2]
【0064】
実施例1と比較して、積層物の穿孔領域に100個の穿孔があることを除き、実施例1と同様に実施例2を作製した。その結果得られた開口は、側長が5mmの45度斜方形状の孔であった。成型ステップの後、マスクの代表的な呼吸孔は、大きさがほぼ均一であり、Rが0.18cmと測定された。
【0065】
このマスクを耐圧潰性(剛性)、粒子透過率および圧力低下に関して評価した。試験結果を、EBO値を含む表1に示す。
[実施例3]
【0066】
コンプライアント層としてサーマルボンド不織ウエブを用いたことを除いて、実施例1と同様に実施例3を作製した。4デニール(dpf)低融点繊維(韓国ソウル、ヒューヴィス社(Huvis Corp.)の51mmLMF 4 DE’)と6デニールポリエステルステープル繊維(韓国ソウル、ヒューヴィス社の38mmRSF 6 DE’)とのブレンドを用い、「ランド・ウエバー(Rando Webber)」エアレイ機(ニューヨーク州マセドン(Macedon)、ランド・マシーン社(Rando Machine Corporation)から入手可能)により、200gsm不織ウエブを作製した。ブレンドの組成は、4dpf繊維が70重量パーセント、6dpf繊維が30重量パーセントであった。目の粗いウエブを、120℃で30秒間オーブンに通してサーマルボンディングさせた。
【0067】
このマスクを耐圧潰性(剛性)、粒子透過率および圧力低下に関して評価した。試験結果を、EBO値を含む表1に示す。
[実施例4]
【0068】
実施例2の呼吸開口パターンを用いたことを除き、実施例3と同様に実施例4を作製した。
【0069】
このマスクを耐圧潰性(剛性)、粒子透過率および圧力低下に関して評価した。試験結果を、EBO値を含む表1に示す。
[比較例1]
【0070】
比較例1を、実施例1で記述したような方式で、同じろ過層および従来の不織内側層を用いて作製および試験を行なった。
【表1】

【0071】
実施例のマスクは、一般に、比較例より高い圧力低下を示したが、着用が快適であり、顔面との適合性が良好となることが分かった。また、成形層は、マスク全体の形態を保持する一方、内側コンプライアント層は、鼻および顎領域周囲に合致して適合性を高めることが確かめられた。呼吸開口の60%までが発泡体により閉塞されている場合でも、マスクの呼吸抵抗は、特に2つの発泡体層を用いたサンプルにおいて非常に低くなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ハーネスと、
(b)マスク本体であって、
(i)ろ過構造と、
(ii)複数の流体透過性開口を配置した独立気泡発泡体層を備えるカップ状成形層であって、ろ過構造が成形層上に同一の広がりをもって配置され、成形層の全表面積の少なくとも10%に開口が存するカップ状成形層とを備える、マスク本体と、を備えた、ろ過面体マスク。
【請求項2】
上記成形層は、第1の発泡体層と、第2の発泡体層とを備え、
第1の発泡体層は、顔面接触層であり且つ第2の発泡体層よりも密度が低い、請求項1記載のろ過面体マスク。
【請求項3】
上記第1の発泡体層の見かけ上の密度は、0.02〜0.1であり、
上記第2の発泡体層の見かけ上の密度は、0.05〜0.5であり、
第1の発泡体層の密度は、第2の発泡体層の密度より少なくとも30%低い、請求項2記載のろ過面体マスク。
【請求項4】
上記マスク本体は、ノーズフォームおよびエラストマーフェイスシールを欠いている、請求項3記載のろ過面体マスク。
【請求項5】
第2の独立気泡発泡体層の圧縮強さは、0.25〜3KPaである、請求項2記載のろ過面体マスク。
【請求項6】
上記流体透過性開口は、上記成形層の全表面積の35〜50%を占める、請求項1記載のろ過面体マスク。
【請求項7】
上記流体透過性開口により、上記成形層のEBOが30〜70cmとなる、請求項5記載のろ過面体マスク。
【請求項8】
上記開口により、上記成形層のEBOが40〜60cmとなる、請求項5記載のろ過面体マスク。
【請求項9】
上記ろ過構造は、上記マスク本体の少なくとも全周縁に沿って上記成形層に接合される、請求項1記載のろ過面体マスク。
【請求項10】
上記マスク本体の剛性は、少なくとも2ニュートンである、請求項1記載のろ過面体マスク。
【請求項11】
上記マスク本体の剛性は、少なくとも2.5ニュートンである、請求項1記載のろ過面体マスク。
【請求項12】
マスクの着用時、上記成形層が上記マスク本体の周縁において着用者の顔と接触するように、上記ろ過構造がマスク本体上に位置決めされる、請求項1記載のろ過面体マスク。
【請求項13】
上記成形層は、内側コンプライアント不織ウエブ層と外側独立気泡発泡体層とを備え、当該内側の層と外側の層とが互いに接合されている、請求項1記載のろ過面体マスク。
【請求項14】
上記開口は、上記成形層の全表面積の30〜60%を占める、請求項1記載のろ過面体マスク。
【請求項15】
上記開口は、上記成形層の全表面積の35〜50%を占める、請求項1記載のろ過面体マスク。
【請求項16】
上記開口は、上記成形層の頂点領域および中間領域に存する、請求項1記載のろ過面体マスク。
【請求項17】
上記開口は、周縁領域にも配置されている、請求項16記載のろ過面体マスク。
【請求項18】
上記第1の発泡体層の圧縮強さは、0.25〜1KPaであり、第2の発泡体層の圧縮強さは、0.25〜3KPaである、請求項2記載のろ過面体マスク。
【請求項19】
第1の発泡体層の圧縮強さは、0.3〜0.5KPaであり、第2の発泡体層の圧縮強さは、1〜2.5KPaである、請求項2記載のろ過面体マスク。
【請求項20】
(a)ハーネスと、
(b)マスク本体であって、
(i)ろ過構造と、
(ii)複数の流体透過性開口を配置した独立気泡発泡体層を備えるカップ状成形層であって、ろ過構造が成形層上に同一の広がりをもって配置され、開口が当該成形層の全表面積の30〜60%に存すると共に、そのEBOが30〜70cmであるカップ状成形層とを備える、マスク本体と、を備えた、ろ過面体マスクにして、
上記成形層は、第1の発泡体層と第2の発泡体層とを備え、
第1の発泡体層は、顔面接触層であり且つ第2の発泡体層よりも密度が低い、ろ過面体マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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