説明

発泡体用樹脂組成物および樹脂架橋発泡体の製造方法

【課題】樹脂架橋発泡体であって、黄色度が低く、白色度が高く、気泡状態が均一かつ表面外観に優れた発泡体を得ることができる発泡体用樹脂組成物、及び樹脂架橋発泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリエチレン系樹脂(A)と、アゾジカルボンアミド(B)とを含む樹脂組成物であり、該樹脂組成物の合計100質量%において、該ポリエチレン系樹脂(A)を50質量%以上99.5質量%以下含有し、該ポリエチレン系樹脂(A)100質量部に対し、該アゾジカルボンアミド(B)を0.5質量部以上10質量部以下含有し、該アゾジカルボンアミド(B)が、以下の条件(1)及び(2)を満たすことを特徴とする、発泡体用樹脂組成物。
(1):分解温度が197〜207℃
(2):190℃における発生ガス速度が20〜50ml/(分・g)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色度が高く、表面外観に優れた発泡体を得ることができる発泡体用樹脂組成物、及び樹脂架橋発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂架橋発泡体は、一般的に柔軟性、軽量性、緩衝性、断熱性等の特徴を活かし、テープ基材、パイプカバー、断熱材、パッキング材等の様々な用途に展開されてきた。これらの用途の中でも特に食品や化粧品等の容器のフタに用いられるパッキング材は、表面に凹凸が無く滑らかな外観と高い白色度を重視する場合が多い。
【0003】
しかしながら、ポリエチレン系樹脂架橋発泡体は、黄色度の高いアゾジカルボンアミドを発泡剤として使用しなければならず、製造において未分解の発泡剤が残ると黄色度が高い発泡体となる。そこで、白色度の高い発泡体を得るために様々な手法の検討が行われてきた。例えば、特許文献1では、白色系の顔料としてチタン系化合物と群青とを配合し、発泡体を着色する方法が記載されている。また、特許文献2では、N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミンを配合し、その高い発熱量でアゾジカルボンアミドの分解速度を高める方法が記載されている。また、特許文献3では、直鎖状高級脂肪酸マグネシウム塩または直鎖状高級脂肪酸カルシウム塩、酸化亜鉛または直鎖状高級脂肪酸亜鉛塩を使用し、発泡剤の分解を促進する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−184032号公報
【特許文献2】特開平11−228725号公報
【特許文献3】特開2004−123832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1に記載の方法は、発泡体の黄色着色を目立たなくする効果はあるものの、その効果は不十分であり、チタン系化合物の色と、さらに別の原料に由来する群青色の組合わせにより色が重なって明るくならず、安定した白色外観を出すことは非常に困難である。
【0006】
特許文献2に記載の方法では、N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミンの高い発熱量によりアゾジカルボンアミドの分解速度を高めることが出来るが、その爆発的な分解により発火の懸念が極めて高く、また、急激な発泡を安定させて製造することが困難である。
【0007】
また、特許文献3に記載の方法では、直鎖状高級脂肪酸マグネシウム塩または直鎖状高級脂肪酸カルシウム塩、酸化亜鉛または直鎖状高級脂肪酸亜鉛塩を使用することで、低温での発泡を促進し黄色度を下げるのに有効であるが、脂肪酸金属が表面にブリードして表面外観を悪化させる場合や、樹脂組成物を溶融混練しシート成形するための加熱で発泡剤が分解を開始してしまい、製造できなくなる懸念がある。
【0008】
そこで本発明では、黄色度が低くかつ白色度が高く、凹凸が少なく光沢感のある表面外観に優れた特性を持ち、かつ、柔軟性、軽量性、断熱性、良成型性、密閉性を有している発泡体用樹脂組成物および樹脂架橋発泡体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、本発明は下記の発泡体用樹脂組成物および樹脂架橋発泡体の製造方法が有用であることを見出した。
(1)ポリエチレン系樹脂(A)と、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(B)とを含む樹脂組成物であって、該樹脂組成物の合計100質量%において、該ポリエチレン系樹脂(A)を50質量%以上99.5質量%以下含有し、該ポリエチレン系樹脂(A)100質量部に対し、該アゾジカルボンアミド(B)を0.5質量部以上10質量部以下含有し、該アゾジカルボンアミド(B)が、以下の条件(1)及び(2)を満たすことを特徴とする、発泡体用樹脂組成物。
【0010】
(i):分解温度が197〜207℃
(ii):190℃における発生ガス速度が20〜50ml/(分・g)
(2)前記ポリエチレン系樹脂(A)100質量部に対し、フェノール系酸化防止剤(E)0.01質量部以上0.5質量部以下および/またはイオウ系酸化防止剤(F)を0.01質量部以上0.5質量部以下含むことを特徴とする、(1)記載の発泡体用樹脂組成物。
(3)前記フェノール系酸化防止剤(E)が、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、及び1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、(2)記載の発泡体用樹脂組成物。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の発泡体用樹脂組成物を、架橋、発泡させることを特徴とする、樹脂架橋発泡体の製造方法。
(5)発泡体のYI値が3以上12以下であることを特徴とする(4)に記載の樹脂架橋発泡体の製造方法。
(6)発泡体がパッキング剤用途に用いられることを特徴とする(4)または(5)に記載の樹脂架橋発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、YI値(イエローインデックス)が低くかつ白色度が高く、滑らかで美しい表面外観に優れたポリエチレン系樹脂架橋発泡体を得ることができる。このような特性を活かすことで、本発明から得られるポリエチレン系樹脂架橋発泡体は、電子・電気部品、時計、文房具等の梱包緩衝材、粘着テープの基材等に使用することができ、特に食品、化粧品等の容器のふたに用いられるパッキング材として好適に使用することができる。また、本発明から得られるポリエチレン系樹脂架橋発泡体は、柔軟性、圧縮回復性、断熱性、良成型性といった観点においても優れた発泡体である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を具体的に説明する。本発明の発泡体用樹脂組成物は、ポリエチレン系樹脂(A)と、アゾジカルボンアミド(B)を含む樹脂組成物であり、該樹脂組成物100質量%において、該ポリエチレン系樹脂(A)を50質量%以上99.5質量%以下含有し、該ポリエチレン系樹脂(A)100質量部に対し、該アゾジカルボンアミド(B)を0.5質量部以上10質量部以下含有し、該アゾジカルボンアミド(B)が、以下の条件(1)及び(2)を満たすことを特徴とする。
【0013】
(1):分解温度が197〜207℃
(2):190℃における発生ガス速度が20〜50ml/(分・g)。
【0014】
本発明の発泡体用樹脂組成物を構成する樹脂組成は、ポリエチレン系樹脂(A)を含む。ポリエチレン系樹脂(A)とは、エチレンを主体として重合した樹脂のことであり、例えば、高密度ポリエチレン(以下、HDPEと略すことがある。括弧は以下同様。)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、高溶融張力ポリエチレン(HMS−PE)、エチレンメチルアクリルアート共重合体(EEA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)などに代表されるポリエチレン系樹脂などを挙げることができる。本発明の発泡体用樹脂組成物は、一種類のみではなく、二種類以上のポリエチレン系樹脂(A)を混合しても良い。
【0015】
本発明に用いる発泡剤としてのアゾジカルボンアミド(B)は、分解温度が197〜207℃の範囲であることが好ましい。更に好ましいのは分解温度が200〜205℃である。アゾジカルボンアミド(B)の分解温度が197℃未満であると、ポリエチレン系樹脂シート成形時に発泡剤が一部分解する場合があり好ましくない。また、207℃より高いと発泡温度を高温に設定するため樹脂の劣化が生じる場合があり好ましくない。
【0016】
また、アゾジカルボンアミド(B)は190℃における発生ガス速度が20〜50ml/(分・g)が好ましく、更に好ましくは190℃における発生ガス速度が30〜45ml/(分・g)である。190℃における発生ガス速度が20ml/(分・g)未満であると、アゾジカルボンアミド(B)の残渣が多くなり十分な白色度を得られない場合があり好ましくない。また、190℃における発生ガス速度が50ml/(分・g)を超えると、急激に発生ガスが生じるため発泡時にシワが発生し良好な外観性を有する樹脂架橋発泡体を得ることが困難となる場合があり好ましくない。
【0017】
本発明におけるアゾジカルボンアミドは、ヒドラゾジカルボンアミドを、酸化剤を用いて酸化する方法、電解酸化する方法等により製造される。酸化剤としては、従来公知の酸化剤を用いることができ、例えば、塩素ガス、次亜塩素酸ソーダ、過塩素酸等の塩素化合物、過酸化水素等の過酸化物、臭素等の臭化物等が一般に用いられる。酸化反応は、ヒドラゾジカルボンアミドに水を加えスラリー状とし、攪拌下で所定温度に達したのちに少量ずつ酸化剤を投入し酸化反応させる。酸化剤の投入が終了し、反応の終了後、生成物を固液分離し、水洗、乾燥してアゾジカルボンアミドを得る。この酸化反応における温度、反応時間、攪拌速度等の条件により、アゾジカルボンアミドの純度、粒子径を調整することができる。
アゾジカルボンアミド(B)の分解温度は純度が高く粒子径が大きいと高く、また、発生ガス速度は平均粒子径が小さく粒度分布がシャープなほど速い。
【0018】
本発明の発泡体用樹脂組成物の樹脂組成比率はポリエチレン系樹脂(A)100質量部に対し、アゾジカルボンアミド(B)を0.5質量部以上10質量部以下の範囲であることが好ましい。更に好ましくはポリエチレン系樹脂(A)100質量部に対し、アゾジカルボンアミド(B)を0.5質量部以上5質量部以下である。アゾジカルボンアミド(B)が0.5質量部未満では緩衝性や軽量性といった発泡体の特徴が得られない場合があり、10質量部より多くなるとアゾジカルボンアミド(B)が樹脂架橋発泡体中で残渣となり十分な白色度を得られない場合があり、また、食品・化粧品等のパッキング材用途では内容物への影響が懸念されるため好ましくない。
【0019】

本発明の発泡体用樹脂組成物は、樹脂の酸化劣化を抑制するためにフェノール系酸化防止剤(E)及び/またはイオウ系酸化防止剤(F)が好適に添加することができる。フェノール系酸化防止剤(E)及び/またはイオウ系酸化防止剤(F)の含有量は、特に規定されるものではないが、ポリエチレン系樹脂(A)に100質量部に対し、フェノール系酸化防止剤(E)0.01質量部以上0.5質量部以下及び/またはイオウ系酸化防止剤(F)0.01質量部以上0.5質量部以下であることが好ましい。更に好ましくは、ポリエチレン系樹脂(A)に100質量部に対し、フェノール系酸化防止剤(E)0.02質量部以上0.3質量部以下及び/またはイオウ系酸化防止剤(F)0.02質量部以上0.3質量部以下である。0.01質量部未満では白色度が高くなるが樹脂の酸化劣化が促進され安定した発泡と優れた表面外観の樹脂架橋発泡体を得られない場合がある。また、0.5質量部を超えると分解耐性と表面外観の優れた安定した樹脂架橋発泡体を得ることが可能であるが、ピンキング等による変色現象が発生し、白色度が低くなる場合がある。
【0020】
本発明の発泡体用樹脂組成物に混合させるフェノール系酸化防止剤(E)は1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン(融点:186℃)、1,1-ビス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェミル)ブタン(融点:210℃)、及び1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(融点:244℃)からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。これらのフェノール系酸化防止剤は、その融点がポリエチレン系樹脂(A)の融点である高々150℃より30℃以上高いため、本発明の発泡体用樹脂組成物を押出機等で溶融混練させた時に該フェノール系酸化防止剤が溶融せず、成形されたシート表面へのブリードアウト等による外観欠点を抑制するため、好適に用いることができる。
【0021】
本発明の発泡体用樹脂組成物は、白色度を高めるために二酸化チタン及び群青を含有することが好ましい。二酸化チタンとしては、結晶構造によりルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、ブルッカイト型二酸化チタンが挙げられる。本発明の発泡体用樹脂組成物に用いられる二酸化チタンとしては、いずれの結晶構造の二酸化チタンであっても特に限定されないが、特に好ましいのは最安定構造であるルチル型二酸化チタンである。群青とは、Na(6〜8)Al6Si624(2〜4)の構造式を持つアルミニウム・ナトリウム・ケイ酸塩に硫化物イオン・硫酸イオンからなる無機顔料である。
【0022】
本発明の発泡体用樹脂組成物に混合させる二酸化チタン及び群青は、該ポリエチレン系樹脂(A)100質量部に対し、二酸化チタン及び群青を0.5質量部以上5質量部以下含み、かつ二酸化チタンと群青の質量比は(二酸化チタン):(群青)=100:1〜100:10であることが好ましい。該ポリエチレン系樹脂(A)に混合させる二酸化チタン及び群青が0.5質量部以上であると該ポリエチレン系樹脂(A)との混練時に二酸化チタン及び群青が均等に分散するため、樹脂架橋発泡体の白色度が安定し好ましい。該ポリエチレン系樹脂(A)に混合させる二酸化チタン及び群青が5質量部以下であれば、二酸化チタン及び群青が凝集せず、凝集物による粗大な気泡の発生が見られないため、好ましい。また、二酸化チタンと群青の質量比率が(二酸化チタン):(群青)=100:(1以上)であると、群青によるYI値低下に有意な効果が得られる。二酸化チタンと群青の質量比率が、(二酸化チタン):(群青)=100:(10以下)であると、群青の青みが強くなり過ぎず白色度が高くなるため、好ましい。
【0023】
本発明の発泡体用樹脂組成物には、樹脂架橋発泡体の白色度を低下させない限り、必要に応じて無機充填剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンモニア吸収剤等の公知の添加剤が配合されていても良い。
【0024】
本発明でいうYI値(イエローインデックス)とは「紙・板紙およびパルプ−ISO白色度拡散青色光反射率の測定方法JIS P8148(改正2001/09/20)」と「紙・板紙およびパルプの拡散反射率係数の測定方法JIS P8152(制定2005/07/20)」に準拠した分光白色度計・色差計を用いて測定する。分光白色度計・色差計は、理想上の白色(完全拡散反射面)のYI値がゼロであり、この白色からの距離をYI値とし、白色から黄方向の色相ズレはプラス、青方向色相ズレはマイナスの値で示し、2度視野C光源のみで定義されているものをいう。また、ある波長の光の反射度または吸光度を測定してCIE表示系の3つの刺激値X、Y、Zの数値、若しくはこの数値から求める色度図の座標x、y、zを測定できるもの、またはL.a.b色立体のL、a,b値を測定できるものであれば、任意のものを使用することができる。ここで、本発明においては、これらから直接または間接的に求められるYI値またはb値を測定する。これらの測定方法を用いた場合、本発明の発泡体におけるYI値は3〜12、b値は6.5以下であることが好ましい。更に好ましくはYI値4〜9、b値は5以下であることが好ましい。YI値が3より小さいと樹脂架橋発泡体を発泡時に過剰な加熱が必要となり、表面の平滑性を損なう場合があるため好ましくない。また、YI値が12よりも大きいとパッキング材用途として好まれない場合がある。
【0025】
本発明の樹脂架橋発泡体の製造方法は、例えばポリエチレン系樹脂(A)とアゾジカルボンアミド(B)を含有させた樹脂組成物をヘンシェルミキサー、タンブラー等の混合機器を用いて均一に混合し、押出機、加圧式ニーダー等の溶融混練機器を用いて溶融混練しT型口金にてシート形状に成形した後、電離性放射線を照射し架橋させる。該シートを熱媒となる塩浴上に浮かべる方法や、熱風等の雰囲気下中に投じて昇温する方法によりアゾジカルボンアミドを分解させて発泡させることで架橋発泡体を製造するなど公知の方法を用いることが出来る。
【0026】
本発明で得られる樹脂架橋発泡体は、電離性放射線架橋方法で架橋構造を形成していることが好ましく例示される。ここでいう電離性放射化架橋としては、例えばα線、β線、γ線、電子線、中性子線などが挙げられる。本発明で得られる樹脂架橋発泡体に電離放射線架橋方法を用いるのは、樹脂架橋発泡体の表面外観をより良好にする観点からの適用である。さらに、本発明で得られる樹脂架橋発泡体は、ゲル分率5〜80%であることが好ましく、さらに好ましくは15〜50%である。ゲル分率が5%未満では成形時に偏伸びして部分的に発泡体が破壊する場合や、発泡体の気泡径が安定しないために起こる表面外観が悪くなる場合がある。また、ゲル分率が80%を超えると引張伸びが小さく深入り形状の成形が出来ない場合や、発泡時に発泡体の配向が極端に強くなり安定して発泡体を製造することが難しくなる場合がある。尚、ゲル分率を5〜80%に制御するには、電離性放射線の照射量や強度を調整することで可能である。
【0027】
ここで示すゲル分率とは、ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体を、約0.5mm四方に切断し、約100mgを0.1mgの単位で秤量する。130℃のテトラリン200mlに3時間浸漬した後、100メッシュのステンレス製金網で自然濾過し、金網上の不溶解分を1時間120℃下で熱風オーブンにて乾燥する。次いで、シリカゲルを入れたデシケータ内で10分間冷却し、この不溶解分の質量を精密に秤量し、以下の式に従ってゲル分率を百分率で算出する。
ゲル分率(%)={不溶解分の質量(mg)/秤量したポリオレフィン樹脂発泡体の質量(m g)}×100
本発明で得られる発泡体はパッキング材用途に好適に用いられる。ここでいうパッキング材とは管・容器の接合部などから液体や気体の漏れを防ぎ、食品・化粧品などを長期間保存するにあたり、酸素・水分・雑菌の流入を遮断するものをいう。
【0028】
本発明で得られる発泡体の厚さは0.5〜5.0mmで密度は50〜350kg/mであることがパッキング材用途として特に好ましい。
【実施例】
【0029】
実施例、比較例で用いた測定方法は以下の通りである。
【0030】
(1)厚さ (mm)
ISO1923(改正1981/09/01)「発泡プラスチック及びゴム一線寸法の測定方法」に準じて測定を行った値である。
【0031】
(2)密度 (kg/m
JIS K6767(改正1999/10/20)「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に準じて測定を行った値である。3回測定した値から求めた平均値を表記した。
【0032】
(3)分解温度 (℃)
発泡剤の分解温度は、BUCHI社製 融点測定器 B-540型を用い、装置の昇温プログラムを開始温度170℃、昇温速度5℃/min、終了温度215℃として、観察によりサンプルが分解し膨張した時の温度を測定した。サンプルは室温25℃、湿度50%の室内に24時間保存した発泡剤を使用した。
【0033】
(4)発生ガス量V2(ml/g)
試料0.50gを試験管に入れ、流動パラフィン(試薬一級)約10mlを加える。試験管は、190℃に加熱したシリコンオイルバスにて加熱し、発生したガスをガスビュレットで捕集する。ガスビュレットの水面と水準器の水面とを合わせ、ガスビュレットの水面位置のメモリを読み、発生ガス量(実測値)V1を測定する。
加熱1分後から20分後に発生したガスを、次式により発生ガス量V2として算出する。
【0034】
【数1】

【0035】
V1:実測値の発生ガス量 (ml)
V2:標準状態の発生ガス量 (ml/g)
P1:大気圧 (kPa)
P2:水温35℃の時の水の蒸気圧(kPa)
S :試料量 (g)。
【0036】
(5)発生ガス速度R(ml/(分・g))
(4)の発生ガス量の測定において、加熱1分後からの発生ガス量と時間をグラフにプロットし、このグラフを用い次式により単位質量当たりの発生ガス速度Rとして算出する。
【0037】
【数2】

【0038】
R :発生ガス速度 (ml/(分・g))
90 :発生ガス量の90% (ml/g)
10 :発生ガス量の10% (ml/g)
90 :発生ガス量が90%の時の時間(分)
10 :発生ガス量が10%の時の時間(分)。
【0039】
(6)気泡状態
得られた樹脂架橋発泡体の気泡状態を観察し、以下の通り3段階で評価した。尚、表面気泡の破れとは表面にある気泡に穴が開き凹んだ状態である。
○:長径2.0mm以上の気泡及び長径2.0mm以上の表面気泡の破れが1個未満/100m
△:長径2.0mm以上の気泡及び長径2.0mm以上の表面気泡の破れが1個以上/100m
×:ポリエチレン樹脂シートを作製した時に内部に連続して気泡がある。または、連続気泡化している。
【0040】
(7)表面外観
得られた樹脂架橋発泡体の表面状態を観察し、以下の通り3段階で評価を行った。尚、表面汚れとは発泡体に異なる物質が付着し、着色した状態である。
○:発泡する時に表面にシワが発生せず、かつ、長径2.0mm以上の表面の汚れが1個未満/100m
△:発泡する時に表面にシワが発生せず、かつ、長径2.0mm以上の表面の汚れが1個以上/100m
×:発泡する時に表面にシワが発生する。
【0041】
(8)YI値
色調・白色度は、JIS Z8722(改正2009/03/20)に準じて測定を行った。得られた樹脂架橋発泡体の表面について、スガ試験機のデジタル式黄色度計(SMカラーコンピューター)を使用した。
参考例
本発明の実施例に用いるアゾジカルボンアミド(B)の製造の一例を示す。
【0042】
500mlの水中にヒドラゾジカルボンアミド118gと臭化ナトリウム1.5gを加えスラリー状とし、反応温度を40℃に保ちつつ攪拌下に塩素ガスを送入した。塩素ガスは10g/時の速度で7時間行った。生成した黄色結晶であるアゾジカルボンアミドをろ別、水洗、乾燥して113g得た。こうして得られたアゾジカルボンアミドは、純度=99.7%、平均粒子径=17μm(尚、平均粒子径は、ホリバ製作所製 レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置 LA−750型にて測定した。)で、分解温度=203℃、発生ガス速度=40ml/(分・g)、ガス発生量=215ml/gであった。
【0043】
実施例1
表1に示した組成の通り、ポリエチレン系樹脂(A)(高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、MFR=5g/10分 尚、MFRとはJIS K7210(改正1999/10/20)に準じて、190℃で測定した数値のことである。密度=923kg/m 尚、密度とはJIS K7112(改正1999/05/20)「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」に準じて測定した数値のことである 。)100質量部、アゾジカルボンアミド(B)(分解温度=203℃、発生ガス速度=40ml/(分・g)、ガス発生量=215ml/g)3質量部をヘンシェルミキサーにて混合し、単軸押出機を用いて溶融押出し、Tダイを用いて厚さ=1.8mmのポリエチレン樹脂シートを作製した。
このシートに加速電圧800kV、30kGyの電子線を照射して架橋シートを得た後、220℃の塩浴上にて浮かべ、上方から赤外線ヒータで加熱し発泡した。その発泡体の表面を水洗して乾燥させ、厚さ=3.0mm、密度=125kg/m、YI値=7の樹脂架橋発泡体の長尺ロールを得た。
【0044】
実施例2〜9
原料樹脂組成を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に製造を行い、樹脂架橋発泡体の長尺ロールを得た。
【0045】
実施例10
表1に示した樹脂組成物をヘンシェルミキサーにて混合し、単軸押出機を用いて溶融押出し、Tダイを用いて厚さ=2.0mmのポリエチレン樹脂シートを作製した。
このシートに電子線を照射して架橋シートを得た後、250℃の縦型熱風発泡炉に連続的に投入し加熱、発泡させ、厚さ=3.0mm、密度=120kg/m、YI値=8の樹脂架橋発泡体の長尺ロールを得た。
【0046】
比較例1〜10
原料樹脂組成を表2のように変更した以外は、実施例1と同様に製造を行い、樹脂架橋発泡体の長尺ロールを得た。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
実施例及び比較例について、原料組成と評価結果を表に示した。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明で得られる発泡体は、高い白色度と滑らかで美しい表面外観を必要とする用途に用いられることが多く、特に食品、化粧品等の容器のふたに用いられるパッキング材として利用される可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂(A)と、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(B)とを含む樹脂組成物であって、該樹脂組成物の合計100質量%において、該ポリエチレン系樹脂(A)を50質量%以上99.5質量%以下含有し、該ポリエチレン系樹脂(A)100質量部に対し、該アゾジカルボンアミド(B)を0.5質量部以上10質量部以下含有し、該アゾジカルボンアミド(B)が、以下の条件(1)及び(2)を満たすことを特徴とする発泡体用樹脂組成物。
(1):分解温度が197〜207℃
(2):190℃における発生ガス速度が20〜50ml/(分・g)
【請求項2】
前記ポリエチレン系樹脂(A)100質量部に対し、フェノール系酸化防止剤(E)0.01質量部以上0.5質量部以下および/またはイオウ系酸化防止剤(F)を0.01質量部以上0.5質量部以下含むことを特徴とする請求項1記載の発泡体用樹脂組成物。
【請求項3】
前記フェノール系酸化防止剤(E)が、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、及び1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項2記載の発泡体用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の発泡体用樹脂組成物を、架橋、発泡させることを特徴とする樹脂架橋発泡体の製造方法。
【請求項5】
発泡体のYI値が3以上12以下であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂架橋発泡体の製造方法。
【請求項6】
発泡体がパッキング剤用途に用いられることを特徴とする請求項4または5に記載の樹脂架橋発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2012−224695(P2012−224695A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91740(P2011−91740)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】