説明

発泡体製造用のガス発生剤

【課題】本発明の目的は、アンモニアと窒素酸化物(NOx)との反応による窒素ガスへの変換効率を高め、余剰なアンモニアや窒素酸化物(NOx)の発生を抑制しつつ窒素ガスを発生できる、発泡体製造用のガス発生剤を提供することである。
【解決手段】(A)アンモニアガスを生成する含窒素化合物、(B)亜硝酸塩、及び(C)特定の複合金属水酸化物を含むガス発生剤は、アンモニアと窒素酸化物(NOx)との反応による窒素ガスへの変換効率を高め、余剰なアンモニアガスや窒素酸化物(NOx)ガスの発生を効果的に抑制しつつ、窒素ガスを発生できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂やエラストマー等の発泡体の製造に使用するガス発生剤に関する。詳細には、本発明は、余剰のアンモニアや窒素酸化物(NOx)の発生を効果的に抑制しつつ窒素ガスを発生でき、熱可塑性樹脂やゴム等の発泡体の製造に使用されるガス発生剤に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂やエラストマー等に気泡を形成させた発泡体は、防音性、断熱性、止水性、気密性、制振性、クッション性等の特性に優れており、様々な製品に使用されている。従来、熱可塑性樹脂やゴムなどの発泡体の製造には、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N'−ジニトロペンタメチレンテトラミン等の、窒素ガスを発生させる熱分解型化学発泡剤が使用されている。これらの熱分解型化学発泡剤は、熱分解温度で発泡作用が生じ、主に窒素ガスを発生させる。一方、窒素ガスを発生する熱分解型化学発泡剤では、窒素ガス以外にも、アンモニアや窒素酸化物(NOx)を生成させることが知られている。余剰なアンモニアや窒素酸化物(NOx)は、発泡倍率に寄与しないだけでなく、特有の臭気を呈したり環境に負荷を与えるため、これらの熱分解型化学発泡剤を使用する製造現場では、副生する物質に対する対策が必要とされている。
【0003】
これまでに、ポリオレフィン系樹脂発泡体に脱臭剤を配合することにより、上記熱分解型化学発泡剤から生じる臭気を除去できることが報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1の技術では、製造された発泡体の臭気をある程度抑制できても、発泡体の製造現場に放出される臭気を有効に抑制することができないという欠点がある。
【0004】
また、従来、熱分解によりアンモニアガスを生成する含窒素化合物、亜硝酸塩、及びハイドロタルサイトを含むガス発生剤が、窒素ガスを発生できることが報告されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の技術では、含窒素化合物の熱分解によって生じるアンモニアを、亜硝酸により窒素ガスに変換し、ハイドロタルサイトによって亜硝酸のアンモニアに対する反応性が高められている。しかしながら、特許文献2の技術でも、依然として余剰なアンモニアガス及び窒素酸化物(NOx)の発生抑制効果及びアンモニアと窒素酸化物(NOx)との反応による窒素ガスへの変換効率が十分ではなく、更なる改善が望まれる。
【0005】
このような従来技術を背景として、アンモニアガスを生成する含窒素化合物を使用する際に、余剰なアンモニアガスや窒素酸化物(NOx)ガスの発生を効果的に抑制することにより臭気及び環境への負荷を低減する技術及びアンモニアと窒素酸化物(NOx)との反応による窒素ガスへの変換効率向上を目的とした技術の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−60774号公報
【特許文献2】国際公開第2010/147067号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、熱可塑性樹脂やエラストマー等の発泡体の製造において、アンモニアガスを生成する含窒素化合物を使用する際の前記問題点を解消することを目的とする。即ち、本発明は、アンモニアと窒素酸化物(NOx)との反応による窒素ガスへの変換効率を高め、余剰なアンモニアや窒素酸化物(NOx)の発生を抑制しつつ窒素ガスを発生できる、発泡体製造用のガス発生剤を提供することを目的とする。なお、本発明において、「余剰なアンモニアや窒素酸化物(NOx)」とは、含窒素化合物の熱分解によって生じるアンモニアを窒素酸化物(NOx)により窒素ガスに変換させる際に、変換されずに残存するアンモニアガスや窒素酸化物(NOx)を指す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、(A)アンモニアガスを生成する含窒素化合物、(B)亜硝酸塩、及び(C)特定の複合金属水酸化物又はその加熱処理物を含むガス発生剤は、アンモニアと窒素酸化物(NOx)との反応による窒素ガスへの変換効率を高め、余剰なアンモニアガスや窒素酸化物(NOx)ガスの発生を効果的に抑制しつつ、窒素ガスを発生できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 発泡体の製造に使用されるガス発生剤であって、(A)アンモニアガスを発生する含窒素化合物、(B)亜硝酸塩、及び(C)下記化学組成式(1)で表される複合金属水酸化物又はその加熱処理物を含むことを特徴とする、ガス発生剤。
Zn2+Mg2+Al3+(OH(An−c/n (1)
[式中、a、b及びcは正数であって、a+b+c=1、且つ(a+b)/cは2.5以上且つ6.0以下であり、An−は、n価のアニオンであり、nは1又は2である。]
項2. 前記含窒素化合物(A)が、尿素結合を有する化合物、アゾジカルボンアミド、及びN,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1記載のガス発生剤。
項3. 前記亜硝酸塩(B)が、亜硝酸アルカリ金属塩である、項1又は2に記載のガス発生剤。
項4. 前記複合金属水酸化物(C)の化学組成式(1)において、a/bが0.05以上且つ50以下である、項1〜3の何れかに記載のガス発生剤。
項5. 前記含窒素化合物(A)が尿素であり、前記亜硝酸塩(B)が亜硝酸ナトリウムであり、前記複合金属水酸化物(C)が、化学組成式(1)において(a+b)/cが2.5以上且つ6.0以下、a/bが0.1以上且つ20以下であり、An−がCO2−である、項1〜4の何れかに記載のガス発生剤。
項6. 項1〜5の何れかに記載のガス発生剤、及び高分子材料を含むことを特徴とする、発泡用ポリマー組成物。
項7. 前記高分子材料が、熱可塑性樹脂又はエラストマーである、項6に記載の発泡用ポリマー組成物。
項8. 項6又は7に記載の発泡用ポリマー組成物を加熱処理する工程を含む、発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱可塑性樹脂やエラストマー等の発泡体を形成させる際に、アンモニアと窒素酸化物(NOx)との反応による窒素ガスへの変換効率を高め、余剰なアンモニアガスや窒素酸化物(NOx)ガスの発生を効果的に抑制できる。そのため、本発明によって、発泡体の製造現場におけるアンモニアガスや窒素酸化物(NOx)ガスの臭気対策等が不要となり、製造装置の簡易化が図られ、工業的に極めて有利になる。更に、本発明は、効率的に窒素ガスを発生させることができるので、均一で微細な気泡を発泡体に形成させることにも寄与し得る。
【0011】
なお、限定的な解釈を望むものではないが、本発明によって余剰なアンモニアガスや窒素酸化物(NOx)ガスの発生が効果的に抑制されて窒素ガスを効率的に発生できるのは、含窒素化合物の熱分解によって生成するアンモニアガスが、亜硝酸塩から生成する窒素酸化物(NOx)と反応して窒素ガスに変換され、このアンモニアガスと窒素酸化物(NOx)の反応を特定の複合金属水酸化物又はその加熱処理物が促進することにより、窒素ガスへの変換効率を高め、余剰なアンモニアガスや窒素酸化物(NOx)ガスの発生抑制と窒素ガスの発生促進を可能にしているためであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例2のガス発生剤で使用した複合金属水酸化物の加熱処理物について、X線回析を行った結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.ガス発生剤
本発明は、発泡体の製造に使用されるガス発生剤であって、(A)アンモニアガスを発生する含窒素化合物、(B)亜硝酸塩、及び(C)特定の複合金属水酸化物又はその加熱処理物を含むことを特徴とする。以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明で使用される含窒素化合物は、熱分解によりアンモニアガスを生成させるものである。当該含窒素化合物は、熱分解によって主に窒素ガスを生じさせ、少量のアンモニアガスが副生するものであってもよく、また熱分解によって主にアンモニアガスを生じさせるものであってもよい。好適な含窒素化合物として、熱分解によって主に窒素ガスを生じさせ、少量のアンモニアガスが副生するものが例示される。
【0015】
本発明で使用される含窒素化合物としては、例えば、130〜250℃程度で熱分解してアンモニアガスを生成させるものが挙げられ、具体的には、尿素、ヒドラゾジカルボンアミド、ビウレット、ウラゾール等の尿素結合(例えば−NHCONH、−NRCONH、−NHCONHR、−NRCONHR等;ここでRは任意の基、好ましくは有機基、更に好ましくは炭素数1〜10個の有機基、特に好ましくは炭素数1〜10個のアルキル基)を有する化合物の他、グアニジン類、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルヒドラジド、2,2’−アゾイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド等が挙げられる。また、これらの化合物は、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、シランカップリング剤等の表面処理剤によって表面処理され、吸湿性が改善されていてもよい。これらの含窒素化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
本発明のガス発生剤において、余剰なアンモニアガス及び窒素酸化物(NOx)ガスの発生を一層効率的に抑制するという観点から、含窒素化合物として好ましくは尿素結合を有する化合物、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、更に好ましくは尿素が挙げられる。
【0017】
本発明で使用される亜硝酸塩としては、亜硝酸のアルカリ金属塩、亜硝酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられ、具体的には亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸アンモニウム等が挙げられる。これらの亜硝酸塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本発明のガス発生剤において、余剰なアンモニアガス及び窒素酸化物(NOx)ガスの発生を一層効率的に抑制するという観点から、亜硝酸塩として好ましくは亜硝酸のアルカリ金属塩、更に好ましくは亜硝酸ナトリウムが挙げられる。
【0019】
本発明で使用される複合金属水酸化物は、下記化学組成式(1)で表されるものである。
Zn2+Mg2+Al3+(OH(An−c/n (1)
【0020】
化学組成式(1)中、a、b及びcは正数であって、a+b+c=1を満たす。
【0021】
化学組成式(1)中、cは、上記条件を満たす限り特に制限されないが、好ましくは0.14<c<0.29が挙げられる。
【0022】
また、化学組成式(1)において、(a+b)/cは2.5以上且つ6.0以下を充足する。このような範囲を充足することにより、余剰なアンモニアガス及び窒素酸化物(NOx)ガスの発生抑制が可能になる。より一層効果的に余剰なアンモニアガス及び窒素酸化物(NOx)ガスの発生を抑制するという観点から、(a+b)/cは、好ましくは3.0以上且つ6.0以下、更に好ましくは4.5以上且つ6.0以下であることが望ましい。
【0023】
また、化学組成式(1)において、a/bの値については、特に制限されないが、より一層効果的に余剰なアンモニアガス及び窒素酸化物(NOx)ガスの発生を抑制するという観点から、好ましくは0.05以上且つ50以下、更に好ましくは0.1以上且つ20.0以下、特に好ましくは3.5以上且つ5.0以下が挙げられる。
【0024】
化学組成式(1)中、An−は、n価のアニオン(nは1又は2)を示す。即ち、An−は、一価又は二価のアニオンのみからなるか、一価のアニオンと二価のアニオンの両者を含むものである。一価のアニオンとしては、例えばOH、Cl、NO、NO、HCO、F、Br、ジカルボン酸のモノカルボキシラートイオン、ドデシルベンゼンスルホン酸のスルホネートイオン等が例示できる。二価のアニオンとしては、例えばCO2−、SO2−、SO2−ジカルボン酸のジカルボキシラートイオン等が例示できる。An−として、好ましくは二価のアニオン、更に好ましくはCO2−が挙げられる。また、An−は、1種の一価又は二価のアニオンから構成されていても、また2種以上の一価及び/又は二価のアニオンから構成されていてもよい。上記複合金属水酸化物において、An−を1種の一価又は二価のアニオンから構成させる場合、含有させる目的アニオン以外に、製造条件に起因する微量の他のアニオンが含まれていてもよい。
【0025】
なお、上記複合金属水酸化物におけるZn2+Mg2+及びAl3+の含量は、ICP発光分光分析を用いて測定される。また、上記複合金属水酸化物におけるn価のアニオンAn−の種類と含量は、当該複合金属水酸化物に供した原料組成と、測定されたZn2+Mg2+及びAl3+の含量とを基に化学組成式(1)に当てはめて算出することができる。
【0026】
本発明のガス発生剤において、上記複合金属水酸化物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
上記複合金属水酸化物は、塩化亜鉛等の亜鉛塩と、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩と、塩化アルミニウム等のアルミニウム塩とを所定の比率でアルカリ環境下において反応させることによって調製することができる。かかる複合金属水酸化物の製造方法は公知であり、例えばLangmuir, 9, 1418−1422 (1993)の記載に従って調製することができる。また、これらの複合金属水酸化物は商業的に入手可能であり、簡便にはかかる複合金属水酸化物を使用することもできる。
【0028】
また、本発明において、上記複合金属水酸化物は、加熱処理に供されたものを使用することもできる。当該加熱処理の方法については、特に制限されず、乾熱処理、熱風処理、湿熱処理(水蒸気存在下での加熱処理)、熱水処理等のいずれであってもよい。加熱処理の方法の好適な例として、湿熱処理、及び熱水処理が挙げられる。また、当該加熱処理条件としては、熱処理の方法等に応じて適宜設定されるが、例えば、40〜1300℃、好ましくは100〜600℃で、0.1〜360時間、好ましくは0.5〜24時間での処理条件が例示される。これらの加熱処理の中でも、好適な一例として湿熱処理、とりわけ加圧条件下での湿熱処理が挙げられる。加圧条件下での湿熱処理の具体的条件としては、水蒸気の存在下で0.1〜20MPaの加圧下、100〜600℃で0.5〜24時間の処理が例示される。
【0029】
本発明のガス発生剤は、上記複合金属水酸化物及びその加熱処理物の中のいずれか1種が含まれていればよいが、これらの中の2種以上を含んでいてもよい。
【0030】
本発明のガス発生剤において、上記含窒素化合物、亜硝酸塩、及び複合金属水酸化物又はその加熱処理物の比率については、使用する各成分の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、上記含窒素化合物、亜硝酸塩、及び複合金属水酸化物又はその加熱処理物の総量100重量部当たり、上記含窒素化合物が0.5〜95重量部、好ましくは10〜70重量部、更に好ましくは20〜60重量部;上記亜硝酸塩が0.5〜70重量部、好ましくは20〜65重量部、更に好ましくは40〜60重量部;上記複合金属水酸化物又はその加熱処理物が0.1〜60重量部、好ましくは0.5〜50重量部、更に好ましくは1〜30重量部が挙げられる。
【0031】
また、本発明のガス発生剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、上記成分以外の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、上記含窒素化合物以外の発泡剤、発泡助剤等が挙げられる。上記含窒素化合物以外の発泡剤としては、具体的には、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム等の有機化学発泡剤;炭酸水素ナトリウム等の無機化学発泡剤;その他、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、しゅう酸第一鉄、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、過硫酸アンモニウム、アジド化合物、ナトリウムボロンハイドライド、シリコンオキシハイドライド等が挙げられる。また、発泡助剤としては、具体的には、ステアリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム等の脂肪酸塩、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ホウ砂、二塩基性亜リン酸鉛、水酸化カルシウム、グリセリン、ジエチレングリコール、ジブチルチンジマレート等が挙げられる。
【0032】
本発明のガス発生剤において、上記含窒素化合物、亜硝酸塩、及び複合金属水酸化物又はその加熱処理物の含有割合としては、特に制限されるものではないが、例えば、上記含窒素化合物、亜硝酸塩、及び複合金属水酸化物又はその加熱処理物の合計量が、本発明のガス発生剤の総量当たり、5〜100重量%、好ましくは20〜100重量%、更に好ましくは30〜100重量%となる範囲が例示される。
【0033】
本発明のガス発生剤の製造方法は、特に制限されるものではなく、一般的な混合法を用いることができる。具体的には、上記含窒素化合物、亜硝酸塩、複合金属水酸化物又はその加熱処理物、及び必要に応じて他の添加剤を、高速ミキサー、リボンブレンダー、コーンブレンダー等の混合装置を用いて、含窒素化合物の分解温度以下(例えば130℃以下)で1〜180分間程度の条件で、均一に分散するように混合すればよい。
【0034】
また、本発明のガス発生剤は、必要に応じて、粉砕処理に供され、微粉末化されていてもよい。本発明のガス発生剤の粒子径としては、例えば0.01〜100μm程度が挙げられ、このような粒子径に調整することにより、一層均一で微細な気泡を発泡体に形成させることが可能になる。
【0035】
本発明のガス発生剤は、樹脂やエラストマー等のポリマーの発泡成型に使用される。本発明のガス発生剤は、樹脂やエラストマー等のポリマーの発泡体の成型温度(例えば、130〜250℃)において、アンモニアから窒素ガスへの変換効率を高め、余剰なアンモニアガス及び窒素酸化物(NOx)ガスの発生を抑制して窒素ガスを効率的に発生でき、発泡体に均一で微細な気泡を形成させることができる。
【0036】
以下に、本発明のガス発生剤を使用した発泡体の製造法について説明する。
【0037】
2.発泡用ポリマー組成物及び発泡体
本発明の発泡用ポリマー組成物は、上記ガス発生剤、及び高分子材料を含むことを特徴とする。本発明において、「発泡用ポリマー組成物」とは、未発泡の状態であって発泡体成型に供される原料組成物である。
【0038】
本発明の発泡用ポリマー組成物において、上記ガス発生剤の含有割合については、当該ガス発生剤の組成、含有する高分子材料の種類等に応じて適宜設定される。例えば、当該発泡用ポリマー組成物の総量当たり、上記含窒素化合物、亜硝酸塩、及び複合金属水酸化物又はその加熱処理物の合計量が1〜30重量%、好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは1〜10重量%を充足する範囲が挙げられる。
【0039】
本発明の発泡用ポリマー組成物に含まれる高分子材料は、発泡体のベースポリマーとして使用できるものである限り特に制限されないが、具体的には、熱可塑性樹脂、エラストマーが挙げられる。
【0040】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等が挙げられる。
【0041】
また、エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、エチレン酢酸ビニル共重合ゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0042】
本発明の発泡用ポリマー組成物において、上記高分子材料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
本発明の発泡用ポリマー組成物における上記高分子材料の含有割合については、特に制限されないが、例えば、当該発泡用ポリマー組成物の総量当たり、1〜99重量%、好ましくは1〜95重量%、更に好ましくは1〜90重量%が挙げられる。
【0044】
本発明の発泡用ポリマー組成物は、高分子材料として熱可塑性樹脂を使用する場合には、架橋剤が含まれていてもよい。架橋剤としては、具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
本発明の発泡用ポリマー組成物において、熱可塑性樹脂と架橋剤を含有させる場合、これらの比率については特に制限されるものではないが、例えば、熱可塑性樹脂100重量部当たり、架橋剤が0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜1.5重量部配合される。
【0046】
また、本発明の発泡用ポリマー組成物は、高分子材料としてエラストマーを使用する場合には、加硫剤が含まれていてもよい。加硫剤としては、具体的には、硫黄、過酸化物等が挙げられる。これらの加硫剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
本発明の発泡用ポリマー組成物において、エラストマーと加硫剤を含有させる場合、これらの比率については特に制限されるものではないが、例えば、エラストマー100重量部当たり、加硫剤が0.1〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部配合される。
【0048】
また、上記加硫剤を使用する場合には、必要に応じて、加硫助剤を含んでいてもよい。加硫助剤としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ステアリン酸、ジベンジルチアゾルジスルフィド等が挙げられる。
【0049】
本発明の発泡用ポリマー組成物は、上記成分の他に、必要に応じて、補強材、充填剤、着色剤、軟化剤、活性剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0050】
補強材としては、具体的には、乾式シリカ、湿式シリカ、カーボンブラック、微粉ケイ酸、ケイ酸塩等が挙げられる。
【0051】
充填剤としては、具体的には、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、コロイド炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、マイカ、セリサイト、長石、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカ、ベントナイト等が挙げられる。
【0052】
本発明の発泡用ポリマー組成物は、上記ガス発生剤、高分子材料、及び必要に応じて他の添加剤を、当該ガス発生剤に含まれる含窒素化合物の分解温度未満(例えば、130℃)で溶融混合することにより調製される。
【0053】
本発明の発泡用ポリマー組成物を使用して発泡体を製造するには、発泡用ポリマー組成物を上記ガス発生剤に含まれる含窒素化合物の分解温度以上の温度条件で加熱処理を行えばよい。かかる加熱処理の具体的条件については、上記ガス発生剤に含まれる含窒素化合物の種類等に応じて適宜設定されるが、例えば、40〜400℃、好ましくは80〜300℃、更に好ましくは100〜250℃が例示される。
【0054】
本発明の発泡用ポリマー組成物を使用して発泡体を製造する方法は、一般的な加熱発泡の方法であればよく、使用する高分子材料の種類、使用するガス発生剤の組成、他の成分の種類等に応じて適宜設定すればよい。本発明の発泡用ポリマー組成物を加熱発泡させる方法として、具体的には、加圧発泡法、常圧発泡法、押出発泡法、射出発泡法等が挙げられる。
【0055】
例えば、本発明の発泡用ポリマー組成物が、上記ガス発生剤と熱可塑性樹脂と架橋剤とを含む場合には、厚み5〜30mmの金型内を当該発泡用ポリマー組成物で満たし、プレス機で145〜170℃及び150kg/cmの条件下、5〜60分間加圧して発泡及び架橋を行うことにより発泡体を製造する方法が例示される。
【0056】
また、例えば、本発明の発泡用ポリマー組成物が、上記ガス発生剤とエラストマーと加硫剤とを含む場合には、当該発泡用ポリマー組成物を70〜90℃程度に加熱した押出機へ投入して未加硫成形体を調製し、未加硫成形体を60〜220℃程度に加熱したオーブン中で5〜15分程度加熱して発泡及び加硫を行うことにより発泡体を製造する方法が例示される。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
試験例1:アンモニアガス及び窒素酸化物ガスの発生量と発泡量の評価
1.方法
ガス発生剤(実施例1−4及び比較例1−3)を調製し、アンモニアガス及び窒素酸化物ガスの発生量と発泡量について評価を行った。各ガス発生剤の調製方法と、アンモニアガス及び窒素酸化物(NO及びNO)ガスの発生量と発泡量の測定方法は、以下の通りである。
【0059】
1−1.ガス発生剤の調製
実施例1
複合金属水酸化物の調製
20Lステンレスタンクに水道水3.8Lと炭酸ナトリウム(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)231.3gを投入し、撹拌した。別途、塩化亜鉛(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)594.4g、塩化マグネシウム6水和物(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)221.6g、塩化アルミニウム(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)145.5gを混合し、水道水で総量2.5Lにした。得られた金属塩の混合液を、上記ステンレスタンク中に1時間で滴下した。なお、金属塩の混合液を滴下する際には、水酸化ナトリウム(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)48重量%水溶液をpH9となるように調整しながら同時に滴下した。金属塩の混合液の滴下完了後に、80℃で2時間撹拌を行った。次いで、ステンレスタンクの内容物をヌッチェにて固液分離した後、回収した固形分(ケーキ)を水道水20Lで水洗を行った。水洗後のケーキ全量に水道水を2L加えて懸濁を行った。ケーキの懸濁を確認後、水道水を加え6.5Lとした。更に炭酸ナトリウム(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)231.3gを添加して、60℃で2時間撹拌を行った。その後、ヌッチェにて固液分離し、回収した固形分(ケーキ)を水道水20Lで水洗を行った。水洗後のケーキを100℃にて8時間乾燥を行った後、乾燥物を卓上ミルで粉砕することにより、複合金属水酸化物の粉末を得た。
【0060】
得られた複合金属水酸化物の化学組成について分析したところ、Zn2+0.68Mg2+0.16Al3+0.16(OH(CO2−0.08[(Zn2++Mg2+)/Al3+=5.3;Zn2+/Mg2+=4.3]であった。なお、Zn2+Mg2+、Al3+含量は次の方法で測定を行った。複合金属水酸化物0.25gに6mol/L塩酸10mLを加えて溶解させ、正確に250mLとした。これを1mL採取し、正確に50mLとした。この試験液を用いてICP発光分光分析装置「Vista Pro」エスアイアイ・ナノテクノロジーズ社製を用い、標準添加法にてZn2+、Mg2+及びAl3+の含量を測定し、前記する化学組成物(1)において、a+b+c=1となるように各a、b、cの値を算出した。
【0061】
ガス発生剤の調製
尿素(和光一級、和光純薬工業株式会社製)3.00g、亜硝酸ナトリウム(試薬一級、林純薬工業株式会社製)3.45g、及び上記で得られた複合金属水酸化物0.3gを乳鉢で十分に混合し、ガス発生剤を得た。得られたガス発生剤の1gを採取し、アンモニアガス及び窒素酸化物ガスの発生量と発泡量の測定に用いた。
【0062】
実施例2
複合金属水酸化物の加熱処理物の調製
20Lステンレスタンクに水道水3.8Lと炭酸ナトリウム(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)231.3gを投入し、撹拌した。別途、塩化亜鉛(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)594.4g、塩化マグネシウム6水和物(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)221.6g、塩化アルミニウム(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)145.5gを混合し、水道水で総量2.5Lにした。得られた金属塩の混合液を、上記ステンレスタンク中に1時間で滴下した。なお、金属塩の混合液を滴下する際には、水酸化ナトリウム(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)48重量%水溶液をpH9となるように調整しながら同時に滴下した。金属塩の混合液の滴下完了後に、80℃で2時間撹拌を行った。次いで、ステンレスタンクの内容物をヌッチェにて固液分離した後、回収した固形分(ケーキ)を水道水20Lで水洗を行った。水洗後のケーキ全量に水道水を2L加えて懸濁を行った。ケーキの懸濁を確認後、水道水を加え6.5Lとした。更に炭酸ナトリウム(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)231.3gを添加して、60℃で2時間撹拌を行った。その後、ヌッチェにて固液分離し、回収した固形分(ケーキ)を水道水20Lで水洗を行った。水洗後のケーキの水分含量を赤外線水分計(FD−610、株式会社ケツト科学研究所製)を用いて測定し、その値に基づいて水分95重量%となるように懸濁液を調製した。これを700mL採取し、オートクレーブ(TAS−09型反応容器、耐圧硝子工業株式会社製)にて回転数250rpmで撹拌しながら加熱処理(250℃、3時間)を行った。その後、ヌッチェにて固液分離し、回収した固形分(ケーキ)を100℃にて8時間乾燥を行った。得られた乾燥物を卓上ミルで粉砕することにより、複合金属水酸化物の加熱処理物の粉末を得た。
【0063】
得られた複合金属水酸化物の加熱処理物の化学組成について、実施例1と同様の手法で分析したところ、(Zn2++Mg2+)/Al3+=5.0であり、Zn2+/Mg2+=4.0のモル比を備えていることが確認された。
【0064】
また、得られた複合金属水酸化物の加熱処理物について、粉末X線回折装置(RINT2100V、リガク社製)を用いて、その構造の確認を行った。このX線回折分析の結果を図1に示す。
【0065】
ガス発生剤の調製
尿素(和光一級、和光純薬工業株式会社製)3.00g、亜硝酸ナトリウム(試薬一級、林純薬工業株式会社製)3.45g、及び上記で得られた複合金属水酸化物の加熱処理物0.3gを乳鉢で十分に混合し、ガス発生剤を得た。得られたガス発生剤の1gを採取し、アンモニアガス及び窒素酸化物ガスの発生量と発泡量の測定に用いた。
【0066】
実施例3
複合金属水酸化物の調製
塩化亜鉛、塩化マグネシウム6水和物、及び塩化アルミニウムの使用量を、塩化亜鉛357.2g、塩化マグネシウム6水和物132.1g、塩化アルミニウム145.5gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で複合金属水酸化物を調製した。
【0067】
得られた複合金属水酸化物の化学組成について、実施例1と同様の手法で分析したところ、Zn2+0.62Mg2+0.15Al3+0.24(OH(CO2−0.12[(Zn2++Mg2+)/Al3+=3.2;Zn2+/Mg2+=4.1]であった。
【0068】
ガス発生剤の調製
尿素(和光一級、和光純薬工業株式会社製)3.00g、亜硝酸ナトリウム(試薬一級、林純薬工業株式会社製)3.45g、及び上記で得られた複合金属水酸化物0.3gを乳鉢で十分に混合し、ガス発生剤を得た。得られたガス発生剤の1gを採取し、アンモニアガス及び窒素酸化物ガスの発生量と発泡量の測定に用いた。
【0069】
実施例4
複合金属水酸化物の調製
塩化亜鉛、塩化マグネシウム6水和物、及び塩化アルミニウムの使用量を、塩化亜鉛148.6g、塩化マグネシウム6水和物886.4g、塩化アルミニウム145.5gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で複合金属水酸化物を調製した。
【0070】
得られた複合金属水酸化物の化学組成について分析したところ、Zn2+0.18Mg2+0.67Al3+0.15(OH(CO2−0.08[(Zn2++Mg2+)/Al3+=5.7;Zn2+/Mg2+=0.3]であった。
【0071】
ガス発生剤の調製
尿素(和光一級、和光純薬工業株式会社製)3.00g、亜硝酸ナトリウム(試薬一級、林純薬工業株式会社製)3.45g、及び上記で得られた複合金属水酸化物0.3gを乳鉢で十分に混合し、ガス発生剤を得た。得られたガス発生剤の1gを採取し、アンモニアガス及び窒素酸化物ガスの発生量と発泡量の測定に用いた。
【0072】
実施例5
ガス発生剤の調製
実施例1で使用した複合金属水酸化物を用いて、ガス発生剤を調製した。具体的には、アゾジカルボンアミド(永和化成工業株式会社製)10.00g、尿素(和光一級、和光純薬工業株式会社製)3.00g、亜硝酸ナトリウム(試薬一級、林純薬工業株式会社製)3.45g、及び複合金属水酸化物0.9gを乳鉢で十分に混合し、ガス発生剤を得た。得られたガス発生剤の0.5gを採取し、アンモニアガス及び窒素酸化物ガスの発生量と発泡量の測定に用いた。
【0073】
実施例6
ガス発生剤の調製
実施例2で使用した複合金属水酸化物の加熱処理物を用いて、ガス発生剤を調製した。具体的には、アゾジカルボンアミド(永和化成工業株式会社製)10.00g、尿素(和光一級、和光純薬工業株式会社製)3.00g、亜硝酸ナトリウム(試薬一級、林純薬工業株式会社製)3.45g、及び複合金属水酸化物の加熱処理物0.9gを乳鉢で十分に混合し、ガス発生剤を得た。得られたガス発生剤の0.5gを採取し、アンモニアガス及び窒素酸化物ガスの発生量と発泡量の測定に用いた。
【0074】
比較例1
ガス発生剤の調製
尿素(和光一級、和光純薬工業株式会社製)3.00g、亜硝酸ナトリウム(試薬一級、林純薬工業株式会社製)3.45g、及びハイドロタルサイト(商品名「AD550PF」、富田製薬株式会社製)[組成:Mg2+0.83Al3+0.17(OH(CO2−0.09;Mg2+/Al=4.9]3gを乳鉢で十分に混合し、ガス発生剤を得た。得られたガス発生剤の1gを採取し、アンモニアガス及び窒素酸化物ガスの発生量と発泡量の測定に用いた。
【0075】
比較例2
複合金属水酸化物の調製
塩化亜鉛、塩化マグネシウム6水和物、及び塩化アルミニウムの使用量を、塩化亜鉛742.9g、塩化マグネシウム6水和物0g、塩化アルミニウム145.5gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で複合金属水酸化物を調製した。
【0076】
得られた複合金属水酸化物の化学組成について分析したところ、Zn2+0.83Al3+0.17(OH(CO2−0.09[(Zn2+)/Al3+=4.9]であった。
【0077】
ガス発生剤の調製
尿素(和光一級、和光純薬工業株式会社製)3.00g、亜硝酸ナトリウム(試薬一級、林純薬工業株式会社製)3.45g、及び上記で得られた複合金属水酸化物0.3gを乳鉢で十分に混合し、ガス発生剤を得た。得られたガス発生剤の1gを採取し、アンモニアガス及び窒素酸化物ガスの発生量と発泡量の測定に用いた。
【0078】
比較例3
複合金属水酸化物の調製
塩化亜鉛、塩化マグネシウム6水和物、及び塩化アルミニウムの使用量を、塩化亜鉛713.0g、塩化マグネシウム6水和物266.3g、塩化アルミニウム145.5gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で複合金属水酸化物を調製した。
【0079】
得られた複合金属水酸化物の化学組成について、実施例1と同様の手法で分析したところ、Zn2+0.71Mg2+0.16Al3+0.13(OH(CO2−0.07[(Zn2++Mg2+)/Al3+=6.7;Zn2+/Mg2+=4.4]であった。
【0080】
ガス発生剤の調製
尿素(和光一級、和光純薬工業株式会社製)3.00g、亜硝酸ナトリウム(試薬一級、林純薬工業株式会社製)3.45g、及び上記で得られた複合金属水酸化物0.3gを乳鉢で十分に混合し、ガス発生剤を得た。得られたガス発生剤の1gを採取し、アンモニアガス及び窒素酸化物ガスの発生量と発泡量の測定に用いた。
【0081】
比較例4
複合金属水酸化物の調製
塩化亜鉛、塩化マグネシウム6水和物、及び塩化アルミニウムの使用量を、塩化亜鉛237.7g、塩化マグネシウム6水和物88.6g、塩化アルミニウム145.5gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で複合金属水酸化物を調製した。
【0082】
得られた複合金属水酸化物の化学組成について、実施例1と同様の手法で分析したところ、Zn2+0.54Mg2+0.13Al3+0.32(OH(CO2−0.16[(Zn2++Mg2+)/Al3+=2.1;Zn2+/Mg2+=4.2]であった。
【0083】
ガス発生剤の調製
尿素(和光一級、和光純薬工業株式会社製)3.00g、亜硝酸ナトリウム(試薬一級、林純薬工業株式会社製)3.45g、及び上記で得られた複合金属水酸化物0.3gを乳鉢で十分に混合し、ガス発生剤を得た。得られたガス発生剤の1gを採取し、アンモニアガス及び窒素酸化物ガスの発生量と発泡量の測定に用いた。
【0084】
1−2.アンモニアガス及び窒素酸化物ガスの発生量と発泡量の測定方法
試験管(株式会社イワキ製、30×200mm)に流動パラフィン(和光一級、和光純薬工業株式会社製)10mLを採取した。ここに、上記で得られた各ガス発生剤を所定の量採取し、ポリエチレンシート(直径80mmの円形、厚さ0.08mm)に非密封状態で包んで上記試験管に投入し、液面上部をガラスウール(和光一級、和光純薬工業株式会社製)で覆った。次に、500mL容量と250mL容量のガス洗浄瓶(市ノ瀬式、柴田科学株式会社製)のそれぞれに精製水を400mL及び200mL入れたものと試験管をゴム管で接続した。170℃に加温したオイルバス(OIL BATH OB−200S、株式会社井内盛栄堂製)に試験管を15分静置し、発生したガスを水上置換法にて捕集し、発泡量を測定した。また、500mL容量と250mL容量のガス洗浄瓶中の精製水を採取して混合した後、精製水を添加して総量を1Lとした。これをイオンクロマトグラフ法で分析し、アンモニアガス及び窒素酸化物(NO及びNO)ガスの発生量を測定した。
【0085】
2.結果
得られた結果を表1に示す。この結果から、含窒素化合物及び亜硝酸塩と共に、ハイドロタルサイト、又は金属種として亜鉛及びアルミニウムから構成される複合金属水酸化物を組み合わせた場合では、余剰なアンモニアガスの発生抑制効果が不十分であった(比較例1−2)。更に、含窒素化合物及び亜硝酸塩と共に、亜鉛、マグネシウム及びアルミニウムを含む複合金属水酸化物を組み合わせても、当該複合金属水酸化物における(Zn2++Mg2+)/Al3+の値が6.7及び2.1の場合には、余剰なアンモニアガスの発生抑制効果が不十分であった(比較例3−4)。これに対して、含窒素化合物及び亜硝酸塩と共に、(Zn2++Mg2+)/Al3+の値が2.5〜6.0である、亜鉛、マグネシウム及びアルミニウムを含む複合金属水酸化物を組み合わせた場合には、余剰なアンモニアガスの発生量が大幅に低減され、しかも十分な発泡量を示し、余剰な窒素酸化物(NO及びNO)ガスの発生も効果的に抑制できていた(実施例1−6)。また、含窒素化合物として、尿素及びアゾジカルボンアミドの何れを使用しても、余剰なアンモニアガス及び窒素酸化物ガスの発生抑制効果は十分であり、発泡量についても顕著な増加がみられた。とりわけ、亜鉛、マグネシウム及びアルミニウムを含む複合金属水酸化物において、(Zn2++Mg2+)/Al3+の値が5.0〜5.3で、Zn2+/Mg2+の値が4.0〜4.3を充足する場合に、余剰なアンモニアガスの発生量が格段顕著に低減できることが明らかとなった。
【0086】

【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体の製造に使用されるガス発生剤であって、(A)アンモニアガスを発生する含窒素化合物、(B)亜硝酸塩、及び(C)下記化学組成式(1)で表される複合金属水酸化物又はその加熱処理物を含むことを特徴とする、ガス発生剤。
Zn2+Mg2+Al3+(OH(An−c/n (1)
[式中、a、b及びcは正数であって、a+b+c=1、且つ(a+b)/cは2.5以上且つ6.0以下であり、An−は、n価のアニオンであり、nは1又は2である。]
【請求項2】
前記含窒素化合物(A)が、尿素結合を有する化合物、アゾジカルボンアミド、及びN,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1記載のガス発生剤。
【請求項3】
前記亜硝酸塩(B)が、亜硝酸アルカリ金属塩である、請求項1又は2に記載のガス発生剤。
【請求項4】
前記複合金属水酸化物(C)の化学組成式(1)において、a/bが0.05以上且つ50以下である、請求項1〜3の何れかに記載のガス発生剤。
【請求項5】
前記含窒素化合物(A)が尿素であり、前記亜硝酸塩(B)が亜硝酸ナトリウムであり、前記複合金属水酸化物(C)が、化学組成式(1)において(a+b)/cが2.5以上且つ6.0以下、a/bが0.1以上且つ20以下であり、An−がCO2−である、請求項1〜4の何れかに記載のガス発生剤。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のガス発生剤、及び高分子材料を含むことを特徴とする、発泡用ポリマー組成物。
【請求項7】
前記高分子材料が、熱可塑性樹脂又はエラストマーである、請求項6に記載の発泡用ポリマー組成物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の発泡用ポリマー組成物を加熱処理する工程を含む、発泡体の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−32427(P2013−32427A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168460(P2011−168460)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000120847)永和化成工業株式会社 (12)
【出願人】(000237972)富田製薬株式会社 (30)
【Fターム(参考)】