説明

発泡充填部位用の収容具

【課題】各種部材が配置される空間を確保することの容易な発泡充填部位用の収容具を提供する。
【解決手段】収容具11は、中空構造体61の中空部内に挿入される各種部材を収容する収容体12、及びパネル63に固定するための係合部13を備えている。収容体12は、中空部62において発泡体16を充填する部位に配置される。収容体12は、各種部材が挿入される開口部を有する有底筒状をなしている。各種部材は、パネル63に穿設された挿入孔63aを通じて収容体12に収容される。開口部には、挿入孔63aを囲繞するフランジ部14が設けられている。フランジ部14は、中空部62側とは反対側のパネル面63bに沿って配置される構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造体の中空部に発泡体を充填する熱発泡性基体とともに中空部に配置される発泡充填部位用の収容具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の構造部材には、ピラーに代表されるように中空部を有する中空構造体が多用されている。中空構造体の中空部には、強度、剛性、制振性等の向上を目的として発泡充填具を配置させる手法が知られている。この発泡充填具は、一般に、加熱によって発泡及び硬化することで発泡体を形成する熱発泡性基体と、その熱発泡性基体を中空部において金属パネルに支持させる支持部材とから構成されている。
【0003】
中空構造体は、複数の金属製パネルが積層された構造を有している。これら金属パネルには、内装材等を締結するために設けられたボルト用の孔、電装部品の配線が挿通される配線用の孔等が形成されている。こうした孔が形成されている部位に跨って、上記発泡充填具が配置される場合、支持部材又は発泡体により、上述した孔の利用が妨げられることになる。
【0004】
そこで従来では、金属パネルに形成した孔を覆うように設けられる覆い部を備えた発泡充填具が提案されている(特許文献1参照)。この覆い部は、各々2つの延出部及び切込部が対向するように立設されてなり、覆い部内に各種部材が挿入されるように構成されている。こうした覆い部により、前記隙間や孔内で発泡体が過剰に形成されることが抑制されることで、孔内への各種部材の設置が容易となる。
【特許文献1】特開2002−120759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の覆い部では、パネルとの間に間隙が形成されているため、その間隙から熱発泡性基体が侵入し、覆い部の内側で孔を塞ぐように発泡体が形成されるおそれがある。この点、覆い部とパネルとを密着して配置することにより、覆い部への熱発泡性基体の侵入は抑制されるため、各種部材が挿入される空間はより確実に確保されるようになる。ところが、覆い部とパネルとを密着して配置するには、覆い部及びそれを取り付ける取付部の寸法精度を高める必要があるため、覆い部及び取付部の製造に手間を要することになる。もっとも、熱発泡性基体の材料を適宜変更して熱発泡性基体の流動を抑制する対策等により、熱発泡性基体が上記間隙に侵入することを抑制することは可能であるものの、こうした対策は材料設計が煩雑となり得る。なお、このような課題は、加熱により発泡体を形成する熱発泡性基体を用いた場合に限らず、流動性を有する発泡材を中空部に注入し、その発泡材を反応させることで発泡体を形成する場合においても共通している。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、各種部材が配置される空間を確保することの容易な発泡充填部位用の収容具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、パネルにより形成される中空部を有する中空構造体の前記パネルに穿設された挿入孔を通じて前記中空部内に挿入される部材を収容する収容体と、前記収容体を前記パネルに固定する固定手段とを備え、前記中空部において発泡体を充填する部位に前記収容体が配置される発泡充填部位用の収容具であって、前記収容体は、前記部材が挿入される開口部を有する有底筒状をなし、前記開口部には、前記挿入孔を囲繞するフランジ部が設けられ、前記フランジ部は、前記中空部側とは反対側のパネル面に沿って配置される構成であることを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、挿入孔を通じて中空部に挿入される部材は、開口部から収容体に収容される。こうした有底筒状の収容体により、前記部材の配置空間が確保される。ところで、収容体の内部に発泡体が形成される現象は、熱により軟化した熱発泡性基体が収容体の内部に侵入することにより発生することになる。なお、この現象は、熱発泡性基体を発泡材として用いた場合に限らず、流動性を有する発泡材を中空部に注入し、その発泡材を反応させることで発泡体を形成する場合においても共通する。ここで、上記開口部には、挿入孔を囲繞するフランジ部が設けられている。そして同フランジ部は、中空部側とは反対側のパネル面に沿って配置される構成である。このため、加熱により軟化した熱発泡性基体が、挿入孔を通じてフランジ部に到達した場合、同フランジ部に沿って流動するようになる。すなわち、フランジ部とパネル面との隙間が熱発泡性基体の漏出経路となる。このフランジ部とパネル面との隙間は、熱発泡性基体が流動するに際して抵抗となるため、中空部からの熱発泡性基体の漏出が抑制される。また、フランジ部はパネル面に沿って配置されているため、パネル面に沿って収容体から離間する方向へ熱発泡性基体を導くようになる。これにより、熱発泡性基体が開口部を塞ぐ方向へ流動することが抑制される。しかも、こうしたフランジ部は、その寸法を挿入孔の寸法に応じて変更することで、異なる寸法の挿入孔に対応することも容易であるため、収容具の設計の煩雑化を極力回避することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、パネルにより形成される中空部を有する中空構造体の前記パネルに穿設された挿入孔を通じて前記中空部内に挿入される部材を収容する収容体と、前記収容体をパネルに固定する固定手段とを備え、前記中空部において発泡体を充填する部位に前記収容体が配置される発泡充填部位用の収容具であって、前記収容体は、前記部材が挿入される開口部を有する有底筒状をなし、前記開口部には、前記挿入孔を囲繞するフランジ部が設けられ、前記フランジ部は、前記中空部側のパネル面に沿って配置される構成であることを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、挿入孔を通じて中空部に挿入される部材は、開口部から収容体に収容される。こうした有底筒状の収容体により、前記部材の配置空間が確保される。そして収容体の開口部には、挿入孔を囲繞するフランジ部が設けられている。同フランジ部は、中空部側のパネル面に沿って配置される構成である。ここで、発泡過程の熱発泡性基体がフランジ部に到達したとき、フランジ部を中空部側のパネル面へ向かって押圧する力が働くことで、フランジ部が中空部側のパネル面に接近するようになる。これにより、フランジ部と前記パネル面との隙間は狭まるため、挿入孔を漏出経路とした熱発泡性基体の漏出が抑制される。しかも、こうしたフランジ部は、その寸法を挿入孔の寸法に応じて変更することで、異なる寸法の挿入孔に対応することも容易である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発泡充填部位用の収容具において、前記フランジ部が、前記挿入孔の周方向全体にわたって囲繞する環状をなしていることを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、挿入孔の周方向のいずれの位置においても、熱発泡性基体の漏出が抑制される。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発泡充填部位用の収容具において、前記固定手段が、前記挿入孔を有するパネルを前記フランジ部との間に介在させる係合部であることを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、パネルにおける挿入孔の近傍をフランジ部と係合部とに介在させることで、収容具をパネルに固定することができるため、例えばパネルに収容具を固定する孔を別途設ける手間を省くことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発泡充填部位用の収容具において、前記フランジ部及び前記固定手段が前記収容体と一体成形されてなることを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、収容具の組立の手間を省くことができる。また例えば、樹脂材料により一体成形することで収容具の軽量化を図ることが容易である。
請求項6に記載の発明は、第1挿入孔の穿設された第1パネルと第2挿入孔の穿設された第2パネルとにより形成される中空部を有する中空構造体の前記第1挿入孔又は前記第2挿入孔を通じて前記中空部に挿入される部材を収容する収容体と、前記収容体を前記第1パネル及び前記第2パネルの少なくとも一方に固定する固定手段とを備え、前記中空部において発泡体を充填する部位に前記収容体が配置される発泡充填部位用の収容具であって、前記収容体は、前記部材が挿入される複数の開口部を有し、前記複数の開口部は、前記第1挿入孔を囲繞する第1フランジ部が設けられた開口部と、前記第2挿入孔を囲繞する第2フランジ部が設けられた開口部とを含み、前記第1フランジ部は、前記中空部側とは反対側のパネル面に沿って配置される構成であるとともに、前記第2フランジ部は、前記中空部側のパネル面に沿って配置される構成であることを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、第1又は第2挿入孔を通じて中空部に挿入される部材は、開口部から収容体に収容される。こうした収容体により、前記部材の配置空間が確保される。さらに、収容体は複数の開口部を有し、それら開口部は、第1挿入孔を囲繞する第1フランジ部が設けられた開口部と、第2挿入孔を囲繞する第2フランジ部が設けられた開口部とを含んでいる。そして第1フランジ部は、中空部側とは反対側のパネル面に沿って配置される構成である。このため、加熱により軟化した熱発泡性基体が、第1挿入孔を通じて第1フランジ部に到達した場合、同第1フランジ部に沿って流動するようになる。すなわち、第1フランジ部とパネル面との隙間が熱発泡性基体の漏出経路となる。この第1フランジ部とパネル面との隙間は、熱発泡性基体が流動するに際して抵抗となるため、中空部からの熱発泡性基体の漏出が抑制される。また、第1フランジ部はパネル面に沿って配置されているため、パネル面に沿って収容体から離間する方向へ熱発泡性基体を導くようになる。これにより、熱発泡性基体が開口部を塞ぐ方向へ流動することが抑制される。また、第2フランジ部は、中空部側のパネル面に沿って配置される構成である。ここで、発泡過程の熱発泡性基体が第2フランジ部に到達したとき、第2フランジ部を中空部側のパネル面へ向かって押圧する力が働くことで、第2フランジ部が中空部側のパネル面に接近するようになる。これにより、第2フランジ部と前記パネル面との隙間は狭まるため、第2挿入孔を漏出経路とした熱発泡性基体の漏出が抑制される。さらに、第2フランジ部が中空部側のパネル面に接近することで、第1フランジ部は第1パネルのパネル面に接近する。これにより第1フランジ部とパネル面との隙間は狭められるため、第1フランジ部とパネル面とにより形成される漏出流路を通じた熱発泡性基体の漏出がさらに抑制される。しかも、こうした各フランジ部は、その寸法を挿入孔の寸法に応じて変更することで、異なる寸法の挿入孔に対応することも容易である。
【0017】
請求項7に記載の発明は、第1挿入孔の穿設された第1パネルと第2挿入孔の穿設された第2パネルとにより形成される中空部を有する中空構造体の前記第1挿入孔又は前記第2挿入孔を通じて前記中空部に挿入される部材を収容する収容体と、前記収容体を前記第1パネル及び前記第2パネルの少なくとも一方に固定する固定手段とを備え、前記中空部において発泡体を充填する部位に前記収容体が配置される発泡充填部位用の収容具であって、前記収容体は、前記部材が挿入される複数の開口部を有し、前記複数の開口部は、前記第1挿入孔を囲繞する第1フランジ部が設けられた開口部と、前記第2挿入孔を囲繞する第2フランジ部が設けられた開口部とを含み、前記第1フランジ部及び第2フランジ部は、前記中空部側のパネル面に沿って配置される構成であることを要旨とする。
【0018】
この構成によれば、第1又は第2挿入孔を通じて中空部に挿入される部材は、開口部から収容体に収容される。こうした収容体により、前記部材の配置空間が確保される。さらに、収容体は複数の開口部を有し、それら開口部は、第1挿入孔を囲繞する第1フランジ部が設けられた開口部と、第2挿入孔を囲繞する第2フランジ部が設けられた開口部とを含んでいる。そして各フランジ部は、中空部側のパネル面に沿って配置される構成である。ここで、加熱により軟化した熱発泡性基体が各フランジ部に到達し、各挿入孔に漏出する場合、各フランジ部と中空部側のパネル面との隙間が漏出経路となる。各フランジ部と各パネル面との隙間は、熱発泡性基体が流動するに際して抵抗となるため、中空部からの熱発泡性基体の漏出が抑制される。しかも、こうした各フランジ部は、その寸法を挿入孔の寸法に応じて変更することで、異なる寸法の挿入孔に対応することも容易である。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載の発泡充填部位用の収容具において、前記第1フランジ部及び第2フランジ部の少なくとも一方が、その配置される挿入孔をその周方向全体にわたって囲繞する環状をなしていることを要旨とする。
【0020】
この構成によれば、第1フランジ部及び第2フランジ部の少なくとも一方により、挿入孔の周方向のいずれの位置においても、熱発泡性基体の漏出が抑制される。
請求項9に記載の発明は、請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の発泡充填部位用の収容具において、前記固定手段が、前記第1パネルを前記第1フランジ部との間に介在させる係合部、及び前記第2パネルを前記第2フランジ部との間に介在させる係合部の少なくとも一方の係合部であることを要旨とする。
【0021】
この構成によれば、第1又は第2パネルにおける第1又は第2挿入孔の近傍を第1又は第2フランジ部と係合部とに介在させることで、収容具をパネルに固定することができるため、例えばパネルに収容具を固定する孔を別途設ける手間を省くことができる。
【0022】
請求項10に記載の発明は、請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の発泡充填部位用の収容具において、前記収容体、前記第1フランジ部、前記第2フランジ部、及び前記固定手段が一体成形されてなることを要旨とする。
【0023】
この構成によれば、収容具の組立の手間を省くことができる。また例えば、樹脂材料により一体成形することで収容具の軽量化を図ることが容易である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、各種部材が配置される空間を確保することの容易な発泡充填部位用の収容具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1の実施形態)
本発明を具体化した第1の実施形態について図1及び図2に基づいて詳細に説明する。
図1(a)及び図1(b)に示すように、発泡充填部位用の収容具11は、開口部を有する有底円筒状の収容体12と複数の係合部13とを備えて構成されている。収容体12の開口部には、環状をなすフランジ部14が設けられている。
【0026】
収容具11は、図2(a)及び図2(b)に示すように、筒状の中空部62を有する中空構造体61に用いられる。本実施形態の中空構造体61は、アウタパネルとリインフォースパネルとから構成された車両用ピラーの一部である。この中空構造体61を形成する一対のパネル63のうち、一方のパネル63には挿入孔63aが穿設され、同挿入孔63aを通じて中空部62に各種部材が挿入できるように構成されている。中空構造体61の中空部62には、発泡体を充填する熱発泡性基体15が配置されている。収容具11の備える収容体12は、熱発泡性基体15とともに中空部62に配置される。収容体12は、中空部62において発泡体を充填する部位に配置されることで、同中空部62において発泡体の形成される領域と各種部材の挿入される領域とを区画する。これにより、中空部62の発泡充填部位において各種部材が挿入される空間は確保される。
【0027】
中空部62の発泡充填部位には、図2(c)に示すように熱発泡性基体15から形成した発泡体16が充填されることで、中空構造体61の強度、剛性、制振性等が高められる。
【0028】
熱発泡性基体15は、中空部62に配置された後、加熱により発泡及び硬化した発泡体16を形成する。熱発泡性基体15は、基材、発泡剤、及び架橋剤を含有する他に、充填剤、可塑剤等を適宜含有して構成されている。基材としては、合成樹脂、エラストマー及びゴムが挙げられる。合成樹脂としては、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、EVA(エチレン/ビニルアセテートコポリマー)等が挙げられる。エラストマーとしては、RB(ポリブタジエンエラストマー)、SBS(スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー)、SIS(スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体)、SEBS(スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体)等が挙げられる。ゴムとしては、NR(天然ゴム)、SBR(スチレン/ブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、CR(クロロプレンゴム)、IR(イソプレンゴム)、IIR(ブチルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエン三元共重合体)、UR(ウレタンゴム)、ENR(エポキシ化天然ゴム)、EPM(エチレン/プロピレンゴム)等が挙げられる。発泡剤としてはアゾジカルボンアミド、ジニトロペンタメチレンテトラミン等、架橋剤としては周知のジメチルウレア、ジシアンジアミド、充填剤としては炭酸カルシウム、硫酸バリウム、フェライト、シリカ等が挙げられる。熱発泡性基体15は、押出成形、プレス成形、射出成形等の周知の成形法により成形することができる。熱発泡性基体15は、中空部62側のパネル面に接着剤を用いた接着、粘着剤を用い粘着等によってパネル面に固定されている。
【0029】
収容体12の有する開口部は、中空部62に挿入される各種部材が挿入されるように形成されている。この収容体12の底壁及び周壁には、軟化した熱発泡性基体15が侵入可能な孔等が形成されていない。すなわち、収容体12の開口部以外は、軟化した熱発泡性基体15が侵入不能に構成されている。
【0030】
また、本実施形態の収容体12は、挿入孔63aに対向して配置されているパネル63の近傍に収容体12の底壁が位置されるように形成されている。すなわち、収容体12の底壁は、挿入孔63aよりも同挿入孔63aに対向するパネル63に近い位置に配置されるように構成されている。このように収容体12を形成することで、収容体12の深さ寸法は、中空部62において十分に大きくなる結果、各種部材が挿入される空間が十分に確保されるようになる。従って、例えばボルト等の柱状をなす各種部材を、挿入孔63a(開口部)から同挿入孔63aに対向するパネル63の近傍まで挿入することが可能である。
【0031】
開口部に設けられたフランジ部14は、挿入孔63aを囲繞する構成であるとともに、中空部62側とは反対側のパネル面63bに沿って配置される。本実施形態のフランジ部14は、挿入孔63aの周方向全体にわたって囲繞する環状をなしている。こうしたフランジ部14は、その寸法を挿入孔63aの寸法に応じて変更することで、異なる寸法の挿入孔63aに対応することが容易である。
【0032】
複数の係合部13は、収容体12をパネル63に固定する固定手段として設けられている。複数の係合部13は、挿入孔63aを有するパネル63をフランジ部14との間に介在させるように構成されている。なお、本実施形態では、開口部の周方向においてほぼ等間隔で4箇所設けられている。
【0033】
本実施形態の収容体12、係合部13及びフランジ部14は、樹脂材料(ポリアミド系樹脂)から一体成形されることで軽量化が図られている。
次に、発泡充填部位用の収容具を用いた発泡体の充填方法について説明する。
【0034】
図2(a)及び図2(b)に示すように、中空構造体61の挿入孔63aに収容体12を挿入し、係合部13を弾性変形させることで、フランジ部14と係合部13との間にパネル63を介在させる。このように収容具11は、挿入孔63aを有するパネル63に固定されるとともに収容体12が中空部62に配置される。このとき、フランジ部14は挿入孔63aを囲繞するとともに、中空部62側とは反対側のパネル面63bに沿って配置されている。なお、中空構造体61の中空部62には、予め熱発泡性基体15が配置される。本実施形態の熱発泡性基体15は、収容体12の外形に沿った凹部が形成され、その凹部に収容体12の底部側が挿入されるようになっている。このように熱発泡性基体15が収容体12を囲む凹部を有することで、収容体12に密着して発泡体16が形成され易くなる。
【0035】
続いて、中空構造体61は、所定の温度で所定の時間加熱される。こうした加熱により、熱発泡性基体15が発泡及び硬化することで、図2(c)に示すように発泡体16が中空部62の所定位置に充填される。
【0036】
ここで、加熱により軟化した熱発泡性基体15が収容体12の内部に侵入すると、収容体12の内部に発泡体16が形成されることになる。収容体12の内部における発泡体16の形成が過剰になると、収容体12の内部に各種部材を挿入することが困難となる。この点、収容体12には、フランジ部14が設けられている。このため、加熱により軟化した熱発泡性基体15が、挿入孔63aを通じてフランジ部14に到達した場合、同フランジ部14に沿って流動するようになる。すなわち、図2(c)に拡大して示すように、フランジ部14とパネル面63bとの隙間が熱発泡性基体15の漏出経路となる。このフランジ部14とパネル面63bとの隙間は、熱発泡性基体15が流動するに際して抵抗となるため、中空部62からの熱発泡性基体15の漏出が抑制される。また、フランジ部14はパネル面63bに沿って配置されているため、パネル面63bに沿って収容体12から離間する方向へ熱発泡性基体15を導くようになる。これにより、熱発泡性基体15が開口部を塞ぐ方向へ流動することが抑制される。
【0037】
次いで、収容体12の内部には、挿入孔63a(開口部)を通じて位置決め用のピン、ボルト等の各種部材が配置される。このとき、収容体12の内部における発泡体16の形成が抑制又は防止されることで、収容体12の内部空間が十分に確保されるようになる。従って、各種部材を収容体12の内部に配置するに際して、発泡体16が障害となることが軽減又は防止される。また、熱発泡性基体15が開口部を塞ぐ方向へ流動することが抑制されているため、各種部材を挿入孔63a(開口部)に挿入する際にも、発泡体16が障害となることが軽減又は防止される。
【0038】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)開口部には、中空部62側とは反対側のパネル面63bに沿って配置されるフランジ部14が設けられている。このため、フランジ部14とパネル面63bとの隙間が熱発泡性基体15の漏出経路となるとともに、パネル面63bに沿って収容体12から離間する方向へ熱発泡性基体15を導くようになる。これにより、収容体12の内部で発泡体16が形成されることを抑制することができる。しかも、こうしたフランジ部14は、その寸法を挿入孔63aの寸法に応じて変更することで、異なる寸法の挿入孔63aに対応することも容易であるため、収容具11の設計の煩雑化を極力回避することができる。従って、中空部62において各種部材が配置される空間を確保することの容易な発泡充填部位用の収容具11が提供される。
【0039】
(2)本実施形態のフランジ部14は、挿入孔63aの周方向全体にわたって囲繞する環状をなしている。挿入孔63aの周方向のいずれの位置においても、熱発泡性基体15の漏出が抑制されるため、各種部材が挿入される空間をより確実に確保することが容易である。また、収容体12をパネル63に安定して支持させることができるため、固定手段を簡略化することもできる。さらに、各種部材が配置される空間を確保することが容易であるため、例えば発泡倍率を高めた発泡性基体を用いることで、収容体12の周壁全体に発泡体16を十分に密着して充填させることができるようになる。こうした発泡体16の充填により、収容体12の周囲において、強度、剛性、制振性等を十分に高めることができるとともに、収容体12を安定して固定させることもできる。
【0040】
(3)本実施形態の固定手段は、挿入孔63aを有するパネル63をフランジ部14との間に介在させる係合部13であるため、パネル63に収容具11を固定する孔を別途設ける手間を省くことができる。
【0041】
(4)本実施形態のフランジ部14及び固定手段は収容体12と一体成形されているため、収容具11の組立の手間を省くことができる。また例えば、樹脂材料により一体成形することで収容具11の軽量化を図ることが容易である。
【0042】
(第2の実施形態)
本発明を具体化した第2の実施形態について図3及び図4に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、収容体の構成が第1の実施形態と異なるため、その構成を中心に説明する。図3に示すように、本実施形態の収容具21における収容体22では、フランジ部24よりも開口部の端面側に係合部23が設けられている。
【0043】
図4(a)及び図4(b)に示すように、フランジ部24は、中空部62側のパネル面63cに沿って配置される構成である。このフランジ部24は、挿入孔63aの周方向全体にわたって囲繞する環状をなしている。
【0044】
収容具21は、複数の係合部23を弾性変形させることで、開口部を挿入孔63aに挿入し、複数の係合部23とフランジ部24との間にパネル63を介在させることで、パネル63に固定される。なお、収容具21の取り付けを容易にするため、開口部は挿入孔63aに遊挿されるように構成されている。続いて、各パネル63が組み付けられることで、中空構造体61が形成される。このとき、フランジ部24は挿入孔63aを囲繞するとともに、中空部62側のパネル面63cに沿って配置されている。
【0045】
続いて、中空構造体61は、所定の温度で所定の時間加熱される。こうした加熱により、熱発泡性基体25が発泡及び硬化することで、図4(c)に示すように発泡体26が中空部62の所定位置に充填される。
【0046】
ここで、図4(c)に拡大して示すように、発泡過程の熱発泡性基体25がフランジ部24に到達したとき、フランジ部24を中空部62側のパネル面63cへ向かって押圧する力が働くことで、フランジ部24が中空部62側のパネル面63cに接近するようになる。これにより、フランジ部24と前記パネル面63cとの隙間は狭まるため、挿入孔63aを漏出経路とした熱発泡性基体25の漏出が抑制される。
【0047】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(5)開口部には、中空部62側のパネル面63cに沿って配置されるフランジ部24が設けられている。このため、挿入孔63aを漏出経路とした熱発泡性基体25の漏出が抑制される。これにより、収容体22の内部で発泡体26が形成されることを抑制することができる。しかも、こうしたフランジ部24は、その寸法を挿入孔63aの寸法に応じて変更することで、異なる寸法の挿入孔63aに対応することも容易であるため、収容具21の設計の煩雑化を極力回避することができる。従って、中空部62において各種部材が配置される空間を確保することの容易な発泡充填部位用の収容具21が提供される。
【0048】
(6)本実施形態の収容具21によれば、第1の実施形態の(2)〜(4)欄に記載した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
本発明を具体化した第3の実施形態について図5に基づいて詳細に説明する。
【0049】
本実施形態では、収容体の構成が第1の実施形態と異なるため、その構成を中心に説明する。図5(a)に示すように、本実施形態の収容具31における収容体32は両端に開口部を有する円筒状をなしている。
【0050】
本実施形態の中空構造体71は、車両用ピラーの内部に配置される。図5(b)に示すように、中空構造体71は、第1挿入孔73aの穿設された第1パネル73と第2挿入孔74aの穿設された第2パネル74とから中空部72が形成されている。これら第1挿入孔73a及び第2挿入孔74aは対向するように配置されている。本実施形態の収容体32は、各挿入孔73a,74aに対応した開口部を有している。
【0051】
開口部は、第1挿入孔73aを囲繞する第1フランジ部34aが設けられた開口部と、第2挿入孔74aを囲繞する第2フランジ部34bが設けられた開口部とから構成されている。第1フランジ部34aは、中空部72側とは反対側のパネル面73bに沿って配置される構成である。第2フランジ部34bは、中空部72側のパネル面74cに沿って配置される構成である。第1フランジ部34aは、第1挿入孔73aの周方向全体にわたって囲繞する環状をなしている。第2フランジ部34bは、第2挿入孔74aの周方向全体にわたって囲繞する環状をなしている。
【0052】
各開口部には、収容体32を各パネル73,74に固定する固定手段として複数の係合部33が設けられている。なお、本実施形態では、係合部33が各開口部の周方向に沿ってほぼ等間隔で4箇所ずつ設けられている。
【0053】
収容体32の外周面には、熱発泡性基体35が一体に設けられている。熱発泡性基体35は、接着剤を用いた接着、インサート成型等を用いた溶着等によって収容体32に固定される。
【0054】
収容具31を各パネル73,74に固定するには、係合部33を弾性変形させることで、各開口部を第1挿入孔73a及び第2挿入孔74aに挿入する。そして係合部33と第1フランジ部34aとの間に第1パネル73を介在させるとともに、係合部33と第2フランジ部34bとの間に第2パネル74を介在させる。なお、収容具31の取り付けを容易にするため、各開口部は挿入孔に遊挿されるように構成されている。続いて、各パネル73,74が組み付けられることで、中空構造体71が形成される。このとき、第1フランジ部34aは、第1挿入孔73aを囲繞するとともに、中空部72側とは反対側のパネル面73bに沿って配置されている。また、第2フランジ部34bは、第2挿入孔74aを囲繞するとともに、中空部72側のパネル面74cに沿って配置されている。
【0055】
続いて、中空構造体71は、所定の温度で所定の時間加熱される。こうした加熱により、熱発泡性基体35が発泡及び硬化することで、発泡体(図示省略)が中空部72の所定位置に充填される。このとき、収容体32には、第2フランジ部34bが設けられているため、発泡過程の熱発泡性基体35が第2フランジ部34bに到達したとき、第2フランジ部34bを中空部72側のパネル面74cへ向かって押圧する力が働くことで、第2フランジ部34bが中空部72側のパネル面74cに接近するようになる。これにより、第2フランジ部34bと前記パネル面74cとの隙間は狭まるため、第2挿入孔74aを漏出経路とした熱発泡性基体35の漏出が抑制される。さらに、第2フランジ部34bが中空部72側のパネル面74cに接近することで、第1フランジ部34aは、第1パネル73のパネル面73bに接近する。これにより第1フランジ部34aとパネル面73bとの隙間は狭められるため、第1フランジ部34aとパネル面73bとにより形成される漏出流路を通じた熱発泡性基体35の漏出が抑制される。
【0056】
収容体32の内部には、例えば位置決め用のピン、ボルト、配線等の各種部材が配置される。本実施形態の収容体32は、第1挿入孔73a及び第2挿入孔74aに対応した一対の開口部を有するため、各種配線を中空構造体71の各パネル73,74間に貫通させるに際して有効である。
【0057】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(7)本実施形態の第1フランジ部34aによれば、第1の実施形態の(1)欄に記載した作用効果が得られる。一方、第2フランジ部34bは、中空部72側のパネル面74cに沿って配置される構成であるため、第2挿入孔74aを漏出経路とした熱発泡性基体35の漏出が抑制される。また、第2フランジ部34bが中空部72側のパネル面74cに接近することで、第1フランジ部34aが、第1パネル73のパネル面73bに接近する。これにより、第1フランジ部34aとパネル面73bとにより形成される漏出流路を通じた熱発泡性基体35の漏出がさらに抑制される。よって、収容体32の内部で発泡体が形成されることを抑制することができる。しかも、各フランジ部34a,34bは、その寸法を各挿入孔73a,74aの寸法に応じて変更することで、異なる寸法の各挿入孔73a,74aに対応することも容易であるため、収容具31の設計の煩雑化を極力回避することができる。従って、中空部72において各種部材が配置される空間を確保することの容易な発泡充填部位用の収容具31が提供される。
【0058】
(8)本実施形態の収容具31によれば、第1の実施形態の(2)〜(4)欄に記載した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
(第4の実施形態)
本発明を具体化した第4の実施形態について図6に基づいて詳細に説明する。
【0059】
本実施形態では、収容体の構成が第2の実施形態と異なるため、その構成を中心に説明する。図6(a)に示すように、本実施形態の収容具41における収容体42では、両端に開口部を有する円筒状をなしている。なお、中空構造体71の構成は、第3の実施形態と同様である。
【0060】
図6(a)及び(b)に示すように、収容体42の開口部は、第1挿入孔73aを囲繞する第1フランジ部44aが設けられた開口部と、第2挿入孔74aを囲繞する第2フランジ部44bが設けられた開口部とから構成されている。第1フランジ部44aは、第1パネル73において、中空部72側のパネル面73cに沿って配置される構成である。第2フランジ部44bは、第2パネル74において、中空部72側のパネル面74cに沿って配置される構成である。第1フランジ部44aは、第1挿入孔73aの周方向全体にわたって囲繞する環状をなしている。第2フランジ部44bは、第2挿入孔74aの周方向全体にわたって囲繞する環状をなしている。
【0061】
各開口部には、収容体42を各パネルに固定する固定手段として複数の係合部43が設けられている。なお、本実施形態では、係合部43が各開口部の周方向に沿ってほぼ等間隔で4箇所ずつ設けられている。
【0062】
収容体42の外周面には、熱発泡性基体45が一体に設けられている。熱発泡性基体45は、接着剤を用いた接着、インサート成型等を用いた溶着等によって収容体42に固定される。
【0063】
収容具41を固定するには、係合部43を弾性変形させることで、各開口部を第1挿入孔73a及び第2挿入孔74aに挿入する。そして係合部43と第1フランジ部44aとの間に第1パネル73を介在させるとともに、係合部43と第2フランジ部44bとの間に第2パネル74を介在させる。なお、収容具41の取り付けを容易にするため、各開口部は挿入孔に遊挿されるように構成されている。続いて、各パネルが組み付けられることで、中空構造体71が形成される。このとき、第1フランジ部44aは、第1挿入孔73aを囲繞するとともに、中空部72側のパネル面73cに沿って配置されている。また、第2フランジ部44bは、第2挿入孔74aを囲繞するとともに、中空部72側のパネル面74cに沿って配置されている。
【0064】
続いて、中空構造体71は、所定の温度で所定の時間加熱される。こうした加熱により、熱発泡性基体45が発泡及び硬化することで、発泡体(図示省略)が中空部72の所定位置に充填される。
【0065】
ここで、加熱により軟化した熱発泡性基体45が第1フランジ部44aに到達し、第1挿入孔73aに漏出する場合、第1フランジ部44aと中空部72側のパネル面73cとの隙間が漏出経路となる。第1フランジ部44aとパネル面73cとの隙間は、熱発泡性基体45が流動するに際して抵抗となるため、中空部72からの熱発泡性基体45の漏出が抑制される。同じく熱発泡性基体45が第2挿入孔74aに漏出する場合も、第2フランジ部44bとパネル面74cとの隙間は、熱発泡性基体45が流動するに際して抵抗となるため、中空部72からの熱発泡性基体45の漏出が抑制される。
【0066】
収容体42の内部には、例えば位置決め用のピン、ボルト、配線等の各種部材が配置される。本実施形態の収容体42は、第1挿入孔73a及び第2挿入孔74aに対応した一対の開口部を有するため、各種配線を中空構造体71の各パネル間に貫通させるに際して有効である。
【0067】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(9)各フランジ部34a,34bにより、中空部72からの熱発泡性基体45の漏出が抑制される。これにより、収容体42の内部で発泡体が形成されることを抑制することができる。しかも、こうした各フランジ部34a,34bは、その寸法を各挿入孔73a,74aの寸法に応じて変更することで、異なる寸法の各挿入孔73a,74aに対応することも容易であるため、収容具41の設計の煩雑化を極力回避することができる。従って、中空部72において各種部材が配置される空間を確保することの容易な発泡充填部位用の収容具41が提供される。
【0068】
(10)本実施形態の収容具41によれば、第1の実施形態の(2)〜(4)欄に記載した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
(第5の実施形態)
本発明を具体化した第5の実施形態について図7に基づいて詳細に説明する。
【0069】
本実施形態では、パネルの構成が第2の実施形態と異なるため、その構成を中心に説明する。図7(a)及び図7(b)に示すように、パネル83には、挿入孔83aが一対穿設されている。同パネル83において、中空部側のパネル面83cには一対のナット85がその孔を挿入孔83aに連通するように溶接されている。フランジ部24は、一対の挿入孔83aを囲繞するように配置される。また、同パネル83には、係合部23が係止される係止孔83bが穿設されている。収容具21は係止孔83bに係合部23を係止させることでパネル83に固定される。
【0070】
図7(c)に示すように、発泡体26が形成された後に、ナット85にボルト86を螺合することで、平板状の取着部材87が固定される。このようにボルト86の先端部を収容体22の内部に配置するに際して、発泡体26が障害となることが軽減又は防止される。こうした本実施形態の収容具21によれば、第2の実施形態の(5)及び第1の実施形態の(2)及び(4)欄に記載の作用効果を得ることができる。
【0071】
(第6の実施形態)
本発明を具体化した第6の実施形態について図8に基づいて詳細に説明する。
本実施形態では、パネルの構成と各種部材の配置態様が第1の実施形態と異なるため、その構成を中心に説明する。図8(a)に示すように、挿入孔63aの穿設されたパネル63の外方には、インナパネル88が配置されている。インナパネル88には、挿入孔63aに連通するように位置決め孔88aが形成され、同位置決め孔88aには、二点鎖線で示す位置決めピン89が挿入される。この位置決めピン89は、収容体12内に挿入されることで、インナパネル88とパネル63との相対位置を規定する。この状態で、インナパネル88とパネル63とが組み付けられる。
【0072】
その後、図8(b)に示すように中空部62に発泡体16が充填される。このとき、フランジ部14によって、中空部62からの熱発泡性基体15の漏出が抑制されるとともに、パネル面63bに沿って収容体12から離間する方向へ熱発泡性基体15を導くようになる。このため、パネル63とインナパネル88との間に、例えば配線90等の各種部材を配置するに際して、空間を確保することが容易である。このように、収容具11は、中空部62への各種部材の配置以外に、挿入孔63aの近傍に各種部材を配置する際にも、その配置空間を確保することが容易である。
【0073】
(第7の実施形態)
本発明を具体化した第7の実施形態について図9に基づいて詳細に説明する。
本実施形態では、中空構造体及び収容体の構成が第3の実施形態と異なるため、その構成を中心に説明する。
【0074】
図9(a)及び図9(b)に示すように、本実施形態の収容具51における収容体52は、断面円形状をなす管状部が分岐部を介して3方向に延設される形状をなすことで、3つの開口部を有している。
【0075】
本実施形態の中空構造体は、車両用ピラーの内部に配置される。中空構造体91は、第1挿入孔93aの穿設された第1パネル93、及び一対の第2挿入孔94a,94bの穿設された第2パネル94とから中空部92が形成されている。第1挿入孔93aは、一対の第2挿入孔94a,94bの間に配置されている。
【0076】
3つの開口部は、第1挿入孔93aを囲繞する第1フランジ部54aを有する開口部、第2挿入孔94aを囲繞する第2フランジ部54bを有する開口部、及び第2挿入孔94bを囲繞する第2フランジ部54cを有する開口部である。第1フランジ部54aは、中空部92側とは反対側のパネル面93bに沿って配置される構成である。各第2フランジ部54b,54cは、中空部92側のパネル面94cに沿って配置される構成である。第1フランジ部54aは、第1挿入孔93aの周方向全体にわたって囲繞する環状をなしている。各第2フランジ部54b,54cは、各第2挿入孔94a,94bの周方向全体にわたって囲繞する環状をなしている。
【0077】
収容体52の外面には、複数の熱発泡性基体55が一体に設けられている。この収容具51は、複数の係合部53により各パネル93,94に固定される。
本実施形態の収容具51によれば、図9(b)に示すように、中空部92に発泡体56が充填されるに際して、第3の実施形態の(7)欄、及び第1の実施形態の(2)〜(4)欄に記載した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0078】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・第1から第6の実施形態では、収容体12,22,32,42は円筒状をなしているが、多角筒状等の形状に変更してもよい。
【0079】
・第3及び第4の実施形態において、第1フランジ部34a,44aと第2フランジ部34b,44bとの位置は適宜変更されてもよい。この場合、例えば収容体32,42を屈曲した管状に形成することで、各開口部の位置を各挿入孔の位置に合わせることができる。
【0080】
・第7の実施形態では、収容体52は断面円形状をなす管状部を有しているが、管状部の断面形状を例えば多角形状に変更してもよい。
・第7の実施形態において、収容体52の管状部を4本以上に変更することで、4つ以上の開口部を有する構成としてもよい。
【0081】
・第1の実施形態では、フランジ部14と係合部13との間にパネル63を介在させることで、収容体12をパネル63に固定している。例えば、第7の実施形態のように、収容体12に係止部を設けるとともに、その係止部を係止させる係止孔をパネル63に形成することで、収容体12をパネル63に固定するように構成してもよい。なお、第2から第6の実施形態の係合部についても、同様に変更することができる。
【0082】
・第1の実施形態において、係合部13を設けずに、例えば収容体12に接着層又は粘着層を固定手段として設けることで、収容具11をパネル63に固定するように構成してもよい。また例えば、係合部13と粘着層とにより固定するように、異なる固定手段を併用してもよい。なお、第2から第7の実施形態の収容具についても、同様に変更することができる。
【0083】
・第3及び第4の実施形態において、収容体32,42が第1パネル73及び第2パネル74の一方に固定されるように係合部33,43を設けてもよい。なお、第7の実施形態の収容具51についても、同様に変更してもよい。
【0084】
・前記各実施形態のフランジ部の厚さ寸法は、適宜変更可能である。例えばフランジ部を薄肉化することで、挿入孔に挿入可能な弾性を有するように構成してもよい。これにより、パネルの両面のいずれの方向からも収容具を取着することができる。
【0085】
・第1の実施形態のフランジ部14は、挿入孔63aの周方向全体にわたって囲繞する環状をなしているが、挿入孔63aの周方向に沿った一部において囲繞する形状に変更してもよい。例えば、フランジ部14を、挿入孔63aの周方向に沿って配置される複数から構成することもできる。なお、第2から第7の実施形態の各フランジ部についても、上記と同様に変更してもよい。
【0086】
・第3、第4及び第7の実施形態では、熱発泡性基体35,45,55は、それぞれ収容体32,42,52に一体に設けられているが、熱発泡性基体35,45,55を収容体32,42,52とは別体として構成してもよい。この場合、熱発泡性基体35,45,55から発泡体を形成する以外に、流動性を有する発泡材から発泡体を形成させてもよい。すなわち、収容具31,41,51を取り付けた中空構造体71,91において、その中空部72,92に流動性を有する発泡材を注入し、その発泡材を反応させることで発泡体を形成してもよい。こうした流動性を有する発泡材としては、例えば二液又は一液からなる化学反応型発泡材(ウレタン系発泡材等)が挙げられる。また、第1、第2、第5及び第6の実施形態においても、流動性を有する発泡材から発泡体を形成させてもよい。
【0087】
・前記各実施形態では、収容具を車両用ピラーに適用しているが、例えば車両のドア、バンパ等を構成する車両用中空構造体に適用してもよい。また、鉄道用、船舶用、航空機用、建築用等に適用される中空構造体に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】(a)は第1の実施形態の収容具を示す半断面図、(b)は収容具の上面図。
【図2】(a)は収容具を中空構造体に取着する状態を説明する部分断面図、(b)は中空構造体に取着された収容具を示す部分断面図、(c)は発泡体が充填された中空構造体を示す部分断面図。
【図3】(a)は第2の実施形態の収容具を示す半断面図、(b)は収容具の上面図。
【図4】(a)は収容具を中空構造体に取着する状態を説明する部分断面図、(b)は中空構造体に取着された収容具を示す部分断面図、(c)は発泡体が充填された中空構造体を示す部分断面図。
【図5】(a)は第3の実施形態の収容具を示す半断面図、(b)は中空構造体に取着された収容具を示す部分断面図。
【図6】(a)は第4の実施形態の収容具を示す半断面図、(b)は中空構造体に取着された収容具を示す部分断面図。
【図7】(a)は第5の実施形態の収容具を中空構造体に取着する状態を説明する部分断面図、(b)は中空構造体に取着された収容具の一部を切り欠いて示す部分断面図、(c)は発泡体が充填された中空構造体を示す部分断面図。
【図8】(a)は第6の実施形態の収容具を中空構造体に取着した状態を示す部分断面図、(b)は各種部材の配置態様を説明する部分断面図。
【図9】(a)は第7の実施形態の収容具を中空構造体に取着した状態を示す部分断面図、(b)は発泡体が充填された中空構造体を示す部分断面図。
【符号の説明】
【0089】
11,21,31,41,51…収容具、12,22,32,42,52…収容体、13,23,33,43,53…係合部、14,24…フランジ部、15,25,35,45,55…熱発泡性基体、16,26,56…発泡体、34a,44a,54a…第1フランジ部、34b,44b,54b,54c…第2フランジ部、61,71,91…中空構造体、62,72,92…中空部、63,83…パネル、63a,83a…挿入孔、63b,63c,73b,73c,74c,83c,93b,94c…パネル面、73,93…第1パネル、73a,93a…第1挿入孔、74,94…第2パネル、74a,94a,94b…第2挿入孔、83b…係止孔、85…ナット、86…ボルト、87…固定部材、88…インナパネル、88a…位置決め孔、89…位置決めピン、90…配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルにより形成される中空部を有する中空構造体の前記パネルに穿設された挿入孔を通じて前記中空部内に挿入される部材を収容する収容体と、前記収容体を前記パネルに固定する固定手段とを備え、前記中空部において発泡体を充填する部位に前記収容体が配置される発泡充填部位用の収容具であって、
前記収容体は、前記部材が挿入される開口部を有する有底筒状をなし、
前記開口部には、前記挿入孔を囲繞するフランジ部が設けられ、
前記フランジ部は、前記中空部側とは反対側のパネル面に沿って配置される構成であることを特徴とする発泡充填部位用の収容具。
【請求項2】
パネルにより形成される中空部を有する中空構造体の前記パネルに穿設された挿入孔を通じて前記中空部内に挿入される部材を収容する収容体と、前記収容体をパネルに固定する固定手段とを備え、前記中空部において発泡体を充填する部位に前記収容体が配置される発泡充填部位用の収容具であって、
前記収容体は、前記部材が挿入される開口部を有する有底筒状をなし、
前記開口部には、前記挿入孔を囲繞するフランジ部が設けられ、
前記フランジ部は、前記中空部側のパネル面に沿って配置される構成であることを特徴とする発泡充填部位用の収容具。
【請求項3】
前記フランジ部が、前記挿入孔の周方向全体にわたって囲繞する環状をなしていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発泡充填部位用の収容具。
【請求項4】
前記固定手段が、前記挿入孔を有するパネルを前記フランジ部との間に介在させる係合部であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発泡充填部位用の収容具。
【請求項5】
前記フランジ部及び前記固定手段が前記収容体と一体成形されてなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発泡充填部位用の収容具。
【請求項6】
第1挿入孔の穿設された第1パネルと第2挿入孔の穿設された第2パネルとにより形成される中空部を有する中空構造体の前記第1挿入孔又は前記第2挿入孔を通じて前記中空部に挿入される部材を収容する収容体と、前記収容体を前記第1パネル及び前記第2パネルの少なくとも一方に固定する固定手段とを備え、前記中空部において発泡体を充填する部位に前記収容体が配置される発泡充填部位用の収容具であって、
前記収容体は、前記部材が挿入される複数の開口部を有し、
前記複数の開口部は、
前記第1挿入孔を囲繞する第1フランジ部が設けられた開口部と、
前記第2挿入孔を囲繞する第2フランジ部が設けられた開口部とを含み、
前記第1フランジ部は、前記中空部側とは反対側のパネル面に沿って配置される構成であるとともに、前記第2フランジ部は、前記中空部側のパネル面に沿って配置される構成であることを特徴とする発泡充填部位用の収容具。
【請求項7】
第1挿入孔の穿設された第1パネルと第2挿入孔の穿設された第2パネルとにより形成される中空部を有する中空構造体の前記第1挿入孔又は前記第2挿入孔を通じて前記中空部に挿入される部材を収容する収容体と、前記収容体を前記第1パネル及び前記第2パネルの少なくとも一方に固定する固定手段とを備え、前記中空部において発泡体を充填する部位に前記収容体が配置される発泡充填部位用の収容具であって、
前記収容体は、前記部材が挿入される複数の開口部を有し、
前記複数の開口部は、
前記第1挿入孔を囲繞する第1フランジ部が設けられた開口部と、
前記第2挿入孔を囲繞する第2フランジ部が設けられた開口部とを含み、
前記第1フランジ部及び第2フランジ部は、前記中空部側のパネル面に沿って配置される構成であることを特徴とする発泡充填部位用の収容具。
【請求項8】
前記第1フランジ部及び第2フランジ部の少なくとも一方が、その配置される挿入孔をその周方向全体にわたって囲繞する環状をなしていることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の発泡充填部位用の収容具。
【請求項9】
前記固定手段が、
前記第1パネルを前記第1フランジ部との間に介在させる係合部、及び前記第2パネルを前記第2フランジ部との間に介在させる係合部の少なくとも一方の係合部であることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の発泡充填部位用の収容具。
【請求項10】
前記収容体、前記第1フランジ部、前記第2フランジ部、及び前記固定手段が一体成形されてなることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の発泡充填部位用の収容具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−132135(P2010−132135A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309978(P2008−309978)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000101905)イイダ産業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】