説明

発泡剤混合樹脂粉粒体及び発泡樹脂成形品の製造方法

【課題】発泡倍率が安定しかつ耐熱性及び耐衝撃性が高い発泡樹脂成形品を製造することが可能な発泡剤混合樹脂粒体及び発泡樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のエンジンカバー10の製造方法では、エンジンカバー10の主成分であるベース樹脂(ポリアミド)を、発泡剤混合樹脂粉粒体にて発泡させてエンジンカバー10を成形する。その発泡剤混合樹脂粉粒体は、発泡剤の粉粒体と樹脂の粉粒体とを結合剤にて結合させた構造になっているので、発泡剤の発泡開始温度より融点が高い高耐熱樹脂(ポリアミド)を発泡剤の粉粒体の結合対象の樹脂として使用することができる。これにより、耐熱性が要求されるエンジンカバー10を製造する場合に、ベース樹脂の融点とそのベース樹脂に発泡剤と共に添加される樹脂の融点との差異が抑えられ、それら樹脂同士の相溶性の低下を防ぎ、耐熱性及び耐衝撃性が高いエンジンカバー10を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂成形品の主成分であるベース樹脂を発泡剤にて発泡させて成形する発泡樹脂成形品の製造方法と、そのような製造方法に用いられる発泡剤混合樹脂粉粒体とに関する。
【背景技術】
【0002】
発泡樹脂成形品の製造方法として、発泡樹脂成形品の主成分であるベース樹脂のペレットに発泡剤の粉粒体をドライブレンドして射出成形機に投入する製造方法が知られている。しかしながら、大量のベース樹脂のペレットに、少量かつ微細な発泡剤の粉粒体をドライブレンドしても均一に分散させることができず、発泡倍率のばらつきが発生する。このため、従来は、発泡剤の粉粒体をその発泡開始温度より融点が低い樹脂の溶融物に混練(コンパウンド)して発泡剤マスターバッチのペレットを予め製造しておき、ベース樹脂のペレットと発泡剤マスターバッチのペレットとをドライブレンドする方法が採られていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−2998号公報(請求項1、段落[0002])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したベース樹脂の種類と発泡剤マスターバッチに含まれる樹脂(以下、「バッチ樹脂」という)の種類との組み合わせ次第で、それら樹脂を混練してなる発泡樹脂成形品の剛性、強度等を調整することができる。しかしながら、ベース樹脂の融点とバッチ樹脂の融点との差異が大きくなると、それら樹脂同士の相溶性が大きく低下して十分な耐衝撃性(靱性)を得ることができなくなる。そして、上記した従来の製造方法では、発泡剤の発泡開始温度より融点が低いバッチ樹脂を使用する必要があるので、例えば、自動車部品のように耐熱性が要求される発泡樹脂成形品を製造する場合に、ベース樹脂の融点とバッチ樹脂の融点との差異が大きくなり、耐衝撃性が不足するという問題が生じていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、発泡倍率が安定しかつ、耐熱性及び耐衝撃性が高い発泡樹脂成形品を製造することが可能な発泡剤混合樹脂粒体及び発泡樹脂成形品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る発泡剤混合樹脂粉粒体は、発泡樹脂成形品の主成分であるベース樹脂に混ぜて溶融され、ベース樹脂を発泡させる発泡剤混合樹脂粉粒体であって、発泡剤の粉粒体と、その発泡剤の発泡開始温度に比べて融点に代表される溶融開始温度が高い高耐熱樹脂の粉粒体とを結合剤にて結合させて含むことところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発泡剤混合樹脂粉粒体において、結合剤は、常温で固体であって、結合剤の融点に代表される溶融開始温度が前記発泡剤の発泡開始温度よりも低いところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の発泡剤混合樹脂粉粒体において、高耐熱樹脂は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、その他の重縮合系ポリマー、若しくは、これらの混合物であるところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1の請求項に発泡剤混合樹脂粉粒体において、発泡剤の平均の粉粒体径は、5〜30μmであり、高耐熱樹脂の平均の粉粒体径は、1〜100μmであるところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明に係る発泡樹脂成形品の製造方法は、発泡樹脂成形品の主成分であるベース樹脂を溶融状態で発泡剤にて発泡させて成形する発泡樹脂成形品の製造方法において、発泡剤の粉粒体と、その発泡剤の発泡開始温度に比べて融点に代表される溶融開始温度が高い高耐熱樹脂の粉粒体とを結合剤にて結合させて含む発泡剤混合樹脂粉粒体を予め造粒しておき、発泡剤混合樹脂粉粒体をベース樹脂に混ぜて溶融させると共に発泡剤にて高耐熱樹脂及びベース樹脂を発泡させるところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項5に記載の発泡樹脂成形品の製造方法において、発泡剤の粉粒体と高耐熱樹脂の粉粒体との混合粉粒体を加圧した状況下で結合剤にて結合させるところに特徴を有する。
【0012】
請求項7の発明は、請求項5又は6に記載の発泡樹脂成形品の製造方法において、高耐熱樹脂とベース樹脂とに同じ樹脂を用いるところに特徴を有する。
【0013】
請求項8の発明は、請求項5又は6に記載の発泡樹脂成形品の製造方法において、高耐熱樹脂とベース樹脂とに異なる樹脂を用いるところに特徴を有する。
【0014】
請求項9の発明は、請求項5乃至8の何れか1の請求項に記載の発泡樹脂成形品の製造方法において、ベース樹脂のペレットと、発泡剤混合樹脂粉粒体とを略同一の大きさに生成しておき、それらベース樹脂のペレットと発泡剤混合樹脂粉粒体とをドライブレンドしてから溶融させるところに特徴を有する。
【0015】
[融点に代表される溶融開始温度]
本発明に係る「融点に代表される溶融開始温度」とは、融点を有する樹脂に関してはその融点、融点を有しない樹脂に関しては、その樹脂がガラス転移してから押出成形が可能な程度に溶融される温度をいう。
【0016】
[高耐熱樹脂]
本発明に係る「高耐熱樹脂」としては、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン又はポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートのホモポリマー、共重合ポリマー、ブレンドポリマーが挙げられる。
【0017】
ポリアミドとしては、6−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、46−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロン等のホモポリマー、共重合ポリマー又はブレンドポリマーが挙げられる。ポリエステルとしては、芳香族系ポリエステルが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のホモポリマー、共重合ポリマー又はブレンドポリマーである。ポリカーボネートとしては、脂肪族系ポリカーボネート、芳香族系ポリカーボネートの何れであってもよい。具体例としては、ビスフェノールA−ポリカーボネート(BisA−PC)、イソソルバイド−ポリカーボネート等のホモポリマー、共重合ポリマー又はブレンドポリマーが挙げられる。アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン(ABS)としては、特に共重合比に制限されることはなく、ブタジエンの比率を低下させた難燃性ABSであってもよい。ポリフェニレンエーテルとしては、ポリフェニレンエーテルを主成分として他の合成樹脂とアロイ化した変性ポリフェニレンエーテルであってもよい。変性ポリフェニレンエーテルの例としては、スチレン変性ポリフェニレンエーテルやポリオレフィン変性ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
【0018】
[発泡剤]
本発明に係る「発泡剤」としては、反応型であっても、熱分解型であってもよいが、好ましくは熱分解型である。また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、これらは単独であっても2種以上を併用してもよい。反応型では、炭酸水素ナトリウムと酸との混合物等の無機系化学発泡剤と、イソシアネート化合物のような有機系化学発泡剤とが挙げられる。熱分解型では、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸亜鉛、硝酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の無機系化学発泡剤と、アゾ化合物、ニトロソ化合物、スルホニルヒドラジド化合物、スルホニルセミカルバジド化合物、トリアゾール化合物等の有機系化学発泡剤とが挙げられる。有機系化学発泡剤としては、具体的には、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。
【0019】
[結合剤]
本発明に係る「結合剤」としては、水に代表されるような無機系結合剤であっても、有機系結合剤であってもよいが、好ましくは有機系結合剤である。有機系結合剤としては、具体的には、ワックス、流動パラフィン、ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0020】
[発泡樹脂成形品の製造方法]
発泡成形の際に、ベース樹脂を溶融する装置は、公知の技術であれば特に限定されない。例えば、単軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー等の溶融混練機がよく用いられる。また、発泡剤混合樹脂粒体とベース樹脂との混合は、溶融混練する際、ベース樹脂とは別に発泡剤混合樹脂粒体をフィードすることも出来るし、溶融混練前に行うことも出来る。溶融混練前に混合する場合は周知の混合装置であれば特に限定されるものではなく、例えばタンブラー、フロージェットミキサー等が挙げられる。
【0021】
[発泡剤混合樹脂粉粒体の造粒]
本発明に係る造粒法は公知の造粒技術であって、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、特に限定されない。具体的には、転動造粒法、圧縮造粒法、押出造粒法等が挙げられる。さらに成形体を粉砕し所望の粒径に調整してもよい。
【0022】
また、化学発泡剤、高耐熱樹脂の配合比は、発泡剤混合樹脂粉粒体全体を100質量%としたときに化学発泡剤が1〜50質量%、高耐熱樹脂が50〜99質量%であれば特に限定されないが、好ましくは化学発泡剤8〜12質量%、高耐熱樹脂88〜92質量%である。
【0023】
本発明に係る「発泡剤混合樹脂粉粒体」には、発泡剤以外にも、発泡核剤、強化剤を含有させることができる。発泡核剤としては、例えば、タルク、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。強化剤としては、ガラス繊維、カーボンブラック、グラファイト、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等が挙げられる。
【0024】
また、本発明に係る「発泡剤混合樹脂粉粒体」には、必要に応じてさらに、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤等を含有させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る発泡剤混合樹脂粉粒体は、発泡剤の粉粒体と樹脂の粉粒体とを結合剤にて結合させた構造になっているので、発泡剤の発泡開始温度より溶融開始温度が高い高耐熱樹脂を発泡剤の粉粒体の結合対象の樹脂として使用することができる。これにより、耐熱性が要求される発泡樹脂成形品を製造する場合に、ベース樹脂の融点とそのベース樹脂に発泡剤と共に添加される樹脂(高耐熱樹脂)の融点との差異が抑えられ、それら樹脂同士の相溶性の低下を防ぎ、耐熱性及び耐衝撃性が共に高い発泡樹脂成形品を製造することが可能になる。また、本発明の発泡剤混合樹脂粉粒体に含まれる高耐熱樹脂の粉粒体は、従来の発泡剤マスターバッチに使用される樹脂と同様に、発泡剤に対する増量剤の役割を果たすので、従来の発泡剤マスターバッチと同様に、本発明の発泡剤混合樹脂粉粒体によっても、ベース樹脂に発泡剤を均一に分散させることができ、発泡倍率が安定させることができる。
【0026】
ここで、ベース樹脂のペレットと発泡剤混合樹脂粉粒体とを略同一の大きさに生成しておき、それらベース樹脂のペレットと発泡剤混合樹脂粉粒体とをドライブレンドすれば、発泡剤の分散の均一性が向上する(請求項9の発明)。また、高耐熱樹脂とベース樹脂とに同じ樹脂を用いれば、それら樹脂同士の相溶性の高くなり、耐衝撃性を高くすることができる(請求項7の発明)。さらに、高耐熱樹脂とベース樹脂とに異なる樹脂を用いることで、発泡樹脂成形品の剛性、強度等を調整することができる(請求項8の発明)。また、発泡剤混合樹脂粉粒体を造粒する際に、発泡剤の粉粒体と高耐熱樹脂の粉粒体との混合粉粒体を加圧した状況下で結合剤にて結合させることで、結合強度を高めることできる(請求項6の発明)。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(A)本発明の実施形態に係るエンジンカバーの上面側斜視図、(B)エンジンカバーの下面側斜視図
【図2】(A)コアバック動作前の成形金型の側断面図,(B)コアバック動作後の成形金型の側断面図
【図3】(A)コアバック動作前の成形金型の拡大側断面図,(B)樹脂充填時の成形金型の拡大側断面図,(C)コアバック動作後の成形金型の拡大側断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る発泡樹脂成形品の製造方法の一実施形態を、図1〜図3に基づいて説明する。図1に示した本発明に係る「発泡樹脂成形部品」としてのエンジンカバー10は、ポリアミドを主成分とした樹脂成形品であって、エンジン(図示せず)に上方から対向する主板壁11の外縁部から囲壁12を垂下し、その囲壁12の内側部分に、主板壁11から突出した補強壁13を備えた構造になっている。なお、エンジンカバー10のうちエンジンとの対向面には、主板壁11及び補強壁13を覆うように図示しないスポンジ構造の発泡吸音部材が固着されている。
【0029】
このエンジンカバー10の製造方法は以下のようである。図2(A)には、エンジンカバー10を成形するためのコアバック型射出発泡成形機20に備えた成形金型21が示されている。この成形金型21は、例えば、水平方向に型開き可能な固定型22と可動型23とからなる。その可動型23には、エンジンカバー10の平面形状と同形状の開口を有したメイン凹部23Aが備えられ、固定型22にはそのメイン凹部23A内に嵌合可能なメイン突部22Aが設けられている。そして、メイン凹部23Aにメイン突部22Aを突入させて固定型22と可動型23とが型閉じされ、その型閉じ状態で、メイン凹部23Aの奥面及び内側面と、メイン突部22Aの先端面及び外側面との間にエンジンカバー10を成形するためのキャビティ24が形成される。
【0030】
より具体的には、固定型22と可動型23のうち開閉方向(水平方向)で対向する対向面22T,23Tの間でエンジンカバー10の主板壁11が成形され、固定型22側の対向面に陥没形成された溝部22Mで補強壁13が成形され、さらに、メイン凹部23Aの内側面23Sと、メイン突部22Aの外側面22Sとの間で囲壁12が成形される。また、固定型22のうちメイン突部22Aの外側面に形成された段差面22Dによって囲壁12の端面が成形される。そして、固定型22には、コアバック型射出発泡成形機20のシリンダー(図示せず)に連通したライナー25が形成され、そのライナー25からキャビティ24内に溶融状態の樹脂組成物が充填される。
【0031】
さて、成形金型21は、型閉じ状態になると、図2(A)に示すように、可動型23が固定型22の所定箇所に当接して全閉位置に位置決めされる。そして、図2(B)に示すように、全閉位置から可動型23を所定量だけ固定型22から離脱する側に後退させたコアバック位置に保持可能となっている。その可動型23が全閉位置からコアバック位置に移動する動作により、キャビティ24のうち固定型22及び可動型23の対向面22T,23Tの間の隙間(図2のt1,t2参照)が広げられる。
【0032】
さて、コアバック型射出発泡成形機20に投入する樹脂組成物としては、例えば、ポリアミドを80.197質量%、発泡剤を0.3質量%、タルクを19.5質量%、結合剤を0.003質量%の割合で含みかつ全体が100質量%の部品成形用樹脂組成物を使用する。ここで、本実施形態では、上記部品成形用樹脂組成物100質量%のうちポリアミド2.697質量%と、発泡剤0.3質量%とを、結合剤0.003質量%にて結合させて、上記部品成形用樹脂組成物100質量%に対する3質量%の発泡剤混合樹脂粉粒体を予め造粒しておく。そして、その発泡剤混合樹脂粉粒体3質量%と、残りのポリアミド77.5質量%と、タルク19.5質量%とをドライブレンドして100質量%の部品成形用樹脂組成物を生成し、その部品成形用樹脂組成物をコアバック型射出発泡成形機20の図示しないシリンダに投入する。
【0033】
詳細には、発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)を使用し、その発泡剤の発泡開始温度は180〜210℃であって、ポリアミドの融点の220℃より低くなっている。このため、溶融状態のポリアミドに発泡剤をコンパウンドして発泡マスターバッチを製造することはできない。そこで、ポリアミドを溶融させずに結合剤にて発泡剤と結合させて発泡剤混合樹脂粉粒体を生成する。
【0034】
そのために、平均の粉粒体径が1〜100μmのポリアミドの粉粒体と、平均の粉粒体径が5〜30μmの発泡剤の粉粒体と、結合剤(例えば、ワックス)とを混合し、結合剤の融点(例えば、結合剤がワックスの場合には、80℃)以上に加熱することで、ポリアミドの粉粒体と発泡剤の粉粒体とを均等に分散させて粉粒体同士の間に液状の結合剤が付着した粉粒体混合物を生成する。なお、ポリアミドの粉粒体は、市販のパウダーでもよいし、ペレットを、例えば図示しない粉砕器で粉砕して調整したものでもよい。
【0035】
次いで、その粉粒体混合物を、例えば、加圧して図示しない漏斗状の容器に通して線状に成形し、結合剤が固化したら所定長にカットする。これにより、ポリアミドのペレットと略同じ大きさの発泡剤混合樹脂粉粒体を生成することができる。なお、本実施形態では、発泡剤とポリアミドの混合粉粒体を加圧した状況下で結合剤にて結合させるので、それら発泡剤とポリアミドとの結合強度が高い発泡剤混合樹脂粉粒体を生成することができ、次述するドライブレンドの際に、発泡剤混合樹脂粉粒体が破壊され難くなる。
【0036】
このようにして生成した発泡剤混合樹脂粉粒体3質量%と、ポリアミド77.5質量%と、タルク19.5質量%とをドライブレンドすることで、上記したポリアミド80.197質量%、発泡剤0.3質量%、タルク19.5質量%、結合剤0.003質量%からなる100質量%の部品成形用樹脂組成物を生成する。このとき、発泡剤混合樹脂粉粒体とポリアミドのペレットとは略同一の大きさになっているので、それらが均等にブレンドされ、発泡剤の分散の均一性も高くなる。
【0037】
次いで、上記した部品成形用樹脂組成物をコアバック型射出発泡成形機20の図示しないシリンダに投入する。そして、シリンダ内でポリアミドを融点(220℃)以上に加熱して溶融状態とし、その溶融状態のポリアミドにガラス繊維、タルク、発泡剤を混練して分散させる。このとき、発泡剤が発泡開始温度(180〜210℃)以上に加熱されて発泡が開始する。
【0038】
次いで、可動型23を全閉位置に配置した状態で(図2(A)及び図3(A)参照)、シリンダ内における溶融状態の部品成形用樹脂組成物をライナー25からキャビティ24に充填する(図3(B)参照)。そして、部品成型用樹脂組成物がキャビティ24全体に行き渡ったら、図3(B)に示すように、部品成型用樹脂組成物の表面部分のみが固化して内部が溶融状態になっている間に可動型23を全閉位置からコアバック位置に移動する。これにより、溶融状態の部品成型用樹脂組成物の発泡が急峻に促進されて、その結果、エンジンカバー10の主板壁11が、図3(C)に示すように、1対の非発泡樹脂層11A,11Aの間に発泡樹脂層11Bを挟んだ内部発泡構造になる。
【0039】
次いで、キャビティ24内の樹脂全体が固化したら、可動型23を固定型22から離間させて成形金型21からエンジンカバー10を取り出す。その後、エンジンカバー10を図示しない発泡成形金型にインサートして、図示しないスポンジ構造の吸音発泡部材を成形し、エンジンカバー10の全ての製造工程が完了する。
【0040】
このように本実施形態では、エンジンカバー10の主成分であるベース樹脂(ポリアミド)を発泡させるための発泡剤混合樹脂粉粒体が、発泡剤の粉粒体と樹脂の粉粒体とを結合剤にて結合させた構造になっているので、発泡剤の発泡開始温度より融点が高い高耐熱樹脂を発泡剤の粉粒体の結合対象の樹脂として使用することができる。これにより、耐熱性が要求されるエンジンカバー10のような発泡樹脂成形品を製造する場合に、エンジンカバー10の主成分であるベース樹脂の融点とそのベース樹脂に発泡剤と共に添加される樹脂(高耐熱樹脂)の融点との差異が抑えられる。特に、本実施形態では、ベース樹脂とそのベース樹脂に発泡剤と共に添加される樹脂は、共にポリアミドで融点に差がなくなる。これにより、エンジンカバー10の主成分であるベース樹脂と発泡剤と共に添加される樹脂との相溶性の低下が防がれ、耐熱性及び耐衝撃性が共に高いエンジンカバー10を製造することが可能になる。また、発泡剤混合樹脂粉粒体に含まれる高耐熱樹脂の粉粒体は、従来の発泡剤マスターバッチに使用される樹脂と同様に、発泡剤に対する増量剤の役割を果たすので、従来の発泡剤マスターバッチと同様に、発泡剤混合樹脂粉粒体によっても、ベース樹脂に発泡剤を均一に分散させることができ、発泡倍率が安定させることができる。
【0041】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0042】
(1)前記実施形態では、本発明に係る製造方法として、エンジンカバー10の製造方法を例示したが、例えば、オイルパン、シリンダーヘッドカバー、インテークマニホールド等のエンジンカバー以外の自動車用発泡樹脂成形品や、調理器具、医療機器等、自動車用以外の発泡樹脂成形品の製造方法及びそれらの製造方法で使用する発泡剤混合樹脂粉粒体に本発明を適用してもよい。
【0043】
(2)前記実施形態では、コアバック式の発泡成形方法を例示したが、コアバックを行わずに単にキャビティに発泡樹脂を充填する成形方法や超微細発泡射出成形工法による発泡樹脂成形品の製造方法に本発明を適用してもよい。
【0044】
(3)前記実施形態における発泡剤混合樹脂粉粒体は、発泡剤と高耐熱樹脂(ポリアミド)と結合剤のみから構成されていたが、発泡剤と高耐熱樹脂にタルクやガラス繊維を加えて結合剤にて結合して本発明に係る発泡剤混合樹脂粉粒体としてもよい。
【0045】
(4)前記実施形態では、エンジンカバー10の主成分であるベース樹脂と、発泡剤混合樹脂粉粒体に含まれる高耐熱樹脂とが、同一の樹脂(ポリアミド)であったが、ベース樹脂と高耐熱樹脂とに異なる樹脂を使用して、発泡樹脂成形品の剛性、強度等を調整してもよい。
【0046】
(5)前記実施形態では、発泡剤混合樹脂粉粒体を生成するために高耐熱樹脂(ポリアミド)を粉砕して発泡剤の粉粒体と結合させていたが、ペレット状態の高耐熱樹脂(ポリアミド)の表面に発泡剤の粉粒体を結合させてもよい。
【0047】
(6)前記実施形態では、エンジンカバー10の主成分であるベース樹脂と、発泡剤混合樹脂粉粒体とをドライブレンドしてから射出発泡成形機のシリンダに投入していたが、ベース樹脂を先に射出発泡成形機のシリンダにて溶融状態にしてから、その溶融状態のベース樹脂に発泡剤混合樹脂粉粒体を混入させてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 エンジンカバー
11B 発泡樹脂層
20 コアバック型射出発泡成形機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂成形品の主成分であるベース樹脂に混ぜて溶融され、前記ベース樹脂を発泡させる発泡剤混合樹脂粉粒体であって、
発泡剤の粉粒体と、その発泡剤の発泡開始温度に比べて融点に代表される溶融開始温度が高い高耐熱樹脂の粉粒体とを結合剤にて結合させて含むことを特徴とする発泡剤混合樹脂粉粒体。
【請求項2】
前記結合剤は、常温で固体であって、前記結合剤の融点に代表される溶融開始温度が前記発泡剤の発泡開始温度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の発泡剤混合樹脂粉粒体。
【請求項3】
前記高耐熱樹脂は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、その他の重縮合系ポリマー、若しくは、これらの混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡剤混合樹脂粉粒体。
【請求項4】
前記発泡剤の平均の粉粒体径は、5〜30μmであり、前記高耐熱樹脂の平均の粉粒体径は、1〜100μmであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1の請求項に発泡剤混合樹脂粉粒体。
【請求項5】
発泡樹脂成形品の主成分であるベース樹脂を溶融状態で発泡剤にて発泡させて成形する発泡樹脂成形品の製造方法において、
前記発泡剤の粉粒体と、その発泡剤の発泡開始温度に比べて融点に代表される溶融開始温度が高い高耐熱樹脂の粉粒体とを結合剤にて結合させて含む発泡剤混合樹脂粉粒体を予め造粒しておき、
前記発泡剤混合樹脂粉粒体を前記ベース樹脂に混ぜて溶融させると共に前記発泡剤にて前記高耐熱樹脂及び前記ベース樹脂を発泡させることを特徴とする発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記発泡剤の粉粒体と前記高耐熱樹脂の粉粒体との混合粉粒体を加圧した状況下で前記結合剤にて結合させることを特徴とする請求項5に記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記高耐熱樹脂と前記ベース樹脂とに同じ樹脂を用いることを特徴とする請求項5又は6に記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記高耐熱樹脂と前記ベース樹脂とに異なる樹脂を用いることを特徴とする請求項5又は6に記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
前記ベース樹脂のペレットと、前記発泡剤混合樹脂粉粒体とを略同一の大きさに生成しておき、それらベース樹脂のペレットと前記発泡剤混合樹脂粉粒体とをドライブレンドしてから溶融させることを特徴とする請求項5乃至8の何れか1の請求項に記載の発泡樹脂成形品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−26397(P2011−26397A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171774(P2009−171774)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】