説明

発泡導電性ゴムローラ

【課題】ローラ外周の全面にわたり電気抵抗値が均一な発泡導電性ゴムローラを提供する。
【解決手段】導電性軸体上に発泡ゴム層が設けられている発泡導電性ゴムローラにおいて、該発泡ゴム層のゴム組成物に、少なくともゴム成分、化学発泡剤、硫黄およびチウラム系加硫促進剤が配合され、該チウラム系加硫促進剤を平均径40μm以下である凝集物が任意位置の単位面積(mm2)当たりに3個以下である加硫促進剤マスターバッチの形態で配合してなることを特徴とする発泡導電性ゴムローラを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンター等の電子写真電子写真装置において、感光体廻りで好適に使用される帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等の発泡導電性ゴムローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンター等のOA機器の電子写真装置においては、コロナ放電により高電圧を印加する非接触型の帯電法が用いられていた。しかしながら、この帯電法ではコロナ放電に伴い有害なオゾンが発生する問題がある。そこで近年では、電圧を印加した導電性ゴムローラを感光体表面に押し当て、絶縁体表面を帯電する接触帯電方式を用いた電子写真が主流となっており、電子写真の中心であるOPCなどの感光体を用いた感光体ドラム廻りに帯電、転写などの各工程毎に導電性ゴムローラが用いられている。
【0003】
このような導電性ゴムローラは、従来、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム中にカーボンブラック等の導電性フィラーを充填することにより導電性を付与した電子導電系ゴム組成物が用いられている。しかしながら、導電性フィラー充填系は導電性フィラーの充填量や分散状態、ゴム組成物の成形条件などにより電気抵抗にばらつきを生じ、また電気抵抗が印加電圧に依存する(電圧依存性)ため均一な画像が得にくいという問題点があった。このような問題を解決する方法として、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)やエピクロルヒドリン系ゴム等の極性ゴムを用いることが知られている。極性ゴムはポリマー内に極性基が存在するためイオン導電性を示し、ゴム材自身が導電性をもつため抵抗のばらつきが小さく、また電気抵抗の電圧依存性が小さいため導電性ゴムローラに適していることが知られている。
【0004】
また、上記のような導電性ゴムローラは先に述べた電気特性(電気抵抗、電気抵抗ムラ、電圧依存性)や、電気特性の環境依存性の他、ドラムとの密着性を高めるため適度に低硬度であることが望まれている。ローラ硬度が高い場合、感光ドラム等とのニップ幅が小さくなるため、例えば、転写ローラの場合、転写率が低下したり、感光体の表面の摩耗や損傷により画像の欠陥を生じやすい。また硬度が低すぎる場合は、柔らかすぎて圧縮永久歪が大きくなり耐久性が劣るほか、搬送力が強くなりすぎ画像に欠陥を生じやすい。
【0005】
導電性ゴムローラの低硬度化の方法としては、軟化剤や可塑剤等の各種添加剤を用いる方法が挙げられるが、軟化剤や可塑剤等を添加した導電性ゴムローラを感光体ドラムと接触使用した場合、導電性ゴムローラ内から低分子量の各種添加剤がブリードアウトし感光体表面に付着することで、画像劣化や感光体汚染等を起こすという問題が生じ易い。そのため、導電性ゴムローラの低硬度化は、一般的に、化学発泡剤を用いて発泡弾性ゴムローラを得る方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
化学発泡とは、ゴム成分に化学発泡剤を配合し加熱発泡させる方法であり、最も一般的な化学発泡剤は有機発泡剤である。有機発泡剤は、熱の影響下で化学的に分解し、ガスを放出する物質である。この方法では一定の温度範囲で速やかに発生ガスが放出されるため、比較的大きい気泡が形成され、低硬度でかつ弾性に優れた導電性ローラを得ることが可能となる。
【0007】
また、導電性ゴムローラに用いられるゴム組成物は、硫黄加硫を用いる場合が多い。その場合、加硫促進剤としてテトラエチルチウラムジスルフィドやジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドといったチウラム系化合物とジベンゾチアジルジスルフィドや2-メルカプトベンゾチアゾールといったチアゾール系化合物を併用して用いることが多く、導電性ゴムローラを得る上で、チウラム系加硫促進剤の存在は重要となっている。
【特許文献1】特開2002-115714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、化学発泡剤を用いて発泡ゴムを得る場合、ゴム組成物中で分散不良を起こした配合物が存在する場合、発泡状態が影響を受け、異常発泡を起こす箇所が発生しがちである。特に、加硫促進剤の凝集物が存在する場合は異常発泡を起こしやすく、その結果、異常発泡した箇所の電気抵抗は高くなり、電気抵抗にバラツキが生じ、形成される画像に乱れが生じる問題がある。
【0009】
本発明は前述の事情に鑑みなされたものであり、その目的は異常発泡セルがなく、ローラ外周の全面にわたり電気抵抗値が均一な発泡導電性ゴムローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明者は、以下の手段により、本発明の目的を達成したものである。
【0011】
(1)導電性軸体上に発泡ゴム層が設けられている発泡導電性ゴムローラにおいて、該発泡ゴム層のゴム組成物に、少なくともゴム成分、化学発泡剤、硫黄およびチウラム系加硫促進剤が配合され、該チウラム系加硫促進剤を平均径40μm以下である凝集物が任意位置の単位面積(mm2)当たりに3個以下である加硫促進剤マスターバッチの形態で配合してなることを特徴とする発泡導電性ゴムローラ。
【0012】
(2)上記加硫促進剤マスターバッチが最大粒径30μm以下のチウラム系化合物を用いて得られたものである(1)に記載の発泡導電性ゴムローラ。
【0013】
(3)上記加硫促進剤マスターバッチにおける上記チウラム系化合物の含有量が40〜90質量%である(1)または(2)に記載の発泡導電性ゴムローラ。
【0014】
(4)上記加硫促進剤マスターバッチのムーニー粘度(ML1+4、50℃)が30〜110である(1)〜(3)のいずれか一項に記載の発泡導電性ゴムローラ。
【0015】
(5)上記ゴム組成物のゴム成分が、少なくとも、アクリルニトリルブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリン系ゴムの少なくとも一方であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の発泡導電性ゴムローラ。
【0016】
(6)感光体上の静電荷像を現像剤により現像する電子写真装置に用いられる発泡導電性ゴムローラであって、該発泡導電性ゴムローラが電子写真感光体に接触して配置されて用いられる転写ローラである(1)〜(5)のいずれか一項に記載の発泡導電性ゴムローラ。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ローラ外周の全面にわたり電気抵抗値が均一な発泡導電性ゴムローラを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の発泡導電性ゴムローラについて詳述する。
【0019】
本発明では、上記チウラム系加硫促進剤を平均径40μm以下である凝集物が任意位置の単位面積(mm2)当たりに3個以下である加硫促進剤マスターバッチの形態で配合することが重要である。上記凝集物の平均径が40μmを超える場合や平均径が40μm以下でも任意位置の単位面積(mm2)当たりの凝集物の数が3個より多い場合、混練後のゴム組成物中にチウラム系加硫促進剤の凝集物が存在する可能性が高く、異常発泡を起こし、得られる発泡導電性ゴムローラの電気抵抗ムラが大きくなる。また、チウラム系加硫促進剤は粉体のままゴム組成物に配合することが可能であるが、計量時や混練り時に飛散する可能性があり衛生上好ましくない他、ゴム材(ゴム成分)への混入も容易ではなく加工性に劣るため、加硫促進剤マスターバッチの形態でゴム組成物に配合することが好ましい。また、マスターバッチのバインダーに用いるポリマーは特に限定されないが、ゴム組成物のゴム成分と相溶するポリマーを用いることが好ましい。
【0020】
また、上記加硫促進剤マスターバッチは最大粒径30μm以下のチウラム系化合物を原料とすることが好ましい。チウラム系化合物の最大粒径が30μmを超える場合、マスターバッチ内の凝集物の平均径が大きくなる傾向にあり、異常発泡が発生し易く、ローラ抵抗値にバラツキを生じる可能性がある。
【0021】
なお、チウラム系加硫促進剤として用いるチウラム系化合物としては、テトラエチルチウラムジスルフィドやジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどが挙げられるが、所望の加硫速度や加硫ゴム特性が得られるよう選択して使用すればよく、またチアゾール系加硫促進剤など他の加硫促進剤と併用して使用することも可能である。
【0022】
なお、本発明で使用する硫黄およびチウラム系化合物の配合量は特に限定されるものではなく、所望の加硫速度や加硫ゴム特性が得られる量を添加すればよいが、ゴム成分100質量部に対し0.1〜5質量部配合することが好ましい。チウラム系化合物の配合量が0.1質量部より少ない場合は加硫促進剤としての効果が得られにくく、また、配合量が5質量部を超える場合は、ブルームする可能性がある。
【0023】
また、上記加硫促進剤マスターバッチでのチウラム系化合物の含有量、ムーニー粘度は特に限定するものではなく必要に応じて調整すればよいが、チウラム系化合物の含有量は、40〜90質量%、ムーニー粘度(ML1+4、50℃)は30〜110が好ましい。
【0024】
チウラム系化合物の含有量が40質量%より少ない場合は、マスターバッチとしての配合量が多くなるため、コストアップの要因になってしまう他、ゴム組成物中でのバインダーの量も増すこととなり、発泡状態に影響を与える可能性がある。また、チウラム系化合物の含有量が90質量%を超える場合は、マスターバッチ内でのチウラム系化合物の濃度が高すぎるため、マスターバッチ内でチウラム系化合物の凝集物が発生する可能性が高く、ゴム組成物に配合した後も凝集物が分散せず発泡状態に影響を与える可能性がある。
【0025】
また、マスターバッチのムーニー粘度が30より小さい場合、マスターバッチ同士が固着する可能性があり、貯蔵安定性に欠ける可能性がある。逆に、マスターバッチのムーニー粘度が110を超える場合は、粘度が高すぎて、ゴム材との混練で分散させるのに時間がかかり作業効率が悪いほか、分散不良の原因になる可能性もある。
【0026】
また、本発明では二次加硫促進剤として、例えば、チウラム系加硫促進剤やジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などを用いることが可能であり、所望の加硫速度や加硫ゴム特性が得られるよう必要に応じて添加すればよい。
【0027】
本発明に使用するゴム組成物を構成するゴム成分は、硫黄を加硫剤として用いることが可能なゴム材であれば特に限定されるものではない。例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルニトリルブタジエンゴム等が挙げられる。また、これらのゴム材を単独あるいは複数組み合わせて用いることが可能であるが、ゴム材自身が導電性を持つため抵抗のばらつきが小さく、また電気抵抗の電圧依存性が小さいため導電性ゴムローラに適しているアクリルニトリルブタジエンゴムおよび/またはエピクロルヒドリン系ゴムを含有することが好ましい。なお、アクリルニトリルブタジエンゴムおよび/またはエピクロルヒドリン系ゴムの含有量、配合割合は、所望の電気抵抗になるよう適宜調整すればよい。
【0028】
本発明で用いる化学発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、4,4−オキシビス・ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどの有機発泡剤、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、水素化ホウ酸ナトリウムなどの無機発泡剤が挙げられるが、ポリマーへの分散性の面から有機発泡剤が好適である。また、有機発泡剤の中では衛生性および発火の可能性のないアゾジカルボンアミドおよび4,4−オキシビス・ベンゼンスルホニルヒドラジドが好適に用いられる。なお、アゾジカルボンアミドおよび4、4オキシビス・ベンゼンスルホニルヒドラジドは単独で使用するだけでなく、発泡速度、発泡ガス量の調整のために両者を組み合わせて使用したり、尿素などの発泡助剤を配合することも可能である。また、配合量は所望の発泡状態になるよう適宜調整すればよく、通常ゴム成分100質量部に対し2〜20質量部配合される。
【0029】
本発明で用いられる導電性ゴムローラを製造する際に用いられる添加剤としては、加硫促進助剤、導電性付与剤、軟化剤、可塑剤、充填剤などが挙げられるが、これら添加剤は必要に応じて添加すればよい。
【0030】
また、本発明に使用するゴム組成物には、一般のゴムに使用されるその他の成分を必要に応じて含有させることが出来る。例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウムやクレー、シリカ、タルク等の各種充填剤、可塑剤等の加工助剤、各種老化防止剤、酸化亜鉛やステアリン酸等の加硫助剤、導電性調整のための各種イオン導電剤などが必要に応じて含有される。
【0031】
本発明の導電性ゴムローラは、上述のゴムに必要に応じて各種添加剤を配合して混練し、チューブ状に押出し成形した後、加硫を行い、これに導電性軸体を挿入し、所望の形状に研磨することで得られる。加硫方法は蒸気加硫が好ましいが、その他の加硫方法でもよい。加硫条件は通常140〜180℃、10〜120分で行われる。導電性軸体の芯材としては、従来用いられているアルミニウム、ステンレス等が挙げられる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を掲げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
(実施例1〜11、比較例1〜3)
各実施例及び比較例に用いたゴム組成物の配合割合は表1〜3の通りである。なお、配合量の単位は質量部である。
【0034】
まずはじめに、表1に示す原材料をオープンロールで混練を行い各実施例及び比較例のゴム組成物を作成した。
【0035】
上記実施例において、アクリロニトリルブタジエンゴムには「ニポールDN401L (アクリロニトリル含量18質量%);日本ゼオン(株)製」を、エピクロルヒドリンゴムには「ゼクロン3101(エチレンオキサイド含量31mol%); 日本ゼオン(株)製」を使用した。また、酸化亜鉛には「酸化亜鉛2種;ハクスイテック(株)製」を、ステアリン酸には「ステアリン酸S;花王(株)製」を、炭酸カルシウムには「スーパーSSS(重質炭酸カルシウム);丸尾カルシウム(株)製」を、カーボンブラックには「旭#35;旭カーボン(株)製」を硫黄には「サルファックス200S;鶴見化学(株)製」を使用し、チアゾール系加硫促進剤として、ジベンゾチアジルジスルフィド「アクセルDM;川口化学工業(株)製」を使用した。また、チウラム系加硫促進剤としてテトラエチルチウラムジスルフィドには、「アクセルTET;川口化学工業(株)製」を分級したものを使用した。また、上記テトラエチルチウラムジスルフィドを原料粉体に用い、アクリロニトリルブタジエンゴム「ニポールDN401L (アクリロニトリル含量18質量%);日本ゼオン(株)製」をバインダーとして含有するチウラム系加硫促進剤マスターバッチ(マスターバッチ中のチウラム系加硫促進剤:75,85,95質量%)を作製し、使用した。また、アゾジカルボンアミドには「ビニホールAC#LQ;永和化成(株)製」、4,4−オキシビス・ベンゼンスルホニルヒドラジドには「ネオセルボン1000S;永和化成(株)製」、尿素には「セルペーストA;永和化成(株)製」を使用した。
【0036】
なお、チウラム系化合物であるテトラエチルチウラムジスルフィドの最大粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置「LA-920;(株)堀場製作所製」を使用し測定した。また、チウラム系加硫促進剤マスターバッチについて、一辺5mmからなる立方体の試験片を作成し、表面の任意の箇所(5箇所)を走査電子顕微鏡「S-4300;日立ハイテクノロジーズ(株)製」を用いて観察し、任意位置の単位面積(mm2)当たりに存在する凝集物の個数と平均径を測定した。また、チウラム系加硫促進剤マスターバッチのムーニー粘度はムーニービスコメータ「SMV-201;(株)島津製作所製」を用いて50℃の温度条件下でもって測定した。
【0037】
実施例及び比較例の発泡導電性ゴムローラは押出し機を用いてチューブ状にゴム組成物を押出した後、加硫缶にて160℃で30分加硫を行いチューブ状のゴム加硫物を作成し、次いでφ6mmのSUS製軸体を前記チューブ状のゴム加硫物の内径部に圧入しローラ状の成形体を得た。この成形体を外径がφ14mmになるように研磨し作成した。
【0038】
また、ローラ電気抵抗、ローラ電気抵抗の周ムラ、ローラ硬度、異常発泡セル数などの特性は、以下の方法により測定した。
【0039】
<ローラ電気抵抗>
常温・常湿のN/N環境(23℃×50%RH)において、導電性ゴムローラの軸体に総圧1000gの荷重が掛かるように外径30mmのアルミニウム製ドラムに圧着し、0.5Hzで回転させた状態で、軸体とアルミドラムとの間に500Vの電圧を印加しながら抵抗値を測定した。
【0040】
<ローラ電気抵抗ムラ>
常温・常湿のN/N環境(23℃×50%RH)において、導電性ローラの軸体に総圧1000gの荷重が掛かるように外径30mmのアルミニウム製ドラムに圧着し、0.5Hzで回転させた状態で、軸体とアルミドラムとの間に500Vの電圧を印加しながら抵抗値の最大値(logR1(Max))と最小値(logR1(Min))を測定し、その差(logR1(Max)-logR1(Min))を求めることで抵抗ばらつきの指標とした。また、以下の評価基準に基づき評価した。
○:測定値≦1.05(ローラ電気抵抗ムラ極小)
△:1.05<測定値≦1.09(ローラ電気抵抗ムラ小)
×:1.10<測定値(ローラ電気抵抗ムラ大)
【0041】
<異常発泡セル数>
ローラ全周に存在する発泡セルをビデオマイクロ「VH-8000;(株)キーエンス製」により観察し、直径350μm以上の発泡セルを「異常発泡セル」と判断した。この操作をローラ10本分行い、ローラ1本当たりに存在する「異常発泡セル数」を算出した。
○:測定値≦0.5(異常発泡セル極少)
△:0.5<測定値≦1.0(異常発泡セル少)
×:1.0<測定値(異常発泡セル多)
【0042】
<ローラ硬度>
導電性ゴムローラ端部の導電性芯材を軸受で受けた状態で、軸体に総圧500gの荷重とともにアスカーC型スプリング式硬さ試験機(高分子計器(株)製)の押し針を押し付けてアスカーC硬度を測定した。
【0043】
<練り加工性>
チウラム系加硫促進剤をオープンロールでゴム材中に混練りする際の加工性の良否を評価し、良好な場合を○、加工性が劣っており実用性がないものを×とした。
【0044】
上記実験の結果、実施例1〜5、比較例1〜3より、チウラム系加硫促進剤を平均径40μm以下である凝集物が任意位置の単位面積(mm2)当たりに3個以下である加硫促進剤マスターバッチの形態で配合することが重要であることがわかる。凝集物の平均径が40μmを超える比較例1や、平均径が40μm以下でも任意位置の単位面積(mm2)当たりに存在する凝集物が3個を超える比較例2の場合、異常発泡セルの発生が多くなり、得られる発泡導電性ゴムローラの周ムラが大きい。また、チウラム系加硫促進剤を原料粉体のまま配合した比較例3では、混練り時の飛散やゴム材への混入も容易ではなく加工性に劣る。
【0045】
また、実施例6、7より、加硫促進剤マスターバッチが最大粒径30μm以下のチウラム系化合物を原料とすることが好ましいことがわかる。すなわち、最大粒径が30μmを超える実施例7ではマスターバッチ内の平均径が大きくなる傾向にあり、分散不良による異常発泡セルが発生しやすく、その結果、ローラ電気抵抗ムラも大きくなる傾向にある。
【0046】
つぎに、実施例8、9から、本発明のチウラム系加硫促進剤をマスターバッチとして用いる場合、チウラム系化合物の含有量は40〜90質量%がより好ましいことがわかる。チウラム系化合物の含有量が90質量%を超える実施例9では、加硫促進剤マスターバッチ内に存在する凝集物が多くなる傾向にあり、その結果、得られる発泡導電性ゴムローラに異常発泡性セル数が多く、ローラ電気抵抗ムラが大きくなる傾向にある。
【0047】
また、実施例10、11より、本発明のチウラム系加硫促進剤をマスターバッチとして用いる場合、マスターバッチのムーニー粘度(ML1+4、50)は30〜110がより好ましいことがわかる。すなわち、加硫促進剤のムーニー粘度が110を超える実施例11では、ゴム成分との混練で分散不良を生じる可能性もあり、その結果、得られる発泡導電性ゴムローラに異常発泡性セル数が増え、ローラ電気抵抗ムラが大きくなる可能性がある。また、マスターバッチのムーニー粘度が30より小さい場合、マスターバッチ同士が固着する可能性があり、貯蔵安定性に欠ける可能性がある。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸体上に発泡ゴム層が設けられている発泡導電性ゴムローラにおいて、該発泡ゴム層のゴム組成物に、少なくともゴム成分、化学発泡剤、硫黄およびチウラム系加硫促進剤が配合され、該チウラム系加硫促進剤を平均径40μm以下である凝集物が任意位置の単位面積(mm2)当たりに3個以下である加硫促進剤マスターバッチの形態で配合してなることを特徴とする発泡導電性ゴムローラ。
【請求項2】
上記加硫促進剤マスターバッチが最大粒径30μm以下のチウラム系化合物を用いて得られたものである請求項1に記載の発泡導電性ゴムローラ。
【請求項3】
上記加硫促進剤マスターバッチにおける上記チウラム系化合物の含有量が40〜90質量%である請求項1または2に記載の発泡導電性ゴムローラ。
【請求項4】
上記加硫促進剤マスターバッチのムーニー粘度(ML1+4、50℃)が30〜110である請求項1〜3のいずれか一項に記載の発泡導電性ゴムローラ。
【請求項5】
上記ゴム組成物のゴム成分が、少なくとも、アクリルニトリルブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリン系ゴムの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の発泡導電性ゴムローラ。
【請求項6】
感光体上の静電荷像を現像剤により現像する電子写真装置に用いられる発泡導電性ゴムローラであって、該発泡導電性ゴムローラが電子写真感光体に接触して配置されて用いられる転写ローラである請求項1〜5のいずれか一項に記載の発泡導電性ゴムローラ。

【公開番号】特開2006−58450(P2006−58450A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−238353(P2004−238353)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】