説明

発泡性エアゾール製品

【課題】カチオン性高分子の作用による洗い流し時の指通り性を維持しつつ、塩化物イオンの抑制により、内袋を備えなくても金属製耐圧容器の腐食を防止可能な発泡性エアゾール製品の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、[A]アニオン性界面活性剤及びカチオン性高分子を含む原液、並びに[B]噴射剤が耐圧容器に充填されている発泡性エアゾール製品であって、上記[A]原液の塩化物イオン濃度が500質量ppm以下であり、上記耐圧容器が、金属製でありかつ内袋を有さないことを特徴とする発泡性エアゾール製品である。当該発泡性エアゾール製品は、シャンプーとして用いられることが好ましい。また、カチオン性高分子の窒素含量は、2.0%質量以下であることが好ましい。さらに、[A]原液は両性界面活性剤をさらに含有し、[A]原液における両性界面活性剤の含有量は、3質量%以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性エアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアムース等の毛髪処理剤やその他の化粧料にあっては、使い勝手の良さから、原液と噴射剤とを耐圧容器に充填し、噴射剤により原液を噴射させて発泡させ、形成した泡を塗布して頭髪の洗浄等を行う発泡性エアゾール製品が普及している(特開2012−136485号公報参照)。このような発泡性エアゾール製品では、容器の耐圧性の確保の観点から、通常アルミニウム等の金属製の耐圧容器が用いられる。
【0003】
一方、シャンプー等の化粧料には、洗い流し時の指通り性向上のため、通常原液中にカチオン性高分子を含有しており、その結果、原液中にカウンターアニオンとしての塩化物イオンが残存しやすい。この塩化物イオンは金属に対する腐食性が高いため、上述の発泡性エアゾール製品に適用する場合、耐圧容器内面に腐食を防止するための樹脂層を設けたり、原液や噴射剤を挿填する内袋を設けるような工夫が必要となる(特開2004−59089号公報参照)。
【0004】
しかしながら、上記樹脂層の剥離や樹脂層中への塩化物イオンの浸透、或いは内袋の破袋等により塩化物イオンと耐圧容器の金属とが接触し、容器の腐食が進行して内容物が漏出するおそれがある。加えて、上述の従来の耐圧容器に対する工夫は、製造コストの増大を招来する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−136485号公報
【特許文献2】特開2004−59089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、カチオン性高分子の作用による指通り性を維持しつつ、塩化物イオンの抑制により、内袋を備えなくても金属製耐圧容器の腐食を防止可能な発泡性エアゾール製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]アニオン性界面活性剤及びカチオン性高分子を含む原液(以下、「[A]原液」ともいう)、並びに
[B]噴射剤
が耐圧容器に充填されている発泡性エアゾール製品であって、
上記[A]原液の塩化物イオン濃度が500質量ppm以下であり、
上記耐圧容器が、金属製でありかつ内袋を有さないことを特徴とする発泡性エアゾール製品である。
【0008】
当該発泡性エアゾール製品は、カチオン性高分子を含む[A]原液を含有し、この[A]原液の塩化物イオン濃度が500質量ppm以下であるため、カチオン性高分子の作用による洗い流し時の指通り性を維持しつつ、[A]原液中の塩化物イオンの抑制により、内袋を有さない金属製耐圧容器の腐食を防止することができる。
【0009】
当該発泡性エアゾール製品は、シャンプーとして用いられることが好ましい。[A]原液はアニオン性界面活性剤及びカチオン性高分子を含んでおり、洗浄性及び洗い流し時の指通り性に優れるため、当該発泡性エアゾール製品はシャンプーとして好適である。
【0010】
上記カチオン性高分子の窒素含量は、2.0質量%以下であることが好ましい。カチオン性高分子の窒素含量が上記特定の範囲であることで、カウンターイオンとなる塩化物イオンの濃度を抑制することができ、その結果、金属製耐圧容器の腐食を防止することができる。
【0011】
[A]原液が両性界面活性剤をさらに含有し、[A]原液における両性界面活性剤の含有量は、3質量%以下であることが好ましい。両性界面活性剤の含有量を上記特定の範囲とすることで、カウンターイオンとなる塩化物イオンの濃度をより抑制することができ、その結果、上述の金属製耐圧容器の腐食の防止が容易かつ確実になる。
【0012】
[B]噴射剤は、二酸化炭素を含むことが好ましい。[B]噴射剤が二酸化炭素を含むことで、皮膚の血行促進作用を有する。
【0013】
上記アニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩及びポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル塩を含むことが好ましい。これにより、泡の形成容易性等の発泡性や形成された泡の持続性がより優れると共に、泡の弾力性がより良好になる。
【0014】
上記ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル塩の上記ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩に対する質量比は、0.5以上3.0以下であることが好ましい。上記質量比を上記特定の範囲とすることで、泡質に軽さを付与することができ、シャンプーとして使用する場合、頭髪乾燥後において、髪に根元のボリューム感と柔らかさを付与することができる。
【0015】
なお、塩化物イオン濃度は、イオンクロマトグラフによる分析値をいう(例えば、Dionex社製陰イオン交換カラム「IonPacAS18」を装備したDionex社製「ICS−2000」を用いることにより、塩化物イオン濃度の分析値が得られる。)。また、カチオン性高分子の窒素含量とは、カチオン性高分子に含まれる窒素原子の含有量であり、医薬部外品原料規格においてカチオン性高分子毎に定められている窒素定量法に基づく値を採用する(定められていないカチオン性高分子については、ケルダール法に基づく値を採用する。)。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発泡性エアゾール製品は、カチオン性高分子の作用による洗い流し時の指通り性を維持しつつ、塩化物イオンの抑制により、内袋を有しなくても金属製耐圧容器の腐食を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<発泡性エアゾール製品>
本発明の発泡性エアゾール製品は、[A]原液、[B]噴射剤、及び耐圧容器を備えている。この発泡性エアゾール製品は、後述のように[A]原液中にアニオン性界面活性剤及びカチオン性高分子を含んでおり、洗浄性及び洗い流し時の指通り性に優れるため、シャンプーとして好適に用いることができる。以下、当該発泡性エアゾール製品について詳述する。
【0018】
[[A]原液]
[A]原液は、アニオン性界面活性剤及びカチオン性高分子を含み、これに精製水等の水が配合されたものである([A]原液における水の配合量は、例えば70質量%以上である。)。また、[A]原液は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分を含有してもよい。
【0019】
[A]原液の塩化物イオン濃度は、500質量ppm以下である。[A]原液の塩化物イオン濃度が500質量ppm以下であるため、[A]原液中の塩化物イオンの抑制により金属製耐圧容器の腐食を防止することができ、その結果、容器の腐食に起因する内容物の漏出を防ぐことができる。
【0020】
[A]原液の塩化物イオン濃度としては、腐食防止の観点から、300質量ppm以下が好ましく、100質量ppm以下がより好ましい。
【0021】
(アニオン性界面活性剤)
アニオン性界面活性剤は、発泡性や、頭皮等の汚れを除去する洗浄性を有する成分である。なお、アニオン性界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、アシルアミノ酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩等);ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸カリウム、ココイルイセチオン酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等);ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等);ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等);アルキルスルホコハク酸二ナトリウム;ポリオキシエチレンスルホコハク酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等);ラウロイル加水分解シルクナトリウム;イソステアリン酸加水分解シルクAMP(イソステアリン酸と加水分解シルクとの縮合物の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩);ココイル加水分解ダイズタンパクカリウム;ココイル加水分解コラーゲンの塩(ナトリウム塩、カリウム塩等);テトラデセンスルホン酸ナトリウム;ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)等が挙げられる。
【0023】
これらの中で、アニオン性界面活性剤としては、発泡性及び泡質の観点から、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩(ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩におけるポリオキシエチレンの平均付加モル数は、2以上12以下が好ましく、2以上6以下がより好ましい。)及びポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル塩(ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル塩におけるポリオキシエチレンの平均付加モル数は、2以上12以下が好ましく、2以上6以下がより好ましい。)が好ましく、これら両者を含むことがより好ましい。同様の理由で、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩としてはポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウムがさらに好ましく、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル塩としてはポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウムがさらに好ましい。
【0024】
[A]原液におけるアニオン性界面活性剤の含有量としては、汚れ除去及び発泡性を効果的に奏する観点から、3質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上25質量%以下がより好ましく、10質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。
【0025】
また、アニオン性界面活性剤がポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩とポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル塩とを含む場合、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル塩のポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩に対する質量比は、0.5以上3.0以下であることが好ましく、0.7以上2.5以下がより好ましく、1.0以上2.0以下がさらに好ましい。上記質量比を上記範囲とすることで、泡質に軽さを付与することができ、シャンプーとして使用する場合、頭髪乾燥後において、髪に根元のボリューム感と柔らかさを付与することができる。
【0026】
(カチオン性高分子)
カチオン性高分子は、洗い流し時の指通り性を向上させる成分である。なお、このカチオン性高分子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記カチオン性高分子としては、例えば、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩・N,N−ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体等が挙げられる。
【0028】
[A]原液におけるカチオン性高分子の含有量としては、0.01質量%以上2質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。カチオン性高分子の含有量を上記範囲とすることで、効果的に指通り性を高めることができる。
【0029】
上記カチオン性高分子の窒素含量は2.0質量%以下であることが好ましい。カチオン性高分子の窒素含量を上記範囲とすることで、カウンターイオンとなる塩化物イオンを抑制することができ、その結果、金属製耐圧容器の腐食を防止することができる。
【0030】
上記カチオン性高分子の窒素含量としては、腐食防止の観点から、1.8%以下がより好ましく、1.6%以下がさらに好ましい。
【0031】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤は、同一分子内に酸性の官能基とアルカリ性の官能基とを有する界面活性剤である。
【0032】
上記両性界面活性剤としては、例えば、
アミドプロピルベタイン型両性界面活性剤として、ラウリン酸アミドプロピルベタイン(ラウラミドプロピルベタイン)、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、イソステアリン酸アミドプロピルベタイン(イソステアラミドプロピルベタイン)、リノレイン酸アミドプロピル、パーム油脂酸アミドプロピルベタイン等;
イミダゾリン型両性界面活性剤として、ウンデシル−N−ヒドロキシエチル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等;
スルホベタイン型両性界面活性剤として、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−プロピルスルホン酸ナトリウム、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホン酸ナトリウム、N−脂肪酸アミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホン酸ナトリウム等;
アミドアミンオキシド型両性界面活性剤として、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
【0033】
[A]原液における両性界面活性剤の含有量としては、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。両性界面活性剤の含有量を上記範囲とすることで、カウンターイオンとなる塩化物イオンを抑制することができ、その結果、金属製耐圧容器の腐食を防止して容器の腐食に起因する内容物の漏出を防ぐことができる。また、上記含有量を上記範囲とすることで、[A]原液の高粘度化を抑制し、発泡性が良好となる。
【0034】
(任意成分)
[A]原液が含有してもよい任意成分としては、公知のシャンプー成分が挙げられる。上記任意成分としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、糖類、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、無機化合物、香料、防腐剤等が挙げられる。なお、各任意成分は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(剤型)
[A]原液は、液状であるとよい。液状の[A]原液の粘度は、B型粘度計を使用して測定(温度:25℃、ロータ:粘度に応じて適宜設定、ロータの回転速度:60rpm)した場合、粘度計測開始から60秒経過後の値が10mPa・s以上1,000mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以上500mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以上400mPa・s以下がさらに好ましい。
【0036】
(pH)
[A]原液のpHは、弱酸性であるとよい。pHを弱酸性に保つことで、二酸化炭素が炭酸塩になるのを抑制して血行促進効果を高めることができると共に、pHの低下に伴う粘度の上昇により発泡性及び吐出性が悪くなることを抑制できる。[A]原液のpHとしては、4.0以上6.8以下が好ましく、5.0以上6.5以下がより好ましい。
【0037】
[[B]噴射剤]
[B]噴射剤は、二酸化炭素を含むことが好ましい。[B]噴射剤が二酸化炭素を含むことで、皮膚の血行促進作用を有する。また、[B]噴射剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、二酸化炭素以外の他の成分を含んでいてもよい。
【0038】
上記二酸化炭素以外の他の成分としては、例えば、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、及びこれらの混合物である液化石油ガス(以下、「LPG」ともいう)、ジメチルエーテル、及びこれを含む混合物である液化ガス、窒素、亜酸化窒素、空気などの圧縮ガス等が挙げられる。これらの中で、液化石油ガスが好ましい。
【0039】
[A]原液と[B]噴射剤との質量比としては、効率良く泡を形成する観点から、70:30〜99:1が好ましく、80:20〜98:2がより好ましく、90:10〜96:4がさらに好ましい。
【0040】
[耐圧容器]
耐圧容器は、金属製でありかつ内袋を有さない。この耐圧容器の形成に用いる金属としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ブリキ、鋼等が挙げられる。また、耐圧容器の内面に樹脂層が積層されてもよい。当該発泡性エアゾール製品は、上述のように[A]原液の塩素イオン濃度が低く、腐食性が抑制されているため、内袋を有さなくても腐食を防止することができる。
【0041】
<発泡性エアゾール製品の製造方法>
[A]原液及び[B]噴射剤を耐圧容器に充填することにより当該発泡性エアゾール製品を製造することができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。物性値の測定方法を下記に示す。
[粘度]
トキメック社製B型粘度計を用い、以下の測定条件下で測定を行った。
測定温度:25℃
ロータ:粘度に応じて適宜設定
ロータの回転速度:60rpm
粘度の読み取り値:計測開始から60秒後の値
【0043】
<[A]原液の調製>
[A]原液の調製のために水との配合に用いた各成分と、[A]原液における配合量を以下に示す。なお、表1、表3及び表5中の「−」は、該当する成分を配合しなかったことを示す。また、調製した各原液の剤型及び粘度を各表中に合わせて示す。
【0044】
(アニオン性界面活性剤)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム
ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム
ココイルグルタミン酸Na
ラウロイルアスパラギン酸Na
(カチオン性高分子)
カチオン化セルロース
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩・N,N−ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体
(両性界面活性剤)
イソステアラミドプロピルベタイン
ラウラミドプロピルベタイン
(ノニオン性界面活性剤)
モノラウリン酸ポリグリセリル
ポリオキシプロピレン(1)ヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド
(その他の成分)
ポリオキシエチレンジオレイン酸メチルグルコシド
ポリエチレングリコール1540
l−メントール
1,3−ブチレングリコール
無水エタノール
クエン酸
香料
【0045】
<実施例(1)>
表1に示す配合量に基づき各成分を水と混合して[A]原液を調製した。そして、各原液と、LPG及び二酸化炭素からなる[B]噴射剤とを、それぞれ表2に示す配合量でアルミニウム製の耐圧容器に充填し、各実施例の発泡性エアゾール製品を得た。
【0046】
上記各実施例の発泡性エアゾール製品を用いて[A]原液を噴射(25℃での噴射圧:0.65MPa)させ、専門のパネラー3名により、発泡性(手に吐出後の泡立ちの目視評価)、泡持続性(手に吐出後、泡が維持できる時間の目視評価)及び泡弾力性(手に吐出後、握った際の反発及び弾力の触覚評価)について、下記基準に従い官能評価した。その評価結果を表2に合わせて示す。なお、表2での評価結果は、実施例2(表2中、「基準」として表示)に対する相対評価を示している。
◎:非常に良い(3名中3名が良い)
○:良い (3名中2名が良い)
△:悪い (3名中2名が悪い)
×:非常に悪い(3名中3名が悪い)
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
表2から分かるように、アニオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム及びポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウムを配合した発泡性エアゾール製品(実施例1a)は、ココイルグルタミン酸Na及びラウロイルアスパラギン酸Naを配合したもの(実施例1b)に比べ、発泡性、泡持続性及び泡弾力性共に非常に良い結果であった。
【0050】
<実施例(2)>
表3に示す配合量に基づき各成分を水と混合して[A]原液を調製した。そして、各原液と、LPG及び二酸化炭素からなる[B]噴射剤とを、それぞれ表4に示す配合量でアルミニウム製の耐圧容器に充填し、各実施例の発泡性エアゾール製品を得た。
【0051】
上記各実施例の発泡性エアゾール製品を用いて[A]原液を噴射(25℃での噴射圧:0.65MPa)させ、専門のパネラー3名により、上記実施例(1)と同様に発泡性、泡持続性及び泡弾力性について、下記基準に従い官能評価した。その評価結果を表4に合わせて示す。なお、表4での評価結果は、実施例(2)内における相対的な評価結果である。
◎:非常に良い(3名中3名が良い)
○:良い (3名中2名が良い)
△:悪い (3名中2名が悪い)
×:非常に悪い(3名中3名が悪い)
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
表3、4から分かるように、両性界面活性剤を配合しないものは粘度が低く(実施例2cと、実施例2d及び2eとの対比)、結果として発泡性が良い。
【0055】
<実施例(3)>
表5に示す配合量に基づき各成分を水と混合して[A]原液を調製した。そして、各原液と、LPG及び二酸化炭素からなる[B]噴射剤とを、それぞれ表6に示す配合量でアルミニウム製の耐圧容器に充填し、各実施例の発泡性エアゾール製品を得た。
【0056】
上記各実施例の発泡性エアゾール製品を用いて[A]原液を毛髪に噴射(25℃での噴射圧:0.65MPa)し、カチオン性界面活性剤を含有するトリートメントで処理し、乾燥させた後、専門のパネラー3名により、泡質(手に吐出後、握った際の泡のキメ細かさと軽さの触覚評価)、ボリューム感(根元から毛先に向かって手を通した際の指通りの軽さとすべり感の触覚評価)及び髪の柔らかさ(髪の中間〜毛先の指通りの良さと握った際のやわらかさの触覚評価)について、下記基準に従い官能評価した。その評価結果を表6に合わせて示す。なお、表6での評価結果は、実施例(3)内における相対的な評価結果である。
◎:非常に良い(3名中3名が良い)
○:良い (3名中2名が良い)
△:悪い (3名中2名が悪い)
×:非常に悪い(3名中3名が悪い)
【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【0059】
表5、6から分かるように、アニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウムの含有量がポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウムの含有量よりも多い方が、泡質、ボリューム感及び髪の柔らかさ共に良い。
【0060】
なお、上述の実施例(1)〜(3)の評価結果は、それぞれ相対的なものであり、実使用において善し悪しを示すものではない。
【0061】
<[A]原液中の塩化物イオン濃度の評価>
[塩化物イオン濃度]
各実施例の発泡性エアゾール製品における[A]原液中の塩化物イオン濃度を、Dionex社製陰イオン交換カラム「IonPacAS18」を装備したDionex社製「ICS−2000」を用いて分析したところ、いずれの実施例も500質量ppm以下であった。また、表7に、カチオン性高分子の窒素含量と、カチオン性高分子1質量%水溶液の塩化物イオン濃度との関係を示す。
【0062】
【表7】

【0063】
表7から分かるように、窒素含量が少なくなるに伴い、塩化物イオン濃度が低下する。このことは、[A]原液の塩化物イオン濃度を低く抑える(500質量ppm以下にする)には、窒素含量が少ないカチオン性高分子の選定と、このカチオン性高分子の配合量設定により実現できることを明らかにしている。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、カチオン性高分子の作用による洗い流し時の指通り性を維持しつつ、塩化物イオンの抑制により、内袋を備えなくても金属製耐圧容器の腐食を防止可能な発泡性エアゾール製品を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]アニオン性界面活性剤及びカチオン性高分子を含む原液、並びに
[B]噴射剤
が耐圧容器に充填されている発泡性エアゾール製品であって、
上記[A]原液の塩化物イオン濃度が500質量ppm以下であり、
上記耐圧容器が、金属製でありかつ内袋を有さないことを特徴とする発泡性エアゾール製品。
【請求項2】
シャンプーとして用いられる請求項1に記載の発泡性エアゾール製品。
【請求項3】
上記カチオン性高分子の窒素含量が2.0質量%以下である請求項1又は請求項2に記載の発泡性エアゾール製品。
【請求項4】
[A]原液が両性界面活性剤をさらに含有し、[A]原液における両性界面活性剤の含有量が3質量%以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の発泡性エアゾール製品。
【請求項5】
[B]噴射剤が二酸化炭素を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発泡性エアゾール製品。
【請求項6】
上記アニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩及びポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル塩を含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発泡性エアゾール製品。
【請求項7】
上記ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル塩の上記ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩に対する質量比が0.5以上3.0以下である請求項6に記載の発泡性エアゾール製品。

【公開番号】特開2013−91641(P2013−91641A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−244345(P2012−244345)
【出願日】平成24年11月6日(2012.11.6)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】