説明

発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子及びポリスチレン系樹脂発泡成形体

【課題】高発泡倍数で機械強度に優れた発泡成形体を得ることが可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子及びポリスチレン系樹脂発泡成形体の提供。
【解決手段】発泡剤を含有するポリスチレン系樹脂を粒子状としてなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、沸点が50℃以上の可塑剤が粒子内部に均一に含有された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡剤を含むポリスチレン系樹脂粒子からなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法に関し、可塑剤を添加することにより容易に高倍発泡が可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子及びポリスチレン系樹脂発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法の一つとして、懸濁重合法やシード重合法によって水系媒体中でスチレン系単量体を重合してポリスチレン系樹脂粒子を得、さらにオートクレーブ中で該ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る含浸法が知られている。
また、従来の含浸法において、ポリスチレン樹脂粒子にシクロヘキサンやアジピン酸ジイソブチルのような可塑剤を含有させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1には、ポリスチレン、スチレンの共重合体又はスチレンのグラフト重合体からなる樹脂の粒子中に、該樹脂の軟化点より低い沸点を持った脂肪族炭化水素又は環式脂肪族炭化水素を、該樹脂に対して1〜15重量%と、アジピン酸ジイソブチルを0.2〜3.0質量%含ませたことを特徴とする、発泡性熱可塑性樹脂粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3292634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の含浸法において可塑剤を含有させる場合、ポリスチレン系樹脂粒子の表面から含浸を行うため、得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、中心部から表層に向かって可塑剤の濃度が高くなるような濃度分布となり、樹脂粒子中に均一に可塑剤を存在させることができない。このように中心部から表層に向かって可塑剤の濃度が高くなるような濃度分布を持った発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、該樹脂粒子を加熱して発泡させ、予備発泡粒子とする工程で、発泡性能が悪くなり、高い発泡倍数の予備発泡粒子を得ることが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされ、高い発泡倍数の予備発泡粒子を得ることができ、軽量で十分な機械的強度を有する発泡成形体を製造可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するため、本発明は、発泡剤を含有するポリスチレン系樹脂を粒子状としてなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、沸点が50℃以上の可塑剤が粒子内部に均一に含有された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供する。
【0008】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、樹脂供給装置内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る、溶融押出法によって得られたものであることが好ましい。
【0009】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記可塑剤が、沸点が150℃以上の高沸点可塑剤を含んでいることが好ましい。
【0010】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記高沸点可塑剤がエステル系の可塑剤であることが好ましい。
【0011】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記高沸点可塑剤がアジピン酸エステル系の可塑剤であることが好ましい。
【0012】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記高沸点可塑剤がアジピン酸ジイソブチルであることが好ましい。
【0013】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記高沸点可塑剤の含有量が、樹脂100質量部に対し0.2〜7質量部の範囲であることが好ましい。
【0014】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記高沸点可塑剤の含有量が、樹脂100質量部に対し0.2〜5質量部の範囲であることが好ましい。
【0015】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記可塑剤が、沸点が50℃以上の炭化水素を含むことが好ましい。
【0016】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記炭化水素の含有量が、樹脂100質量部に対し0.2〜7質量部の範囲であることが好ましい。
【0017】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記炭化水素の含有量が、樹脂100質量部に対し0.2〜5質量部の範囲であることが好ましい。
【0018】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記発泡剤としてブタンを含むことが好ましい。
【0019】
また本発明は、樹脂供給装置内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る、溶融押出法による発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、ポリスチレン系樹脂に、沸点が50℃以上の可塑剤を添加し、該可塑剤が粒子内部に均一に含有された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法を提供する。
【0020】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、前記可塑剤が、沸点が150℃以上の高沸点可塑剤を含んでいることが好ましい。
【0021】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、前記高沸点可塑剤がエステル系の可塑剤であることが好ましい。
【0022】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、前記高沸点可塑剤がアジピン酸エステル系の可塑剤であることが好ましい。
【0023】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、前記高沸点可塑剤がアジピン酸ジイソブチルであることが好ましい。
【0024】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、前記高沸点可塑剤の含有量が、樹脂100質量部に対し0.2〜7質量部の範囲であることが好ましい。
【0025】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、前記高沸点可塑剤の含有量が、樹脂100質量部に対し0.2〜5質量部の範囲であることが好ましい。
【0026】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、前記可塑剤が、沸点が50℃以上の炭化水素を含むことが好ましい。
【0027】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、前記炭化水素の含有量が、樹脂100質量部に対し0.2〜7質量部の範囲であることが好ましい。
【0028】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、前記炭化水素の含有量が、樹脂100質量部に対し0.2〜5質量部の範囲であることが好ましい。
【0029】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、前記発泡剤としてブタンを含むことが好ましい。
【0030】
また本発明は、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱し発泡させて得られたポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を提供する。
【0031】
本発明のポリスチレン系樹脂予備発泡粒子において、嵩発泡倍数50倍に予備発泡させた状態での平均気泡径が50〜300μmの範囲内であることが好ましい。
【0032】
また本発明は、前記ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を成形型のキャビティに充填し、加熱して型内発泡成形して得られたポリスチレン系樹脂発泡成形体を提供する。
【0033】
また本発明は、発泡倍数50倍に発泡させた状態での平均気泡径が50〜300μmの範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡剤を含有するポリスチレン系樹脂を粒子状としてなり沸点が50℃以上の可塑剤が粒子内部に均一に含有されたものなので、高い発泡倍数の予備発泡粒子を得ることができ、軽量で十分な機械的強度を有する発泡成形体を製造することができる。
【0035】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法は、溶融押出法によって発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する際に、ポリスチレン系樹脂に、沸点が50℃以上の可塑剤を添加し、該可塑剤が粒子内部に均一に含有された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得るようにしたので、高い発泡倍数の予備発泡粒子を得ることができ、軽量で十分な機械的強度を有する発泡成形体を製造可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】溶融押出法による発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造装置の一例を示す構成図である。
【図2】実施例1で製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の断面の吸光度比(D1730/D1600)の測定結果を示す概略図である。
【図3】比較例3で製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の断面の吸光度比(D1730/D1600)の測定結果を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子)
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡剤を含有するポリスチレン系樹脂を粒子状としてなり、沸点が50℃以上の可塑剤が粒子内部に均一に含有されていることを特徴としている。
なお、本発明において可塑剤の「沸点」とは、1気圧下における沸点のことを指す。
【0038】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に用いられるポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体等が挙げられ、スチレンを50質量%以上含有するポリスチレン系樹脂が好ましく、ポリスチレンがより好ましい。
【0039】
また、前記ポリスチレン系樹脂としては、前記スチレンモノマーを主成分とする、前記スチレン系モノマーとこのスチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体であってもよく、このようなビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性モノマーなどが挙げられる。
【0040】
また、ポリスチレン系樹脂が主成分であれば、他の樹脂を添加してもよく、添加する樹脂としては、例えば、発泡成形体の耐衝撃性を向上させるために、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三次元共重合体などのジエン系のゴム状重合体を添加したゴム変性ポリスチレン系樹脂、いわゆるハイインパクトポリスチレンが挙げられる。あるいは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などが挙げられる。
【0041】
原料となるポリスチレン系樹脂としては、市販されている通常のポリスチレン系樹脂、懸濁重合法などの方法で新たに作製したポリスチレン系樹脂などの、再生品ではないポリスチレン系樹脂(バージンポリスチレン)を使用できる他、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体を再生処理して得られた再生ポリスチレン系樹脂を使用することができる。
この再生ポリスチレン系樹脂としては、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体、例えば、魚箱、家電緩衝材、食品包装用トレーなどを回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したポリスチレン系樹脂を用いることができる。また、使用することができる再生ポリスチレン系樹脂は、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体を再生処理して得られたもの以外にも、家電製品(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど)や事務用機器(例えば、複写機、ファクシミリ、プリンターなど)から分別回収された非発泡のポリスチレン系樹脂成形体を粉砕し、溶融混練してリペレットした再生ポリスチレン系樹脂を用いることができる。
【0042】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含有させる発泡剤としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等の脂肪族炭化水素、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン(HCFC−123)、クロロジフルオロメタン(HCFC−22)、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)等のクロロフルオロカーボン、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、ジフルオロメタン(HFC−32)等のフルオロカーボン、各種アルコール、二酸化炭素、水、及び窒素などの物理発泡剤が挙げられ、これらの中の1種又は2種以上を併用して使用することができる。これらのうち、好ましい発泡剤としては、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン及びこれらを二種以上混合した発泡剤が挙げられ、特に好ましい発泡剤としては、n−ブタン、イソブタン、及びこれらを混合した発泡剤が挙げられる。発泡剤の添加量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して1〜15質量部の範囲とされ、より好ましくは3〜12質量部の範囲とされる。
【0043】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含有させる可塑剤は、沸点が50℃以上であり、ポリスチレン系樹脂に添加することによって可塑剤としての効果を発揮し得るものであればよく、各種の可塑剤の中から適宜選択して使用することができ、例えば、エステル系可塑剤、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素、テルペン系炭化水素などが挙げられる。
【0044】
前記エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸イソノニル、アジピン酸ジオクチルなどのアジピン酸エステル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチルなどのセバシン酸エステル、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレートなどの脂肪酸グリセリドなどが挙げられる。
前記芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレン、スチレンなどが挙げられる。
前記脂環族炭化水素としては、シクロヘキサン、シクロペンタンなどが挙げられる。
、前記テルペン系炭化水素としては、リモネン、ピネンなどが挙げられる。
【0045】
本発明の好ましい実施形態において、前記可塑剤は、沸点が150℃以上の高沸点可塑剤を含んでいることが好ましい。
前記高沸点可塑剤としては、エステル系の可塑剤であることが好ましく、その中でもアジピン酸ジイソブチル、アジピン酸イソノニル、アジピン酸ジオクチルなどのアジピン酸エステルがより好ましく、特にアジピン酸ジイソブチル(DIBA)が好ましい。前記高沸点可塑剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
前記高沸点可塑剤の含有量は、樹脂100質量部に対し0.2〜7質量部の範囲であることが好ましく、0.2〜5質量部の範囲であることがより好ましい。高沸点可塑剤の含有量が前記範囲よりも少ないと、可塑剤による可塑効果が十分に得られなくなり、高い発泡倍数の予備発泡粒子を得ることが困難、軽量で十分な機械的強度を有する発泡成形体を製造することが難しくなる。高沸点可塑剤の含有量が前記範囲よりも多くなると、得られる発泡成形体の機械的強度が低下し、また発泡成形体の外観が悪くなるおそれがある。
【0047】
本発明の好ましい実施形態において、前記可塑剤は、沸点が50℃以上の炭化水素を含むことが好ましい。
前記炭化水素としては、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられ、それらの中でもシクロヘキサン、スチレンが好ましい。
【0048】
前記炭化水素の含有量は、樹脂100質量部に対し0.2〜7質量部の範囲であることが好ましく、0.2〜5質量部の範囲であることがより好ましい。
前記炭化水素の含有量が前記範囲よりも少ないと、可塑剤による可塑効果が十分に得られなくなり、高い発泡倍数の予備発泡粒子を得ることが困難、軽量で十分な機械的強度を有する発泡成形体を製造することが難しくなる。前記炭化水素の含有量が前記範囲よりも多くなると、得られる発泡成形体の機械的強度が低下し、また発泡成形体の外観が悪くなるおそれがある。
【0049】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、発泡剤及び可塑剤の他、無機発泡核剤が均一に含有されていることが好ましい。無機発泡核剤としては、タルク、シリカ、その他の無機粉体が挙げられ、これらの中でもタルクが好ましい。
無機発泡核剤の量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.05〜5質量部の範囲内であることが好ましく、0.1〜2質量部の範囲がより好ましい。
使用する無機発泡核剤の平均粒径は、0.1〜30μmの範囲内であることが好ましく、0.5〜10μmの範囲内であることがより好ましい。
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に可塑剤とともにタルクなどの無機発泡核剤を含有させることで、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を高める効果や発泡成形体の機械強度向上効果を高めることができる。
無機発泡核剤は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体にわたり均一に含有している必要がある。樹脂粒子の局部、例えば、樹脂粒子の表層部分に無機発泡核剤が偏在していると、得られる発泡成形体の機械強度が低下するおそれがある。
【0050】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、物性を損なわない範囲内において、架橋剤、可塑剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、着色剤等の添加剤を添加してもよく、又、ジンクステアレート等の粉末状金属石鹸類を前記発泡性スチレン樹脂粒子の表面に塗布しておけば、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の予備発泡工程においてポリスチレン系樹脂予備発泡粒子同士の結合を減少させることができて好ましい。
【0051】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の粒径は、特に限定されないが、通常は0.5〜3.0mmの範囲が好ましく、0.7〜2.0mmの範囲がより好ましい。また、粒子の形状は、特に限定されないが、球状乃至略球状であることが好ましい。
【0052】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に発泡剤を含有するポリスチレン系樹脂を粒子状としてなり沸点が50℃以上の可塑剤が粒子内部に均一に含有されたものなので、高い発泡倍数の予備発泡粒子を得ることができ、軽量で十分な機械的強度を有する発泡成形体を製造することができる。
【0053】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法)
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法は、樹脂供給装置内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る、溶融押出法による発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、ポリスチレン系樹脂に、沸点が50℃以上の可塑剤を添加し、該可塑剤が粒子内部に均一に含有された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることを特徴としている。
【0054】
図1は、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法に用いられる製造装置の一例を示す構成図であり、本例の製造装置は、樹脂供給装置としての押出機1と、押出機1の先端に取り付けられた多数の小孔を有するダイ2と、押出機1内に樹脂原料等を投入する原料供給ホッパー3と、押出機1内の溶融樹脂に発泡剤供給口5を通して発泡剤を圧入する高圧ポンプ4と、ダイ2の小孔が穿設された樹脂吐出面に冷却水を接触させるように設けられ、室内に冷却水が循環供給されるカッティング室7と、ダイ2の小孔から押し出された樹脂を切断できるようにカッティング室7内に回転可能に設けられたカッター6と、カッティング室7から冷却水の流れに同伴して運ばれる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を冷却水と分離すると共に脱水乾燥して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る固液分離機能付き脱水乾燥機10と、固液分離機能付き脱水乾燥機10にて分離された冷却水を溜める水槽8と、この水槽8内の冷却水をカッティング室7に送る高圧ポンプ9と、固液分離機能付き脱水乾燥機10にて脱水乾燥された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を貯留する貯留容器11とを備えて構成されている。
【0055】
なお、押出機1としては、スクリュを用いる押出機またはスクリュを用いない押出機のいずれも用いることができる。スクリュを用いる押出機としては、例えば、単軸式押出機、多軸式押出機、ベント式押出機、タンデム式押出機などが挙げられる。スクリュを用いない押出機としては、例えば、プランジャ式押出機、ギアポンプ式押出機などが挙げられる。また、いずれの押出機もスタティックミキサーを用いることができる。これらの押出機のうち、生産性の面からスクリュを用いた押出機が好ましい。また、カッター6を収容したカッティング室7も、樹脂の溶融押出による造粒方法において用いられている従来周知のものを用いることができる。
【0056】
図1に示す製造装置を用い、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造するには、まず、原料の前記ポリスチレン系樹脂、可塑剤、無機発泡核剤や必要に応じて添加される発泡核剤などの所望の添加剤を秤量し、原料供給ホッパー3から押出機1内に投入する。原料のポリスチレン系樹脂は、ペレット状や顆粒状にして事前に良く混合してから1つの原料供給ホッパーから投入してもよいし、あるいは例えば複数のロットを用いる場合は各ロットごとに供給量を調整した複数の原料供給ホッパーから投入し、押出機内でそれらを混合してもよい。また、複数のロットのリサイクル原料を組み合わせて使用する場合には、複数のロットの原料を事前に良く混合し、磁気選別や篩分け、比重選別、送風選別などの適当な選別手段により異物を除去しておくことが好ましい。また、可塑剤、無機発泡核剤などの添加成分は、予めポリスチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂に添加成分を高濃度で添加したマスターバッチを作成して添加することが好ましい。
【0057】
押出機1内にポリスチレン系樹脂、可塑剤、無機発泡核剤やその他の添加剤を供給後、樹脂を加熱溶融し、その溶融樹脂をダイ2側に移送しながら、発泡剤供給口5から高圧ポンプ4によって発泡剤を圧入して溶融樹脂に発泡剤を混合し、押出機1内に必要に応じて設けられる異物除去用のスクリーンを通して、溶融物をさらに混練しながら先端側に移動させ、発泡剤を添加した溶融物を押出機1の先端に付設したダイ2の小孔から押し出す。また、可塑剤、無機発泡核剤は押出機横の供給口から圧入して添加してもよい。
【0058】
ダイ2の小孔が穿設された樹脂吐出面は、室内に冷却水が循環供給されるカッティング室7内に配置され、且つカッティング室7内には、ダイ2の小孔から押し出された樹脂を切断できるようにカッター6が回転可能に設けられている。発泡剤添加済みの溶融物を押出機1の先端に付設したダイ2の小孔から押し出すと、溶融物は粒状に切断され、同時に冷却水と接触して急冷され、発泡が抑えられたまま固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子となる。
【0059】
形成された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、カッティング室7から冷却水の流れに同伴して固液分離機能付き脱水乾燥機10に運ばれ、ここで発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を冷却水と分離すると共に脱水乾燥する。乾燥された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、貯留容器11に貯留される。
【0060】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法は、溶融押出法によって発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する際に、ポリスチレン系樹脂に、沸点が50℃以上の可塑剤を添加し、該可塑剤が粒子内部に均一に含有された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得るようにしたので、可塑剤を樹脂粒子に含浸させる従来技術と比べ、高い発泡倍数の予備発泡粒子を得ることができ、軽量で十分な機械的強度を有する発泡成形体を製造可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を効率よく製造することができる。
【0061】
(ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子及びポリスチレン系樹脂発泡成形体)
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡樹脂成形体の製造分野において周知の装置及び手法を用い、水蒸気加熱等により加熱して予備発泡し、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子(以下、予備発泡粒子と記す)とする。この予備発泡粒子は、製造するべき発泡成形体の密度と同等の嵩密度となるように予備発泡される。本発明において、その嵩密度は限定されないが、通常は0.010〜0.10g/cmの範囲内とし、0.015〜0.050g/cmの範囲内とするのが好ましい。
【0062】
なお、本発明において予備発泡粒子の嵩密度とは、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定されたものをいう。
<予備発泡粒子の嵩密度>
先ず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積VcmをJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいて予備発泡粒子の嵩密度を測定する。
嵩密度(g/cm)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
【0063】
<予備発泡粒子の嵩発泡倍数>
また、予備発泡粒子の嵩発泡倍数は、次式により算出される数値である。
嵩発泡倍数=1/嵩密度(g/cm
【0064】
前記予備発泡粒子は、発泡樹脂成形体の製造分野において周知の装置及び手法を用い、該予備発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し、水蒸気加熱等により加熱して型内発泡成形し、ポリスチレン系樹脂発泡成形体(以下、発泡成形体と記す)を製造する。
本発明の発泡成形体の密度は特に限定されないが、通常は0.010〜0.10g/cmの範囲内とし、0.015〜0.050g/cmの範囲内とするのが好ましい。
【0065】
なお、本発明において発泡成形体の密度とは、JIS K7122:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」記載の方法で測定した発泡成形体密度のことである。
<発泡成形体の密度>
50cm以上(半硬質および軟質材料の場合は100cm以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出した。
密度(g/cm)=試験片質量(g)/試験片体積(cm
試験片状態調節、測定用試験片は、成形後72時間以上経過した試料から切り取り、23℃±2℃×50%±5%または27℃±2℃×65%±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
【0066】
<発泡成形体の発泡倍数>
また、発泡成形体の発泡倍数は次式により算出される数値である。
発泡倍数=1/密度(g/cm
【0067】
本発明の発泡成形体は、前述した本発明に係る発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱発泡させ、得られた予備発泡粒子を型内発泡成形して得られたものなので、高発泡倍数の発泡成形体を得ることができる。また、軽量で曲げ強度などの機械強度に優れた発泡成形体を得ることができる。
【実施例】
【0068】
[実施例1]
(マスターバッチの製造)
基材樹脂としてポリスチレン樹脂(PSジャパン社製、商品名「G9305」)を使用し、可塑剤としてアジピン酸ジイソブチル(沸点:293℃、田岡化学工業製、商品名「DI4A」)が10質量%となるようマスターバッチを作製した。
【0069】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造)
基材樹脂としてポリスチレン樹脂(PSジャパン社製、商品名「G9305」)に対して、前記マスターバッチをポリスチレン樹脂100質量部に対しアジピン酸ジイソブチル2.1質量部となるように予め混合したものを時間当たり160kg/hrの割合で口径90mmの単軸押出機内へ供給し、樹脂を加熱溶融させた後、発泡剤として樹脂100質量部に対して6質量部のブタン(イソブタン:ノルマルブタン=30:70(質量比))を押出機途中より圧入した。そして、押出機内で樹脂と発泡剤を混練しつつ、押出機先端部での樹脂温度が170℃となるように冷却しながら、押出機に連接しヒーターにより290℃に保持した、直径0.6mm、ランド長さ3.0mmのノズルを200個有する造粒用ダイスを通して、温度50℃、水圧1.5MPaの冷却水が循環する水中カット室内に押し出すと同時に、円周方向に10枚の刃を有する高速回転カッターをダイスに密着させて、毎分3000回転で切断し、脱水乾燥して球形の発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は変形、ヒゲ等の発生もなく、平均粒径1.1mmであった。
次いで、内容積5.7リットルの攪拌機付オートクレーブに前記の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子2000g、蒸留水2500g、ピロリン酸マグネシウム4g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2gを入れ、撹拌し懸濁させた。窒素でオードクレーブ内を2MPaに加圧した後、100℃まで昇温して、5分間保持した後、20℃まで冷却して取り出し、洗浄、脱水、乾燥した。
【0070】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面被覆)
前記の通り得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して、ポリエチレングリコール0.03質量部、ステアリン酸亜鉛0.05質量部、ステアリン酸モノグリセライド0.05質量部、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド0.05質量部を発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面全面に均一に被覆した。
【0071】
(発泡成形体の製造)
続いて、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を円筒型バッチ式予備発泡機に供給して、吹き込み圧0.05MPaの水蒸気により加熱し、予備発泡粒子を得た。得られた予備発泡粒子は、嵩密度0.020g/cm(嵩発泡倍数50倍)であった。
続いて、得られた予備発泡粒子を室温雰囲気下、24時間に亘って放置した後、長さ400mm×幅300mm×高さ25mmの長方形状のキャビティを有する成形型内に予備発泡粒子を充填し、成形スチーム圧0.08MPa(ゲージ圧力)、金型加熱3秒、一方加熱10秒、逆一方加熱3秒、両面加熱10秒、水冷5秒、設定取出面圧0.02MPaの条件で成形を行った。得られた発泡性形体は密度0.020g/cm(発泡倍数50倍)であった。
このようにして作製した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体について、以下の各測定・評価を行った。その結果を表1に記す。
【0072】
<発泡性の測定>
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性を調べる為に、発泡槽の中で発泡スチーム圧0.01MPa(ゲージ圧力)の蒸気にて発泡させた。その時の加熱時間を2分、5分、10分と変えて発泡させ、この発泡粒2gをメスシリンダーに入れて体積を測り、質量2gで除して見かけの発泡倍数(cm/g)を求めた。
加熱時間を2分、5分、10分と変えて発泡させた見かけの発泡倍数の最大値を次の評価基準:
最大の発泡倍数が55倍以上を特に良好(◎)
最大の発泡倍数が45倍以上55倍未満を良好(○)
最大の発泡倍数が45倍未満を不良(×)
に基づき評価した。
【0073】
<強度の評価>
実施例(及び比較例)で得られた発泡成形体について、JISA9511:2006「発泡プラスチック保温材」記載の方法に準じて曲げ強度を測定した。すなわち、テンシロン万能試験機UCT−10T(オリエンテック社製)を用い、試験体サイズは75mm×300mm×50mmとし、圧縮速度を10mm/min、先端治具は加圧くさび10R、支持台10Rで、支点間距離200mmの条件として測定し、次式にて曲げ強度を算出した。試験片の数は3個とし、その平均値を求めた。
曲げ強度(MPa)=3FL/2bh(ここで、Fは曲げ最大荷重(N)を表し、Lは支点間距離(mm)を表し、bは試験片の幅(mm)を表し、hは試験片の厚み(mm)を表す。)
このようにして曲げ強度の平均値を求め、次の評価基準:
曲げ強度が0.31MPa以上を特に良好(◎)、
曲げ強度が0.28MPa以上0.31MPa未満を良好(O)、
曲げ強度が0.28MPa未満を不良(×)、
に基づき、強度を評価した。
【0074】
<発泡成形体の外観評価>
発泡成形体の外観を目視にて評価した。次の評価基準:
成形品表面の発泡粒子が接合した境界部分が非常に平滑である場合を特に良好(◎)
成形品表面の発泡粒子が接合した境界部分の平滑がやや劣る場合を良好(○)
成形品表面の発泡粒子の境界部分に凹凸があり平滑性が劣る場合を不良(×)
に基づき、外観を評価した。
【0075】
<融着率の評価>
得られた箱形の発泡成形体を衝撃によって破断させ、その破断面の発泡粒子に100〜150個を含む任意の範囲について、全粒子数(A)と粒子内で破断している粒子数(B)を計数し、以下の式により融着率(%)を算出した。
融着率=(B)×100/(A)
次の評価基準:
80%以上、100%未満を特に良好(◎)
60%以上、80%未満を良好(○)
60%未満を不良(×)
に基づき、外観を評価した。
【0076】
<総合評価>
総合評価は発泡性、外観、融着、強度の4つの評価が次の評価基準:
×がなく、◎が3つ以上を特に良好(◎)
×がないものを良好(○)
×が一つでもあるものを不良(×)
に基づき評価を行った。
【0077】
[実施例2]
実施例1に記載のマスターバッチを、樹脂100質量部に対しアジピン酸ジイソブチル0.1質量部となるよう使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、同様の測定・評価を行った。その結果を表1に記す。
【0078】
[実施例3]
実施例1に記載のマスターバッチを、樹脂100質量部に対しアジピン酸ジイソブチル0.23質量部となるよう使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、同様の測定・評価を行った。その結果を表1に記す。
【0079】
[実施例4]
実施例1に記載のマスターバッチを、樹脂100質量部に対しアジピン酸ジイソブチル5.1質量部となるよう使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、同様の測定・評価を行った。その結果を表1に記す。
【0080】
[実施例5]
実施例1に記載のマスターバッチを、樹脂100質量部に対しアジピン酸ジイソブチル7.4質量部となるよう使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、同様の測定・評価を行った。その結果を表1に記す。
【0081】
[実施例6]
実施例1のマスターバッチの製造時にアジピン酸ジイソブチルの代わりにグリセリンジアセトモノラウレート(沸点:401.6℃、理研ビタミン社製、商品名「リケマールPL−102」)を使用し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造時に該マスターバッチを樹脂100質量部に対しグリセリンジアセトモノラウレートが2.1質量部となるよう使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、同様の測定を行った。その結果を表1に記す。
【0082】
[実施例7]
実施例1のマスターバッチの製造時にアジピン酸ジイソブチルの代わりにアジピン酸ジオクチル(沸点:335℃、田岡化学工業製、商品名「DOA」)を使用し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造時に該マスターバッチを樹脂100質量部に対しアジピン酸ジオクチルが2.1質量部となるよう使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、同様の測定・評価を行った。その結果を表1に記す。
【0083】
[実施例8]
実施例1のマスターバッチの製造時にアジピン酸ジイソブチルの代わりにリン酸トリクレジル(沸点:410℃、味の素社製、商品名「デュラッドTCP」)を使用し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造時に該マスターバッチを樹脂100質量部に対しリン酸トリクレジルが2.1質量部となるよう使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、同様の測定・評価を行った。その結果を表1に記す。
【0084】
[実施例9]
実施例1のアジピン酸ジイソブチルのマスターバッチの製造において、シクロヘキサン(沸点:80.7℃、ジャパンエナジー、商品名「カクタスソルベントCHX」)が10質量%となるようにさらに加えてマスターバッチを作製し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造時に樹脂100質量部に対しアジピン酸ジイソブチル2.1質量部、シクロヘキサンが1.1質量部となるよう該マスターバッチを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、同様の測定・評価を行った。その結果を表1に記す。
【0085】
[実施例10]
実施例1のマスターバッチの製造時にアジピン酸ジイソブチルの代わりにシクロヘキサンを使用し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造時に該マスターバッチを樹脂100質量部に対してシクロヘキサンが2.1質量部となるよう使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、同様の測定・評価を行った。その結果を表1に記す。
【0086】
[実施例11]
実施例1の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造時に発泡剤にブタンを使用する代わりにイソブタンを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、同様の測定・評価を行った。その結果を表1に記す。
【0087】
[比較例1]
実施例1の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造時にアジピン酸ジイソブチルのマスターバッチを使用しなかったこと(可塑剤添加無し)以外は、実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、同様の測定・評価を行った。その結果を表1に記す。
【0088】
[比較例2]
実施例1の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造時にアジピン酸ジイソブチルのマスターバッチを使用せず(可塑剤添加無し)、発泡剤にブタンを使用する代わりにイソペンタンを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、同様の測定・評価を行った。その結果を表1に記す。
【0089】
[比較例3]
(スチレン系重合体種粒子の作製)
内容積100リットルの攪拌機付オートクレーブ(以下、反応器ともいう)にリン酸三カルシウム(大平化学社製)120g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4g、過酸化ベンゾイル(純度75%)140g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート30g、イオン交換水40kg及びスチレン単量体40kgを投入した後、100rpmの撹拌下で溶解及び分散させて懸濁液を形成した。
引き続き、攪拌羽を100rpmで撹拌しながらオートクレーブ内の温度を90℃まで昇温した後、90℃で6時間保持した。
その後、さらにオートクレーブ内の温度を120℃まで昇温し、120℃で2時間保持した後、オートクレーブ内の温度を25℃まで冷却し、オートクレーブから内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級して粒子径が0.5〜0.7mmで重量平均分子量が30万のスチレン系重合体種粒子を得た。
【0090】
(発泡性スチレン系樹脂粒子の作製)
次いで、内容積50リットルの攪拌機付オートクレーブに前記のスチレン系重合体種粒子5.2kg、蒸留水19.5kg、ピロリン酸マグネシウム161g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.8gを入れ、撹拌し懸濁させた。
次いで予め用意した蒸留水2000g、ピロリン酸マグネシウム36g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.9g及びスチレン1350gをホモミキサーで攪拌して懸濁液を調製し、この懸濁液を72℃に保持した反応器に添加し、15分間ポリスチレン粒子にスチレンを吸収させた。
続いて、重合開始剤として過酸化ベンゾイル(純度75%)61g及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート26.5gをスチレン1000gに溶解し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4g、蒸留水2000gと共にホモミキサーで攪拌して調製した懸濁液を72℃に保持した反応器に加えた。
重合開始剤を含む懸濁液を反応器に加え始めた時点から60分間、反応器内温度を72℃に保持し、スチレン樹脂種粒子にスチレンと重合開始剤を吸収させた後、スチレン15kgを反応器内に連続的に3時間で供給するとともに、スチレン供給終了時に109℃となるように反応器内温度を連続的に昇温した。
引き続き120℃まで昇温して60分保持した後、蒸留水700gにピロリン酸マグネシウム22g、ドデシルベゼンスルホン酸ナトリウム2gに発泡助剤としてエステル系可塑剤としてアジピン酸ジイソブチル64gを加えてホモミキサーで攪拌して懸濁液を調製し、この懸濁液を反応器内に圧入した。その後、100℃まで冷却して、発泡剤であるブタン(イソブタン:ノルマルブタン=30:70(質量比))2250gを圧入して100℃で2時間保持した後、20℃まで冷却して取り出し、洗浄、脱水、乾燥した。発泡性ポリスチレン粒子の洗浄時に、JIS1000μm篩を通過しない合着粒子、及びJIS500μm篩を通過する微粉末状重合体を除き、その重量を各々測定した。さらに発泡後の気泡径が完全に安定するまで15℃で5日間熟成させて、メジアン径0.85mmの発泡性スチレン系重合体粒子を得た。
発泡性スチレン系樹脂粒子の作製以降は実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、同様の測定を行った。その結果を表1に記す。
【0091】
【表1】

【0092】
表1の結果から、本発明に係る実施例1〜11において得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡性が良好であり、高い発泡倍数の予備発泡樹脂粒子及び発泡成形体を得ることができた。また、実施例1〜11において得られた発泡成形体は、外観に優れ、発泡粒子同士の融着あ良好であり、強度にも優れていた。
【0093】
一方、可塑剤を添加しなかった比較例1,2で得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡性能が悪く、発泡成形体の外観、融着度合、強度のいずれかが劣っていた。
さらに、含浸法によって可塑剤を添加した比較例3で得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡性能が悪く、高い発泡倍数の予備発泡樹脂粒子及び発泡成形体を得ることが難しかった。
【0094】
<吸光度比の測定>
実施例1、比較例3でそれぞれ製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の断面について、ATR法赤外分光分析により粒子表面分析を行って、吸光度比(D1730/D1600)を求め、可塑剤(アジピン酸ジイソブチル)の分布状態を調べた。
吸光度比(D1730/D1600)は下記の要領で測定される。
即ち、無作為に選択した10個の各樹脂粒子の表面(図2中の符号A)、及び粒子を中心を通って切断した断面の中心部(図2中の符号B)について、ATR法赤外分光分析により粒子表面分析を行って赤外線吸収スペクトルを得る。
各赤外線吸収スペクトルから吸光度比(D1730/D1600)をそれぞれ算出し、表面Aについて算出した吸光度比の相加平均を吸光度比(A)とし、中心部Bについて算出した吸光度比の相加平均を吸光度比(B)とする。
吸光度D1730及び、D1600は、たとえばNicolet社から商品名「フーリエ変換赤外分光分析計 MAGMA560」で販売されている測定装置を用いて測定する。
尚、赤外吸収スペクトルから得られる1600cm−1での吸光度D1600は、ポリスチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面内振動に由来する1600cm−1付近に現れるピークの高さをいう。
また、赤外吸収スペクトルから得られる1730cm−1での吸光度D1730は、アクリル酸エステルに含まれるエステル基のC=0間の伸縮振動に由来する1730cm−1付近に現れるピークの高さをいう。
【0095】
図2は、実施例1で製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の断面の吸光度比(D1730/D1600)の測定結果を示す概略図である。実施例1の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子20は、樹脂粒子全体にわたって吸光度比(D1730/D1600)が均一となり、可塑剤が樹脂粒子全体にわたって均一な濃度で含まれていた。
図3は、比較例3で製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の断面の吸光度比(D1730/D1600)の測定結果を示す概略図である。含浸法で可塑剤を樹脂粒子に含浸させた比較例3の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子30は、可塑剤が表層部31に局在し、中心部32には可塑剤が殆ど含まれていない。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、溶融押出法による発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法に関し、高発泡倍数で機械強度に優れた発泡成形体を得ることが可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子及びポリスチレン系樹脂発泡成形体に関する。
【符号の説明】
【0097】
1…押出機(樹脂供給装置)、2…ダイ、3…原料供給ホッパー、4…高圧ポンプ、5…発泡剤供給口、6…カッター、7…カッティング室、8…水槽、9…高圧ポンプ、10…固液分離機能付き脱水乾燥機、11…貯留容器、20…発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、30…発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、31…表層部、32…中心部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡剤を含有するポリスチレン系樹脂を粒子状としてなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、
沸点が50℃以上の可塑剤が粒子内部に均一に含有された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
樹脂供給装置内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る、溶融押出法によって得られた請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
前記可塑剤が、沸点が150℃以上の高沸点可塑剤を含んでいる請求項1又は2に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
前記高沸点可塑剤がエステル系の可塑剤である請求項3に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項5】
前記高沸点可塑剤がアジピン酸エステル系の可塑剤である請求項4に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項6】
前記高沸点可塑剤がアジピン酸ジイソブチルである請求項5に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項7】
前記高沸点可塑剤の含有量が、樹脂100質量部に対し0.2〜7質量部の範囲である請求項3〜6のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項8】
前記高沸点可塑剤の含有量が、樹脂100質量部に対し0.2〜5質量部の範囲である請求項3〜7のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項9】
前記可塑剤が、沸点が50℃以上の炭化水素を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項10】
前記炭化水素の含有量が、樹脂100質量部に対し0.2〜7質量部の範囲である請求項9に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項11】
前記炭化水素の含有量が、樹脂100質量部に対し0.2〜5質量部の範囲である請求項9又は10に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項12】
前記発泡剤としてブタンを含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項13】
樹脂供給装置内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る、溶融押出法による発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、
ポリスチレン系樹脂に、沸点が50℃以上の可塑剤を添加し、該可塑剤が粒子内部に均一に含有された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項14】
前記可塑剤が、沸点が150℃以上の高沸点可塑剤を含んでいる請求項13に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項15】
前記高沸点可塑剤がエステル系の可塑剤である請求項14に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項16】
前記高沸点可塑剤がアジピン酸エステル系の可塑剤である請求項15に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項17】
前記高沸点可塑剤がアジピン酸ジイソブチルである請求項16に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項18】
前記高沸点可塑剤の含有量が、樹脂100質量部に対し0.2〜7質量部の範囲である請求項14〜17のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項19】
前記高沸点可塑剤の含有量が、樹脂100質量部に対し0.2〜5質量部の範囲である請求項14〜18のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項20】
前記可塑剤が、沸点が50℃以上の炭化水素を含む請求項13〜19のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項21】
前記炭化水素の含有量が、樹脂100質量部に対し0.2〜7質量部の範囲である請求項20に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項22】
前記炭化水素の含有量が、樹脂100質量部に対し0.2〜5質量部の範囲である請求項20又は21に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項23】
前記発泡剤としてブタンを含む請求項13〜22のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項24】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱し発泡させて得られたポリスチレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項25】
嵩発泡倍数50倍に予備発泡させた状態での平均気泡径が50〜300μmの範囲内である請求項24に記載のポリスチレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項26】
請求項24又は25に記載のポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を成形型のキャビティに充填し、加熱して型内発泡成形して得られたポリスチレン系樹脂発泡成形体。
【請求項27】
発泡倍数50倍に発泡させた状態での平均気泡径が50〜300μmの範囲内である請求項26に記載のポリスチレン系樹脂発泡成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−71998(P2013−71998A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211723(P2011−211723)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】