説明

発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及びその製造方法並びに発泡成形品

【課題】本発明は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供する。
【解決手段】 本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、架橋性単量体を含むスチレン系単量体を重合させて形成された表層を有するポリスチレン系樹脂粒子に易揮発性発泡剤を含浸させてなる発泡成形用の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに飽和膨潤させた状態において、上記表層の厚みが15〜35μmであると共に上記表層の架橋比率が40〜70%であり、上記表層における外側部の架橋比率と内側部の架橋比率の比(外側部の架橋比率/内側部の架橋比率)が1.1〜1.5であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及びその製造方法並びに発泡成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリスチレン系樹脂粒子中に易揮発性発泡剤を含浸させてなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて予備発泡粒子を製造し、この予備発泡粒子を成形機の金型内に充填した上で加熱、発泡させて互いに融着一体化させて所望形状を有する発泡成形容器を製造していた。
【0003】
上述のように、発泡成形容器は、予備発泡粒子自身の発泡圧力によって、予備発泡粒子が発泡してなる発泡粒子同士を熱融着一体化してなるものであるが、発泡粒子同士は、これら発泡粒子同士の対向部分において全面的に熱融着しているものではなく、部分的にしか熱融着一体化していない。
【0004】
従って、発泡成形容器は、たとえ発泡粒子同士が良好な状態、即ち、発泡成形容器の断面において発泡粒子の表面同士が目視にて完全に熱融着一体化した状態であっても、発泡粒子同士の対向部分における非熱融着部分に起因する隙間が内外方向に連続することによって、目視では確認できないような微細な毛細管が発泡成形容器の内外面間に亘って貫通した状態に形成されている。
【0005】
このことは、発泡成形容器内に界面活性剤を含有する染料水を入れて所定時間に亘って放置すると、発泡成形容器内の染料水が発泡粒子間にできた毛細管を通じて外部に滲み出してくる現象が生じ、この現象によって上記毛細管の存在を確認することができる。
【0006】
そして、このような発泡成形容器をコーヒーのような飲料用コップとして用いる場合には実用上において何ら支障は生じないものの、発泡成形容器内に油性食品類、例えば、ドーナツ、ハンバーガー、フライドチキン、マーガリンなどのサラダ油、油脂などを含有する食品を長期間に亘って保存しておくと、これら油性食品類に含有されていた油分が発泡成形容器に形成された毛細管を通じて外部に滲み出してくるといった問題点があった。
【0007】
同様に、発泡成形容器内に、即席麺と共にカレー粉を含有するかやく類を収納して保存しておくと、カレー粉の黄色色素が発泡成形容器の毛細管を通じて発泡成形容器外面に滲み出してきて商品価値が損なわれるといった問題点があった。
【0008】
そこで、発泡成形容器内からの油分や黄色色素の滲み出しを防止するために、発泡成形温度を高温にし或いは加熱時間を延長することによって解決することができるものの、前者の方法では、発泡粒子の耐熱性がそれ程高くないために発泡粒子が溶融して収縮してしまい、良好な外観を有する発泡成形容器を得ることができず、後者の方法では、発泡成形サイクルが長くなり、生産効率が低下するといった問題点を有していた。
【0009】
又、特許文献1では、ゲル分率が10〜50重量%であり且つ100℃の水に5分間浸漬して予備発泡させた時の嵩密度が0.025〜0.06g/cm3 であると共に、蒸気によって嵩倍率10倍に予備発泡させた予備発泡粒子において、その表層部の気泡の平均気泡径が10〜70μmであり且つ表層部の気泡の平均気泡径と中央部の気泡の平均気泡径との比が0.4〜0.8である発泡性スチレン系樹脂粒子が提案されている。
【0010】
しかしながら、上記発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて得られた発泡成形容器は、確かに耐油性が向上しており、油分や黄色色素の滲み出し防止に優れているものの、発泡成形容器の外観性がやや劣るといった問題点があった。
【0011】
更に、特許文献2では、予備発泡させた上で金型内に充填して発泡させて発泡成形体を成形するための発泡性スチレン系樹脂粒子であって、所定の芳香族化合物からなる有機化合物の総量が発泡性スチレン系樹脂粒子の全重量に対して0〜500ppmであると共に、粒子径が0.3mmより大きく且つ0.6mm以下であり、更に、嵩倍率10倍に予備発泡させた予備発泡粒子において、予備発泡粒子の表面と、この表面から予備発泡粒子の直径の10%の深さだけ内方に入った部分との間にある表層部のゲル分率が60〜100重量%であると共に、上記予備発泡粒子における表層部を除いた残余部分からなる中心部のゲル分率が0〜20重量%である発泡性スチレン系樹脂粒子が提案されている。
【0012】
しかしながら、上記発泡性スチレン系樹脂粒子を用いることによって、開口部の強度及び軽量性に優れた発泡成形容器を得ることができるものの、発泡成形容器は、その油分や黄色色素の滲みだし防止性能や外観性においてはやや劣るといった問題点を有していた。
【0013】
【特許文献1】特開2006−36993号公報
【特許文献2】特開2005−272665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、食品などに含まれた油分やカレー粉などの色素を長期間に亘って内部に保存し或いは界面活性剤などを含む液体を所定時間に亘って内部に収納した場合にあっても外部に滲み出すことのない発泡成形品を得ることができる発泡性に優れた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及びその製造方法並びに発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて成形された発泡成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、架橋性単量体を含むスチレン系単量体を重合させて形成された表層を有するポリスチレン系樹脂粒子に易揮発性発泡剤を含浸させてなる発泡成形用の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに飽和膨潤させた状態において、上記表層の厚みが15〜35μmであると共に上記表層の架橋比率が40〜70%であり、上記表層における外側部の架橋比率と内側部の架橋比率の比(外側部の架橋比率/内側部の架橋比率)が1.1〜1.5であることを特徴とする。
【0016】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を構成しているスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレンなどのスチレン系単量体の単独重合体又はこれらの共重合体などが挙げられる。
【0017】
又、上記スチレン系樹脂としては、上記スチレン系単量体を50重量%以上含有する、上記スチレン系単量体とこのスチレン系単量体と共重合可能なビニル単量体との共重合体であってもよく、このようなビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートなどが挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0018】
そして、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、その表面に架橋性単量体を含むスチレン系単量体を重合させることによって形成された表層を有しており、この表層以外の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子部分は架橋されていないことが好ましい。なお、表層を構成しているスチレン系単量体は上記と同様であるのでその説明を省略する。
【0019】
上記架橋性単量体としては、表層に架橋構造を付与することができれば、特に限定されず、例えば、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの多官能性単量体などが挙げられ、ジビニルベンゼンが好ましい。
【0020】
更に、上記表層には、単量体成分として、上記スチレン系単量体や上記架橋性単量体と共重合可能なビニル系単量体が含有されていてもよく、このようなビニル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートなどが挙げられる。
【0021】
そして、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表層は、この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに飽和膨潤させた状態において、厚みが15〜35μmに限定され、20〜30μmが好ましく、23〜28μmがより好ましい。
【0022】
これは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表層が薄いと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の耐油性が低下して、界面活性剤などを含む液体、油分又は黄色色素が発泡成形品の発泡粒子間に形成された微細な毛細管を通じて滲み出す虞れがある一方、厚いと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下して、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の外観性が低下するからである。
【0023】
又、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表層は、この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに飽和膨潤させた状態において、架橋比率が40〜70%に限定され、45〜60%が好ましく、45〜55%がより好ましい。
【0024】
これは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表層の架橋比率が低いと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の耐油性が低下して、界面活性剤などを含む液体、油分又は黄色色素が発泡成形品の発泡粒子間に形成された微細な毛細管を通じて滲み出す虞れがある一方、高いと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下して、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の外観性が低下するからである。
【0025】
更に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表層は、この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに飽和膨潤させた状態において、外側部の架橋比率と内側部の架橋比率の比(外側部の架橋比率/内側部の架橋比率)が1.1〜1.5に限定され、1.2〜1.4が好ましく、1.25〜1.35がより好ましい。
【0026】
これは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表層における外側部の架橋比率と内側部の架橋比率の比(外側部の架橋比率/内側部の架橋比率)が低いと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の耐油性が低下して、界面活性剤などを含む液体、油分又は黄色色素が発泡成形品の発泡粒子間に形成された微細な毛細管を通じて滲み出す虞れがある一方、高いと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の熱融着性が低下して、界面活性剤などを含む液体、油分又は黄色色素が発泡成形品の発泡粒子間に形成された微細な毛細管を通じて滲み出す虞れがあるからである。
【0027】
ここで、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに飽和膨潤させた状態における表層の厚み、架橋比率、及び外側部の架橋比率と内側部の架橋比率の比(外側部の架橋比率/内側部の架橋比率)は下記の要領で測定されたものをいう。
【0028】
はじめに、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに飽和膨潤させた状態における表層の厚みの測定要領について説明する。先ず、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子1.00gを精秤してテトラヒドロフラン(THF)100ミリリットル中に浸漬させ、25℃の大気圧条件下にて24時間に亘って放置して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに飽和膨潤させる(図1(a))。
【0029】
次に、テトラヒドロフラン中の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を80メッシュの金網を用いて濾過して膨潤樹脂粒子を得る(図1(b))。しかる後、外形17mm、長さ105mm、容量10ミリリットルの密閉可能な試験管中に、上記膨潤状態の膨潤樹脂粒子2g、メタクリル酸メチル(MMA)3g及び2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.003gを投入して(図1(c))、膨潤樹脂粒子中にメタクリル酸メチル及び2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を含浸させて、膨潤樹脂粒子中のテトラヒドロフランをメタクリル酸メチルと置換する(図1(d))。
【0030】
続いて、上記試験管を密閉状態の40℃に保持した恒温槽内に放置して20時間に亘って加熱してメタクリル酸メチルを重合させた後、試験管内の膨潤樹脂粒子を冷水にて冷却した上で試験管内から重合途中のポリメタクリル酸メチルを変形させないようにしながら取り出した(図1(e))。
【0031】
得られた重合途中のポリメタクリル酸メチルをその内部にある任意の膨潤樹脂粒子の重心を通る平面とこの平面に平行な平面にてカッターナイフを用いてスライスしてスライス体を得た(図1(f))。スライス体をオーブン内に放置して70℃にて20時間に亘って加熱して固化体を得る。
【0032】
しかる後、固化体における膨潤樹脂粒子の重心を通る平面での切断面を電子顕微鏡にて撮影し、得られた電子顕微鏡写真(図1(g))に基づいて、固化体内の膨潤樹脂粒子における表層の任意の10個所の厚みを測定して、これら厚みの相加平均値を表層の厚みとした。なお、表層の厚みとは、表層の外周面に対して垂直方向の表層の内外周面間の距離をいう。
【0033】
図1において、1は発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、2は膨潤樹脂粒子、3はポリメタクリル酸メチル、4は切断面、5は表層、6は膨潤樹脂粒子外部のポリメタクリル酸メチル相、7は膨潤樹脂粒子内部のポリメタクリル酸メチル相であり、図1(g)における点線で描かれた円形内部の拡大写真を図2に示した。
【0034】
次に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに飽和膨潤させた状態における表層の架橋比率の測定要領について説明する。はじめに、上記表層の厚みを測定する場合と同様の要領で得られた固化体をエポキシ樹脂で包埋した後、この固化体をスライスして厚みが80〜100μmの薄片を作製する。なお、固化体をスライスするには、例えば、ライカマイクロシステムズ株式会社製から商品名「ウルトラミクロトーム LEICA ULTRACUT UCT」にて市販されている装置を用いることができる。
【0035】
しかる後、上記薄片を四酸化ルテニウム中に浸漬して薄片中のゲル分(架橋部分)を染色した後、この薄片を透過型電子顕微鏡を用いて観察して電子顕微鏡写真を得(図3)、この電子顕微鏡写真を必要に応じてトレーシングペーパに写し取る。
【0036】
次に、上記電子顕微鏡写真又は上記トレーシングペーパに写し取った画像中の任意の10箇所において、表層の厚みを一辺とする正方形状の測定部8を特定する(図4)。各測定部8において、汎用の画像処理ソフトを用いて、四酸化ルテニウムによって染色された部分の面積S1と、測定部8の面積S2との比(S1/S2)を算出し、各測定部8の比(S1/S2)の相加平均値を表層の架橋比率とする。
【0037】
なお、四酸化ルテニウムは、例えば、レアメタリック株式会社から市販されており、画像処理ソフトは、例えば、ナノシステム株式会社から商品名「NauHunter NS2K-Pro」で市販されている。
【0038】
次に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに飽和膨潤させた状態における表層の外側部の架橋比率と内側部の架橋比率の比(外側部の架橋比率/内側部の架橋比率)の測定要領について説明する。
【0039】
上記表層の架橋比率の測定時に特定した10箇所の測定部8、8・・・において、表層の厚み方向に指向する辺の中央同士を直線で結び、測定部8を外側部81と内側部82とに区画する(図5)。
【0040】
そして、各測定部8の外側部81において、汎用の画像処理ソフトを用いて、四酸化ルテニウムによって染色された部分の面積S3と、外側部81の面積S4との比(S3/S4)を算出し、各測定部8の外側部81の比(S3/S4)の相加平均値を表層8の外側部81の架橋比率R1をする。
【0041】
同様に、各測定部8の内側部82において、汎用の画像処理ソフトを用いて、四酸化ルテニウムによって染色された部分の面積S5と、内側部82の面積S6との比(S5/S6)を算出し、各測定部8の内側部82の比(S5/S6)の相加平均値を表層8の内側部82の架橋比率R2をする。
【0042】
そして、外側部81の架橋比率R1を内側部82の架橋比率R2で除することによって、表層において、外側部の架橋比率と内側部の架橋比率の比(外側部の架橋比率/内側部の架橋比率)を算出することができる。
【0043】
次に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法について説明する。先ず、ポリスチレン系樹脂種粒子を水性媒体中に分散させてなる分散液を用意する。上記ポリスチレン系樹脂種粒子は、公知の要領で製造することができ、例えば、上記スチレン系単量体を水中にて懸濁重合させてポリスチレン系樹脂種粒子を製造する方法、ポリスチレン系樹脂を押出機に供給して溶融混練して押出機からストランド状に押出し、得られたストランド状体を所定長さ毎に切断してポリスチレン系樹脂種粒子を製造する方法が挙げられる。なお、ポリスチレン系樹脂種粒子を構成しているポリスチレン系樹脂の重量平均分子量は15万〜40万が好ましく、25万〜35万がより好ましい。又、上記水性媒体としては、例えば、水、アルコールなどが挙げられ、水が好ましい。
【0044】
なお、上記分散液中には、ポリスチレン系樹脂種粒子の分散安定性を向上させるために懸濁安定剤や安定助剤を添加してもよい。
【0045】
上記懸濁安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどの難溶性無機化合物などが挙げられ、難溶性無機化合物を用いる場合には、アニオン界面活性剤が通常、併用される。
【0046】
このようなアニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩、β−テトラヒドロキシナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。
【0047】
次に、ポリスチレン系樹脂種粒子を水性媒体中に分散させてなる分散液の温度T1を該分散液に添加する重合開始剤の10時間半減期温度に対して下記式1を満たすように保持した上で、スチレン系単量体、架橋性単量体及び重合開始剤を上記分散液中に添加し、ポリスチレン系樹脂種粒子中にスチレン系単量体、架橋性単量体及び重合開始剤を吸収させる。なお、架橋性単量体は、ポリスチレン系樹脂種粒子への吸収が不均一となるのを防止するために、スチレン系単量体の一部又は全部に溶解させておくことが好ましい。
【0048】
重合開始剤を二種以上用いる場合、式1の重合開始剤の10時間半減期温度とは、重合開始剤の10時間半減期温度のうち最も低い10時間半減期温度をいう。
(重合開始剤の10時間半減期温度−20℃)
≦分散液の温度T1≦(重合開始剤の10時間半減期温度−5℃)・・・式1
【0049】
このように、分散液の温度T1が上記式1を満たす温度となるように調整するのは、分散液中に添加した重合開始剤が実質的に分解しないようにして、スチレン系単量体及び架橋性単量体を重合させることなくポリスチレン系樹脂種粒子中に吸収させてポリスチレン系樹脂種粒子の表面部に適度に拡散させるためである。
【0050】
即ち、分散液の温度T1が重合開始剤の10時間半減期温度よりも20℃を越して低い場合には、スチレン系単量体及び架橋性単量体がポリスチレン系樹脂種粒子中において拡散し過ぎて、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表層における内側部の架橋比率が低下し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の耐油性が低下するからである。
【0051】
一方、分散液の温度T1が重合開始剤の10時間半減期温度よりも5℃低い温度よりも高い場合には、スチレン系単量体及び架橋性単量体がポリスチレン系樹脂種粒子中において充分に拡散する前に重合してしまい、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表層における内側部の架橋比率が高くなり過ぎて、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の外観性が低下し、或いは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られる発泡粒子間の熱融着が不充分となって、界面活性剤などを含む液体、油分又は黄色色素が発泡成形品の発泡粒子間に形成された微細な毛細管を通じて滲み出す虞れがあるからである。
【0052】
上記スチレン系単量体の分散液への添加量は、少ないと、ポリスチレン系樹脂種粒子中にスチレン系単量体を均一に吸収させることができない一方、多いと、ポリスチレン系樹脂種粒子の中央部までスチレン系単量体が吸収され、このスチレン系単量体と共に架橋性単量体もポリスチレン系樹脂種粒子の中央部まで吸収されてしまい、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の外観性が低下し、或いは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られる発泡粒子間の熱融着が不充分となって、界面活性剤などを含む液体、油分又は黄色色素が発泡成形品の発泡粒子間に形成された微細な毛細管を通じて滲み出す虞れがあるので、分散液中のポリスチレン系樹脂種粒子100重量部に対して10〜30重量部に限定され、10〜20重量部が好ましい。
【0053】
又、上記架橋性単量体の分散液への添加量は、少ないと、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表層における内側部の架橋比率が低下し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の耐油性が低下する一方、多いと、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表層における内側部の架橋比率が高くなり、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の外観性が低下し、或いは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られる発泡粒子間の熱融着が不充分となって、界面活性剤などを含む液体、油分又は黄色色素が発泡成形品の発泡粒子間に形成された微細な毛細管を通じて滲み出す虞れがあるので、分散液中のポリスチレン系樹脂種粒子100重量部に対して0.04〜0.1重量部に限定され、0.05〜0.08重量部が好ましい。
【0054】
上記重合開始剤としては、従来から用いられているものが用いられ、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシ−3、3、5トリメチルヘキサノエート、ジーt−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレートなどの有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられ、10時間半減期温度が50℃以上で且つ80℃未満の重合開始剤と、10時間半減期温度が80℃以上で且つ120℃以下の重合開始剤とを併用することが好ましい。
【0055】
そして、重合開始剤の分散液への添加量は、少ないと、スチレン系単量体及び架橋性単量体の重合が不充分となることがある一方、多いと、表層の内側部を構成しているポリスチレン系樹脂の重量平均分子量が低下して、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の外観性が低下し、或いは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の耐油性が低下することがあるので、分散液中に添加したスチレン系単量体100重量部に対して0.2〜1.0重量部が好ましい。重合開始剤を二種以上用いる場合、分散液に添加する重合開始剤の添加量とは、最も低い10時間半減期温度を有する重合開始剤の添加量とする。
【0056】
次に、上記分散液中にスチレン系単量体を供給し始めてから後述するように昇温するまでの時間が30〜120分となるように、好ましくは60〜120分となるように、より好ましくは80〜120分となるように調整する。分散液中にスチレン系単量体を供給し始めてから昇温を開始するまでの間において、スチレン系単量体、架橋性単量体及び重合開始剤を分散液中に連続的に或いは断続的に供給しても、又は、一部の時間に集中してスチレン系単量体、架橋性単量体及び重合開始剤を供給し、他の時間中においては分散液にスチレン系単量体、架橋性単量体及び重合開始剤を供給していなくてもよいが、分散液中へのスチレン系単量体、架橋性単量体及び重合開始剤の供給は最長でも120分以内に完了する必要がある。
【0057】
これは、分散液中にスチレン系単量体を供給し始めてから昇温するまでの時間が30分未満であると、ポリスチレン系樹脂種粒子中に、スチレン系単量体、架橋性単量体及び重合開始剤が充分に拡散せず、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表層の内側部の架橋比率が高くなり、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下して、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の外観性が低下し、或いは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られる発泡粒子間の熱融着が不充分となって、界面活性剤などを含む液体、油分又は黄色色素が発泡成形品の発泡粒子間に形成された微細な毛細管を通じて滲み出す虞れがあるからである。
【0058】
一方、分散液中にスチレン系単量体を供給し始めてから昇温するまでの時間が120分を超えると、ポリスチレン系樹脂種粒子中においてスチレン系単量体及び架橋性単量体が拡散し過ぎて、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表層における内側部の架橋比率が低下し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下して、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の外観性が低下し、或いは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の耐油性が低下するからである。
【0059】
次に、分散液中にスチレン系単量体を供給し始めてから30〜120分が経過した後に、分散液の温度T2が、上記重合開始剤の10時間半減期温度以上の温度、好ましくは、上記重合開始剤に対して式2を満たすように、より好ましくは、上記重合開始剤に対して式3を満たすように、特に好ましくは、上記重合開始剤に対して式4を満たすように分散液を加熱、昇温し、ポリスチレン系樹脂種粒子中に吸収させた重合開始剤を分解させてポリスチレン系樹脂種粒子中に吸収させたスチレン系単量体及び架橋性単量体を重合させる。なお、重合開始剤が二種以上含有されている場合、重合開始剤の10時間半減期温度とは、重合開始剤の10時間半減期温度のうち最も低い10時間半減期温度をいう。
(重合開始剤の10時間半減期温度)
≦分散液の温度T2≦(重合開始剤の10時間半減期温度+30℃)・・・式2
(重合開始剤の10時間半減期温度+5℃)
≦分散液の温度T2≦(重合開始剤の10時間半減期温度+20℃)・・・式3
(重合開始剤の10時間半減期温度+5℃)
≦分散液の温度T2≦(重合開始剤の10時間半減期温度+10℃)・・・式4
【0060】
これは、分散液の温度T2は、低いと、スチレン系単量体及び架橋性単量体の重合速度が遅くなり、スチレン系単量体及び架橋性単量体がポリスチレン系樹脂種粒子の内部にまで吸収、拡散してしまい、重合開始剤の10時間半減期温度以上に分散液を昇温後に分散液に添加したスチレン系単量体及び架橋性単量体をポリスチレン系樹脂種粒子の表面にて効率良く重合させることができないので、重合開始剤の10時間半減期温度以上に限定されるが、高過ぎると、重合開始剤の10時間半減期温度以上に分散液を昇温後に分散液に添加するスチレン系単量体及び架橋性単量体がポリスチレン系樹脂種粒子中に吸収される前に分散液中にて重合してしまい、ポリスチレン系樹脂種粒子への吸収効率が悪くなり、生産効率が低下するからである。
【0061】
上述のように、重合開始剤の10時間半減期温度以上に分散液を加熱、昇温した後に、分散液中に、スチレン系単量体及び架橋性単量体を更に添加してポリスチレン系樹脂種粒子にスチレン系単量体及び架橋性重合体を吸収させつつ重合させてポリスチレン系樹脂種粒子を成長させてポリスチレン系樹脂粒子を製造する。なお、架橋性単量体は、ポリスチレン系樹脂種粒子への吸収が不均一となるのを防止するために、スチレン系単量体の一部又は全部に溶解させておくことが好ましい。
【0062】
重合開始剤の10時間半減期温度以上に分散液を加熱、昇温した後に分散液に添加するスチレン系単量体の量は、少ないと、ポリスチレン系樹脂種粒子中にスチレン系単量体を均一に吸収させることができない一方、多いと、ポリスチレン系樹脂種粒子の中央部までスチレン系単量体が吸収され、このスチレン系単量体と共に架橋性単量体もポリスチレン系樹脂種粒子の中央部まで吸収されてしまい、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の外観性が低下し、或いは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られる発泡粒子間の熱融着が不充分となって、界面活性剤などを含む液体、油分又は黄色色素が発泡成形品の発泡粒子間に形成された微細な毛細管を通じて滲み出す虞れがあるので、分散液中のポリスチレン系樹脂種粒子100重量部に対して10〜30重量部に限定され、10〜20重量部が好ましい。
【0063】
又、重合開始剤の10時間半減期温度以上に分散液を加熱、昇温した後に分散液に添加する架橋性単量体の量は、少ないと、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表層における外側部の架橋比率が低下し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の耐油性が低下する一方、多いと、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表層における外側部の架橋比率が高くなり、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の外観性が低下し、或いは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られる発泡粒子間の熱融着が不充分となって、界面活性剤などを含む液体、油分又は黄色色素が発泡成形品の発泡粒子間に形成された微細な毛細管を通じて滲み出す虞れがあるので、分散液中のポリスチレン系樹脂種粒子100重量部に対して0.04〜0.1重量部に限定され、0.05〜0.08重量部が好ましい。
【0064】
なお、重合開始剤の10時間半減期温度以上に分散液を加熱、昇温した後に分散液に重合開始剤を添加してもよいが、必ずしも含有させておく必要はなく、分散液の昇温後に添加したスチレン系単量体及び架橋性単量体は、先立って分散液中に供給した重合開始剤によって重合される。
【0065】
そして、分散液中にスチレン系単量体及び架橋性単量体を添加する要領としては、分散液中にスチレン系単量体及び架橋性単量体を連続的に供給しても或いは断続的に供給してもよい。分散液中にスチレン系単量体及び架橋性単量体を供給するのに要する時間は、短いと、スチレン系単量体及び架橋性単量体がポリスチレン系樹脂種粒子に吸収されずに分散液中にて重合してしまい、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表層における外側部の架橋比率が低下して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の耐油性が低下する一方、長いと、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表層における外側部の厚みが厚くなり、その結果、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表層における外側部の架橋比率と内側部の架橋比率の比(外側部の架橋比率/内側部の架橋比率)が高くなり、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の熱融着性が低下して、界面活性剤などを含む液体、油分又は黄色色素が発泡成形品の発泡粒子間に形成された微細な毛細管を通じて滲み出す虞れがあるので、30〜200分に限定される。なお、分散液中にスチレン系単量体及び架橋性単量体を供給するのに要する時間とは、スチレン系単量体及び架橋性単量体の分散液中への添加要領にかかわらず、スチレン系単量体又は架橋性単量体の何れかを分散液中に最初に添加し始めてから、スチレン系単量体及び架橋性単量体の双方の添加が終了するまでの時間をいう。
【0066】
上述のように、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法では、ポリスチレン系樹脂種粒子を水性媒体中に分散させてなる分散液中に重合開始剤が実質的に分解しない所定温度範囲にて所定時間をかけて、スチレン系単量体及び架橋性単量体を添加し或いは添加した後に放置しており、ポリスチレン系樹脂種粒子中に、スチレン系単量体、架橋性単量体及び重合開始剤を吸収させてポリスチレン系樹脂種粒子の表面部において所望程度だけ拡散させている。
【0067】
しかる後、分散液を重合開始剤の10時間半減期温度以上に加熱し、重合開始剤を分解させてポリスチレン系樹脂種粒子に吸収させたスチレン系単量体及び架橋性単量体を重合させる一方、スチレン系単量体及び架橋性単量体を更に分散液に供給してポリスチレン系樹脂種粒子に吸収させ、ポリスチレン系樹脂種粒子の表面においてできるだけ拡散しないうちに重合させている。
【0068】
即ち、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法では、スチレン系単量体及び架橋性単量体をポリスチレン系樹脂種粒子の表面部内においてある程度拡散した状態で重合させて架橋比率の低い部分を形成している一方、分散液の温度を重合開始剤の10時間半減期温度以上に昇温後は、スチレン系単量体及び架橋性単量体をポリスチレン系樹脂種粒子内においてできるだけ拡散させないようにしてポリスチレン系樹脂種粒子の表面にて迅速に重合させて架橋比率の高い部分を形成させており、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、その表面層が架橋比率の低い内側部と、架橋比率の高い外側部とから構成されている。
【0069】
このようにして得られたポリスチレン系樹脂粒子中に易揮発性発泡剤を汎用の要領で含浸させて発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることができる。上記易揮発性発泡剤としては、特に限定されず、例えば、プロパン、ブタン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素;1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC−142b)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)などのフロン系発泡剤が挙げられ、脂肪族炭化水素が好ましい。なお、発泡剤は単独で使用されても併用されてもよい。更に、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、チオジプロピオン酸エステル、チオジブチル酸エステル、エチレンビスステアリン酸アミドなどの気泡調整剤、紫外線吸収剤、増量剤、着色剤などの汎用の添加剤が添加されていてもよい。
【0070】
ポリスチレン系樹脂粒子中に含浸させる易揮発性発泡剤の量としては、少ないと、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下することがある一方、多いと、ポリスチレン系樹脂粒子を構成しているポリスチレン系樹脂の可塑化が進み、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が却って低下することがあるので、ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して3〜10重量部が好ましい。
【0071】
又、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径は、得られる発泡成形品の用途によって調整されるが、発泡成形品が発泡成形容器であって厚みが薄い場合には、0.2〜1mmの範囲とし、好ましくは0.2〜0.8mm、更に好ましくは0.3〜0.7mmとするが、これに限定されるものではない。
【0072】
このようにして得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、予備発泡機で予備発泡されて予備発泡粒子とされ、得られた予備発泡粒子は発泡成形機の金型内に充填された上で加熱蒸気などの加熱媒体により加熱、発泡させられて発泡圧によって互いに熱融着一体化して所望形状を有する発泡成形品とされる。なお、予備発泡粒子の嵩密度は、0.010〜0.200g/cm3が好ましい。
【0073】
又、上記発泡成形品としては種々の形態のものが挙げられるが、コップ状、どんぶり状、トレー状、箱状などの発泡成形容器が本発明の作用、効果を効果的に奏する点で好ましく、この発泡成形容器内には、牛脂、大豆油、菜種油、しそ油、オリーブ油、ごま油、べに花油、コーン油などの植物油、ラード、即席麺、シチュー、マヨネーズ、ドレッシングソース、カレールー、バター、マーガリン、ホワイトソース、ヨーグルト類、アイスクリーム、ドーナツ、ハンバーガー、フライドチキンなどの油性食品や脂肪食品、界面活性剤を含む水溶液などを収納することができる。
【0074】
そして、上記発泡成形品は、上述のように、所定の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られたものであるので、発泡粒子同士がそれらの界面において強固に熱融着一体化していると共に、発泡粒子同士が熱融着している界面部分は架橋密度が高くて耐油性に優れている。
【0075】
従って、油分を含んだ食品やカレー粉などの色素を含むものを長期間に亘って発泡成形品内に収納し、或いは、界面活性剤を含む液体などを発泡成形品内に収納した場合にあっても、発泡粒子同士の熱融着界面が油分、色素或いは界面活性剤などによっておかされるようなことはなく、よって、発泡粒子同士の熱融着界面を通じて界面活性剤を含んだ液体、油分や色素などが発泡成形品の外面に滲み出るといった問題を解決することができる。
【0076】
更に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は優れた発泡性を有していることから、この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られた発泡成形品は、これを構成している発泡粒子は充分に発泡しており、互いに隣接する発泡粒子間に殆ど溝部が形成されておらず、よって、発泡成形品は、優れた外観及び印刷特性を有している。
【発明の効果】
【0077】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、上述の如く、その表面に表層を有し、この表層には架橋構造が付与され、そして、表層の厚み及び架橋比率、並びに、表層における外側部の架橋比率と内側部の架橋比率の比が所定範囲内に調整されており、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られた発泡成形品は、これを構成している発泡粒子がその表面に架橋構造を有する表層を有し、この表層同士が強固に熱融着一体化している。
【0078】
従って、発泡成形品の発泡粒子同士の熱融着界面は、架橋構造を有し耐油性に優れた表層から形成されており、発泡粒子同士の熱融着界面を通じて界面活性剤を含んだ液体、油分や色素などが発泡成形品の外面に滲み出るといった事態を防止することができる。
【0079】
そして、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、その表層をその外側部と内側部とにおいて架橋比率を異ならしめ、外側部の架橋比率を内側部の架橋比率よりも所定範囲内において高くなるように調整している。
【0080】
即ち、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、その表層の外側部の架橋比率を高めることによって、発泡させて得られる発泡粒子同士の熱融着界面における耐油性の向上を図っていると共に、発泡時の発泡ガスの放散を防止して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性を向上させていると同時に、表層の内側部の架橋比率を外側部の架橋比率よりも所定範囲内において低くして表層全体の耐油性の低下、及び、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性の低下を防止しており、よって、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて製造された発泡成形品を構成している発泡粒子は、互いの熱融着界面において強固に熱融着一体化していると共に発泡粒子同士の熱融着界面は優れた耐油性を備えている。
【0081】
そして、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法では、分散液中のポリスチレン系樹脂種粒子に、スチレン系単量体、架橋性単量体及び重合開始剤をこの重合開始剤が実質的に分解しない温度にて吸収させてポリスチレン系樹脂種粒子の表面部に拡散させた後に上記重合開始剤の分解温度以上として重合していると共に、この重合開始剤の分解温度以上にて、ポリスチレン系樹脂種粒子に、新たにスチレン系単量体及び架橋性単量体を吸収させてポリスチレン系樹脂種粒子の表面において迅速に重合させている。
【0082】
従って、得られるポリスチレン系樹脂粒子の表面には、ポリスチレン系樹脂種粒子の表面部にて広く拡散させたスチレン系単量体及び架橋性単量体を重合させてなる架橋比率の低い内側部と、ポリスチレン系樹脂種粒子の表面にて、できるだけ拡散させないようにされたスチレン系単量体及び架橋性単量体を重合させてなる架橋比率の高い外側部とからなる表層が形成されており、このポリスチレン系樹脂粒子に易揮発性発泡剤を含浸させることによって上述の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
(実施例1)
攪拌装置を備えたステンレス製の12リットルのオートクレーブ内に、イオン交換水4000g、重量平均分子量が28万のポリスチレンからなり且つ平均粒径が0.3〜0.5mmであるポリスチレン種粒子3200g、ピロリン酸マグネシウム40g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2gを供給して攪拌し、分散液を作製した。
【0084】
一方、架橋性単量体としてジビニルベンゼン2gと、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(10時間半減期温度:74℃)4.0g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート(10時間半減期温度:104℃)2.0gと、ドテシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1gとをスチレン単量体400gに溶解させて第一単量体溶液を作製した。
【0085】
又、架橋性単量体としてジビニルベンゼン2gをスチレン単量体400gに溶解させて攪拌して乳濁させて第二単量体溶液を作成した。
【0086】
次に、上記分散液を65℃に加熱、保持した上で、この分散液中に上記第一単量体溶液を10分かけて連続的に供給した後、分散液を65℃に30分間に亘って保持し、ポリスチレン種粒子中にジビニルベンゼン、スチレン単量体、ベンゾイルパーオキサイド及びt−ブチルパーオキシベンゾエートを吸収させてポリスチレン種粒子の表面部において拡散させた。
【0087】
しかる後、上記分散液を83℃に加熱、昇温した上で、この分散液中に第二単量体溶液を60分かけて連続的に添加した後、分散液を60分間に亘って83℃に保持した。次に、上記分散液を125℃まで昇温して125℃にて120分間に亘って保持して重合を完了した後、上記分散液を60℃に冷却、保持してポリスチレン粒子を得た。なお、分散液中に添加したスチレン単量体及びジビニルベンゼンは全てポリスチレン種粒子に吸収されて重合されていた。
【0088】
続いて、上記分散液の入っているオートクレーブ内にノルマルペンタン220g及びイソペンタン60gを圧入した後、オートクレーブ内を30分かけて115℃まで昇温し115℃にて120分間に亘って保持してポリスチレン粒子中にノルマルペンタン及びイソペンタンを含浸させた。次に、オートクレーブ内を30℃に冷却して水を分離除去した上で乾燥させて発泡性ポリスチレン粒子を得た。
【0089】
そして、得られた発泡性ポリスチレン粒子2000g及び表面処理剤としてステアリン酸亜鉛(粉砕品、平均最大長:20μm)10gをスーパーミキサーに供給して2分間に亘って攪拌した。次に、スーパーミキサー内にポリエチレングリコール(重量平均分子量:300)2.0gを供給して5分間に亘って攪拌して、発泡性ポリスチレン粒子の表面にステアリン酸亜鉛及びポリエチレングリコールを均一に付着させた。
【0090】
しかる後、上記発泡性ポリスチレン粒子を予備発泡機に供給して水蒸気を用いて嵩密度0.1g/cm3に予備発泡させて予備発泡粒子を得た。この予備発泡粒子を常温にて1日放置して乾燥させた。
【0091】
次に、上記予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に供給、充填し、予備発泡粒子を0.2MPaの水蒸気を用いて7秒間に亘って加熱、発泡させて、内容積量が450cm3で且つ肉厚が2mmのカップ状の発泡成形容器を得た。なお、カップ状の発泡成形容器は、平面円形状の底面部の外周縁から一定高さの周壁部を上方における斜め外方に向かって突設してなるものであった。
【0092】
次に、得られたカップ状の発泡成形容器の外周面に、印刷機(湖北精工社製 商品名「CUP PRINTER KH-6100」)によってインキ(東洋インキ製造社 商品名「FLASH DRY FDC メジウム」)を用いて被覆印刷した後、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製 商品名「アイ紫外硬化用電源装置」)を用いて、カップ状の発泡成形容器の外周面に紫外線を照射、乾燥させてインキを硬化させて塗布膜を形成した。
【0093】
(実施例2)
分散液中に第一単量体溶液を供給した後に65℃にて30分間に亘って放置する代わりに90分間に亘って放置したこと以外は実施例1と同様にしてカップ状の発泡成形容器を得た。なお、分散液中に添加したスチレン単量体及びジビニルベンゼンは全てポリスチレン種粒子に吸収されて重合されていた。
【0094】
(実施例3)
第一単量体溶液として、架橋性単量体としてジビニルベンゼン3.2gと、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(10時間半減期温度:74℃)8.0g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート(10時間半減期温度:104℃)4.0gと、ドテシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2gとをスチレン単量体800gに溶解させたものを用いたこと、第二単量体溶液として、架橋性単量体としてジビニルベンゼン3.2gをスチレン単量体800gに溶解させて攪拌して乳濁させたものを用い、この第二単量体溶液を分散液中に60分の代わりに180分かけて連続的に供給したこと以外は、実施例1と同様にしてカップ状の発泡成形容器を得た。なお、分散液中に添加したスチレン単量体及びジビニルベンゼンは全てポリスチレン種粒子に吸収されて重合されていた。
【0095】
(実施例4)
分散液を65℃の代わりに69℃に加熱、保持した上で第一単量体溶液を供給し、第一単量体溶液の供給後に分散液を65℃の代わりに69℃に30分間に亘って保持したこと、分散液を83℃の代わりに90℃に加熱、昇温した後に第二単量体溶液を分散液中に60分間かけて連続的に供給したこと以外は実施例1と同様にして実施例1と同様にしてカップ状の発泡成形容器を得た。なお、分散液中に添加したスチレン単量体及びジビニルベンゼンは全てポリスチレン種粒子に吸収されて重合されていた。
【0096】
(実施例5)
第二単量体溶液を分散液中に60分の代わりに30分かけて連続的に供給したこと以外は、実施例1と同様にしてカップ状の発泡成形容器を得た。なお、分散液中に添加したスチレン単量体及びジビニルベンゼンは全てポリスチレン種粒子に吸収されて重合されていた。
【0097】
(実施例6)
分散液を83℃の代わりに75℃に加熱、昇温した上で、この分散液中に第二単量体溶液を60分かけて連続的に添加した後、分散液を83℃の代わりに75℃に60分間に亘って保持したこと以外は、実施例1と同様にしてカップ状の発泡成形容器を得た。なお、分散液中に添加したスチレン単量体及びジビニルベンゼンは全てポリスチレン種粒子に吸収されて重合されていた。
【0098】
(比較例1)
第一単量体溶液として、架橋性単量体としてジビニルベンゼン0.8gと、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(10時間半減期温度:74℃)2.0g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート(10時間半減期温度:104℃)1.0gと、ドテシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5gとをスチレン単量体200gに溶解させたものを用い、第二単量体溶液として、架橋性単量体としてジビニルベンゼン0.8gをスチレン単量体200gに溶解させて攪拌して乳濁させたものを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてカップ状の発泡成形容器を得た。なお、分散液中に添加したスチレン単量体及びジビニルベンゼンは全てポリスチレン種粒子に吸収されて重合されていた。
【0099】
(比較例2)
第一単量体溶液として、架橋性単量体としてジビニルベンゼン4gと、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(10時間半減期温度:74℃)10.0g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート(10時間半減期温度:104℃)5.0gと、ドテシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5gとをスチレン単量体1000gに溶解させたものを用いたこと、架橋性単量体としてジビニルベンゼン4gをスチレン単量体1000gに溶解させて攪拌して乳濁させたものを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてカップ状の発泡成形容器を得た。なお、分散液中に添加したスチレン単量体及びジビニルベンゼンは全てポリスチレン種粒子に吸収されて重合されていた。
【0100】
(比較例3)
分散液を65℃の代わりに75℃に加熱、保持した上で、この分散液中に上記第一単量体溶液を10分かけて連続的に供給した後、分散液を65℃の代わりに75℃に30分間に亘って保持したこと以外は、実施例1と同様にしてカップ状の発泡成形容器を得た。なお、分散液中に添加したスチレン単量体及びジビニルベンゼンは全てポリスチレン種粒子に吸収されて重合されていた。
【0101】
(比較例4)
分散液を65℃の代わりに45℃に加熱、保持した上で、この分散液中に上記第一単量体溶液を10分かけて連続的に供給した後、分散液を65℃の代わりに45℃に30分間に亘って保持したこと以外は、実施例1と同様にしてカップ状の発泡成形容器を得た。なお、分散液中に添加したスチレン単量体及びジビニルベンゼンは全てポリスチレン種粒子に吸収されて重合されていた。
【0102】
(比較例5)
分散液を65℃に加熱、保持した上で、この分散液中に上記第一単量体溶液を10分かけて連続的に供給した後、分散液を65℃に30分の代わりに12分間に亘って保持したこと以外は、実施例1と同様にしてカップ状の発泡成形容器を得た。なお、分散液中に添加したスチレン単量体及びジビニルベンゼンは全てポリスチレン種粒子に吸収されて重合されていた。
【0103】
(比較例6)
第一単量体溶液中のジビニルベンゼンを2gの代わりに0.5gとし、第二単量体溶液中のジビニルベンゼンを2gの代わりに0.5gとしたこと以外は、実施例1と同様にしてカップ状の発泡成形容器を得た。なお、分散液中に添加したスチレン単量体及びジビニルベンゼンは全てポリスチレン種粒子に吸収されて重合されていた。
【0104】
(比較例7)
第一単量体溶液中のジビニルベンゼンを2gの代わりに4gとし、第二単量体溶液中のジビニルベンゼンを2gの代わりに4gとしたこと以外は、実施例1と同様にしてカップ状の発泡成形容器を得た。なお、分散液中に添加したスチレン単量体及びジビニルベンゼンは全てポリスチレン種粒子に吸収されて重合されていた。
【0105】
(比較例8)
分散液を65℃の代わりに85℃に加熱、保持した上で、この分散液中に上記第一単量体溶液を10分かけて連続的に供給した後、分散液を65℃の代わりに85℃に36分間に亘って保持し、ポリスチレン種粒子中にジビニルベンゼン及びスチレン単量体を吸収させてポリスチレン種粒子の表面部において拡散させたこと、分散液を83℃の代わりに85℃に加熱、昇温した上で、この分散液中に第二単量体溶液を60分の代わりに78分かけて連続的に添加した後、分散液を60分間に亘って83℃の代わりに85℃に保持したこと以外は、実施例1と同様にしてカップ状の発泡成形容器を得た。なお、分散液中に添加したスチレン単量体及びジビニルベンゼンは全てポリスチレン種粒子に吸収されて重合されていた。
【0106】
(比較例9)
分散液を65℃に加熱、保持した上で、この分散液中に上記第一単量体溶液を10分かけて連続的に供給した後、分散液を65℃に30分の代わりに180分間に亘って保持したこと以外は、実施例1と同様にしてカップ状の発泡成形容器を得た。なお、分散液中に添加したスチレン単量体及びジビニルベンゼンは全てポリスチレン種粒子に吸収されて重合されていた。
【0107】
得られた発泡性ポリスチレン粒子における表層の厚み、表層の架橋比率、及び、表層における外側部の架橋比率と内側部の架橋比率の比(外側部の架橋比率/内側部の架橋比率)を上述の要領で、並びに、得られたカップ状の発泡成形容器の油分滲出性及び外観性を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0108】
(油分滲出性)
得られたカップ状の発泡成形容器内に、即席麺に用いられている、カレー粉を含む調味料及びかやくを満杯になるまで供給した上で、発泡成形容器を延伸ポリプロピレンフィルムで全面的に被覆した。次に、上記発泡成形容器を60℃に保持されたオーブンに入れて、発泡成形容器外面にカレー油脂分が滲み出した時間を測定し、下記基準で評価した。
○・・・72時間経過後、カレー油脂分の滲み出しはなかった。
×・・・72時間経過未満でカレー油脂分の滲み出しがあった。
【0109】
(外観性)
カップ状の発泡成形容器のインキ塗布されている部位4cmを任意選択し、色飛びが認められる個数を目視にて観察し、下記基準にて評価した。
○・・・色飛びが殆どなく、1cm2当り0.5個以下である。
△・・・色飛び少しあり、1cm2当り0.5個を超え且つ2個以下である。
×・・・色飛びの多く、1cm2当り2個を超える。
【0110】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに飽和膨潤させる要領を示した説明図である。
【図2】発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに飽和膨潤させた状態を示した顕微鏡写真である。
【図3】発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに飽和膨潤させた状態にて四酸化ルテニウムによって染色した状態を示した顕微鏡写真である。
【図4】発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに飽和膨潤させた状態における表層の架橋比率を算出する要領を示した顕微鏡写真である。
【図5】発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに飽和膨潤させた状態における表層の外側部の架橋比率と内側部の架橋比率との比を算出する要領を示した顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0112】
1 発泡性ポリスチレン系樹脂粒子
2 膨潤樹脂粒子
3 ポリメタクリル酸メチル
4 切断面
5 表層
6 膨潤樹脂粒子外部のポリメタクリル酸メチル相
7 膨潤樹脂粒子内部のポリメタクリル酸メチル相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性単量体を含むスチレン系単量体を重合させて形成された表層を有するポリスチレン系樹脂粒子に易揮発性発泡剤を含浸させてなる発泡成形用の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに飽和膨潤させた状態において、上記表層の厚みが15〜35μmであると共に上記表層の架橋比率が40〜70%であり、上記表層における外側部の架橋比率と内側部の架橋比率の比(外側部の架橋比率/内側部の架橋比率)が1.1〜1.5であることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
ポリスチレン系樹脂種粒子100重量部を水性媒体中に分散させてなる分散液に、スチレン系単量体10〜30重量部、架橋性単量体0.04〜0.1重量部及び重合開始剤を、上記重合開始剤の10時間半減期温度よりも20℃低い温度以上で且つ上記重合開始剤の10時間半減期温度よりも5℃低い温度以下の温度に上記分散液を保持した上で添加して上記ポリスチレン系樹脂種粒子中に吸収させ、上記スチレン系単量体を上記分散液に供給を開始してから30〜120分経過した後に上記分散液を上記重合開始剤の10時間半減期温度以上に昇温した上で、上記分散液中にスチレン系単量体10〜30重量部及び架橋性単量体0.04〜0.1重量部を30〜200分かけて供給して上記ポリスチレン系樹脂種粒子に吸収させながら、ポリスチレン系樹脂種粒子中に吸収させた上記スチレン系単量体及び上記架橋性単量体を重合させて、上記架橋性単量体を含む上記スチレン系単量体を重合させてなる表層を有するポリスチレン系樹脂粒子を製造し、このポリスチレン系樹脂粒子中に易揮発性発泡剤を含浸させることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて得られた予備発泡粒子を金型内に充填して発泡成形してなることを特徴とする発泡成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−184559(P2008−184559A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20079(P2007−20079)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】