説明

発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及びポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法

【課題】 本発明は、低圧成形条件又は高圧成形条件の何れの成形条件下にあっても機械的強度及び外観性に優れたポリスチレン系樹脂発泡成形体を時間短縮して得ることができる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供する。
【解決手段】 本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、物理型発泡剤1.7〜5.0重量%及び発泡助剤0.5〜2.0重量%を含有し且つポリスチレン系樹脂からなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、上記ポリスチレン系樹脂は、Z平均分子量Mzが100万〜150万で且つZ平均分子量Mzと重量平均分子量Mwとの比(Mz/Mw)が2.5〜3.5であると共に、温度200℃、荷重49N条件下でのメルトフローレイト測定時における樹脂ストランドの外径Aとオリフィスの内径Bとの膨張割合SR(A/B)が1.5〜3.0であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品容器、梱包材、緩衝材などに好適なポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及びこれを用いたポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からポリスチレン系樹脂発泡成形体は、易揮発性有機化合物などの物理型発泡剤を含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を水蒸気などの加熱媒体によって加熱してポリスチレン系樹脂予備発泡粒子とし、このポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を金型内に充填した上で、金型内に水蒸気などの加熱媒体を圧入してポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を加熱、発泡させてポリスチレン系樹脂予備発泡粒子間の隙間を埋めながら発泡圧によって互いに融着一体化させた後、得られたポリスチレン系樹脂発泡成形体を金型内にて冷却する冷却工程を経て製造されている。
【0003】
そして、上記ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造工程において最も時間を要する工程が冷却工程であって、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造時間の短縮には上記冷却工程の短縮が最も効果的である。
【0004】
そこで、上記ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造工程における冷却工程を短縮することを目的として、特許文献1には、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面に脂肪酸トリグリセライドを被覆する方法が記載され、特許文献2には、融点が40℃〜70℃のパラフィンワックスのエマルジョンと発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とを攪拌、混合して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面にパラフィンワックスを被覆する方法が記載され、特許文献3には、物理型発泡剤の含有量を少なくしたポリスチレン系樹脂発泡粒子が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1、2のように、脂肪酸トリグリセライドやパラフィンワックスで発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を被覆すると、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面がおかされて物理型発泡剤の逸散量が多くなり、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子同士の融着一体化が不十分となって、得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体の機械的強度や外観が低下するといった問題があり、又、特許文献3では、発泡性が低いために発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を目標の発泡倍率まで発泡するためには2回以上の予備発泡工程が必要であって製造効率が低いといった問題点があった。
【0006】
更に、特許文献4には、成形サイクルの短縮を図るために、Z平均分子量Mz、Z平均分子量Mzと重量平均分子量Mwとの比(Mz/Mw)及び所定条件下における樹脂ストランドの外径Aとオリフィスの内径Bとの膨張割合SR(A/B)を特定したスチレン系樹脂からなる発泡性スチレン系樹脂粒子が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記発泡性スチレン系樹脂粒子では、金型内に圧入する加熱媒体の圧力を高くする必要があり、加熱媒体の圧力が0.03MPa以上で且つ0.06MPa未満の低圧成形条件下では、発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡が不充分となって、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子間の熱融着やポリスチレン系樹脂発泡成形体の厚みが不充分となり、或いは、金型のキャビティ形状に沿ったポリスチレン系樹脂発泡成形体を精度良く得ることができないといった課題が残されていた。
【0008】
【特許文献1】特公昭54−19022号公報
【特許文献2】特開昭60−195135号公報
【特許文献3】特開平6−25456号公報
【特許文献4】特開2004−131722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、加熱媒体の圧力が0.03MPa以上で且つ0.06MPa未満の低圧成形条件、又は、加熱媒体の圧力が0.06MPa以上で且つ0.12MPa未満の高圧成形条件の何れの成形条件下にあっても汎用の発泡成形機を用いて機械的強度及び外観性に優れたポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができると共に、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間を短縮して生産効率を向上させることができる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及びこの発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いたポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、物理型発泡剤1.7〜5.0重量%及び発泡助剤0.5〜2.0重量%を含有し且つポリスチレン系樹脂からなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、上記ポリスチレン系樹脂は、Z平均分子量Mzが100万〜150万で且つZ平均分子量Mzと重量平均分子量Mwとの比(Mz/Mw)が2.5〜3.5であると共に、温度200℃、荷重49N条件下でのメルトフローレイト測定時における樹脂ストランドの外径Aとオリフィスの内径Bとの膨張割合SR(A/B)が1.5〜3.0であることを特徴とする。
【0011】
上記ポリスチレン系樹脂は、Z平均分子量Mzと重量平均分子量Mwとの比(Mz/Mw)、Z平均分子量Mz及び膨張割合SR(A/B)が上記範囲内にあれば、特に限定されないが、スチレン系単量体と多官能性単量体と連鎖移動剤との共重合体を含有していることが好ましい。
【0012】
上記スチレン系単量体としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0013】
そして、上記多官能性単量体としては、スチレン系単量体及び連鎖移動剤と共重合できれば、特に限定されず、例えば、o−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼンなどのジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、下記式1で示したポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、nが4〜16のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、ジビニルベンゼンが特に好ましい。なお、多官能性単量体は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0014】
【化1】

【0015】
又、上記連鎖移動剤としては、例えば、メチルメルカプタン、ブチルメルカプタンなどの脂肪族系メルカプタン類、トリニトロベンゼンなどのニトロ化合物、四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化炭素、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられ、α−メチルスチレンダイマーが好ましい。なお、連鎖移動剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0016】
更に、上記共重合体には、多官能性単量体及び連鎖移動剤以外に共重合成分を含有していてもよく、このような共重合成分としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルアクリレート、メチルメタクリレートなどが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0017】
そして、スチレン系単量体と多官能性単量体と連鎖移動剤との共重合体中における多官能性単量体の含有量は、少ないと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体に収縮が生じ易くなり外観性が低下することがある一方、多くても、ゲルが発生し易くなって発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、低密度のポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができないことがあるので、スチレン系単量体100モルに対して0.012〜0.028モルが好ましく、0.014〜0.025モルがより好ましい。なお、多官能性単量体成分は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中に均一に存在している必要はなく不均一に存在していてもよい。
【0018】
又、スチレン系単量体と多官能性単量体と連鎖移動剤との共重合体中における連鎖移動剤の含有量は、少ないと、ゲルが発生し易くなって発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、低密度のポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができないことがある一方、多いと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の耐熱性が低下し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体の外観性が低下することがあるので、スチレン系単量体100モルに対して0.00015〜0.00030モルが好ましく、0.00018〜0.00028モルがより好ましい。なお、連鎖移動剤成分は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中に均一に存在している必要はなく不均一に存在していてもよい。
【0019】
更に、ポリスチレン系樹脂中におけるスチレン系単量体と多官能性単量体と連鎖移動剤との共重合体の含有量は、少ないと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体に収縮が生じ易くなり外観性が低下することがあるので、30〜100重量%が好ましく、50〜85重量%がより好ましい。
【0020】
又、ポリスチレン系樹脂中における、スチレン系単量体と多官能性単量体と連鎖移動剤との共重合体以外の重合体としては、上記スチレン系単量体の重合体、上記スチレン系単量体同士の共重合体が好ましく、上記スチレン系単量体の重合体がより好ましい。
【0021】
そして、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwは、小さいと、加熱媒体の圧力が0.03MPa以上で且つ0.06MPa未満の低圧成形条件下では、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体の機械的強度が低下することがある一方、大きいと、加熱媒体の圧力が0.03MPa以上で且つ0.06MPa未満の低圧成形条件下では、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、低密度のポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができないことがあるので、30万〜60万が好ましく、33万〜50万がより好ましい。
【0022】
又、ポリスチレン系樹脂のメルトフローレイトは、小さいと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、低密度のポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができないことがある一方、大きいと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の耐熱性が低下して、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体に収縮が生じ易く外観性が低下することがあるので、1〜10g/10分が好ましい。なお、ポリスチレン系樹脂のメルトフローレイトは、JIS K7210に準拠して測定されたものをいう。
【0023】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子では、ポリスチレン系樹脂として、好ましくは、スチレン系単量体と多官能性単量体と連鎖移動剤との共重合体を含有するものを用い、より好ましくは、スチレン系単量体と多官能性単量体と連鎖移動剤との共重合体であってスチレン系単量体100モルに対して多官能性単量体の含有量が0.012〜0.028モルで且つ連鎖移動剤の含有量が0.00015〜0.00030モルであるものを含有してなるものを用いることによって、ポリスチレン系樹脂に分岐構造を付与しており、よって、ポリスチレン系樹脂は、後述するように、Z平均分子量Mzが100万〜150万であるにもかかわらず、溶融時において優れた流動性を発揮し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に優れた発泡成形性を付与することができる。
【0024】
そして、上記ポリスチレン系樹脂のZ平均分子量Mzは、小さいと、加熱媒体の圧力が0.03MPa以上で且つ0.06MPa未満の低圧成形条件下では、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体の機械的強度が低下する一方、大きいと、加熱媒体の圧力が0.03MPa以上で且つ0.06MPa未満の低圧成形条件下では、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、低密度のポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができないので、100万〜150万に限定される。
【0025】
更に、上記ポリスチレン系樹脂におけるZ平均分子量Mzと重量平均分子量Mwとの比(Mz/Mw)は、小さいと、加熱媒体の圧力が0.03MPa以上で且つ0.06MPa未満の低圧成形条件下では、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡成形性が低下して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体の外観性が低下する一方、大きいと、加熱媒体の圧力が0.03MPa以上で且つ0.06MPa未満の低圧成形条件下では、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなって製造効率が低下するので、2.5〜3.5に限定される。
【0026】
なお、本発明においては、以下のGPC法によってZ平均分子量Mzと重量平均分子量Mwを測定した。
測定装置:Waters HPLC(Detector484 、東ソーPump DP-8020、検出器UV-
8020)
カラム:Shodex社製 GPC K-806L 2本
測定条件:カラム温度(40℃)、移動相(クロロホルム)
移動相流量(1.2ミリリットル/min)、注入・ポンプ温度(室温)
測定時間(25分)、検出(UV254nm)、注入量:50マイクロリット

検量線用標準ポリスチレン:昭和電工社製 商品名「Shodex」
分子量:1,030,000
東ソー社製
分子量:5,480,000 、3,840,000 、355,000 、102,000
379,000 、9,100 、2,630 、495
測定方法:試料約10mgをクロロホルム4ミリリットルで溶解し、非水系45μmク
ロマトディスクで濾過してから測定する。
【0027】
ここで、上記GPC法によって測定される重量平均分子量Mw及びZ平均分子量Mzは、Miなる分子量をもつ高分子がNi個存在する場合、下記の通り定義される。
【0028】
重量平均分子量Mwは、下記式によって定義され、測定される物性値が高分子の重量に直接関係する時に求められる平均分子量であって、分子量の2乗平均であり、数平均分子量Mnより高重合度分子に依存する。
【0029】
【数1】

【0030】
Z平均分子量Mzは、下記式によって定義され、最も高次の平均分子量で分子量の3乗平均である。重量平均分子量Mwよりも更に高重合度分子に依存する。
【0031】
【数2】

【0032】
そして、上記ポリスチレン系樹脂のZ平均分子量Mz及び重量平均分子量Mwの調整方法としては、ポリスチレン系樹脂の重合時に連鎖移動剤を添加してポリスチレン系樹脂の重合を調整する方法が挙げられる。
【0033】
又、上記ポリスチレン系樹脂における温度200℃、荷重49N条件下でのメルトフローレイト測定時における樹脂ストランドの外径Aとオリフィスの内径Bとの膨張割合SR(A/B)は、小さいと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体に収縮が生じて外観性が低下する一方、大きいと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下して低密度のポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができないので、1.5〜3.0に限定され、1.6〜2.8が好ましい。
【0034】
ここで、上記ポリスチレン系樹脂の膨張割合SR(A/B)は下記の要領で測定されたものをいう。即ち、ポリスチレン系樹脂粒子1〜3gを予め200℃に加熱した上でメルトフローレイト測定器内に供給して3分間放置した後、ポリスチレン系樹脂に49Nの荷重を加えて内径B(mm)のオリフィスからポリスチレン系樹脂を押出す。そして、最初に押出されたポリスチレン系樹脂ストランドの先端から押出方向とは逆方向に5mmだけ存した部分における任意五箇所の外径を測定し、それら外径の平均値をポリスチレン系樹脂の外径A(mm)として下記式によりポリスチレン系樹脂の膨張割合SR(A/B)を算出する。
ポリスチレン系樹脂の膨張割合SR=A/B
【0035】
なお、上記ポリスチレン系樹脂の膨張割合SR(A/B)は、東洋精機製作所から商品名「メルトインデクサー」で市販されているメルトフローレイト測定器を用いて測定することができる。
【0036】
又、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中に含有されている物理型発泡剤は、従来からポリスチレン系樹脂の発泡に用いられているものであれば、特に限定されず、例えばイソブタン、n−ブタン、イソペンタン、ネオペンタンなどの炭素数が5以下の脂肪族炭化水素が挙げられ、ブタン系発泡剤が好ましく、n−ブタンがより好ましい。なお、物理型発泡剤とは、加圧下においてポリスチレン系樹脂中に混合し、圧力の解除に伴って体積を膨張させてポリスチレン系樹脂を発泡させるものをいう。
【0037】
更に、上記物理型発泡剤の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中における含有量は、少ないと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子から低密度のポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができないと共に成形時の二次発泡力を高める効果が得られないためにポリスチレン系樹脂発泡成形体の外観性が低下する一方、多いと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いたポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなって生産性が低下するので、1.7〜5.0重量%に限定され、1.9〜4.0重量%が好ましい。
【0038】
なお、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中における物理型発泡剤の含有量は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を150℃の熱分解炉に入れ、この熱分解炉で発生した炭化水素量をクロマトグラフにて測定することができる。
【0039】
又、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には発泡助剤も含有されているが、このような発泡助剤としては、従来から発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、スチレン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの芳香族有機化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの環式脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの一気圧下における沸点が200℃以下の溶剤が挙げられる。
【0040】
そして、上記発泡助剤の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中における含有量は、少ないと、ポリスチレン系樹脂の可塑化効果が発現しない一方、多いと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体に収縮や溶けが発生して外観性が低下し或いは発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いたポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなるので、0.5〜2.0重量%に限定され、0.6〜1.5重量%が好ましい。
【0041】
なお、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中における発泡助剤の含有量は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をジメチルホルムアミドに溶解させると共に内部標準液としてシクロペンタノールを加えてガスクロマトグラフにて測定することができる。
【0042】
更に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、加熱発泡時に用いられる水蒸気などの加熱媒体の圧力が低くても良好な発泡成形性を維持させるために、一気圧下における沸点が200℃を超える可塑剤、例えば、フタル酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、グリセリンジアセトモノステアレートなどのグリセリン脂肪酸エステル、ジイソブチルアジペートなどのアジピン酸エステル、ヤシ油などの可塑剤が2.0重量%未満含有されていてもよい。
【0043】
なお、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、物性を損なわない範囲内において、結合防止剤、気泡調整剤、架橋剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、着色剤などの添加剤を添加してもよく、又、ジンクステアレートなどの粉末状金属石鹸類を上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面に塗布しておけば、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の予備発泡工程においてポリスチレン系樹脂予備発泡粒子同士の結合を減少させることができて好ましい。
【0044】
次に、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法について説明する。この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、例えば、スチレン系単量体と、必要に応じて添加される多官能性単量体、連鎖移動剤、スチレン系単量体と共重合可能な他の単量体(以下、これら単量体を総称して「原料単量体」という)との共重合中或いは共重合後に、得られたポリスチレン系樹脂粒子中に物理型発泡剤及び発泡助剤を含浸させることによって製造することができる。
【0045】
上記ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法としては、従来から汎用の重合方法が用いられ、例えば、1)原料単量体を水中に懸濁させ重合開始剤の存在下で重合させる懸濁重合方法、2)水性媒体中に種粒子として微細なポリスチレン系樹脂粒子を分散させた上でこの水性媒体中に原料単量体を連続的又は断続的に供給して重合開始剤の存在下で懸濁重合するシード重合方法、3)上記重合方法1)2)で得られたポリスチレン系樹脂を押出機にて所望の粒度に調整する方法、4)上記3)で得られたポリスチレン系樹脂粒子を種粒子として上記2)のシード重合を行う方法などが挙げられ、懸濁重合方法及びシード重合方法が好ましい。
【0046】
そして、上記シード重合方法を用いる場合における種粒子の使用量は、少ないと、原料単量体の重合を適正範囲に制御することができずに、ポリスチレン系樹脂が高分子量化し或いは微粉末状のポリスチレン系樹脂が多量に発生してしまってポリスチレン系樹脂粒子の製造効率が低下することがある一方、多いと、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡成形性が低下することがあるので、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中、10〜70重量%が好ましく、15〜50重量%がより好ましい。
【0047】
又、上記重合開始剤としては、従来からスチレン系単量体の重合に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ−3、3、5−トリメチルヘキサノエート、ジーt−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレートなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられ、得られるポリスチレン系樹脂のZ平均分子量Mzや重量平均分子量Mwを調整して残存単量体を低減させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が80〜120℃にある異なった二種以上の重合開始剤を併用することが好ましい。なお、上記重合開始剤は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0048】
又、得られるポリスチレン系樹脂のZ平均分子量Mz及び重量平均分子量Mwを調整するために連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量としては、少ないと、ポリスチレン系樹脂のゲル化及び高分子量成分が多くなることがある一方、多いと、ポリスチレン系樹脂の分子量が極端に低下することがあるので、スチレン系単量体と多官能性単量体と連鎖移動剤との共重合体中における連鎖移動剤の含有量がスチレン系単量体100モルに対して0.00015〜0.00030モルとなるように調整することが好ましい。
【0049】
更に、上記シード重合において、スチレン系単量体の小滴及び種粒子を水性媒体中に分散させる為に用いられる懸濁安定剤としては、従来からスチレン系単量体の懸濁重合に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウムなどの難溶性無機化合物などが挙げられる。
【0050】
そして、上記懸濁安定剤として難溶性無機化合物を用いる場合には、アニオン界面活性剤を併用するのが好ましく、このようなアニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸またはその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩などのカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルフォン酸塩などのスルフォン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩などの硫酸エステル塩;アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩などのリン酸エステル塩などが挙げられる。
【0051】
上記ポリスチレン系樹脂粒子は球状であるのが好ましく、ポリスチレン系樹脂粒子の粒径は、金型内への充填性などを考慮すると、0.3〜2.0mmが好ましく、0.3〜1.4mmがより好ましい。
【0052】
そして、上記の如くして得られたポリスチレン系樹脂粒子への物理型発泡剤及び発泡助剤の含浸方法は、従来から汎用の方法が用いられ、例えば、ポリスチレン系樹脂粒子に物理型発泡剤及び発泡助剤を高圧下にて含浸させる方法、ポリスチレン系樹脂粒子を押出機にて造粒する場合には押出機内に物理型発泡剤及び発泡助剤を供給する方法が挙げられる。
【0053】
なお、上記ポリスチレン系樹脂粒子に物理型発泡剤及び発泡助剤を含浸させる際の温度は、低いと、ポリスチレン系樹脂粒子に物理型発泡剤及び発泡助剤を含浸させるのに要する時間が長くなって生産効率が低下することがある一方、高いと、ポリスチレン系樹脂粒子同士が融着して結合粒が発生することがあるので、60〜120℃が好ましく、70〜100℃がより好ましい。
【0054】
そして、上記の如くして得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、公知の予備発泡装置を用いて所望の嵩密度、好ましくは嵩密度0.01〜0.025g/cm3 に予備発泡させてポリスチレン系樹脂予備発泡粒子とされた後、このポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を金型のキャビティ内に充填した上で加熱、発泡させ、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子同士を発泡圧により隙間なく融着一体化させた後に、金型のキャビティ内で所定時間だけ冷却させる(冷却工程)ことによってポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0055】
ここで、上記ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子の嵩密度は、小さいと、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を二次発泡させて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体に収縮が起こり易く外観性が低下したり或いは満足のいく機械的強度が得られないことがある一方、大きいと、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなって製造効率が低下することがあるので、0.01〜0.025g/cm3 が好ましい。
【発明の効果】
【0056】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、少ない発泡剤で、加熱媒体の圧力が0.03MPa以上で且つ0.06MPa未満の低圧成形条件下、又は、加熱媒体の圧力が0.06MPa以上で且つ0.12MPa未満の高圧成形条件下の何れの発泡成形条件においても高度に発泡すると共に、外観が美麗で且つ低嵩密度にして高強度なポリスチレン系樹脂発泡成形体を短時間で製造することができる。
【0057】
即ち、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、Z平均分子量と重量平均分子量Mwとの比(Mz/Mw)、Z平均分子量Mz、及び、特定条件下における樹脂ストランドの外径Aとオリフィスの内径Bとの膨張割合SR(A/B)を有するポリスチレン系樹脂を用いていることから、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子又はこれを予備発泡させて得られるポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を金型内に充填して加熱発泡するにあたって、加熱媒体の圧力の大小にかかわらず優れた伸長性を発揮すると共に、発泡圧によって容易に亀裂を生じない程度の高い溶融粘度を有しており、更に、物理型発泡剤の含有量を1.7〜5.0重量%と低く抑えていることから、発泡時における発泡ガス圧を低く抑えることができる共に、物理型発泡剤がポリスチレン系樹脂に含浸してポリスチレン系樹脂が可塑化するのを最小限に抑えている。
【0058】
従って、得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体を金型のキャビティ内から取り出す際のポリスチレン系樹脂発泡成形体の温度を高くしても、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の発泡壁の高い溶融粘度と低い発泡ガス圧との相乗効果によって、ポリスチレン系樹脂発泡成形体が破泡して発泡ガスが散逸し、ポリスチレン系樹脂発泡成形体が収縮したりすることはなく、よって、ポリスチレン系樹脂発泡成形体をより高い温度にて金型内から取り出すことができる。
【0059】
つまり、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いれば、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造工程において最も長時間を要するポリスチレン系樹脂発泡成形体の冷却工程の短縮化を図ることができると共に、金型の冷却を最小限にして、ポリスチレン系樹脂成形体を取り出した後、次に金型内に充填される発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡のための金型の加熱時間の短縮化を図ることができ、よって、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いたポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造時間の短縮化を図ることができる。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
内容量100リットルの攪拌機付き重合容器に、水40000重量部、懸濁安定剤として第三リン酸カルシウム100重量部及びアニオン界面活性剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸カルシウム2.0重量部を供給し攪拌しながらスチレン単量体40000重量部並びに重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド96.0重量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート28.0重量部を添加した上で90℃に昇温して重合した。そして、この温度で6時間保持し、更に、125℃に昇温してから2時間後に冷却してポリスチレン系樹脂粒子(A)を得た。
【0061】
上記ポリスチレン系樹脂粒子(A)を篩分けし、種粒子として粒子径0.5〜0.71mmのポリスチレン系樹脂粒子(B)を得た。次に、内容量5リットルの攪拌機付き重合容器内に、水2000重量部、上記ポリスチレン系樹脂粒子(B)500重量部、懸濁安定剤としてピロリン酸マグネシウム6.0重量部及びアニオン界面活性剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸カルシウム0.3重量部を供給して攪拌しながら70℃に昇温した。
【0062】
次に、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド4.5重量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート1.1重量部をスチレン単量体200重量部に溶解させたものを上記5リットルの重合容器に供給してから30分経過後に100℃に昇温し、更に、多官能性単量体としてジビニルベンゼン0.45重量部及び連鎖移動剤としてα−メチルスチレンダイマー0.009重量部を溶解させたスチレン単量体1300重量部を2時間かけてポンプで一定量づつ上記5リットルの重合容器内に供給した上で120℃に昇温して2時間経過後に冷却しポリスチレン系樹脂粒子(C)を得た。
【0063】
続いて、別の内容量5リットルの攪拌機付き重合容器に、水2200重量部、ポリスチレン系樹脂粒子(C)1800重量部、懸濁安定剤としてピロリン酸マグネシウム6.0重量部及びドデシルベンゼンスルフォン酸カルシウム0.4重量部を供給して攪拌しながら70℃に昇温した。次に、発泡助剤としてシクロヘキサン27.0重量部及び可塑剤としてジイソブチルアジペート12.6重量部を重合容器内に入れて密閉し100℃に昇温した。
【0064】
次に、発泡剤としてn−ブタン90重量部をポリスチレン系樹脂粒子(C)が入った重合容器内に圧入して3時間保持した後、30℃以下まで冷却した上で重合容器内から取り出し乾燥させた上で13℃の恒温室内に5日間放置して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0065】
続いて、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面に表面処理剤としてジンクステアレート及びヒドロキシステアリン酸トリグリセリドを被覆処理した上で予備発泡装置にて嵩密度0.0167g/cm3 に予備発泡した後に20℃で24時間熟成してポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を得た。
【0066】
そして、内寸300mm×400mm×30mmの直方体形状のキャビティを有する金型を備えた発泡ビーズ自動成形機(積水工機製作所社製 商品名「エース3型」)における金型のキャビティ内に上記ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を充填し、ゲージ圧0.07MPaの水蒸気を金型のキャビティ内に圧入して15秒間加熱成形を行った。次に、上記金型のキャビティ内の発泡体を5秒間水冷した後、減圧下にて放冷(冷却工程)してポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0067】
上記とは別に、発泡ビーズ自動成形機の金型のキャビティ内に水蒸気をゲージ圧0.05MPaで圧入したこと以外は上記ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造要領と同様の要領でポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0068】
(実施例2)
ポリスチレン系樹脂粒子(B)からポリスチレン系樹脂粒子(C)を製造するにあたって、ジビニルベンゼンの量を0.45重量部の代わりに0.26重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0069】
(実施例3)
ポリスチレン系樹脂粒子(B)からポリスチレン系樹脂粒子(C)を製造するにあたって、ジビニルベンゼンの量を0.45重量部の代わりに0.47重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0070】
(実施例4)
ポリスチレン系樹脂粒子(B)からポリスチレン系樹脂粒子(C)を製造するにあたって、ベンゾイルパーオキサイドの量を4.5重量部の代わりに6.0重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0071】
(実施例5)
ポリスチレン系樹脂粒子(B)からポリスチレン系樹脂粒子(C)を製造するにあたって、ベンゾイルパーオキサイドの量を4.5重量部の代わりに3.2重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0072】
(実施例6)
n−ブタンを90重量部の代わりに60重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0073】
(比較例1)
ポリスチレン系樹脂粒子(B)からポリスチレン系樹脂粒子(C)を製造するにあたって、ジビニルベンゼンの量を0.45重量部の代わりに0.19重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0074】
(比較例2)
ポリスチレン系樹脂粒子(B)からポリスチレン系樹脂粒子(C)を製造するにあたって、ジビニルベンゼンの量を0.45重量部の代わりに0.57重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ようとしたが、ゲージ圧0.05MPaの水蒸気圧の条件下ではポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができなかった。
【0075】
(比較例3)
シード重合によりポリスチレン系樹脂粒子(B)からポリスチレン系樹脂粒子(C)を製造する際にジビニルベンゼンを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0076】
(比較例4)
n−ブタンを90重量部の代わりに46重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0077】
(比較例5)
発泡助剤としてシクロヘキサン27.0重量部の代わりに9.0重量部とし、可塑剤としてジイソブチルアジペート12.6重量部の代わりに5.0重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0078】
(比較例6)
ポリスチレン系樹脂粒子(B)からポリスチレン系樹脂粒子(C)を製造するにあたって、連鎖移動剤であるα−メチルスチレンダイマーを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0079】
(比較例7)
ポリスチレン系樹脂粒子(B)からポリスチレン系樹脂粒子(C)を製造するにあたって、ジビニルベンゼンの量を0.45重量部の代わりに0.19重量部としたこと、発泡剤であるn−ブタンの量を90重量部の代わりに60重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ようとしたが、ゲージ圧0.05MPaの水蒸気圧の条件下ではポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができなかった。
【0080】
(比較例8)
ポリスチレン系樹脂粒子(B)からポリスチレン系樹脂粒子(C)を製造するにあたって、α−メチルスチレンダイマーの量を0.009重量部の代わりに0.0035重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0081】
(比較例9)
ポリスチレン系樹脂粒子(B)からポリスチレン系樹脂粒子(C)を製造するにあたって、α−メチルスチレンダイマーの量を0.009重量部の代わりに0.014重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0082】
上記の如くして得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を構成しているポリスチレン系樹脂におけるZ平均分子量Mzと重量平均分子量Mwとの比(Z平均分子量Mz/重量平均分子量Mw)、Z平均分子量Mz、膨張割合SR(A/B)及びメルトフローレイト、スチレン単量体とジビニルベンゼンとα−メチルスチレンダイマーとの共重合体中におけるジビニルベンゼン成分及びα−メチルスチレンダイマー成分の含有量、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中における物理型発泡剤及び発泡助剤の含有量、並びに、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の外観性、冷却工程所要時間、曲げ強度及び5%圧縮強度を下記に示した要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0083】
(ジビニルベンゼン成分及びα−メチルスチレンダイマー成分の含有量)
ポリスチレン系樹脂粒子(B)からポリスチレン系樹脂粒子(C)を作製する際に重合容器内に供給されたスチレン単量体とジビニルベンゼンとα−メチルスチレンダイマーは全て共重合反応したものとして、スチレン単量体100モルに対するジビニルベンゼンとα−メチルスチレンダイマーの供給量(モル)を各成分の含有量とした。
【0084】
(物理型発泡剤の含有量)
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を150℃の熱分解炉(島津製作所社製 商品名「GC−14B熱分解炉」)に供給して揮発した炭化水素をガスクロマトグラフ(島津製作所社製)を用いて下記条件下にて測定した。
PYR−1Aカラム:ポラパックQ 80/100(3mmφ×1.5m)
カラム温度:100℃
検出器(FID)温度:120℃
【0085】
(発泡助剤の含有量)
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をジメチルホルムアミドに溶解して内部標準液(シクロペンタノール)を加えてガスクロマトグラフ(島津製作所社製 商品名「GC−14A」)を用いて測定した。但し、特定できないピークについてはトルエンの検出量に換算して定量した。
カラム:PEG−20M PT25% 60/80(2.5m)
カラム温度:105℃
検出器(FID)温度:220℃
【0086】
(外観性)
ポリスチレン系樹脂発泡成形体の表面を目視観察して下記基準によって評価した。
○:発泡粒子間の間隙が無く、表面が溶融した発泡粒子もなく、表面が平滑で見栄え
が良い。
×:発泡粒子間の間隙が多く或いは表面に溶融した発泡粒子が多数存在し、表面に凹
凸が発生しており見栄えが非常に悪い。
【0087】
(冷却工程所要時間)
金型に取り付けられた面圧計によって金型内の発泡成形体の面圧を測定し、水冷の開始から面圧計が0.02MPaになるまでに要した時間を測定した。
【0088】
(曲げ強度)
ポリスチレン系樹脂発泡成形体から縦300mm×横75mm×厚さ30mmの試験片を切り出し、この試験片の曲げ試験をJIS−A9511に準拠して行い、曲げ強度とした。
【0089】
(5%圧縮強度)
ポリスチレン系樹脂発泡成形体から縦50mm×横50mm×厚さ30mmの試験片を切り出し、この試験片の圧縮試験をJIS−A9511に準拠して行い、曲げ強度とした。
【0090】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理型発泡剤1.7〜5.0重量%及び発泡助剤0.5〜2.0重量%を含有し且つポリスチレン系樹脂からなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、上記ポリスチレン系樹脂は、Z平均分子量Mzが100万〜150万で且つZ平均分子量Mzと重量平均分子量Mwとの比(Mz/Mw)が2.5〜3.5であると共に、温度200℃、荷重49N条件下でのメルトフローレイト測定時における樹脂ストランドの外径Aとオリフィスの内径Bとの膨張割合SR(A/B)が1.5〜3.0であることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体と多官能性単量体と連鎖移動剤との共重合体を含有していることを特徴とする請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて嵩密度0.01〜0.25g/cm3のポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を製造し、このポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を金型内に充填して加熱、発泡させることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法。

【公開番号】特開2008−150410(P2008−150410A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336708(P2006−336708)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】