説明

発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料およびその製造方法ならびにフェノール樹脂発泡体

【課題】 特に改善された外観を有し、しかも、密度35kg/m以下においても、標準的な密度である40kg/m程度の発泡体の有する力学的性能と比較して実用上問題のない程度の低下に抑えられ、かつpHが高く、良好な腐食防止性を有するフェノール樹脂発泡体を与え得る発泡性フェノール樹脂成形材料、および該成形材料を用いてなるフェノール樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】 液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤、酸硬化剤および添加剤を含む発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料であって、前記添加剤が、平均粒子径80μm以下の含窒素架橋型環式化合物である発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料、および該成形材料を発泡硬化させてなるフェノール樹脂発泡体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料およびその製造方法ならびにフェノール樹脂発泡体に関する。さらに詳しくは、本発明は、特に改善された外観を有する上、実用性のある強度および脆性を有し、かつpHが高く、良好な腐食防止性を有するフェノール樹脂発泡体を、有利な発泡、硬化性のもとに製作できる発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フェノール樹脂発泡体は、断熱性、難燃・防火性などに優れることから、断熱材として建築その他の産業分野において使用されている。
【0003】
ところが、かかるフェノール樹脂発泡体は、一般に液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤および酸硬化剤を少なくとも含む発泡性フェノール樹脂成形材料を発泡、硬化させることにより、製造されている。そして、前記酸硬化剤として、一般に硫酸などの無機酸や、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸などの有機酸が使用されているため、得られたフェノール樹脂発泡体は、例えば雨などで濡れると、発泡体中の酸硬化剤が水で抽出されることから、前記フェノール樹脂発泡体に金属部材が接触している場合、あるいは該発泡体の近傍に金属部材が存在する場合、その金属部材は腐食を受けやすいという問題が生じる。
【0004】
さらに、建材用途においては、かかる金属腐食性の問題に加えて、優れた力学的性能(強度および脆性)が要求されていた。このような要求に応えるべく技術として、例えば特許文献1や特許文献2が提案されているものの、さらに、軽量化やコスト低減などの観点から密度を低くした場合にあっても、外観や上記性能の悪化を伴わないフェノール樹脂発泡体の開発が望まれていた。
【0005】
また、かかる特許文献に記載の技術は、そこで用いられる塩基性の含窒素架橋型環式化合物、なかでも、ヘキサメチレンテトラミンは、特に、液状レゾール型フェノール樹脂や酸硬化剤の作用を受け易いことから、場合によっては発泡、硬化に支障を来たすという問題を内在するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−335868号公報
【特許文献2】特開2007−70507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情のもとでなされたものであって、本発明の目的は、特に改善された外観を有し、しかも、密度35kg/m以下においても、標準的な密度である40kg/m程度の発泡体の有する力学的性能(強度および脆性)と比較して実用上問題のない程度の低下に抑えられ、かつpHが高く、良好な腐食防止性を有するフェノール樹脂発泡体を与え得る発泡性フェノール樹脂成形材料を提供することにある。また、本発明の他の目的は、発泡、硬化時に支障を生じない発泡性フェノール樹脂成形材料の製造方法を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、かかる発泡性フェノール樹脂成形材料を発泡、硬化させて成る、前記性能を有するフェノール樹脂発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を行なった結果、発泡性フェノール樹脂成形材料内に特定の粒度に調整された含窒素架橋型環式化合物を含ませることによって、得られるフェノール樹脂発泡体は、密度を低くした場合にあっても、強度および脆性の低下が少なく、良好な金属腐食防止性を保持し、しかも、改善された外観を有すること、また、発泡性フェノール樹脂成形材料の製造に際し、液状レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤との混合において、上記の含窒素架橋型環式化合物を加えることによって、発泡性フェノール樹脂成形材料の有する発泡、硬化時の不具合を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1) 液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤、酸硬化剤および添加剤を含む発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料であって、前記添加剤が、平均粒子径80μm以下の含窒素架橋型環式化合物であることを特徴とする、発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料、
(2) 含窒素架橋型環式化合物が、ヘキサメチレンテトラミンである、上記(1)項に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料、
(3) さらに、可塑剤を含む、上記(1)または(2)項に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料、
(4) 発泡剤が、イソプロピルクロリドを含む、上記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料、
(5) 上記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料を発泡硬化させてなることを特徴とする、フェノール樹脂発泡体、
(6) 密度が20〜40kg/mであって、pHが4.0以上、圧縮強さが10N/cm以上および脆性が20%以下である、上記(5)項に記載のフェノール樹脂発泡体、
(7) 液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤、酸硬化剤および添加剤を含む発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料を製造する方法であって、前記液状レゾール型フェノール樹脂と前記酸硬化剤との混合において、前記添加剤として平均粒子径80μm以下の含窒素架橋型環式化合物を加えることを特徴とする、発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料の製造方法、
(8) 含窒素架橋型環式化合物が、ヘキサメチレンテトラミンである、上記(7)項に記載の方法、
(9) 含窒素架橋型環式化合物を、フェノール樹脂用可塑剤との混合物の形態で加える、上記(8)項に記載の方法、
(10) フェノール樹脂用可塑剤が、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびグリコール類の中から選ばれる少なくとも1種である、上記(9)項に記載の方法、
(11) 発泡剤が、イソプロピルクロリドを含む、上記(7)〜(10)項のいずれか1項に記載の方法、および
(12) 液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤、酸硬化剤および添加剤をミキサーに供給し、攪拌・混合して得られた発泡性レゾール型フェノール樹脂組成物を、上下の面材間に注入し、加熱することで発泡・硬化させるフェノール樹脂成形材料を連続的に製造するに際し、含窒素架橋型環式化合物とフェノール樹脂用可塑剤とをプレ混合してなる前記添加剤をミキサーに供給する、上記(9)〜(11)項のいずれか1項に記載の方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料においては、含窒素架橋型環式化合物(添加剤)として、特定の粒度に調整したものが使用されるため、得られるフェノール樹脂発泡体は、密度が低くても、改善された外観を有し、しかも強度および脆性の低下が少なく、良好な金属腐食防止性が保持されたものとなるのである。
【0011】
かかる発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料の製造方法においては、液状レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤との混合において、添加剤として用いる特定の粒度に調整した含窒素架橋型環式化合物を加えるため、調製された成形材料中の含窒素架橋型環式化合物の保持が一定となることから、液状レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤の影響を僅少に抑制できるのみならず、容積効果による成形材料中の分散が均一化されるため、発泡、硬化のバラツキを有利に解消することができる。
【0012】
また、かかる含窒素架橋型環式化合物を、該含窒素架橋型環式化合物と相溶性の小さなフェノール樹脂用可塑剤に分散させた状態の混合物として用いることにより、細かな粒子の存在に起因した粉体流動性の悪化対応の必要がなく、また粉体供給可能なものにも適用可能であることから、ミキシングヘッドへの供給装置の簡素化や低廉化ができることのみならず、混合効率の向上が図れるなど、有利に混合作業を実施できるという利点を提供することができる。
【0013】
さらに、本発明のフェノール樹脂発泡体は、上述したような発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料を発泡、硬化させて作製されていることから、密度を低くしたものであっても、上記と同様な実用性能を保有し得るため、例えば建築部材の軽量化およびコストの低減に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料(以下、単に「フェノール樹脂成形材料」と称することがある。)について説明する。
[発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料]
本発明の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料は、液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤、酸硬化剤および添加剤を含む発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料であって、前記添加剤が、平均粒子径80μm以下の含窒素架橋型環式化合物であることを特徴とする。
【0015】
(液状レゾール型フェノール樹脂)
本発明のフェノール樹脂成形材料における液状レゾール型フェノール樹脂としては特に制限はなく、従来公知の液状レゾール型フェノール樹脂の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシン等に代表されるフェノール類およびその誘導体と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等に代表されるアルデヒド類とを、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等に代表されるアルカリ触媒の存在下に反応させた後、必要に応じて中和処理および/または減圧脱水処理を施すことにより、調製される液状のレゾール型フェノール樹脂等を用いることができる。なお、フェノール類とアルデヒド類の配合割合については、特に限定はなく、モル比基準にて、通常、1.0:1.5〜3.0の範囲で適宜に設定されるが、とりわけ1.0:1.8〜2.5の範囲が好適である。また、フェノール類、アルデヒド類および触媒は、それぞれに属する化合物の1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0016】
かくして調製された液状レゾール型フェノール樹脂としては、粘度が、温度25℃において、1,000〜80,000mPa・s、特に7,000〜50,000mPa・sの範囲にあり、かつ水分率が4〜16質量%、特に6〜14質量%の範囲に調整されたものが好ましい。
【0017】
(発泡剤)
本発明のフェノール樹脂成形材料における発泡剤としては、例えばジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等の塩素化脂肪族炭化水素、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の低沸点脂肪族炭化水素、イソプロピルエーテル等のエーテル系化合物、トリクロロモノフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン等の代替フロン系化合物などに代表される有機系非反応型発泡剤が挙げられる。かかる発泡剤は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。なお、ここでいう非反応型発泡剤とは、物質それ自体が発泡条件下に揮発してフェノール樹脂を発泡し得るものをいう。
【0018】
かかる発泡剤のなかでも、塩素化脂肪族炭化水素ないし該塩素化脂肪族炭化水素を主体成分とする低沸点脂肪族炭化水素との混合物、なかでも、イソプロピルクロリドとノルマルペンタンとの併用が好ましい。また、発泡剤の配合量は、前述の液状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、通常、1〜20質量部の範囲で適宜に選択されるが、好ましくは5〜20質量部である。配合量が、1質量部未満であると、所期の密度を有する発泡体が得られず、逆に20質量部を越えると、発泡圧の増大に伴い気泡が破壊され、外観や断熱性能(熱伝導率)を悪化する傾向がある。なお、上記の発泡剤以外にも、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガスなどの気体、あるいはこれらの混合ガスを用いることもできる。
【0019】
(整泡剤)
本発明のフェノール樹脂成形材料における整泡剤としては、特に制限はないが、非イオン性界面活性剤が好適に用いられる。なお、必要に応じて他のアニオン性界面活性剤を単独で、あるいは併用しても差し支えない。かかる非イオン性界面活性剤の例としては、例えばポリシロキサン系、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、整泡剤の配合量としては、液状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、通常、1〜5質量部の範囲で適宜に選択されるが、好ましくは2〜4質量部である。
【0020】
(酸硬化剤)
本発明のフェノール樹脂成形材料における酸硬化剤としては、例えば硫酸、リン酸等の無機酸や、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸などの使用が一般的であるが、これらの例示に限定されるものではない。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。かかる酸硬化剤の配合量としては、液状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、通常、5〜50質量部の範囲で適宜に選択されるが、好ましくは10〜30質量部である。
【0021】
(添加剤)
本発明のフェノール樹脂成形材料においては、必須成分の添加剤として、含窒素架橋型環式化合物が用いられる。この含窒素架橋型環式化合物の粒度は、平均粒子径で80μm以下に調整されていることが必要であり、好ましくは70μm以下であり、体積効果による成形材料中への混合分散度の向上という観点から、50μm以下が特に好ましい。平均粒子径が80μmを超えると、細粒化に伴う効果が十分に発現され得なくなる。なお、平均粒子径の下限については、特に限定されない。一般に粒子が細かくなると凝集作用による粒子の複合化が生じて粉体流動性の悪化を招き、発泡体の連続生産ラインでのミキシングヘッド(高速混合器など)への直接ないし間接(液状レゾール型フェノール樹脂成分または発泡剤成分との直前混合)の定量供給が難しくなることから、かかる細かな粒子の場合には、通常、発泡体に極端な悪影響を与えず、含窒素架橋型環式化合物との相溶性が少なく、かつその沈降を防止し得る最低限の粘度を有し、しかも液状フェノール樹脂との相溶性を有する液状物質に混合分散させた混合物としての使用が好適である。
【0022】
かかる液状物質は、前記性状を有するものであれば、特に限定はされないが、このような液状物質としては、例えば後述する任意成分である可塑剤の中から、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、グリコール類の少なくとも1種を選び用いるのが有利である。なお、かかる手法は、細かな粒子への適用に止まらず、複合粒子が少なく粉体供給可能な粒度にも適用することによって、ミキシングヘッドへの供給装置の簡素化、低廉化のみならず、混合効率の向上を図れるなど有利に混合作業を実施できるという利点を提供することができる。
【0023】
当該含窒素架橋型環式化合物としては、入手の容易さ、効果の発現性を考慮すると、特にヘキサメチレンテトラミンが好適である。そして、かかる含窒素架橋型環式化合物の粒度を平均粒子径80μm以下に調整し、これを発泡性フェノール樹脂成形材料中に含有させることにより、発泡体の密度を低くした場合においても、金属腐食防止性が阻害されることも、強度および脆性が著しく低下することもなく、逆に外観が向上するなど、予想外の効果が発揮されることが分かった。
【0024】
このような含窒素架橋型環式化合物の配合量としては、液状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、通常、0.1〜10質量部の範囲で適宜に選択されるが、好ましくは0.3〜7質量部である。配合量が0.1質量部未満では、所期の目的を達成することができず、逆に10質量部を越えると硬化性が悪くなる傾向にある。
【0025】
(任意成分)
本発明のフェノール樹脂成形材料においては、必要に応じて、可塑剤や無機フィラーなどを含有させることができる。
【0026】
<可塑剤>
本発明のフェノール樹脂成形材料に、必要に応じて含有させることができる可塑剤としては、得られるフェノール樹脂発泡体の気泡壁に柔軟性を付与し、断熱性能の経時的な劣化を抑制する作用を有するものが用いられる。
【0027】
このような可塑剤としては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、グリコール類、リン酸トリフェニル、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチルなどを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明においては、前記可塑剤は、前述の液状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、通常0.1〜20質量部の範囲で用いられる。該可塑剤の使用量が上記の範囲にあると、得られるフェノール樹脂発泡体の他の性能を損なうことなく、気泡壁に柔軟性を付与する効果が良好に発揮される。該可塑剤の好ましい使用量は0.5〜15質量部であり、より好ましくは1〜12質量部である。
【0029】
<無機フィラー>
本発明のフェノール樹脂成形材料に、必要に応じて含有させることができる無機フィラーは、得られるフェノール樹脂発泡体に、効果的に防火性および/または防食性を付与し得るものが用いられる。
【0030】
このような無機フィラーとしては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属の水酸化物や酸化物、亜鉛などの金属粉末、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛などの金属炭酸塩などを挙げることができる。これらのなかでも、水酸化アルミニウムおよび/または炭酸カルシウムが好適である。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、無機フィラーの配合量としては、液状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、通常、0.1〜30質量部の範囲で適宜に選択されるが、とりわけ1〜10質量部程度が好適である。
【0031】
[発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料の製造方法]
本発明はまた、前述した本発明の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料を製造する方法をも提供する。
【0032】
本発明のフェノール樹脂成形材料の製造方法は、液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤、酸硬化剤および添加剤を含む発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料を製造する方法であって、前記液状レゾール型フェノール樹脂と前記酸硬化剤との混合において、前記添加剤として平均粒子径80μm以下の含窒素架橋型環式化合物を加えることを特徴とする。
【0033】
本発明の方法においては、液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤、酸硬化剤および添加剤については、前述した本発明のフェノール樹脂成形材料において説明したとおりである。
【0034】
また、前記含窒素架橋型環式化合物は、フェノール樹脂用可塑剤、好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびグリコール類の中から選ばれる少なくとも1種との混合物の形態で加えるのが有利である。
【0035】
さらに、本発明の方法においては、液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤、酸硬化剤および添加剤をミキサーに供給し、攪拌・混合して得られた発泡性レゾール型フェノール樹脂組成物を、上下の面材間に注入し、加熱することで発泡・硬化させるフェノール樹脂成形材料を連続的に製造するに際し、含窒素架橋型環式化合物と前記フェノール樹脂用可塑剤とをプレ混合してなる添加剤をミキサーに供給する方式を用いることが好ましい。
【0036】
次に、本発明のフェノール樹脂発泡体について説明する。
[フェノール樹脂発泡体]
本発明のフェノール樹脂発泡体は、前述のようにして調製した発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料(以下、「発泡性組成物」ともいう。)を発泡、硬化させて作製されるものであって、具体的には、例えば(1)エンドレスコンベアベルト上で発泡性組成物を発泡、硬化させる成形方法、(2)スポット的に発泡性組成物を充填して発泡、硬化させる方法、(3)モールド内に発泡性組成物を充填して加圧状態で発泡、硬化させる方法、(4)大きな空間内に発泡性組成物を充填して発泡、硬化させて発泡ブロックを成形する方法、(5)空洞中に圧入しながら充填発泡させる方法の他、現場スプレー発泡機によって発泡性組成物を躯体壁面等に吹き付けて発泡、硬化させる方法などを挙げることができる。
【0037】
これらのなかでも、建材分野で従来採用されてきた上記(1)の成形方法によれば、フェノール樹脂発泡体は、発泡性組成物を、連続的に移動するコンベヤーベルト上に載置された面材上に流延塗布し、さらに、流延塗布された発泡性組成物上に他の面材を載せてサンドイッチ構造とした後、これをダブルコンベヤーベルト式の加熱硬化炉(炉内温度:通常90℃以下、好適には60〜80℃程度)内に案内し、炉中で発泡、硬化(滞留時間:2〜10分間程度)させると共に、所定厚みに成形した後、これを所定の長さに切断することにより、板状に作製される。
【0038】
前記面材としては、特に制限されず、ガラス繊維不織布、スパンボンド不織布、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔、合板、珪酸カルシウム板、石膏ボードおよび木質系セメント板の中から選ばれる少なくとも1種が好適である。この面材は、フェノール樹脂発泡体の片面に設けてもよく、両面に設けてもよい。また、両面に設ける場合、面材は同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、後から接着剤を用いて貼り合わせて設けてもよい。
【0039】
かくして得られる本発明のフェノール樹脂発泡体は、通常、密度20〜40kg/mの範囲で実用されるが、軽量化やコスト低減の観点から採用される密度25〜35kg/mの場合においても、標準的な密度である40kg/m程度の有する性能より少しは劣るものの、実用性に支障のない強度および脆性を保持し、腐食防止性も兼ね備え、しかも外観に優れたものとして提供される。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、各例で得られたフェノール樹脂発泡体の物性は、以下に示す方法に従って測定した。
【0041】
(1)密度(単位:kg/m):JIS A 9511(2006)、5.6に従い測定した。
【0042】
(2)脆性(単位:%):JIS A 9511(2003)、5.14に従い測定した。
【0043】
(3)pH:乳鉢などで250μm(60メッシュ)以下に微粉化したフェノール樹脂発泡体サンプル0.5gを200ml共栓付き三角フラスコに量り採り、純水100mlを加え、密栓する。マグネチックスターラーを用い室温(23±5℃)で7日間攪拌後、pHメータで測定した。
【0044】
(4)圧縮強さ(N/cm):JIS A 9511(2006)、5.9に従い測定した。
【0045】
(5)腐食防止性:300mm角の亜鉛鉄板(厚さ1mm、めっき付着量120g/m)の上に、同じ大きさのフェノール樹脂発泡体サンプルを載せ、ずれないようにして固定したものを試験体とし、40℃、100%RHの促進環境下に設置し、24週間放置後の亜鉛鉄板と前記サンプルとの接触面の腐食性を目視にて評価した。
【0046】
(6)粘度(単位:mPa・s/25℃):JIS K 7117−1(1999)に従い、ブルックフィールド型回転粘度計を用いて、試験温度25℃で測定した。
【0047】
(7)水分率(単位:質量%):JIS K 6910(2007)、5.18に従いカールフィッシャー自動容量滴定法により測定した。
【0048】
(8)熱伝導率[単位:W/(m・K)]:フェノール樹脂発泡体サンプル(200mm×200mm)を、低温板10℃と高温板30℃との間に設置し、JIS A 1412−2(1999)の熱流計法に従い、熱伝導率測定装置「HC−074 304」(英弘精機株式会社製)を使用して測定した。
【0049】
(9)平均粒子径:マイクロトラック粒度分布測定装置「MT3000」(日機装株式会社製)により測定した。
【0050】
(10)外観:5cm角の立方体を切り出し、上下面材のない周囲4面に出現した2mm以上のセル荒れを目視で計測した総数を、下記基準に照らして評価し、外観(セル荒れ)の良否とした。
(i)良好○:0〜10個
(iiやや良好△:11〜20個
(iii)不良×:21個以上
【0051】
<液状レゾール型フェノール樹脂の調製>
還流器、温度計、攪拌機を備えた三つ口反応フラスコ内にフェノール1600gと50質量%水酸化ナトリウム水溶液38gを仕込み、47質量%ホルマリン2282gを分割投入し、80℃で180分間反応を行なった。その後40℃に冷却し、50質量%パラトルエンスルホン酸水溶液で中和し、減圧・加熱下に脱水濃縮して液状レゾール型フェノール樹脂2830gを得た。この樹脂は粘度15,000mPa・s/25℃、水分率9.2質量%であった。
【0052】
(実施例1)
先ず、上記で準備した液状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対し、整泡剤としてシリコーン系整泡剤(商品名「L−5420」、日本ユニカー株式会社製)3質量部、発泡剤としてノルマルペンタン(エスケイ産業株式会社製)8質量部加えて混合し、混合物の温度を5℃に調整した。得られた混合物の全量と、さらに添加剤としてヘキサメチレンテトラミン(平均粒子径11μm)2質量部および酸硬化剤としてキシレンスルホン酸(商品名「テイカトックス110」、テイカ株式会社製)13質量部とをピンミキサーにて撹拌、混合して発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料を調製した。引き続いて、この成形材料を、ガラス不織布を敷いた金属型枠内(縦300mm×横300mm×高さ50mm)に吐出後、直ちに同じガラス不織布を載せてサンドイッチ構造とし、さらに上蓋鉄板を型枠上面に載せた後型締めし、これを80℃の乾燥機中に入れて7分間発泡、硬化させてフェノール樹脂発泡体を作製した。この発泡体の物性を表1に示す。
【0053】
(実施例2)
実施例1において、液状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対し、さらに無機フィラーとして炭酸カルシウム2質量部を添加し、また酸硬化剤を14質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体を作製した。この発泡体の物性を表1に示す。
【0054】
(実施例3)
実施例1において、ヘキサメチレンテトラミンの平均粒子径を36μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体を作製した。この発泡体の物性を表1に示す。
【0055】
(実施例4)
実施例1において、ヘキサメチレンテトラミンの平均粒子径を70μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体を作製した。この発泡体の物性を表1に示す。
【0056】
(実施例5)
実施例1で使用した液状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対し、整泡剤としてヒマシ油エチレンオキサイド付加物(商品名「D225」、竹本油脂株式会社製)3質量部および発泡剤としてイソプロピルクロリドとノルマルペンタンとの混合物10質量部を加えて混合し、混合物の温度を5℃に調整した。作製した混合物の全量、さらに添加剤としてヘキサメチレンテトラミン(平均粒子径11μm)2質量部および酸硬化剤としてトルエンスルホン酸:キシレスルホン酸=約2:1(質量比)の混合物13.5質量部をピンミキサーにて撹拌、混合して発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料を調製した。引き続いて、フェノール樹脂発泡体の作製は、実施例1と同様にして実施した。得られた発泡体の物性を表1に示す。
【0057】
(実施例6)
実施例5において使用したヘキサメチレンテトラミン(平均粒子径11μm)2質量部に代えて、ポリエステルポリオール(粘度:1200mPa・S/25℃) 5質量部にヘキサメチレンテトラミン(平均粒子径5.2μm)2質量部を添加、混合して作製した混合物を用いる以外は、実施例5と同様にしてフェノール樹脂発泡体を作製した。この発泡体の物性を表1に示す。
【0058】
(実施例7、8および9)
実施例6において用いたヘキサメチレンテトラミンの粒度(平均粒子径5.2μm)を、粒度(平均粒子径35μm、実施例7)、粒度(平均粒子径50μm、実施例8)および粒度(平均粒子径70μm、実施例9)に変更した以外は、実施例6と同様にして3種類のフェノール樹脂発泡体を作製した。これらの発泡体の物性を表1に示す。
【0059】
(実施例10)
実施例5において、発泡剤として用いるイソプロピルクロリドとノルマルペンタンとの混合物の配合量を、10質量部から8質量部に変更する以外は、実施例5と同様にして密度40kg/mのフェノール樹脂発泡体を作製した。この発泡体の物性を表1に示す。
【0060】
(比較例1および2)
実施例1において、ヘキサメチレンテトラミンの粒度(平均粒子径11μm)を、粒度(平均粒子径90μm)および粒度(平均粒子径141μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして2種類のフェノール樹脂発泡体を作製した。これらの発泡体の物性を表2に示す。
【0061】
(比較例3)
実施例6において用いたヘキサメチレンテトラミンの粒度(平均粒子径5.2μm)を、粒度(平均粒子径90μm)に変更した以外は、実施例6と同様にしてフェノール樹脂発砲体を作製した。この発砲体の物性を表2に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】


表1および表2に示す対比結果から明らかな如く、従来、一般的用いられてきた粉末状のヘキサメチレンテトラミン(平均粒子径141μm、比較例2)より、細かな粒度(平均粒子径90μm、比較例1)またはこれを低粘度のポリエステルポリオールに分散させて用いる仕様(比較例3)であっても、本願発明の目的を達成し得ないことが分かった。しかしながら、平均粒子径80μm以下の粒度を有するヘキサメチレンテトラミンを用いる仕様(実施例1と実施例3)またはこれを低粘度のポリエステルポリオールに分散させて用いる仕様(実施例6〜実施例9)によれば、密度を26kg/m程度に低くしたにも拘わらず、標準的な密度40kg/mである発泡体(実施例10)の有する性能より少し劣るものの、実用性に支障のない性能を保持し、しかも外観的には、従来例より良好であることがわかった。一方、やや粒度(平均粒子径70μm)の大きいヘキサメチレンテトラミンを用いた場合(実施例4及び9)は、いずれも外観が実施例1と比較して若干劣る結果となることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料は、特に改善された外観を有する上、実用性のある強度および脆性を有し、かつpHが高く、良好な腐食防止性を有するフェノール樹脂発泡体を、有利な発泡、硬化性のもとに製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤、酸硬化剤および添加剤を含む発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料であって、前記添加剤が、平均粒子径80μm以下の含窒素架橋型環式化合物であることを特徴とする、発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【請求項2】
含窒素架橋型環式化合物が、ヘキサメチレンテトラミンである、請求項1に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【請求項3】
さらに、可塑剤を含む、請求項1または2に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【請求項4】
発泡剤が、イソプロピルクロリドを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料を発泡硬化させてなることを特徴とする、フェノール樹脂発泡体。
【請求項6】
密度が20〜40kg/mであって、pHが4.0以上、圧縮強さが10N/cm以上および脆性が20%以下である、請求項5に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項7】
液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤、酸硬化剤および添加剤を含む発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料を製造する方法であって、前記液状レゾール型フェノール樹脂と前記酸硬化剤との混合において、前記添加剤として平均粒子径80μm以下の含窒素架橋型環式化合物を加えることを特徴とする、発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料の製造方法。
【請求項8】
含窒素架橋型環式化合物が、ヘキサメチレンテトラミンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
含窒素架橋型環式化合物を、フェノール樹脂用可塑剤との混合物の形態で加える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
フェノール樹脂用可塑剤が、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびグリコール類の中から選ばれる少なくとも1種である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
発泡剤が、イソプロピルクロリドを含む、請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤、酸硬化剤および添加剤をミキサーに供給し、攪拌・混合して得られた発泡性レゾール型フェノール樹脂組成物を、上下の面材間に注入し、加熱することで発泡・硬化させるフェノール樹脂成形材料を連続的に製造するに際し、含窒素架橋型環式化合物とフェノール樹脂用可塑剤とをプレ混合してなる前記添加剤をミキサーに供給する、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。

【公開番号】特開2010−185061(P2010−185061A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37371(P2009−37371)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】