説明

発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料およびフェノール樹脂発泡体

【課題】強度に優れ、かつ収縮の少ないフェノール樹脂発泡体を与える発泡性フェノール樹脂成形材料、および前記特性を有するフェノール樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤および酸硬化剤を含む発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料において、添加剤としてアンモニウム化合物が混合されていることを特徴とする発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料およびそれを用いたフェノール樹脂発泡体に関する。さらに詳しくは、本発明は、強度に優れ、かつ収縮の少ないフェノール樹脂発泡体を与える発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料、およびこれを発泡硬化させてなる前記特性を有するフェノール樹脂発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フェノール樹脂発泡体は、断熱性、難燃・防火性などに優れることから、断熱材として建築その他の産業分野において使用されている。
【0003】
フェノール樹脂発泡体は、各種の用途によく用いられるが、用途によっては、高い機械的特性、特に低脆性のものが要求されることがある。従来、機械的強度および脆性に優れるフェノール樹脂発泡体として、液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤および酸硬化剤を含むと共に含窒素架橋型環式化合物を含む成形材料を用いたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
このようにフェノール樹脂発泡体は断熱材として非常に有用なものであるが、その製造において樹脂の硬化は脱水縮合により進むため、硬化が進むと共に収縮が起こり、面材と樹脂部との間に剥離が生じたり、面材にタワミが生じて表面が波打つ等の不良が発生するという問題点があった。
【0005】
また、断熱性能は熱伝導率と厚みに比例して高くなるためより厚いものが求められ、また作業性の点からはより軽いものが求められるが、この収縮は厚みが増すにしたがって大きくなり、また、密度が低下するにしたがって大きくなる傾向があるため、より低収縮のフェノール樹脂発泡体が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情のもとで、強度に優れ、かつ収縮の少ないフェノール樹脂発泡体を与える発泡性フェノール樹脂成形材料、および前記特性を有するフェノール樹脂発泡体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記の特性を有する発泡性フェノール樹脂成形材料を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤および酸硬化剤を含む発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料において、同材料に添加剤としてアンモニウム化合物を混合することによりその目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤および酸硬化剤を含む発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料において、添加剤としてアンモニウム化合物が混合されていることを特徴とする発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料、
(2)前記アンモニウム化合物が塩化アンモニウムであることを特徴とする上記(1)に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料、
(3)前記アンモニウム化合物が硝酸アンモニウムであることを特徴とする上記(1)に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料、
(4)液状レゾール型フェノール樹脂100重量部あたり、アンモニウム化合物が0.1から10重量部含まれていることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料、
(5)さらに含窒素架橋型環式化合物が混合されていることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料、
(6)上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料を発泡硬化させてなることを特徴とするフェノール樹脂発泡体、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、強度に優れ、かつ収縮の少ないフェノール樹脂発泡体を与える発泡性フェノール樹脂成形材料、および前記特性を有するフェノール樹脂発泡体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、本発明の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料について説明する。
【0011】
本発明の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料は、液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤、酸硬化剤、アンモニウム化合物、および所望により、可塑剤、無機フィラー、その他の添加剤を含むものである。
【0012】
前記液状レゾール型フェノール樹脂は、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシン等のフェノール類及びその変性物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等のアルデヒド類とを、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリを触媒量添加し、反応させて得られるフェノール樹脂であるが、これらに限定されるものではない。フェノール類とアルデヒド類の使用割合については特に限定はないが、通常モル比で1.0:1.5〜1.0:3.0程度、好ましくは1.0:1.8〜1.0:2.5である。
【0013】
前記発泡剤としては、例えばプロパン、ブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の低沸点の炭化水素、イソプロピルエーテル等のエーテル、トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン、イソプロピルクロリド等のハロゲン化炭化水素、あるいはこれらの化合物の混合物などの有機系非反応型発泡剤を含むものが用いられる。ここで、非反応型発泡剤とは、物質それ自体が発泡条件下に揮発してフェノール樹脂を発泡し得るものをいう。
【0014】
前記発泡剤以外に、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガスなどの気体、あるいはこれらの混合ガスを用いることもできる。
【0015】
本発明の発泡性フェノール樹脂成形材料において、前記発泡剤の使用量は、前述の液状レゾール型フェノール樹脂100重量部に対して、通常1〜20重量部、好ましくは5〜10重量部である。
【0016】
前記整泡剤としては、ひまし油エチレンオキシド(以下、エチレンオキシドを、「EO」と略記する。)付加物を含むものが好ましく用いられる。
【0017】
ひまし油は、トウゴマ等の種子から圧搾法によって得られる不乾性油であり、リシノール酸、オレイン酸、リノール酸等の不飽和酸を主成分として、ステアリン酸及びジオキシステアリン酸等の少量の飽和酸を含むものである。
【0018】
当該整泡剤においては、上記ひまし油1モルに対し、EOが20モル超、50モル未満付加されているものが好適である。
【0019】
EOの付加モル数が20モル超、50モル未満が好ましい理由は、EOの付加モル数が20モル超、50モル未満のときに、ひまし油の長鎖炭化水素基を主体とする疎水性基と、20モル超、50モル未満のEOによって形成されたポリオキシエチレン基を主体とする親水性基とが分子内でバランス良く配置されて、良好な界面活性能が得られ、このような良好な界面活性能を有する、ひまし油EO付加物を用いることにより、フェノール樹脂発泡体の気泡径が小さく保たれ、また気泡壁に柔軟性が付与されて、気泡壁の亀裂の発生が防止されるなどの効果が得られるからである。EOの付加モル数は25〜45モルとするのがより好ましい。
【0020】
本発明においては、前記整泡剤として、当該ひまし油EO付加物が好適成分として用いられるが、この他にジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ひまし油プロピレンオキシド付加物などを用いることもできる。
【0021】
本発明の発泡性フェノール樹脂成形材料において、前記ひまし油EO付加物の含有量は、フェノール樹脂100重量部当たり、1〜5重量部であることが好ましく、2〜4重量部であることがより好ましい。ひまし油EO付加物の含有量が1重量部未満である場合は、気泡が均一に小さくなり難く、一方、5重量部を超えると、生成したフェノール樹脂発泡体の吸水性が増大するとともに、製造コストが高くなる。
【0022】
前記酸硬化剤としては、例えば硫酸、リン酸等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸が用いられる。これらの酸硬化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
前記アンモニウム化合物としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、燐酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、蓚酸アンモニウム等のアンモニウム塩や、アルキル第4級アンモニウム塩等の有機アンモニウム化合物が用いられる。これらのアンモニウム化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明の発泡性フェノール樹脂成形材料において、前記アンモニウム化合物の添加量は、前述の液状レゾール型フェノール樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0025】
前記アンモニウム化合物の添加方法としては、これを水その他の溶媒に溶解して、もしくは固体のまま使用することが可能である。同化合物を固体のまま用いる際は、液状レゾール型フェノール樹脂への溶解に時間がかかることがある。
【0026】
本発明の発泡性フェノール樹脂成形材料において、含窒素架橋型環式化合物を加えることが好ましい。含窒素架橋型環式化合物としては、例えばキヌクリジン、ピジン、ヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン)などを例示することができる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、効果および入手の容易さなどの点からヘキサメチレンテトラミンが好適である。含窒素架橋型環式化合物はフルフリルアルコール溶液等の形態で用いることが好ましい。
【0027】
この含窒素架橋型環式化合物の添加量は、効果および経済性のバランスなどの点から、前述の液状レゾール型フェノール樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.3〜7重量部である。
【0028】
任意添加成分である可塑剤としてはフタル酸とジエチレングリコールの反応生成物であるポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール等が用いられ、同じく任意添加成分である無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、マイカ、タルク、ベントナイト、ゼオライト、シリカゲル、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化アンチモン等が用いられる。またホルムアルデヒドキャッチャー剤として尿素が用いられることもある。
【0029】
本発明の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料は、例えば、前述の液状レゾール型フェノール樹脂に、整泡剤、アンモニウム化合物、さらには必要に応じ、無機フィラー、可塑剤、ホルムアルデヒドキャッチャー剤などの添加剤を加えて全体を混合し、この混合物に発泡剤および酸硬化剤を添加したのち、この組成物をミキサーに供給して攪拌することにより調製することができる。
【実施例】
【0030】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。また、本発明に属しない比較例をいくつが挙げる。
【0031】
なお、各例で得られたフェノール樹脂発泡体の物性は、以下に示す方法に従って測定した。
【0032】
(1)密度
JIS A 9511により密度を測定した。
【0033】
(2)圧縮強さ
JIS A 9511により圧縮強さを測定した。
【0034】
(3)寸法
JIS A 9511により寸法を測定した。
【実施例1】
【0035】
液状レゾール型フェノール樹脂(旭有機材工業社製 品番:PF-339)100重量部に、可塑剤としてフタル酸とジエチレングリコールをモル比1:2で反応してなるポリエステルポリオール3重量部、整泡剤としてひまし油EO付加物(付加モル数30)3重量部、塩化アンモニウム1重量部、ホルムアルデヒドキャッチャー剤として尿素4重量部、含窒素架橋型環式化合物としてヘキサメチレンテトラミン0.4質量部を加えて、全体を混合し、20℃で8時間放置した。
【0036】
このフェノール樹脂混合物111.4重量部に対し、無機フィラーとして炭酸カルシウム3重量部、発泡剤としてイソプロピルクロリド5.5重量部とイソペンタン1重量部、酸硬化剤としてパラトルエンスルホン酸:キシレンスルホン酸質量比=2:1の混合物12重量部を攪拌機に供給し、全体を攪拌・混合して発泡性フェノール樹脂成形材料を調製した。
【0037】
続いて、この成形材料を予め75℃に調整した型枠(W300×D300×H95mm)に吐出し、これを75℃の乾燥機に入れ、樹脂温度が下がり始めるまで硬化させて成形し、成型物を型枠から取り出した後85℃の乾燥機に入れ、9.5時間養生させてフェノール樹脂発泡体を作製した。この発泡体の物性および成形時間を表1に示す。
【実施例2】
【0038】
実施例1において、塩化アンモニウムを硝酸アンモニウム1重量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体を作製した。
【実施例3】
【0039】
実施例1において、塩化アンモニウムを25%塩化アンモニウム水溶液2重量部に、硬化剤の量を14重量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体を作製した。
【実施例4】
【0040】
液状レゾール型フェノール樹脂(旭有機材工業社製 品番:PF-339)100重量部に、可塑剤としてフタル酸とジエチレングリコールをモル比1:2で反応してなるポリエステルポリオール2.2重量部、整泡剤としてひまし油EO付加物(付加モル数30)3重量部、塩化アンモニウム1.5重量部、ホルムアルデヒドキャッチャー剤として尿素4重量部を加え、全体を混合し、20℃で8時間放置した。
【0041】
このフェノール樹脂混合物110.7重量部に対し、含窒素架橋型環式化合物として20%ヘキサメチレンテトラミンのフルフリルアルコール溶液4重量部、無機フィラーとして炭酸カルシウム2.2重量部、発泡剤としてイソプロピルクロリド7.6重量部とイソペンタン1.4重量部、酸硬化剤としてパラトルエンスルホン酸:キシレンスルホン酸質量比=2:1の混合物12.5重量部を攪拌機に供給し、全体を攪拌・混合して発泡性フェノール樹脂成形材料を調製した。
【0042】
続いて、この成形材料を予め75℃に調整した型枠(W300×D300×H50mm)に吐出し、これを75℃の乾燥機に入れ、樹脂温度が下がり始めるまで硬化させて成形し、成型物を型枠から取り出した後85℃の乾燥機に入れ、5時間養生させてフェノール樹脂発泡体を作製した。この発泡体の物性および成形時間を表1に示す。
【比較例1】
【0043】
実施例1において、塩化アンモニウムを用いなかった以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体を作製した。
【比較例2】
【0044】
実施例4において、塩化アンモニウムを用いなかった以外は、実施例4と同様にしてフェノール樹脂発泡体を作製した。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、強度に優れ、かつ収縮の少ないフェノール樹脂発泡体を与える発泡性フェノール樹脂成形材料、および前記特性を有するフェノール樹脂発泡体を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特開2006−335868号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤および酸硬化剤を含む発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料において、添加剤としてアンモニウム化合物が混合されていることを特徴とする発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【請求項2】
前記アンモニウム化合物が塩化アンモニウムであることを特徴とする請求項1に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【請求項3】
前記アンモニウム化合物が硝酸アンモニウムであることを特徴とする請求項1に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【請求項4】
液状レゾール型フェノール樹脂100重量部あたり、アンモニウム化合物が0.1から10重量部含まれていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【請求項5】
さらに含窒素架橋型環式化合物が混合されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料を発泡硬化させてなることを特徴とするフェノール樹脂発泡体。

【公開番号】特開2010−163502(P2010−163502A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5370(P2009−5370)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】