説明

発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料及びそれを用いてなるフェノール樹脂発泡体

【課題】良好な腐食防止特性を備えたフェノール樹脂発泡体を有利に実現し得る発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料を提供すること。
【解決手段】液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤及び酸硬化剤と共に、金属炭酸塩を含み、且つ該金属炭酸塩が、400〜2000cm2 /gの範囲内の比表面積を有するように、発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料及びそれを用いてなるフェノール樹脂発泡体に係り、特に、強度の低下がなく、且つpHが高く、良好な腐食防止性を有する、外観に優れたフェノール樹脂発泡体を有利に提供することの出来る発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、フェノール樹脂発泡体は、断熱性、難燃・防火性等に優れることから、断熱材として、建築、その他の産業分野において、広く使用されてきている。
【0003】
ところで、かかるフェノール樹脂発泡体は、一般に、液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤及び酸硬化剤を少なくとも含む発泡性フェノール樹脂成形材料を、発泡、硬化させることによって、製造されている。そして、前記の酸硬化剤としては、一般に、硫酸等の無機酸や、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸等の有機酸が使用されているため、得られたフェノール樹脂発泡体は、例えば、雨等で濡れると、発泡体中の酸硬化剤が水で抽出されるようになることから、前記フェノール樹脂発泡体に金属部材が接触している場合、或いは該発泡体の近傍に金属部材が存在する場合に、その金属部材は腐食を受け易いという問題があった。
【0004】
このため、そのような金属腐食性の問題に対して、それを解決すべく、例えば、特開2006−335868号公報(特許文献1)や特開2007−70507号公報(特許文献2)が提案されている。そこでは、無機フィラーを、発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料に添加することにより、酸硬化剤を中和し、抽出水のpHを上昇させることで、腐食を防止する方法が提案されている。しかしながら、そのような公知の方法では、pHの上昇に時間がかかるために、充分な腐食防止効果を発現することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−335868号公報
【特許文献2】特開2007−70507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、抽出水のpH上昇が早く、良好な腐食防止性を有するフェノール樹脂発泡体と、それを有利に実現し得る発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明者が、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、添加剤として用いる金属炭酸塩の比表面積を特定の範囲に限定することによって、得られるフェノール樹脂発泡体は、強度の低下がなく、且つpHが高く、良好な腐食防止性を有し、更には吸水性が低くなることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
従って、本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであって、上記した課題又は明細書全体の記載から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載乃至はそこに開示の発明思想に基づいて、把握され得るものであることが、理解されるべきである。
【0009】
(1) 液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤及び酸硬化剤と共に、金属炭酸塩を含み、且つ該金属炭酸塩が、400〜2000cm2 /gの範囲内の比表面積を有していることを特徴とする発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【0010】
(2) 前記金属炭酸塩が、炭酸カルシウムである上記態様(1)に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【0011】
(3) 前記発泡剤が、塩素化脂肪族炭化水素である上記態様(1)又は(2)に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【0012】
(4) 前記発泡剤が、塩素化脂肪族炭化水素と脂肪族炭化水素との混合物である上記態様(1)又は(2)に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【0013】
(5) 前記発泡剤が、イソプロピルクロライドを含む上記態様(1)乃至(4)の何れか一つに記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【0014】
(6) 可塑剤、有機アミノ基含有化合物及び無機フィラーのうちの少なくとも1種が、更に含有せしめられている上記態様(1)乃至(5)の何れか一つに記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【0015】
(7) 上記態様(1)乃至(6)の何れか一つに記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料を発泡硬化させてなることを特徴とするフェノール樹脂発砲体。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明に従う発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料には、添加物として、特定の比表面積を備えた金属炭酸塩が使用されて、含有せしめられているため、得られるフェノール樹脂発泡体は、強度の低下がなく、接触部材に対して良好な金属腐食防止性を有し、更には低い吸水性を有するものとなるのである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に従う発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料及びこれを用いて得られるフェノール樹脂発泡体について、詳しく説明することとするが、かかる本発明に従う発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料は、基本的に、液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤及び酸硬化剤を含み、更に、これに特定の金属炭酸塩を含有せしめてなるものであって、その構成を成す各成分は、以下の通りである。
【0018】
先ず、前記発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料における液状レゾール型フェノール樹脂は、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシン等に代表されるフェノール類又はその誘導体と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等に代表されるアルデヒド類とを用い、それらを、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等に代表されるアルカリ触媒の添加により反応させた後、必要に応じて、中和処理及び/又は減圧脱水処理を施すことにより、調製される液状のレゾール型フェノール樹脂であるが、勿論、かかる例示の方法によって得られるレゾール型フェノール樹脂のみに、何等限定されるものではないことは、言うまでもないところである。なお、上記の反応におけるフェノール類とアルデヒド類の配合割合については、特に限定はなく、モル比基準にて、通常、1.0:1.5〜3.0の範囲内で適宜に設定されるが、とりわけ、1.0:1.8〜2.5の範囲が好適に採用される。また、当然のことながら、フェノール類、アルデヒド類及び触媒は、それぞれに属する化合物を、単独で用いても良く、或いはその2種以上を併用しても、何等差し支えない。
【0019】
そして、かくの如くして調製された液状レゾール型フェノール樹脂としては、粘度が、温度25℃において、1,000〜80,000mPa・s、特に3,000〜50,000mPa・sの範囲にあり、且つ水分率が5〜16質量%、特に6〜14質量%の範囲に調整されたものが、好ましく用いられることとなる。
【0020】
また、前記発泡剤としては、例えば、ジクロロエタン、プロピルクロライド、イソプロピルクロライド、ブチルクロライド、イソブチルクロライド、ペンチルクロライド、イソペンチルクロライド等の塩素化脂肪族炭化水素;プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素;イソプロピルエーテル等のエーテル系化合物;トリクロロモノフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン等の代替フロン系化合物等に代表される有機系非反応型発泡剤が、挙げられる。かかる発泡剤は、単独で用いても良く、或いは2種以上を併用しても良い。なお、ここで言う非反応型発泡剤とは、物質それ自体が発泡条件下に揮発して、フェノール樹脂を発泡し得るものを言う。
【0021】
なお、本発明においては、かかる発泡剤の中でも、塩素化脂肪族炭化水素、又は該塩素化脂肪族炭化水素を主体成分とする脂肪族炭化水素との混合物、中でも、イソプロピルクロライドとノルマルペンタン及び/又はイソペンタンとの併用が、特に好ましく採用される。また、発泡剤の配合量は、前述の液状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、通常、1〜20質量部の範囲で適宜に選択されるが、好ましくは5〜20質量部である。その配合量が1質量部未満であると、所期の密度を有する発泡体が得られず、逆に20質量部を越えるようになると、発泡圧の増加及び密度の低下に伴い、独立気泡が破壊され、外観・断熱性を悪化する傾向がある。なお、上記の発泡剤以外にも、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の気体、或いはこれらの混合ガスを用いることも出来る。
【0022】
さらに、前記整泡剤としては、非イオン性界面活性剤が好適に用いられるが、これに限定されるものではなく、必要に応じて、他のアニオン性界面活性剤等を単独で、或いは併用しても差し支えない。そのような非イオン性界面活性剤の例としては、例えば、ポリシロキサン系、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物等が挙げられる。これらは、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、整泡剤の配合量としては、液状レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して、通常、1〜5質量部の範囲で適宜に選択されるが、好ましくは2〜4質量部である。
【0023】
加えて、前記酸硬化剤としては、例えば、硫酸、リン酸等の無機酸や、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸の使用が、一般的であるが、これらの例示に限定されるものではないことが理解されるべきである。なお、これらは、単独で用いても良く、2種以上を併用しても何等差し支えない。そして、かかる酸硬化剤の配合量としては、液状レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して、通常、5〜50質量部の範囲で適宜に選択されるが、好ましくは10〜30質量部である。
【0024】
ところで、本発明における技術的特徴は、所期の目的を果たすべく、上述の如き液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤及び酸硬化剤を含む発泡性成形材料において、添加剤として用いられる金属炭酸塩として、比表面積が400乃至2000cm2 /g、特に好ましくは500乃至1500cm2 /gであるものを、用いることとしたことにある。この金属炭酸塩の比表面積が、2000cm2 /gを越えるようになると、酸硬化剤との反応性が高くなり、その結果、強度低下や硬化阻害を起こす問題があるからである。一方、その比表面積が400cm2 /gよりも低い場合には、金属炭酸塩が充分に抽出され得ないために、pHが上昇せず、接触する金属の腐食防止効果が不充分となる等の問題を惹起する。
【0025】
また、そのような金属炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等を挙げることが出来るが、その中でも、経済性、効果の発現性等を考慮すると、特に、炭酸カルシウムが好適である。なお、このような特定の比表面積を有する金属炭酸塩の配合量としては、液状レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して、0.3〜15質量部が好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。
【0026】
このような金属炭酸塩の比表面積が400乃至2000cm2 /gであるものを用い、これを、発泡性フェノール樹脂成形材料に配合して、含有させることにより、得られるフェノール樹脂発泡体の金属腐食防止性が良好で、更にはその吸水性が低くなるという、予想外の効果が発揮され得ることが分かったのである。
【0027】
なお、フェノール樹脂発泡体のホルムアルデヒド放散量を抑制すると共に、強度を増大させ、且つ脆性を減少させるために、本発明に従う発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料に、尿素のような有機アミノ基含有化合物を加えることが出来る。ここで好適に使用される、尿素の如きアミノ基含有化合物の量は、液状フェノール樹脂の100質量部に対して、一般に1〜10質量部程度であり、好ましくは3〜7質量部である。
【0028】
また、本発明においては、得られるフェノール樹脂発泡体の断熱性能の経時的な劣化を抑制するために、更に、可塑剤を添加しても良い。この添加される可塑剤は、特に限定はなく、従来よりフェノール樹脂発泡体の製造において使用されている公知の可塑剤、例えば、リン酸トリフェニル、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、ポリエステルポリオール等を挙げることが出来、それらが、単独で又は2種以上の混合物で用いられることとなる。
【0029】
そして、そのような可塑剤の配合量は、液状レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して、通常0.1〜20質量部の割合で、適宜に選択されることとなる。この可塑剤の配合量が、上記の範囲にあると、得られるフェノール樹脂発泡体の他の性能を損なうことなく、気泡壁に柔軟性を付与する効果が良好に発揮される。かかる可塑剤の好ましい使用量は、0.5〜15質量部であり、より好ましくは1〜12質量部である。
【0030】
さらに、本発明に係る発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料には、必要に応じて、防火性及び/又は防食性の向上に効果的な、従来から公知の無機フィラー、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属の水酸化物や、酸化物、亜鉛等の金属粉末を含有させることが出来る。これらの中でも、水酸化アルミニウムが好適に用いられることとなる。また、これらは、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。そして、この無機フィラーの配合量としては、液状レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して、通常、1〜100質量部が好適である。
【0031】
次に、本発明に係るフェノール樹脂発泡体について説明する。かかるフェノール樹脂発泡体は、上述したように調製した発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料(以下、「発泡性組成物」とも言う)を発泡、硬化させて、作製されるものであって、具体的には、例えば、(1)エンドレスコンベアベルト上で発泡性組成物を発泡、硬化させる成形方法、(2)スポット的に発泡性組成物を充填して発泡、硬化させる方法、(3)モールド内に発泡性組成物を充填して加圧状態で発泡、硬化させる方法、(4)大きな空間内に発泡性組成物を充填して発泡、硬化させて、発泡体ブロックを成形する方法、(5)空洞中に圧入しながら充填発泡させる方法の他、現場スプレー発泡機によって、発泡性組成物を躯体壁面等に吹き付けて、発泡、硬化させる方法等を採用して、形成されるものである。
【0032】
また、これらの中でも、建材分野で従来より採用されてきた、上記(1)の成形方法によれば、フェノール樹脂発泡体は、発泡性組成物を、連続的に移動するコンベヤーベルト上に載置された面材上に流延塗布し、更に、この流延塗布された発泡性組成物上に他の面材を載せて、サンドイッチ構造とした後、これを、ダブルコンベヤーベルト式の加熱硬化炉(炉内温度:通常90℃以下、好適には60〜80℃程度)内に案内し、炉中で発泡、硬化(滞留時間:2〜10分間程度)させると共に、所定厚みに成形した後、これを所定の長さに切断することにより、板状において作製されることとなる。
【0033】
なお、上記の面材としては、特に制限されるものではないが、例えば、ガラス繊維不織布、スパンボンド不織布、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔、合板、珪酸カルシウム板、石膏ボード及び木質系セメント板の中から選ばれる少なくとも1種が、好適に用いられることとなる。また、この面材は、フェノール樹脂発泡体の片面に設けても良く、又は両面に設けても良い。そして、両面に設ける場合には、面材は、同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。更に、後から接着剤を用いて貼り合わせて設けても、何等差し支えない。
【0034】
かくして得られる本発明に従うフェノール樹脂発泡体は、その密度が25乃至50kg/m3 程度であり、使用上好適な強度及び外観を保持し、腐食防止性も兼ね備え、しかも吸水性に優れたものとして、提供されることとなる。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例によって、本発明を更に詳細に説明することとするが、本発明は、それらの例によって、何等限定的に解釈されるものではない。なお、各例で得られた諸物性は、以下に示す方法に従って、測定されたものである。
(1)粘度:JIS K7117−1:1999に従い、ブルックフィールド形回転粘度 計を用いて、試験温度25℃で測定した。
(2)水分率:JIS K6910:2007、5.18水分(カールフィッシャー自動 容量滴定方法)に従って測定した。
(3)比表面積:JIS M8511:2005、付属書 空気透過法による粒度試験方 法に従って測定した。
(4)密度:JIS A9511:2006R、5.6に従い測定した。
(5)圧縮強さ:JIS A9511:2006R、5.9に従い測定した。
(6)腐食防止性:300mm角の亜鉛鉄板(厚さ1mmめっき付着量120g/m2 ) を用い、その上に、同じ大きさのフェノール樹脂発泡体サンプルを載 せ、ずれないようにして固定したものを試験体として、40℃、10 0%RHの促進環境下に設置し、24週間放置後の亜鉛鉄板のサンプ ルとの接触面の腐食性を、目視にて評価した。
(7)pH:乳鉢等で250μm(60メッシュ)以下に微粉化したフェノール樹脂発泡 体サンプル0.5gを、200ml共栓付き三角フラスコに量り取り、純水 100mlを加えて、密栓する。マグネチックスターラーを用い、室温(2 3±5℃)で24時間攪拌後、pHメータで測定した。
(8)吸水量:JIS A9511:2006R、5.14(測定方法A)に従い測定し た。
(9)外観:フェノール樹脂発泡体の外観を目視により評価した。
(10)熱伝導率:200mm角のフェノール樹脂発泡体サンプルについて、熱伝導率測 定装置:ANACON社製TCAポイント2を使用して、測定した。 フェノール樹脂発泡体サンプルを70℃の雰囲気に4日間放置した後 の測定値を、熱伝導率とした。
【0036】
〈液状レゾール型フェノール樹脂の調製〉
還流器、温度計、攪拌機を備えた三つ口反応フラスコ内に、フェノール1600gと50質量%水酸化ナトリウム水溶液38gを仕込み、47質量%ホルマリン2282gを分割投入して、80℃で180分間、反応を行なった。その後、40℃に冷却して、50質量%パラトルエンスルホン酸水溶液で中和し、そして減圧・加熱下に脱水濃縮して、液状レゾール型フェノール樹脂2830gを得た。この樹脂は、粘度15,000mPa・s/25℃、水分率9.2質量%であった。
【0037】
(実施例1)
先ず、上記で準備した液状レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して、整泡剤として、シリコーン系整泡剤(商品名「L−5420」、日本ユニカー株式会社製)の3質量部、添加剤として、比表面積が500cm2 /gの炭酸カルシウムの5質量部、更に発泡剤として、ノルマルペンタン(エスケイ産業株式会社製)の8質量部を加えて混合し、その得られた混合物の温度を5℃に調整した。次いで、かかる得られた混合物の全量と、酸硬化剤としてキシレンスルホン酸(商品名「テイカトックス110」、テイカ株式会社製)の15質量部とを、ピンミキサーにて撹拌、混合して、発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料を調製した。
【0038】
引き続いて、この得られた成形材料を用い、これを、ガラス不織布を敷いた金属型(容積:縦300mm×横300mm×厚み50mm)の枠内に吐出した後、7分間、80℃の乾燥機に入れて発泡せしめ、フェノール樹脂発泡体を作製した。この発泡体の物性を、下記表1に示す。
【0039】
(実施例2〜5および比較例1,2)
実施例1において、炭酸カルシウムの比表面積を、下記表1に記載した様に変更した以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体を作製した。そして、この得られた発泡体の物性を、下記表1に示す。
【0040】
(実施例6)
実施例1において、炭酸カルシウムの比表面積を700cm2 /gとし、更に発泡剤をイソプロピルクロライド7質量部とノルマルペンタン1質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体を作製した。この得られた発泡体の物性を、下記表1に示す。
【0041】
(実施例7)
実施例1において、炭酸カルシウムの比表面積を1000cm2 /gとし、更に発泡剤をイソプロピルクロライド7質量部とノルマルペンタン1質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体を作製した。この得られた発泡体の物性を、下記表1に示す。
【0042】
(比較例3)
実施例1において、炭酸カルシウムを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体を作製した。この得られた発泡体の物性を、下記表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
かかる表1の結果から明らかなように、炭酸カルシウムの比表面積が250cm2 /gのものを用いた場合や炭酸カルシウム添加なしの場合(比較例1,3)では、pHの上昇と共に、腐食防止性が悪化した。また、比表面積が2500cm2 /gのものを用いた場合(比較例2)では、硬化不良による収縮が発生し、圧縮強さも低下した。
【0045】
これに対して、比表面積が500乃至2000cm2 /gの炭酸カルシウムを添加した場合(実施例1〜5)又は発泡剤にイソプロピルクロライドとノルマルペンタンを併用した場合(実施例6〜7)においては、腐食防止性能を保ちつつ、硬化性や強度、断熱性能、更には吸水性の良い、バランスの取れた発泡体が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤及び酸硬化剤と共に、金属炭酸塩を含み、且つ該金属炭酸塩が、400〜2000cm2 /gの範囲内の比表面積を有していることを特徴とする発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【請求項2】
前記金属炭酸塩が、炭酸カルシウムである請求項1に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【請求項3】
前記発泡剤が、塩素化脂肪族炭化水素である請求項1又は請求項2に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【請求項4】
前記発泡剤が、塩素化脂肪族炭化水素と脂肪族炭化水素との混合物である請求項1又は請求項2に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【請求項5】
前記発泡剤が、イソプロピルクロライドを含む請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【請求項6】
可塑剤、有機アミノ基含有化合物及び無機フィラーのうちの少なくとも1種が、更に含有せしめられている請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料を発泡硬化させてなることを特徴とするフェノール樹脂発泡体。


【公開番号】特開2010−285496(P2010−285496A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138952(P2009−138952)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】