説明

発泡性樹脂組成物および発泡体

【課題】環境に優しく、軽量でクッション性(復元性)にすぐれた発泡体を与える発泡性樹脂組成物、および、特にバラ状緩衝材として好ましく用いられる生分解性の発泡体を提供する。
【解決手段】10質量%以上の加工澱粉と90質量%以下の未加工澱粉との混合物100質量部に対し、生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂10質量部以下、水10〜30質量部及び無機質フィラー0.01〜5質量部を含む発泡性樹脂組成物および同発泡性樹脂組成物を発泡させた発泡体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性樹脂組成物および発泡体に関し、さらに詳しくは、カーボンニュートラルの観点で優れており、生分解性であり、かつ低コストの発泡性樹脂組成物及びそれを発泡させた発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性樹脂成形体は、包装材、緩衝材、断熱材等に用いられている。これらの材料として、環境問題やコストの点から、ポリスチレンに代えて生分解性樹脂や澱粉系の材料が用いられるようになってきている。
特許文献1には、水を含む澱粉、エチレン−酢酸ビニル共重合体、界面活性剤等からなる組成物を発泡させた生分解性樹脂発泡体が記載されている。これにはエチレン−酢酸ビニル共重合体が含まれているので、環境上はなお不十分である。
また、特許文献2〜4には、水を含む生澱粉および/または変成(性)澱粉、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物やポリカプロラクトンのような熱可塑性樹脂、無機フィラー、防かび剤等からなる易崩壊性樹脂組成物およびそれから製造されるフィルムやシートが記載されているが、環境上はなお不十分である。
特許文献5には、澱粉、ポリビニルアルコール及び水を含む組成物を発泡させた生分解性樹脂発泡体が記載されている。また、特許文献6には、熱可塑性樹脂、澱粉及び相溶化剤を含む組成物を発泡させた発泡体が記載されている。
特許文献5に記載の生分解性樹脂発泡体および緩衝材は主たる材料が生(未加工)澱粉とポリビニルアルコールであり、生分解性なので、環境上は問題がない。発泡体および緩衝材の材料として澱粉は安価であり、できるだけこれを多く含有させることがコスト上は望ましい。しかしながら、特許文献5では、澱粉が生(未加工)澱粉のみであるため発泡体に加工した場合、機械的特性の点でさらに検討の余地がある。
特許文献6では、脂肪族ポリエステルのような熱可塑性樹脂、澱粉質系材料および不飽和ジカルボン酸および/またはその酸無水物で変性された酸変性ポリオレフィン樹脂のような相溶化剤を含む澱粉質系複合樹脂組成物が開示されているが、澱粉が主として生(未加工)澱粉のみであるため発泡体に加工した場合、機械的特性の点でさらに検討の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−87969号公報
【特許文献2】特開平7−258467号公報
【特許文献3】特開平8−245836号公報
【特許文献4】特開平8−245837号公報
【特許文献5】特開平11−124456号公報
【特許文献6】特開2004−2613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、上記機械的特性の改良のためには加工澱粉と未加工澱粉との混合物を主原料として用いることにより、得られる発泡体の強度等を実用可能な程度に維持しつつ、環境に優しく、軽量でクッション性(復元性)にすぐれた発泡体を与える発泡性樹脂組成物、および、特にバラ状緩衝材として好ましく用いられる生分解性の発泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、澱粉と樹脂とを含む発泡性樹脂組成物について研究した結果、澱粉として加工澱粉と未加工澱粉との混合物を主原料として用い、さらに無機質フィラーを含ませることにより、従来のものより生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂の配合量を減らしても発泡体の強度等を実用可能な程度に維持することができることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、以下
(1)10質量%以上の加工澱粉と90質量%以下の未加工澱粉との混合物100質量部に対し、生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂10質量部以下、水10〜30質量部及び無機質フィラー0.01〜5質量部を含む発泡性樹脂組成物、
(2)加工澱粉を25質量%以上含む上記(1)に記載の発泡性樹脂組成物、
(3)生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂が、0.5〜8質量部配合されてなる上記(1)または(2)に記載の発泡性樹脂組成物、
(4)生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂が、1〜7質量部配合されている上記(1)〜(3)に記載の発泡性樹脂組成物、
(5)生分解性樹脂が、脂肪族ポリエステル及びポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種である上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の発泡性樹脂組成物、
(6)生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂のMFIが、5g/(190℃、10分)以上である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物、
(7)加工澱粉が、酸化澱粉、エステル化澱粉、アセチル化澱粉及びカチオン化澱粉から選ばれる少なくとも1種である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物、
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物を発泡させた発泡体および
(9)発泡体が、バラ状緩衝材である上記(8)に記載の発泡体を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の発泡性樹脂組成物は、加工澱粉と未加工澱粉との混合物100質量部に対し、生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂が10質量部以下と極端に少なく、無機質フィラーを除いた天然由来材料の比率が90質量%以上であるため、カーボンニュートラルという観点で優れ、環境に優しい材料であり、かつ、コスト的にも有利である。
従来は、このように澱粉が多いものは実用的に問題があったが、本発明の発泡性樹脂組成物は、澱粉として加工澱粉と未加工澱粉との混合物を用いること、さらに無機質フィラーを含ませることで澱粉混合物の配合量を多くしても発泡体の強度等を実用可能な程度に維持でき、特にバラ状の発泡体として好適に用いられるものが得られた。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の発泡性樹脂組成物は加工澱粉と未加工澱粉との混合物100質量部に対し、生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂10質量部、水10〜30質量部、及び無機質フィラー0.01〜5質量部が配合された発泡性樹脂組成物である。
本発明の発泡性樹脂組成物中の澱粉混合物における未加工(生)澱粉としては、とうもろこし澱粉(コーンスターチ)、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉等から選ばれる。未加工澱粉は、通常、水分5〜10質量%程度の粉末状に精製されたものであり、これらの少なくとも1種を用いることができる。未加工澱粉中の水分は本発明の樹脂組成物中の水分量10〜30質量部に含まれるので使用する未加工澱粉中の水分量を把握しておく必要がある。前記澱粉混合物100質量部というのは、水分含有量0の場合のことを示す。
【0008】
本発明で用いられる加工澱粉というのは、上記のような各種未加工澱粉を以下のように化学的に変性した澱粉である。
具体的には、ジカルボン酸澱粉のような酸化澱粉(例えば、特開平9−188704号公報参照)、アセチル化澱粉のようなエステル化澱粉(例えば、特開平8−188601号公報参照)、カルボキシメチル化澱粉のようなエーテル化澱粉(例えば、特開2000−72801号公報参照)、澱粉をアセトアルデヒドやリン酸で処理した架橋化澱粉(例えば、特開2007−222704、特開2004-204197号公報参照)及び澱粉をグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドのような四級アンモニウム化合物や2−ジメチルアミノエチルクロライドのような第三級アミノ化合物で処理したカチオン化澱粉(例えば、特開平9−12602号公報参照)が挙げられ、これらから選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
加工澱粉中の水分も本発明の発泡性樹脂組成物中の水分量10〜30質量部に含まれるので使用する加工澱粉中の水分量を把握しておく必要がある。市販の加工澱粉中の水分量は通常、8〜10質量%程度である。
【0009】
本発明の発泡性樹脂組成物中の澱粉混合物において、未加工澱粉は90質量%以下であることが必須であり、好ましくは、80質量%以下、さらに好ましくは、70質量%以下である。すなわち、加工澱粉が10質量%以上であることが必須であり、好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上である。未加工澱粉を90質量%以下、すなわち、加工澱粉を10質量%以上とすることにより、発泡性樹脂組成物を成形して得られる発泡体の強度等を実用可能な程度に維持することができる。澱粉混合物における好ましい質量比は、得られる発泡体の強度とコストとの兼ね合いから加工澱粉/未加工澱粉=20/80〜80/20程度である。
【0010】
本発明の発泡性樹脂組成物中の生分解性樹脂は、後で詳しく述べる脂肪族ポリエステル及びポリビニルアルコールの少なくとも1種であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂はポリプロピレンおよびポリエチレンの少なくとも1種であることが好ましい。
本発明における生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂のメルトフローインデックス(MFI)は、5g/(190℃、10分)以上であることが好ましく、8g/(190℃、10分)以上であることがさらに好ましい。本発明におけるMFIは、JIS K7210に準じて荷重2.16kgで測定したものである。
【0011】
生分解性樹脂としては、公知の重縮合型の脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクトン、酢酸セルロースや微生物により製造されるポリヒドロキシブチレート・バリレート共重合体等から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
上記生分解性樹脂の中で重縮合型の脂肪族ポリエステルおよびポリビニルアルコールが好ましく用いられる。
重縮合型の脂肪族ポリエステルとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の多価アルコールとコハク酸、アジピン酸等の多価カルボン酸またはその無水物とを重縮合して製造されたものが知られている(特開平5−70566号、同5−70575号公報等参照)。
多価カルボン酸の一部としてテレフタル酸等の芳香族ポリエステルを用いて製造した脂肪族−芳香族ポリエステルを用いることもできる。
重縮合型の脂肪族ポリエステルの中でも、多価アルコールの一部としてトリメチロールプロパンやペンタエリスリトールのような3官能以上のものを用いて分子内に分岐構造を形成させた脂肪族ポリエステルを使用することにより発泡倍率を上げることができ、かつ、独立気泡を作り易いので得られた発泡樹脂シートの強度を向上させることができるので好ましい。
これら重縮合型の脂肪族ポリエステルの中で融点が100℃以上のものが好ましく用いられる。重縮合型の脂肪族ポリエステルの市販品としては、昭和高分子社製のビオノーレシリーズが著名である。
【0012】
ポリビニルアルコールとしては、水に可溶性で、かつ、熱溶融性ポリビニルアルコール(特開平10−324784号、特開2001−355175号公報等参照)が好ましく、溶融粘度および熱安定性などを考慮すると、重合度が100〜2000のものが好ましく、200〜1500のものがさらに好ましい。けん化度についても同様に、90モル%以上のものが好ましく、95モル%以上のものがより好ましい。
市販品としては、日本合成(株)製のポリビニルアルコールであるゴーセノールNM−11のような「ゴーセノールシリーズ」やクラレ(株)のポリビニルアルコールである「PVA117」のような「PVAシリーズ」が著名である。
ポリ乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸およびまたはそれらの環状二量体(ラクチド)を主成分とするモノマーを溶融状態で連続的に共重合させることにより得られるもの(特開平7−305228号公報等参照)を使用することができる。市販品としては、島津製作所製のポリ乳酸であるラクティ#9030のような「ラクティシリーズ」や三井化学(株)製のポリ乳酸であるLACEA H−400のような「LACEAシリーズ」が著名である。
【0013】
ポリカプロラクトンとしては、微量の活性水素化合物を開始剤としてカプロラクトンのような環状エステルを開環重合して製造された樹脂であり、本発明の発泡樹脂シートの機械的強度の観点から分子量50,000以上、好ましくは100,000以上の高分子量の重合体(特開平7−53686号公報等参照)を使用することが好ましい。
市販品としては、ダイセル化学工業(株)製のポリカプロラクトンであるセルグリーンPH7のような「セルグリーンシリーズ」やユニオンカーバイド(株)のポリカプロラクトンであるである「TONE Polymer P−767」のような「TONEシリーズ」が著名である。
酢酸セルロースとしては、本発明の発泡樹脂シートの機械的強度の観点から平均酢化度53〜57質量%、粘度平均重合度200〜600のものなどを使用することができる(特開平9−77801号公報等参照)。
ポリヒドロキシブチレート・バリレート共重合体としては、例えば、脂肪族カルボン酸のような炭素源上で、Alcaligenes菌株を培養して製造された共重合体(特開平9−132701号公報等参照)等を用いることができる。
【0014】
これらの生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂の融点または軟化点は100℃以下であること、あるいは水に可溶性の樹脂であることが好ましい。
生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂の融点または軟化点は100℃以下であることあるいは水に可溶性の樹脂とすることにより、澱粉や他の成分を含む発泡性樹脂組成物の低温での加工を可能にすることができ、とくに、あらかじめ、水分を含んだペレットを製造した後、単軸、あるいは二軸の押出機により発泡させるときに、有用となる。
【0015】
本発明の発泡性樹脂組成物は、前記澱粉混合物100質量部に対し、生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂を10質量部以下、好ましくは0.5〜8質量部、さらに好ましくは1〜7質量部含む組成物である。本発明において、この10質量部以下とはゼロ、即ち、生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂が存在しない場合を含む。本発明の発泡性樹脂組成物は、澱粉として、加工澱粉と未加工澱粉からなる澱粉混合物を用いること、さらに無機質フィラーを含ませることで生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂を大幅に減らすことを可能としたものである。
生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂の配合量10質量部以下とすることにより、発泡体に加工した場合に要求される特性を保持しながら、カーボンニュートラルの状態に近づけることができ、かつ、コストが上昇するのを防止することができる。
【0016】
本発明の発泡性樹脂組成物中に配合される無機質フィラーとしては、酸化チタン、タルク(ケイ酸マグネシウム)、炭酸カルシウム、卵殻、シリカ等が挙げられる。
これらの無機質フィラーは必要に応じてシランカップリング剤などで表面処理されていてもよい。無機質フィラーは発泡体の気泡を微細化、均質化して発泡体の強度を向上させる効果を示す。無機質フィラーの粒子径は、一般の樹脂組成物に使用されるものであれば特に限定されない。
無機質フィラーの配合量は前記澱粉混合物100質量部に対して0.01〜5質量部、好ましくは0.02〜3質量部である。無機質フィラーの配合量を0.01質量部以上とすることにより、上記効果が示され、5質量部以下とすることにより、発泡体の見かけの比重が増大するのを防止する。
【0017】
本発明の発泡性樹脂組成物は、上記成分以外に澱粉混合物100質量部に対して水を10〜30質量部を配合する必要がある。水の配合量は好ましくは15〜25質量部程度である。この水が加熱下で発泡剤としての役割を果たす。
水を10質量部以上配合することにより、適度な発泡倍率とすることができ、30質量部以下とすることにより、気泡が崩壊して発泡倍率が上がらず所望の発泡体が得られなくなることを防止する。前記したように、水以外の前記成分が水を含む場合はその水の量も考慮されねばならない。水以外の前記成分が水を含む場合はその水の量も配合量として考慮されねばならない。
なお、水は、澱粉混合物等を後で述べるヘンシェルミキサー等で混合した後、押出機で混練する際に水を押出機中に注入してもよい。
【0018】
また、本発明の発泡性樹脂組成物には、必要に応じて、着色剤、忌避材、架橋材、防かび剤、抗菌剤、界面活性剤、ポリエチレングリコール、グリセリン、吸水性ポリマー、難燃剤、芳香剤、耐候剤等を配合してもよい。
【0019】
本発明における澱粉混合物と、生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂と、無機質フィラーと、水との混合方法は特に限定されない。
通常、澱粉混合物と、生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂と、無機質フィラーと、水とをヘンシェルミキサー等で予め混合した後、押出機により加熱、加圧溶融して所望の形状のダイスより発泡させながら押出し、直接に発泡体を得、切断してバラ状の発泡体とすることができる。また、澱粉混合物と、生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂と、無機質フィラーと、水とをヘンシェルミキサー等で混合した後、押出機により発泡しない条件で加熱、加圧溶融し、ダイスよりストランドを得、切断してペレット化する。このペレットを例えば、別の場所で押出機に投入して、高温で加熱、加圧溶融して所望の形状のダイスより押出して発泡体を得ることもできる。さらに、澱粉混合物と、生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂と、無機質フィラーとをヘンシェルミキサー等で混合した後、押出機で混練する際に水を押出機中に注入して、所望の形状のダイスより発泡させながら押出し、発泡体を得ることもできる。したがって、本発明の発泡性樹脂組成物には、水を予め添加して組成物としたものの他、押出機で混練中に水を添加するものも含まれる。さらに、水以外の成分を配合したペレットを得、これに水を含浸させ、これを発泡させて発泡ペレットとしたり、あるいは水を含むが発泡しない条件で得たペレットや水を後から含浸したペレットから金型を用いて種々の発泡成形体とすることができる。したがって、本発明の発泡性樹脂組成物には、このように水をペレットに後から含浸したものも含まれる。本発明の発泡性樹脂組成物は、発泡体とすることが可能であるが、中でもバラ状の発泡体とすることで緩衝材として特に好適に用いることができる。
【0020】
本発明の発泡体をバラ状緩衝材として用いる場合、その形状・大きさは特に限定されるものではないが、形状的には通常、断面が円形、楕円形、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形、星型等の各種形状の棒状物、さらにそれらのL形状物、U形状物、中抜き形状物等を挙げることができる。大きさは業界公知のものが通常用いられるが、緩衝性能の点で堆積層の厚さが10mm以上のものが好ましい。緩衝材は異なる形状の混合物でもかまわない。緩衝材はバラ状の緩衝材あるいは連結状態の緩衝材として生産される。連結状態の緩衝材には、必要に応じて切離し易くなるような、例えばミシン目加工等の処理を施すことができる。さらには、上記バラ状緩衝材の数個〜十数個を小袋に小分けした集合体として用いても良い。
【0021】
得られたバラ状緩衝材及び連結状態のバラ状緩衝材には、強度アップや繊維脱落防止のために、噴霧、含浸、塗工等の手段で接着剤を含有せしめることができる。同接着剤には、例えば、澱粉、加工澱粉、植物ガム、ゼラチン、カゼイン、PVA、CMC、ヒドロキシエチルセルロース等、当業界公知のものを挙げることができる。また、接着剤の他に必要に応じて、耐水化剤、撥水剤、染料、顔料、抗菌剤、難燃剤、殺鼠剤、防虫剤、脱酸素剤、電磁シールド材、帯電防止剤、防錆剤、芳香剤、消臭剤等を同様の手段によって含有せしめることができる。
また、得られたバラ状緩衝材及び連結状態のバラ状緩衝材には、繊維脱落防止や強度アップのために、表面にフィルムあるいは紙を貼り合わせることができる。同フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸、アセチルセルロース、ポリビニルアルコール、澱粉等が挙げられる。中でも、廃棄が容易な生分解性あるいは水溶性のものが好ましい。
【実施例】
【0022】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた原料は以下の通りである。
〔加工澱粉〕
カチオン化澱粉:王子コーンスターチ社製、エースK100、水分含有量10質量%
酸化澱粉:王子コーンスターチ社製、エースA、水分含有量9質量%
エステル化澱粉:王子コーンスターチ社製、エースP130、水分含有量9.5質量%
アセチル化澱粉:王子コーンスターチ社製、エースOSA1100、水分含有量9質量%
〔未加工澱粉〕
生のコーンスターチ:王子コーンスターチ社製のコーンスターチの未加工澱粉、水分含有量約8.5質量%
〔生分解性樹脂〕
脂肪族ポリエステル〔昭和高分子株式会社製、商品名ビオノーレ#1010、MFI10g/(190℃、10分)〕
ポリビニルアルコール:日本合成化学株式会社製、ゴーゼノールNM−11
〔ポリオレフィン樹脂〕
ポリプロピレン:サンアロマー株式会社製、PM600A、MFI7.5g/(190℃、10分)
〔無機質フィラー〕
タルク:レーザー法で測定した平均粒径約10μm
【0023】
ヘンシェルミキサーを用いて、これらの原料を表1に示す割合で混合し、その混合物を同方向二軸押出機により発泡させながら押出して発泡体を得た。このときのシリンダー温度は190℃である。得られた発泡体を切断して円柱状の発泡成形体を得た。表中の水の量は、澱粉に含まれる水分と添加水の合計である。
【0024】
〔実施例1〕
加工澱粉として前記カチオン化澱粉60質量部、未加工澱粉として前記生コーンスターチ40質量部、生分解性樹脂として前記脂肪族ポリエステル7質量部、無機質フィラーとして前記タルク1質量部および水15質量部(新たに配合した水4.6質量部)をヘンシェルミキサーで混合した後、1.5mmφのノズルを備えた同方向2軸押出機(スクリュー径:50mmφ)に投入(出口圧力:80kg/cm2)し、シリンダー温度190℃の温度に加熱して発泡させながら押出し、棒状の「発泡体」を製造した。その後、この棒状の発泡体を切断して長さ約45mm、直径約25mmφの円柱状の発泡体(バラ状の緩衝材)を製造した。
【0025】
〔実施例2〕
加工澱粉として前記カチオン化澱粉30質量部、未加工澱粉として前記生コーンスターチ70質量部、生分解性樹脂として前記脂肪族ポリエステル5質量部、無機質フィラーとして前記タルク1.5質量部および水15質量部をヘンシェルミキサーで混合した後、実施例1と同じ2軸押出機に投入(出口圧力:80kg/cm2)し、シリンダー温度190℃の温度に加熱して発泡させながら押出し、棒状の「発泡体」を製造した。その後、この発泡体を切断して実施例1とほぼ同じサイズの円柱状の発泡体を製造した。
【0026】
〔実施例3〕
加工澱粉として前記エステル化澱粉60質量部、未加工澱粉として前記生コーンスターチ40質量部、生分解性樹脂として前記脂肪族ポリエステル5質量部、無機質フィラーとして前記タルク0.8質量部および水15質量部をヘンシェルミキサーで混合した後、実施例1と同じ2軸押出機に投入(出口圧力:80kg/cm2)し、シリンダー温度190℃の温度に加熱して発泡させながら押出し、棒状の「発泡体」を製造した。その後、この発泡体を切断して実施例1とほぼ同じサイズの円柱状の発泡体を製造した。
【0027】
〔実施例4〕
加工澱粉として前記アセチル化澱粉60質量部、未加工澱粉として前記生コーンスターチ70質量部、生分解性樹脂として前記脂肪族ポリエステル7質量部、無機質フィラーとしてタルク1.2質量部および水15質量部をヘンシェルミキサーで混合した後、実施例1と同じ2軸押出機に投入(出口圧力:80kg/cm2)し、シリンダー温度190℃の温度に加熱して発泡させながら押出し、棒状の「発泡体」を製造した。その後、この発泡体を切断して実施例1とほぼ同じサイズの円柱状の発泡体を製造した。
【0028】
〔比較例1〕
未加工澱粉として前記生コーンスターチ100質量部、生分解性樹脂として前記脂肪族ポリエステル7質量部、無機質フィラーとしてタルク1.2質量部および水15質量部をヘンシェルミキサーで混合した後、実施例1と同じ2軸押出機に投入(出口圧力:80kg/cm2)し、シリンダー温度190℃の温度に加熱して発泡させながら押出し、棒状の「発泡体」を製造した。その後、この発泡体を切断して実施例1とほぼ同じサイズの円柱状の発泡体を製造した。
【0029】
〔実施例5〕
加工澱粉として前記カチオン化澱粉60質量部、未加工澱粉として前記生コーンスターチ40質量部、生分解性樹脂として前記ポリビニルアルコール5質量部、無機質フィラーとして前記タルク1.2質量部および水15質量部をヘンシェルミキサーで混合した後、実施例1と同じ2軸押出機(スクリュー径:50mmφ)に投入(出口圧力:80kg/cm2)し、シリンダー温度190℃の温度に加熱して発泡させながら押出し、棒状の「発泡体」を製造した。その後、この発泡体を切断して実施例1とほぼ同じサイズの円柱状の発泡体を製造した。
【0030】
〔実施例6〕
加工澱粉として前記カチオン化澱粉60質量部、未加工澱粉として前記生コーンスターチ40質量部、ポリオレフィン樹脂として前記ポリプロピレン7質量部、無機質フィラーとして前記タルク1.5質量部および水15質量部をヘンシェルミキサーで混合した後、実施例1と同じ2軸押出機(スクリュー径:50mmφ)に投入(出口圧力:80kg/cm2)し、シリンダー温度190℃の温度に加熱して発泡させながら押出し、棒状の「発泡体」を製造した。その後、この発泡体を切断して実施例1とほぼ同じサイズの円柱状の発泡体を製造した。
【0031】
上記実施例1〜6および比較例1における配合組成および得られた評価結果をまとめて表1に示す。なお、表1中の水の量は、澱粉等に含まれる水分と添加した水の合計である(すなわち、水以外の成分は水分量0としての質量部を示す)。
【0032】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の発泡性樹脂組成物は、大部分が生分解性なので環境問題に配慮した製品とすることができる。また、本発明の発泡性樹脂組成物は、澱粉混合物が非常に多いのでコストが低く、緩衝材、包装材、断熱材等に好適である。
中でも、コストの低さがシビアに要求されるバラ状緩衝材として用いるのに好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10質量%以上の加工澱粉と90質量%以下の未加工澱粉との混合物100質量部に対し、生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂10質量部以下、水10〜30質量部及び無機質フィラー0.01〜5質量部を含む発泡性樹脂組成物。
【請求項2】
加工澱粉を25質量%以上含む請求項1に記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項3】
生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂が、0.5〜8質量部配合されてなる請求項1または2に記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項4】
生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂が1〜7質量部配合されている請求項1又は2に記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項5】
生分解性樹脂が、脂肪族ポリエステル及びポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか一項に記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項6】
生分解性樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂のMFIが、5g/(190℃、10分)以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項7】
加工澱粉が、酸化澱粉、エステル化澱粉、アセチル化澱粉及びカチオン化澱粉から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか一項に記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の発泡性樹脂組成物を発泡させた発泡体。
【請求項9】
発泡体が、バラ状緩衝材である請求項8に記載の発泡体。

【公開番号】特開2010−260923(P2010−260923A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111486(P2009−111486)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】