説明

発泡性粒子状スチレンポリマー用の被覆配合物

発泡性粒子状スチレンポリマー用の被覆配合物であって、
(A)10〜90質量%の、融点が60〜65℃の範囲にあるトリステアリルエステルと
(B)10〜90質量%の、融点が70〜95℃の範囲にあるヒドロキシ−C16−C18オレイン酸のトリグリセリドからなるもの、および
上記被覆組成配合物からなる少なくとも一種の被覆を有する発泡性粒子状スチレンポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性粒子状スチレンポリマー用の被覆配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性ポリスチレン(EPS)を問題なく輸送するために、また予備成形された粒子状ポリスチレン発泡体の静電気帯電を抑えるために、帯電防止剤が、通常粒子状EPSに塗布される。帯電防止性が不十分であると、しばしば被覆組成物が粒子状材料の表面からそぎ落とされたり、洗い流されたりする。また、帯電防止剤で被覆すると粒子状材料の粘結や流動性低下を引起すことがある。
【0003】
EP−A470455には、流動性に優れることを特徴とする、4級アンモニウム塩と微粒子シリカからなる被膜を有するビーズ状帯電防止発泡性スチレンポリマーが記載されている。
【0004】
DE19541725C1には、グリセロールトリステアレートとステアリン酸亜鉛とグリセロールモノステアレートに加えて、被膜質量に対して5〜50質量%の疎水性ケイ酸塩を含む被膜が施された低吸水性の発泡性スチレンビーズポリマーが記載されている。
【0005】
DE19530548A1には、疎水性ケイ酸塩系の粘結防止剤と、被膜質量に対して10〜90質量%のヤシ油またはパラフィン油とを含む被覆が施された低吸水性の発泡性スチレンビーズポリマーが記載されている。
【0006】
GB1,581,237には、特に、変形性と予備成形粒子状EPSの加熱後の成形発泡体の品質を改善するための、キャスターワックス(硬化ヒマシ油、HC)の発泡性ポリスチレン用の被覆組成物としての利用が記載されている。
【0007】
一般に、スラブ製造工程または発泡体製造工程において極めて長い成形品取出時間が許される、特に長い減圧時間が許される場合にのみ、上記の被覆組成配合物により、好ましい機械特性が、特に曲げ強度と圧縮強度が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の目的は、上記の欠点を排除すると共に、発泡性粒子状スチレンポリマーに使用可能で、予備成形プロセスにおいて粒子状材料の粘結を引起しにくく、また少量の投入量で予備成形粒子状材料が高速に加工可能となり、優れた機械特性を持つ成形発泡体を与える被覆組成配合物を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この結果、発泡性粒子状スチレンポリマー用の被覆組成配合物が見出され、この配合物は、
(A)10〜90質量%の、融点が60〜65℃の範囲にあるトリステアリルエステルと、
(B)10〜90質量%の、融点が70〜95℃の範囲にあるヒドロキシ−C16−C18オレイン酸トリグリセリドとを含んでいる。
【0010】
この被覆剤は、さらに帯電防止剤及び/又は被覆助剤を含んでいてもよく、あるいは他の被覆組成物を用いる被覆に応用してもよい。
【0011】
ある好ましい発泡性粒子状スチレンポリマー用の被覆組成物配合物は、実質的に、
(A)20〜80質量%の、融点が60〜65℃の範囲にあるトリステアリルエステルと、
(B)15〜60質量%、特に20〜45質量%の10〜90質量%の、融点が70〜95℃の範囲にあるヒドロキシ−C16−C18オレイン酸トリグリセリドと、
(C)5〜30質量%の、親水性または疎水性のケイ酸塩またはステアリン酸亜鉛、
(D)0〜40質量%の、特に10〜50質量%のC16−C18脂肪酸のグリセロールモノエステルと、
(E)0〜10質量%の4級アンモニウム塩、スルホニウム塩またはエチレンビスステアリルアミドとからなる。なお、これらの成分(A)〜(E)の合計は100質量%である。
【0012】
成分(A)と(B)は、通常少量の不純物を含む天然物であり、特に他の酸のモノ−、ジ−及びトリグリセリドを含んでいる場合がある。
【0013】
この被覆組成配合物は、グリセロールトリステアレート(GTS)またはクエン酸トリステアリル(CTS)をトリステアリルエステル(A)として含むことが好ましい。
【0014】
モノヒドロキシ−C16−C18アルカン酸のトリグリセリド、特に硬化ヒマシ油(HC、キャスターワックス)のトリグリセリドが、ヒドロキシ−C16−C18オレイン酸(B)のトリグリセリドとして用いられることが好ましい。
【0015】
グリセロールモノステアレート(GMS)が、C16−C18脂肪酸(D)のグリセロールモノエステルとして用いられることが好ましい。
【0016】
本発明は、さらに、上述の被覆組成配合物からなる少なくとも一層の被覆(coating)を持つ発泡性粒子状スチレンポリマーを提供する。
【0017】
好ましい発泡性粒子状スチレンポリマーは、
(I)発泡性スチレンポリマーに対して0.1〜2質量%の量の、グリセロールモノステアレートやグリセロールジステアレート、ステアリン酸亜鉛、4級アンモニウム塩類、スルホニウム塩類、エチレンビスアミド類からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む第一の被覆剤と、
(II)発泡性スチレンポリマーに対して0.1〜2質量%の量の、上記の本発明の被覆配合物のいずれか一つからなる第二の被覆剤とを有している。
【0018】
これらの被膜を、出発原料への塗布工程において塗布することもできる。
【0019】
この発泡性粒子状スチレンポリマーは、好ましくは発泡剤を含むスチレンポリマーからなり、その例としては、ポリスチレン(PS)、スチレン−アクリロニトリル(SAN)やスチレン−ブタジエンブロックコポリマーなどのスチレンコポリマー、及びこれらの混合物があげられる。
【0020】
発泡性粒子状スチレンポリマーとは、例えば熱風または水蒸気を用いて粒子状スチレンポリマー発泡体に形成可能な材料である。これは通常、スチレンポリマーに対して2〜10質量%、好ましくは3〜7質量%の化学発泡剤または物理発泡剤を含んでいる。
【0021】
好ましい物理発泡剤は、窒素や二酸化炭素などのガスや、炭素原子が2〜7の脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル類、またはハロゲン化炭化水素類である。イソブタン、n−ブタン、イソペンタン、n−ペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、またはこれらの混合物の使用が特に好ましい。
【0022】
この発泡性粒子状スチレンポリマーは、さらに有効量の既存の助剤を、具体的には染料や顔料、充填剤、IR吸収剤(例えばカーボンブラックやアルミニウム、グラファイト)、安定剤、難燃剤(ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD))、難燃剤シナージスト(ジクミルまたはジクミルパーオキサイド)、核剤、または潤滑剤を含んでいてもよい。
【0023】
製造工程の関数として、本発明の発泡性粒子状スチレンポリマーは、球状、ビーズ状または円柱状であってよく、その平均粒子径は、通常0.05〜5mmの範囲、特に0.3〜2.5mmの範囲であり、適当なら篩分けして別々の画分とすることもできる。
【0024】
膨張度の関数として、粒子状スチレンポリマー発泡体の平均粒子径は、1〜10mmの範囲、特に2〜6mmの範囲であり、その密度は10〜200kg/m3の範囲である。
【0025】
この発泡性粒子状スチレンポリマーは、例えば、タンク中で熱可塑性粒子状ポリマーを発泡剤で加圧含浸させ、発泡剤の存在下で懸濁重合して得ることができ、あるいはエクストルーダーまたはスタチックミキサー中で溶融含浸させ、加圧下に水中でペレット化させて得ることができる。
【0026】
粒子状スチレンポリマー発泡体は、加圧した予備発泡装置中で、例えば熱風または水蒸気を用いて発泡性粒子状スチレンポリマーを発泡成形させることで得ることができ、タンク中で粒子状のスチレンポリマーに発泡剤を加圧含浸させ、次いで減圧することで、あるいは発泡剤を含む溶融物を溶融押出し、発泡させながら成型しさらにペレット化することで得ることができる。従来の被覆と似た成形条件下では、一般に、本発明の被覆組成物で被覆された発泡性スチレンポリマーは、低嵩密度で成形可能である。単一の予備発泡で得られる嵩密度は、通常10〜20kg/m3の範囲であり、好ましくは15〜18kg/m3の範囲である。
【0027】
発泡前又は発泡後の粒子状スチレンポリマーへの被覆は、発泡成形プロセスの前または後で、例えばパドルミキサー(ロディゲ)中で本発明の被覆配合物を塗布することにより、または粒子状スチレンポリマーの表面に溶液を、例えば浸せきまたは噴霧により接触させることにより実施可能である。発泡剤を含む溶融物の押出しにより製造する場合、この被覆組成配合物を、水溶液または水懸濁液の形で水中ペレタイザの水流中に添加することができる。
【0028】
本発明の発泡性粒子状スチレンポリマーは帯電防止処理されているが、予備発泡の際に粘結することがほとんどなく、発泡の際に良好に融合して成型物を与える。予備発泡された粒子状材料を焼成して高圧縮強度で高曲げ強度の成形発泡体とすると、減圧時間を大幅に短縮することができる。したがって、従来の被覆と比較すると、成型物に所望の曲げ強度が得られるとともに、成形物の取り出し時間が短くなる。融合が効果的であるため、大きな成型物であっても、外縁部においても均一な圧縮強度と曲げ強度を示し、その表面も肉眼的に円滑である。
【0029】
実施例:
実施例1〜4:
被覆組成配合物:
ドライアイスを用いて、硬化ヒマシ油(HC、m.p.=87℃、(キャスターワックスNF、キャスケム))を粉砕し、粉末を得た。この粉砕後の硬化ヒマシ油に、ケイ酸塩(SIPERNAT FK320(R))とグリセロールモノステアレート(GMS、GMSR、ダニスコ)とグリセロールトリアセテート(GTS、Tegin BI159V、ゴールドシュミット)とを混合して、表1に示す混合比率に相当する均一な粉末を得た。
【0030】
ロディゲミキサー(2.5kg)中で、前もって帯電防止剤743(BASF)で予備被覆(150ppm、第一被覆)された発泡性ポリスチレンビーズ(スチロポール(R)F215、BASF社)の被覆を行った。被覆発泡性ポリスチレンビーズに対するこの被覆組成物(第二被覆)の量を、同様に表1に示す。
【0031】
予備成形機でこの被覆EPSビーズを予備成形し、金型中で加熱して、密度が17または24g/lであるスラブを得た。
【0032】
EN826の方法により10%圧縮率での圧縮強度を測定し、EN12039の方法Bにより曲げ強度を測定した。
【0033】
比較例C1とC2
方法は本発明の実施例1と2と同じであるが、硬化ヒマシ油に代えてグリセロールモノステアレート(GMS)を用いた。
【0034】
【表1】

【0035】
実施例5〜8:
被覆配合物:
硬化ヒマシ油(HC、m.p.=87℃、(HC粉末、ジャヤントオイルアンドデリバティブ社)に、ケイ酸塩(SIPERNAT FK320(R))とグリセロールモノステアレート(GMS、GMSR、ダニスコ)とグリセロールトリステアレート(GTS、Tegin BI159V、ゴールドシュミット)とステアリン酸亜鉛とを混合し、表2に示す混合比率に相当する均一な粉末を得た。
【0036】
ロディゲミキサー(2.5kg)中で、帯電防止剤743(BASF社)で予備被覆(150ppm)された発泡性ポリスチレンビーズ(ネオポール(R)X5300、BASF社)の被覆(coating)を施した。被覆発泡性ポリスチレンビーズに対するこの被覆組成物の量を、同様に表2に示す。
【0037】
予備成形機中でこの被覆EPSビーズを予備成形し、金型中で加熱して、密度が17g/lであるスラブを得た。
【0038】
EN826の方法により10%圧縮率での圧縮強度を測定し、EN12039の方法Bにより曲げ強度を測定した。
【0039】
比較例C3とC4:
この場合、上述の被覆を行った。ただし硬化ヒマシ油は使用しなかった。
【0040】
【表2】

【0041】
実施例9〜11:
被覆配合物:
硬化ヒマシ油(HC、m.p.=87℃、(HC粉、ジャヤントオイルアンドデリバティブ社)に、ケイ酸塩(SIPERNAT、FK320(R))とグリセロールモノステアレート(GMS、GMSR、ダニスコ)とグリセロールトリステアレート(GTS、Tegin BI159V、ゴールドシュミット)とステアリン酸亜鉛とを混合し、表3に示す混合比率に対応する均一な粉末を得た。
【0042】
ロディゲミキサー(2.5kg)中で、帯電防止剤743(BASF社)で予備被覆(150ppm、第一被覆)された発泡性ポリスチレンビーズ(スチロポール(R)P426、BASF社)の被覆を行った。被覆発泡性ポリスチレンビーズに対するこの被覆組成物の量を、同様に表3に示す。
【0043】
予備成形機でこの被覆EPSビーズを予備成形し、金型中で加熱して、密度が24g/lであるスラブを得た。
【0044】
EN826の方法により10%圧縮率での圧縮強度を測定し、EN12039の方法Bにより曲げ強度を測定した。
【0045】
比較例C3とC4:
この場合、上述の被覆を行った。ただし硬化ヒマシ油は使用しなかった。
【0046】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)10〜90質量%の、融点が60〜65℃の範囲にあるトリステアリルエステルと
(B)10〜90質量%の、融点が70〜95℃の範囲にあるヒドロキシ−C16−C18オレイン酸のトリグリセリドからなる
発泡性粒子状スチレンポリマー用の被覆組成配合物。
【請求項2】
実質的に、
(A)20〜80質量%の、融点が60〜65℃の範囲にあるトリステアリルエステルと、
(B)15〜50質量%の、融点が70〜95℃の範囲にあるヒドロキシ−C16−C18脂肪酸のトリグリセリドと、
(C)5〜30質量%の親水性または疎水性のケイ酸塩と、
(D)0〜40質量%の、C16−C18脂肪酸のグリセロールモノエステルと
(E)0〜10質量%の4級アンモニウム塩、スルホニウム塩またはエチレンビスステアリルアミドト(ただし、成分(A)〜(E)の合計が100質量%である)からなる
請求項1に記載の発泡性粒子状スチレンポリマー用の被覆組成物配合物。
【請求項3】
グリセロールトリステアレート(GTS)またはクエン酸トリステアリル(CTS)がトリステアリルエステル(A)として用いられる請求項1または2に記載の発泡性粒子状スチレンポリマー用の被覆組成物配合物。
【請求項4】
硬化ヒマシ油(HC)が、ヒドロキシ−C16−C18オレイン酸(B)のトリグリセリドとして用いられる請求項1または2に記載の発泡性粒子状スチレンポリマー用の被覆組成物配合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずか一項に記載の被覆組成配合物を有する被覆を少なくとも一つ有する発泡性粒子状スチレンポリマー。
【請求項6】
(I)発泡性スチレンポリマーに対して0.1〜2質量%の、グリセロールモノステアレート、グリセロールジステアレート、ステアリン酸亜鉛、4級アンモニウム塩、スルホニウム塩類、エチレンビスアミドから選ばれる少なくとも一種の化合物からなる第一被覆と、
(II)発泡性スチレンポリマーに対して0.1〜2質量%の、請求項1〜3のいずか一項に記載の被覆配合物を含む第二被覆と、を含む
請求項5に記載の発泡性粒子状スチレンポリマー。

【公表番号】特表2010−535882(P2010−535882A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519472(P2010−519472)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060444
【国際公開番号】WO2009/019310
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】