説明

発泡性飲料における噴きの抑制に関する方法

【課題】発泡性飲料における噴きの効果的な防止に関する方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る方法は、発泡性飲料の製造におけるホップ由来苦味料の添加条件と前記苦味料を添加した後の噴きの程度との相関関係を得ることを含む。本方法は、前記相関関係に基づいて、前記発泡性飲料の製造における前記苦味料の添加条件を決定することをさらに含むこととしてもよい。この場合、本方法は、前記決定された添加条件で前記苦味料を使用して前記発泡性飲料を製造することをさらに含むこととしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性飲料における噴きの抑制に関する方法に関し、特に、原料の一部としてホップ由来苦味料を使用する場合の噴きの抑制に関する。
【背景技術】
【0002】
ビール等の発泡性飲料においては、その容器を振っていないにもかかわらず、開栓すると当該発泡性飲料が突然過剰に泡立って当該容器から噴きこぼれる噴き(Gushing)と呼ばれる現象が起こることがある。
【0003】
そこで、従来、例えば、特許文献1には、発泡性飲料の製造において、麦汁の濁度を低減することにより、噴きの発生を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−050265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、噴きを発生させる原因は未だ十分に解明されておらず、発泡性飲料における噴きの発生を抑制することは容易ではなかった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、発泡性飲料における噴きの効果的な抑制に関する方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る方法は、発泡性飲料の製造におけるホップ由来苦味料の添加条件と前記苦味料を添加した後の噴きの程度との相関関係を得ることを含むことを特徴とする。本発明によれば、発泡性飲料における噴きの効果的な抑制に関する方法を提供することができる。
【0008】
また、前記方法は、前記相関関係に基づいて、前記発泡性飲料の製造における前記苦味料の添加条件を決定することをさらに含むこととしてもよい。この場合、前記方法は、前記決定された添加条件で前記苦味料を使用して前記発泡性飲料を製造することをさらに含むこととしてもよい。さらに、この場合、前記苦味料はイソα酸を含み、前記相関関係に基づいて、前記添加条件として、前記発泡性飲料におけるイソα酸の濃度が0.011重量%以下の範囲内の濃度になるように、前記苦味料の添加量を決定し、前記決定された添加量で前記苦味料を使用して前記発泡性飲料を製造することとしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発泡性飲料における噴きの効果的な抑制に関する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る実施例において、ホップ由来苦味料の添加量と、当該苦味料を添加した後の噴き量との相関関係を評価した結果の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る方法(以下、「本方法」という。)について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0012】
本発明の発明者は、発泡性飲料の開発を進める中で、ある方法で製造された発泡性飲料に噴きが発生することに気付き、当該噴きを発生させる原因について独自に鋭意検討を重ねた結果、意外にもホップ由来苦味料の添加条件によって当該噴きの程度が変化することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本方法は、上記知見に基づくものであり、発泡性飲料の製造におけるホップ由来苦味料の添加条件と当該苦味料を添加した後の噴きの程度との相関関係を得ることを含む。
【0014】
すなわち、本方法では、例えば、互いに異なる複数の条件でホップ由来苦味料(以下、単に「苦味料」という。)を添加して発泡性飲料を製造し、当該複数の条件の各々で当該苦味料を添加した後の噴きの程度を評価することにより、当該添加条件と当該噴きの程度との相関関係を得る。
【0015】
本方法によれば、後述するように、噴きの発生が効果的に抑制された発泡性飲料を製造するための苦味料の添加条件に関する有用な知見を得ることができる。
【0016】
本方法において、発泡性飲料は、泡立ち及び泡持ちを含む泡特性を有する飲料である。すなわち、発泡性飲料は、例えば、炭酸ガスを含有し、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性とを有する飲料である。
【0017】
発泡性飲料は、発泡性麦芽飲料であることとしてもよい。発泡性麦芽飲料は、原料の一部として麦芽及び/又は麦芽エキスを使用して製造される発泡性飲料である。麦芽としては、例えば、大麦麦芽及び/又は小麦麦芽を使用することが好ましい。大麦麦芽及び小麦麦芽は、それぞれ大麦及び小麦を発芽させることにより得られる。発泡性麦芽飲料は、原料の一部として、さらに大麦(発芽させていない大麦)及び/又は小麦(発芽させていない小麦)を使用して製造される発泡性飲料であることとしてもよい。
【0018】
なお、発泡性飲料は、麦芽及び/又は麦芽エキスを使用することなく製造される発泡性飲料であることとしてもよい。この場合、発泡性飲料は、麦芽及び/又は麦芽エキスを使用することなく、原料の一部として、大麦及び/又は小麦等の他の穀物(例えば、大麦、小麦、豆類及びその他の穀類からなる群より選択される1種以上)を使用して製造される発泡性飲料であることとしてもよい。
【0019】
発泡性飲料は、発泡性アルコール飲料であることとしてもよい。発泡性アルコール飲料は、例えば、エタノールの含有量が1体積%以上(アルコール分1度以上)の発泡性飲料である。この場合、発泡性アルコール飲料のエタノール含有量は、1体積%以上であれば特に限られないが、例えば、1〜20体積%であることとしてもよい。
【0020】
発泡性飲料は、発泡性ノンアルコール飲料であることとしてもよい。発泡性ノンアルコール飲料は、例えば、エタノールの含有量が1体積%未満の発泡性飲料である。発泡性ノンアルコール飲料のエタノール含有量は、1体積%未満であれば特に限られないが、例えば、0.00体積%以下であることとしてもよい。なお、発泡性ノンアルコール飲料が発酵工程を経ることなく製造される場合には、特に、その香味の調整が重要となる。したがって、この場合、香味の調整に寄与する苦味料の添加量と、噴きの程度との相関関係を得ることの意義が特に高くなる。
【0021】
発泡性飲料は、発泡性アルコール麦芽飲料であることとしてもよい。発泡性アルコール麦芽飲料は、原料の一部として麦芽及び/又は麦芽エキスを使用して製造される発泡性アルコール飲料である。具体的に、発泡性アルコール麦芽飲料は、例えば、麦芽及びホップを使用して製造されるビール、当該ビールに比べて少ない量(原料に対する比率)の麦芽を使用して製造される発泡酒、又は当該ビール又は発泡酒と他のアルコール飲料(例えば、蒸留酒)とを混合して得られる発泡性アルコール飲料である。
【0022】
発泡性飲料は、発泡性ノンアルコール麦芽飲料であることとしてもよい。発泡性ノンアルコール麦芽飲料は、原料の一部として麦芽及び/又は麦芽エキスを使用して製造される発泡性ノンアルコール飲料である。発泡性飲料は、麦芽及び/又は麦芽エキスを使用することなく製造される発泡性アルコール飲料又は発泡性ノンアルコール飲料であることとしてもよい。
【0023】
本方法で使用される苦味料は、ホップに由来する苦味成分を含む添加用組成物である。具体的に、苦味料としては、例えば、ホップ抽出物を使用することができる。
【0024】
ホップ抽出物は、ホップを抽出することにより得られる組成物である。ホップの抽出は、ホップを溶媒に浸漬して、当該ホップに含まれる成分を抽出することにより行われる。溶媒は、ホップ由来苦味成分を抽出できる流体であれば特に限られず、例えば、二酸化炭素(液化炭酸ガス、超臨界二酸化炭素)、水、アルコール(例えば、エタノール)及び有機溶媒(例えば、ヘキサン)からなる群より選択される1種以上とすることができる。
【0025】
具体的に、ホップ抽出物は、例えば、上記いずれかの溶媒を使用してホップの抽出を行い、次いで、得られた抽出物を加熱して異性化(例えば、α酸を異性化してイソα酸を生成)し、その後、精製することにより得られる。こうして得られるホップ抽出物は、例えば、ホップ由来苦味成分としてイソα酸を含む組成物である。苦味料がイソα酸を含む場合、当該苦味料におけるイソα酸の含有量は特に限られないが、例えば、1〜40重量%であることとしてもよい。
【0026】
また、ホップ抽出物は、例えば、ホップから抽出されたイソα酸に水素付加等の化学修飾を施すことにより得られるものであることとしてもよい。すなわち、この場合、ホップ抽出物は、例えば、Rho−イソα酸、Tetrahydroイソα酸及びHexahydoイソα酸からなる群より選択される1種以上を含む組成物である。
【0027】
ホップ抽出物は、溶媒として、例えば、グリセリン、水及びアルカリ溶液からなる群より選択される1種以上を含むこととしてもよい。ホップ抽出物としては、市販品を使用することとしてもよい。
【0028】
本方法においては、上述のとおり、苦味料の添加条件と噴きの程度との相関関係を得るために、まず、互いに異なる複数の条件で苦味料を添加して発泡性飲料を製造する。すなわち、互いに異なる条件で苦味料が添加された複数の発泡性飲料を製造する。
【0029】
苦味料の添加条件は、発泡性飲料の製造において苦味料を添加する場合の条件であれば特に限られず、例えば、苦味料の添加量、添加タイミング及び添加温度からなる群より選択される1つ以上であることとしてもよい。
【0030】
例えば、本方法においては、互いに異なる複数の添加量で苦味料を添加して発泡性飲料を製造する。すなわち、互いに異なる添加量で苦味料が添加された複数の発泡性飲料を製造する。
【0031】
苦味料の添加量は、当該苦味料を発泡性飲料に添加する目的(例えば、発泡性飲料に付与されるべき苦味の種類及び/又は程度)や、当該苦味料の組成(例えば、ホップ由来苦味成分の種類及び/又は濃度)等の製造条件に応じて適宜決定される。なお、本方法における苦味料の添加量は、最終的に製造される発泡性飲料あたりに添加される苦味料の量(発泡性飲料の製造において添加される苦味料の総量)である。
【0032】
苦味料を添加するタイミングは特に限られず、発泡性飲料の製造過程における任意のタイミングであってよい。苦味料の添加は、1回のみ行うこととしてもよいし、複数回行うこととしてもよい。互いに異なる量で苦味料が添加された複数の発泡性飲料の製造は、苦味料の添加量以外は同一の条件で行うことが好ましい。
【0033】
本方法において発泡性飲料を製造する方法は、原料の一部として苦味料を使用して発泡性飲料を製造する方法であれば特に限られない。すなわち、例えば、発泡性麦芽飲料は、原料の一部として麦芽及び/又は麦芽エキスと、苦味料とを使用して製造する。
【0034】
より具体的に、発泡性アルコール麦芽飲料は、原料の一部として、麦芽及び/又は麦芽エキスと、苦味料とを使用し、酵母によるアルコール発酵を行うことにより製造する。すなわち、発泡性アルコール麦芽飲料がビール又は発泡酒である場合には、少なくとも麦芽、ホップ及び水を使用して麦汁を調製し、当該麦汁に酵母を添加してアルコール発酵を行う製造過程において苦味料を添加する。
【0035】
苦味料を添加するタイミングは、特に限られないが、例えば、アルコール発酵前(麦汁を調製する工程)、アルコール発酵の終了前(例えば、主発酵(前発酵)の終了前)及びアルコール発酵の終了後(例えば、貯酒(後発酵)後)からなる群より選択される1つ以上のタイミングであることとしてもよい。
【0036】
ビール又は発泡酒と他のアルコール飲料(例えば、蒸留酒)とを混合して発泡性アルコール麦芽飲料を製造する場合には、例えば、当該ビール又は発泡酒に当該他のアルコール飲料を添加する前の任意のタイミングで苦味料を添加することとしてもよく、当該ビール又は発泡酒の製造後(例えば、ビール又は発泡酒の製造後であって、当該ビール又は発泡酒に他のアルコール飲料を混合する前)に苦味料を添加することとしてもよい。
【0037】
なお、発泡性アルコール飲料は、麦芽及び/又は麦芽エキスを使用することなく、原料の一部として酵母が資化可能な炭素源(液糖等の糖類)及び窒素源(タンパク質、ペプチド、アミノ酸等)と苦味料とを使用して発酵前液(発泡性アルコール麦芽飲料の製造における麦汁に相当)を調製し、当該発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行うことにより製造することとしてもよい。
【0038】
発泡性ノンアルコール麦芽飲料は、例えば、原料の一部として、麦芽及び/又は麦芽エキスと、苦味料とを使用し、アルコール発酵を行うことなく製造する。
【0039】
麦汁は、麦芽を含む原料と水とを使用して調製される。すなわち、麦汁は、麦芽と水(好ましくは湯)とを混合することにより調製される。麦汁は、糖化を行うことにより調製されることとしてもよい。この場合、麦汁は、例えば、麦芽と水(好ましくは湯)とを混合し、得られた混合液を当該麦芽に含まれる消化酵素(例えば、デンプン分解酵素、タンパク質分解酵素)が働く温度(例えば、30〜80℃)に維持することにより調製される。原料の一部としてホップを使用する場合には、例えば、糖化後の混合物にホップを添加し、煮沸することにより、麦汁を調製することとしてもよい。
【0040】
麦汁の調製は、上述した発泡性アルコール麦芽飲料の場合と同様に、発泡性ノンアルコール麦芽飲料の製造過程において行うこととしてもよい。また、発泡性ノンアルコール麦芽飲料の製造においては、麦汁の調製(いわゆる仕込み)を行うことなく、予め調製された麦汁(例えば、市販品)を使用することとしてもよい。
【0041】
麦芽エキスは、麦芽成分を含む組成物である。すなわち、麦芽エキスは、例えば、麦芽を抽出することにより得られる麦芽抽出物である。この場合、麦芽エキスは、例えば、麦芽を水又は湯で抽出することにより調製される。麦芽エキスは、麦芽を抽出し、次いで糖化を行うことにより調製されることとしてもよく、さらに濃縮して調製されることとしてもよい。麦芽エキスとしては、市販品を使用することとしてもよい。
【0042】
そして、発泡性ノンアルコール麦芽飲料は、麦汁及び/又は麦芽エキスと、苦味料と、必要に応じて他の原料(例えば、糖類、食物繊維、酸味料、色素、香料及び甘味料からなる群より選択される1種以上)とを混合することにより製造される。なお、発泡性ノンアルコール飲料は、麦芽を使用することなく、原料の一部として苦味料を使用し、アルコール発酵を行うことなく製造することとしてもよい。発泡性ノンアルコール飲料に発泡性を付与する方法は、特に限られず、例えば、炭酸水の使用、及び/又は炭酸ガスの吹き込みにより行うことができる。
【0043】
次に、本方法においては、上述したような発泡性飲料の製造において、複数の条件の各々で苦味料を添加した後の噴きの程度を評価する。噴きの程度を評価するタイミングは、苦味料の添加後であれば特に限られず、発泡性飲料の製造過程における苦味料添加後の任意のタイミングであってよい。すなわち、本方法においては、製造過程の任意のタイミングで得られる苦味料添加後の発泡性飲料の噴きの程度を評価する。
【0044】
噴きの程度を評価する方法は、発泡性飲料の噴きの程度を評価できる方法であれば特に限られず、例えば、噴きの量を評価することが好ましい。噴きの量は、苦味料が添加された発泡性飲料を所定の容器に密閉し、当該容器を所定の条件で開栓した場合において、当該容器から噴きこぼれた当該発泡性飲料の量として評価される。具体的に、噴きの量は、例えば、NILSENの方法(参考文献:「醸造物の成分」、日本醸造学会、1999年発行)又は当該方法に準じた方法により測定することができる。
【0045】
そして、本方法においては、苦味料の添加条件と噴きの程度との相関関係を得る。この相関関係は、発泡性飲料の製造における苦味料の添加条件と、当該苦味料が添加された後の噴きの程度との関係であれば特に限られない。すなわち、この相関関係は、噴きの程度の増減が苦味料の添加量の増減に連動することを示すものであれば、一次関数的な相関関係に限られない。
【0046】
具体的に、本方法においては、例えば、苦味料の添加量の増減に対する噴きの程度の増減を示す相関関係を得る。この相関関係は、例えば、苦味料の添加量が増加するにつれて、噴きの程度(例えば、噴き量)も増加する傾向を示すものとなる。
【0047】
また、本方法は、上述のようにして得られた相関関係に基づいて、発泡性飲料の製造における苦味料の添加条件を決定することをさらに含むこととしてもよい。
【0048】
この場合、本方法においては、まず、上述のように苦味料の添加条件と当該苦味料を添加した後の噴きの程度との相関関係を得るために発泡性飲料の予備的な製造を実施し、次いで、当該予備的な製造で得られた当該相関関係に基づいて、その後の発泡性飲料の製造において採用すべき好ましい添加条件を決定する。すなわち、得られた相関関係において、噴きの程度が予め定められた程度以下となる苦味料の添加条件を、好ましい添加条件として決定する。
【0049】
より具体的に、例えば、苦味料の添加量と噴きの程度との相関関係において、噴きの程度が予め定められた程度以下となる苦味料の添加量を、好ましい添加量として決定する。この場合、苦味料の添加量と噴き量との相関関係において、噴き量が予め定められた閾値以下となる苦味料の添加量を、好ましい添加量として決定することとしてもよい。
【0050】
また、例えば、発泡性飲料が適切な香味を有するような範囲内で苦味料の添加量を決定することとしてもよい。すなわち、イソα酸を含む苦味料を使用する場合には、苦味料の添加量と噴きの程度との相関関係に基づいて、発泡性飲料に対するイソα酸の添加量が0.011重量%以下の範囲内となるように、当該苦味料の添加量を決定する。決定されるイソα酸の添加量は、噴きの程度が予め定められた程度以下となる範囲であって、0.011重量%以下の範囲であれば特に限られない。なお、イソα酸の添加量の下限値は、発泡性飲料が所望の香味を有する範囲であれば特に限られないが、イソα酸の添加量は、例えば、0.0001重量%以上であることが好ましい。
【0051】
なお、決定される添加条件は、予備的な製造において実際に採用された複数の添加条件と同一であってもよいし、同一でなくてもよい。すなわち、例えば、第一の添加量の場合に噴き量が第一の量であり、当該第一の添加量より大きい第二の添加量の場合に噴き量が当該第一の量より大きい第二の量であることを示す相関関係が得られれば、当該第一の添加量を好ましい添加量として決定してもよいし、当該第一の添加量より大きく当該第二の添加量より小さい第三の添加量を好ましい添加量として決定してもよい。
【0052】
したがって、このような本方法によれば、原料の一部として苦味料を使用しつつ、噴きの発生が効果的に抑制された発泡性飲料を製造するための当該苦味料の添加条件を確実に決定することができる。
【0053】
また、本方法は、上述のようにして決定された添加条件で苦味料を使用して発泡性飲料を製造することをさらに含むこととしてもよい。
【0054】
この場合、本方法においては、まず、上述のように苦味料の添加条件と当該苦味料を添加した後の噴きの程度との相関関係を得るために発泡性飲料の予備的な製造を実施し、次いで、当該予備的な製造で得られた当該相関関係に基づいて、その後の発泡性飲料の製造において採用すべき好ましい添加条件を決定し、さらに、当該決定された好ましい添加条件で当該苦味料を使用して、実際に発泡性飲料を製造する。
【0055】
すなわち、本方法は、原料の一部として苦味料を使用して発泡性飲料を製造する方法であって、当該苦味料の添加条件と当該苦味料を添加した後の噴きの程度との相関関係を得るとともに、当該相関関係に基づいて、当該発泡性飲料の製造における当該苦味料の添加条件を決定する予備工程と、当該予備工程で決定された当該添加条件で当該苦味料を使用して当該発泡性飲料を製造する実施工程と、を含む方法である。
【0056】
より具体的に、実施工程においては、例えば、噴きの程度が予め定められた程度以下となるように決定された苦味料の添加量で、当該苦味料を使用して、発泡性飲料を製造する。この場合、実施工程においては、噴き量が予め定められた閾値以下となるように決定された苦味料の添加量で、当該苦味料を使用して、発泡性飲料を製造することとしてもよい。
【0057】
したがって、このような本方法によれば、原料の一部として苦味料を使用しつつ、噴きの発生が効果的に抑制された発泡性飲料を確実に製造することができる。
【0058】
また、上述のように、苦味料の添加量と噴きの程度との相関関係に基づいて、発泡性飲料に対するイソα酸の添加量が0.011重量%以下の範囲内となるように、当該苦味料の添加量を決定した場合には、当該決定された添加量で当該苦味料を使用して発泡性飲料を製造する。このように、噴きの程度が予め定められた程度以下となる範囲であって、イソα酸の添加量が0.011重量%以下の範囲となるように決定された添加量で苦味料を使用することにより、噴きの発生が効果的に抑制され、且つ好ましい香味を有する発泡性飲料を確実に製造することができる。
【0059】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例】
【0060】
[発泡性飲料の製造]
原料の一部として麦芽及び苦味料を使用して、発泡性ノンアルコール麦芽飲料を製造した。苦味料としては、市販のホップ抽出物を使用した。このホップ抽出物は、ホップの超臨界二酸化炭素抽出により製造された液状の組成物であり、イソα酸を約10重量%、グリセリンを約70重量%及び水を約20重量%含んでいた。
【0061】
まず、粉砕した大麦麦芽に50℃の湯を加え、得られた混合液を65℃で維持することにより、糖化を行った。糖化後の混合液から大麦麦芽の穀皮を除去し、その後、ホップを添加して煮沸を行った。煮沸後の混合液を麦汁として得た。
【0062】
次に、こうして得られた麦汁に、苦味料、糖類、酸味料、色素及び香料を添加し、さらに炭酸水で希釈した。最後に、珪藻土によるろ過を経て、エタノール含有量が0.00体積%以下である発泡性ノンアルコール麦芽飲料を得た。
【0063】
苦味料は、0重量%〜0.12重量%の範囲内の互いに異なる複数の添加量で使用し、当該複数の添加量のいずれかで当該苦味料を使用して製造された複数の発泡性ノンアルコール麦芽飲料を得た。
【0064】
[噴きの程度の評価]
得られた複数の発泡性ノンアルコール麦芽飲料の各々を容積が500mLの容器に詰め、各発泡性ノンアルコール麦芽飲料の噴き量を、NILSENの方法に準じた方法で測定した。
【0065】
図1には、苦味料の添加量と、当該苦味料を添加した後の噴き量との相関関係を評価した結果の一例を示す。図1において、横軸は苦味料の添加量(%)を示し、縦軸は各添加量における噴き量(mL)を示し、菱形印は実測値を示し、実線は近似曲線を示す。
【0066】
図1に示すように、苦味料の添加量が増加するにつれて、噴き量も増加する傾向が確認された。ここで、例えば、噴き量の閾値が20mLである場合、すなわち、噴き量を20mL以下に抑えるべきである場合、苦味料の好ましい添加量は、図1に示される相関関係に基づき、約0.11重量%と決定される。すなわち、苦味料を0.11重量%以下の添加量で使用することにより、噴きの発生が効果的に抑制された発泡性ノンアルコール麦芽飲料を製造できることが確認される。
【0067】
また、イソα酸を含む苦味料を0.11重量%添加することにより、発泡性ノンアルコール麦芽飲料に対して、当該苦味料によってイソα酸を0.011重量%添加することができる。この結果、噴きの発生が効果的に抑制され、且つ好ましい香味を有する発泡性ノンアルコール麦芽飲料を製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性飲料の製造におけるホップ由来苦味料の添加条件と前記苦味料を添加した後の噴きの程度との相関関係を得ることを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記相関関係に基づいて、前記発泡性飲料の製造における前記苦味料の添加条件を決定することをさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記決定された添加条件で前記苦味料を使用して前記発泡性飲料を製造することをさらに含む
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記苦味料はイソα酸を含み、
前記相関関係に基づいて、前記添加条件として、前記発泡性飲料に対するイソα酸の添加量が0.011重量%以下の範囲内となるように、前記苦味料の添加量を決定し、
前記決定された添加量で前記苦味料を使用して前記発泡性飲料を製造する
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。

【図1】
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