説明

発泡性飲料及びその製造方法

【課題】苦味の付与により向上した特性を有する発泡性飲料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る発泡性飲料の製造方法は、植物原料液を使用して発泡性飲料を製造する方法であって、前記発泡性飲料の苦味価が25以上となる量の苦味原料を使用して、アルコール発酵を行うことなく、アルコール含有量が1体積%未満であり、pHが4未満であり、苦味価が25以上である前記発泡性飲料を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性飲料及びその製造方法に関し、特に、発泡性飲料の特性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビールに比べてアルコール含有量が低減された発泡性飲料が提案されている。すなわち、例えば、特許文献1には、酸味が低減又は緩和された未発酵のビール風味麦芽飲料が記載されている。また、特許文献2には、甘味料、酸味料及び苦味料に加えてグルコン酸ナトリウムを含有することで、甘味、酸味及び苦味のばらつき感を抑えたノンアルコールビールテイスト飲料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−284153号公報
【特許文献2】国際公開第2011/128953号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来、ビールに比べてアルコール含有量が低減された発泡性飲料が備えるべき特性としては、キレ(飲みやすさ)が重視されていたため、当該発泡性飲料に対して、当該キレを損なう苦味の積極的な付与は行われていなかった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、苦味の積極的な付与により向上した特性を有する発泡性飲料及びその製造方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る発泡性飲料の製造方法は、植物原料液を使用して発泡性飲料を製造する方法であって、前記発泡性飲料の苦味価が25以上となる量の苦味原料を使用して、アルコール発酵を行うことなく、アルコール含有量が1体積%未満であり、pHが4未満であり、苦味価が25以上である前記発泡性飲料を製造することを特徴とする。本発明によれば、苦味の積極的な付与により向上した特性を有する発泡性飲料の製造方法を提供することができる。
【0007】
また、前記方法において、前記苦味原料は、ホップ及び/又は苦味料であることとしてもよい。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る発泡性飲料は、前記いずれかの方法により製造されたことを特徴とする。本発明によれば、苦味の積極的な付与により向上した特性を有する発泡性飲料を提供することができる。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る発泡性飲料は、植物原料を使用して製造され、アルコール含有量が1体積%未満であり、pHが4未満であり、苦味価が25以上であることを特徴とする。本発明によれば、苦味の積極的な付与により向上した特性を有する発泡性飲料を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、苦味の積極的な付与により向上した特性を有する発泡性飲料及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る実施例において、発泡性飲料の特性を評価した結果の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0013】
まず、本実施形態に係る発泡性飲料(以下、「本飲料」という。)及び本実施形態に係る発泡性飲料の製造方法(以下、「本方法」という。)の概要について説明する。本飲料は、植物原料を使用して製造され、アルコール含有量が1体積%未満であり、pHが4未満であり、苦味価が25以上である発泡性飲料である。
【0014】
発泡性飲料は、泡立ち特性及び泡持ち特性を含む泡特性を有する飲料である。すなわち、発泡性飲料は、例えば、炭酸ガスを含有する飲料であって、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性とを有する飲料である。
【0015】
苦味価は、ビール等の発泡性飲料の苦味の程度を示す指標として評価される。すなわち、発泡性飲料の苦味価の増加は、当該発泡性飲料の苦味の増強を意味する。苦味価は、発泡性飲料に含まれる苦味成分(主にイソα酸)の測定に基づき決定される。
【0016】
この苦味価は、例えば、公知の文献(文献1:AMERICAN SOCIETY OF BREWING CHEMISTS. METHODS of ANLYSIS of the ASBC (7th revised ed.), Method Beer-23A. The Society, St. Paul, MN, USA (1976)、文献2:EUROPEAN BREWERY CONVENTION. ANALYTICA-EBC (4th ed.), Method 9.6, p.E155. Brauerei-und Getranke-Rundschau, CH-8047, Zurich, Switzerland (1987))に基づく方法により算出される。
【0017】
すなわち、この苦味価は、ASBC(American Society of Brewing Chemists)公定法により測定される苦味価(いわゆるBU(Bitter Unit))である。具体的に、発泡性飲料の苦味価は、当該発泡性飲料とイソオクタンとの混合液から分離されたイソオクタン層の275nmの吸光度に基づき算出される。
【0018】
本方法は、植物原料液を使用して発泡性飲料を製造する方法であって、当該発泡性飲料の苦味価が25以上となる量の苦味原料を使用して、アルコール発酵を行うことなく、アルコール含有量が1体積%未満であり、pHが4未満であり、苦味価が25以上である当該発泡性飲料(本飲料)を製造する方法である。
【0019】
本発明の発明者らは、アルコール含有量が1体積%未満である発泡性飲料(以下、「発泡性ノンアルコール飲料」という。)の特性の向上について鋭意検討を重ねた結果、当該発泡性飲料のpHを4未満に低下させ、且つ当該発泡性飲料の苦味価を25以上に増加させるという特定の条件を採用することによって、当該特定の条件に特有の従来にない特性が引き出されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち、従来、発泡性ノンアルコール飲料の特性としては、キレが重視されていたため、当該キレを損なう苦味価の増加は避けるべきというのが常識であった。このため、従来の発泡性ノンアルコール飲料の苦味価は20以下に抑えられていた。
【0021】
これに対し、本発明の発明者らは、上記常識に反して、発泡性ノンアルコール飲料の苦味価を25以上という従来は採用されていなかったレベルまで増加させ、且つ得られた発泡性ノンアルコール飲料の特性を詳細に検討したところ、当該苦味価が25以上となることに特有の好ましい香味の一種(以下、「刺激味」という。)が顕著となり、その結果、当該発泡性ノンアルコール飲料のコクが効果的に高められることを見出した。
【0022】
次に、本飲料及び本方法の詳細について説明する。本飲料の製造に使用される植物原料液は、植物原料を使用して調製される。植物原料は、飲料の製造に使用できるものであれば特に限られないが、例えば、穀類、豆類及びいも類からなる群より選択される1種以上及び/又は当該群より選択される1種以上を発芽させたものを使用することができる。穀類としては、例えば、大麦、小麦、米類及びとうもろこしからなる群より選択される1種以上を使用することができる。
【0023】
植物原料液は、植物原料由来成分を含む溶液であれば特に限られない。植物原料液は、植物原料と水とを混合することにより調製される。すなわち、植物原料液は、例えば、植物原料を含む原料と水(好ましくは湯)とを混合し、当該植物原料に含まれる成分を抽出することにより調製される。
【0024】
本方法においては、予め調製された植物原料液を使用することとしてもよい。すなわち、本方法は、植物原料液を調製する工程を含まないこととしてもよい。この場合、予めアルコール発酵を行うことなく調製された植物原料液を使用することとしてもよい。
【0025】
また、本方法は、植物原料液を調製する工程を含むこととしてもよい。この場合、本方法においては、アルコール発酵を行うことなく植物原料液を調製する工程を含むこととなる。
【0026】
植物原料液は、例えば、麦芽由来成分を含む麦芽液を含むこととしてもよい。麦芽液は、例えば、麦芽及び/又は麦芽エキスを使用して調製される。
【0027】
麦芽としては、大麦麦芽及び/又は小麦麦芽を好ましく使用することができる。大麦麦芽及び小麦麦芽は、それぞれ大麦及び小麦を発芽させることにより得られる。麦芽を使用する場合、麦芽液は、当該麦芽と水とを混合することにより調製される。すなわち、麦芽液は、例えば、少なくとも麦芽と水(好ましくは湯)とを混合し、当該麦芽に含まれる成分を抽出することにより調製される。
【0028】
麦芽液は、糖化を行うことにより調製されることとしてもよい。この場合、麦芽液は、例えば、麦芽と水(好ましくは湯)とを混合し、得られた混合液の糖化を行うことにより調製される。糖化は、麦芽及び水を含む混合液を、当該麦芽に含まれる消化酵素(例えば、デンプン分解酵素、タンパク質分解酵素)が働く温度(例えば、30〜80℃)に維持することにより行う。
【0029】
麦芽エキスは、麦芽由来成分を含む組成物である。すなわち、麦芽エキスは、麦芽から、糖分及び窒素分等を含むエキス分を抽出することにより得られる麦芽抽出物である。この場合、麦芽エキスは、例えば、麦芽からエキス分を冷水又は湯で抽出することにより調製される。麦芽エキスは、麦芽からエキス分を抽出し、次いで糖化を行うことにより調製されることとしてもよい。麦芽エキスは、麦芽の抽出後又は糖化後に、濃縮して調製されることとしてもよい。麦芽エキスとしては、市販の麦芽エキスを使用することとしてもよい。
【0030】
麦芽エキスを使用する場合、麦芽液は、当該麦芽エキスと水とを混合することにより調製される。すなわち、麦芽液は、例えば、少なくとも麦芽エキスと水(好ましくは湯)とを混合することにより調製される。
【0031】
植物原料液は、麦芽及び麦芽エキスを使用することなく、麦芽以外の植物原料を使用して調製されることとしてもよい。麦芽以外の植物原料としては、例えば、大麦及び/又は小麦等(例えば、大麦、小麦、豆類、米類、いも類、とうもろこし及びその他の穀物からなる群より選択される1種以上)を使用することとしてもよい。
【0032】
本飲料の製造に使用される苦味原料は、発泡性飲料の苦味を増強する原料であれば特に限られないが、例えば、ホップ及び/又は苦味料を好ましく使用することができる。すなわち、苦味原料としては、ホップ及び苦味料を使用することとしてもよい。
【0033】
ホップ及び苦味料を使用する場合、例えば、植物原料及びホップを使用して調製された植物原料液と、苦味料とを使用する。また、苦味原料としては、ホップを使用することなく苦味料を使用することとしてもよく、苦味料を使用することなくホップを使用することとしてもよい。
【0034】
ホップは、発泡性飲料の苦味を増強するものであれば特に限られず、任意の1種以上を使用することができる。ホップの形態は特に限られず、保存や輸送等の目的に応じて適切に加工された任意の形態のものを使用することができる。
【0035】
すなわち、例えば、乾燥させたホップの球果を圧縮して得られるプレスホップ、乾燥させたホップの球果を粉砕して得られるホップパウダー、当該ホップパウダーをペレット状に圧縮成形して得られるホップペレットを使用することができる。
【0036】
ホップを使用して植物原料液を調製する場合には、植物原料と水とを混合して得られた混合液に当該ホップを添加し、煮沸することにより、当該植物原料液を調製することとしてもよい。
【0037】
苦味料は、発泡性飲料の苦味を増強するものであれば特に限られず、例えば、ホップに由来する苦味成分を含む添加用組成物を好ましく使用することができる。すなわち、苦味料としては、ホップ抽出物を使用することとしてもよい。ホップ抽出物は、ホップを抽出することにより得られる組成物である。
【0038】
ホップの抽出は、ホップを溶媒に浸漬して、当該ホップに含まれる成分を抽出することにより行われる。溶媒は、ホップ由来苦味成分を抽出できる流体であれば特に限られず、例えば、二酸化炭素(例えば、液化炭酸ガス、超臨界二酸化炭素)、水、アルコール(例えば、エタノール)及び有機溶媒(例えば、ヘキサン)からなる群より選択される1種以上とすることができる。
【0039】
ホップ抽出物は、例えば、上記いずれかの溶媒を使用してホップの抽出を行い、次いで、得られた抽出物を加熱して異性化(例えば、α酸を異性化してイソα酸を生成)し、その後、精製することにより得られる。こうして得られるホップ抽出物は、例えば、ホップ由来苦味成分としてイソα酸を含む組成物である。
【0040】
苦味料がイソα酸を含む場合、当該苦味料におけるイソα酸の含有量は特に限られないが、例えば、1〜40重量%であることとしてもよい。苦味料がホップ由来のイソα酸を含む場合、当該苦味料におけるイソα酸の含有量は、抽出に使用される当該ホップと溶媒との体積比率や、抽出後の濃縮又は希釈によって調整される。
【0041】
また、ホップ抽出物は、例えば、ホップから抽出されたイソα酸に水素付加等の化学修飾を施すことにより得られるものであることとしてもよい。すなわち、この場合、ホップ抽出物は、例えば、Rho−イソα酸、Tetrahydroイソα酸及びHexahydoイソα酸からなる群より選択される1種以上を含む組成物である。
【0042】
ホップ抽出物は、溶媒として、例えば、グリセリン、水及びアルカリ溶液からなる群より選択される1種以上を含むこととしてもよい。ホップ抽出物としては、市販のホップ抽出物を使用することとしてもよい。
【0043】
苦味原料の使用量は、最終的に製造される発泡性飲料(本飲料)の苦味価が25以上の所望の範囲内となるように決定される。すなわち、例えば、苦味原料を異なる複数の量の各々で使用して複数の発泡性飲料を製造し、当該各発泡性飲料の苦味価を評価し、当該苦味価が25以上の所望の範囲内である発泡性飲料の製造に使用された量を、当該苦味原料の適切な使用量として決定する。
【0044】
そして、本方法においては、アルコール発酵を行うことなく、本飲料を製造する。すなわち、本方法においては、例えば、植物原料と、苦味原料と、必要に応じて他の原料(例えば、糖類、食物繊維、色素、香料、酸味料及び甘味料からなる群より選択される1種以上)とを混合することにより本飲料を製造する。
【0045】
本飲料のpHを4未満に調節する方法は、特に限られないが、例えば、酸の添加を好ましく使用することができる。すなわち、この場合、本方法においては、最終的に製造される発泡性飲料(本飲料)のpHが4未満となる量の酸を使用する。
【0046】
酸としては、有機酸及び/又は無機酸を使用することができ、酸味料として使用されるものを使用することとしてもよい。有機酸としては、例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸からなる群より選択される1種以上を使用することができる。無機酸としては、例えば、リン酸、二酸化炭素、塩酸及び硫酸からなる群より選択される1種以上を使用することができる。酸としては、発泡性飲料の香味のバランスの観点から、乳酸を使用することが特に好ましい。
【0047】
酸の使用量は、最終的に製造される発泡性飲料(本飲料)のpHが4未満の所望の範囲内となるように決定される。すなわち、例えば、酸を異なる複数の量の各々で使用して複数の発泡性飲料を製造し、当該各発泡性飲料のpHを測定し、当該pHが4未満の所望の範囲内である発泡性飲料の製造に使用された量を、当該酸の適切な使用量として決定する。
【0048】
発泡性飲料に発泡性を付与する方法は、特に限られず、例えば、炭酸水の使用及び/又は炭酸ガスの吹き込みを好ましく使用することができる。
【0049】
本飲料は、上述のとおり、苦味価が25以上であり、アルコール含有量が1体積%未満であり、pHが4未満の発泡性飲料である。本飲料の苦味価は、25以上であれば特に限られないが、例えば、25〜35の範囲内であることが好ましく、28.5〜35の範囲内であることがより好ましく、28.5〜33.5の範囲内であることが特に好ましい。
【0050】
本飲料のアルコール含有量は、1体積%未満であれば特に限られないが、例えば、0.05体積%以下であることとしてもよく、0.00体積%であることとしてもよい。本飲料のpHは、4未満であれば特に限られないが、例えば、3.0以上、4未満の範囲内であることが好ましく、3.5以上、4未満の範囲内であることがより好ましい。
【0051】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例】
【0052】
[発泡性飲料の製造]
苦味原料としてホップ及び苦味料を使用して発泡性ノンアルコール飲料を製造した。苦味料としては、市販のホップ抽出物を使用した。このホップ抽出物は、ホップの超臨界二酸化炭素抽出により製造された液状の組成物であり、イソα酸を約10重量%、グリセリンを約70重量%及び水を約20重量%含んでいた。
【0053】
まず、粉砕した大麦麦芽に50℃の湯を加え、得られた混合液を65℃で維持することにより、糖化を行った。糖化後の混合液から大麦麦芽の穀皮を除去し、その後、ホップを添加して煮沸を行った。煮沸後の混合液を麦芽液として得た。
【0054】
次に、こうして得られた麦芽液に、所定量の苦味料、最終的に製造される発泡性ノンアルコール飲料のpHが4未満となる量の酸味料(乳酸)、及びその他の原料(糖類、色素及び香料)を添加し、さらに炭酸水で希釈した。苦味料の使用量は、麦芽液の原料に対する重量割合が0重量%〜0.15重量%の範囲内の互いに異なる6種類のいずれかとした。
【0055】
最後に、珪藻土によるろ過を経て、エタノール含有量が0.00体積%、pHが3.8であって、使用された苦味料の量が異なる、本実施例に係る6種類の発泡性ノンアルコール飲料を得た。
【0056】
一方、比較例1として、酸味料を使用しなかった以外は上述の場合と同様にして、アルコール含有量が0.00体積%、pHが5.4であって、使用された苦味料の量が異なる6種類の発泡性ノンアルコール飲料を得た。
【0057】
また、比較例2、比較例3及び比較例4として、市販されている3種類の発泡性ノンアルコール飲料も準備した。なお、比較例2の発泡性ノンアルコール飲料のpHは3.1であり、比較例3の発泡性ノンアルコール飲料のpHは3.7であり、比較例4の発泡性ノンアルコール飲料のpHは3.8であった。
【0058】
[苦味価の評価]
公知の文献(文献1:AMERICAN SOCIETY OF BREWING CHEMISTS. METHODS of ANLYSIS of the ASBC (7th revised ed.), Method Beer-23A. The Society, St. Paul, MN, USA (1976)、文献2:EUROPEAN BREWERY CONVENTION. ANALYTICA-EBC (4th ed.), Method 9.6, p.E155. Brauerei-und Getranke-Rundschau, CH-8047, Zurich, Switzerland (1987))を参考にした方法により、発泡性ノンアルコール飲料の苦味価を測定した。
【0059】
すなわち、まず、泡の損失がないようにガス抜きされ、温度が約20℃に調整された発泡性ノンアルコール飲料を準備した。次いで、この発泡性ノンアルコール飲料10mLを沈殿管に採取し、そこに6N塩酸0.5mL、吸光分析用イソオクタン(2,2,4−トリメチルペンタン)20mL及びガラス球2〜3個を順次加えた。沈殿管にキャップをして、20℃±1℃で15分間、130±5rpm(振幅2〜3cm)で振とうした。
【0060】
その後、3000rpmで3分間の遠心分離を行い、イソオクタン層を光路長が10mmの石英セルに採取した。さらに、市販の分光光度計(スリット幅2mm以下)を使用して、このイソオクタン層の275nmにおける吸光度を測定した。対照としては、純粋なイソオクタンを使用した。
【0061】
そして、次の式より発泡性ノンアルコール飲料の苦味価(BU)を算出した;BU=50×A275。なお、この式において、A275は、純粋なイソオクタンを対照として測定した275nmにおける吸光度である。
【0062】
[官能検査]
熟練したパネラー8人により、発泡性ノンアルコール飲料の官能検査を行った。官能検査においては、発泡性ノンアルコール飲料の香味、キレ及び刺激味をそれぞれ評価した。香味の評価においては、「おいしくない」に1点、「普通」に2点、「おいしい」に3点が付与された。キレ及び刺激味の評価においては、「感じない」に0点、「やや感じる」に1点、「感じる」に2点、「強く感じる」に3点が付与された。
【0063】
[結果]
図1には、実施例及び比較例1〜4のそれぞれについて、上述のようにして発泡性ノンアルコール飲料の特性を評価した結果を示す。図1において、横軸は苦味価を示し、縦軸は付与された得点の平均値(平均得点)を示し、黒塗り印は実施例の結果を示し、白抜き印は比較例1〜4の結果を示し、四角印は香味の評価結果を示し、三角印はキレの評価結果を示し、菱形印は刺激味の評価結果を示す。なお、図1の縦軸に示す平均得点は、付与された得点の合計値をパネラーの人数(8)で除することにより算出された。
【0064】
図1に示すように、本実施例に係る発泡性ノンアルコール飲料は、その苦味価が20から25に増加することによって、その刺激味が顕著に増加した。そして、本実施例に係る発泡性ノンアルコール飲料は、苦味価が25以上であることによって、適度なキレ(飲みやすさ)と、顕著な刺激味に由来するコクと、好ましい香味とをバランスよく兼ね備えるものと評価された。
【0065】
これに対し、比較例1に係る発泡性ノンアルコール飲料は、苦味価が25以上であっても、その刺激味は顕著ではなく、刺激味、キレ及び香味の全ての評価は、本実施例に係る発泡性ノンアルコール飲料に比べて低かった。この結果は、比較例1に係る発泡性ノンアルコール飲料のpHが比較的高いことによるものと考えられた。
【0066】
一方、比較例2〜4に係る市販の発泡性ノンアルコール飲料は、苦味価が14.6〜16.4の範囲であり、キレについて高い評価が得られた。しかしながら、図1に示すように、比較例2〜4に係る市販の発泡性ノンアルコール飲料の刺激味及び香味の評価結果は、苦味価が25以上である本実施例に係る発泡性ノンアルコール飲料のそれより劣るものであった。
【0067】
このように、発泡性ノンアルコール飲料のpHを4未満に低下させ、且つその苦味価を従来は採用されていなかった25以上という高いレベルまで増加させることにより、意外にも、従来は認識されていなかった刺激味が好ましい香味の一種として顕著となり、その結果、当該顕著な刺激味により高められたコクと、適度なキレと、好ましい香味とをバランスよく兼ね備えるという従来にない特性を備えた発泡性ノンアルコール飲料を実現できることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物原料液を使用して発泡性飲料を製造する方法であって、
前記発泡性飲料の苦味価が25以上となる量の苦味原料を使用して、アルコール発酵を行うことなく、アルコール含有量が1体積%未満であり、pHが4未満であり、苦味価が25以上である前記発泡性飲料を製造する
ことを特徴とする発泡性飲料の製造方法。
【請求項2】
前記苦味原料は、ホップ及び/又は苦味料である
ことを特徴とする請求項1に記載された発泡性飲料の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法により製造された
ことを特徴とする発泡性飲料。
【請求項4】
植物原料を使用して製造され、
アルコール含有量が1体積%未満であり、
pHが4未満であり、
苦味価が25以上である
ことを特徴とする発泡性飲料。

【図1】
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