説明

発泡感および液体感を有する糖衣食品

【課題】滑らかな舐め心地とかりっとした食感を有し、噛んだ瞬間発泡し、口中に広がる液体感を有する糖衣食品を提供すること。
【解決手段】中心層が酸成分および糖アルコールを含んだ錠菓であり、該中心層に対して重量で5倍以上の糖衣層を有し、該糖衣層がアルカリ成分の層、砂糖の層、ビタミンCの層が交互に重なり合った状態で多層に形成され、前記砂糖の層が結晶状態を有し、その結晶粒径が5〜15μmの範囲であることを特徴とする発泡感および液体感を有する糖衣食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖衣した食品、更に詳しくは、滑らかな舐め心地とかりっとした食感を有し、かつ口中で噛むことによって中心層の酸成分と重曹糖衣による発泡感および液体感を得られる糖衣した食品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、糖衣食品は、以下のように製造される。すなわち、まず被糖衣物である食品(以下、中心層という。)に、砂糖を主成分とし、他の糖類、澱粉などの結合剤を含む水溶液を、スプレーなどで中心層表面の全域に行き渡らせ、この後、炭酸カルシウムなどの微粉末混合物を散布して中心層相互の結着を防ぎ、次に温風を送って糖衣層を乾燥させる工程を複数回繰り返す。場合により、この後、色素を含む水溶液をスプレーし温風での乾燥を行う工程を繰り返して糖衣層を着色し、更に場合によりワックスなどで艶を出すこともある(特許文献1)。更に、中心層が比較的大きなものやいびつなものに対しては、下掛け、中掛け、上掛けの3段階の糖衣工程を経て作られるのが一般的である(特許文献2)。また、通常、前記糖衣工程に用いられる砂糖を主体とする水溶液は、20〜40℃で保たれるのが一般的である。
【0003】
また、一般的な糖衣は、中心層の被覆目的で使用されている技術であり、中心層に対して重量で2倍までの糖衣層が多い。例外として、チャイナマーブルのように、中心層の重量に対して糖衣層が数十倍という構造を有するものがある。通常、このチャイナマーブルの場合、砂糖溶液を中心層に均一に散布し、乾燥を繰り返し、この作業時間が数十日に及ぶのが一般的であり、糖衣層の砂糖結晶が不均一で、粒径が30μmを越える結晶も存在し、かつ密な構造を形成することから、硬い食感を有する。
【0004】
本件出願人は、先に、上記の硬くて歯が容易に入れられないチャイナマーブルとは全く異なる食感の糖衣菓子を提案した。すなわち、咀嚼によって砕けるほどの程よい食感を有する糖衣層で被覆された糖衣菓子の製造方法として、酸味料である有機酸層と砂糖の層を交互に重なり合う状態で多層にする方法、ビタミンC層と砂糖の層を交互に多層にし、かつ砂糖の結晶の平均粒径を5〜15μmとする方法などが提案されている。この方法を用いて、これまでに錠菓、丸剤およびキャンディを中心層として用いて上記のような製造工程を経て作製された糖衣菓子が提案されている(特許文献3、4)。
【0005】
ところで、近年、ガムやキャンディ等の菓子において、単に味の良さだけでなく、見た目のおもしろさや食感の意外性を謳った菓子が次々と提案されている。そのような菓子の一つとして、口中で発泡してあたかも炭酸飲料を飲むときのような刺激感を与える発泡性菓子が広く出回っている。
【0006】
上記発泡性菓子としては、例えば有機酸と炭酸水素ナトリウムを含有する打錠菓子(ラムネ菓子)や、同様の成分を含有するチューインガムが挙げられる。これらの菓子は、口中で噛むと、唾液の水分によって上記有機酸と炭酸水素ナトリウムが反応し、二酸化炭素を発生して発泡感が得られるようになっている。
【0007】
酸と炭酸塩が共存する下では、特に対策を講じなかった場合、大気中の水分により反応が進行し、さらに、生成した水分によって反応が連鎖的に進行し、当該組成物の外観、崩壊性、溶出性等の品質に多大な影響を及ぼすことが懸念される。
【0008】
そこで、発泡性を持続させるために、炭酸水素ナトリウムと有機酸をそれぞれセルロース誘導体等の被覆剤でコーティングすることによって、互いに直接接触しないようにする方法が提案されている(特許文献5)。また、油脂類および/またはワックス類を溶融し、これに炭酸水素ナトリウムまたは有機酸の粉末を均一分散させて組成物中に含有させることによって、両者の反応を抑制する方法も提案されている(特許文献6)。さらに、中性水溶性高分子物質でコーティングした炭酸塩配合成分と、酸性基を有する高分子物質でコーティングしたアスコルビン酸配合成分を組成物中に含有させる方法(特許文献7、8)も提案されている。これらの方法によれば、組成物中に含有される炭酸水素ナトリウムと有機酸とが、それぞれ被覆層にコーティングされているか、油脂類等に保護された状態になっているため、仮に水分が侵入しても両者の間で反応が進行しにくく、喫食時の咀嚼によって比較的良好な発泡感が得られるという利点を有する。しかしながら、これらの方法は、従来の製造工程とは別に、炭酸水素ナトリウムと有機酸を処理するために余分な工程を設ける必要があり、製造コストが高くなるだけでなく、均一にコーティングすることが難しく、この方法によっても、炭酸水素ナトリウムと有機酸とを水分から完全に遮断することができず、反応が徐々に進行して喫食時の発泡感が弱くなるという問題がある。また、セルロース誘導体等の被覆剤や、油脂類等が余分に配合されることになるため、滑らかな舐め心地でなくなるだけでなく、かりっとした食感や噛んだ瞬間に口中に広がる液体感および爽快感等の風味は得られない。
【0009】
また、安定化剤としてメタリン酸ナトリウムを含有させるという方法(特許文献9)、ジメチルポリシロキサンを添加する方法(特許文献10)、天然蛋白質を添加する方法(特開昭49−39582号公報)、無水炭酸塩を使用する方法(特許文献11)、炭酸カリウムを添加する方法(特許文献12)などが提案されている。しかしながら、これらの方法も溶解が遅延するため、口中で噛んだ時に広がる爽快感が劣るだけでなく、不溶性物質が生じるため、液体感を感じることが出来ず、さらに保存中に炭酸ガスの発生により容器の変形や破損が起こるなどの問題があり、これを防止するためには乾燥剤の使用等、包装技術を工夫する対策が不可欠であった。
【0010】
さらに、酸成分を含有するチューインガムからなる核部の外周面に、酸成分およびアルカリ成分を含有しない第1の糖衣層と、アルカリ成分を含有する第2の糖衣層とが、この順で形成されており、上記第2の糖衣層として、少なくとも一層のソフト糖衣層が設けられている発泡性ガムが提案されている(特許文献13)。この方法については、被覆剤など余分なものは配合されていないので、風味や発泡感の点では良好であると考えられるが、センター物がチューインガムであるため後残りし、瞬間的に口の中に広がる液体感やそれに伴う爽快感などを感じることはできない。
【0011】
一方、本件出願人は、砂糖のおいしさを損なわず、滑らかな舐め心地と、かりっとした食感を有し、かつ程良い酸味を感じられる糖衣層と、クランチ性を有する中心層からなる糖衣した食品を提供している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−252871号公報
【特許文献2】特開平9−313109号公報
【特許文献3】特許第3765419号公報
【特許文献4】特許第3671965号公報
【特許文献5】特開昭50−123836号公報
【特許文献6】特開平6−269249号公報
【特許文献7】特開昭61−207322公報
【特許文献8】特公平2−5726号公報
【特許文献9】特開平7−277959号公報
【特許文献10】特開昭57−56434号公報
【特許文献11】特開昭55−7246号公報
【特許文献12】特開平3−120212号公報
【特許文献13】特開2011−55810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、滑らかな舐め心地とかりっとした食感を有し、噛んだ瞬間発泡し、かつ口中に広がる液体感を有する糖衣食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決するために、前記特許文献14で提案した滑らかな舐め心地とかりっとした食感を有する糖衣食品に着目し、これに、従来の炭酸菓子のように、錠菓に酸成分とアルカリ成分の両方を含有し、糖衣を施したところ、糖衣工程中に糖衣液からの水分によって酸成分とアルカリ性分との反応が進行してしまい、発泡感が低下し、液体感が損なわれ、さらに糖衣層が割れるという不都合が見出された。
そこで、本発明者らは、糖衣食品の多層構造をもってすれば、酸成分とアルカリ成分を層で隔てるという工夫をすることによって、前記のような不都合を回避した発泡成分を含有する糖衣食品となる可能性があると考え、鋭意研究を重ねた結果、前記糖衣食品の糖衣構造を特定の多層構造に変えることによって、炭酸感を有する菓子の発泡感や液体感の低下、崩壊性等の不都合を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕中心層が酸成分および糖アルコールを含んだ錠菓であり、
該中心層に対して重量で5倍以上の糖衣層を有し、
該糖衣層がアルカリ成分の層、砂糖の層、ビタミンCの層が交互に重なり合った状態で多層に形成され、
前記砂糖の層が結晶状態を有し、その結晶粒径が5〜15μmの範囲であること
を特徴とする発泡感および液体感を有する糖衣食品、
〔2〕中心層の周囲に、内側から第1〜第3の層が順に形成されており、第1層および第3層が砂糖の層であり、第2層が中心層の酸味料に対して1.4〜2.4倍のアルカリ成分を含有する層からなり、第1の層が中心層に対して重量で2.0〜2.7倍、第2の層が2.5〜3.0倍の糖衣率で形成され、以降の糖衣は砂糖の層、ビタミンCの層が交互に重なり合った状態で多層に形成される、前記〔1〕に記載の糖衣した食品、
〔3〕前記中心層の構成成分である酸成分の含有量が中心層全体の10〜30重量%である前記〔1〕または〔2〕に記載の糖衣した食品、
〔4〕前記中心層の構成成分である糖アルコールの含有量が中心層全体の58〜75重量%である前記〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の糖衣した食品
にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の糖衣食品は、滑らかな舐め心地とかりっとした食感を有し、噛むことで容易に崩壊し、噛んだ瞬間に発泡し、かつ口中に広がる液体感を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明の発泡感および液体感を有する糖衣食品(以下、本発明の糖衣食品という)は、
中心層が酸成分および糖アルコールを含んだ錠菓であり、
該中心層に対して重量で5倍以上の糖衣層を有し、
該糖衣層がアルカリ成分の層、砂糖の層、ビタミンCの層が交互に重なり合った状態で多層に形成され、
前記砂糖の層が結晶状態を有し、その結晶粒径が5〜15μmの範囲であること
を特徴とする。
【0019】
前記中心層で使用する酸成分としては、後述する糖衣層に含有されるアルカリ成分と口中で接触することによって反応し、二酸化炭素を発生して発泡感を得るための成分であり、具体的には、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸等の有機酸が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせても良く、風味の点で酒石酸が最も好適である。
酸成分の含有量は中心層全体の10〜30重量%とすることが好ましく、20〜25重量%とすることがより好ましい。酸成分の含有量が30重量%を超えると酸味が強すぎるため風味の点で劣るだけでなく、他のベースとなる配合成分率が低くなるため、食感も目的とする崩壊性のあるものとは異なる。また、酸成分の含有量が10重量%未満になると、発泡感および液体感が低下する。
【0020】
前記中心層の主成分である糖アルコールとしては、食品に添加できるものであればいずれも使用できるが、中心層の速溶性に優れ、液体感を得やすい観点から、溶解熱が吸熱で、かつ水に対する溶解度が大きなものを使用することが好ましい。このような糖アルコールの中でも、水に対する溶解熱が吸熱つまり涼味を有するキシリトール、ソルビトール、エリスリトールおよびマルチトールが好ましい。
キシリトールは、D−キシロースの還元により得られるペントースで、白色の結晶で砂糖と同等の甘みを有する。キシリトールは、天然にも、例えば、プラム、イチゴ、カリフラワーなど、多くの果物や野菜に含まれる。その水への溶解熱は34.8cal/gである。
ソルビトールは、甘味度が50、水への溶解熱が28.0cal/gのヘキソースであり、初めて抽出されたバラ科ナナカマド(Sorbus acuparia)に由来し、多くの果実、海藻類に含まれる。
エリスリトールは、水への溶解熱が43.0cal/gのテトロースである。
マルチトールは、麦芽の主成分であるDマルトースの触媒を用いた水素添加によって得られる2糖アルコールで、水への溶解熱は16.3cal/gである。
また、これらの糖アルコールの37℃における水100mlに対する溶解度は、キシリトールが256g、エリスリトール90g、ソルビトールが334g、マルチトールが201gである。
これら糖アルコールは、何れか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。更に、これらの中でソルビトールとキシリトールが最も清涼感があり、特に、キシリトール100%が一番砂糖に近い甘さで良好である。
また、糖アルコールの一種であるマンニトールも、イチジク、オリーブ等に含まれている、水への溶解熱が30.0cal/gのヘキソースであり、ソルビトールより溶解熱は高いものの、溶解度が32gと低い為、清涼感に劣る傾向にあるが本発明では糖アルコールとして使用することができる。
【0021】
前記糖アルコールの含有量は、優れた速溶性と液体感を得やすい観点から、中心層全体の58〜75重量%とすることが好ましく、60〜68重量%とすることがより好ましい。糖アルコールの含有量が75重量%を超えると、他の配合成分である酸成分の含有率が低くなるため、中心層が酸味などの風味を奏せず、かりっとした食感も目的とするものとは異なるものとなる。また、糖アルコールの含有量が58重量%未満になると、冷涼感および液体感が低下する。
【0022】
また、本発明の糖衣食品で使用する中心層の形態は、錠菓である。中心層がハードキャンディやグミキャンディ、チューインガム等としても、多少の発泡感を得ることはできるが、中心層が錠菓であれば、噛んだ瞬間に中心層が崩壊して口中に勢いよく広がる発泡感と、崩壊した錠菓が口中で速溶することにより生じる液体感も同時に味わうことができるためである。
前記錠菓とは、前記糖アルコールおよび酸成分、必要であれば、賦形剤、増粘剤、潤沢剤、香料などを少量混合し、打錠機などで圧縮成形したものであればよい。
【0023】
本発明の糖衣食品では、前記中心層に対して、その外周に重量で5倍以上の糖衣層を有する。
糖衣層の含有量の上限値としては、特に限定はない。
【0024】
前記糖衣層には、アルカリ成分が含有される。このアルカリ成分は、前記中心層に含まれる酸成分と反応し、発泡感を奏するためのものである。
前記アルカリ成分としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらは単独で用いも2種以上を組み合わせても良いが、風味の点で炭酸水素ナトリウムが最も好適である。
【0025】
前記糖衣層のアルカリ成分は、糖衣食品中で中心層の酸成分と接触していないことが重要である。そのため、本発明では、糖衣層をアルカリ成分の層、砂糖の層、ビタミンCの層の3種類の層で構成し、これらの各層が交互に重なり合った状態の多層を形成している。糖衣層をこのような多層構造とすることで、アルカリ成分と酸成分との直接的な接触を妨げながら、糖衣層全体が滑らかな舐め心地とかりっとした食感を奏するものとなる。
【0026】
中でも、中心層を直接覆う糖衣層の第1層として砂糖の層、第2層としてアルカリ成分の層を設け、第3層以降は、砂糖の層、ビタミンCの層を交互に重なり合った状態で多層に形成されることで、アルカリ成分の層が中心層との接触をより確実に防ぐことができる。
前記第1層である砂糖の層は、中心層に対して重量で2.0〜2.7倍、第2層であるアルカリ成分の層は、中心層に対して重量で2.5〜3.0倍の糖衣率で形成されることが好ましい。
【0027】
また、前記第2層であるアルカリ成分の層は、中心層の酸成分に対して、重量で1.4〜2.4倍のアルカリ成分を含有する層とすることが好ましい。アルカリ成分の含有量が2.4倍を超えると、アルカリ成分特有の味(例えば、炭酸水素ナトリウムであればえぐみ)が出てきてしまい、1.4倍未満では発泡感および液体感が低下する。
アルカリ成分の層は、必要により、香料、甘味料などの任意成分を含有してもよい。これらの任意成分は、食品に添加できるものであればよく、特に限定はない。
【0028】
また、糖衣層を構成する第3層以降の砂糖の層およびビタミンCの層の量および各層の数については、特に限定はない。
【0029】
前記糖衣層を形成する砂糖の層は、砂糖を主成分とする層であり、層中の砂糖が結晶状態を有しており、かつその結晶粒径が5〜15μmの範囲となっている。
なお、結晶粒径は、糖衣層の断面を電子顕微鏡により1000倍で観察し、任意に選択した5つの砂糖結晶の長辺と短辺の平均粒径として測定した。
前記砂糖の層には、必要により澱粉、香料、乳化剤、着色料などの任意成分を含有していてもよい。これらの任意成分は、食品に添加できるものであればよく、特に限定はない。
【0030】
前記ビタミンCの層は、粉末状のビタミンCからなる層である。ビタミンCとしては、一般に知られているビタミンCを用いればよく、粒度、量に特に制限はないが、325メッシュパス以下のものを使用するのが好ましい。
【0031】
上記のような構成を有する本発明の糖衣食品は、例えば、次のようにして製造することができる。すなわち、まず、中心層の錠菓を形成するための材料として、造粒した糖アルコールと酸成分に、必要であれば賦形剤、増粘剤、粉末香料、滑沢剤、香料等を混合し、打錠機等で圧縮成型し、錠菓を作製する。
【0032】
次に、上記中心層となる錠菓を回転釜に投入し、10〜50rpmの速度で回転させ、砂糖の水溶液を錠菓に均一に掛かるように散布する。次に例えば温度5〜70℃、湿度45〜65%、風速3〜8m/秒程度の送風下で乾燥させる。これを重量が中心層に対して2.0〜2.7倍になるまで繰り返し行う。このようにして糖衣層の第1層である砂糖の層を形成する。
【0033】
第1層を形成した糖衣物が前記の大きさに達したところで、アルカリ成分コーティングとして、中心層の酸味料に対して1.4〜2.4倍量のアルカリ成分と粉末香料および甘味料を混合させたものを表面が均一になるように散布する。このようにして第2層であるアルカリ成分の層を形成する。
【0034】
次いで、第1層と同様にして砂糖の層を第3層として形成した後、粉末状のビタミンCを均一に掛かるように散布してビタミンCの層を形成させ、砂糖の層とビタミンCの層とを形成する操作を繰り返すことで多層を形成する。
【0035】
なお、砂糖の層中の砂糖の結晶のコントロールは、上記乾燥条件と乾燥時間による要因が大きく、乾燥をゆっくりしすぎると結晶が大きくなりすぎ、場合によっては歯が入らないくらいに硬くなる。また、乾燥が速すぎると、結晶が大きくならずに、ぼそぼその食感となる。この結晶コントロールは砂糖の水溶液の温度にも左右され、40〜90℃にするのが適している。
【0036】
以上の操作を行うことによって、中心層に対して5倍以上の糖衣層にしたときに、はじめて、目的とする、滑らかな舐め心地とかりっとした食感を有する糖衣層と、口中に瞬間的に広がる液体感を有する糖衣食品を得ることができる。
【0037】
なお、得られた糖衣食品の最外層は砂糖の層でもビタミンCの層でもよいし、これらの最外層の周囲にさらに別の糖衣処理や、必要により着色を施してもよい。
【実施例】
【0038】
次に実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0039】
(実施例1)
「錠菓の調製」
表1に示す組成の造粒品を、流動層造粒機を使用して調製した。
【0040】
【表1】

【0041】
さらに前記造粒品を用いて、表2に示す配合割合で中心層となる錠菓を打錠し、直径6mm、厚さ4.5mm、一粒あたりの重量0.12gとなるように調製した。
【0042】
【表2】

【0043】
「糖衣液1の調製」
表3に示す組成となるように各成分を混合して煮詰めることで糖衣液1を作製した。糖度は70%に調製した。
【0044】
【表3】

【0045】
「糖衣液2の調製」
表4に示す組成となるように各成分を混合して煮詰めることでキシリトール溶液を作製した。糖度は70%に調製した。
【0046】
【表4】

【0047】
上記の打錠品(錠菓)を糖衣用の回転釜に投入し、回転数15rpmで回転させながら、糖衣液1をかけて被覆し、糖衣層の第1層である砂糖の層を形成した。
次いで、中心層重量に対して2.083倍の重量まで糖衣した段階で重曹と粉末香料、甘味料を表5の配合で混合させたアルカリ成分粉末を糖衣物中心層の酸成分の総重量に対して1.8倍となるように、糖衣液1を投入後に散布し、55℃で乾燥して、糖衣層の第2層であるアルカリ成分の層を形成した。
その後、糖衣液1を用いて3.0倍、3.25倍、3.5倍、3.75倍、4.0倍・・・・・9.5倍の重量まで糖衣した各段階で粉末状のビタミンC(サイズは325メッシュ)を糖衣物総重量に対して0.5〜1.5%、糖衣液1を投入後に散布し、55℃で乾燥する工程を繰り返し、砂糖の層とビタミンCの層とが交互に存在する多層を形成し、中心層重量に対する、糖衣層の重量が9.83倍の糖衣物を形成した。
さらに上記で得られた糖衣物に糖衣液2を中心層重量に対し、11.08倍になるまで散布、乾燥を繰り返し、被覆着色した。
前記砂糖の層は結晶状態を有しており、糖衣層の断面を電子顕微鏡により1000倍で観察し、任意に選択した5つの砂糖結晶の長辺と短辺で確認したところ(以下同じ)、結晶粒径が5〜15μmの範囲であった。
【0048】
得られた糖衣菓子は、滑らかな舐め心地とかりっとした食感を有する糖衣層があり、噛むと速やかに崩壊して口中に瞬間的に発泡感が広がり、液体感も十分に感じることができるおいしい糖衣食品であった。
【0049】
【表5】

【0050】
(実施例2)
「錠菓の調製」
実施例1と同様に調製した造粒品を用いて、表6に示す配合割合で中心層となる錠菓を打錠し、直径5mm、厚さ4.5mm、一粒あたりの重量0.07gとなるように調製した。
【0051】
【表6】

【0052】
上記の打錠品を糖衣用の回転釜に投入し、更に実施例1と同様に調製した糖衣液1を用いて、糖衣層の第1層を形成した。回転数および乾燥温度等の条件は実施例1と同様の条件で行った。
中心層重量に対して2.687倍の重量まで糖衣した段階で、重曹と粉末香料、甘味料を表5の配合で混合させたアルカリ成分粉末を糖衣物中心層の酸成分の総重量に対して2.4倍、糖衣液1を投入後に散布し、55℃で乾燥して、糖衣層の第2層を形成した。
その後、4.5倍、4.9倍、5.3倍、5.8倍、6.3倍・・・・・17.0倍の重量まで実施例1と同様に糖衣した各段階で粉末状のビタミンC(サイズは325メッシュ)を糖衣物総重量に対して0.5〜1.3%、糖衣液1を投入後に散布し、55℃で乾燥する工程を繰り返し、砂糖の層とビタミンCの層とが交互に存在する多層を形成し、中心層重量に対し、17.61倍の糖衣物を得た。
さらにその糖衣物に糖衣液2を中心層重量に対し、19.85倍になるまで散布、乾燥を繰り返し、被覆着色した。
前記砂糖の層は結晶状態を有しており、結晶粒径は5〜15μmの範囲であった。
【0053】
得られた糖衣菓子は、滑らかな舐め心地とかりっとした食感を有する糖衣層があり、噛むと速やかに崩壊して口中に瞬間的に発泡感が広がり、液体感も十分に感じることができるおいしい糖衣食品であった。
【0054】
(実施例3)
「錠菓の調製」
実施例1と同様に調製した造粒品を用いて、表7に示す配合割合で中心層となる錠菓を打錠し、直径6mm、厚さ4.5mm、一粒あたりの重量0.12gとなるように調製した。
【0055】
【表7】

【0056】
上記の打錠品を糖衣用の回転釜に投入し、更に実施例1と同様に調製した糖衣液1を用いて、糖衣層の第1層を形成した。回転数および乾燥温度等の条件は実施例1と同様の条件で行った。ビタミンCおよびアルカリ成分粉末の添加についても実施例1と同様に行い、中心層重量に対し、9.83倍の糖衣物を得た。さらにその糖衣物に表8に示す糖衣液3を中心層重量に対し、11.08倍になるまで散布、乾燥を繰り返し、被覆着色した。
前記砂糖の層は結晶状態を有しており、結晶粒径は5〜15μmの範囲であった。
【0057】
得られた糖衣菓子は、滑らかな舐め心地とかりっとした食感を有する糖衣層があり、噛むと速やかに崩壊して口中に瞬間的に発泡感が広がり、液体感も十分に感じることができるおいしい糖衣食品であった。
【0058】
【表8】

【0059】
(実施例4)
実施例1において、第2層であるアルカリ成分の層中のアルカリ成分の含有量を、中心層の酸成分に対して重量で1.4倍、2.4倍となるように変えたところ、いずれも滑らかな舐め心地とかりっとした食感を有する糖衣層があり、噛むと速やかに崩壊して口中に瞬間的に発泡感が広がり、液体感も十分に感じることができるおいしい糖衣食品となった。
【0060】
(実施例5)
実施例1において、第1層である砂糖の層の糖衣率を、中心層に対して重量で2.0倍、2.7倍となるように変えたところ、いずれも滑らかな舐め心地とかりっとした食感を有する糖衣層があり、噛むと速やかに崩壊して口中に瞬間的に発泡感が広がり、液体感も十分に感じることができるおいしい糖衣食品となった。
【0061】
(実施例6)
実施例1において、第2層であるアルカリ成分の層の糖衣率を、中心層に対して重量で2.5倍、3.0倍となるように変えたところ、いずれも滑らかな舐め心地とかりっとした食感を有する糖衣層があり、噛むと速やかに崩壊して口中に瞬間的に発泡感が広がり、液体感も十分に感じることができるおいしい糖衣食品となった。
【0062】
(実施例7)
実施例1において、中心層の構成成分である酸味料の含有量を、中心層全体の10重量%、30重量%となるように変えたところ、いずれも滑らかな舐め心地とかりっとした食感を有する糖衣層があり、噛むと速やかに崩壊して口中に瞬間的に発泡感が広がり、液体感も十分に感じることができるおいしい糖衣食品となった。
【0063】
(実施例8)
実施例1において、中心層の構成成分であるキシリトールの含有量を、中心層全体の58重量%、75重量%となるように変えたところ、いずれも滑らかな舐め心地とかりっとした食感を有する糖衣層があり、噛むと速やかに崩壊して口中に瞬間的に発泡感が広がり、液体感も十分に感じることができるおいしい糖衣食品となった。
【0064】
(比較例1)
実施例1と同様に調製した錠菓を打錠し、糖衣用の回転釜に投入し、更に実施例1と同様に調製した糖衣液1を用いて、糖衣層の第1層を形成した。回転数および乾燥温度等の条件は実施例1と同様の条件で行った。
中心層重量に対して2.083倍の重量まで糖衣した段階で重曹と粉末香料、甘味料を表5の配合で混合させたアルカリ成分粉末を糖衣物中心層の酸成分の総重量に対して1.8倍、糖衣液1を投入後に散布し、55℃で乾燥した。その後、3.0倍、3.25倍の重量まで糖衣した各段階で粉末状のビタミンC(サイズは325メッシュ)を糖衣物総重量に対して0.5〜1.5%、糖衣液1を投入後に散布し、55℃で乾燥する工程を繰り返し、多層になるように形成し、中心層重量に対し、3.5倍の糖衣物を得た。さらにその糖衣物に糖衣液2を中心層重量に対し、3.8倍になるまで散布、乾燥を繰り返し、被覆着色した。
前記砂糖の層は結晶状態を有しており、結晶粒径は5〜15μmの範囲であった。
【0065】
得られた糖衣菓子は、糖衣層の重量が中心層に対して重量で5倍未満であり少なすぎるため、糖衣層の滑らかな舐め心地とかりっとした食感を得ることはできなかった。
【0066】
(比較例2)
実施例1と同様に調製した錠菓を打錠し、糖衣用の回転釜に投入し、更に実施例1と同様に調製した糖衣液1を用いて、糖衣層を形成した。回転数および乾燥温度等の条件は実施例1と同様の条件で行った。
中心層である錠菓に対して、重曹と粉末香料、甘味料を表5の配合で混合させたアルカリ成分粉末を糖衣物中心層の酸成分の総重量に対して1.8倍、糖衣液1を投入後に散布し、55℃で乾燥した。その後、粉末状のビタミンC(サイズは325メッシュ)を糖衣物総重量に対して0.5〜1.5%、糖衣液1を投入後に散布し、55℃で乾燥する工程を繰り返し、多層になるように形成し、中心層重量に対し、4.8倍の糖衣物を得た。さらにその糖衣物に糖衣液2を中心層重量に対し、5.0倍になるまで散布、乾燥を繰り返し、被覆着色した。
得られた糖衣菓子は、砂糖のみの層を含まないため、酸成分とアルカリ成分が直接隣り合う構造となり、糖衣中の糖衣液からの水分により反応が進行し、発泡感および液体感を得ることはできなかった。
【0067】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る糖衣した食品は、中心層に対して重量で5倍以上の糖衣層を有し、該糖衣層が砂糖の層とビタミンCの層が交互に重なり合った状態で多層に形成され、かつ該砂糖の層が結晶状態を有し、その結晶の平均粒径が5〜15μmの範囲であり、前記中心層の構成成分として酸成分および糖アルコールとを含有し、かつ該酸成分と糖衣層に含まれるアルカリ成分とが糖衣層によって隔離されている構造にすることにより、滑らかな舐め心地とかりっとした食感を有する糖衣層と、噛むと口中に瞬間的に広がる発泡感と液体感とを有する美味しい糖衣食品である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心層が酸成分および糖アルコールを含んだ錠菓であり、
該中心層に対して重量で5倍以上の糖衣層を有し、
該糖衣層がアルカリ成分の層、砂糖の層、ビタミンCの層が交互に重なり合った状態で多層に形成され、
前記砂糖の層が結晶状態を有し、その結晶粒径が5〜15μmの範囲であること
を特徴とする発泡感および液体感を有する糖衣食品。
【請求項2】
中心層の周囲に、内側から第1〜第3の層が順に形成されており、第1層および第3層が砂糖の層であり、第2層が中心層の酸成分に対して重量で1.4〜2.4倍のアルカリ成分を含有する層からなり、第1層が中心層に対して重量で2.0〜2.7倍、第2層が2.5〜3.0倍の糖衣率で形成され、第3層以降の糖衣層は砂糖の層、ビタミンCの層が交互に重なり合った状態で多層に形成される、請求項1に記載の糖衣食品。
【請求項3】
前記中心層の構成成分である酸成分の含有量が中心層全体の10〜30重量%である、請求項1または2に記載の糖衣食品。
【請求項4】
前記中心層の構成成分である糖アルコールの含有量が中心層全体の58〜75重量%である、請求項1〜3いずれかに記載の糖衣食品。