説明

発泡成分及び該成分を含む製品

【課題】発泡剤及びクリーマーに使用するための発泡成分およびその用途を提供する。
【解決手段】該発泡成分は、一以上のタンパク質及び任意に一以上の可塑剤から本質的に成り、閉じ込められたガスを含む空胞の壁を形成する。前記タンパク質の量は、少なくとも88重量%が好ましく、前記可塑剤の量は、0〜10%の間である。他の微量添加物も存在してよい。前記タンパク質は、カゼイン塩が好ましく、前記可塑剤は、グリセロール又はマンニトールが好ましい。前記成分は、インスタントカプチーノ及びミルクシェークのような飲料に使用される発泡剤又はクリーマーに含まれることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば食品原料、特に、インスタントミルクシェーク及びインスタントカプチーノのような可溶性飲料のための発泡剤(foamers)において使用するための発泡成分に関する。本発明はさらに、そのような発泡成分を含む発泡剤、及びそれらの発泡剤を含む食品原料に関する。
【背景技術】
【0002】
溶解したとき発泡飲料を生成するインスタント粉末は、極めてよく知られている。通常、これらの粉末は、可溶性飲料粉末と可溶性発泡剤の乾燥混合物である。この可溶性発泡剤は、その粉末が溶解したときに泡を生成するガスを含む空胞を含む。それゆえ、(熱)水又はミルクを添加したとき、飲料が形成され、これはその上部表面に泡を有する。
【0003】
カプチーノ様飲料のための発泡成分は、例えばEP-1074181から知られるクリーマー成分である。このクリーマー成分は、糖、タンパク質及び閉じ込められたガスから生成される。このガスは、液体に添加されたとき、可溶性クリーマー成分1グラム当たり、室温で少なくとも約1 mlのガスを放出する量で存在する。この成分は、コーヒー飲料を白くするために用いられるクリーマーの一部である。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、主要成分としてタンパク質を用い、任意に可塑剤又は軟化剤を用いることによって、上記のクリーマー成分の発泡力及び泡の安定性に関してさらに改良可能であることを見出した。主にタンパク質を用い、基本的に糖を用いないことによって、糖をさらなる構成成分として添加した場合よりも、より多くより小さい空胞が生成されることが可能になることが見出された。より多くの空胞は、より多くの泡に通じる。より小さい空胞は、より丈夫であり、それ故より安定である。空胞の強度と安定性は、可塑剤の存在によってさらにいっそう改良される。従来技術の発泡成分と比較して、本発明の発泡成分におけるタンパク質の量が高いことにより、それから発生した気泡が長い時間より安定であることが分かった。
【0005】
さらに、その空胞は、特に可塑剤の存在下で形成されたものは、炭化水素を含むクリーマー成分の空胞よりも長時間、閉じ込められたガスを維持することが分かった。これは、以下のとおりに説明できる。可塑剤は、空胞の壁の脆化を少なくし、その結果として事実上、空胞を割れさせない。タンパク質のみに基づく機能的な発泡成分を生成することは可能であるが、そのような成分は、空胞の壁の損傷を避けるように注意して扱わなければならない。それ故、可塑剤又は軟化剤を用いることが好ましい。
【0006】
従って、本発明は、一以上のタンパク質、及び任意に一以上の可塑剤から本質的に成り、閉じ込められたガスを含む空胞の壁を形成する、発泡成分に関する。
【発明の詳細な説明】
【0007】
「本質的に成る」という語は、ここでは、タンパク質の量が少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも88重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、さらにより好ましくは少なくとも92重量%、及び最も好ましくは少なくとも94重量%であることを示す。可塑剤は、好ましくはポリオール又は糖アルコール、例えばグリセロール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、エリチリトール、トレハロース及び/又は脂質、例えば脂肪酸、モノグリセリド、リン脂質から成る群から選択され、0〜10重量%、好ましくは3〜7重量%、より好ましくは4〜6重量%、最も好ましくは5重量%の量で使用される。好ましくはグリセロール及び/又はマンニトールが用いられる。
【0008】
前記成分は、一以上のタンパク質及び可塑剤に加えて、他の添加物を含んでも良い。しかしながら、この発泡成分は、添加された糖を含まない。しかしながら、カゼイン塩のようなタンパク質が、何らかの残渣糖を含む場合はよい。これはしかし、それらの製造後のタンパク質製剤中には極めて少量で存在し、発泡成分の構成成分としては添加されない。
【0009】
その他の添加物は、微量で存在することが好ましい。添加物の例は、乳化剤であり、これは、空胞のサイズを改変するために添加される。好ましくは、モノ-及びジグリセリドが用いられる。
【0010】
発泡成分が、糖、例えば甘味料を含む発泡剤中で用いられ得ることは、留意されるべきである。しかしながら、本発明に従った空胞を含むガスを形成する物質は、添加された糖を含まない。
【0011】
発泡成分は、ミルクタンパク質のような種々のタンパク質、例えばカゼイン塩、酸又はレンネットカゼイン、天然のミセルカゼイン(微細濾過/限外濾過で得られる)、乳清タンパク質単離(isolate);卵タンパク質;エンドウマメタンパク質;コムギタンパク質;大豆タンパク質又はそれらの混合物から作製されることができる。このタンパク質は、ペプチド混合物のような、加水分解された形態で用いられてもよい。
【0012】
該タンパク質は、カゼイン塩であることが、ミルクに由来するものであることから好ましい。発泡成分が、カプチーノ発泡剤及びクリーマー又はミルクシェークのような乳様製品に使用される場合、該発泡剤は全ての乳製品であり得る。加えて、カゼイン塩は良好な気泡安定性を提供し、口当たりの良い食味を有し、中間色を有する。
【0013】
本発明の発泡成分は、任意に可塑剤を含むタンパク質溶液をスプレー乾燥して粉末を得、該粉末を加圧下、上昇温度でガスに供して、粉末粒子中に存在する空胞の壁を弱くさせ、該空胞に加圧下でガスを摂取させ、該粉末を冷却して、空胞の壁を硬化させ、圧力を開放することによって得ることができる。
【0014】
適切な技術は、膨張する粒子の形態における空胞壁物質を提供し、次いで、ガスを粒子中に閉じ込めることに関与する。この膨張する粒子は、空胞壁物質の水溶液中にガスを注入する事によって調製されることができ、次いでこの濃縮物をスプレー乾燥して粉末にする。このガスは、約500 kPa〜約5 MPaの圧力で水溶液中に注入されることができる。しかしながら、空胞壁物質の水溶液にガスを注入するこの圧力は、決定的ではない。ガスは、除外されてもよい。
【0015】
加圧処理に先立つ中間の乾燥工程が、粒子(空胞及びそれらの壁によって形成された)の水分含量を適切なレベルに調整するために導入され得る。
【0016】
次いで粒子を、ガス雰囲気、好ましくは不活性ガス雰囲気に、高圧及び粒子のガラス転移温度以上の温度で供する。該圧力は、約100 kPa〜約20 MPaであってよい。該温度は、空胞壁物質の組成に依存する必要がある。というのも、その組成が、ガラス転移温度に影響するからである。しかしながら、この温度は、技術者によって、何れの物質タイプでも容易に設定できる。一般に、時間が増加するにつれてガスの閉じ込めが増加するために、粒子は、望む限り長く該圧力と温度に供することができる。通常、約10秒〜約30分の時間で十分である。
【0017】
次いで、粒子を急冷又は硬化に供し、ガスの閉じ込めを確実にする。この粒子は、例えば、温度を低くすることによって十分に急冷される。一旦、粒子がそれらのガラス状態より十分低く、例えばそれらのガラス転移温度TGより低い60℃になると、その圧力を開放して環境条件にする。
【0018】
空胞に閉じ込められるガスは、窒素、二酸化炭素、N2O、又は空気、及びそれらのガスの混合物のような、任意の適切な食品グレードのガスであってよい。実質的に不活性であるガスが好ましい。
【0019】
上記で示したように、本発明の発泡成分を有する発泡剤生成物は、人工甘味料、乳化剤、安定化剤、フローイング剤(flowing agents)、着色剤、香料、芳香などのような他の成分を含んでも良い。適切な人工甘味料は、サッカリン、シクラメート、アセスルフェーム(acesulfame)、アスパルテームのようなL−アスパルチルに基づく甘味料、及びそれらの混合物を含む。適切な乳化剤は、モノグリセリド、ジグリセリド、レシチン、モノ-ジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEMエステル)、及びそれらの混合物を含む。適切な安定化剤は、リン酸二カリウム及びクエン酸ナトリウムを含む。適切なフローイング剤は、アルミン酸シリカナトリウムである。
【0020】
本発明の発泡成分は、標準的な発泡剤又はクリーマーにおいて、10〜80重量%、好ましくは20〜60重量%、最も好ましくは30〜50重量%の量で用いられ得る。
【0021】
発泡剤又はクリーマーは、可溶性形態であるが、次いで所望の飲料又は食品原料粉末の他の成分と混合される。そのような飲料の例は、インスタントカプチーノ、インスタントチョコレート飲料、インスタントティー及びインスタントミルクシェークである。他の非飲料食品原料は、スープ、ソース、及びデザートである。
【0022】
本明細書において、発泡剤は溶解されたときに泡を提供する生成物であり、一方クリーマーは、白色化力を有し、また泡をも提供する。
【0023】
本発明は、以下の実施例でさらに説明されるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
[実施例1]
発泡成分の調製
1.乾燥方法
95部(w/w)のカゼイン酸ナトリウム(EM-7、DMV インターナショナル)及び5部(w/w)のグリセロールの混合物を調製した。この混合物を水に溶解して固体含量を約15重量%にした。この混合物が完全に溶解した後、スプレードライヤー(型:ノズルドライヤー)に供した。窒素ガスを、ノズルの供給管に注入し、その混合物を、スプレードライヤーでスプレー乾燥し、流動床でさらに乾燥させて水分含量3%にした。
【0025】
2.ガス充填方法
続いて、この粉末を、約3 MPaの圧力及び95℃の温度で、窒素ガス雰囲気に約20分間供した。次いで、この粉末を30℃より低くまで冷却し、その後、圧力をゆっくり放出した。
【0026】
3.ホットコーヒーへの適用
発泡成分粉末を、可溶性カプチーノ発泡剤ベース(DP 387、DMV インターナショナル)、粉末化砂糖及び可溶性コーヒー粉末と、重量比率が2.0:4.0:2.0:2.0で混合し、可溶性コーヒー飲料粉末を用意した。得られた粉末を10gの量で、直径約0.05mのビーカーに入れ、100mlの熱水(約85℃)を加えた。この飲料を二回攪拌した。この飲料は、約0.035mの高さで、魅力的な軽くてふわふわした泡を有した。泡の容量は約70mlであった。
【0027】
4.アイスチョコレート飲料への適用
本発明の発泡成分粉末を、インスタント化(例えばレシチナイズ化(lecithinized))したココア粉末、スキムミルク粉末及び砂糖と、1.0:1.0:4.0:4.0の割合で混合し、可溶性のアイスチョコレート飲料粉末を用意した。得られた粉末を20gの量で、直径約0.05mのビーカーに入れ、120mlの冷水を加えた。この飲料を15秒間攪拌した。この飲料は、約0.02mの高さの軽くてふわふわで安定した泡を有し、約1時間安定であった。この泡の容量は約40mlであった。
【0028】
[実施例2(比較)]
コーヒーへの適用
実施例1の可溶性ホットコーヒー飲料粉末(A)を、欧州特許出願EP-1 074 181の実施例2に従ってその発泡成分を調製した可溶性ホット飲料粉末(B)と比較した。サンプルBは、サンプル(A)と同量の発泡成分、DP387、粉末化された砂糖及び可溶性コーヒー粉末(重量比2.0:4.0:2.0:2.0)を含有する。
【0029】
各粉末10グラムを、直径約0.05mのビーカーに入れ、100mlの熱水(85℃)を加えた。得られた飲料を、二回攪拌した。泡の高さ及び容量は、以下のとおりであった:
【表1】

【0030】
[実施例3(比較)]
アイスチョコレート飲料への適用
実施例1の可溶性のアイス飲料の粉末(A)を、欧州特許出願EP-1 074 181の実施例2に従ってその発泡成分を調製した可溶性のアイス飲料の粉末(B)と比較した。両方のサンプル(A及びB)は、同量の発泡成分、粉末化砂糖、ココア粉末及びスキムミルク粉末(重量比1.0:1.0:4.0:4.0)を含有する。
【0031】
20グラムの各粉末を、直径約0.05mのビーカーに入れ、120mlの冷水を加えた。得られた飲料を、15秒間攪拌した。泡の高さ及び容量は以下のとおりであった:
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一以上のタンパク質及び任意に一以上の可塑剤から本質的に成り、閉じ込められたガスを含む空胞の壁を形成する発泡成分。
【請求項2】
前記タンパク質の量が、少なくとも85重量%である、請求項1に記載の発泡成分。
【請求項3】
前記タンパク質の量が、少なくとも88重量%である、請求項1及び2の何れか一項に記載の発泡成分。
【請求項4】
前記タンパク質の量が、少なくとも90重量%である、請求項1〜3の何れか一項に記載の発泡成分。
【請求項5】
前記タンパク質の量が、少なくとも92重量%である、請求項1〜4の何れか一項に記載の発泡成分。
【請求項6】
前記タンパク質の量が、少なくとも94重量%である、請求項1〜5の何れか一項に記載の発泡成分。
【請求項7】
糖が添加されないことを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の発泡成分。
【請求項8】
前記一以上の可塑剤は、ポリオール又は糖アルコール及び/又は脂質である、請求項1〜7の何れか一項に記載の発泡成分。
【請求項9】
前記ポリオール又は糖アルコールは、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、エリチリトール、トレハロースからなる群から選択される、請求項8に記載の発泡成分。
【請求項10】
前記脂質は、脂肪酸、モノグリセリド、リン脂質から成る群から選択される、請求項8に記載の発泡成分。
【請求項11】
前記一以上の可塑剤は、0〜10重量%の量で、好ましくは3〜7重量%の量で、さらに好ましくは4〜6重量%の量で、最も好ましくは5重量%の量で存在する、請求項1〜10の何れか一項に記載の発泡成分。
【請求項12】
微量の添加物をさらに含む、請求項1〜11の何れか一項に記載の発泡成分。
【請求項13】
前記添加物は、一以上の乳化剤である、請求項12に記載の発泡成分。
【請求項14】
前記乳化剤は、モノグリセリド又はジグリセリド又はそれらの組合せである、請求項13に記載の発泡成分。
【請求項15】
前記タンパク質は、乳タンパク質、例えばカゼイン塩、酸又はレンネットカゼイン、天然ミセルカゼイン、乳清タンパク質単離(isolate);卵タンパク質;エンドウマメタンパク質;コムギタンパク質;大豆タンパク質;それらの混合物又はそれらの加水分解形態から成る群から選択される、請求項1〜14の何れか一項に記載の発泡成分。
【請求項16】
前記タンパク質はカゼイン塩である、請求項15に記載の発泡成分。
【請求項17】
請求項1〜16の何れか一項に記載の発泡成分であって、任意に可塑剤を含むタンパク質溶液をスプレー乾燥して粉末を得、該粉末を加圧下、上昇温度でガスに供して、該粉末粒子中に存在する空胞の壁を弱くさせ、該空胞に加圧下でガスを摂取させ、該粉末を冷却して、空胞の壁を硬化させ、圧力を開放することによって得ることができる発泡成分。
【請求項18】
カプチーノ型飲料、ミルクシェーク、インスタントチョコレート飲料、インスタントティー、スープ、ソース、デザートのための発泡剤又はクリーマーにおける使用のための、請求項1〜17の何れか一項に記載の発泡成分。
【請求項19】
請求項1〜18に記載された発泡成分を含む発泡剤。
【請求項20】
白色化剤及び請求項1〜18で記載された発泡成分を含むクリーマー。
【請求項21】
可溶性コーヒー粉末及び可溶性クリーマーを含み、該クリーマーが請求項1〜18に記載の発泡成分を含む、インスタントカプチーノ。
【請求項22】
可溶性ミルクシェーク粉末及び可溶性発泡剤を含み、該発泡剤が請求項1〜18に記載の発泡成分を含む、インスタントミルクシェーク。
【請求項23】
請求項1〜18に記載の発泡成分を調製する方法であって、以下の工程を具備する方法:
a)任意に可塑剤を含むタンパク質溶液をスプレー乾燥して、粉末を得る;
b)加圧下、上昇する温度で、前記粉末をガスに供し、前記粉末粒子中に存在する空胞の壁を弱くし、加圧下で、前記空胞に前記ガスを摂取させる;
c)前記粉末を冷却し、空胞の壁を硬化させる;及び、
d)前記圧力を開放する。

【公開番号】特開2010−110326(P2010−110326A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−281846(P2009−281846)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【分割の表示】特願2004−532108(P2004−532108)の分割
【原出願日】平成15年8月22日(2003.8.22)
【出願人】(503437761)キャンピナ・ビーブイ (4)
【Fターム(参考)】