発泡成形体およびその用途
【課題】ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを基本樹脂として含む発泡成形体の音鳴りを抑制することを課題とする。
【解決手段】密度912〜950kg/m3のポリエチレン系樹脂100重量部と、ポリスチレン系樹脂100〜500重量部とを基本樹脂として含む発泡成形体であり、JIS K7125の摩擦係数測定において0.80N以下の積分平均荷重および0.01〜0.15Nの範囲の振幅を有することを特徴とする発泡成形体により、上記課題を解決する。
【解決手段】密度912〜950kg/m3のポリエチレン系樹脂100重量部と、ポリスチレン系樹脂100〜500重量部とを基本樹脂として含む発泡成形体であり、JIS K7125の摩擦係数測定において0.80N以下の積分平均荷重および0.01〜0.15Nの範囲の振幅を有することを特徴とする発泡成形体により、上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音鳴りが抑制された、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを基本樹脂として含む発泡成形体(以下、単に「発泡体」ともいう)およびその用途に関する。さらに詳しくは、本発明は、発泡成形体同士または発泡成形体とそれに付随する構成部材とが接触して擦り合わされた際に発生する高周波数の摩擦音が抑制された発泡成形体およびその用途に関する。本発明の発泡成形体は、自動車のギヤ部品のような金属部品などの輸送(搬送)に用いる部品梱包材、および嵩上げ材やティビアパッド、バンパー芯材などの自動車部材(内装材や緩衝材)などに好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車のギヤ部品のような金属部品などの輸送(搬送)に用いられる部品梱包材としては、軽量でありかつ比較的安価であることから、ポリスチレン系樹脂発泡成形体、およびポリプロピレン系樹脂発泡成形体、ポリエチレン系樹脂発泡成形体、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂または直鎖状低密度ポリエチレンを一部含んだポリスチレン系樹脂発泡成形体などが用いられている。
しかしながら、上記の発泡成形体は、例えば、金属部品を輸送する際の部品梱包材として使用された場合に、部品梱包材同士の重ね合わせによる接触や金属部品と部品梱包材との接触により、高周波数の耳障りな摩擦音が発生することがある。
【0003】
他方、上記の発泡成形体は、従来から嵩上げ材やティビアパッド、バンパー芯材などの自動車部材として用いられている。
しかしながら、上記の発泡成形体は、部品梱包材の場合と同様に、発泡成形体同士の接触または発泡成形体と他のプラスチック製品、金属部品との接触により、高周波数の耳障りな摩擦音が発生することがある。このような摩擦音は、静粛性が要求される自動車内において不快に感じられる。
【0004】
上記のような問題を解決するために様々な技術が提案されている。
例えば、特開平10−298341号公報(特許文献1)および特開平7−246888号公報(特許文献2)には、それぞれ発泡体製品の接触面に界面活性剤を塗布する方法および発泡成形体である車両用内装品の接触面に低摩擦係数を有する塗膜層を形成する方法が開示されている。
これらの技術では、摩擦抵抗を減らし、こすれによる異音の発生を抑制しているが、塗布面または形成面が使用により劣化し、長期(長日数)にわたって音鳴り防止効果や低摩擦係数を維持することができないという課題がある。また、塗布または形成工程が加わるために、製造工数が増加するという課題がある。
【0005】
また、特開2004−330650号公報(特許文献3)には、外観低下や熱成形に必要な二次発泡力の短期間での低下のない、成形性およびブロッキング防止に優れたポリスチレン系樹脂発泡積層シートを提供するために、発泡シートの最大静摩擦係数および表面粗さを特定の範囲に設定し、発泡シートに特定量のシリコーンオイルを塗布することが開示されている。しかしながら、この技術でも、シリコーンオイルの塗布面が使用により劣化し、長期(長日数)にわたってその効果が維持できないという課題がある。また、塗布工程が加わるために、製造工数が増加するという課題がある。
【0006】
さらに、特開2007−98964号公報(特許文献4)には、異種材料を用いることにより、車両構造物との擦れにより発生する軋み音のような音鳴りを低減する車両用内装材が開示されている。しかしながら、この技術では、原料樹脂の検討がなされておらず、さらなる摩擦性低下が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−298341号公報
【特許文献2】特開平7−246888号公報
【特許文献3】特開2004−330650号公報
【特許文献4】特開2007−98964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の先行技術では、塗布面などの劣化により長期にわたる効果が期待できず、塗布工程などが加わるために、製造工数が増加するという課題があり、また原料樹脂などの検討によりさらなる効果の向上の余地を残している。
【0009】
本発明は、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを基本樹脂として含む発泡成形体の音鳴りを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討の結果、特定の密度のポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを特定の割合で含ませ、JIS K7125の摩擦係数測定における積分平均荷重および振幅を特定の範囲に設定することにより、発泡成形体の音鳴りを抑制できることを意外にも見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、発泡成形体に用いる樹脂原料に着目し、上記のように樹脂の配合割合および物性値を特定の範囲に設定することにより、発泡成形体表面の摩擦抵抗を抑制でき、その摩擦音を抑制できることを見出した。また、これによれば、発泡成形体の表面に界面活性剤などを塗布するような加工を必要としない。
【0011】
かくして、本発明によれば、密度912〜950kg/m3のポリエチレン系樹脂100重量部と、ポリスチレン系樹脂100〜500重量部とを基本樹脂として含む発泡成形体であり、JIS K7125の摩擦係数測定において0.80N以下の積分平均荷重および0.01〜0.15Nの範囲の振幅を有することを特徴とする発泡成形体が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを基本樹脂として含む発泡成形体の音鳴りを抑制することができる。
すなわち、上記のように樹脂の配合割合および物性値を特定の範囲に設定することにより、発泡成形体表面の摩擦抵抗を抑制でき、その摩擦音を抑制できる。また、これによれば、発泡成形体の表面に界面活性剤などを塗布するような加工を必要としない。
【0013】
また、ポリエチレン系樹脂が40〜70%の範囲の結晶化度を有するポリエチレン系樹脂である場合、上記の優れた効果がさらに発揮される。
さらに、発泡成形体が10〜85倍の範囲の発泡倍数を有する場合、上記の優れた効果がさらに発揮される。
また、本発明の発泡成形体は、その表面の摩擦抵抗が抑制されているので、摩擦音(音鳴り)が抑制された部品梱包材用、自動車部材用または緩衝材用の発泡成形体として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(実施例1)。
【図2】本発明の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(実施例2)。
【図3】本発明の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(実施例3)。
【図4】本発明の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(実施例4)。
【図5】本発明の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(実施例5)。
【図6】本発明の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(実施例7)。
【図7】本発明の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(実施例8)。
【図8】従来の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(比較例1)。
【図9】従来の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(比較例2)。
【図10】従来の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(比較例3)。
【図11】従来の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(比較例4)。
【図12】従来の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(比較例5)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の発泡成形体は、密度912〜950kg/m3のポリエチレン系樹脂100重量部と、ポリスチレン系樹脂100〜500重量部とを基本樹脂として含む発泡成形体であり、JIS K7125の摩擦係数測定において0.80N以下の積分平均荷重および0.01〜0.15Nの範囲の振幅を有することを特徴とする。
摩擦係数測定における積分平均荷重および振幅は、発泡成形体表面の摩擦抵抗の指針となる数値であり、上記の数値を有することは、その摩擦抵抗が小さいことを意味する。
【0016】
「積分平均荷重」は、測定区間における荷重平均値を意味し、JIS K7125:1999「プラスチックフィルム及びシートの摩擦係数試験方法」記載の方法に準拠して測定することができる。
積分平均荷重は、0.80N以下、好ましくは0.75N以下であり、その下限は好ましくは0.70Nである。
積分平均荷重が0.80Nを超えると、表面摩擦係数が高いため、成形体同士のこすれ音が発生し易くなることがある。
【0017】
「振幅」は、測定区間における極大点と極小点の差を意味し、JIS K7125:1999「プラスチックフィルム及びシートの摩擦係数試験方法」記載の方法に準拠して測定することができる。
振幅は、0.01〜0.15Nの範囲であり、好ましくは0.01〜0.13Nの範囲、より好ましくは0.01〜0.10Nの範囲である。
振幅が0.15Nを超えると、表面摩擦係数が高いため、発泡成形体表面が振動して音鳴りし易くなることがある。
【0018】
(a)ポリエチレン系樹脂
本発明で用いられるポリエチレン系樹脂は、密度912〜950kg/m3、好ましくは密度912〜942kg/m3、より好ましくは密度930〜936kg/m3のポリエチレン系樹脂である。
ポリエチレン系樹脂の密度が、912kg/m3未満の場合、融解温度が低いため、得られる発泡体の耐熱性が不足することがある。一方、950kg/m3を超えると、融解温度が高いため発泡成形温度が高くなり生産性が低下することに加えて、得られる発泡体は耐衝撃性に劣るものとなる。なお、エチレン系樹脂の密度は、JIS K6922−1:1998に準拠して密度勾配管法を用いて測定されたものをいう。
【0019】
本発明で用いられるポリエチレン系樹脂は、特に限定されないが、40〜70%の範囲の結晶化度を有するポリエチレン系樹脂であるのが好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体またはエチレンと炭素数3以上のオレフィンとの共重合体であるのが好ましい。
上記炭素数3以上のオレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン(例えば、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン)、環状オレフィン(例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン)、ジエン(例えば、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン)などが挙げられる。炭素数3以上のオレフィン由来の成分が、ポリエチレン系樹脂に占める割合は、特に限定されないが、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
なお、発明を阻害しない範囲で、スチレンをエチレンと共重合させてもよい。
【0020】
結晶化度は、JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」に準拠した測定で次式により求めることができる値であり、具体的な測定法は、実施例の欄に記載する。
結晶化度(%)=(結晶化熱量(mJ)/完全結晶の融解熱量(mJ))×100
結晶化度は、40〜70%の範囲であり、好ましくは41〜65%の範囲、より好ましくは41〜60%の範囲である。
結晶化度が40%未満では、結晶性が低いため発泡成形体の表面摩擦係数が高くなるおそれがある。一方、結晶化度が70%を超えると、結晶性が高いため発泡成形温度が高くなり生産性が低下するおそれがある。
【0021】
ポリエチレン系樹脂は、190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート[MFR(g/10分)]が0.1以上20以下であるのが好ましい。
MFRが0.1g/10分未満の場合、発泡倍率が低下することがある。また、20g/10分を超えると溶融張力が小さくなり発泡倍率が低下することに加え、発泡体の強度も低下する場合がある。より好ましいMFRは2〜10g/10分である。MFRの測定法は、実施例の欄に記載する。
【0022】
ポリエチレン系樹脂は、160℃で測定した溶融張力[MS160(mN)]が50〜240程度であるのが好ましく、MFRの関係が、次式(1)を満たすのが好ましい。
MS160>90−130×log(MFR)
MSの測定法は、実施例の欄に記載する。
【0023】
ポリエチレン系樹脂は、直鎖状ポリエチレン換算で、40000〜120000の重量平均分子量(Mw)を有することが好ましい。Mwが、40000未満では、発泡体の強度が低くなる場合がある。一方、120000を超えると、ポリエチレン系樹脂の粘度が高くなり、発泡成形が困難になる場合がある。
また、ポリエチレン系樹脂は、Mwと数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、3.5〜10であるのが好ましい。この範囲であることで、ポリエチレン系樹脂の分子量分布を狭くできるので、性質にばらつきの少ない発泡体を得ることができる。なお、Mnは、直鎖状ポリエチレン換算の値を意味する。
【0024】
ポリエチレン系樹脂は、架橋していても架橋していなくてもよい。架橋していない場合、リサイクルが容易であるという利点がある。架橋の有無は、ゲル分率を測定することにより判断でき、値が大きい場合、架橋が多く、小さい場合、架橋が少ないことを意味する。
ポリエチレン系樹脂は、例えば、以下の方法により、マクロモノマーの存在下に、オレフィンを重合させることで得られた樹脂であることが好ましい。
【0025】
ここで、マクロモノマーは、末端にビニル基を有するエチレンの単独重合体または末端にビニル基を有するエチレンと炭素数3以上のオレフィンとの共重合体であり、2000以上のMnと、2〜5のMw/Mnとを有していることが好ましい。炭素数3以上のオレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン(例えば、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン)などが挙げられる。これらオレフィンは、単独でも、2種以上の組み合わせでもよい。
【0026】
マクロモノマーのMnは、5000以上であることがより好ましく、10000以上であることが更に好ましい。上限は、100000であることが好ましい。また、Mw/Mnは、2〜4であることがより好ましく、2〜3.5であることが更に好ましい。
MnおよびMwの測定方法の一例を以下に挙げる。
測定に使用するGPC装置は、東ソー社製HLC−8121GPC/HTであり、カラムとして東ソー社製TSKgel GMHhr−H(20)HTを用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4−トリクロロベンゼンを用いる。測定試料は、1.0mg/mlの濃度に調整し、GPC装置への注入量を0.3mlとする。各分子量の検量線は、分子量既知のポリエチレン試料を用いて校正する。Mn及びMwは、直鎖状ポリエチレン換算値として求める。
【0027】
更に、マクロモノマーの主鎖であるメチレン炭素1000個当たりのビニル末端数をX、マクロモノマーの主鎖であるメチレン炭素1000個当たりの飽和末端数をYとした場合、式Z=X/[(X+Y)×2]で表されるZが0.5〜1であることが好ましい。Zは0.25〜1であることがより好ましい。なお、ビニル末端及び飽和末端は、1H−N
MR、13C−NMR又はFT−IRによりその数を測定できることは、当業者によく知られている。例えば、13C−NMRの場合、ビニル末端は114ppmと139ppmに、飽和末端は32.3ppm、22.9ppm及び14.1ppmにピークを有し、このピークからその数を測定できる。
マクロモノマーのビニル末端数及び飽和末端数の算出方法の一例を以下に挙げる。
マクロモノマーの末端構造は、日本電子社製JNM−ECA400型核磁気共鳴装置を用いて、13C−NMRによって確認する。溶媒には、テトラクロロエタン−d2を使用する。ビニル末端数(X)は、主鎖メチレン炭素(化学シフト:30ppm)1000個当たりの個数として、114ppmと139ppmのピークの平均値から求める。一方、飽和末端数(Y)は、ビニル末端基数と同様に、32.3ppm、22.9ppm及び14.1ppmピークの平均値から求める。得られたビニル末端数Xと飽和末端数Yとから、式Z=X/[(X+Y)×2]により、Zを求める。
【0028】
上記マクロモノマーとオレフィンとを共重合させることで、本発明の使用に好適なポリエチレン系樹脂が得られる。ここで、マクロモノマー以外の新たな樹脂の全樹脂に対する割合は、1〜99重量%が好ましく、5〜90重量%がより好ましく、30〜80重量%が更に好ましい。新たな樹脂の割合の測定は、樹脂のGPCチャートを、マクロモノマーのGPCチャートと比較することにより行うことができる。具体的には、両チャートの比較により新たな樹脂に由来するピークを決定し、そのピークの面積の全ピークの面積に対する割合が、新たな樹脂の割合に相当する。
【0029】
ポリエチレン系樹脂製造方法の概略について以下に記載する。
まず、2つのシクロペンタジエニル基が架橋基で架橋されている架橋型ビスシクロペンタジエニルジルコニウム錯体と有機化合物で処理された粘土鉱物とからなる触媒の存在下、エチレンを重合させる、又はエチレンと炭素数3以上のオレフィンとを共重合させることで、マクロモノマーを製造する。上記錯体としては、ジメチルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジエチルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドなどが挙げられる。
【0030】
また、粘土鉱物としては、ヘクトライトを通常使用できる。更に、有機化合物としては、N,N−ジメチル−オクタデシルアミン、N,N−ジオレイルメチルアミンなどのアミン系化合物が挙げられる。
次に、架橋型(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウム錯体の存在下、マクロモノマーとオレフィンとを共重合させることでポリエチレン系樹脂を得ることができる。上記錯体としては、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0031】
マクロモノマーと共重合させるオレフィンとしては、炭素数2以上のオレフィンを使用できる。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン(例えば、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン)などが挙げられる。これらオレフィンは、単独でも、2種以上の組み合わせでもよい。
【0032】
ポリエチレン系樹脂は、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、炭素数2〜20のα−オレフィン単独重合体及び共重合体が挙げられる。具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ1−ペンテン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、プロピレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/1−ブテン共重合体、4−メチル−1−ペンテン/エチレン共重合体、エチレン/プロピレン/ポリエン共重合体、種々のプロピレン系ブロック共重合体やプロピレン系ランダム共重合体などが挙げられる。
これら他の樹脂の配合割合は、全ポリエチレン系樹脂量に対して、50重量%以下が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。
【0033】
ポリエチレン系樹脂には、必要に応じて、着色剤、安定剤、充填材(補強材)、高級脂肪酸金属塩、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、天然又は合成油、ワックス、紫外線吸収剤、耐候安定剤、防曇剤、坑ブロッキング剤、スリップ剤、被覆剤、中性子遮蔽剤などの添加剤が含まれていてもよい。この内、着色剤としては、無機及び有機の着色剤(顔料又は染料)をいずれも使用できる。特に、酸化鉄、カーボンブラックなどの無機着色剤が好ましい。
【0034】
酸化鉄としては、黄色系統のものとしてα−FeOOH(含水結晶)、赤色系統のものとしてα−Fe2O3、黒色系統のものとして(FeO)x(Fe2O3)yなどが挙げられる。これら酸化鉄は、Feの一部が、Zn、Mgなどの他の金属で置き換えられていてもよい。更に、これら酸化鉄は、所望の色を得るために、混合して用いてもよい。この内、黒色系統の(FeO)x(Fe2O3)yに含まれるFe3O4であることが好ましい。
【0035】
酸化鉄は、0.1〜1μmの平均粒子径を有していることが好ましく、0.2〜0.8μmがより好ましい。平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(日本電子社製:ロドス)により測定できる。
【0036】
酸化鉄は、ポリエチレン系樹脂中、1.5〜70重量%の範囲で含まれていることが好ましく、5〜40重量%の範囲がより好ましく、10〜30重量%の範囲が更に好ましい。1.5重量%未満では、ポリエチレン系樹脂が十分着色されない場合がある。一方、70重量%を超えると、ポリエチレン系樹脂中に混合することが困難となる場合がある。加えて、酸化鉄の比重がポリエチレン系樹脂より大きいため、ポリエチレン系樹脂粒子が重くなり、スチレン系単量体を均一に含浸させることが困難となる場合がある。
【0037】
カーボンとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、黒鉛、炭素繊維などのカーボンブラックが挙げられる。
カーボンは、ポリエチレン系樹脂中、1〜50重量%の範囲で含まれていることが好ましく、2〜30重量%の範囲がより好ましい。1重量%未満では、ポリエチレン系樹脂が十分着色されない場合がある。一方、50重量%より多いと、ポリエチレン系樹脂中に混合することが困難となる場合がある。
【0038】
安定剤は、酸化劣化や熱劣化などを防止する役割を果たし、公知物をいずれも使用できる。例えば、フェノール系安定剤、有機ホスファイト系安定剤、チオエーテル系安定剤、ビンダードアミン系安定剤などが挙げられる。
充填材としては、タルク、ガラスなどが挙げられ、その形状は球状、板状、繊維状など特に限定されない。
【0039】
高級脂肪族金属塩としては、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸などの高級脂肪酸と、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)やアルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウムなど)との塩が挙げられる。
【0040】
(b)ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを基本樹脂として含む粒子(「複合樹脂粒子」ともいう)
複合樹脂粒子は、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との混合樹脂粒子を意味し、公知の方法により両樹脂を単純に混合して得られた粒子であってもよいが、ポリエチレン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸、重合させることにより得られることが好ましい。具体的には、以下の説明のように、分散剤を含有する水性媒体中にポリエチレン系樹脂粒子を分散させて、その後にスチレン系単量体および重合開始剤を添加して分散液を作製して、この分散液を加熱することによりポリエチレン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸、重合させて複合樹脂粒子が得られる。
【0041】
ポリエチレン系樹脂粒子は、公知の要領で製造される。例えば、上記の製造方法により得られたポリエチレン系樹脂を、必要に応じて無機核剤と添加剤と共に、押出機中で溶融混練して押出すことでストランドを得、得られたストランドを、空気中でカット、水中でカット、加熱しつつカットすることで、造粒する方法が挙げられる。
【0042】
ポリエチレン系樹脂粒子は、粒子の長さをL、平均径をDとした場合のL/Dが0.6〜1.6である円筒状、略球状ないしは球状であり、平均粒子径が0.2〜1.5mmであることが好ましい。L/Dが0.6未満の場合及び1.6より大きく扁平度が大きい場合は、発泡性樹脂粒子として予備発泡させ、金型に充填して発泡成形体を得る際に、金型への充填性が悪くなることがある。また、ポリエチレン系樹脂粒子の形状は、充填性をよくするには略球状ないしは球状がより好ましい。平均粒子径については、0.2mm未満の場合、発泡剤の保持性が低くなり、低密度化が困難となることがある。1.5mmを超えると、充填性が悪くなるだけでなく発泡成形体の薄肉化も困難となることがある。
【0043】
無機核剤としては、例えば、タルク、二酸化珪素、マイカ、クレー、ゼオライト、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
無機核剤の使用量は、ポリエチレン系樹脂100重量部に対して、2重量部以下が好ましく、0.2〜1.5重量部がより好ましい。
水性懸濁液を構成する水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。
【0044】
重合開始剤としては、一般にスチレン系単量体の懸濁重合用の開始剤として用いられているものが使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートなどの有機化過酸化物である。これらの重合開始剤は単独もしくは2種以上を併用してもよい。
【0045】
重合開始剤の使用量は、スチレン系単量体100重量部に対して、0.1〜0.9重量部が好ましく、0.2〜0.5重量部がより好ましい。0.1重量部未満ではスチレン系単量体の重合に時間がかかり過ぎることがあるので好ましくない。0.9重量部を超える重合開始剤の使用は、スチレン系樹脂の分子量が低くなることがあるので好ましくない。
【0046】
水系懸濁液には、必要に応じて分散剤を添加してもよい。分散剤としては、特に限定されず、公知のものをいずれも使用することができる。具体的には、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸ナトリウム、酸化マグネシウムなどの難溶性無機物が挙げられる。更に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような界面活性剤を使用してもよい。
【0047】
次に、得られた分散液をスチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱してスチレン系単量体をポリエチレン系樹脂粒子に含浸させる。
ポリエチレン系樹脂粒子内部にスチレン系単量体を含浸させる時間は、30分〜2時間が適当である。十分に含浸させる前に重合が進行するとスチレン系樹脂の重合体粉末を生成してしまうからである。前記モノマーが実質的に重合しない温度とは、高い方が含浸速度を速めるには有利であるが、重合開始剤の分解温度を考慮して決定する必要がある。
【0048】
ポリエチレン系樹脂粒子に含浸させるスチレン系単量体としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレンなどが挙げられる。
【0049】
分散液中に添加されるスチレン系単量体の総量は、得られる複合樹脂中において、ポリエチレン系樹脂成分100重量部に対して、ポリスチレン系樹脂成分100〜500重量部となるように調整される。ポリエチレン系樹脂成分100重量部に対してポリスチレン系樹脂成分150〜400重量部となるように調整されることが、更に好ましい。
【0050】
上述のように、複合樹脂中におけるポリスチレン系樹脂成分とポリエチレン系樹脂成分の重量比が上記割合に限定されるのは、複合樹脂中におけるポリスチレン系樹脂成分の含有量が少ないと、ポリエチレン系樹脂成分の量が多くなり、耐熱性が上がりすぎて、複合樹脂粒子を予備発泡する際に、所望の嵩密度にまで発泡できず、得られる発泡体の軽量性が損なわれる一方、多いと、得られる発泡体の機械的強度及び耐薬品性が損なわれてしまうからである。また、得られる発泡体の衝撃エネルギーを吸収する能力の温度依存性が高くなってしまうという問題も発生する。
【0051】
次いで、スチレン系単量体の重合を行う。重合は、特に限定されないが、115〜140℃で、1.5〜5時間行うことが好ましい。重合は、通常、加圧可能な密閉容器中で行われる。
なお、スチレン系単量体の含浸と重合を複数回に分けて行ってもよい。複数回に分けることで、ポリスチレンの重合体粉末の発生を極力少なくできる。
上記工程により複合樹脂粒子を得ることができる。
【0052】
複合樹脂粒子は、粒子の長さをL、平均径をDとした場合のL/Dが0.6〜1.6である円筒状、略球状ないしは球状であり、平均粒子径が0.3〜3.0mmであることが好ましい。
L/Dが0.6より小さく、または1.6より大きく扁平度が大きい場合は、複合樹脂粒子から得られる予備発泡粒子を、金型に充填して発泡体を得る際に、金型への充填性が悪くなることがある。
形状については、充填性をよくするためには、略球状又は球状であることがより好ましい。
複合樹脂粒子の平均粒子径が0.3mm未満では、発泡性樹脂粒子として使用する場合、発泡剤の保持性が低くなり、低密度化が困難となる場合がある。一方、3.0mmを超えると、充填性が悪くなり易く、発泡体の薄肉化が困難となる場合がある。
【0053】
(c)発泡性樹脂粒子
発泡性樹脂粒子は、重合中もしくは重合終了後の上記複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより得られる。含浸は、公知の方法により行うことができる。例えば、重合中での含浸は、重合反応を密閉式の容器中で行い、容器中に発泡剤を圧入することにより行うことができる。重合終了後の含浸は、密閉式の容器中で、発泡剤を圧入することにより行われる。
発泡剤としては、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、ジメチルエーテルなどの揮発性発泡剤が挙げられる。これら発泡剤は、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0054】
発泡剤の含有量は、複合樹脂粒子100重量部に対して、5〜25重量部であることが好ましい。発泡性樹脂粒子のL/D及び平均粒子径は、上記複合樹脂粒子と同程度とすることができる。また形状については、充填性をよくするには略球状又は球状であることがより好ましい。
【0055】
(d)予備発泡粒子
予備発泡粒子は、上記発泡性樹脂粒子を予備発泡させることにより得られる。
予備発泡粒子の嵩発泡倍率は、10〜85倍であることが好ましい。より好ましくは、20〜80倍である。嵩発泡倍率が10倍未満では、得られる発泡体の重量が増加する場合がある。一方、85倍を超えると、発泡させたときに独立気泡率が低下して、予備発泡粒子から得られる発泡体の強度が低下する場合がある。嵩発泡倍率の算出方法については、実施例の欄で説明する。
【0056】
(e)発泡体の製法
発泡体(発泡成形体)は、上記予備発泡粒子を型内発泡成形させることにより得られる。具体的には、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、再度加熱して予備発泡粒子を発泡させながら、発泡粒同士を熱融着させることで得ることができる。加熱用の媒体は水蒸気が好適に使用できる。
発泡体の発泡倍率は、10〜85倍であることが好ましい。より好ましくは、20〜80倍である。発泡倍率が10倍未満では、得られる発泡体の重量が増加する場合がある。一方、85倍を超えると、発泡させたときに独立気泡率が低下して、得られる発泡体の強度が低下する場合がある。
【0057】
本発明の発泡成形体は、その表面の摩擦抵抗が抑制されているので、摩擦音(音鳴り)が抑制された部品梱包材用、自動車部材用または緩衝材用の発泡成形体として好適に用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げてさらに説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例に記載した各種測定法および製造条件を以下で説明する。
【0059】
(ポリエチレン系樹脂の密度)
JIS K6922−1:1998に準拠して密度勾配管法により、ポリエチレン系樹脂の密度を測定する。
【0060】
(ポリエチレン系樹脂の結晶化度)
JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」に記載の方法によりポリエチレン系樹脂の結晶化度を測定する。
すなわち、示差走査熱量計(SIIナノテクノロジー株式会社製、DSC6220型)の測定容器に6.5±0.5mgの試料を充填し、流量30ml/分の窒素ガス流通下、昇温冷却速度10℃/分で昇温冷却しながら結晶化熱量と融解熱量とを測定し、結晶化度を次式により求める。
結晶化度(%)=(結晶化熱量(mJ)/完全結晶の融解熱量(mJ))×100
但し、ポリプロピレン系樹脂(PP)およびポリエチレン系樹脂(PE)の完全結晶融解熱量(理論値)をそれぞれ209.5mJ/mgおよび285.7mJ/mg(参考文献:高分子データハンドブック 基礎編 1986年版)とした。
【0061】
(溶融張力(MS))
バレル直径9.55mmの毛管粘度計(東洋精機製作所社製、キャピログラフ)に、長さ(L)8mm、直径(D)2.095mm、流入角90°のダイを装着することによりMSを測定する。試料温度を160℃、ピストン降下速度を10mm/分、延伸比を47に設定し、この設定下での引き取りに必要な荷重(mN)をMSとする。
【0062】
(MFR)
JIS K6922−1:1998に準拠して、温度190℃、2.16kg荷重でMFRを測定する。
【0063】
(予備発泡粒子の嵩発泡倍率)
予備発泡粒子の嵩発泡倍率は、予備発泡粒子の嵩密度と逆数の関係にある。
予備発泡粒子の嵩密度は、下記の要領で測定する。
まず、予備発泡粒子をメスシリンダに500cm3の目盛りまで充填する。但し、メスシリンダを水平方向から目視し、予備発泡粒子が一粒でも500cm3の目盛りに達していれば、充填を終了する。次に、メスシリンダ内に充填した予備発泡粒子の重量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その重量をW(g)とする。次式により予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
嵩密度(g/cm3)=W/500
したがって、予備発泡粒子の嵩発泡倍率は、上記の嵩密度の逆数を算出することにより導き出される。
予備発泡粒子の嵩発泡倍率(倍)=500/W
【0064】
(発泡成形体の発泡倍率)
発泡体の発泡倍率は、発泡体の密度と逆数の関係にある。
発泡体の密度は、JIS K7222:2005年「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」に記載の方法により以下のように測定する。
50cm3以上(半硬質及び軟質材料の場合は100cm3以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えないように切断し、その重量を測定し、次式により算出する。
密度(g/cm3)=試験片重量(g)/試験片体積(cm3)
試験片状態調節、測定用試験片は、成形後72時間以上経過した試料から切り取り、23℃±2℃×50%±5%又は27℃±2℃×65%±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
したがって、発泡体の発泡倍率は、上記の密度の逆数を算出することにより導き出される。
発泡体の発泡倍率(倍)=試験片体積(cm3)/試験片重量(g)
【0065】
(発泡成形体の圧縮強度)
JIS K7220:2006年「硬質発泡プラスチック−圧縮特性の求め方」記載の方法により圧縮強度を測定する。
すなわち、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、UCT−10T)を用いて、50mm×50mm×25mmのサイズの試験体(上面表皮あり)について、圧縮速度10mm/分として25%圧縮時(10mm変位時)の圧縮強度を測定する。
【0066】
(発泡成形体の曲げ強度および曲げの破断点変位)
JIS K7221−1:2006年「硬質発泡プラスチック−曲げ試験−第1部:曲げ特性の求め方」記載の方法に準拠して、曲げ強度を測定する。
すなわち、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、UCT−10T)を用いて、25mm×130mm×20mmのサイズの試験体(上面表皮あり)について、圧縮速度10mm/分、先端冶具を加圧くさび5R、支持台5Rで、支点間距離100mmとして測定する。
曲げの破断点変位(量)は、曲げ試験において以下の現象が発生した点を、破断点変位量とする。
破断検出感度を0.5%に設定し、直前荷重サンプリング点と比較して、その減少が設定値0.5%を超えた時、直前のサンプリング点を測定する。
【0067】
(発泡成形体の落球衝撃値)
JIS K7211:1976「硬質プラスチックの落錘衝撃試験方法通則」に記載の方法に準拠して落球衝撃強度を測定する。
得られた嵩倍数50倍の発泡成形体を温度50℃で1日間乾燥した後、この発泡成形体から40mm×215mm×20mm(厚さ)の試験片(6面とも表皮なし)を切り出す。
次いで、支点間の間隔が150mmになるように試験片の両端をクランプで固定し、重さ321gの剛球を所定の高さから試験片の中央部に落下させて、試験片の破壊の有無を観察する。
試験片5個が全数破壊する最低の高さから全数破壊しない最高の高さまで5cm間隔で剛球の落下高さ(試験高さ)を変えて試験して、落球衝撃値(cm)、すなわち50%破壊高さを次の計算式により算出する。
【0068】
H50=Hi+d[Σ(i・ni)/N±0.5]
式中の記号は次のことを意味する。
H50 :50%破壊高さ(cm)
Hi :高さ水準(i)が0のときの試験高さ(cm)であり、試験片が破壊することが予測される高さ
d :試験高さを上下させるときの高さ間隔(cm)
i :Hiのときを0とし,1つずつ増減する高さ水準(i=…−3、−2、−1、0、1、2、3…)
ni :各水準において破壊した(または破壊しなかった)試験片の数で、いずれか多いほうのデータを使用(同数の場合はどちらを使用してもよい)
N :破壊した(または破壊しなかった)試験片の総数(N=Σni)で、いずれか多いほうのデータを使用(同数の場合はどちらを使用してもよい)
±0.5:破壊したデータを使用するときは負の数、破壊しなかったデータを使用するときは正の数を採用
【0069】
(発泡成形体の静摩擦係数、動摩擦係数、第一極大荷重、積分平均荷重および振幅)
JIS K7125:1999「プラスチックフィルム及びシートの摩擦係数試験方法」記載の方法に準拠して、静摩擦係数、動摩擦係数、第一極大荷重、積分平均荷重および振幅を測定する。この場合の摩擦係数試験とは、同一材料の上を滑らせた時の摩擦係数を測定するものである。
まず、発泡成形体から100mm×100mm、厚み0.5mm以下の試験片を切り出す。この試験片と、63mm×63mm(接触面積40cm2)、全質量200g(1.96N)の滑り片とを、両面テープで貼り付ける。この際、均一な圧力分布をかけるために、滑り片の底面を弾力性のある材料、フェルトで覆っておく。
次に、表面が水平で平滑である試験テーブルの上に、A4サイズ以上の滑り相手材料(発泡成形体)を置き、その上に上記試験片と滑り片を載せる。
テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、UCT−10T)を用いて、滑り相手材料の上を、試験速度100mm/分、試験距離80mmで試験片を動かして荷重を測定する。
【0070】
測定区間における最初に現れた極大点荷重及び荷重平均値を、それぞれ第一極大荷重(N)及び積分平均荷重(N)とする。
力は直線的に増加して摩擦を与え、最大荷重に達するピークが静摩擦力FSを表す。
静摩擦力FSに第一極大荷重の値を用い、次式(1)により静摩擦係数μsを求める。
μS=FS/FP (1)
[式中、μSは静摩擦係数、FSは静摩擦力(N)、FPはすべり片の質量によって生じる法線力(=1.96N)を示す]
【0071】
静摩擦力のピークを無視し、接触面間の相対ずれ運動を開始した後から60mmまでの平均荷重が動摩擦力FDである。
動摩擦力FDに積分平均荷重の値を用い、次式(2)により動摩擦係数μDを求める。
μD=FD/FP (2)
[式中、μDは動摩擦係数、FDは動摩擦力(N)、FPはすべり片の質量によって生じる法線力(=1.96N)を示す]
また、測定区間における極大点と極小点の差を振幅(N)とする。
【0072】
積分平均荷重(N)が0.80N以下の場合および0.80Nを超える場合をそれぞれ評価「○」および「×」とする。
振幅(N)が0.01〜0.15Nの範囲の場合およびその範囲外の場合をそれぞれ評価「○」および「×」とする。
【0073】
(実施例1)
下記の物性を有する重合体からなる高密度ポリエチレン系樹脂(東ソー社製、グレード名:09S53B、融点123℃)のペレット100重量部を押出機に供給して溶融混練して水中カット方式により造粒して楕円球状(卵状)の高密度ポリエチレン系樹脂粒子を得た。この樹脂粒子の平均重量は100粒あたり40mgであった。
(1)エチレン単独重合体またはエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体
(2)密度936kg/m3
(3)2.16kg加重時のMFR2.6g/10分
(4)MS(160℃での溶融張力(mN))>90−130×log(MFR)
(5)結晶化度59%
【0074】
この高密度ポリエチレン樹脂粒子400gを攪拌機付の5リットルオートクレーブに入れた。この後、水性媒体としての純水2kg、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.25gを加え、撹拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温した。
得られた懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.3g溶解させたスチレンモノマー200gを30分掛けて滴下した。滴下後、温度60℃で30分間保持することで、高密度ポリエチレン系樹脂粒子中にスチレン系単量体を含浸させた。含浸後、温度130℃に昇温して、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
【0075】
次に、温度120℃に冷却した懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5gを加えた。その後重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを4.8g溶解させたスチレンモノマー1400gを5時間掛けて滴下した。滴下後、温度120℃で1時間保持することで、高密度ポリエチレン系樹脂粒子中にスチレン系単量体を含浸させた。含浸後、温度140℃に昇温して、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させ、複合樹脂粒子を得た。
【0076】
次いで、常温(約23℃)まで冷却し、オートクレーブから複合樹脂粒子を取り出した。複合樹脂粒子2kgと水2リットルとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2gを、5リットルの攪拌機付オートクレーブに入れた。さらに、発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)15重量部300g(520ml)をオートクレーブに入れた。この後、温度70℃に昇温して、3時間攪拌を続けることで発泡性樹脂粒子を得た。
その後、常温まで冷却して、発泡性樹脂粒子をオートクレーブから取り出し、脱水させた。
【0077】
得られた発泡性樹脂粒子を直ちに水蒸気で嵩発泡倍率40倍(嵩密度0.025g/cm3)に予備発泡させることで、予備発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、400mm×300mm×30mmの大きさの成形空間(キャビティ)を有する成形金型を用い、キャビティ内に前記発泡樹脂粒子を充填した。そして、キャビティ内に0.l0MPaの水蒸気を導入して加熱し、型内成形を行なった。加熱時間としては、(1)金型加熱10秒、(2)一方加熱15秒、(3)逆一方加熱10秒、(4)両面加熱30秒を順次行った。その後、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却(水冷:15秒、放冷:80秒)して、発泡成形体(発泡倍率40倍)を得た。なお、型内成形には、発泡成形機(積水工機社製、商品名「ACE−3SP」)を使用した。
得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。また発泡体の外観および融着は共に良好であった。
また、摩擦係数の測定結果を図1に示す。
【0078】
(実施例2)
実施例1と同様にして得られた発泡性樹脂粒子を実施例1と同様にして嵩発泡倍率80倍(嵩密度0.013g/cm3)に予備発泡させ、実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。
また、摩擦係数の測定結果を図2に示す。
【0079】
(実施例3)
(1)第1の重合時の高密度ポリエチレン系樹脂400gを600gとし、
(2)第1の重合時のジクミルパーオキサイド0.3gを0.6gとし、
(3)第1の重合時のスチレン単量体200gを300gとし、
(4)第2の重合時のジクミルパーオキサイド4.8gを4.2gとし、
(5)第2の重合時のスチレン単量体1400gを1100gとし、
(6)第2の重合時のスチレン滴下時間5時間を4時間30分とした
こと以外は実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子を得た。
得られた発泡性樹脂粒子を実施例1と同様にして嵩発泡倍率20倍(嵩密度0.050g/cm3)に予備発泡させ、実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。
また、摩擦係数の測定結果を図3に示す。
【0080】
(実施例4)
実施例3と同様にして得られた発泡性樹脂粒子を実施例1と同様にして嵩発泡倍率35倍(嵩密度0.029g/cm3)に予備発泡させ、実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
また、摩擦係数の測定結果を図4に示す。
【0081】
(実施例5)
(1)第1の重合時の高密度ポリエチレン400gを700gとし、
(2)第1の重合時のジクミルパーオキサイド0.3gを0.7gとし、
(3)第1の重合時のスチレン単量体200gを350gとし、
(4)第2の重合時のジクミルパーオキサイド4.8gを3.9gとし、
(5)第2の重合時のスチレン単量体1400gを950gとし、
(6)第2の重合時のスチレン滴下時間5時間を4時間15分とした
こと以外は実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子を得た。
得られた発泡性樹脂粒子を実施例1と同様にして嵩発泡倍率35倍(嵩密度0.029g/cm3)に予備発泡させ、実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。
また、摩擦係数の測定結果を図5に示す。
【0082】
(実施例6)
実施例5と同様にして得られた発泡性樹脂粒子を実施例1と同様にして嵩発泡倍率40倍(嵩密度0.025g/cm3)に予備発泡させ、実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例7)
下記の物性を有する重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(日本ユニカー社製、NF−444A、融点117〜121℃)のペレット100重量部を押出機に供給して溶融混連して水中カット方式により造粒し、楕円球状(卵状)の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子を得た。樹脂粒子の平均重量は100粒あたり40mgであった。
(1)直鎖状低密度ポリエチレン
(2)密度912kg/m3
(3)2.16kg加重時のMFRが2.0g/10分
(4)結晶化度41%
【0084】
この直鎖状ポリエチレン樹脂粒子400gを攪拌機付の5リットルオートクレーブに入れた。この後、水性媒体としての純水2kg、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.25gを加え、撹拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温した。
得られた懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.5g溶解させたスチレンモノマー200gを30分掛けて滴下した。滴下後、温度60℃で30分間保持することで、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子中にスチレン系単量体を含浸させた。含浸後、温度135℃に昇温して、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
【0085】
次に、温度115℃に冷却した懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5gを加えた。その後重合開始剤として、t-ブチルパーオキシベンゾエート5.6gを溶解させたスチレンモノマー1400gを4時間かけて滴下した。滴下後、温度115℃で1時間保持することで、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂粒子中にスチレン系単量体を含浸させた。含浸後、温度140℃に昇温して、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させ、複合樹脂粒子を得た。
【0086】
次いで、常温(約23℃)まで冷却し、オートクレーブから複合樹脂粒子を取り出した。複合樹脂粒子2kgと水2リットルとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2gを、5リットルの攪拌機付オートクレーブに入れた。さらに、発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)15重量部300g(520ml)をオートクレーブに入れた。この後、温度70℃に昇温して、3時間攪拌を続けることで発泡性樹脂粒子を得た。
その後、常温まで冷却して、発泡性樹脂粒子をオートクレーブから取り出し、脱水させた。
【0087】
得られた発泡性樹脂粒子を直ちに水蒸気で嵩発泡倍率50倍(嵩密度0.020g/cm3)に予備発泡させることで、予備発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、400mm×300mm×30mmの大きさの成形空間(キャビティ)を有する成形金型を用い、キャビティ内に前記発泡樹脂粒子を充填した。そして、キャビティ内に0.08MPaの水蒸気を導入して加熱し、型内成形を行なった。加熱時間としては、(1)金型加熱10秒、(2)一方加熱15秒、(3)逆一方加熱10秒、(4)両面加熱20秒を順次行った。その後、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却(水冷:10秒、放冷:80秒)して、発泡成形体(発泡倍率50倍)を得た。なお、型内成形には、発泡成形機(積水工機社製、商品名「ACE−3SP」)を使用した。
実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。また、また発泡体の外観および融着は共に良好であった。
また、摩擦係数の測定結果を図6に示す。
【0088】
(実施例8)
(1)第1の重合時の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂400gを600gとし、
(2)第1の重合時のジクミルパーオキサイド0.3gを0.75gとし、
(3)第1の重合時のスチレン単量体200gを300gとし、
(4)第2の重合時のt-ブチルパーオキシベンゾエート5.6gを4.9gとし、
(5)第2の重合時のスチレン単量体1400gを1100gとし、
(6)第2の重合時のスチレン滴下時間4時間を4時間30分とした
こと以外は実施例7と同様にして発泡性樹脂粒子を得た。
得られた発泡性樹脂粒子を実施例1と同様にして嵩発泡倍率40倍(嵩密度0.025g/cm3)に予備発泡させ、実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。
また、摩擦係数の測定結果を図7に示す。
【0089】
(実施例9)
下記の物性を有する重合体からなる高密度ポリエチレン系樹脂(東ソー社製、グレード名:07S53A、融点125℃)を用いたこと以外は実施例1と同様して実施し発泡性樹脂粒子を得た。
(1)エチレン単独重合体またはエチレンと炭素数3〜8のα―オレフィンとの共重合体
(2)密度942kg/m3、
(3)2.16kg加重時のMFRが4.9g/10分
(4)MS(160℃での溶融張力(mN))>90−130×log(MFR)
(5)結晶化度65%
を用いた以外は実施例3と同様にして発泡性樹脂粒子を得た。
得られた発泡性樹脂粒子を嵩発泡倍率35倍(嵩密度0.029g/cm3)に予備発泡させ、実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。
【0090】
(比較例1)
下記の物性を有する重合体からなるエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下「EVA」という、日本ユニカー社製、NUC−3450、酢酸ビニル含有量:5重量%、融点:105℃)のペレット100重量部を押出機に供給して溶融混連して水中カット方式により造粒し、楕円球状(卵状)のEVA樹脂粒子(ポリエチレン系樹脂粒子)を得た。EVA樹脂粒子の平均重量は100粒あたり40mgであった。
(1)エチレンと酢酸ビニルの共重合体
(2)密度930kg/m3
(3)2.16kg加重時のMFRが0.5g/10分
(4)MS(160℃での溶融張力(mN))>110−100×log(MFR)]
【0091】
このEVA樹脂粒子600gを攪拌機付の5リットルオートクレーブに入れた。この後、水性媒体としての純水2kg、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.25gを加え、撹拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温した。
得られた懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.6g溶解させたスチレンモノマー300gを30分掛けて滴下した。滴下後、温度60℃で30分間保持することで、EVA樹脂粒子中にスチレン系単量体を含浸させた。含浸後、温度130℃に昇温して、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
【0092】
次に、温度90℃に冷却した懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5gを加えた。この後、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド2.2g、t-ブチルパーオキシベンゾエート0.3g、架橋剤としてジクミルパーオキサイド5.6g溶解させたスチレンモノマー1100gを4時間かけて滴下した。滴下後、温度90℃で1時間保持することで、EVA樹脂粒子中にスチレン系単量体を含浸させた。含浸後、温度143℃に昇温して、この温度で2時間保持して重合(第2重合)させ、複合樹脂粒子を得た。
【0093】
次いで、常温(約23℃)まで冷却し、オートクレーブから複合樹脂粒子を取り出した。複合樹脂粒子2kgと水2リットルとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2gを、5リットルの攪拌機付オートクレーブに入れた。更に、発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)15重量部300g(520ml)をオートクレーブに入れた。この後、温度70℃に昇温して、3時間攪拌を続けることで発泡性樹脂粒子を得た。
その後、常温まで冷却して、発泡性樹脂粒子をオートクレーブから取り出し、脱水させた。
【0094】
得られた発泡性樹脂粒子を水蒸気で嵩発泡倍率30倍(嵩密度0.033g/cm3)に予備発泡させることで、予備発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、400mm×300mm×30mmの大きさの成形空間(キャビティ)を有する成形金型を用い、キャビティ内に前記発泡樹脂粒子を充填した。そして、キャビティ内に0.08MPaの水蒸気を導入して加熱し、型内成形を行なった。加熱時間としては、(1)金型加熱10秒、(2)一方加熱10秒、(3)逆一方加熱5秒、(4)両面加熱15秒を順次行った。その後、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却(水冷:10秒、放冷:60秒)して、発泡成形体(発泡倍率30倍)を得た。なお、発泡成形には、ACE−3SP(積水工機社製)を使用した。
実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。また、また発泡体の外観および融着は共に良好であった。
また、摩擦係数の測定結果を図8に示す。
【0095】
(比較例2)
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名:F−744NP、融点:133℃、メルトフローレート:7.0g/10分、密度:0.9g/cm3)100質量部を押出機に供給して溶融混練してストランドカットにより造粒ペレット化することにより、球状(卵状)のポリプロピレン系樹脂粒子(100粒あたり54mg、平均粒子径:約1mm)を得た。
次に、撹拝機付5Lオートクレーブに、上記ポリプロピレン系樹脂粒子800gを入れ、水性媒体として純水2kg、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5gを加え、撹拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後、60℃に昇温して水系懸濁液とした。
【0096】
次に、得られた懸濁液中にジクミルパーオキサイド0.8gを溶解させたスチレン単量体400gを30分掛けて滴下した。そして、滴下後、60℃で30分保持してポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
次に、反応系の温度を140℃に昇温して1時間30分保持し、スチレン単量体をポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させた。
次に、第1の重合の反応液を123℃にし、この反応液中にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.3gを加えた。その後、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド3.6gを溶解したスチレン単量体800gを4時間かけて滴下し、ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合(第2の重合)させた。
滴下が終了した後、123℃で1時間保持し、その後140℃に昇温して3時間保持することで重合を完結させ、改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0097】
次に、常温まで冷却し、上記改質ポリスチレン系樹脂粒子を5Lオートクレープから取り出した。取り出した改質ポリスチレン系樹脂粒子2kgと水2Lとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2gを再び攪拌機付の5Lオートクレーブに投入し、発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)300g(520ml)を注入した。注入後、70℃に昇温して3時間撹拝を続けた。
その後、常温まで冷却して5Lオートクレーブから取り出し、脱水して発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0098】
次に、得られた発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を直ちに水蒸気で予備発泡(嵩発泡倍数35倍)させ、改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子(以下、発泡樹脂粒子と記す)を得た。400mm×300mm×30mmの大きさの成形空間(キャビティ)を有する成形金型を用い、キャビティ内に上記発泡樹脂粒子を充填した。そして、キャビティ内に0.25MPaの水蒸気を導入して加熱し、型内成形を行+った。加熱時間としては、(1)金型加熱10秒、(2)一方加熱15秒、(3)逆一方加熱10秒、(4)両面加熱20秒を順次行った。その後、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却(水冷:10秒、放冷:80秒)して、発泡成形体(発泡倍率35倍)を得た。なお、型内成形には、発泡成形機(積水工機社製、商品名「ACE−3SP」)を使用した。
実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。
また、摩擦係数の測定結果を図9に示す。
【0099】
(比較例3)
下記の物性を有する重合体からなる発泡倍率30倍(密度0.030g/cm3)の発泡ポリプロピレン樹脂粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして発泡体を得た。
(1)プロピレンとエチレンのランダム共重合体、
(2)密度900kg/m3、
(3)2.16kg加重時のMFRが7.0g/10分、
(4)MS(160℃での溶融張力(mN))>90−130×log(MFR)]
実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。
また、摩擦係数の測定結果を図10に示す。
【0100】
(比較例4)
内容積5リットルの撹拌機付オートクレーブにポリスチレン系樹脂粒子2kg、水1.5L、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.1gを入れ、撹拌し懸濁させ、その後100℃まで昇温した。
次に、水0.5kgにピロリン酸マグネシウム2g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5gに可塑剤としてジイソブチルアジペート(DIBA)20gを加えてホモミキサーで撹拌することで調整し懸濁液を反応器内に圧入した。
その後、発泡剤であるブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)148g(255ml)を液の状態で反応器内に圧入した。
この後、反応器内部を100℃で3時間保持し、20℃まで冷却して粒子を取り出し、洗浄、脱水、乾燥した。得られた発泡性スチレン系樹脂粒子は、0.355〜0.710mmの粒度分布を有していた。
更に予備発泡後の発泡粒子の気泡径が完全に安定するまで15℃で3日間熟成させて、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0101】
この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を内容量40リットルの小型バッチ式予備発泡機を用いて、常圧下でゲージ圧力0.05MPaの水蒸気で加熱し嵩倍数40倍に予備発泡した。
得られた予備発泡粒子を20℃で24時間放置し、乾燥、熟成させた。この後、発泡剤量の測定を行った後に、発泡成形機(積水工機社製 商品名「ACE−3SP」)の金型内に充填し、0.06MPaの水蒸気で加熱し、型内成形を行い、縦300mm×横400mm×高さ30mmの板状の発泡成形体を得た。
実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。
また、摩擦係数の測定結果を図11に示す。
【0102】
(比較例5)
比較例4と同様にして得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、嵩発泡倍率50倍(嵩密度0.020g/cm3)に予備発泡させ、型内成形を行い、縦300mm×横400mm×高さ30mmの板状の発泡成形体を得た。
実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。
また、摩擦係数の測定結果を図12に示す。
【0103】
【表1】
表1の結果から、実施例1〜9の発泡成形体は、発泡成形体表面の摩擦抵抗が抑制され摩擦音を抑制できることがわかる。また、図1〜12の結果から、実施例1〜9の発泡成形体は、比較例1〜5の発泡成形体と比較して、積分平均荷重および振幅が小さいことがわかる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、音鳴りが抑制された、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを基本樹脂として含む発泡成形体(以下、単に「発泡体」ともいう)およびその用途に関する。さらに詳しくは、本発明は、発泡成形体同士または発泡成形体とそれに付随する構成部材とが接触して擦り合わされた際に発生する高周波数の摩擦音が抑制された発泡成形体およびその用途に関する。本発明の発泡成形体は、自動車のギヤ部品のような金属部品などの輸送(搬送)に用いる部品梱包材、および嵩上げ材やティビアパッド、バンパー芯材などの自動車部材(内装材や緩衝材)などに好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車のギヤ部品のような金属部品などの輸送(搬送)に用いられる部品梱包材としては、軽量でありかつ比較的安価であることから、ポリスチレン系樹脂発泡成形体、およびポリプロピレン系樹脂発泡成形体、ポリエチレン系樹脂発泡成形体、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂または直鎖状低密度ポリエチレンを一部含んだポリスチレン系樹脂発泡成形体などが用いられている。
しかしながら、上記の発泡成形体は、例えば、金属部品を輸送する際の部品梱包材として使用された場合に、部品梱包材同士の重ね合わせによる接触や金属部品と部品梱包材との接触により、高周波数の耳障りな摩擦音が発生することがある。
【0003】
他方、上記の発泡成形体は、従来から嵩上げ材やティビアパッド、バンパー芯材などの自動車部材として用いられている。
しかしながら、上記の発泡成形体は、部品梱包材の場合と同様に、発泡成形体同士の接触または発泡成形体と他のプラスチック製品、金属部品との接触により、高周波数の耳障りな摩擦音が発生することがある。このような摩擦音は、静粛性が要求される自動車内において不快に感じられる。
【0004】
上記のような問題を解決するために様々な技術が提案されている。
例えば、特開平10−298341号公報(特許文献1)および特開平7−246888号公報(特許文献2)には、それぞれ発泡体製品の接触面に界面活性剤を塗布する方法および発泡成形体である車両用内装品の接触面に低摩擦係数を有する塗膜層を形成する方法が開示されている。
これらの技術では、摩擦抵抗を減らし、こすれによる異音の発生を抑制しているが、塗布面または形成面が使用により劣化し、長期(長日数)にわたって音鳴り防止効果や低摩擦係数を維持することができないという課題がある。また、塗布または形成工程が加わるために、製造工数が増加するという課題がある。
【0005】
また、特開2004−330650号公報(特許文献3)には、外観低下や熱成形に必要な二次発泡力の短期間での低下のない、成形性およびブロッキング防止に優れたポリスチレン系樹脂発泡積層シートを提供するために、発泡シートの最大静摩擦係数および表面粗さを特定の範囲に設定し、発泡シートに特定量のシリコーンオイルを塗布することが開示されている。しかしながら、この技術でも、シリコーンオイルの塗布面が使用により劣化し、長期(長日数)にわたってその効果が維持できないという課題がある。また、塗布工程が加わるために、製造工数が増加するという課題がある。
【0006】
さらに、特開2007−98964号公報(特許文献4)には、異種材料を用いることにより、車両構造物との擦れにより発生する軋み音のような音鳴りを低減する車両用内装材が開示されている。しかしながら、この技術では、原料樹脂の検討がなされておらず、さらなる摩擦性低下が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−298341号公報
【特許文献2】特開平7−246888号公報
【特許文献3】特開2004−330650号公報
【特許文献4】特開2007−98964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の先行技術では、塗布面などの劣化により長期にわたる効果が期待できず、塗布工程などが加わるために、製造工数が増加するという課題があり、また原料樹脂などの検討によりさらなる効果の向上の余地を残している。
【0009】
本発明は、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを基本樹脂として含む発泡成形体の音鳴りを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討の結果、特定の密度のポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを特定の割合で含ませ、JIS K7125の摩擦係数測定における積分平均荷重および振幅を特定の範囲に設定することにより、発泡成形体の音鳴りを抑制できることを意外にも見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、発泡成形体に用いる樹脂原料に着目し、上記のように樹脂の配合割合および物性値を特定の範囲に設定することにより、発泡成形体表面の摩擦抵抗を抑制でき、その摩擦音を抑制できることを見出した。また、これによれば、発泡成形体の表面に界面活性剤などを塗布するような加工を必要としない。
【0011】
かくして、本発明によれば、密度912〜950kg/m3のポリエチレン系樹脂100重量部と、ポリスチレン系樹脂100〜500重量部とを基本樹脂として含む発泡成形体であり、JIS K7125の摩擦係数測定において0.80N以下の積分平均荷重および0.01〜0.15Nの範囲の振幅を有することを特徴とする発泡成形体が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを基本樹脂として含む発泡成形体の音鳴りを抑制することができる。
すなわち、上記のように樹脂の配合割合および物性値を特定の範囲に設定することにより、発泡成形体表面の摩擦抵抗を抑制でき、その摩擦音を抑制できる。また、これによれば、発泡成形体の表面に界面活性剤などを塗布するような加工を必要としない。
【0013】
また、ポリエチレン系樹脂が40〜70%の範囲の結晶化度を有するポリエチレン系樹脂である場合、上記の優れた効果がさらに発揮される。
さらに、発泡成形体が10〜85倍の範囲の発泡倍数を有する場合、上記の優れた効果がさらに発揮される。
また、本発明の発泡成形体は、その表面の摩擦抵抗が抑制されているので、摩擦音(音鳴り)が抑制された部品梱包材用、自動車部材用または緩衝材用の発泡成形体として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(実施例1)。
【図2】本発明の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(実施例2)。
【図3】本発明の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(実施例3)。
【図4】本発明の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(実施例4)。
【図5】本発明の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(実施例5)。
【図6】本発明の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(実施例7)。
【図7】本発明の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(実施例8)。
【図8】従来の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(比較例1)。
【図9】従来の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(比較例2)。
【図10】従来の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(比較例3)。
【図11】従来の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(比較例4)。
【図12】従来の発泡成形体のJIS K7125による摩擦係数測定の結果を示す図である(比較例5)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の発泡成形体は、密度912〜950kg/m3のポリエチレン系樹脂100重量部と、ポリスチレン系樹脂100〜500重量部とを基本樹脂として含む発泡成形体であり、JIS K7125の摩擦係数測定において0.80N以下の積分平均荷重および0.01〜0.15Nの範囲の振幅を有することを特徴とする。
摩擦係数測定における積分平均荷重および振幅は、発泡成形体表面の摩擦抵抗の指針となる数値であり、上記の数値を有することは、その摩擦抵抗が小さいことを意味する。
【0016】
「積分平均荷重」は、測定区間における荷重平均値を意味し、JIS K7125:1999「プラスチックフィルム及びシートの摩擦係数試験方法」記載の方法に準拠して測定することができる。
積分平均荷重は、0.80N以下、好ましくは0.75N以下であり、その下限は好ましくは0.70Nである。
積分平均荷重が0.80Nを超えると、表面摩擦係数が高いため、成形体同士のこすれ音が発生し易くなることがある。
【0017】
「振幅」は、測定区間における極大点と極小点の差を意味し、JIS K7125:1999「プラスチックフィルム及びシートの摩擦係数試験方法」記載の方法に準拠して測定することができる。
振幅は、0.01〜0.15Nの範囲であり、好ましくは0.01〜0.13Nの範囲、より好ましくは0.01〜0.10Nの範囲である。
振幅が0.15Nを超えると、表面摩擦係数が高いため、発泡成形体表面が振動して音鳴りし易くなることがある。
【0018】
(a)ポリエチレン系樹脂
本発明で用いられるポリエチレン系樹脂は、密度912〜950kg/m3、好ましくは密度912〜942kg/m3、より好ましくは密度930〜936kg/m3のポリエチレン系樹脂である。
ポリエチレン系樹脂の密度が、912kg/m3未満の場合、融解温度が低いため、得られる発泡体の耐熱性が不足することがある。一方、950kg/m3を超えると、融解温度が高いため発泡成形温度が高くなり生産性が低下することに加えて、得られる発泡体は耐衝撃性に劣るものとなる。なお、エチレン系樹脂の密度は、JIS K6922−1:1998に準拠して密度勾配管法を用いて測定されたものをいう。
【0019】
本発明で用いられるポリエチレン系樹脂は、特に限定されないが、40〜70%の範囲の結晶化度を有するポリエチレン系樹脂であるのが好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体またはエチレンと炭素数3以上のオレフィンとの共重合体であるのが好ましい。
上記炭素数3以上のオレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン(例えば、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン)、環状オレフィン(例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン)、ジエン(例えば、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン)などが挙げられる。炭素数3以上のオレフィン由来の成分が、ポリエチレン系樹脂に占める割合は、特に限定されないが、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
なお、発明を阻害しない範囲で、スチレンをエチレンと共重合させてもよい。
【0020】
結晶化度は、JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」に準拠した測定で次式により求めることができる値であり、具体的な測定法は、実施例の欄に記載する。
結晶化度(%)=(結晶化熱量(mJ)/完全結晶の融解熱量(mJ))×100
結晶化度は、40〜70%の範囲であり、好ましくは41〜65%の範囲、より好ましくは41〜60%の範囲である。
結晶化度が40%未満では、結晶性が低いため発泡成形体の表面摩擦係数が高くなるおそれがある。一方、結晶化度が70%を超えると、結晶性が高いため発泡成形温度が高くなり生産性が低下するおそれがある。
【0021】
ポリエチレン系樹脂は、190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート[MFR(g/10分)]が0.1以上20以下であるのが好ましい。
MFRが0.1g/10分未満の場合、発泡倍率が低下することがある。また、20g/10分を超えると溶融張力が小さくなり発泡倍率が低下することに加え、発泡体の強度も低下する場合がある。より好ましいMFRは2〜10g/10分である。MFRの測定法は、実施例の欄に記載する。
【0022】
ポリエチレン系樹脂は、160℃で測定した溶融張力[MS160(mN)]が50〜240程度であるのが好ましく、MFRの関係が、次式(1)を満たすのが好ましい。
MS160>90−130×log(MFR)
MSの測定法は、実施例の欄に記載する。
【0023】
ポリエチレン系樹脂は、直鎖状ポリエチレン換算で、40000〜120000の重量平均分子量(Mw)を有することが好ましい。Mwが、40000未満では、発泡体の強度が低くなる場合がある。一方、120000を超えると、ポリエチレン系樹脂の粘度が高くなり、発泡成形が困難になる場合がある。
また、ポリエチレン系樹脂は、Mwと数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、3.5〜10であるのが好ましい。この範囲であることで、ポリエチレン系樹脂の分子量分布を狭くできるので、性質にばらつきの少ない発泡体を得ることができる。なお、Mnは、直鎖状ポリエチレン換算の値を意味する。
【0024】
ポリエチレン系樹脂は、架橋していても架橋していなくてもよい。架橋していない場合、リサイクルが容易であるという利点がある。架橋の有無は、ゲル分率を測定することにより判断でき、値が大きい場合、架橋が多く、小さい場合、架橋が少ないことを意味する。
ポリエチレン系樹脂は、例えば、以下の方法により、マクロモノマーの存在下に、オレフィンを重合させることで得られた樹脂であることが好ましい。
【0025】
ここで、マクロモノマーは、末端にビニル基を有するエチレンの単独重合体または末端にビニル基を有するエチレンと炭素数3以上のオレフィンとの共重合体であり、2000以上のMnと、2〜5のMw/Mnとを有していることが好ましい。炭素数3以上のオレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン(例えば、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン)などが挙げられる。これらオレフィンは、単独でも、2種以上の組み合わせでもよい。
【0026】
マクロモノマーのMnは、5000以上であることがより好ましく、10000以上であることが更に好ましい。上限は、100000であることが好ましい。また、Mw/Mnは、2〜4であることがより好ましく、2〜3.5であることが更に好ましい。
MnおよびMwの測定方法の一例を以下に挙げる。
測定に使用するGPC装置は、東ソー社製HLC−8121GPC/HTであり、カラムとして東ソー社製TSKgel GMHhr−H(20)HTを用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4−トリクロロベンゼンを用いる。測定試料は、1.0mg/mlの濃度に調整し、GPC装置への注入量を0.3mlとする。各分子量の検量線は、分子量既知のポリエチレン試料を用いて校正する。Mn及びMwは、直鎖状ポリエチレン換算値として求める。
【0027】
更に、マクロモノマーの主鎖であるメチレン炭素1000個当たりのビニル末端数をX、マクロモノマーの主鎖であるメチレン炭素1000個当たりの飽和末端数をYとした場合、式Z=X/[(X+Y)×2]で表されるZが0.5〜1であることが好ましい。Zは0.25〜1であることがより好ましい。なお、ビニル末端及び飽和末端は、1H−N
MR、13C−NMR又はFT−IRによりその数を測定できることは、当業者によく知られている。例えば、13C−NMRの場合、ビニル末端は114ppmと139ppmに、飽和末端は32.3ppm、22.9ppm及び14.1ppmにピークを有し、このピークからその数を測定できる。
マクロモノマーのビニル末端数及び飽和末端数の算出方法の一例を以下に挙げる。
マクロモノマーの末端構造は、日本電子社製JNM−ECA400型核磁気共鳴装置を用いて、13C−NMRによって確認する。溶媒には、テトラクロロエタン−d2を使用する。ビニル末端数(X)は、主鎖メチレン炭素(化学シフト:30ppm)1000個当たりの個数として、114ppmと139ppmのピークの平均値から求める。一方、飽和末端数(Y)は、ビニル末端基数と同様に、32.3ppm、22.9ppm及び14.1ppmピークの平均値から求める。得られたビニル末端数Xと飽和末端数Yとから、式Z=X/[(X+Y)×2]により、Zを求める。
【0028】
上記マクロモノマーとオレフィンとを共重合させることで、本発明の使用に好適なポリエチレン系樹脂が得られる。ここで、マクロモノマー以外の新たな樹脂の全樹脂に対する割合は、1〜99重量%が好ましく、5〜90重量%がより好ましく、30〜80重量%が更に好ましい。新たな樹脂の割合の測定は、樹脂のGPCチャートを、マクロモノマーのGPCチャートと比較することにより行うことができる。具体的には、両チャートの比較により新たな樹脂に由来するピークを決定し、そのピークの面積の全ピークの面積に対する割合が、新たな樹脂の割合に相当する。
【0029】
ポリエチレン系樹脂製造方法の概略について以下に記載する。
まず、2つのシクロペンタジエニル基が架橋基で架橋されている架橋型ビスシクロペンタジエニルジルコニウム錯体と有機化合物で処理された粘土鉱物とからなる触媒の存在下、エチレンを重合させる、又はエチレンと炭素数3以上のオレフィンとを共重合させることで、マクロモノマーを製造する。上記錯体としては、ジメチルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジエチルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドなどが挙げられる。
【0030】
また、粘土鉱物としては、ヘクトライトを通常使用できる。更に、有機化合物としては、N,N−ジメチル−オクタデシルアミン、N,N−ジオレイルメチルアミンなどのアミン系化合物が挙げられる。
次に、架橋型(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウム錯体の存在下、マクロモノマーとオレフィンとを共重合させることでポリエチレン系樹脂を得ることができる。上記錯体としては、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0031】
マクロモノマーと共重合させるオレフィンとしては、炭素数2以上のオレフィンを使用できる。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン(例えば、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン)などが挙げられる。これらオレフィンは、単独でも、2種以上の組み合わせでもよい。
【0032】
ポリエチレン系樹脂は、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、炭素数2〜20のα−オレフィン単独重合体及び共重合体が挙げられる。具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ1−ペンテン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、プロピレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/1−ブテン共重合体、4−メチル−1−ペンテン/エチレン共重合体、エチレン/プロピレン/ポリエン共重合体、種々のプロピレン系ブロック共重合体やプロピレン系ランダム共重合体などが挙げられる。
これら他の樹脂の配合割合は、全ポリエチレン系樹脂量に対して、50重量%以下が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。
【0033】
ポリエチレン系樹脂には、必要に応じて、着色剤、安定剤、充填材(補強材)、高級脂肪酸金属塩、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、天然又は合成油、ワックス、紫外線吸収剤、耐候安定剤、防曇剤、坑ブロッキング剤、スリップ剤、被覆剤、中性子遮蔽剤などの添加剤が含まれていてもよい。この内、着色剤としては、無機及び有機の着色剤(顔料又は染料)をいずれも使用できる。特に、酸化鉄、カーボンブラックなどの無機着色剤が好ましい。
【0034】
酸化鉄としては、黄色系統のものとしてα−FeOOH(含水結晶)、赤色系統のものとしてα−Fe2O3、黒色系統のものとして(FeO)x(Fe2O3)yなどが挙げられる。これら酸化鉄は、Feの一部が、Zn、Mgなどの他の金属で置き換えられていてもよい。更に、これら酸化鉄は、所望の色を得るために、混合して用いてもよい。この内、黒色系統の(FeO)x(Fe2O3)yに含まれるFe3O4であることが好ましい。
【0035】
酸化鉄は、0.1〜1μmの平均粒子径を有していることが好ましく、0.2〜0.8μmがより好ましい。平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(日本電子社製:ロドス)により測定できる。
【0036】
酸化鉄は、ポリエチレン系樹脂中、1.5〜70重量%の範囲で含まれていることが好ましく、5〜40重量%の範囲がより好ましく、10〜30重量%の範囲が更に好ましい。1.5重量%未満では、ポリエチレン系樹脂が十分着色されない場合がある。一方、70重量%を超えると、ポリエチレン系樹脂中に混合することが困難となる場合がある。加えて、酸化鉄の比重がポリエチレン系樹脂より大きいため、ポリエチレン系樹脂粒子が重くなり、スチレン系単量体を均一に含浸させることが困難となる場合がある。
【0037】
カーボンとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、黒鉛、炭素繊維などのカーボンブラックが挙げられる。
カーボンは、ポリエチレン系樹脂中、1〜50重量%の範囲で含まれていることが好ましく、2〜30重量%の範囲がより好ましい。1重量%未満では、ポリエチレン系樹脂が十分着色されない場合がある。一方、50重量%より多いと、ポリエチレン系樹脂中に混合することが困難となる場合がある。
【0038】
安定剤は、酸化劣化や熱劣化などを防止する役割を果たし、公知物をいずれも使用できる。例えば、フェノール系安定剤、有機ホスファイト系安定剤、チオエーテル系安定剤、ビンダードアミン系安定剤などが挙げられる。
充填材としては、タルク、ガラスなどが挙げられ、その形状は球状、板状、繊維状など特に限定されない。
【0039】
高級脂肪族金属塩としては、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸などの高級脂肪酸と、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)やアルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウムなど)との塩が挙げられる。
【0040】
(b)ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを基本樹脂として含む粒子(「複合樹脂粒子」ともいう)
複合樹脂粒子は、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との混合樹脂粒子を意味し、公知の方法により両樹脂を単純に混合して得られた粒子であってもよいが、ポリエチレン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸、重合させることにより得られることが好ましい。具体的には、以下の説明のように、分散剤を含有する水性媒体中にポリエチレン系樹脂粒子を分散させて、その後にスチレン系単量体および重合開始剤を添加して分散液を作製して、この分散液を加熱することによりポリエチレン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸、重合させて複合樹脂粒子が得られる。
【0041】
ポリエチレン系樹脂粒子は、公知の要領で製造される。例えば、上記の製造方法により得られたポリエチレン系樹脂を、必要に応じて無機核剤と添加剤と共に、押出機中で溶融混練して押出すことでストランドを得、得られたストランドを、空気中でカット、水中でカット、加熱しつつカットすることで、造粒する方法が挙げられる。
【0042】
ポリエチレン系樹脂粒子は、粒子の長さをL、平均径をDとした場合のL/Dが0.6〜1.6である円筒状、略球状ないしは球状であり、平均粒子径が0.2〜1.5mmであることが好ましい。L/Dが0.6未満の場合及び1.6より大きく扁平度が大きい場合は、発泡性樹脂粒子として予備発泡させ、金型に充填して発泡成形体を得る際に、金型への充填性が悪くなることがある。また、ポリエチレン系樹脂粒子の形状は、充填性をよくするには略球状ないしは球状がより好ましい。平均粒子径については、0.2mm未満の場合、発泡剤の保持性が低くなり、低密度化が困難となることがある。1.5mmを超えると、充填性が悪くなるだけでなく発泡成形体の薄肉化も困難となることがある。
【0043】
無機核剤としては、例えば、タルク、二酸化珪素、マイカ、クレー、ゼオライト、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
無機核剤の使用量は、ポリエチレン系樹脂100重量部に対して、2重量部以下が好ましく、0.2〜1.5重量部がより好ましい。
水性懸濁液を構成する水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。
【0044】
重合開始剤としては、一般にスチレン系単量体の懸濁重合用の開始剤として用いられているものが使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートなどの有機化過酸化物である。これらの重合開始剤は単独もしくは2種以上を併用してもよい。
【0045】
重合開始剤の使用量は、スチレン系単量体100重量部に対して、0.1〜0.9重量部が好ましく、0.2〜0.5重量部がより好ましい。0.1重量部未満ではスチレン系単量体の重合に時間がかかり過ぎることがあるので好ましくない。0.9重量部を超える重合開始剤の使用は、スチレン系樹脂の分子量が低くなることがあるので好ましくない。
【0046】
水系懸濁液には、必要に応じて分散剤を添加してもよい。分散剤としては、特に限定されず、公知のものをいずれも使用することができる。具体的には、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸ナトリウム、酸化マグネシウムなどの難溶性無機物が挙げられる。更に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような界面活性剤を使用してもよい。
【0047】
次に、得られた分散液をスチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱してスチレン系単量体をポリエチレン系樹脂粒子に含浸させる。
ポリエチレン系樹脂粒子内部にスチレン系単量体を含浸させる時間は、30分〜2時間が適当である。十分に含浸させる前に重合が進行するとスチレン系樹脂の重合体粉末を生成してしまうからである。前記モノマーが実質的に重合しない温度とは、高い方が含浸速度を速めるには有利であるが、重合開始剤の分解温度を考慮して決定する必要がある。
【0048】
ポリエチレン系樹脂粒子に含浸させるスチレン系単量体としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレンなどが挙げられる。
【0049】
分散液中に添加されるスチレン系単量体の総量は、得られる複合樹脂中において、ポリエチレン系樹脂成分100重量部に対して、ポリスチレン系樹脂成分100〜500重量部となるように調整される。ポリエチレン系樹脂成分100重量部に対してポリスチレン系樹脂成分150〜400重量部となるように調整されることが、更に好ましい。
【0050】
上述のように、複合樹脂中におけるポリスチレン系樹脂成分とポリエチレン系樹脂成分の重量比が上記割合に限定されるのは、複合樹脂中におけるポリスチレン系樹脂成分の含有量が少ないと、ポリエチレン系樹脂成分の量が多くなり、耐熱性が上がりすぎて、複合樹脂粒子を予備発泡する際に、所望の嵩密度にまで発泡できず、得られる発泡体の軽量性が損なわれる一方、多いと、得られる発泡体の機械的強度及び耐薬品性が損なわれてしまうからである。また、得られる発泡体の衝撃エネルギーを吸収する能力の温度依存性が高くなってしまうという問題も発生する。
【0051】
次いで、スチレン系単量体の重合を行う。重合は、特に限定されないが、115〜140℃で、1.5〜5時間行うことが好ましい。重合は、通常、加圧可能な密閉容器中で行われる。
なお、スチレン系単量体の含浸と重合を複数回に分けて行ってもよい。複数回に分けることで、ポリスチレンの重合体粉末の発生を極力少なくできる。
上記工程により複合樹脂粒子を得ることができる。
【0052】
複合樹脂粒子は、粒子の長さをL、平均径をDとした場合のL/Dが0.6〜1.6である円筒状、略球状ないしは球状であり、平均粒子径が0.3〜3.0mmであることが好ましい。
L/Dが0.6より小さく、または1.6より大きく扁平度が大きい場合は、複合樹脂粒子から得られる予備発泡粒子を、金型に充填して発泡体を得る際に、金型への充填性が悪くなることがある。
形状については、充填性をよくするためには、略球状又は球状であることがより好ましい。
複合樹脂粒子の平均粒子径が0.3mm未満では、発泡性樹脂粒子として使用する場合、発泡剤の保持性が低くなり、低密度化が困難となる場合がある。一方、3.0mmを超えると、充填性が悪くなり易く、発泡体の薄肉化が困難となる場合がある。
【0053】
(c)発泡性樹脂粒子
発泡性樹脂粒子は、重合中もしくは重合終了後の上記複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより得られる。含浸は、公知の方法により行うことができる。例えば、重合中での含浸は、重合反応を密閉式の容器中で行い、容器中に発泡剤を圧入することにより行うことができる。重合終了後の含浸は、密閉式の容器中で、発泡剤を圧入することにより行われる。
発泡剤としては、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、ジメチルエーテルなどの揮発性発泡剤が挙げられる。これら発泡剤は、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0054】
発泡剤の含有量は、複合樹脂粒子100重量部に対して、5〜25重量部であることが好ましい。発泡性樹脂粒子のL/D及び平均粒子径は、上記複合樹脂粒子と同程度とすることができる。また形状については、充填性をよくするには略球状又は球状であることがより好ましい。
【0055】
(d)予備発泡粒子
予備発泡粒子は、上記発泡性樹脂粒子を予備発泡させることにより得られる。
予備発泡粒子の嵩発泡倍率は、10〜85倍であることが好ましい。より好ましくは、20〜80倍である。嵩発泡倍率が10倍未満では、得られる発泡体の重量が増加する場合がある。一方、85倍を超えると、発泡させたときに独立気泡率が低下して、予備発泡粒子から得られる発泡体の強度が低下する場合がある。嵩発泡倍率の算出方法については、実施例の欄で説明する。
【0056】
(e)発泡体の製法
発泡体(発泡成形体)は、上記予備発泡粒子を型内発泡成形させることにより得られる。具体的には、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、再度加熱して予備発泡粒子を発泡させながら、発泡粒同士を熱融着させることで得ることができる。加熱用の媒体は水蒸気が好適に使用できる。
発泡体の発泡倍率は、10〜85倍であることが好ましい。より好ましくは、20〜80倍である。発泡倍率が10倍未満では、得られる発泡体の重量が増加する場合がある。一方、85倍を超えると、発泡させたときに独立気泡率が低下して、得られる発泡体の強度が低下する場合がある。
【0057】
本発明の発泡成形体は、その表面の摩擦抵抗が抑制されているので、摩擦音(音鳴り)が抑制された部品梱包材用、自動車部材用または緩衝材用の発泡成形体として好適に用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げてさらに説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例に記載した各種測定法および製造条件を以下で説明する。
【0059】
(ポリエチレン系樹脂の密度)
JIS K6922−1:1998に準拠して密度勾配管法により、ポリエチレン系樹脂の密度を測定する。
【0060】
(ポリエチレン系樹脂の結晶化度)
JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」に記載の方法によりポリエチレン系樹脂の結晶化度を測定する。
すなわち、示差走査熱量計(SIIナノテクノロジー株式会社製、DSC6220型)の測定容器に6.5±0.5mgの試料を充填し、流量30ml/分の窒素ガス流通下、昇温冷却速度10℃/分で昇温冷却しながら結晶化熱量と融解熱量とを測定し、結晶化度を次式により求める。
結晶化度(%)=(結晶化熱量(mJ)/完全結晶の融解熱量(mJ))×100
但し、ポリプロピレン系樹脂(PP)およびポリエチレン系樹脂(PE)の完全結晶融解熱量(理論値)をそれぞれ209.5mJ/mgおよび285.7mJ/mg(参考文献:高分子データハンドブック 基礎編 1986年版)とした。
【0061】
(溶融張力(MS))
バレル直径9.55mmの毛管粘度計(東洋精機製作所社製、キャピログラフ)に、長さ(L)8mm、直径(D)2.095mm、流入角90°のダイを装着することによりMSを測定する。試料温度を160℃、ピストン降下速度を10mm/分、延伸比を47に設定し、この設定下での引き取りに必要な荷重(mN)をMSとする。
【0062】
(MFR)
JIS K6922−1:1998に準拠して、温度190℃、2.16kg荷重でMFRを測定する。
【0063】
(予備発泡粒子の嵩発泡倍率)
予備発泡粒子の嵩発泡倍率は、予備発泡粒子の嵩密度と逆数の関係にある。
予備発泡粒子の嵩密度は、下記の要領で測定する。
まず、予備発泡粒子をメスシリンダに500cm3の目盛りまで充填する。但し、メスシリンダを水平方向から目視し、予備発泡粒子が一粒でも500cm3の目盛りに達していれば、充填を終了する。次に、メスシリンダ内に充填した予備発泡粒子の重量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その重量をW(g)とする。次式により予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
嵩密度(g/cm3)=W/500
したがって、予備発泡粒子の嵩発泡倍率は、上記の嵩密度の逆数を算出することにより導き出される。
予備発泡粒子の嵩発泡倍率(倍)=500/W
【0064】
(発泡成形体の発泡倍率)
発泡体の発泡倍率は、発泡体の密度と逆数の関係にある。
発泡体の密度は、JIS K7222:2005年「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」に記載の方法により以下のように測定する。
50cm3以上(半硬質及び軟質材料の場合は100cm3以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えないように切断し、その重量を測定し、次式により算出する。
密度(g/cm3)=試験片重量(g)/試験片体積(cm3)
試験片状態調節、測定用試験片は、成形後72時間以上経過した試料から切り取り、23℃±2℃×50%±5%又は27℃±2℃×65%±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
したがって、発泡体の発泡倍率は、上記の密度の逆数を算出することにより導き出される。
発泡体の発泡倍率(倍)=試験片体積(cm3)/試験片重量(g)
【0065】
(発泡成形体の圧縮強度)
JIS K7220:2006年「硬質発泡プラスチック−圧縮特性の求め方」記載の方法により圧縮強度を測定する。
すなわち、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、UCT−10T)を用いて、50mm×50mm×25mmのサイズの試験体(上面表皮あり)について、圧縮速度10mm/分として25%圧縮時(10mm変位時)の圧縮強度を測定する。
【0066】
(発泡成形体の曲げ強度および曲げの破断点変位)
JIS K7221−1:2006年「硬質発泡プラスチック−曲げ試験−第1部:曲げ特性の求め方」記載の方法に準拠して、曲げ強度を測定する。
すなわち、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、UCT−10T)を用いて、25mm×130mm×20mmのサイズの試験体(上面表皮あり)について、圧縮速度10mm/分、先端冶具を加圧くさび5R、支持台5Rで、支点間距離100mmとして測定する。
曲げの破断点変位(量)は、曲げ試験において以下の現象が発生した点を、破断点変位量とする。
破断検出感度を0.5%に設定し、直前荷重サンプリング点と比較して、その減少が設定値0.5%を超えた時、直前のサンプリング点を測定する。
【0067】
(発泡成形体の落球衝撃値)
JIS K7211:1976「硬質プラスチックの落錘衝撃試験方法通則」に記載の方法に準拠して落球衝撃強度を測定する。
得られた嵩倍数50倍の発泡成形体を温度50℃で1日間乾燥した後、この発泡成形体から40mm×215mm×20mm(厚さ)の試験片(6面とも表皮なし)を切り出す。
次いで、支点間の間隔が150mmになるように試験片の両端をクランプで固定し、重さ321gの剛球を所定の高さから試験片の中央部に落下させて、試験片の破壊の有無を観察する。
試験片5個が全数破壊する最低の高さから全数破壊しない最高の高さまで5cm間隔で剛球の落下高さ(試験高さ)を変えて試験して、落球衝撃値(cm)、すなわち50%破壊高さを次の計算式により算出する。
【0068】
H50=Hi+d[Σ(i・ni)/N±0.5]
式中の記号は次のことを意味する。
H50 :50%破壊高さ(cm)
Hi :高さ水準(i)が0のときの試験高さ(cm)であり、試験片が破壊することが予測される高さ
d :試験高さを上下させるときの高さ間隔(cm)
i :Hiのときを0とし,1つずつ増減する高さ水準(i=…−3、−2、−1、0、1、2、3…)
ni :各水準において破壊した(または破壊しなかった)試験片の数で、いずれか多いほうのデータを使用(同数の場合はどちらを使用してもよい)
N :破壊した(または破壊しなかった)試験片の総数(N=Σni)で、いずれか多いほうのデータを使用(同数の場合はどちらを使用してもよい)
±0.5:破壊したデータを使用するときは負の数、破壊しなかったデータを使用するときは正の数を採用
【0069】
(発泡成形体の静摩擦係数、動摩擦係数、第一極大荷重、積分平均荷重および振幅)
JIS K7125:1999「プラスチックフィルム及びシートの摩擦係数試験方法」記載の方法に準拠して、静摩擦係数、動摩擦係数、第一極大荷重、積分平均荷重および振幅を測定する。この場合の摩擦係数試験とは、同一材料の上を滑らせた時の摩擦係数を測定するものである。
まず、発泡成形体から100mm×100mm、厚み0.5mm以下の試験片を切り出す。この試験片と、63mm×63mm(接触面積40cm2)、全質量200g(1.96N)の滑り片とを、両面テープで貼り付ける。この際、均一な圧力分布をかけるために、滑り片の底面を弾力性のある材料、フェルトで覆っておく。
次に、表面が水平で平滑である試験テーブルの上に、A4サイズ以上の滑り相手材料(発泡成形体)を置き、その上に上記試験片と滑り片を載せる。
テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、UCT−10T)を用いて、滑り相手材料の上を、試験速度100mm/分、試験距離80mmで試験片を動かして荷重を測定する。
【0070】
測定区間における最初に現れた極大点荷重及び荷重平均値を、それぞれ第一極大荷重(N)及び積分平均荷重(N)とする。
力は直線的に増加して摩擦を与え、最大荷重に達するピークが静摩擦力FSを表す。
静摩擦力FSに第一極大荷重の値を用い、次式(1)により静摩擦係数μsを求める。
μS=FS/FP (1)
[式中、μSは静摩擦係数、FSは静摩擦力(N)、FPはすべり片の質量によって生じる法線力(=1.96N)を示す]
【0071】
静摩擦力のピークを無視し、接触面間の相対ずれ運動を開始した後から60mmまでの平均荷重が動摩擦力FDである。
動摩擦力FDに積分平均荷重の値を用い、次式(2)により動摩擦係数μDを求める。
μD=FD/FP (2)
[式中、μDは動摩擦係数、FDは動摩擦力(N)、FPはすべり片の質量によって生じる法線力(=1.96N)を示す]
また、測定区間における極大点と極小点の差を振幅(N)とする。
【0072】
積分平均荷重(N)が0.80N以下の場合および0.80Nを超える場合をそれぞれ評価「○」および「×」とする。
振幅(N)が0.01〜0.15Nの範囲の場合およびその範囲外の場合をそれぞれ評価「○」および「×」とする。
【0073】
(実施例1)
下記の物性を有する重合体からなる高密度ポリエチレン系樹脂(東ソー社製、グレード名:09S53B、融点123℃)のペレット100重量部を押出機に供給して溶融混練して水中カット方式により造粒して楕円球状(卵状)の高密度ポリエチレン系樹脂粒子を得た。この樹脂粒子の平均重量は100粒あたり40mgであった。
(1)エチレン単独重合体またはエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体
(2)密度936kg/m3
(3)2.16kg加重時のMFR2.6g/10分
(4)MS(160℃での溶融張力(mN))>90−130×log(MFR)
(5)結晶化度59%
【0074】
この高密度ポリエチレン樹脂粒子400gを攪拌機付の5リットルオートクレーブに入れた。この後、水性媒体としての純水2kg、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.25gを加え、撹拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温した。
得られた懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.3g溶解させたスチレンモノマー200gを30分掛けて滴下した。滴下後、温度60℃で30分間保持することで、高密度ポリエチレン系樹脂粒子中にスチレン系単量体を含浸させた。含浸後、温度130℃に昇温して、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
【0075】
次に、温度120℃に冷却した懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5gを加えた。その後重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを4.8g溶解させたスチレンモノマー1400gを5時間掛けて滴下した。滴下後、温度120℃で1時間保持することで、高密度ポリエチレン系樹脂粒子中にスチレン系単量体を含浸させた。含浸後、温度140℃に昇温して、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させ、複合樹脂粒子を得た。
【0076】
次いで、常温(約23℃)まで冷却し、オートクレーブから複合樹脂粒子を取り出した。複合樹脂粒子2kgと水2リットルとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2gを、5リットルの攪拌機付オートクレーブに入れた。さらに、発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)15重量部300g(520ml)をオートクレーブに入れた。この後、温度70℃に昇温して、3時間攪拌を続けることで発泡性樹脂粒子を得た。
その後、常温まで冷却して、発泡性樹脂粒子をオートクレーブから取り出し、脱水させた。
【0077】
得られた発泡性樹脂粒子を直ちに水蒸気で嵩発泡倍率40倍(嵩密度0.025g/cm3)に予備発泡させることで、予備発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、400mm×300mm×30mmの大きさの成形空間(キャビティ)を有する成形金型を用い、キャビティ内に前記発泡樹脂粒子を充填した。そして、キャビティ内に0.l0MPaの水蒸気を導入して加熱し、型内成形を行なった。加熱時間としては、(1)金型加熱10秒、(2)一方加熱15秒、(3)逆一方加熱10秒、(4)両面加熱30秒を順次行った。その後、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却(水冷:15秒、放冷:80秒)して、発泡成形体(発泡倍率40倍)を得た。なお、型内成形には、発泡成形機(積水工機社製、商品名「ACE−3SP」)を使用した。
得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。また発泡体の外観および融着は共に良好であった。
また、摩擦係数の測定結果を図1に示す。
【0078】
(実施例2)
実施例1と同様にして得られた発泡性樹脂粒子を実施例1と同様にして嵩発泡倍率80倍(嵩密度0.013g/cm3)に予備発泡させ、実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。
また、摩擦係数の測定結果を図2に示す。
【0079】
(実施例3)
(1)第1の重合時の高密度ポリエチレン系樹脂400gを600gとし、
(2)第1の重合時のジクミルパーオキサイド0.3gを0.6gとし、
(3)第1の重合時のスチレン単量体200gを300gとし、
(4)第2の重合時のジクミルパーオキサイド4.8gを4.2gとし、
(5)第2の重合時のスチレン単量体1400gを1100gとし、
(6)第2の重合時のスチレン滴下時間5時間を4時間30分とした
こと以外は実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子を得た。
得られた発泡性樹脂粒子を実施例1と同様にして嵩発泡倍率20倍(嵩密度0.050g/cm3)に予備発泡させ、実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。
また、摩擦係数の測定結果を図3に示す。
【0080】
(実施例4)
実施例3と同様にして得られた発泡性樹脂粒子を実施例1と同様にして嵩発泡倍率35倍(嵩密度0.029g/cm3)に予備発泡させ、実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
また、摩擦係数の測定結果を図4に示す。
【0081】
(実施例5)
(1)第1の重合時の高密度ポリエチレン400gを700gとし、
(2)第1の重合時のジクミルパーオキサイド0.3gを0.7gとし、
(3)第1の重合時のスチレン単量体200gを350gとし、
(4)第2の重合時のジクミルパーオキサイド4.8gを3.9gとし、
(5)第2の重合時のスチレン単量体1400gを950gとし、
(6)第2の重合時のスチレン滴下時間5時間を4時間15分とした
こと以外は実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子を得た。
得られた発泡性樹脂粒子を実施例1と同様にして嵩発泡倍率35倍(嵩密度0.029g/cm3)に予備発泡させ、実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。
また、摩擦係数の測定結果を図5に示す。
【0082】
(実施例6)
実施例5と同様にして得られた発泡性樹脂粒子を実施例1と同様にして嵩発泡倍率40倍(嵩密度0.025g/cm3)に予備発泡させ、実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例7)
下記の物性を有する重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(日本ユニカー社製、NF−444A、融点117〜121℃)のペレット100重量部を押出機に供給して溶融混連して水中カット方式により造粒し、楕円球状(卵状)の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子を得た。樹脂粒子の平均重量は100粒あたり40mgであった。
(1)直鎖状低密度ポリエチレン
(2)密度912kg/m3
(3)2.16kg加重時のMFRが2.0g/10分
(4)結晶化度41%
【0084】
この直鎖状ポリエチレン樹脂粒子400gを攪拌機付の5リットルオートクレーブに入れた。この後、水性媒体としての純水2kg、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.25gを加え、撹拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温した。
得られた懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.5g溶解させたスチレンモノマー200gを30分掛けて滴下した。滴下後、温度60℃で30分間保持することで、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子中にスチレン系単量体を含浸させた。含浸後、温度135℃に昇温して、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
【0085】
次に、温度115℃に冷却した懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5gを加えた。その後重合開始剤として、t-ブチルパーオキシベンゾエート5.6gを溶解させたスチレンモノマー1400gを4時間かけて滴下した。滴下後、温度115℃で1時間保持することで、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂粒子中にスチレン系単量体を含浸させた。含浸後、温度140℃に昇温して、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させ、複合樹脂粒子を得た。
【0086】
次いで、常温(約23℃)まで冷却し、オートクレーブから複合樹脂粒子を取り出した。複合樹脂粒子2kgと水2リットルとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2gを、5リットルの攪拌機付オートクレーブに入れた。さらに、発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)15重量部300g(520ml)をオートクレーブに入れた。この後、温度70℃に昇温して、3時間攪拌を続けることで発泡性樹脂粒子を得た。
その後、常温まで冷却して、発泡性樹脂粒子をオートクレーブから取り出し、脱水させた。
【0087】
得られた発泡性樹脂粒子を直ちに水蒸気で嵩発泡倍率50倍(嵩密度0.020g/cm3)に予備発泡させることで、予備発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、400mm×300mm×30mmの大きさの成形空間(キャビティ)を有する成形金型を用い、キャビティ内に前記発泡樹脂粒子を充填した。そして、キャビティ内に0.08MPaの水蒸気を導入して加熱し、型内成形を行なった。加熱時間としては、(1)金型加熱10秒、(2)一方加熱15秒、(3)逆一方加熱10秒、(4)両面加熱20秒を順次行った。その後、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却(水冷:10秒、放冷:80秒)して、発泡成形体(発泡倍率50倍)を得た。なお、型内成形には、発泡成形機(積水工機社製、商品名「ACE−3SP」)を使用した。
実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。また、また発泡体の外観および融着は共に良好であった。
また、摩擦係数の測定結果を図6に示す。
【0088】
(実施例8)
(1)第1の重合時の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂400gを600gとし、
(2)第1の重合時のジクミルパーオキサイド0.3gを0.75gとし、
(3)第1の重合時のスチレン単量体200gを300gとし、
(4)第2の重合時のt-ブチルパーオキシベンゾエート5.6gを4.9gとし、
(5)第2の重合時のスチレン単量体1400gを1100gとし、
(6)第2の重合時のスチレン滴下時間4時間を4時間30分とした
こと以外は実施例7と同様にして発泡性樹脂粒子を得た。
得られた発泡性樹脂粒子を実施例1と同様にして嵩発泡倍率40倍(嵩密度0.025g/cm3)に予備発泡させ、実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。
また、摩擦係数の測定結果を図7に示す。
【0089】
(実施例9)
下記の物性を有する重合体からなる高密度ポリエチレン系樹脂(東ソー社製、グレード名:07S53A、融点125℃)を用いたこと以外は実施例1と同様して実施し発泡性樹脂粒子を得た。
(1)エチレン単独重合体またはエチレンと炭素数3〜8のα―オレフィンとの共重合体
(2)密度942kg/m3、
(3)2.16kg加重時のMFRが4.9g/10分
(4)MS(160℃での溶融張力(mN))>90−130×log(MFR)
(5)結晶化度65%
を用いた以外は実施例3と同様にして発泡性樹脂粒子を得た。
得られた発泡性樹脂粒子を嵩発泡倍率35倍(嵩密度0.029g/cm3)に予備発泡させ、実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。
【0090】
(比較例1)
下記の物性を有する重合体からなるエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下「EVA」という、日本ユニカー社製、NUC−3450、酢酸ビニル含有量:5重量%、融点:105℃)のペレット100重量部を押出機に供給して溶融混連して水中カット方式により造粒し、楕円球状(卵状)のEVA樹脂粒子(ポリエチレン系樹脂粒子)を得た。EVA樹脂粒子の平均重量は100粒あたり40mgであった。
(1)エチレンと酢酸ビニルの共重合体
(2)密度930kg/m3
(3)2.16kg加重時のMFRが0.5g/10分
(4)MS(160℃での溶融張力(mN))>110−100×log(MFR)]
【0091】
このEVA樹脂粒子600gを攪拌機付の5リットルオートクレーブに入れた。この後、水性媒体としての純水2kg、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.25gを加え、撹拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温した。
得られた懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.6g溶解させたスチレンモノマー300gを30分掛けて滴下した。滴下後、温度60℃で30分間保持することで、EVA樹脂粒子中にスチレン系単量体を含浸させた。含浸後、温度130℃に昇温して、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
【0092】
次に、温度90℃に冷却した懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5gを加えた。この後、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド2.2g、t-ブチルパーオキシベンゾエート0.3g、架橋剤としてジクミルパーオキサイド5.6g溶解させたスチレンモノマー1100gを4時間かけて滴下した。滴下後、温度90℃で1時間保持することで、EVA樹脂粒子中にスチレン系単量体を含浸させた。含浸後、温度143℃に昇温して、この温度で2時間保持して重合(第2重合)させ、複合樹脂粒子を得た。
【0093】
次いで、常温(約23℃)まで冷却し、オートクレーブから複合樹脂粒子を取り出した。複合樹脂粒子2kgと水2リットルとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2gを、5リットルの攪拌機付オートクレーブに入れた。更に、発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)15重量部300g(520ml)をオートクレーブに入れた。この後、温度70℃に昇温して、3時間攪拌を続けることで発泡性樹脂粒子を得た。
その後、常温まで冷却して、発泡性樹脂粒子をオートクレーブから取り出し、脱水させた。
【0094】
得られた発泡性樹脂粒子を水蒸気で嵩発泡倍率30倍(嵩密度0.033g/cm3)に予備発泡させることで、予備発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、400mm×300mm×30mmの大きさの成形空間(キャビティ)を有する成形金型を用い、キャビティ内に前記発泡樹脂粒子を充填した。そして、キャビティ内に0.08MPaの水蒸気を導入して加熱し、型内成形を行なった。加熱時間としては、(1)金型加熱10秒、(2)一方加熱10秒、(3)逆一方加熱5秒、(4)両面加熱15秒を順次行った。その後、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却(水冷:10秒、放冷:60秒)して、発泡成形体(発泡倍率30倍)を得た。なお、発泡成形には、ACE−3SP(積水工機社製)を使用した。
実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。また、また発泡体の外観および融着は共に良好であった。
また、摩擦係数の測定結果を図8に示す。
【0095】
(比較例2)
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名:F−744NP、融点:133℃、メルトフローレート:7.0g/10分、密度:0.9g/cm3)100質量部を押出機に供給して溶融混練してストランドカットにより造粒ペレット化することにより、球状(卵状)のポリプロピレン系樹脂粒子(100粒あたり54mg、平均粒子径:約1mm)を得た。
次に、撹拝機付5Lオートクレーブに、上記ポリプロピレン系樹脂粒子800gを入れ、水性媒体として純水2kg、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5gを加え、撹拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後、60℃に昇温して水系懸濁液とした。
【0096】
次に、得られた懸濁液中にジクミルパーオキサイド0.8gを溶解させたスチレン単量体400gを30分掛けて滴下した。そして、滴下後、60℃で30分保持してポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
次に、反応系の温度を140℃に昇温して1時間30分保持し、スチレン単量体をポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させた。
次に、第1の重合の反応液を123℃にし、この反応液中にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.3gを加えた。その後、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド3.6gを溶解したスチレン単量体800gを4時間かけて滴下し、ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合(第2の重合)させた。
滴下が終了した後、123℃で1時間保持し、その後140℃に昇温して3時間保持することで重合を完結させ、改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0097】
次に、常温まで冷却し、上記改質ポリスチレン系樹脂粒子を5Lオートクレープから取り出した。取り出した改質ポリスチレン系樹脂粒子2kgと水2Lとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2gを再び攪拌機付の5Lオートクレーブに投入し、発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)300g(520ml)を注入した。注入後、70℃に昇温して3時間撹拝を続けた。
その後、常温まで冷却して5Lオートクレーブから取り出し、脱水して発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0098】
次に、得られた発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を直ちに水蒸気で予備発泡(嵩発泡倍数35倍)させ、改質ポリスチレン系樹脂発泡粒子(以下、発泡樹脂粒子と記す)を得た。400mm×300mm×30mmの大きさの成形空間(キャビティ)を有する成形金型を用い、キャビティ内に上記発泡樹脂粒子を充填した。そして、キャビティ内に0.25MPaの水蒸気を導入して加熱し、型内成形を行+った。加熱時間としては、(1)金型加熱10秒、(2)一方加熱15秒、(3)逆一方加熱10秒、(4)両面加熱20秒を順次行った。その後、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却(水冷:10秒、放冷:80秒)して、発泡成形体(発泡倍率35倍)を得た。なお、型内成形には、発泡成形機(積水工機社製、商品名「ACE−3SP」)を使用した。
実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。
また、摩擦係数の測定結果を図9に示す。
【0099】
(比較例3)
下記の物性を有する重合体からなる発泡倍率30倍(密度0.030g/cm3)の発泡ポリプロピレン樹脂粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして発泡体を得た。
(1)プロピレンとエチレンのランダム共重合体、
(2)密度900kg/m3、
(3)2.16kg加重時のMFRが7.0g/10分、
(4)MS(160℃での溶融張力(mN))>90−130×log(MFR)]
実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。
また、摩擦係数の測定結果を図10に示す。
【0100】
(比較例4)
内容積5リットルの撹拌機付オートクレーブにポリスチレン系樹脂粒子2kg、水1.5L、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.1gを入れ、撹拌し懸濁させ、その後100℃まで昇温した。
次に、水0.5kgにピロリン酸マグネシウム2g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5gに可塑剤としてジイソブチルアジペート(DIBA)20gを加えてホモミキサーで撹拌することで調整し懸濁液を反応器内に圧入した。
その後、発泡剤であるブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)148g(255ml)を液の状態で反応器内に圧入した。
この後、反応器内部を100℃で3時間保持し、20℃まで冷却して粒子を取り出し、洗浄、脱水、乾燥した。得られた発泡性スチレン系樹脂粒子は、0.355〜0.710mmの粒度分布を有していた。
更に予備発泡後の発泡粒子の気泡径が完全に安定するまで15℃で3日間熟成させて、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0101】
この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を内容量40リットルの小型バッチ式予備発泡機を用いて、常圧下でゲージ圧力0.05MPaの水蒸気で加熱し嵩倍数40倍に予備発泡した。
得られた予備発泡粒子を20℃で24時間放置し、乾燥、熟成させた。この後、発泡剤量の測定を行った後に、発泡成形機(積水工機社製 商品名「ACE−3SP」)の金型内に充填し、0.06MPaの水蒸気で加熱し、型内成形を行い、縦300mm×横400mm×高さ30mmの板状の発泡成形体を得た。
実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。
また、摩擦係数の測定結果を図11に示す。
【0102】
(比較例5)
比較例4と同様にして得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、嵩発泡倍率50倍(嵩密度0.020g/cm3)に予備発泡させ、型内成形を行い、縦300mm×横400mm×高さ30mmの板状の発泡成形体を得た。
実施例1と同様にして得られた発泡体の各種物性を測定・評価した。得られた結果を表1に示す。
また、摩擦係数の測定結果を図12に示す。
【0103】
【表1】
表1の結果から、実施例1〜9の発泡成形体は、発泡成形体表面の摩擦抵抗が抑制され摩擦音を抑制できることがわかる。また、図1〜12の結果から、実施例1〜9の発泡成形体は、比較例1〜5の発泡成形体と比較して、積分平均荷重および振幅が小さいことがわかる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度912〜950kg/m3のポリエチレン系樹脂100重量部と、ポリスチレン系樹脂100〜500重量部とを基本樹脂として含む発泡成形体であり、JIS K7125の摩擦係数測定において0.80N以下の積分平均荷重および0.01〜0.15Nの範囲の振幅を有することを特徴とする発泡成形体。
【請求項2】
前記ポリエチレン系樹脂が、40〜70%の範囲の結晶化度を有するポリエチレン系樹脂である請求項1に記載の発泡成形体。
【請求項3】
前記発泡成形体が、10〜85倍の範囲の発泡倍数を有する請求項1または2に記載の発泡成形体。
【請求項4】
前記発泡成形体が、部品梱包材、自動車部材または緩衝材用である請求項1〜3のいずれか1つに記載の発泡成形体。
【請求項1】
密度912〜950kg/m3のポリエチレン系樹脂100重量部と、ポリスチレン系樹脂100〜500重量部とを基本樹脂として含む発泡成形体であり、JIS K7125の摩擦係数測定において0.80N以下の積分平均荷重および0.01〜0.15Nの範囲の振幅を有することを特徴とする発泡成形体。
【請求項2】
前記ポリエチレン系樹脂が、40〜70%の範囲の結晶化度を有するポリエチレン系樹脂である請求項1に記載の発泡成形体。
【請求項3】
前記発泡成形体が、10〜85倍の範囲の発泡倍数を有する請求項1または2に記載の発泡成形体。
【請求項4】
前記発泡成形体が、部品梱包材、自動車部材または緩衝材用である請求項1〜3のいずれか1つに記載の発泡成形体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−197373(P2012−197373A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62849(P2011−62849)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]