説明

発泡成形体の成形方法及び発泡成形体

【課題】嵌合部に他部材を容易に嵌め込むことが可能な発泡成形体を提供する。
【解決手段】他部材を嵌め込むための嵌合部(104a)を有する発泡成形体(100)であり、嵌合部(104a)の発泡倍率は、発泡成形体(100)の本体部分(102)よりも高いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体の成形方法及び発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の発泡成形体の成形方法は、基材樹脂と発泡剤とを溶融混練した発泡溶融樹脂をダイから押し出して筒状の発泡パリソンを形成し、この発泡パリソンを分割金型で挟み込み、発泡パリソンの内部に加圧気体を吹き込んでブロー成形し、中空状の発泡成形体を成形していた(例えば、特許文献1:特開昭63−309434号公報参照)。
【0003】
なお、上述した成形方法で成形された発泡成形体の外径は、分割金型の内壁面(キャビティ面)によって規制されるため、所定の寸法に仕上げることができる。しかし、発泡成形体の内径は、発泡パリソンの内部に吹き込んだ加圧気体の押圧力によって規制されるだけであるため、所定の寸法に仕上げることが難しい。このため、上述した成形方法で成形された発泡成形体は、肉厚のばらつきが発生し易く、発泡成形体にレジスタ等の他部材を嵌め込む際に問題となる。
【0004】
例えば、他部材を嵌め込む嵌合部の内径が他部材の外径よりも大きくなった場合は、嵌合部と他部材との間に隙間が発生し、嵌合部から空気が漏れたり、他部材が簡単に外れてしまったりすることになる。また、嵌合部の内径が他部材の外径よりも小さくなった場合は、嵌合部に他部材を嵌合することが困難になってしまう。特に、パーティングラインの部分は、ダ肉が発生し易いため、発泡成形体の内側に樹脂が盛り上がり、嵌合部の内径が所定の寸法にならない場合がある。
【0005】
このため、他部材を嵌め込む嵌合部の内径を規制して所定の寸法に精度良く仕上げる必要がある。
【0006】
なお、特許文献2(特許第4087209号公報)には、発泡成形体の内径を規制する方法について開示されている。
【0007】
特許文献2では、図9(a)に示すように、ダイ21から押し出された発泡パリソン11を金型22a,22b内に配置すると共に、下方から発泡パリソン11内に嵌合部形成用の金型31cと金型31dとを備える金型32を挿入する。
【0008】
次に、図9(b)に示すように、発泡パリソン11を金型22aと金型22bとで挟むと共に、発泡パリソン11の内部に気体を吹き込みながら金型22a,22bを閉鎖する。このとき、凹部33a,33bと金型31cとで挟まれた部分が凸状の嵌合部として形成され、ストレート部34a,34bと金型31dとで挟まれた部分が凹状の嵌合部として形成される。
【0009】
次に、金型22a,22bを開き、発泡成形体を取り出して不要なバリを取り除き、図9(c)に示すような垂直断面を有する、凸状の嵌合部4aと凹状の嵌合部4bとを有する発泡成形体1を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭63−309434号公報
【特許文献2】特許第4087209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献2では、発泡パリソン11内に嵌合部形成用の金型31cと金型31dとを備える金型32を挿入することで、発泡パリソン11の内径を規制している。
【0012】
しかし、上記特許文献2では、凹部33a,33bと金型31cとで挟まれた部分を圧縮して凸状の嵌合部4aを形成し、また、ストレート部34a,34bと金型31dとで挟まれた部分を圧縮して凹状の嵌合部4bを形成しているため、嵌合部4a,4bの発泡倍率が他の部分(ダクト本体部分等)よりも低くなり、嵌合部4a,4bが硬くなってしまう。その結果、嵌合部4a,4bに他部材を嵌め込み難くなってしまう。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、嵌合部に他部材を容易に嵌め込むことが可能な発泡成形体の成形方法及び発泡成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を有する。
【0015】
<発泡成形体の成形方法>
本発明にかかる発泡成形体の成形方法は、
発泡溶融樹脂を分割金型で挟み込んで発泡成形体を成形する成形方法であって、
前記発泡成形体の内径を規制する内径規制部材を前記分割金型の間に配置する工程と、
前記分割金型と前記内径規制部材との間に配置された前記発泡溶融樹脂の少なくとも一部を圧縮させずに、前記分割金型で前記発泡溶融樹脂を挟み込み、前記分割金型で挟み込まれた前記発泡溶融樹脂で前記発泡成形体を成形すると共に、前記分割金型と前記内径規制部材との間に配置された前記発泡溶融樹脂を前記内径規制部材に設けられた吸引部で吸引し前記発泡成形体に他部材を嵌め込むための嵌合部を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
<発泡成形体>
本発明にかかる発泡成形体は、
他部材を嵌め込むための嵌合部を有する発泡成形体であって、
前記嵌合部の発泡倍率は、前記発泡成形体の本体部分よりも高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、嵌合部に他部材を容易に嵌め込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の発泡成形体としてのダクト100を示す斜視図であり、(a)は、ダクト100の正面図であり、(b)は、(a)のA-A線に沿う断面図(嵌合部104aの断面図)であり、(c)は、(a)のB-B線に沿う断面図(ダクト本体102の断面図)である。
【図2】ダクト100の成形方法例を示す図である。
【図3】内径規制部材32の周辺の構成例を示す図であり、(a)は、内径規制部材32の側面断面図であり、(b)は、(a)のA-A線に沿う断面図である。
【図4】嵌合部104aの形成例を示す第1の図である。
【図5】嵌合部104aの形成例を示す第2の図である。
【図6】吸引部42の構成例を示す図である。
【図7】第2の実施形態のダクト100の成形方法例を示す図である。
【図8】内径規制部材32の配置方法例を示す図である。
【図9】従来の発泡成形体の成形方法例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<本実施形態の発泡成形体100の概要>
まず、図1〜図3を参照しながら、本実施形態の発泡成形体100の概要について説明する。
【0020】
本実施形態の発泡成形体100は、図1に示すように、他部材(図示せず)を嵌め込むための嵌合部104aを有する発泡成形体100であり、嵌合部104aの発泡倍率は、発泡成形体100の本体部分102よりも高いことを特徴とする。
【0021】
本実施形態の発泡成形体100は、例えば、図2(a)に示すように、発泡成形体100の内径を規制する内径規制部材32を分割金型22a,22bの間に配置する。そして、図2(b)に示すように、分割金型22a,22bと内径規制部材32との間に配置された発泡溶融樹脂11の少なくとも一部を圧縮させずに、分割金型22a,22bで発泡溶融樹脂11を挟み込み、分割金型22a,22bで挟み込まれた発泡溶融樹脂11で発泡成形体100を成形すると共に、分割金型22a,22bと内径規制部材32との間に配置された発泡溶融樹脂11を内径規制部材32に設けられた吸引部(42:図3参照)で吸引し嵌合部104aを形成する。これにより、図1に示す嵌合部104aを有する発泡成形体100が得られる。
【0022】
本実施形態の発泡成形体100は、分割金型22a,22bと内径規制部材32との間に配置された発泡溶融樹脂11の少なくとも一部を圧縮させずに、発泡成形体100を成形すると共に、その発泡溶融樹脂11を内径規制部材32に設けられた吸引部42で吸引し嵌合部104aを形成しているため、嵌合部104aの発泡倍率は、発泡成形体100の本体部分102よりも高くなっている。その結果、嵌合部104aが変形し易く、嵌合部104aに他部材を容易に嵌め込むことができる。以下、添付図面を参照しながら、本実施形態の発泡成形体とその成形方法について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、発泡成形体の一例であるダクトについて詳細に説明する。なお、本発明は、ダクトに限らず、例えば、その他の自動車部品や容器など、他の発泡成形体に適用することができる。
【0023】
(第1の実施形態)
<ダクト100の構成例>
まず、図1を参照しながら、本実施形態のダクト100について説明する。図1は、ダクト100の構成例を示す図であり、図1(a)は、ダクト100の構成図であり、図1(b)は、図1(a)のA-A線に沿う断面図(嵌合部104aの断面図)であり、図1(c)は、図1(a)のB-B線に沿う断面図(ダクト本体102の断面図)である。
【0024】
本実施形態のダクト100は、ダクト本体102と、凹状の嵌合部104aと、を有して構成する。本実施形態のダクト100の内部は、中空状の空間(中空部)103を有している。また、ダクト100の壁面には、パーティングラインL1,L2が形成されている。なお、図1に示すダクト100の構成は一例であり、図1に示す構成に限定するものではない。
【0025】
図1(b)、(c)に示す断面は、ダクト100の中空延伸方向(図1において矢印Zで示す方向)に対して垂直な断面であり、図1(b)は、嵌合部104aの部分の断面を示し、図1(c)は、ダクト本体102の部分の断面を示す。本実施形態のダクト100は、図1(c)に示すダクト本体102の部分よりも図1(b)に示す嵌合部104aの部分の発泡倍率が高くなっている。なお、中空延伸方向とは、ダクト100において中空部103が延びる方向である。本実施形態のダクト100のように両端が開口しているような場合は、この中空延伸方向は、ダクト100内の通気経路と平行な方向を意味する。
【0026】
本実施形態のダクト100は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする基材樹脂と、発泡剤と、を溶融混練した発泡溶融樹脂で構成する。
【0027】
ポリオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂などのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などが適用可能である。なお、ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン成分とスチレンなどのその他の成分とを共重合したものを含むものとする。ポリオレフィン系樹脂としては、特に、耐熱性、剛性等の機械的物性に優れたポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0028】
発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、およびブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、あるいは、重炭酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、アゾジカルボンアミド等の化学発泡剤が適用可能である。さらに、これらの物理発泡剤と化学発泡剤とを併用することも可能である。
【0029】
本実施形態のダクト100は、ダクト本体102の発泡倍率が、例えば1.5〜6.0倍の範囲で成形できる。本実施形態のダクト100は、ダクト本体102の部分よりも嵌合部104aの部分の発泡倍率が約0.1倍以上高くなっている。
【0030】
発泡倍率は、以下のように算出した。
ダクト本体102の中央、及び、両端付近(但し、嵌合部104aの部分を除く)の合計3箇所から、2cm角で試験片を切り取った。「JIS K-7112に準じた、アルファミラージュ(株)製電子比重計EW−200SG」により、3つの試験片の比重を測定した。その3つの比重値を算術平均することによって、ダクト本体102の平均比重を算出した。そして、この平均比重によって、発泡する前のポリオレフィン系樹脂の比重を割ることによって、発泡倍率を算出した。
嵌合部104aの発泡倍率も上記と同様に算出した。
【0031】
ダクト本体102の発泡倍率が1.5倍未満であると、十分な軽量化が出来ず、表面に結露が発生しやすいといった欠点がある。特に、車両用のダクト100においては、発泡倍率が1.5倍未満であると、熱ロス性能が悪いといった欠点がある。一方、発泡倍率が6.0倍を超えると、外部の力により簡単に変形し易い。
【0032】
本実施形態のダクト本体102の平均肉厚は、0.7〜4.0mmであることが好ましい。嵌合部104aの平均肉厚は、ダクト本体102の部分よりも、約0.2mm以上厚くなっている。
平均肉厚については、以下のように算出した。
ダクト本体102の中央、及び、両端付近(但し、嵌合部104aの部分を除く)の3箇所の断面における、2つの金型分割点を結ぶ直線の垂直二等分線と交わる部分(合計6箇所)の肉厚を、ノギスにより測定した。そして、6つの測定値の平均値を、平均肉厚として算出した。
嵌合部104aの平均肉厚も上記と同様に算出した。
ダクト本体102の平均肉厚が0.7mm未満であると、強度が弱く、外部の力により変形しやすくなる。一方、平均肉厚が4.0mmを超えると、2.5倍以上の高発泡倍率のダクトにおいて、肉厚のばらつきが増加し易くなり、風を流す際の圧力損失が増大することになる。
【0033】
<ダクト100の成形方法例>
次に、図2を参照しながら、本実施形態のダクト100の成形方法例について説明する。図2は、本実施形態のダクト100を成形する成形装置の分割金型22a,22bの周辺の構成例を示す図である。
【0034】
まず、ダクト100を形成するための基材樹脂を押出機(図示せず)内で溶融混練し、発泡剤を注入してから、図2(a)に示すように、ダイ21から押し出して一次発泡させた円筒状の発泡パリソン11を形成し、その発泡パリソン11を分割金型22a,22b内に配置する。また、発泡パリソン11の下方から、その発泡パリソン11内に嵌合部形成用の金型31dを備える内径規制部材32を挿入する。
【0035】
本実施形態の成形装置は、分割金型22aの成形空間内の下部に設けられた凹状嵌合形成部34aと、分割金型22bの成形空間内の下部に設けられた凹状嵌合形成部34bと、金型31dと、を用いて凹状の嵌合部104aを形成する。
【0036】
このため、発泡パリソン11内に挿入した金型31dが凹状嵌合形成部34a,34bの間に位置するように、内径規制部材32を挿入する。
【0037】
次に、図2(b)に示すように、分割金型22a,22bを閉鎖し、発泡パリソン11を分割金型22a,22bで挟み込むと共に、発泡パリソン11の内部に気体を吹き込み、中空部103を有するダクト100を成形する。
【0038】
本実施形態の成形装置は、分割金型22a,22bを閉鎖したとき、図3に示すように、凹状嵌合形成部34a,34bと金型31dとで挟まれた発泡パリソン11の少なくとも一部が圧縮されないように、分割金型22a,22bを閉鎖したときの凹状嵌合形成部34a,34bの内周形状と金型31dの外周形状との間の一部の距離T1(図3(b)参照)が発泡パリソン11の層厚T2(図3(b)参照)以上となるように構成し、凹状嵌合形成部34a,34bと金型31dとで挟まれた発泡パリソン11の周囲に隙間40が形成されるようにしている。但し、凹状嵌合形成部34a,34bの内周形状と金型31dの外周形状との間の距離T1は、全ての部分において、発泡パリソン11の層厚T2以上となるように構成する必要はなく、発泡パリソン11の少なくとも一部分が圧縮されない箇所が存在するように構成すれば良い。図3(a)は、内径規制部材32を構成する金型31d周辺の拡大図を示し、図3(b)は、図3(a)に示すA-A線の断面図を示す。
【0039】
本実施形態の成形装置は、発泡パリソン11の内部に気体を吹き込むための吹込部41を内径規制部材32の金型31dに設け、その吹込部41を介して発泡パリソン11の内部に気体(エアー)を吹き込むことにしている。
【0040】
本実施形態の成形装置は、凹状嵌合形成部34a,34bと金型31dとで挟まれた発泡パリソン11の部分を極力圧縮しないように隙間40(図3(b)参照)を形成しているため、吹込部41から発泡パリソン11の内部に吹き込んだ気体が、隙間40を通過して発泡パリソン11の外部に流出し易くなっている。このため、本実施形態の成形装置は、凹状嵌合形成部34a,34bの全周に形成された食切部43で発泡パリソン11を金型31dに接触させ、発泡パリソン11の内部に吹き込んだ気体が、発泡パリソン11の外部に漏れないようにしている。その結果、分割金型22a,22bを閉鎖していくと、発泡パリソン11は、発泡パリソン11の内部に吹き込まれた気体により分割金型22a,22b内で伸ばされて変形し、分割金型22a,22bのキャビティ24に密着し、ダクト100の内部に中空部103を有するダクト100を形成することができる。
【0041】
本実施形態の成形装置は、図2に示すように、分割金型22a,22bに減圧用配管23が設けられており、減圧用配管23を使用して分割金型22a,22b内を減圧して真空成形し、発泡パリソン11の外側表面と分割金型22a,22bのキャビティ24とを密着させるようにしている。その結果、分割金型22a,22bのキャビティ24の面形状をダクト本体102の部分に反映させることができる。
【0042】
次に、内径規制部材32の金型31dに設けられた吸引部42から気体を吸引し、図4に示すように、凹状嵌合形成部34a,34bと金型31dとで挟まれた発泡パリソン11の部分を金型31dの表面に密着させて発泡パリソン11を二次発泡させ、ダクト本体102の部分よりも発泡倍率の高い凹状の嵌合部104aを形成する。本実施形態の成形装置は、分割金型22a,22bを閉鎖したときの凹状嵌合形成部34a,34bの内周形状と、内径規制部材32の金型31dの外周形状とが異なるため、凹状嵌合形成部34a,34bと金型31dとで挟まれた発泡パリソン11の部分で形成される凹状の嵌合部104aの内周形状と外周形状とを異ならせることができる。吸引部42で吸引した気体は、真空ポンプ(図示せず)に送られる。
【0043】
次に、分割金型22a,22bを開き、図2(c)に示すダクト100を取り出す。本実施形態の成形装置は、凹状嵌合形成部34a,34bの全周に食切部43が形成されているため、その食切部43で嵌合部104aを切断し、図2(c)に示す嵌合部104aを有するダクト100を取り出すことができる。次に、分割金型22a,22bから取り出した図2(c)に示すダクト100から不要なバリを取り除くと共に、ダクト100の上端部をカッター等で切断する。これにより、図1に示すような凹状の嵌合部104aを有するダクト100を形成することができる。
【0044】
なお、図2では、減圧用配管23等の吸引経路を模式的に示したが、分割金型22a,22bのキャビティ面全体に略均一に発泡パリソン11を吸引するための吸引穴を形成することができる。本実施形態の成形装置は、嵌合部104aを形成する部分のキャビティ面に吸引穴を設けて発泡パリソン11を吸引することが好ましい。これにより、内径規制部材32の金型31dに設けられた吸引部42で発泡パリソン11を吸引した際に発泡パリソン11がキャビティから離れることを防止できるため、嵌合部104aの外形を精度良く成形することができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、発泡パリソン11を分割金型22a,22b内に配置してから発泡パリソン11内に内径規制部材32を挿入することにした。しかし、内径規制部材32を分割金型22a,22b内に予め配置してから、発泡パリソン11を分割金型22a,22b内に配置し、発泡パリソン11内に内径規制部材32が位置するようにすることも可能である。即ち、発泡パリソン11内に内径規制部材32が配置できればその工程の順序は特に限定せず、任意の順序で行うことが可能である。
【0046】
また、上記実施形態では、図3、図4に示すように、分割金型22a,22bを閉鎖したときの凹状嵌合形成部34a,34bの内周形状を四角形状とし、内径規制部材32の金型31dの外周形状を楕円形状とした。しかし、分割金型22a,22bを閉鎖したときの凹状嵌合形成部34a,34bの内周形状と、内径規制部材32の金型31dの外周形状と、は、図3、図4に示す形状に限定せず、各々を任意の形状にすることが可能である。例えば、図5に示すように、分割金型22a,22bを閉鎖したときの凹状嵌合形成部34a,34bの内周形状を楕円形状とし、内径規制部材32の金型31dの外周形状を四角形状にすることも可能である。図5(a)は、発泡パリソン11を吸引部42で吸引する前の状態を示し、図5(b)は、発泡パリソン11を吸引部42で吸引した後の状態を示す。なお、分割金型22a,22bを閉鎖したときの凹状嵌合形成部34a,34bの内周形状と、内径規制部材32の金型31dの外周形状と、を同一形状にすることも可能である。
【0047】
また、上記実施形態では、ブロー成形と真空成形とを併用してダクト100を成形することにした。しかし、ブロー成形のみを用いてダクト100を成形したり、真空成形のみを用いてダクト100を成形したりすることも可能である。なお、ブロー成形を用いる場合は、発泡パリソン11の内部に吹き込んだ気体が発泡パリソン11の外部に漏れないように、凹状嵌合形成部34a,34bの全周に形成された食切部43で気体の流出を防止するように構成する必要がある。但し、真空成形のみを用いてダクト100を成形する場合は、発泡パリソン11の内部に気体を吹き込む必要がないため、この場合は、凹状嵌合形成部34a,34bに食切部43を形成しなくても良い。但し、食切部43がない場合は、分割金型22a,22bからダクト100を取り出した後に、嵌合部104aをカッター等で切断する必要がある。また、上記実施形態では、内径規制部材32の金型31dに吹込部41を設け、発泡パリソン11の内部に気体を吹き込むことにした。しかし、金型31dに吹込部41を設けず、発泡パリソン11にブローピンを刺し込み、発泡パリソン11の内部に気体を吹き込むように構成することも可能である。
【0048】
また、上記実施形態では、図3(a)に示すように、内径規制部材32の金型31dに設けられた吸引部42から気体を吸引し、凹状嵌合形成部34a,34bと金型31dとで挟まれた発泡パリソン11の部分を金型31dの表面に密着させて発泡パリソン11を二次発泡させ、ダクト本体102の部分よりも発泡倍率の高い凹状の嵌合部104aを形成した。しかし、吸引部42の構成は、図3に示す構成に限定するものではなく、例えば、図6に示すように、発泡パリソン11と接触する面に、吸引部42と連結した無数の小孔42aを設け、その小孔42aを用いて嵌合部104aを構成する部分の発泡パリソン11を均一に吸引するようにすることも可能である。嵌合部104aの部分が長くなる場合には、図3に示す吸引部42の形状では、嵌合部104aを構成する一部の部分の発泡パリソン11しか吸引できないが、金型31dの表面に無数の小孔42aを設けることで発泡パリソン11を均一に吸引することができるため、嵌合部104aを構成する部分の発泡倍率も均一化することができる。また、上記実施形態では、金型31dに吸引部42を設けたが、凹状嵌合形成部34a,34bにも吸引部を設け、金型31dに設けた吸引部42と、凹状嵌合形成部34a,34bに設けた吸引部と、で発泡パリソン11の両面を吸引するようにすることも可能である。
【0049】
また、上記実施形態では、凹状嵌合形成部34a,34bの全周に形成された食切部43で気体の流出を防止するように構成した。しかし、気体の流出を防止することが可能であれば食切部43ではなく圧縮部(図示せず)を形成し、その圧縮部で発泡パリソン11を圧縮し、気体の流出を防止するように構成することも可能である。なお、食切部43ではなく圧縮部を形成する場合は、食切部43の位置よりも下方に圧縮部を形成し、その圧縮部で発泡パリソン11を圧縮した部分を成形し、その圧縮部分を切断し、凹状の嵌合部104aを構成する部分を圧縮させないようにすることも可能である。また、食切部43の位置よりも上方に圧縮部を形成し、その圧縮部で発泡パリソン11を圧縮した部分を嵌合部104aに残すようにすることも可能である。但し、発泡パリソン11を圧縮した部分を嵌合部104aに残すようにする場合は、嵌合部104aの発泡倍率をダクト本体102よりも高くするために、嵌合部104aの一部分だけに残す必要がある。
【0050】
<本実施形態のダクト100の作用・効果>
このように、本実施形態は、ダクト100の内径を規制する内径規制部材32を分割金型22a,22bの間に配置し、分割金型22a,22bと内径規制部材32との間に配置された発泡パリソン11の少なくとも一部を圧縮させずに、分割金型22a,22bで発泡パリソン11を挟み込み、その分割金型22a,22bで挟み込まれた発泡パリソン11でダクト100を成形すると共に、分割金型22a,22bと内径規制部材32との間に配置された発泡パリソン11を内径規制部材32に設けられた吸引部42で吸引し嵌合部104aを形成し、ダクト本体102の部分よりも発泡倍率が高く、内径が規制された嵌合部104aを有するダクト100を形成している。その結果、嵌合部104aの内径を規制しつつ、嵌合部104aに他部材を容易に嵌め込むことができるダクト100を得ることができる。
【0051】
なお、本実施形態の成形装置は、発泡パリソン11の外側表面と分割金型22a,22bに設けられた凹状嵌合形成部34a,34bの内周形状とを密着させた後に、内径規制部材32の金型31dに設けられた吸引部42から発泡パリソン11を吸引し、発泡パリソン11の内側表面と金型31dの外周形状とを密着させるようにしている。このため、図4、図5に示すように、嵌合部104aの外周形状と内周形状とを異ならせたダクト100を成形することができる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0053】
第1の実施形態では、図2に示すように、発泡溶融樹脂を円筒状に押し出して形成した円筒状の発泡パリソン11を用いてダクト100を成形した。第2の実施形態は、図7に示すように、発泡溶融樹脂をシート状に押し出して形成したシート状の発泡パリソンPを用いてダクト100を成形する。この場合も、第1の実施形態と同様な内径規制部材32を用いることで、第1の実施形態と同様な嵌合部104aを形成することができる。但し、本実施形態では、シート状の発泡パリソンPを用いているため、第1の実施形態のように円筒状の発泡パリソン11を用いる場合よりも内径規制部材32を容易に発泡パリソンP内に配置することができると共に、ダクト100の端部以外にも嵌合部104aを形成することができる。
【0054】
第1の実施形態では、円筒状の発泡パリソン11を用いているため、図2に示すように、内径規制部材32を発泡パリソン11の下方から発泡パリソン11内に挿入する必要がある。また、ダクト100の端部にしか嵌合部104aを形成することができない。
【0055】
これに対し、本実施形態では、シート状の発泡パリソンPを用いているため、図7に示すように、内径規制部材32を発泡パリソンPの下方だけでなく、図8(a)に示すように、発泡パリソンPの側方からでも発泡パリソンP内に挿入することができる。その結果、図8(b)に示すように、ダクト100の端部以外の側方にも嵌合部104aを形成することができる。ダクト100の端部以外の側方に嵌合部104aを形成した場合も、嵌合部104aの発泡倍率をダクト本体102よりも大きくすることができる。
【0056】
<本実施形態のダクト100の作用・効果>
このように、シート状の発泡パリソンPを用いてダクト100を成形することで、内径規制部材32を発泡パリソンP内に容易に挿入することができると共に、嵌合部104aを任意の箇所に形成することができる。
【0057】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0058】
例えば、上述した実施形態では、曲線形状のダクト100を形成することにしたため、ダクト100の下端側のみに内径規制部材32を用いて嵌合部104aを形成することにした。しかし、図9に示すダクト1のように直線形状のダクト1の場合は、ダクト1の上端側にも内径規制部材32を用いて上述した本実施形態の嵌合部104aを形成することができる。
【0059】
また、上述した実施形態では、内径規制部材32を用いて嵌合部104aを有するダクト100を成形することにした。しかし、嵌合部104aは、他部材に嵌め込むものではなく、ダクト100内部に気体を流入させたり、ダクト100外部に気体を流出させたりするための開口部として用いることも可能である。本実施形態の嵌合部104aは、ダクト本体102よりも発泡倍率が高いため、表面に結露が発生し難くなっている。このため、上述した嵌合部104aを開口部として用いることで結露が発生し難い開口部を構成することができる。
【符号の説明】
【0060】
100 ダクト
102 ダクト本体
103 中空部
104a 嵌合部
L1、L2 パーティングライン
21 ダイ
11 発泡パリソン(円筒状)
22a、22b 分割金型
23 減圧用配管
24 キャビティ
31d 金型
32 内径規制部材
34a、34b 凹状嵌合形成部
40 隙間
41 吹込部
42 吸引部
42a 小孔
43 食切部
P パリソン(シート状)
51 Tダイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡溶融樹脂を分割金型で挟み込んで発泡成形体を成形する成形方法であって、
前記発泡成形体の内径を規制する内径規制部材を前記分割金型の間に配置する工程と、
前記分割金型と前記内径規制部材との間に配置された前記発泡溶融樹脂の少なくとも一部を圧縮させずに、前記分割金型で前記発泡溶融樹脂を挟み込み、前記分割金型で挟み込まれた前記発泡溶融樹脂で前記発泡成形体を成形すると共に、前記分割金型と前記内径規制部材との間に配置された前記発泡溶融樹脂を前記内径規制部材に設けられた吸引部で吸引し前記発泡成形体に他部材を嵌め込むための嵌合部を形成する工程と、を有することを特徴とする成形方法。
【請求項2】
前記分割金型は、前記嵌合部を形成する嵌合形成部を有し、
前記分割金型を閉じた状態の前記嵌合形成部の内周形状と、前記内径規制部材の外周形状と、は異なる形状を構成し、前記嵌合形成部と前記内径規制部材との間に配置された前記発泡溶融樹脂を前記嵌合形成部の内周形状と前記内径規制部材の外周形状とに沿った形状に成形し、前記嵌合部の外周形状と内周形状とが異なる前記嵌合部を形成することを特徴とする請求項1記載の成形方法。
【請求項3】
シート状に押し出した前記発泡溶融樹脂を用いて前記発泡成形体を成形することを特徴とする請求項1または2記載の成形方法。
【請求項4】
他部材を嵌め込むための嵌合部を有する発泡成形体であって、
前記嵌合部の発泡倍率は、前記発泡成形体の本体部分よりも高いことを特徴とする発泡成形体。
【請求項5】
前記嵌合部の外周形状と内周形状とが異なることを特徴とする請求項4記載の発泡成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−99882(P2013−99882A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244789(P2011−244789)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】