説明

発泡成形体

【課題】製造が容易であり、軽量で機械特性などに優れたイソソルビドを原料として含むポリカーボネート共重合体を発泡させてなる成形体を提供する。
【解決手段】下記式(1):


で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とを有するポリカーボネート共重合体を含み、ガラス転移温度(Tg)が145℃未満である発泡成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート共重合体を発泡させてなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は一般的に石油資源から誘導される原料を用いて製造される。しかしながら、近年、石油資源の枯渇が危惧されており、植物などのバイオマス資源から得られる原料を用いたポリカーボネート樹脂の提供が求められている。また、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が、気候変動などをもたらすことからも、使用後の廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな、植物由来モノマーを原料としたポリカーボネート樹脂の開発が求められている。
【0003】
このようなことから、例えば、植物由来モノマーとして、イソソルビドを使用し、炭酸ジフェニルとのエステル交換反応により、ポリカーボネート樹脂を得ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、イソソルビドを原料として含むポリカーボネート樹脂は、機械特性が優れておりかつ耐熱性を有するため、自動車部品など工業材料用途に使用することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、重合体を発泡させてなる成形体(発泡成形体)は、軽量で断熱性や衝撃吸収性に優れる構造体であり、その特性を生かして諸種の材料として用いられている。ここで、特許文献3には、イソソルビドを原料としたポリカーボネート樹脂(イソソルビドホモポリマー)を特定の条件で発泡成形して得られる発泡成形品が開示されている。また、特許文献4に二酸化炭素溶解のポリカーボネート樹脂を使用した比較例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】英国特許第1,079,686号明細書
【特許文献2】特開2009−74031号公報
【特許文献3】特開2009−964号公報
【特許文献4】特開2002−192549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
イソソルビドを原料として含むポリカーボネート樹脂の発泡成形体については、殆ど研究開発が行われておらず、本発明者等の知る限り、特許文献3にホモポリマーの発泡成形体が提案されているのみである。しかしながら、特許文献3におけるイソソルビドホモポリマーの発泡性能は必ずしも良好ではなかった。また、特許文献4には二酸化炭素溶解のポリカーボネート樹脂を使用した例が開示されているが、その例は、比較例であることからもわかるとおり、従来のポリカーボネート樹脂では発泡性能が必ずしも良好ではなかった。
【0007】
イソソルビドを原料として含むポリカーボネート樹脂の発泡成形体の提供ができれば、その用途は大きく広がる可能性があり、製造が容易で、良好な特性を有する発泡成形体が求められていた。
本発明の目的は、製造が容易であり、軽量で機械特性などに優れたイソソルビドを原料として含むポリカーボネート共重合体を発泡させてなる成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、イソソルビドに由来する構造単位とその他ジヒドロキシ化合物、例えばシクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタロール類またはヘキサンジオール類に由来する構造単位を有し、かつ、ガラス転移温度がある特定の範囲にあるポリカーボネート共重合体が優れた発泡性能を有し、軽量で強度の高い成形体となり得ることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
【0009】
即ち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]下記式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とを有するポリカーボネート共重合体を含み、ガラス転移温度(Tg)が145℃未満である発泡成形体。
[2]その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が、下記式(2):
HO−R−OH (2)
(式(2)中、Rは炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を表す。)
で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、
下記式(3):
HO−CH−R−CH−OH (3)
(式(3)中、Rは炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を表す。)
で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、
下記式(4):
H−(O−R−OH (4)
(式(4)中、Rは炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアルキレン基を表し、pは2〜50の整数である。)
で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、および
下記式(5):
HO−R−OH (5)
(式(5)中、Rは炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキレン基、又は置換若しくは無置換のアセタール環を有する基を表す。)
で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造単位である、[1]に記載の発泡成形体。
[3]その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が、シクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール類およびヘキサンジオール類よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造単位である、[1]または[2]に記載の発泡成形体。
[4]ポリカーボネート共重合体に含まれる全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合が、30モル%以上99モル%以下である、[1]ないし[3]の何れか1に記載の発泡成形体。
[5]下記性状(1)を満たす樹脂組成物を発泡成形して得られる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発泡成形体。
【0012】
(1)200℃における二酸化炭素の樹脂組成物に対するヘンリー定数が2.5×10−3〜4.0×10−3g(二酸化炭素)/g(樹脂組成物)・MPaである樹脂組成物[6]発泡倍率が、1.1倍以上100倍以下の範囲である、[1]ないし[5]の何れか1に記載の発泡成形体。
[7]前記樹脂組成物を、発泡剤を用いて、キャビティの拡張を伴う射出発泡により発泡成形してなる[5]または[6]に記載の発泡成形体。
[8]発泡剤が無機ガスである、[7]に記載の発泡成形体。
[9]無機ガスが、窒素ガス又は二酸化炭素ガスである、[8]に記載の発泡成形体。
[10]キャビティの拡張後のキャビティ容積が、樹脂組成物の充填完了時のキャビティ容積に対して、1.1倍を超え20倍以下の範囲である、[7]ないし[9]の何れか1項に記載の発泡成形体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、発泡倍率が高く耐衝撃性が良好、即ち特に軽量で強度に優れ、引っ張り弾性率が優れる発泡成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
先ず、本発明で用いるポリカーボネート共重合体について説明し、次に、樹脂組成物、発泡成形方法、発泡成形体(以下単に「成形体」とも記載する)の用途等について説明する。
[1]ポリカーボネート共重合体
本発明におけるポリカーボネート共重合体は、下記式(1):
【0015】
【化2】

【0016】
で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とを有し、特定のガラス転移温度を有するものであり、以下のジヒドロキシ化合物を原料として用いることにより製造できる。
【0017】
<式(1)で表されるジヒドロキシ化合物>
前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(以下これを、「式(1)の化合物」と略称することがある。)としては、例えば、立体異性体の関係にあるイソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。これらの化合物は、それぞれ、D−グルコース、D−マンノース、L−イドースから得られるものである。例えば、イソソルビドの場合、D−グルコースを水添した後、酸触媒を用いて脱水することにより得ることができる。
【0018】
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのジヒドロキシ化合物のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、光学特性、成形性の面から最も好ましい。
<その他ジヒドロキシ化合物>
その他ジヒドロキシ化合物としては、一般に用いられる重合方法で、上記式(1)の化
合物とともにポリカーボネート共重合体を形成し得るものであれば特に制限されないが、例えば、下記式(2)〜(5)で表されるジヒドロキシ化合物よりなる群から選ばれる少なくとも何れかの化合物が好ましい。なお、以下において、各種の基の炭素数は、当該基が置換基を有する場合、その置換基の炭素数をも含めた合計の炭素数を意味する。
【0019】
HO−R−OH (2)
(式(2)中、Rは炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を表す。)
HO−CH−R−CH−OH (3)
(式(3)中、Rは炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を表す。)
H−(O−R−OH (4)
(式(4)中、Rは炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアルキレン基を表し、pは2〜50の整数である。)
HO−R−OH (5)
(式(5)中、Rは炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキレン基、又は置換若しくは無置換のアセタール環を有する基を表す。)
以下、前記式(2)〜(5)で表されるジヒドロキシ化合物について、さらに具体的に説明する。
【0020】
<式(2)で表されるジヒドロキシ化合物>
式(2)で表されるジヒドロキシ化合物(以下これを、「式(2)の化合物」と略称することがある。)は、Rに炭素数4〜20、好ましくは炭素数4〜18の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を有する脂環式ジヒドロキシ化合物である。ここで、Rが置換基を有する場合、当該置換基としては、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられ、該アルキル基が置換基を有する場合、当該置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
【0021】
このジヒドロキシ化合物は、環構造を有することにより、得られるポリカーボネート共重合体を成形したときの成形品の靭性を高めることができる。
のシクロアルキレン基としては、環構造を有する炭化水素基であれば特に制限は無く、橋頭炭素原子を有するような橋かけ構造であっても構わない。ジヒドロキシ化合物の製造が容易で不純物量を少なくすることができるという観点から、前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物は、5員環構造又は6員環構造を含む化合物、即ち、Rが置換若しくは無置換のシクロペンチレン基又は置換若しくは無置換のシクロへキシレン基であるジヒドロキシ化合物が好ましい。このようなジヒドロキシ化合物であれば、5員環構造又は6員環構造を含むことにより、得られるポリカーボネート共重合体の耐熱性を高くすることができる。該6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。
【0022】
なかでも、前記式(2)の化合物は、Rが下記式(7)で表される種々の異性体であることが好ましい。ここで、式(7)中、R11は水素原子、又は、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R11が置換基を有する炭素数1〜12のアルキル基である場合、当該置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
【0023】
【化3】

【0024】
前記式(2)の化合物として、より具体的には、例えば、テトラメチルシクロブタンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジオール類、ペンタシクロジオール類等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0025】
これらは得られるポリカーボネート共重合体の要求性能に応じて、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<式(3)で表されるジヒドロキシ化合物>
前記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物(以下これを、「式(3)の化合物」と略称することがある。)は、Rに炭素数4〜20、好ましくは炭素数3〜18の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を有する脂環式ジヒドロキシ化合物である。ここで、Rが置換基を有する場合、当該置換基としては、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられ、該アルキル基が置換基を有する場合、当該置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
【0026】
このジヒドロキシ化合物は、環構造を有することにより、得られるポリカーボネート共重合体を成形したときの成形品の靭性を高めることができる。
のシクロアルキレン基としては、環構造を有する炭化水素基であれば特に制限は無く、橋頭炭素原子を有するような橋かけ構造であっても構わない。ジヒドロキシ化合物の製造が容易で不純物量を少なくすることができるという観点から、前記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物は、5員環構造又は6員環構造を含む化合物、即ち、Rが置換若しくは無置換のシクロペンチレン基又は置換若しくは無置換のシクロへキシレン基であるジヒドロキシ化合物が好ましい。このようなジヒドロキシ化合物であれば、5員環構造又は6員環構造を含むことにより、得られるポリカーボネート共重合体の耐熱性、を高くすることができる。該6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。前記式(3)の化合物は、なかでも、Rが前記式(7)で示される種々の異性体であることが好ましい。
【0027】
前記式(3)の化合物として、より具体的には、1,3−シクロペンタンジメタノール等のシクロペンタンジメタノール類、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のシクロヘキサンジメタノール類、3,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、3,9−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、4,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、4,9−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン等のトリシクロデカンジメタノール類が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0028】
これらは得られるポリカーボネート共重合体の要求性能に応じて、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
即ち、これらのジヒドロキシ化合物は、製造上の理由から異性体の混合物として得られ
る場合があるが、その際にはそのまま異性体混合物として使用することもできる。例えば、3,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、3,9−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、4,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、及び4,9−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカンの混合物を使用することができる。
【0029】
前記式(3)の化合物の具体例のうち、特に、シクロヘキサンジメタノール類が好ましく、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
<式(4)で表されるジヒドロキシ化合物>
前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物(以下これを、「式(4)の化合物」と略称することがある。)は、Rに炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜5の置換若しくは無置換のアルキレン基を有する化合物である。pは2〜50、好ましくは2〜30、より好ましくは2〜15の整数である。
【0030】
前記式(4)の化合物としては、具体的にはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量150〜4000)などが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。前記式(4)の化合物としては、分子量300〜2000のポリエチレングリコールが好ましく、中でも分子数600〜1500のポリエチレングリコールが好ましい。
【0031】
これらは得られるポリカーボネート共重合体の要求性能に応じて、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<式(5)で表されるジヒドロキシ化合物>
前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物(以下これを、「式(5)の化合物」と略称することがある。)は、Rに炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアルキレン基、又は置換若しくは無置換のアセタール環を有する基を有するジヒドロキシ化合物である。Rのアルキレン基が置換基を有する場合、当該置換基としては炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。また、Rのアセタール環を有する基が置換基を有する場合、当該置換基としては炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。
【0032】
前記式(5)の化合物のうち、Rが炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキレン基であるジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール等のプロパンジオール類、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等のブタンジオール類、1,5−ヘプタンジオール等のヘプタンジオール類、1,6−ヘキサンジオール等のヘキサンジオール類などが挙げられるが何らこれらに限定されるものではない。これらの中で、ヘキサンジオール類が好ましい。
【0033】
一方、Rが置換若しくは無置換のアセタール環を有する基であるジヒドロキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、中でも、下記式(8)、式(9)で表されるようなスピロ構造を有するジヒドロキシ化合物が好ましく、特には下記式(8)で表されるような複数の環構造を有するジヒドロキシ化合物が好ましい。
【0034】
【化4】

【0035】
これらのジヒドロキシ化合物のなかでも、入手のし易さ、取扱いの容易さ、重合時の反応性の高さ、得られるポリカーボネー共重合体の色相の観点からは、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。また耐熱性の観点からは、アセタール環を有する基を有するジヒドロキシ化合物類が好ましく、特には上記式(8)に代表されるような複数の環構造を有するものが好ましい。
これらは得られるポリカーボネート共重合体の要求性能に応じて、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
<式(1)〜(5)で表される化合物以外のジヒドロキシ化合物>
本発明におけるポリカーボネート共重合体は、前記式(1)〜(5)の化合物に由来する構造単位の他に、それら以外のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。
式(1)〜(5)の化合物以外のジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール類等が挙げられる。
【0037】
ビスフェノール類としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0038】
これらは得られるポリカーボネート共重合体の要求性能に応じて、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明におけるポリカーボネート共重合体中のその他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位としては、シクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール類およびヘキサンジオール類よりなる群から選ばれる何れかの構造単位であることが好ましい。
【0039】
<ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合>
ポリカーボネート共重合体を構成する全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合は特に制限されない
が、通常30モル%以上、好ましくは40モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、また通常99モル%以下、好ましくは95モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。
【0040】
ポリカーボネート共重合体を構成する全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合が上記範囲より小さいと、植物由来度が低下し、さらにガラス転移点が低下し必要な耐熱性が得られない虞がある。また、ポリカーボネート共重合体を構成する全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合が上記範囲より大きいと、耐衝撃性が低下し、さらにガス溶解度が小さく発泡成形した際に十分な軽量化効果が得られない虞がある。
【0041】
<ポリカーボネート共重合体の物理化学的性質>
ここで、本発明におけるポリカーボネート共重合体はガラス転移温度145℃未満であることを特徴としている。
ガラス転移温度(Tg)は、上限としては、好ましくは140℃以下、さらに好ましくは135℃以下、特に好ましくは130℃以下であり、また、下限としては、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。
【0042】
ガラス転移点が高すぎると、発泡成形する際に高い温度が必要となる傾向があり、また、ポリマーへのガス溶解度が小さく発泡成形した時に高い発泡倍率が得られない虞がある。さらに、ガラス転移点が低すぎると発泡成形体の耐熱性が悪くなる虞がある。
ガラス転移温度(Tg)以外のその他の物理化学的性質は特に制限されないが、以下の性質を有するものを発泡させて成形体とすることが好ましい。
【0043】
先ず、ポリカーボネート共重合体の重合度は、溶媒としてフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンの質量比1:1の混合溶液を用い、ポリカーボネート濃度を1.00g/dlに精密に調整し、温度30.0℃±0.1℃で測定した還元粘度として、好ましくは0.40dl/g以上、より好ましくは0.40dl/g以上であり、また通常2.00dl/g以下、好ましくは1.60dl/g以下のような重合度であることが好ましい。この還元粘度が極端に低いものでは発泡成形した時の機械的強度が弱くなり、また、還元粘度が大きすぎると、成形する際の流動性が低下し易くなる傾向がある。
【0044】
また、ポリカーボネート共重合体は、示差走査熱量測定(DSC)を行ったとき、単一のガラス転移温度を与えるが、製造する際に、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物とその他ジヒドロキシ化合物の種類や配合比を調整することで、任意のガラス転移温度を持つ重合体として得ることができる。
また、5%熱減量温度は、好ましくは340℃以上、より好ましくは345℃以上である。5%熱減量温度が高いほど、熱安定性が高くなり、より高温での使用に耐えるものとなる。また、製造温度も高くでき、より製造時の制御幅が広くできるので、製造し易くなる。低くなるほど、熱安定性が低くなり、高温での使用がしにくくなる。また、製造時の制御許容幅が狭くなり作りにくくなる。従って、5%熱減量温度の上限は特に限定されず、高ければ高いほど良く、共重合体の分解温度が上限となる。
【0045】
また、アイゾット衝撃強度は、好ましくは30J/m以上である。アイゾット衝撃強度が大きい程、成形体の強度が高くなり、こわれにくくなるので、上限は特に限定されない。
また、本発明におけるポリカーボネート共重合体は、110℃での単位面積あたりのフェノール成分以外の発生ガス量(以下、単に「発生ガス量」と称す場合がある。)が5n
g/cm以下であることが好ましく、また、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物由来の発生ガス量は0.5ng/cm以下であることがより好ましい。この発生ガス量が少ない程、発生ガスの影響を嫌う用途、例えば、半導体などの電子部品を保管する用途、建物の内装材用途、家電製品などの筐体などに適用することができる。
【0046】
なお、ポリカーボネート共重合体の5%熱減量温度、アイゾット衝撃強度、発生ガス量の測定方法は、具体的には後述の実施例の項で示す通りである。
本発明におけるポリカーボネート共重合体において、上記物性は、少なくとも二つを同時に有するもの、例えばガラス転移温度(Tg)が145℃未満であり、且つアイゾット衝撃強度が30J/m以上であるものが好ましく、さらに他の物性を併せもつものがより好ましい。ガラス転移温度が145℃以上であると、発泡成形する際に高い温度が必要となる傾向があり、また、ガス溶解度が小さく発泡成形した時に高い発泡倍率が得難くなる虞がある。さらにアイゾッド衝撃強度が30J/m未満であると、発泡成形体の強度が低くなる虞がある。
【0047】
本発明におけるポリカーボネート共重合体は、一般に用いられる重合方法で製造することができ、その重合方法は、ホスゲンを用いた溶液重合法、炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法等のいずれの方法でもよい。さらに具体的には、例えば、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と、前記したその他ジヒドロキシ化合物(式(2)〜(5)の化合物よりなる群から選ばれる何れかの化合物)と、必要に応じて用いられるそれら以外のジヒドロキシ化合物とを、重合触媒の存在下に、炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法が好ましい。
【0048】
この溶融重合法は、それ自体既知の方法であり、その詳細は、例えば、特開2008−24919号公報、特開2009−161746号公報、特開2009−161745号公報、国際公開第2011/06505号、特開2011−111614号公報等に記載されている。本発明におけるポリカーボネート共重合体は、これら文献に記載の方法に準じて製造することができる。
【0049】
[2]樹脂組成物
<熱可塑性樹脂>
本発明においては、上記したポリカーボネート樹脂に熱可塑性樹脂を所定量配合することも好ましい。
ポリカーボネート樹脂と熱可塑性樹脂の配合量は、ポリカーボネート樹脂1質量部〜99質量部と、熱可塑性樹脂99質量部〜1質量部との範囲であり、好ましくは、ポリカーボネート樹脂10質量部〜99質量部と、熱可塑性樹脂90質量部〜1質量部、より好ましくは、ポリカーボネート樹脂30質量部〜99質量部と、熱可塑性樹脂70質量部〜1質量部、さらに好ましくは、ポリカーボネート樹脂50質量部〜99質量部と、熱可塑性樹脂50質量部〜1質量部である。熱可塑性樹脂の配合量が多すぎると、植物由来度が低下する可能性があり、逆に配合量が少なすぎると、ポリカーボネート樹脂の改良が充分にできない可能性がある。
【0050】
ここで、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロへキサンジメタノールテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂;ポリ乳酸やポリブチレンサクシネートやポリシクロヘキサンジメタノールシクロヘキサンジカルボキシレート等の脂肪族ポリエステル系樹脂等の飽和ポリエステル系樹脂;ビスフェノールAやビスフェノールZ等の各種ビスフェノール類からなる芳香族ポリカーボネート系樹脂;3(4),8(9)−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン等の脂環式ジオールからなる
脂環式ポリカーボネート系樹脂;3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等の複素環ジオールからなる脂肪族ポリカーボネート系樹脂等のポリカーボネート系樹脂;6、66、46、12等の脂肪族ポリアミド系樹脂;6T、6Iや9T等の半芳香族ポリアミド系樹脂等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル/スチレン系樹脂(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン系樹脂(ABS)、アクリロニトリル/エチレンプロピレン(ジエン)/スチレン樹脂(AES)、結晶性シンジオタクチックポリスチレン樹脂等のスチレン系樹脂;PMMAやMBS等のアクリル系樹脂;低密度、中密度や高密度ポリエチレン、エチレン/メタクリレート共重合体(EMA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体(E/GMA)等の共重合ポリエチレン系樹脂;ポリプロピレン系樹脂、4−メチル−ペンテン−1樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)やシクロオレフィンコポリマー(COC)等のオレフィン系樹脂;ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0051】
これらの中で、好ましくは、芳香族ポリエステル系樹脂や飽和ポリエステル系樹脂などからなるポリエステル系樹脂と、芳香族ポリカーボネート系樹脂などからなる前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有さないポリカーボネート樹脂である。さらに、これらの中でも、ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロへキサンジメタノールテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂がより好ましく、芳香族ポリカーボネート系樹脂などからなる前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有さないポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールAやビスフェノールZ等の各種ビスフェノール類からなる芳香族ポリカーボネート系樹脂がより好ましい。
これらの熱可塑性樹脂は、1種又は2種以上を混合して用いても良く、使用目的に応じて必要とされる耐熱性、耐薬品性、成形性等の特性から適宜選択して用いることができる。さらに、無水マレイン酸等の不飽和化合物でグラフト変性や末端修飾して用いてもよい。
【0052】
<添加剤等>
本発明において、上述したポリカーボネート共重合体は、必要に応じて、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブルーイング剤等の各種の添加剤、気泡調整剤、さらに他の樹脂等を配合した樹脂組成物とし、発泡成形方法に応じた発泡剤とともに、発泡成形に供される。
【0053】
具体的には、本発明において、ポリカーボネート共重合には、成形時等における分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。
熱安定剤としては、例えば、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。具体的には、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−te
rt−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
【0054】
なかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましい。
【0055】
これらの熱安定剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
熱安定剤は、溶融重合時に添加した添加量に加えて更に追加で配合することができる。即ち、適当量の亜リン酸化合物やリン酸化合物を配合してポリカーボネート共重合体を得た後に、さらに亜リン酸化合物を配合すると、重合時のヘイズの上昇、着色、及び耐熱性の低下を回避して、さらに多くの熱安定剤を配合でき、色相の悪化の防止が可能となる。
【0056】
これらの熱安定剤の配合量は、ポリカーボネート共重合体100質量部に対して、好ましくは0.0001質量部以上、より好ましくは0.0005質量部以上、更に好ましくは0.001質量部以上であり、また、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.2質量部以下である。
また本発明において、ポリカーボネート共重合体には、酸化防止の目的で酸化防止剤を配合することができる。
【0057】
酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。
【0058】
これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
これら酸化防止剤の配合量は、ポリカーボネート共重合体100質量部に対して、好ましくは0.0001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。
また本発明において、ポリカーボネート共重合体には、押出し発泡成形時の冷却ロール
からのロール離れ、あるいは射出発泡成形時の金型からの離型性をより向上させるために、離型剤を配合することができる。
【0059】
離型剤としては、例えば、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸、パラフィンワックス、蜜蝋、オレフィン系ワックス、カルボキシ基および/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
高級脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数1〜20の一価または多価アルコールと炭素数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。
【0060】
一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸モノグリセリド、ベヘニン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられる。
【0061】
なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ベヘニン酸ベヘニルが好ましい。
高級脂肪酸としては、例えば、炭素数10〜30の飽和脂肪酸が好ましい。かかる脂肪酸としては、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。
【0062】
これらの離型剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
離型剤の配合量は、ポリカーボネートを100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
また本発明において、ポリカーボネート共重合体は、紫外線による変色を防ぐ目的で、紫外線吸収剤や光安定剤を配合することができる。
【0063】
紫外線吸収剤や光安定剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等が挙げられる。
【0064】
これらの紫外線吸収剤や光安定剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
紫外線吸収剤や光安定剤の配合量は、ポリカーボネート共重合体100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、好ましくは2質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
【0065】
また本発明において、ポリカーボネート共重合体には、重合体や紫外線吸収剤等に基づく黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。
ブルーイング剤としては、現行のポリカーボネート樹脂に使用されるものであれば、特に制限されないが、アンスラキノン系染料が好ましい。
具体的には、例えば、Solvent Violet13[CA.No.(カラーインデックスNo)60725]、Solvent Violet31(CA.No.68210)、Solvent Violet33(CA.No.60725)、Solvent Blue94(CA.No 61500)、Solvent Violet36(CA.No.68210)、Solvent Blue97(バイエル社製「マクロレックスバイオレットRR」)、Solvent Blue45(CA.No.61110)等が挙げられる。
【0066】
これらのブルーイング剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
ブルーイング剤の配合量は、ポリカーボネート共重合体100質量部に対して、通常0.1×10−5質量部以上、好ましくは0.1×10−4質量部以上であり、また、通常2×10−1質量部以下、より好ましくは0.5×10−1質量部以下である。
また本発明において、ポリカーボネート共重合体を円滑に発泡させるために、気泡調整剤を配合することができる。
【0067】
気泡調整剤としては、例えば、タルク、シリカ、アルミナ、マイカ、炭酸カルシウム、ワラストナイト、モンモリロナイト、カオリン等の板状、粉末状又は繊維状の無機化合物が挙げられる。これら無機化合物は、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、Si−H結合を有するシリコン系化合物、オルガノシロキサン化合物等で表面処理されていてもよい。上記の他、多価カルボン酸の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムの混合物等も気泡調整剤として好ましい。
【0068】
これらの気泡調整剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
気泡調整剤の配合量は、ポリカーボネート共重合体100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
本発明におけるポリカーボネート共重合体と、各種の添加剤や他の樹脂等との配合は、それ自体既知の通常用いられる方法で行うことができる。例えば、タンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法、あるいは上記各成分を例えば塩化メチレンなどの共通の良溶媒に溶解させた状態で混合する溶液ブレンド方法などが挙げられる。
【0069】
<樹脂組成物のヘンリー定数>
本発明の成形体は、200℃における二酸化炭素の樹脂組成物に対するヘンリー定数が2.5×10−3〜4.0×10−3g(二酸化炭素)/g(樹脂組成物)・MPaである樹脂組成物を発泡成形してなるものが好ましい。
ヘンリーの法則によると、一定温度における上記樹脂組成物への二酸化炭素(気体)の溶解度はその環境下の圧力に比例する。この法則は、以下の式で表される。
【0070】
C=kP (C:気体の溶解度、P:圧力)
ここで、上記の式における比例定数kがヘンリー定数である。二酸化炭素の上記樹脂組成物への溶解度は、ヘンリー定数の値が小さいと小さく、該値が大きいと大きい、と言える。
なお、ヘンリー定数の測定方法は、具体的には後述の実施例の項で示す通りである。
【0071】
本発明に用いられる上記樹脂組成物は、200℃における二酸化炭素の上記樹脂組成物に対するヘンリー定数〔g(二酸化炭素)/g(樹脂組成物)・MPa〕が、通常2.5×10−3以上であることが好ましく、より好ましくは2.6×10−3以上、最も好ましくは2.7×10−3以上であり、また、通常4.0×10−3以下であることが好ましいが、より好ましくは3.9×10−3以下、さらに好ましくは3.8×10−3以下
、特に好ましくは3.7×10−3以下、最も好ましくは3.6×10−3以下である。
【0072】
上記範囲のヘンリー定数を有する上記樹脂組成物を発泡成形に供することにより、発泡倍率が高く耐衝撃性が良好、即ち特に軽量で強度に優れる成形体を得ることができる。
上記範囲のヘンリー定数を有する樹脂組成物は、既に記述したように、必要に応じてイソソルビドの共重合成分の種類と含有比率などを適切にコントロールすることにより得ることができる。
【0073】
[3]発泡成形方法、成形体の用途等
本発明において、上述した樹脂組成物は、発泡成形方法に応じた発泡剤とともに、発泡成形することにより、本発明の成形体を得ることができる。
本発明において、発泡剤としては特に制限されず、揮発性の発泡剤、無機系の発泡剤、分解型発泡剤等のいずれの発泡剤も使用できる。
【0074】
揮発性の発泡剤としては、例えば、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ヘキサン等の低級脂肪族炭化水素化合物;シクロブタン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;メタノール、エタノール等の低級脂肪族1価アルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン化合物;クロロメチル、クロロエチル、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン等の低沸点ハロゲン化炭化水素化合物等が挙げられる。
【0075】
無機系の発泡剤としては、例えば、ガス状、超臨界状態、亜臨界状態のいずれかの状態にある窒素や二酸化炭素、水等が挙げられる。
分解型発泡剤としては、熱分解反応により窒素や二酸化炭素などのガスを発生し得るものであれば特に限定されないが、例えば、バリウムアゾカルボキシレート、アゾジカルボンアミド等のアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾカルボンアミド等のヒドラジン化合物、重炭酸ナトリウム等の重炭酸塩等が挙げられる。
【0076】
これらの中で、超臨界状態又は亜臨界状態の窒素、二酸化炭素又はこれらの混合物が好ましい。
これらの発泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
発泡剤の量は、発泡剤の種類や発泡倍率により適宜定めることができるが、ポリカーボネート共重合体100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0077】
本発明において、発泡成形方法は特に制限されない。
発泡成形方法は種々存在するが、一般的には発泡成形は次の各工程から成る。
1)発泡剤をポリマー中に溶解(又は混入)する工程
2)気泡を発生させる工程
3)気泡を成長させる工程(この工程3)は工程2)と同時に進行する事が多い)
4)気泡を固定化する工程
通常、発泡成形方法は大きく2つに大別される。1つはバッチ式の発泡成形方法であり、成形体に発泡剤を含浸後発泡させる方法が一例として挙げられる。このバッチ式の発泡成形方法では一般的に、比較的プロセス温度が低い。また、前記各工程において比較的長い時間を要する。
【0078】
成形体に発泡剤を含浸した後に発泡を行う方法としては、例えば、樹脂組成物の成形体をオートクレーブ内に置いて超臨界流体を加え、該超臨界流体を成形体に含浸させ、その
後、圧力を下げることにより発泡体を得ることができる。また、加熱により発泡する発泡剤では、成形体に発泡剤を含浸後、加熱することで発泡体を得ることができる。
もう1つは連続式の発泡成形方法であり、押出成形機、射出成形機、ブロー成形機等を用いた発泡成形方法が例示される。この連続式の発泡成形方法では一般的に、比較的プロセス温度が高い。また、前記各工程に要する時間は比較的短い。
【0079】
押出発泡成形としては、例えば、(a)樹脂組成物と発泡剤を押出機で中溶融混練し、押出機先端のサーキュラーダイスから溶融樹脂を押出し、円柱状冷却機(マンドレル)で円筒状発泡体を形成させ、押出方向に切り開いてシート状とする方法や、(b)樹脂組成物と発泡剤を押出機で中溶融混練し、押出機先端のTダイからシート状に押出し、冷却ロールで引き取りシートを得る方法等が挙げられる。
【0080】
なお、発泡剤は、あらかじめポリカーボネート共重合体と混合して使用しても、押出機途中で圧入してもよい。
射出発泡成形としては、例えば、(c)射出成形機内で溶融状態の樹脂組成物に、発泡剤を混合又は溶解し、金型内に射出成形する際に樹脂を発泡させつつ金型内に充填する方法、(d)射出成形機内で溶融状態の樹脂組成物に、発泡剤を混合又は溶解し、金型内に射出充填する際にカウンタープレッシャーや射出時の樹脂の圧力等により圧力を加えて発泡を抑制し、その後、金型の可動側の後退やカウンタープレッシャーの解除又は冷却時の樹脂組成物の収縮等で圧力低下を行い発泡させる方法等が挙げられる。
【0081】
本願発明においては、イソソルビド由来の構造単位を有するポリカーボネートの中で、その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有するポリカーボネート共重合体、特に特定の範囲のガラス転移温度(Tg)を有するものは、上記バッチ式発泡成形方法、連続式発泡成形方法の双方に対して適切な特性、すなわち適切なガス溶解性とガス拡散性を有すると考えられる。このため、発泡成形した場合に、充分な発泡倍率と好適な発泡形態(気泡の大きさ・数密度・独立性=連泡が無い又は少ない事)を有する発泡成形体が得られるため、軽量で機械物性(伸び)が良好な発泡成形体を製造する事が可能であると推察される。
【0082】
上述の通り本願発明においては、発泡成形方法はバッチ式発泡成形でも、連続式発泡成形方法でも良いが、より好ましくは連続式発泡成形方法が好ましいと考えられる。これは、本願発明におけるイソソルビド由来の構造単位を有するポリカーボネートの中で、その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有するポリカーボネート共重合体、特に特定の範囲のガラス転移温度(Tg)を有するものが示すガス溶解性とガス拡散性が、より好適には連続式発泡成形プロセスに適しているためである。
【0083】
発泡成形の各工程の中で、1)発泡剤をポリマー中に溶解(又は混入)する工程においては、ガス拡散性が高いほど早くガスが溶解する。すなわち、該工程の所要時間を短くする事が可能である。
また、3)気泡を成長させる工程においては、ガスの拡散性が高い程気泡の成長が早い。
【0084】
ガス拡散性が高すぎると気泡が粗大化し易く、発泡成形体に外力により変形が加えられた際に粗大気泡が破断点となり、機械物性(伸び)が低下する虞がある。
ガス拡散性が低すぎると充分に気泡が成長せず、発泡倍率が上がらないため軽量化効果が小さくなる虞がある。
本願発明におけるイソソルビド由来の構造単位を有するポリカーボネートの中で、その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有するポリカーボネート共重合体、特に特定の範囲のガラス転移温度(Tg)を有するものは、その他ジヒドロキシ化合物に由来する
構造単位を有さないポリカーボネートや、その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有するポリカーボネート共重合体であっても145℃以上のガラス転移温度(Tg)を有するものよりも、ガス溶解性が高いため、ガス溶解工程において、ポリマー中により多くのガスを溶解させる事ができる。このため、より軽量な発泡成形体を得られる事が期待される。
【0085】
一方で、ガス溶解性が高い場合にはガス拡散性も同様に高い事が多い。ガス溶解性が高く、ガス拡散性が高い場合には発泡成形途中において成形体表面からのガス抜けを生じ易いと考えられ、これに起因する樹脂の欠損や表面の荒れ、又はガス拡散性が高過ぎるために生じる気泡の粗大化が生じる虞があるため、ガス溶解性とガス拡散性が高すぎる事は好ましく無い。
【0086】
本願発明におけるイソソルビド由来の構造単位を有するポリカーボネートの中で、その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有するポリカーボネート共重合体、特に特定の範囲のガラス転移温度(Tg)を有するものは、その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有さないポリカーボネートや、その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有するポリカーボネート共重合体であっても145℃以上のガラス転移温度(Tg)を有するものよりも、ガス拡散性が高いため比較的短時間の気泡成長工程においても充分に気泡を成長させる事ができ、かつ、ガス拡散性が高すぎないため好適な発泡形態を発現でき、このため軽量で、機械物性(伸び)が良好な発泡成形体を得る事が可能であると推察される。
【0087】
一方で、ガス溶解性とガス拡散性は温度に応じて変化するが、本願発明におけるイソソルビド由来の構造単位を有するポリカーボネートの中で、その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有するポリカーボネート共重合体、特に特定の範囲のガラス転移温度(Tg)を有するものは、その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有さないポリカーボネートや、その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有するポリカーボネート共重合体であっても145℃以上のガラス転移温度(Tg)を有するものや一般的なビスフェノール系ポリカーボネートよりも低い温度で成形可能であるため、ガス拡散係数が適切な範囲に有り、ガス拡散性が高過ぎるために生じる気泡の粗大化等を避ける事が可能である。
【0088】
本発明においては、上記した樹脂組成物を、上述の発泡剤を用いて、キャビティの拡張を伴う射出発泡により発泡成形することにより、本発明の成形体を得ることが好ましい。
この場合の射出発泡成形としては、例えば、(a)射出成形機内で溶融状態の樹脂組成物に、発泡剤を混合又は溶解し、金型内に射出成形する際に樹脂を発泡させつつ金型内に充填する方法、(b)射出成形機内で溶融状態の樹脂組成物に、発泡剤を混合又は溶解し、金型内に射出充填する際にカウンタープレッシャーや射出時の樹脂の圧力等により圧力を加えて発泡を抑制し、その後、金型の可動側の後退(コアバック)等によるキャビティの拡張やカウンタープレッシャーの解除又は冷却時の樹脂組成物の収縮等で圧力低下を行い発泡させる方法等が挙げられる。
【0089】
この場合は、上記(b)射出成形機内で溶融状態の樹脂組成物に、発泡剤を混合又は溶解し、金型内に射出充填する際にカウンタープレッシャーや射出時の樹脂の圧力等により圧力を加えて発泡を抑制し、その後、金型の可動側の後退やカウンタープレッシャーの解除又は冷却時の樹脂組成物の収縮等で圧力低下を行い発泡させる方法の内、射出成形機内で溶融状態の樹脂組成物に、発泡剤を混合又は溶解し、金型内に射出充填する際にカウンタープレッシャーや射出時の樹脂の圧力等により圧力を加えて発泡を抑制し、その後、金型の可動側の後退(コアバック)等により、キャビティを拡張させる事により発泡させる方法が好ましい。
【0090】
キャビティの拡張後のキャビティ容積は、樹脂組成物の充填完了時のキャビティ容積に対して、通常1.1倍を超え、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2.0倍以上、最も好ましくは2.5倍以上であり、また、通常100倍以下、好ましくは50倍以下、より好ましくは30倍以下、最も好ましくは20倍以下である。
キャビティの拡張量が少ないと軽量化効果が小さくなる虞があり、キャビティの拡張量が多いと発泡による樹脂組成物の膨張量がキャビティの拡張量未満となり所望の寸法の発泡成形体が得られない虞がある。
【0091】
キャビティの拡張を開始するタイミングは特に制限されないが、通常樹脂の金型内への充填完了とほぼ同時(充填完了前後0.1秒以内)、又は充填完了後であり、充填完了後の場合は充填完了から10.0秒以内、好ましくは5.0秒以内、より好ましくは3.0秒以内である。キャビティの拡張開始のタイミングが充填完了よりも大幅に早いと、金型内が未充満の状態からキャビティの拡張による発泡を開始させる事になるため、所望の寸法を持ち密度が均一な発泡成形体が得られない虞があり、キャビティの拡張開始のタイミングが充満完了よりも大幅に遅いと、キャビティの拡張前に樹脂の冷却による粘度上昇が生じ発泡させる事が困難となる虞がある。
【0092】
キャビティの拡張量と発泡による樹脂の膨張量が等しい場合には、キャビティの拡張後の金型容積と同等の容積を持つ発泡成形体が得られるため、例えば、キャビティの拡張が厚み方向に実施される場合には、「発泡倍率」を「発泡成形体の厚み」に対する「キャビティの拡張以前の金型の厚み」の比〔(発泡成形体の厚み)/(キャビティの拡張以前の金型の厚み)〕で定義することができ、この「発泡倍率」は、(発泡前の樹脂組成物の密度)/(発泡成形体の密度)と同等となる。
【0093】
発泡成形の温度は、樹脂組成物の発泡成形が可能な温度であれば特に制限されないが、通常80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、また、通常300℃以下、より好ましくは260℃以下である。
さらに詳しくは、発泡成形の温度の下限は、ポリカーボネート共重合体のガラス転移温度(Tg)より、5℃高い温度以上が好ましく、10℃高い温度以上がより好ましく、また上限は、該共重合体のTgより200℃高い温度以下が好ましく、150℃高い温度以下がより好ましい。
【0094】
発泡成形時の温度を上記の範囲とすることにより、樹脂の熱分解を抑えつつ、所望の発泡倍率の発泡体を成形することができる。温度が高すぎると樹脂が熱分解してしまう虞があり、温度が低すぎると樹脂粘度が高いため発泡させることが困難となる傾向がある。
また、本発明の成形体において、発泡倍率、セル径等は特に制限はなく、例えば、発泡剤の添加量や成形方法を調整することにより適宜設定することができる。具体的には、発泡倍率は、通常1.1倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2.0倍以上であり、また、通常100倍以下、好ましくは50倍以下、より好ましくは30倍以下である。
【0095】
なお、本発明における発泡倍率は、実施例の項において示す方法により求められる値である。また、発泡体(成形体)の形状も特に制限は無く、用途等に応じて適宜定めることができる。
本発明の成形体において、非発泡層や発泡層同士の多層化や共押出し、表面に発泡していないポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂をラミネートすることもできる。また、射出成形品の場合、金型内の方側もしくは両側に、ポリカーボネート等の非発泡シートを挿入後、射出発泡成形を行い、発泡体と非発泡シートの一体成形品としてもよい。このとき、非発泡シートには、印刷、ハードコート、耐候性付与等を行ったもの
を使用してもよい。さらに、これら成形体表面には印刷、帯電防止処理、ハードコート等の処理を行うこともできる。
【0096】
本発明の成形体は、特に発泡倍率が高く耐衝撃性が良好、即ち特に軽量で強度に優れるので、電気・電子、自動車、建築等の各分野の部材、食品用容器、光反射材、断熱材、遮音材、緩衝材、低比重材、燃料電池セパレーター、低誘電体、低比重材、分離膜等に使用できる。
〔本願発明が効果を奏する理由〕
本願発明においては、イソソルビド由来の構造単位を有するポリカーボネートの中で、その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有するポリカーボネート共重合体、特に特定の範囲のガラス転移温度(Tg)を有するものは、適切なガス溶解性とガス拡散性を有すると考えられる。このため、発泡成形した場合に、充分な発泡倍率と好適な発泡形態(気泡の大きさ・数密度・独立性=連泡が無い又は少ない事)を有する発泡成形体が得られるため、機械物性(伸び)が良好な発泡成形体を製造する事が可能であると推察される。
【実施例】
【0097】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。なお、下記の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は、前記上限または下限の値と下記実施例の値または実施例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。
【0098】
<ガラス転移温度(Tg)>
示差走査熱量計(メトラー社製DSC822)を用いて、試料約10mgを10℃/minの昇温速度で加熱して測定し、JIS K 7121(1987)に準拠して、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度である、補外ガラス転移開始温度を求めた。
【0099】
<カラーb値>
カラーメーター(日本電色社製300A)を用いて、チップカラーを測定した。
ガラスセルに、チップを所定量入れ、反射測定で測定し、b値を測定した。
この数値が小さいほど、黄色みが小さい。
【0100】
<還元粘度>
中央理化社製DT−504型自動粘度計(ウベローデ型粘度計)を用い、溶媒として、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンの質量比1:1混合溶媒を用い、温度30.0℃±0.1℃で測定した。濃度は1.00g/dlになるように、精密に調整した。
試料は120℃で攪拌しながら、30分で溶解し、冷却後測定に用いた。
【0101】
溶媒の通過時間t、溶液の通過時間tから、下記式:
ηrel=t/t(g・cm−1・sec−1)より相対粘度ηrelを求め、相対粘度ηrlから、下記式:
ηsp=(η−η)/η=ηrel−1
より比粘度ηspを求めた。
比粘度ηspを濃度c(g/dl)で割って、下記式:
ηred=ηsp/c
より還元粘度(換算粘度)ηredを求めた。
この数値が高いほど分子量が大きい。
【0102】
<5%熱減量温度>
セイコー電子社製TG−DTA(SSC−5200、TG/DTA220)を用い、試料10mgをアルミニウム製容器に載せ、窒素雰囲気下(窒素流量200ml/分)で昇温速度10℃/分で30℃〜450℃まで測定し、5%質量が減少した際の温度を求めた。
この温度が高いほど、熱分解しにくい。
【0103】
<アイゾット衝撃強度>
カスタム・サイエンティフィック(Custom Scientific)社製ミニマックス射出成形機CS−183MMXを用いて、温度240〜300℃で、長さ31.5mm、幅6.2mm、厚さ3.2mmの試験片を射出成形し、深さ1.2mmのノッチをノッチングマシンで付け、試験片とした。
この試験片について、カスタム・サイエンティフィック社製ミニマックスアイゾット衝撃試験機CS−183TI型を用いて、23℃におけるノッチ付きのアイゾット衝撃強度を測定した。
この数値が大きいほど、耐衝撃強度が大きく、割れにくい。
【0104】
<発生ガス量>
100℃で5時間真空乾燥をした樹脂サンプル8gを、幅8cm、長さ8cm、厚さ0.5mmのスペーサーを用いて、熱プレスにて熱プレス温度200〜250℃で、予熱1〜3分、圧力20MPaの条件で1分間加圧後、スペーサーごと取り出し、水管冷却式プレスを用いて圧力20MPaで3分間加圧冷却しシートを作製した。このシートから幅1cm長さ2cmの試料を切り出した。厚さは1mmであった。
【0105】
この試料について、加熱脱着−ガスクロマトグラフ/質量分析法(TDS−GC/MS)にて発生ガスを測定した。測定装置として、GERSTEL社製TDS2を用い、加熱脱着温度を250℃、10分、トラップ温度を−130℃、で実施した。
試料をガラスチャンバーに入れ、110℃で30分間、ヘリウム60mL/分で発生するガスを捕集管Tenax−TAで捕集した。
【0106】
GC/MSとしてAgilent社製HP6890/5973N、カラムとしてHP−VOC:0.32×60m、1.8μmdfを用い、40℃、5分保持した後、8℃/分で280℃まで昇温後、280℃で25分保持して、測定した。キャリアガスは、ヘリウム1.3mL/分とした。
ガス発生量は製造時に留出するフェノール及びフェノールに由来するベンズアルデヒドを除いた単位面積当たりのトータル発生量としてトルエンによる換算値にて求めた。
【0107】
<鉛筆硬度>
測定装置として、新東科学社製表面測定機トライポギア、タイプ14DRを用い、JIS K 5600に準拠して下記条件で測定した。
荷重 750g
測定スピード30mm/min
測定距離 7mm
鉛筆として三菱鉛筆社製UNIを用いた。
鉛筆硬度としては4H,3H,2H,H,F,HB,B、2B,3B,4Bを用いた。
5回測定し、2回以上、傷がついた鉛筆硬度のひとつ柔らかい硬度を測定物質の鉛筆硬度とした。
【0108】
<みかけ密度>
発泡前の密度と発泡後の密度を、METTLER TOLEDO社製天秤 XS204を用いて、アルキメデス法(比重測定キットを使用、室温、水溶媒)で測定した。なお、このみかけ密度を、以下「密度」と表記する。
【0109】
<発泡倍率1>
「発泡後の密度」に対する「発泡前の密度」の比〔(発泡前の密度)/(発泡後の密度)〕を「発泡倍率」とした。
<発泡倍率2>
「発泡成形体の厚み」に対する「キャビティの拡張以前の金型の厚み」の比〔(発泡成形体の厚み)/(キャビティの拡張以前の金型の厚み)〕を「発泡倍率」とした。
【0110】
<発泡倍率3>
(コアバック法による発泡成形の場合)
「発泡成形体の厚み」に対する「キャビティの拡張以前の金型の厚み」の比〔(発泡成形体の厚み)/(キャビティの拡張以前の金型の厚み)〕を「発泡倍率」とした。
(ショートショット法による発泡成形の場合)
「発泡成形体の厚み」に対する「フルショットされ得る金型の厚み」の比〔(発泡成形体の厚み)/(フルショットされ得る金型の厚み)〕を「発泡倍率」とした。
【0111】
<発泡成形以前の樹脂の引張試験>
上記射出成形機を用いて温度240℃〜300℃で、平行部長さ9mm、平行部直径1.5mmの引張試験片を射出成形し、カスタム・サイテンティフィック社製引張試験機CS−183TE型を用いて、引張速度1cm/分の条件で引張試験を行い、降伏時伸び、引張降伏強さ、引張降伏弾性率、及び破断時伸びを測定した。
それぞれの数値が大きいほど、強さ、伸びがある。
【0112】
<発泡成形後の成形体の引張試験>
発泡成形体を、鋸盤を用いて長さ63.5mm、幅16mmに切削し短冊形状とした。この際、元の発泡成形体の長手方向が切削後の成形体の長さ方向となるように、元の発泡成形体の幅方向においては中央部分、長さ方向においてはゲート側半分にあたる部分から切削を行った。次いで、得られた短冊形状の成形体を東洋ボールドウイン社製試料片作製機IDT−3型を用いて切削し、平行部長さ20mm、平行部幅8mm、試験片長さ80mmのダンベル形状の試験片を得た。得られた試験片を東洋精機製作所社製引張試験機STROGRAPH VG10−E型を用いて、引張速度50mm/分の条件で引張試験を行い破断時伸びを測定した。この数値が大きいほど、伸びがある。
【0113】
<ヘンリー定数>
樹脂に対する二酸化炭素の溶解度は、樹脂を十分に乾燥させた後、成形機(例えば、井元製作所社製、卓上型成型プレス)を使用して、所定温度(例えば180℃〜280℃)で、加圧、脱圧して気泡のない試験片(例えば、20mmφ、厚み1mm〜3mm)を作成し、磁気浮遊天秤測定装置(ドイツ国、RUBOTHERM社製、BEL P/O 152)を用いて、温度200℃、5MPa〜20MPaの圧力範囲の二酸化炭素雰囲気下で、試料に二酸化炭素が含有される際の質量変化を測定することにより求めることができる。
【0114】
ヘンリーの法則:C=kPの関係式に、上記手法で求められた樹脂に対する二酸化炭素のガス溶解度C(g(二酸化炭素)/g(樹脂組成物))と圧力P(MPa)を、最小二乗法によりフィッティングを行い、ヘンリー定数kを求めた。
なお、以下の製造例1〜7において、反応に用いたイソソルビドはロケットフルーレ社
製又は三光化学社製、1,4−シクロヘキサンジメタノールはイーストマン社製、ジフェニルカーボネートは三菱化学社製、トリシクロデカンジメタノールはセラニーズ社製、炭酸セシウム、酢酸カルシウム1水和物および1,6−へキサンジオールは和光純薬工業社製である。
【0115】
また、以下の製造例1〜7の記載の中で用いた化合物の略号は次の通りである。
ISB:イソソルビド
1,4−CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール
TCDDM:トリシクロデカンジメタノール
1,6−HD:1,6−ヘキサンジオール
DPC:ジフェニルカーボネート
【0116】
<製造例1:ポリカーボネート共重合体(PC−1)の製造>
特開2009−161746号公報の実施例1に記載の方法に準じて次のとおり製造した。
ISB27.7質量部(0.516モル)に対して、1,4−CHDM13.0質量部(0.246モル)、DPC59.2質量部(0.752モル)、及び触媒として、炭酸セシウム2.21×10−4質量部(1.84×10−6モル)を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。
【0117】
次いで、圧力を常圧から13.3kPa(絶対圧、以下同様)にし、加熱槽温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、加熱槽温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に到達させた。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出して、ポリカーボネート共重合体(PC−1)のペレットを得た。
【0118】
得られたポリカーボネート共重合体(PC−1)に対する200℃における二酸化炭素のヘンリー定数は3.4×10―3g(二酸化炭素)/g(樹脂組成物)・MPa、還元粘度は1.007dl/g、ガラス転移温度は124℃、カラーb値は8.8であった。
また、このポリカーボネート共重合体(PC−1)を245℃で、金型温度90℃で成形して機械物性評価用の試験片(2種)を得た。これらの試験片を用いて、機械物性の評価を行った結果、引張降伏強さ84MPa、引張降伏弾性率748MPa、降伏時伸び16%、破断時伸び30%、アイゾット衝撃強度227J/mであった。
また、このポリカーボネート共重合体(PC−1)の窒素雰囲気下での5%熱減量温度は344℃であった。フェノール成分以外の発生ガス量は3.7ng/cmで、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を除いたジヒドロキシ化合物由来の発生ガスは検出されなかった。
【0119】
<製造例2:ポリカーボネート共重合体(PC−2)の製造>
製造例1において、ISB19.7質量部(0.363モル)、1,4−CHDM21.6質量部(0.404モル)、DPC58.8質量部(0.741モル)、触媒として、炭酸セシウム2.19×10−4質量部(1.82×10−6モル)に変更した以外は、同様に実施した。
【0120】
得られたポリカーボネート共重合体(PC−2)に対する200℃における二酸化炭素のヘンリー定数は3.7×10−3g(二酸化炭素)/g(樹脂組成物)・MPa、還元
粘度は1.196dl/g、ガラス転移温度は101℃、カラーb値は7.7であった。
また、このポリカーボネート共重合体(PC−2)を温度245℃で、金型温度80℃で成形して機械物性評価用の試験片(2種)を得た。これらの試験片を用いて、機械物性の評価を行った結果、引張降伏強さ66MPa、引張降伏弾性率595MPa、降伏時伸び16%、破断時伸び27%、アイゾット衝撃強度293J/mであった。このポリカーボネート共重合体(PC−2)の窒素雰囲気下での5%熱減量温度は345℃であった。
【0121】
<製造例3:ポリカーボネート共重合体(PC−3)の製造>
特開2009−161746号公報の実施例13に記載の方法に準じて次のとおり製造した。
ISB26.9質量部(0.483モル)に対して、TCDDM15.8質量部(0.211モル)、DPC57.4質量部(0.704モル)、及び触媒として、炭酸セシウム2.14×10−4質量部(1.73×10−6モル)を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。
【0122】
次いで、圧力を常圧から13.3kPaに40分で減圧し、加熱槽温度を190℃まで40分で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、加熱槽温度を220℃まで、30分で上昇させた。昇温に入ってから10分後に、反応容器内の圧力を30分で0.200kPa以下とし、発生するフェノールを溜出させた。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出して、ポリカーボネート共重合体のペレットを得た。
【0123】
得られたポリカーボネート共重合体(PC−3)の還元粘度は0.640dl/g、ガラス転移温度は126℃、カラーb値は4.6であった。
また、このポリカーボネート共重合体(PC−3)を245℃で、金型温度90℃で成形して機械物性評価用の試験片(2種)を得た。これらの試験片を用いて、機械物性の評価を行った結果、引張降伏強さ89MPa、引張降伏弾性率834MPa、降伏時伸び15%、破断時伸び76%、アイゾット衝撃強度48J/mであった。
【0124】
また、このポリカーボネート共重合体(PC−3)の窒素雰囲気下での5%熱減量温度は348℃であった。
また、フェノール成分以外の発生ガス量は4.5ng/cmで、一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を除くジヒドロキシ化合物由来の発生ガスは検出されなかった。また、鉛筆硬度はFであった。
【0125】
<製造例4:ポリカーボネート共重合体(PC−4)の製造>
製造例3において、ISB18.7質量部(0.327モル)に対して、TCDDM25.6質量部(0.333モル)、DPC55.8質量部(0.666モル)、及び触媒として、炭酸セシウム2.08×10−4質量部(1.63×10−6モル)に変更した以外は、同様に実施した。
【0126】
得られたポリカーボネート共重合体(PC−4)の還元粘度は0.785dl/g、ガラス転移温度は110℃、カラーb値は4.7であった。
また、このポリカーボネート共重合体(PC−4)を245℃で、金型温度90℃で成形して機械物性評価用の試験片(2種)を得た。これらの試験片を用いて、機械物性の評価を行った結果、引張降伏強さ79MPa、引張降伏弾性率807MPa、降伏時伸び13%、破断時伸び18%、アイゾット衝撃強度58J/mであった。
また、このポリカーボネート共重合体(PC−4)の窒素雰囲気下での5%熱減量温度は349℃であった。
【0127】
<製造例5:ポリカーボネート共重合体(PC−5)の製造>
特開2011−111614号公報の実施例1に記載の方法に準じて次のとおり製造した。
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した重合反応装置に、ISBと1,6−HD、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPC、および酢酸カルシウム1水和物を、モル比でISB/1,6−HD/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.85/0.15/1.00/2.0×10−6になるように仕込み、充分に窒素置換した(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)。続いて熱媒で加温を行い、内温が140℃になった時点で撹拌を開始した。昇温を開始後40分で内温を210℃にし、内温が210℃に到達した時点でこの温度を保持するように制御すると同時に、減圧を開始し、210℃に到達してから90分で13.3kPaにして、この圧力を保持するようにしながら、さらに30分間保持した。重合反応とともに副生するフェノール蒸気は、100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を重合反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は続いて45℃の凝縮器に導いて回収した。
【0128】
このようにしてオリゴマー化させた内容物を、一旦大気圧にまで窒素にて復圧させた後、撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した別の重合反応装置に移し、昇温および減圧を開始して、50分で内温230℃、圧力200Paにした。その後、20分かけて圧力133Pa以下にして、所定撹拌動力になった時点で窒素にて復圧し、内容物をストランドの形態で抜出し、回転式カッターでペレットにした。
得られたポリカーボネート共重合体(PC−5)の還元粘度は0.4299dl/g、ガラス転移温度は122℃、カラーb値は12.22であった。
【0129】
<製造例6:ポリカーボネート共重合体(PC−6)の製造>
製造例5において、モル比でISB/1,6−HD/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.70/0.30/1.00/2.0×10−6になるように仕込んだ以外は、同様に実施した。
得られたポリカーボネート共重合体(PC−6)の還元粘度は0.4655dl/g、ガラス転移温度は86℃、カラーb値は15.10であった。
【0130】
<製造例7:ポリカーボネート(ホモポリマー)(PC−7)の製造>
特開2009−161746号公報の実施例27に記載の方法に準じて次のとおり製造した。
ISB40.1質量部(0.581モル)に対して、DPC59.9質量部(0.592モル、触媒として、炭酸セシウム2.23×10−4質量部(1.45×10−6モル)を反応容器に投入し、攪拌しながら、室温から150℃に加熱して溶解をした(約15分)。
【0131】
次いで、圧力を常圧から13.3kPaにし、190℃まで1時間で上昇させながら発生するフェノールを系外へ抜き出した。190℃で15分保持した後、反応器内圧力を6.67kPaとし、加熱槽温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを抜いた。攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、真空度を0.200kPa以下に到達させた。所定の攪拌トルクに到達後反応を終了し、反応物を水中に押し出してペレットを得ようとしたが、押し出せなかったので、固まりで取り出した。
【0132】
得られたポリカーボネート(PC−7)に対する200℃における二酸化炭素のヘンリ
ー定数は2.6×10−3g(二酸化炭素)/g(樹脂組成物)・MPa、還元粘度は0.679dl/g、ガラス転移温度は160℃、カラーb値は13.0であり、製造例1〜7のものに比べ、b値が高く、褐色に着色したものだった。
更に、このポリカーボネート(PC−7)を265℃で成形して機械物性評価用の試験片(2種)の採取をした。これらの試験片を用いて、機械物性の評価を行った結果、引張降伏強さ105MPa、引張降伏弾性率353MPa、降伏時伸び17%、破断時伸び31%、アイゾット衝撃強度11J/mであり、アイゾット衝撃強度が製造例1〜7に比べ、著しく低いことが分かった。
また、このポリカーボネート(PC−7)の窒素雰囲気下での5%熱減量温度は339℃であった。
【0133】
<実施例1−1〜1−6、比較例1−1>
製造例1〜7で得られた樹脂を80℃で12時間真空乾燥させた後、180℃〜230℃でプレス成形し厚み1mmのシートを作製した。作製したシートを30mm角に切り出し試験片とした。試験片を80℃で6時間真空乾燥させ、密度を測定した後、室温の耐圧容器中に投入した。容器内を二酸化炭素で置換した後、10MPaに加圧し試験片に二酸化炭素を含浸させた。2時間30分経過後、耐圧容器のリークバルブを開放し、大気圧まで徐々に減圧した後、耐圧容器から試験片を取り出した。取り出した試験片を、ガラス転移温度(Tg)+20℃前後に加熱されたオイルバス中に1分間浸漬し発泡させた後、水中に浸漬し発泡を停止させ発泡成形体を取出した。取出した発泡成形体を80℃で12時間乾燥させた後、密度を測定した。
【0134】
表1に、各樹脂の組成、ガラス転移温度(Tg)、発泡成形に用いたオイルバス温度、オイルバス温度とTgの差、密度(g/cm)、発泡倍率を示す。
なお発泡倍率は、発泡倍率1による測定である。
表2に、ポリカーボネート樹脂の組成、成形条件及び発泡成形体の性状を示す。なお「ポリカーボネート樹脂の破断時伸び」は、発泡成形前の樹脂の破断時伸びを明細書に記載の方法で測定した。
【0135】
【表1】

【0136】
【表2】

【0137】
表1から、実施例1−1〜1−6のポリカーボネート共重合体(イソソルビドに由来する構造単位とその他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有するポリカーボネート)は、ガラス転移温度(Tg)より15℃〜24℃程度の高い温度で、1.4倍〜3.5倍もの優れた発泡性能を有していることが分かる。また、実施例1−1〜1−6で得られた成形体(発泡成形体)は優れた機械特性を有するものである。
【0138】
一方、比較例1−1のPC−7(イソソルビドのホモポリマー)は、ガラス転移温度(Tg)より20℃高い温度(180℃)における発泡倍率は1.07であり、その発泡性
能は、実施例1−1〜1−6と比較して、大きく劣っていることが分かる。
上記の結果は、イソソルビドのホモポリマーに比べ、イソソルビドとその他ジヒドロキシ化合物との共重合体のガス溶解性が増大しているためだと考えられる。
【0139】
この比較例1−1は、特許文献3(特開2009−964号公報)の実施例1、2に相当するものである。特許文献3には、実施例1、2(イソソルビドホモポリマーの発泡成形品)の「密度」について、「実施例1では650kg/m、「実施例2では590kg/m」と記載されているが、発泡剤として二酸化炭素を用いた本願記載の比較例1とは異なり、二酸化炭素よりも樹脂に対する溶解性が高い液化ブタンガスを発泡剤として発泡させた結果である(特許文献3の段落[0098]、[0100][表2])。これに対して、本願発明における、イソソルビド由来の構造単位を有するポリカーボネートの中で、その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有するポリカーボネート共重合体、特に特定の範囲のガラス転移温度(Tg)を有するものは、ブタンよりも溶解性が低い二酸化炭素を発泡剤として利用した場合でも、密度が0.374g/cmから1.013g/cmの高い発泡倍率を持つ発泡成形体を得られる事がわかる。
【0140】
ここで、特許文献3の実施例1で用いたポリカーボネート(A−1成分)のガラス転移温度(Tg)は156℃、実施例2で用いたポリカーボネート(A−2成分)のガラス転移温度(Tg)は164℃である(特許文献3の段落[0090]〜[0093])。
このように、特許文献3より、イソソルビド由来の構造単位を有するポリカーボネートは、ガラス転移温度(Tg)が高く、押出し発泡成形をするには250℃もの高温とする必要があることが分かる。これに対して、本願発明においては、イソソルビド由来の構造単位を有するポリカーボネートの中で、その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有するポリカーボネート共重合体、特に特定の範囲のガラス転移温度(Tg)を有するものを発泡成形するので、イソソルビドのホモポリマーに比べ、低い温度で発泡成形をする事が可能であると考えられる。
【0141】
また、特許文献3の製造例4のポリカーボネート(A−4成分)のガラス転移温度(Tg)は138℃である(特許文献3の段落[0095])。このA−4成分は、230℃において、「均一発泡不可」であることが示されている(特許文献3の段落[0099]比較例5)。このように、特許文献3の比較例5は、ガラス転移温度が低いと粘度が小さいため気泡の保持性が悪く均一発泡不可能である(即ち発泡性が悪い)事を示していると考えられる。
【0142】
これに対して、本願発明においては、イソソルビド由来の構造単位を有するポリカーボネートの中で、その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有するポリカーボネート共重合体、特に特定の範囲のガラス転移温度(Tg)を有するものは、上記のとおり、特に良好なガス溶解性と耐衝撃性を有し、軽量で機械強度の優れる成形体となり得ることを見出したものである。これらの事実は、特許文献3に開示されている事実、即ちイソソルビド由来の構造単位を有するポリカーボネートの中で、溶融粘度がある特定の範囲であるものを、特定の温度範囲で発泡成形すると、耐熱性、機械特性に優れた発泡成形品が提供されること、すなわち、イソソルビドのホモポリマーの中でガラス転移温度(Tg)が高いものは溶融粘度が大きく流動性が悪いため高温での発泡成形が必要となり樹脂が熱分解してしまうこと、イソソルビドのホモポリマーの中でガラス転移温度(Tg)が低いものは溶融粘度が小さく発泡成形性が劣るため均一発泡が不可能であること等とは全く異なる意外なものである。
【0143】
[実施例2−1〜2−4、比較例2−1、2−2]
<実施例2−1、2−2:ポリカーボネート共重合体(PC−1)の発泡成形>
JSW社製MuCell射出成形機「J85AD−Mucell」のホッパーに、製造
例1のポリカーボネートペレットを投入し、計量の工程においてシリンダー内部(樹脂溶融部)に、物理発泡剤(窒素又は二酸化炭素)を表3に示すとおり加圧して導入(注入)し、溶融したPC−1と物理発泡剤とを混合した。次いで、厚み1.5mm×幅100mm×長さ180mmの板状形状の金型へ射出し、充填完了とほぼ同時(充填完了の前後0.1秒以内)に金型の可動プレートを所定のストローク量(型開量)だけ後退(コアバック)し、キャビティの拡張を行うことにより発泡成形し、そのまま60秒間冷却し、発泡成形体を得た。この場合、発泡倍率の算出に用いる「キャビティの拡張以前の金型の厚み」は1.5mmである。射出開始から充填完了までに要する時間を1.0秒、金型の可動プレートの後退に要する時間を0.1秒に設定した。また、金型温度は60度に調温した。
【0144】
また表3において発泡倍率は、発泡倍率2による測定である。
結果を表3に示す。
<実施例2−3、2−4:ポリカーボネート共重合体(PC−2)の発泡成形>
製造例2のポリカーボネート共重合体(PC−2)を用いた以外は、実施例2−1、2−2と同様に発泡成形した。
【0145】
結果を表3に示す。なお、表3の実施例2−4中の「発泡成形可否」の項の「△」は、成形は可能であったが、成形品欠損や表面荒れが成形品の一部分に発生したことを示す。
<比較例2−1、2−2:ポリカーボネート(PC−3)の発泡成形>
製造例3のポリカーボネート(PC−3)を用いた以外は実施例2−1、2−2と同様に発泡成形した。
【0146】
結果を表3に示す。
<比較例2−3:ポリカーボネートS2000R(ビスフェノールA系PC)の発泡成形>
三菱エンジニアリングプラスチックス社製のビスフェノールA系ポリカーボネート「S2000R」を実施例2−1、2−2と同様に発泡成形した。得られた成形体は特に溶融樹脂流入下流側の端部において、ガス抜けに起因すると推定される樹脂の欠損や表面の荒れが成形品のほぼ全体に見られ実用に耐えうるものではなかった。
【0147】
結果を表3に示す。
<比較例2−4:ポリカーボネート7022IR(ビスフェノールA系PC)の発泡成形>
三菱エンジニアリングプラスチックス社製のビスフェノールA系ポリカーボネート「7022IR」を実施例2−1、2−2と同様に発泡成形した。得られた成形体は特に溶融樹脂流入下流側の端部において、ガス抜けに起因すると推定される樹脂の欠損や表面の荒れが成形品のほぼ全体に見られ実用に耐えうるものではなかった。
【0148】
結果を表3に示す。
「発泡成形可否」の評価基準
○:成形品欠損や表面荒れがなく、成形可能であった。
△:成形は可能であったが、成形品欠損や表面荒れが成形品の一部分に発生した。
×:成形品欠損や表面荒れが成形品に発生し、成形不可能であった。
【0149】
【表3】

【0150】
<実施例3−1、3−2:ポリカーボネート共重合体(PC−1)の発泡成形(コアバック法)>
JSW社製MuCell射出成形機「J85AD−Mucell」のホッパーに、製造例1のポリカーボネートペレットを投入し、計量の工程においてシリンダー内部(樹脂溶融部)に、物理発泡剤(窒素又は二酸化炭素)を表4に示すとおり加圧して導入(注入)し、溶融したPC−1と物理発泡剤とを混合した。計量のストローク量は、全ての実施例・比較例において、厚み1.5mm×幅100mm×長さ180mmの板状形状の金型に射出された場合にフルショットとなる値に設定された。次いで、厚み1.5mm×幅100mm×長さ180mmの板状形状の金型へ射出し、充填完了とほぼ同時(充填完了の前後0.1秒以内)に金型の可動プレートを所定のストローク量(型開量)だけ後退(コアバック)し、キャビティの拡張を行うことにより発泡成形し、そのまま60秒間冷却し、発泡成形体を得た。この場合、発泡倍率の算出に用いる「キャビティの拡張以前の金型の厚み」は1.5mmである。射出開始から充填完了までに要する時間を1.0秒、金型の可動プレートの後退に要する時間を0.1秒に設定した。また、金型温度は60度に調温した。
【0151】
結果を表4に示す。なお、コアバック法においては、表中の金型厚みは「キャビティの拡張以前の金型の厚み」を指す。
また表4において発泡倍率は、発泡倍率3による測定である。
【0152】
<実施例3−3、3−4:ポリカーボネート共重合体(PC−2)の発泡成形(コアバック法)>
製造例2のポリカーボネート共重合体(PC−2)を用いた以外は、実施例3−1、3−2と同様に発泡成形した。
結果を表4に示す。なお、表4の実施例3−4中の「発泡成形可否」の項の「△」は、成形は可能であったが、成形品欠損や表面荒れが成形品の一部分に発生したことを示す。
【0153】
<比較例3−1、3−2:ポリカーボネート(PC−3)の発泡成形(コアバック法)>
製造例3のポリカーボネート(PC−3)を用いた以外は、実施例3−1、3−2とそれぞれ同様に発泡成形した。
結果を表4に示す。
【0154】
<比較例3−3:ポリカーボネートS2000R(ビスフェノールA系PC)の発泡成形(コアバック法)>
三菱エンジニアリングプラスチックス社製のビスフェノールA系ポリカーボネート「S2000R」を実施例3−1、3−2と同様に発泡成形した。得られた成形体は特に溶融樹脂流入下流側の端部において、ガス抜けに起因すると推定される樹脂の欠損や表面の荒れが成形品のほぼ全体に見られ実用に耐えうるものではなかった。
結果を表4に示す。
【0155】
<比較例3−4:ポリカーボネート7022IR(ビスフェノールA系PC)の発泡成形(コアバック法)>
三菱エンジニアリングプラスチックス社製のビスフェノールA系ポリカーボネート「7022IR」を実施例3−1、3−2と同様に発泡成形した。得られた成形体は特に溶融樹脂流入下流側の端部において、ガス抜けに起因すると推定される樹脂の欠損や表面の荒れが成形品のほぼ全体に見られ実用に耐えうるものではなかった。
結果を表4に示す。
【0156】
<実施例3−5、3−6:ポリカーボネート共重合体(PC−1)の発泡成形(ショートショット法)>
JSW社製MuCell射出成形機「J85AD−Mucell」のホッパーに、製造例1のポリカーボネートペレットを投入し、計量の工程においてシリンダー内部(樹脂溶融部)に、物理発泡剤(窒素又は二酸化炭素)を表4に示すとおり加圧して導入(注入)し、溶融したPC−1と物理発泡剤とを混合した。次いで、表4に示す厚み×幅100mm×長さ180mmの板状形状の金型へ射出し、そのまま60秒間冷却し、発泡成形体を得た。これは、型内に未充填部を残してショートショットし、発泡剤の発泡による膨張力で未充填部を充填して成形する方法(ショートショット法)による発泡成形である。この場合、発泡倍率の算出に用いる「フルショットされ得る金型の厚み」は1.5mmである。射出開始から充填完了までに要する時間を1.0秒に設定した。また、金型温度は60度に調温した。
結果を表4に示す。なお、表4の実施例3−6中の「発泡成形可否」の項の「×」は、発泡成形することは可能であったが、発泡剤の発泡による膨張力による未充満部の充填量が不足しており、発泡成形体の溶融樹脂流入下流側の端部まで樹脂が充満されなかった事を示す。
【0157】
<実施例3−7、3−8:ポリカーボネート共重合体(PC−2)の発泡成形(ショートショット法)>
製造例2のポリカーボネート共重合体(PC−2)を用いた以外は、実施例3−5、3−6とそれぞれ同様に発泡成形した。
結果を表4に示す。なお、表4の実施例3−8中の「発泡成形可否」の項の「×」は、発泡成形することは可能であったが、発泡剤の発泡による膨張力による未充満部の充填量が不足しており、発泡成形体の溶融樹脂流入下流側の端部まで樹脂が充満されなかった事を示す。
「発泡成形可否」の評価基準
○:成形品欠損や表面荒れがなく、成形可能であった。
△:成形は可能であったが、成形品欠損や表面荒れが成形品の一部分に発生した。
×:成形品欠損や表面荒れが成形品に発生し、成形不可能であった。
【0158】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明の成形体は、利用分野に特に制限はなく、広範な分野の工業材料として利用できる。本発明の成形体は、軽量で耐衝撃性に優れることから、構造部材、包装用材料、容器、緩衝材、電気・電子材料、自動車部材などに特に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とを有するポリカーボネート共重合体を含み、ガラス転移温度(Tg)が145℃未満である発泡成形体。
【請求項2】
その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が、下記式(2):
HO−R−OH (2)
(式(2)中、Rは炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を表す。)
で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、
下記式(3):
HO−CH−R−CH−OH (3)
(式(3)中、Rは炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を表す。)
で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、
下記式(4):
H−(O−R−OH (4)
(式(4)中、Rは炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアルキレン基を表し、pは2〜50の整数である。)
で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、および
下記式(5):
HO−R−OH (5)
(式(5)中、Rは炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキレン基、又は置換若しくは無置換のアセタール環を有する基を表す。)
で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造単位である、請求項1に記載の発泡成形体。
【請求項3】
その他ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が、シクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール類およびヘキサンジオール類よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造単位である、請求項1または2に記載の発泡成形体。
【請求項4】
ポリカーボネート共重合体に含まれる全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合が、30モル%以上99モル%以下である、請求項1ないし3の何れか1項に記載の発泡成形体。
【請求項5】
下記性状(1)を満たす樹脂組成物を発泡成形して得られる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発泡成形体。
(1)200℃における二酸化炭素の樹脂組成物に対するヘンリー定数が2.5×10−3〜4.0×10−3g(二酸化炭素)/g(樹脂組成物)・MPaである樹脂組成物
【請求項6】
発泡倍率が、1.1倍以上100倍以下の範囲である、請求項1ないし5の何れか1項に記載の発泡成形体。
【請求項7】
前記樹脂組成物を、発泡剤を用いて、キャビティの拡張を伴う射出発泡により発泡成形してなる請求項5又は6に記載の発泡成形体。
【請求項8】
発泡剤が無機ガスである、請求項7に記載の発泡成形体。
【請求項9】
無機ガスが、窒素ガス又は二酸化炭素ガスである、請求項8に記載の発泡成形体。
【請求項10】
キャビティの拡張後のキャビティ容積が、樹脂組成物の充填完了時のキャビティ容積に対して、1.1倍を超え20倍以下の範囲である、請求項7ないし9の何れか1項に記載の発泡成形体。

【公開番号】特開2013−108059(P2013−108059A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−190286(P2012−190286)
【出願日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】