説明

発泡成形品およびその製造方法

【課題】耐衝撃性を十分に有しながらも、発泡倍率をより高めることができ、高度な軽量性、断熱性を実現する。
【解決手段】基材樹脂として、ポリプロピレン系樹脂と、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体と、ポリエチレン系樹脂と、を混合し、ポリプロピレン系樹脂としては、長鎖分岐構造を有するものを用い、配合比率を重量比で基材樹脂の60〜80%とする。スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体としては、スチレン含有量が15〜40%のものを用い、配合比率を重量比で基材樹脂の15〜35%とする。ポリエチレン系樹脂としては、長鎖分岐構造を有し、密度0.930g/cm3以下のものを用い、配合比率を重量比で基材樹脂の5〜25%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用の空調ダクトなどに用いられる発泡成形品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車載のエアコンユニットより供給される空調エアを所望の部位へ通風させるための車両用の空調ダクトが知られている。
このような車両用の空調ダクトには、軽量性、断熱性が求められるので、一般に発泡させた樹脂の成形品が用いられる。
【0003】
こうした発泡成形品について、本出願人による技術では、発泡用ポリプロピレン系樹脂と、スチレン含有量が15〜25wt%である水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーと、を含む混合樹脂により、軽量かつ耐衝撃性に優れる発泡成形品を成形しようとしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーと、プロピレン−エチレンブロックコポリマーと、低密度ポリエチレンとを混合した基材樹脂により、安価な材料で軽量かつ耐衝撃性に優れる発泡成形品を成形しようとしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−51180号公報
【特許文献2】特開2011−116804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば上述した車両用の空調ダクトなどでは、燃費の向上及び原料の低減を目的として、上述した特許文献1、2よりもさらに高度な軽量性、断熱性が求められている。
【0007】
また、車両のルーフサイドの空調ダクトでは、側面衝突から搭乗者を保護するためのカーテンエアバッグがすぐ近くに配置される。このため、カーテンエアバッグが加圧ガスの勢いにより展開された場合であっても、空調ダクトが飛散割れしないようにする必要がある。このため、軽量性、断熱性を向上させるために発泡倍率を高くする場合であっても、耐衝撃強度も十分に確保する必要がある。
なお、空調ダクトの耐衝撃性が不足している場合、エアバッグ側に飛散防止テープを貼ることで飛散割れ対策を行う必要があり、コスト高につながる問題があった。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、耐衝撃性を十分に有しながらも、発泡倍率をより高めることができ、高度な軽量性、断熱性を実現できる発泡成形品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明に係る発泡成形品は、ポリプロピレン系樹脂と、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体と、ポリエチレン系樹脂と、を基材樹脂として含む混合樹脂を成形して得られた発泡成形品であって、
ポリプロピレン系樹脂は、長鎖分岐構造を有し、配合比率が重量比で基材樹脂の60〜80%であり、
スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体は、スチレン含有量が15〜40%であり、配合比率が重量比で基材樹脂の15〜35%であり、
ポリエチレン系樹脂は、長鎖分岐構造を有し、密度0.930g/cm3以下であり、配合比率が重量比で基材樹脂の5〜25%であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る発泡成形品の製造方法は、ポリプロピレン系樹脂と、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体と、ポリエチレン系樹脂とを混合した基材樹脂に、発泡剤を添加して発泡成形する発泡成形品の製造方法であって、
ポリプロピレン系樹脂は、長鎖分岐構造を有し、配合比率が重量比で基材樹脂の60〜80%であり、
スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体は、スチレン含有量が15〜40%であり、配合比率が重量比で基材樹脂の15〜35%であり、
ポリエチレン系樹脂は、長鎖分岐構造を有し、密度0.930g/cm3以下であり、配合比率が重量比で基材樹脂の5〜25%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、耐衝撃性を十分に有しながらも、発泡倍率をより高めることができ、高度な軽量性、断熱性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は、本実施形態に係る車両用軽量空調ダクト(発泡成形品)をルーフサイドダクトして用いた場合を示す斜視図であり、(b)は、(a)のX−X’線矢視断面図である。
【図2】図1に記載のルーフサイドダクトを車両に取り付けた状態を示す断面図である。
【図3】図1に記載のルーフサイドダクトをブロー成形する際の態様を示す断面図である。
【図4】本実施形態に係る車両用軽量空調ダクトを空調用フロアダクトとして用いた場合を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る発泡成形品およびその製造方法を車両用空調ダクトに適用した一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
なお、本発明は、車両用空調ダクトに限らず、例えば、ドアパネル、インストルメントパネル、車両用デッキボードなどの自動車用内装部品、住宅用内装壁材、電子機器のハウジング、車両用以外の気体や液体を供給するダクトなど、他の発泡成形品にも適用することができる。
【0014】
以下の説明では、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
〔第1の実施形態〕
次に、本発明の第1の実施形態について説明する。第1の実施形態は、本発明の実施形態としての車両用空調ダクトがルーフサイドダクトである場合について示すものである。
【0016】
図1の(a)は、本実施形態としてのルーフサイドダクトを示す斜視図であり、(b)は、(a)のX−X’線矢視断面図である。
図1の(a)及び(b)に示すように、本実施形態のルーフサイドダクト1は、エアコンユニットより供給される空調エアを所望の部位へ通風させるためのものである。
【0017】
かかるルーフサイドダクト1は、中空多角柱状の形状を有しており、ブロー成形により一体成形されたものである。なお、ブロー成形については後述する。
ルーフサイドダクト1は、平板上の横断ダクト3に支持されている。
横断ダクト3の一端には、空調エアを供給するためのエア供給口2が設けられており、該エア供給口から供給された空調エアは、横断ダクトの図示しない内部を流通して、ルーフサイドダクト1の中空部分に流入される。
そして、流入した空調エアは、ルーフサイドダクト1に設けられたエア排出口5から排出される。
【0018】
上記ルーフサイドダクト1は、壁部1aの平均肉厚が3.5mm以下となっている。このように、ルーフサイドダクト1の壁部1aの厚さを薄くすることにより、ルーフサイドダクト1内を流通する空調エアの流路を広く設定することができる。
また、壁部1aの厚み方向における気泡セルの平均気泡径は300μm未満であることが好ましい。この場合、機械的強度がより高まるという利点がある。なお、平均気泡径は、100μm未満であることが更に好ましい。
【0019】
ルーフサイドダクト1は、発泡倍率が3.0倍以上の独立気泡構造を有する。ここで、発泡倍率とは、発泡ブロー成形に用いた熱可塑性樹脂の密度を発泡ブロー成形品の壁部1aの見かけ密度で割った値である。また、独立気泡構造とは、複数の気泡セル有する構造であり、少なくとも独立気泡率が70%以上のものを意味する。
【0020】
発泡倍率が3.0倍以上であることにより、発泡倍率が3.0倍未満である場合と比較して、さらに軽量化することができると共に、断熱性をより高めることができる。このため、ダクト内に冷房の空気を流通させた場合であっても、結露が発生する可能性をほとんどなくすことができる。
【0021】
図2に示すように、ルーフサイドダクト1は、車両の内装天井材6と車体パネル4との間に、カーテンエアバッグ7と並べて配置される。
このため、カーテンエアバック7が加圧ガスにより展開された際、カーテンエアバック7の背後に配置されているルーフサイドダクト1にカーテンエアバック7の展開による衝撃が伝わることになる。
【0022】
このため、ルーフサイドダクト1は、カーテンエアバッグ7が加圧ガスにより展開された際にも、展開による衝撃で飛散割れを発生させることのない耐衝撃性を有することが求められる。仮に、カーテンエアバッグ7の展開での衝撃により飛散割れが発生する可能性がある場合、カーテンエアバッグ7に飛散防止テープを貼る必要が生じてしまい、コストアップの要因となってしまう。
【0023】
このため、ルーフサイドダクト1は、−10℃における引張破壊伸びが40%以上であることが好ましく、100%以上であることがより好ましい。ここで、引張破壊伸びとは、JIS K−7113に準じて測定した値である。
−10℃における引張破壊伸びが40%未満であると、引張破壊伸びが40%以上である場合と比較して、カーテンエアバッグ7が加圧ガスにより展開された際に、展開による衝撃で飛散割れが発生しやすくなる。
【0024】
また、本実施形態に係るルーフサイドダクト1は、発泡用ポリプロピレン系樹脂と、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体と、ポリエチレン系樹脂とを混合した基材樹脂に、発泡剤を添加して発泡ブロー成形することにより得られる。
【0025】
発泡用ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン樹脂が長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体を含むものであることが好ましい。
長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体は、0.9以下の重量平均分岐指数を有するプロピレン単独重合体であることが好ましい。また、重量平均分岐指数g’は、V1/V2で表され、V1が分岐ポリオレフィンの極限粘度数、V2が分岐ポリオレフィンと同じ重量平均分子量を有する線状ポリオレフィンの極限粘度数を示す。
【0026】
また、発泡用ポリプロピレン系樹脂は、230℃におけるメルトテンションが3〜35cNの範囲内のポリプロピレンを用いることが好ましい。ここで、メルトテンションとは、溶融張力を意味する。メルトテンションが上記範囲であると、発泡用ポリプロピレン系樹脂は歪み硬化性を示し、高い発泡倍率を得ることができる。
【0027】
スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体としては、スチレン含有量が15〜40%のものが好ましい。
また、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体は、230℃におけるメルトフローレイト(MFR)が10g/10分以下であることが好ましく、1〜10g/10分であることがより好ましく、1〜5g/10分であることが更に好ましい。ここで、MFRとは、JIS K−7210に準じて測定した値である。
MFRが1.0g/10分未満であると、MFRが上記範囲内にある場合と比較して、
低温時の耐衝撃性が得られない場合がある。
【0028】
ポリエチレン系樹脂としては、長鎖分岐構造を有するものであることが好ましい。また、低温時の耐衝撃性の観点から、密度0.930g/cm3以下のものが好適に用いられる。
特に、ポリエチレン系樹脂は、密度0.920g/cm3以下のものであることがより好ましい。また、メルトテンション(MT)とMFRについて、MT×MFRが30(cN・g/10分)以上であることがより好ましい。また、ポリエチレン系樹脂中に、末端に長鎖分岐構造を持つ直鎖状ポリエチレンを含むものであると、低密度で、かつ、MT×MFRの値が高くなるため、より好ましい。
【0029】
ここで、MTは、メルトテンションテスター(株式会社東洋精機製作所製)を用い、余熱温度230℃、押出速度5.7mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50mmのローラに巻き取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示すものである。
【0030】
基材樹脂における上記の発泡用ポリプロピレン系樹脂と、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体と、ポリエチレン系樹脂との重量配合比率は、基材樹脂の全量に対して、発泡用ポリプロピレン系樹脂が60〜80wt%、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体が15〜35wt%、ポリエチレン系樹脂が5〜25wt%とする。すなわち、上記の発泡用ポリプロピレン系樹脂と、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体と、ポリエチレン系樹脂とのそれぞれについて、上記配合比率の範囲内となるように配合することとする。
【0031】
各材料の重量配合比率が全て上記範囲内となるよう調整することにより、耐衝撃性を維持しながらも、高発泡のものとすることができ、車両用軽量空調ダクトとしての軽量性、断熱性を高度に実現することができる。
【0032】
また、上記基材樹脂は、ブロー成形される前に、発泡剤を用いて発泡される。
こうした発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系発泡剤、又は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系発泡剤が挙げられる。
これらの中でも、発泡剤は、空気、炭酸ガス又は窒素ガスを用いることが好ましい。この場合、有体物の混入が防げるので、耐久性等の低下が抑制される。
【0033】
また、発泡方法としては、超臨界流体を用いることが好ましい。すなわち、炭酸ガス又は窒素ガスを超臨界状態とし、混合樹脂を発泡させることが好ましい。この場合、均一且つ確実に気泡することができる。
なお、超臨界流体が窒素ガスの場合、条件は、臨界温度−149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上とすればよく、超臨界流体が炭酸ガスの場合、条件は、臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすればよい。
【0034】
こうして、発泡処理された基材樹脂を公知の方法でブロー成形することにより、本実施形態としてのルーフサイドダクトを成形する。
図3は、本実施形態としてのルーフサイドダクトをブロー成形する際の態様を示す断面図である。
【0035】
まず、押出機内で、長鎖分岐を有するプロピレンホモポリマーと、プロピレン−エチレンブロックコポリマーと、低密度ポリエチレンとを所定の割合で混練して、基材樹脂を作製する。
【0036】
このとき、基材樹脂における配合比率は、基材樹脂の全量に対する重量比として、発泡用ポリプロピレン系樹脂が60〜80wt%、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体が15〜35wt%、ポリエチレン系樹脂が5〜25wt%とする。これらそれぞれの重量配合比率は、発泡用ポリプロピレン系樹脂、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリエチレン系樹脂の全てについて、上記範囲内となるように調整され、決定される。
【0037】
こうした基材樹脂に発泡剤を添加し押出機内で混合した後、ダイ内アキュムレーター(図示せず)に貯留し、続いて、所定の樹脂量が貯留された後にリング状ピストン(図示せず)を水平方向に対して垂直に押し下げる。
そして、図3に示す押出ヘッド8のダイスリットより、押出速度700kg/時以上で円筒状のパリソン9として分割金型10同士の間に押出す。
その後、分割金型10同士を型締めしてパリソン9を挟み込んで、パリソン9内に0.05〜0.15MPaの範囲でエアを吹き込み、ルーフサイドダクト1を形成する。
【0038】
なお、上述のようにブロー成形により発泡成形品を成形する場合に限らず、押し出されたパリソンを金型に吸い付けて所定の形状の成形品を成形するバキューム成形を用いてもよい。また、エアの吹き込みや、吸引を行わず、押し出されたパリソンを金型で挟み込んで成形するコンプレッション成形を用いて、発泡成形品を成形してもよい。
【0039】
以上のように、本実施形態としてのルーフサイドダクト1は、上述のような発泡用ポリプロピレン系樹脂と、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体と、ポリエチレン系樹脂とを混合した基材樹脂に発泡剤を添加して形成されているので、軽量でありながら、例えば、低温時にカーテンエアバッグの展開等による衝撃が加わった場合であっても、飛散防止テープを必要とせず、飛散割れを起こすことのない耐衝撃性を備えるものとなっている。
【0040】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2実施形態は、本発明の車両用軽量空調ダクトがフロア内に配置される空調ダクト(以下、フロアダクト)である場合について示すものである。
【0041】
図4は、第2の実施形態としてのフロアダクトを示す斜視図である。
図4に示すように、本実施形態としてのフロアダクト11は、エアコンユニットより供給される空調エアを所望の部位へ通風させるためのものである。
【0042】
フロアダクト11は、三次元方向に屈曲していること以外は、上述したルーフサイドダクト1と同様である。すなわち、フロアダクト11は、中空多角柱状の形状を有しており、ブロー成形により一体成形されたものである。なお、フロアダクト11は、ブロー成形後の後加工によりフロアダクト11の一端および他端の閉鎖部12を切除し、開口状態として用いられる。
【0043】
フロアダクト11において、空調エアはフロアダクト11の内部を流通して、開口された部分から排出される。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
まず、実施例及び比較例として用いた、発泡用ポリプロピレン系樹脂、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー、およびポリエチレン系樹脂は以下の通りである。
【0046】
<発泡用ポリプロピレン系樹脂>
PP1:プロピレン単独重合体(ポレアリス社(Borealis AG)製、商品名「Daploy WB140」)
PP2:ブロックポリプロピレン(住友化学株式会社製、商品名「ノーブレンAH561」)
【0047】
<水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー>
TPE1:スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「タフテックH1053」)
TPE2:スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「タフテックH1062」)
【0048】
<ポリエチレン系樹脂>
PE1:低圧スラリー法によるハイメルトストレングス・ポリエチレン(東ソー株式会社製、商品名「TOSOH−HMS JK17」
PE2:メタロセン系触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレン(住友化学工業株式会社製、商品名「エクセレンCB5005」)
PE3:直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(住友化学工業株式会社製、商品名「エクセレンFX201」)
【0049】
また、これらの樹脂の、MT(メルトテンション)(cN)、MFR(メルトフローレイト)(g/10分)、MT×MFR(cN・g/10分)、密度(g/cm3)、スチレン含有量(wt%)を表1に示す。
【0050】
なお、発泡用ポリプロピレン系樹脂および水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーについて、MTは、メルトテンションテスター(株式会社東洋精機製作所製)を用い、余熱温度230℃、押出速度5.7mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50mmのローラに巻き取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示すものである。
また、MFRは、JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定を行った値である。
また、密度は、常温(23℃)で測定した値である。
【0051】
また、ポリエチレン系樹脂について、MTは、メルトテンションテスター(株式会社東洋精機製作所製)を用い、余熱温度160℃、押出速度5.7mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50mmのローラに巻き取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示すものである。
また、MFRは、JIS K−6922−1に準じて試験温度190℃、試験荷重2.16kgにて測定を行った値である。
また、密度は、常温(23℃)で測定した値である。
【0052】
【表1】

【0053】
<実施例1>
PP1を70wt%、TPE1を20wt%、PE1を10wt%、混合して、基材樹脂とした。
そして、この基材樹脂に、発泡剤として超臨界状態の窒素、核剤として60wt%タルクマスターバッチ1.5重量部および着色剤として40wt%カーボンブラックマスターバッチ1.5重量部を添加して発泡させ発泡樹脂とした。これを、押出機で混練した後にマンドレルとダイ外筒の間の円筒状空間であるダイ内アキュムレーターに貯留し、リング状ピストンを用いて円筒状のパリソンとして分割金型に押出し、型締め後パリソン内に0.1MPaの圧力でエアを吹き込むことにより、ブロー成形されたサンプルを得た。
【0054】
<実施例2>
PP1を70wt%、TPE1を25wt%、PE1を5wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
【0055】
<実施例3>
PP1を70wt%、TPE1を15wt%、PE1を15wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
【0056】
<実施例4>
PP1を60wt%、TPE1を35wt%、PE1を5wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
【0057】
<実施例5>
PP1を60wt%、TPE1を15wt%、PE1を25wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
【0058】
<実施例6>
PP1を80wt%、TPE1を15wt%、PE1を5wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
【0059】
<実施例7>
PP1を75wt%、TPE2を15wt%、PE1を10wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
【0060】
<実施例8>
PP1を70wt%、TPE1を25wt%、PE2を5wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
【0061】
<実施例9>
PP1を70wt%、TPE1を15wt%、PE2を15wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
【0062】
<実施例10>
PP1を60wt%、TPE1を35wt%、PE2を5wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
【0063】
<比較例1>
PP1を70wt%、TPE2を20wt%、PE3を10wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
【0064】
<比較例2>
PP1を70wt%、TPE1を20wt%、PE3を10wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
【0065】
<比較例3>
PP1を70wt%、PP2を10wt%、TPE2を20wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
【0066】
<比較例4>
PP1を80wt%、TPE2を20wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
【0067】
<比較例5>
PP1を70wt%、TPE2を30wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
【0068】
<比較例6>
PP1を70wt%、PE1を30wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
【0069】
<比較例7>
PP1を70wt%、PE2を30wt%、混合して、基材樹脂とした。
その後の工程は、実施例1と同様の方法によりブロー成形されたサンプルを得た。
【0070】
実施例1〜10及び比較例1〜7で得られたサンプルの物性を以下のように評価した。
【0071】
<耐衝撃性>
耐衝撃性は、実施例1〜10および比較例1〜7で得られた発泡成形品のサンプルに、マイナス10℃において、1kg球を落下させた際にひび割れが発生する高さが120cm以上である場合を〇として、他の場合を×とした。
<発泡倍率>
実施例1〜10及び比較例1〜7で用いた混合樹脂の密度を、対応する発泡成形品サンプルの壁部の見かけ密度で割ることにより、発泡倍率を算出した。
<発泡性>
上述のようにして算出された発泡倍率が3倍以上である場合を〇として、他の場合を×とした。
【0072】
実施例1〜10および比較例1〜7について、PP1、PP2、TPE1、TPE2、PE1〜PE3の基材樹脂中における配合比率と、上述のように評価した耐衝撃性、発泡性、および発泡倍率を表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
実施例1〜10のサンプルでは、発泡用ポリプロピレン系樹脂として、長鎖分岐構造を有する高溶融張力ポリプロピレンであるPP1の重量配合比率を、基材樹脂全体における60〜80wt%としている。
また、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体として、スチレン含有量が15〜40%であるTPE1またはTPE2の重量配合比率を、基材樹脂全体における15〜35wt%としている。
【0075】
この実施例1〜10の内、実施例1〜7のサンプルでは、ポリエチレン系樹脂として、長鎖分岐構造を持つポリエチレンであり、密度0.920g/cm3以下であり、かつ、MT×MFRの値が30(cN・g/10分)以上であるPE1を用い、そのPE1の重量配合比率を、基材樹脂全体における5〜25wt%としている。
【0076】
また、実施例8〜10のサンプルでは、ポリエチレン系樹脂として、長鎖分岐構造を有するポリエチレンであり、密度0.930g/cm3以下であるPE2を用い、そのPE2の重量配合比率を、基材樹脂全体における5〜25wt%としている。
【0077】
こうした配合比率により、実施例1〜10のサンプルでは、発泡倍率が3.0倍を超えており、かつ、耐衝撃性についても、マイナス10℃で1kg球を落下させた際にひび割れが発生する高さ120cm以上の条件をクリアしている。
このように、実施例1〜10のサンプルでは、エアバッグ側に飛散防止テープを貼る必要のない十分な耐衝撃性を有すると共に、発泡倍率を3.0倍以上とすることができ、高度な軽量性、断熱性を実現することができる。
【0078】
特に、ポリエチレン系樹脂としてPE1を用いている実施例1〜7の内、実施例1〜3、5〜7では、発泡倍率が3.5倍を超えている。このため、エアバッグ側に飛散防止テープを貼る必要のない十分な耐衝撃性を有すると共に、さらに高度な軽量性、断熱性を実現することができる。
【0079】
これに対して、比較例1、2では、発泡用ポリプロピレン系樹脂の重量配合比率を、基材樹脂全体における70wt%とし、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体の重量配合比率を、基材樹脂全体における20wt%とすると共に、ポリエチレン系樹脂としてPE3を用い、このPE3の重量配合比率を、基材樹脂全体における10wt%としている。このことにより、耐衝撃性として飛散防止テープを不要とする上記条件をクリアできるようにはなっているが、発泡倍率を3倍以上とすることはできていない。
【0080】
比較例3、4では、発泡用ポリプロピレン系樹脂の重量配合比率を、基材樹脂全体における80wt%とし、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体の重量配合比率を、基材樹脂全体における20wt%としているが、耐衝撃性として飛散防止テープを不要とするための上記条件をクリアすることはできていない。
【0081】
比較例5では、発泡用ポリプロピレン系樹脂の重量配合比率を、基材樹脂全体における70wt%とし、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体の重量配合比率を、基材樹脂全体における30wt%として比較例3、4より増やすようにすることで、耐衝撃性として飛散防止テープを不要とするための上記条件をクリアできるようにしている。しかし、表面の破泡がひどくなり、結果として発泡倍率が低下してしまい、発泡倍率を3倍以上とすることはできていない。
【0082】
比較例6、7では、発泡用ポリプロピレン系樹脂の重量配合比率を、基材樹脂全体における70wt%とし、ポリエチレン系樹脂としてのPE1またはPE2の重量配合比率を、基材樹脂全体における30wt%としているが、耐衝撃性として飛散防止テープを不要とするための上記条件をクリアすることはできていない。
【0083】
以上のように、比較例1、2、3、5のサンプルは、発泡倍率が3.0倍未満であり、また、比較例3、4、6、7のサンプルは、耐衝撃性について、マイナス10℃で1kg球を落下させた際にひび割れが発生する高さ120cm以上の条件をクリアすることができていない。
このように、比較例1〜7においては、発泡性と耐衝撃性との両方を向上させることができない。
【0084】
なお、本発明は、車両用軽量空調ダクトに限らず、例えば、自動車用、航空機用、車両・船舶用、建材用、各種電気機器のハウジング用、スポーツ・レジャー用の構造部材等にも用いることができる。また、カーゴフロアボード、デッキボード、リアパーセルシェルフ、ルーフパネル、ドアトリム等の内装パネル、ドアインナーパネル、プラットフォーム、ハードトップ、サンルーフ、ボンネット、バンパー、フロアスペーサー、ディビアパッド等の自動車の構造部材として用いると、自動車の軽量化が測れるので、燃費を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係る発泡成形品は、車両用空調ダクト、特に、カーテンエアバッグ等に隣接して配置される耐衝撃性が要求される薄肉・軽量なルーフサイドダクト等として好適に利用できる。
また、上記車両用空調ダクトは、機械的強度等の各種物性を低下させることなく車両の軽量化に貢献でき、さらに、飛散防止テープが不要でコストダウンにも貢献しうるものである。
【符号の説明】
【0086】
1 ルーフサイドダクト(車両用軽量空調ダクト)
1a 壁部
2 エア供給口
3 横断ダクト
4 車体パネル
5 エア排出口
6 内装天井材
7 カーテンエアバッグ
8 押出ヘッド
9 パリソン
10 分割金型
11 フロアダクト(車両用軽量空調ダクト)
12 閉鎖部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂と、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体と、ポリエチレン系樹脂と、を基材樹脂として含む混合樹脂を成形して得られた発泡成形品であって、
前記ポリプロピレン系樹脂は、長鎖分岐構造を有し、配合比率が重量比で前記基材樹脂の60〜80%であり、
前記スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体は、スチレン含有量が15〜40%であり、配合比率が重量比で前記基材樹脂の15〜35%であり、
前記ポリエチレン系樹脂は、長鎖分岐構造を有し、密度0.930g/cm3以下であり、配合比率が重量比で前記基材樹脂の5〜25%であることを特徴とする発泡成形品。
【請求項2】
発泡倍率が3倍以上であることを特徴とする請求項1記載の発泡成形品。
【請求項3】
前記ポリエチレン系樹脂は、密度0.920g/cm3以下であり、かつ、メルトテンション(MT)とメルトフローレイト(MFR)が下記式を満足することを特徴とする請求項1または2記載の発泡成形品。
MT×MFR≧30(cN・g/10分)
【請求項4】
ポリプロピレン系樹脂と、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体と、ポリエチレン系樹脂とを混合した基材樹脂に、発泡剤を添加して発泡成形する発泡成形品の製造方法であって、
前記ポリプロピレン系樹脂は、長鎖分岐構造を有し、配合比率が重量比で前記基材樹脂の60〜80%であり、
前記スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体は、スチレン含有量が15〜40%であり、配合比率が重量比で前記基材樹脂の15〜35%であり、
前記ポリエチレン系樹脂は、長鎖分岐構造を有し、密度0.930g/cm3以下であり、配合比率が重量比で前記基材樹脂の5〜25%であることを特徴とする発泡成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−107963(P2013−107963A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253000(P2011−253000)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】