説明

発泡成形品補強用不織布及びそれを用いた製品

【課題】発泡品用補強材として、取扱性をより向上させて、金型追随性に優れ、成形品は、滲み出しがなく、欠点の無い仕上がり形状が良好で、擦過、屈曲、屈折音などの制音機能や保形耐久性にも優れた発泡ウレタン成形体を得ることができる、発泡成形品補強用として特に適した発泡成形品補強用不織布を提供することを課題とする。
【解決手段】短繊維不織布層と緻密圧着部を形成した長繊維不織布層が積層された積層不織布であって、短繊維不織布層と長繊維不織布層は部分的に交絡絡合されており、短繊維不織布層を形成する繊維が長繊維不織布層を貫通して突出繊維構造を形成しており、積層不織布の縦方向の5%伸張時応力が10〜50N/5cm、横方向の5%伸張時応力が15N/5cm以下であり、縦方向の5%伸張時応力と横方向の5%伸張時応力の比が1.66以上である発泡成形品補強用不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形品補強用不織布及びそれを用いた製品に関する。更には、機能性に優れた発泡成形品補強用に最適な不織布及びそれを用いた発泡成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、座席等のクッション材として、発泡ウレタン成形体が広く用いられており、一般的に、発泡ウレタン成形体の成形時に補強材が一体化されたものが用いられている。かかる補強材は、発泡ウレタン成形体と金属スプリングの間に位置して、金属スプリングのクッション作用を均等に分散すると共に、金属スプリングから受ける摩擦から発泡ウレタン成形体を保護するという役割を担うものである。そして、消費者が求める品質が高度になるにつれ、座席等の使用時に、補強材に滲み出したウレタンと金属スプリングの摩擦により発する擦過音を解消する要望が高まっている。そこで、これに応える補強材として、嵩高層と緻密層とを有し、緻密層でウレタンの滲み出しを防止する補強材が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。しかしながら、かかる補強材は、発泡ウレタン成形時の成形性が乏しい。そのため、近年強く求められている意匠性が高く深絞り形状の発泡ウレタンを成形体に用いた場合、皺の発生や破れ等の欠陥が生じ、ここからウレタンの滲み出しにより、金属スプリングとの摩擦で擦過音の増大や破損が生じるという問題点を有していた。
【0003】
そこで、ウレタンの滲み出しを防止する緻密層の65℃及び100℃での5%伸長応力を低く抑えて凹凸が大きい発泡ウレタン成形にも使用し得る補強材として特許文献6が提案されている。しかしながら、かかる補強材は長繊維不織布からなる低目付の緻密層と長繊維不織布からなる基材層を積層交絡処理する方法では、発泡剤の滲み出しは防止できるが、伸度が低く、大きな伸びに対応し難いため、成型時の型添い性が悪くなる問題点を有していた。
【0004】
打抜き性改良方法として、カーボンブラック含有繊維からなる長繊維不織布と非含有長繊維不織布を積層交絡接合する方法が、特許文献7で提案されている。しかし、かかる方法は、打抜き性とハンドリング性は改善されたが、複雑で凹凸が大きい深絞り形状の発泡ウレタン成形において、成形型への追従性が不充分となる。そのため、欠肉や皺の発生を充分防止することができない問題が残っている。
【0005】
高目付単層不織布の片面を熱圧着し、圧着面をバネ受け面として使用する方法が特許文献8で提案されている。かかる方法では、単層のため、片面を充分熱圧着させて剛直化する必要から、複雑で凹凸が大きい深絞り形状の発泡ウレタン成形において、成形型への追従性が不充分となり、欠肉や皺の発生を充分防止することができない問題が残っている。
【0006】
中配向度繊維からなる単層スパンボンド不織布を仮エンボス加工後ニードルパンチして、収縮処理により緻密化する方法で、低通気度の成型加工用不織布を得る方法が特許文献9で提案されている。かかる方法では、収縮熱処理により緻密化されて、0〜35cc/cm3/秒の低通気度なものしか得られない。そのため、複雑な深絞り形状の成型では、型添い性が劣り、ガス抜けが不充分なため発泡剤の充填性も劣り欠肉を発生するなど仕上がり形状が悪くなる問題がある。
【0007】
低モジュラス素材として捲縮ポリプロピレン繊維不織布として、スパンボンド不織布を用いてエンボス加工を付与した発泡成形用補強材が特許文献10に提案されている。この方法は、捲縮発現したバルキーな嵩高層にエンボス加工で部分的に圧着部を形成する方法で成型性は向上するが、単層にエンボス加工による部分圧着のため、非圧着部からの滲み出しを防止する機能が不充分となる。また、非晶状態を維持して低温エンボス加工により引裂強力を向上させていると記載されているが、耐磨耗性が劣るので、Sバネとの擦れで不織布が裂ける問題があり、実用性が低い耐久性の劣るバネ受け補強材となる問題が残る。
【0008】
嵩高層として高目付な長繊維緻不織布を用い、緻密層として短繊維不織布を用いて、接着接合した発泡成形品用補強材が特許文献11に開示されている。しかし、この方法では、補強材の剛性が高くなり、複雑な深絞り形状の成型では、型添い性が劣り、ガス抜けが不充分なため発泡剤の充填性も劣り欠肉を発生するなど仕上がり形状が悪くなる問題がある。
【0009】
難燃剤を添加して、立体捲縮を付与した嵩高な長繊維不織布を用いて、エンボス加工した単層の発泡成形品補強用不織布を用いた発泡成形品が特許文献12に提案されている。しかし、5%伸張応力の縦横比を大きくした発泡成形品補強用不織布を単層で用いる方法では、難燃剤添加による柔軟性付与効果として、形状追随性は向上するが、嵩高性付与だけでは、単層のため遮断層機能が不充分で滲み出し防止効果は不充分な問題が残る。また、引裂き強力(開示されていない)が低くなるためか、Sバネとの擦れで不織布が裂ける問題があり、実用性が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実公昭62−26193号公報
【特許文献2】特開平2−258332号公報
【特許文献3】特許2990207号公報
【特許文献4】特許2990208号公報
【特許文献5】特許3048435号公報
【特許文献6】特許3883008号公報
【特許文献7】特開2007−331259号公報
【特許文献8】特許2611422号公報
【特許文献9】特許2514193号公報
【特許文献10】特開2009−167570号公報
【特許文献11】特許2976394号公報
【特許文献12】特開2011−51137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術としては、補強材機能と取扱性を同時に満たす提案はなされていない。
本発明は従来技術を背景になされたもので、取扱性をより向上させて、金型追随性に優れた発泡成形品補強用として特に適した不織布を提供することを課題とする。さらには、得られる発泡成形品においては、滲み出しがなく、仕上がり形状が良好で、擦過、屈曲、屈折音などの制音機能や保形耐久性にも優れた発泡成形品を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、以下の知見を得、本発明に到達した。
バネ受け面となる被覆層を、制音機能の優れた嵩高な短繊維不織布層とした。発泡体と接する基材層を、取扱性を向上させる力学特性を繊維配列を改良して付与した発泡剤遮断機能をもつ緻密圧着部を有する長繊維不織布層で構成した。そして、これら被覆層と基材層を交絡接合し、基材層面に突出繊維構造を形成することで、構造体全体が柔軟化して、優れた金型追随性と突出繊維構造のアンカー効果で構造体全体の耐久性を向上させた発泡成形品補強用不織布が得られる。この不織布を使用した発泡成型品は、加工成型性、制音性に優れたものが得られる。
【0013】
即ち、本発明は、以下の通りである。
(1)短繊維不織布層と緻密圧着部を形成した長繊維不織布層が積層された積層不織布であって、短繊維不織布層と長繊維不織布層は部分的に交絡絡合されており、短繊維不織布層を形成する繊維が長繊維不織布層を貫通して突出繊維構造を形成しており、積層不織布の縦方向の5%伸張時応力が10〜50N/5cm、横方向の5%伸張時応力が15N/5cm以下であり、縦方向の5%伸張時応力と横方向の5%伸張時応力の比が1.66以上である発泡成形品補強用不織布。
(2)縦方向の5%伸張時応力が15〜45N/5cm、横方向の5%伸張時応力が8〜15N/5cmであり、縦方向の5%伸張時応力と横方向の5%伸張時応力の比が2〜10、目付が50〜200g/mである(1)記載の発泡成形品補強用不織布。
(3)長繊維不織布層の部分圧着処理は、圧着繊維集合部が独立しており、部分圧着部面積率が8〜25%、圧着ドット面積が0.01〜2.5mmである(1)または(2)に記載の発泡成形品補強用不織布。
(4)短繊維不織布層はポリエステル繊維を主体として構成され、長繊維不織布層はポリオレフィン繊維から構成された(1)〜(3)のいずれかに記載の発泡成形品補強用不織布。
(5)通気度が50〜350cc/cm/秒である(1)〜(4)のいずれかに記載の発泡成形品補強用不織布。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の発泡成形品補強用不織布を補強布として用いた発泡成形品。
【発明の効果】
【0014】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、以下の構成とした。バネ受け面となる被覆層を制音機能の優れた嵩高な短繊維不織布層とした。発泡体と接する基材層は、加工工程で伸張された時の低応力下での製品流れ方向の伸びを抑制でき、成型時の変形追随性も満たす縦/横比が特定の力学特性になるように繊維を配列させ、発泡剤遮断機能を有する緻密部を形成した長繊維不織布層で構成した。そして、これら被覆層と基材層を交絡接合して、基材層面に突出繊維構造を形成した積層不織布を得た。
その結果、積層不織布全体も柔軟化して優れた金型追随性を有し、発泡成形品を得た際は突出繊維構造のアンカー効果で構造体全体が一体化して耐久性も向上した発泡成形品が得られる発泡成形品補強用不織布が得られた。
この発泡成形品補強用不織布は、成型性、制音性、耐久性とも優れた発泡成形品を得られる発泡成形機能と、不織布引出し方向の低伸度域での応力を高くして伸びを抑制することで、加工工程の取扱性を著しく向上させた発泡成形品補強用不織布が得られるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、被覆層機能をもつ短繊維不織布層と、基材層機能をもつ緻密圧着部を形成した長繊維不織布層が積層されており、短繊維不織布層と長繊維不織布層は部分的に交絡絡合されて、短繊維不織布層を形成する繊維が長繊維不織布層を貫通して突出繊維構造を形成した積層不織布である。そして、積層不織布の縦方向の5%伸張時応力が10〜50N/5cm、横方向の5%伸張時応力が15N/5cm以下であり、縦方向の5%伸張時応力と横方向の5%伸張時応力の比が1.66以上である発泡成形品補強用不織布である。
本発明では、長繊維不織布のMD方向を縦方向、CD方向を横方向とする。本発明では、長繊維不織布は、縦方向に繊維が配列されているので、繊維の配列方向が縦方向となる。繊維配列方向と直交する方向が横方向となる。
【0016】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、座席用発泡成形品の補強材として用いる場合を想定して、被覆層は、バネ材と接するバネ受け層として、制音、耐磨耗耐久性機能を保持させるため、嵩高な短繊維不織布層で構成している。これは、長繊維不織布からなる基材層と基材層を介して形成した短繊維不織布層を構成する繊維からなる突出繊維が、発泡体と一体化してアンカー効果で積層不織布全体が発泡体と一体化した機能を付与するためでもある。
【0017】
被覆層に長繊維不織布を用いた場合、嵩高性の低下で制音効果の低減と、交絡処理による突出繊維構造の形成が著しく少なくなり、発泡体との一体化が不充分になり、耐久性が低下して剥離を生じる場合があり好ましくない。
【0018】
本発明の被覆層である短繊維不織布層は、少なくとも基材層である長繊維不織布層と部分的に交絡絡合一体化され、長繊維不織布層を貫通した突出繊維構造を形成している。長繊維不織布層と交絡一体化していない場合、剥離しやすく被覆層機能の耐久性が劣り好ましくない。また、短繊維不織布層が交絡処理されていない場合は、短繊維不織布層が崩壊するので好ましくない。長繊維不織布層が発泡剤と接合性が不良な素材の場合、発泡体との一体化も困難になり好ましくない。
【0019】
本発明での短繊維不織布層と長繊維不織布層の部分的交絡処理は、特には限定されないが、長繊維不織布層の表面に好ましい突出繊維構造形成が調整できるニードルパンチにて交絡処理を行うことが好ましい。
【0020】
ニードルパンチの条件は特には限定されないが、製法として、長繊維不織布層上に開繊ウエッブを積層して交絡処理する場合、バーブ種類や条件で調整は必要だが、ペネ50〜300本/cmを選択するのが好ましい。
ペネ50本/cm未満では、短繊維不織布構造を維持できなくなる場合があり、ペネ300本/cmを超えると、後述するが長繊維不織布層の発泡剤遮断機能が低下して、成型時発泡剤漏れを生じる場合がある。
より好ましいペネ数は、80〜150本/cm、最も好ましくは100〜130本/cmである。
【0021】
本発明では発泡成形品の形態保持機能、発泡成形時の発泡剤遮断層機能、及び加工工程の取扱性を付与する基材層は、低目付でも力学特性が保持できる長繊維から構成された長繊維不織布で形成している。長繊維不織布は、部分圧着部を形成して目付が低くても強力や破裂強力が良好なため、発泡成形時の発泡剤遮断機能に大きく寄与する。さらに、前述のように、この長繊維不織布は、その発泡体面側に短繊維を貫通交絡させることで形成した突出繊維構造の付与と、交絡処理による長繊維不織布自体の柔軟化により、発泡剤遮蔽機能を維持しながら、均一な変形が可能な金型追随性を発泡成形品補強用不織布に付与し、突出繊維構造を発泡体中に埋没させることで発泡体とも強固に一体化したアンカー効果を発泡成形品補強用不織布に付与している。
【0022】
基材層が短繊維不織布層であれば、繊維の連続性が無いため、低目付での力学特性が劣り、成形時の金型追随変形で追随斑による変形破れを生じやすく好ましくない。
【0023】
長繊維不織布層は基材層として、発泡成形時に発泡剤の発泡成形品補強用不織布表面への漏れを遮断する遮断層として機能させる必要から、独立したドット状部分圧着部を形成して、短繊維不織布層と積層一体化するための交絡処理により柔軟化させている。これは、成型加工時の金型追随性の確保と発泡時のガス抜け性を維持して成型品の浮きを防止することにも役立つ。
長繊維不織布層に独立した部分的圧着部を形成することで、独立した圧着繊維集合部が構成長繊維を強固に固定する接合点として働くことで構造固定効果を付与している。表面の他の表面のみフラット化された部分は、遮断層効果を付与している。この結果、適度な通気性を有しており、発泡成形による変形に、容易に追随できる機能と脱気機能が付与されている。
長繊維不織布層に圧着処理しない場合は、不織布強度の低下により強伸度や破裂強度が低下すると共に、発泡剤の遮断層機能が劣り、発泡剤の滲み出しを生じる場合があるので好ましくない。
【0024】
また、圧着処理が長繊維不織布層の表面全面に形成されている場合、交絡柔軟化しても、成形時の変形追随性が劣り、通気性が低下して浮きを生じる場合がある。また、圧着部が連続してつながっている場合は、圧着部の厚みと幅により、成形時の変形追随性を損なう場合がある。
【0025】
本発明の長繊維不織布層の部分圧着部面積率は、特には限定されないが、好ましくは5〜40%、より好ましくは8〜25%、最も好ましくは10〜20%である。5%未満では、基材層としての力学特性が低下する。また、発泡剤の遮断機能も不足して発泡剤の滲みだしを生じる場合がある。40%を越えると金型追随性が劣る場合がある。
【0026】
本発明の長繊維不織布層の部分圧着部の独立した圧着ドットの面積(以下、「圧着ドット面積と記載する場合もある)は、好ましくは0.01〜2.5mm、より好ましくは0.02〜1.0mmである。0.01mm未満であると、接合点の強度低下により力学特性が劣り、形態保持性が悪くなり、さらに発泡剤遮断機能の低下で滲みだしを生じる場合がある。2.5mmを超えると、変形による追随性が悪くなり、皺の発生や割れ、引きつりなどを生じて形状の品位が劣る場合がある。
【0027】
本発明の長繊維不織布層に独立した部分圧着部を形成する方法は、特には限定されない。本発明では公知の方法、例えば、エンボスローラー加工などが使用できる。
部分圧着部の形状についても、独立したドットであれば特には限定されないが、好ましくは織目柄、ダイヤ柄、四角柄、亀甲柄、楕円柄、格子柄、水玉柄、丸柄などが例示できる。
【0028】
本発明の発泡成形品補強用不織布における基材層である長繊維不織布層の発泡体と接する面には、突出繊維構造が形成されている。この突出繊維構造を発泡体中に埋没させることにより、発泡体と強固に接合一体化するアンカー効果を得ている。
突出繊維構造が形成されていない場合、発泡成形品補強用不織布の発泡体との接合力が不充分となり、発泡層と発泡成形品補強用不織布とが剥離しやすくなるので好ましくない。
【0029】
本発明の発泡成形品補強用不織布では、発泡体と接する長繊維不織布層面に突出繊維構造が形成されていれば特には限定されないが、好ましくは、突出繊維構造の突出個数は、好ましくは50〜300個/cm、より好ましくは80〜200個/cm、最も好ましくは90〜150個/cmである。50個/cm未満では、交絡処理効果による柔軟化効果、ポリウレタン等の発泡体中へのアンカー効果が不充分になり、接合不良で剥離する場合がある。300個/cmを越えると、ポリウレタン等の発泡体との接合性からは好ましいが、長繊維不織布層が多孔化及び柔軟化し過ぎてしまい、発泡剤遮蔽層効果が低下する場合がある。
なお、本発明における突出繊維構造の突出個数とは、1回の交絡処理により生じた1孔から複数本の繊維が突出した形態も1個として数える。
【0030】
本発明における突出繊維構造で形成された繊維ループ長は、好ましくは1〜10mm、より好ましくは1.5〜7mm、最も好ましくは2〜5mmである。繊維ループ長が1mm未満ではアンカー効果が不足する場合がある。10mmを越える場合は、引っ掛かりにより、発泡成形品補強用不織布の型枠へのセット作業性に問題が出る場合がある。
【0031】
本発明におけるニードルパンチによる積層交絡処理において、上述の好ましい突出繊維構造を形成するには、パンチ数は、ペネ50〜300本/cmが好ましい。また、ニードルパンチの突出繊維構造形成効果は、針深度に依存しており、必要な突出繊維長を形成できる条件で、針伸度はできるだけ浅くするのが好ましい。針深度が深いと開孔径が大きくなり発泡剤の滲み出しを生じる場合があるので、最適条件を設定するのが好ましい。例えば、突出繊維ループ長を3〜10mmとするには、不織布厚みが積層ウエッブ状態で荷重20g/cmで測定したとき約2mmでは、針深度は12〜15mmに設定するのが好ましい。
【0032】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、加工時の不織布原反の引出しによる変形を防止して、裁断や金型へのセッティングの利便化を図るため、縦方向の5%伸張時応力は、10〜50N/5cm、好ましくは15〜45N/5cm、より好ましくは25〜45N/5cmである。10N/5cm未満では、加工工程での不織布の引出し張力で不織布が変形し易くなり、安定した裁断やセッティングができなくなる場合があり好ましくない。50N/5cmを越えると、成形加工時に縦方向の金型への変形追随性が低下し、仕上がり形状不良や破れ、皺などを生じるので好ましくない。
【0033】
発泡成形品補強用不織布の縦方向の5%伸張時応力を高くする方法としては、基材層である長繊維不織布層の縦方向の5%伸張時応力を高くする必要がある。そのため、本発明での長繊維不織布層の縦方向の5%伸張時応力は、15〜150N/5cmが好ましく、25〜100N/5cmがより好ましく、40〜80N/5cmが最も好ましい。長繊維不織布層の縦方向の5%伸張時応力が15N/5cm未満では、短繊維不織布層と積層交絡処理後の発泡成形品補強用不織布としての5%伸張時応力が10N/5cm未満となり好ましくない。150N/5cmを越えると短繊維不織布層と積層交絡処理後の発泡成形品補強用不織布としての5%伸張時応力が50N/5cmを越えるので好ましくない。
【0034】
なお、5%伸張時応力は目付、エンボス加工による密度、圧着面積や圧着ドットの影響がある。そのため、本発明における発泡成形品補強用不織布が短繊維不織布層と長繊維不織布層の2層構造の場合、長繊維不織布層の目付は30〜80g/mが好ましく、40〜60g/mがより好ましい。本発明での長繊維不織布層のエンボス加工の好ましい条件は上述のごとく、長繊維不織布層の部分圧着部面積率が8〜25%、圧着ドット面積が0.01〜2.5mm/ccの範囲となる条件である。
【0035】
基材層である長繊維不織布層中の繊維配列を縦方向により配列させると、縦方向の5%伸張時応力は高くなり、横方向の5%伸張時応力は低くなる。したがって、所望の縦方向の5%伸張時応力を付与する場合でも、発泡成形品補強用不織布の横方向の5%伸張時応力は少なくとも8N/5cmは保持しないと加工性に問題がでる場合がある。すなわち、長繊維不織布層の繊維配列を適正な範囲とする必要があり、本発明での適正な繊維配列は、MD方向を垂線とした場合、垂線から5°〜60°に配列させるのが好ましく、10°〜30°に配列させるのがより好ましい。なお、繊維配列の測定方法は、任意の点5箇所で、繊維100本の配列角度を測定して、その角度の全平均値を繊維配列とした。MD方向に全ての繊維が配列した場合0°、CD方向に全ての繊維が配列した場合90°となる。垂線から60°を超える配列では、積層して発泡成形品補強用不織布としたときの5%伸張時応力の縦横比は1.66以上とならない。垂線から5°未満の配列では、5%伸張時応力の縦横比は1.66以上にはなるが、横方向の繊維交絡が不充分となり、横方向の5%伸張時応力が極端に低くなるため、不織布製造工程での加工性が悪くなる。また、縦方向の5%伸張時応力が極端に高くなりすぎる場合があり、発泡成形品補強用不織布とした時には、変形追随性が悪くなり仕上がり形状が劣り好ましくない場合が発生する。
【0036】
好ましい繊維配列の長繊維不織布層は、特殊な製造方法で得ることができる。
長繊維不織布層の製造過程において、牽引流体及び同伴流(以下、併せて「随伴流」という)と共に流下する伸張固化された長繊維を、引取りネットのMD方向(進行方向)を垂線としたとき、垂線から10°〜30°に配列させるために、引取りネット表面においてCD(ネット幅)方向への随伴流、及び引取りネットを突き抜ける方向(以下、「垂直方向」という)への随伴流を抑制して、MD方向へ随伴流をやや多く流れるようにする。その結果、繊維はMD方向に配列されるようにして製造される。随伴流の抑制方法としては、CD方向は幅規制、垂直方向は随伴流の吸引風量(サクション)を抑えるという方法を併用する。これにより、繊維配列の制御が可能となった。例えば、幅規制としてコンベア端部に5cmの随伴流規制版を設け、サクションの吸引風量を2/3に低減させると、繊維配列がMD方向に20〜28°の長繊維ウエッブが得られた。この長繊維ウエツブのエンボス加工後の力学特性は、メルトインデックス40のポリプロピレンを用い、繊度が2dtex、目付が40g/mの長繊維不織布を形成した場合、5%伸張時応力が縦方向40〜60N/5cm、横方向10〜15N/5cm、縦横比3.0〜6.0の長繊維不織布を得ることができる。
【0037】
本発明の発泡成形品補強用不織布の5%伸張時応力は目付に依存する。目付が大きくなるほど5%伸長時応力は大きくなるが、本発明では、目付は50〜200g/mが好ましく、80〜120g/mがより好ましい。目付が50g/m未満では、力学特性が低くなり補強材機能が不充分になる場合がある。又、発泡剤の被覆機能も低下して滲み出しを発生する場合がある。目付が200g/mを越えると、車両の軽量化を阻害する問題がある。
【0038】
本発明の発泡成形品補強用不織布の横方向の5%伸張時応力は15N/5cm以下であり、好ましくは4〜14N/5cmであり、より好ましくは8〜12N/5cmである。15N/5cmを越えると、金型追随性がやや悪くなり、仕上がり形状が悪くなる場合がある。4N/5cm未満となると、加工時に横方向に張力が掛かると伸びて変形したり、成形時の金型追随性が縦横方向で斑を生じ、成型形状が悪くなったり、破れを生じたりする場合がある。
【0039】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、縦方向の5%伸張時応力と横方向の5%伸張時応力の比(縦方向の5%伸張時応力÷横方向の5%伸張時応力)は、1.66以上であり、好ましくは2〜14、より好ましくは4〜7である。縦方向の5%伸張時応力と横方向の5%伸張時応力の比が1.66未満では、繊維配列がランダム構造となり、縦方向の5%伸張時応力が低くなり、加工伸張による伸びを生じる等の、加工工程での寸法安定性が劣る場合がある。縦方向の5%伸張時応力と横方向の5%伸張時応力の比が14を越えると、繊維配列が直列化し過ぎて、横方向の5%伸張時応力が低くなり、低応力で横伸びし易くなるため、金型追随性の斑が発生して仕上がり形状が悪くなる場合がある。また、横方向の伸び変形による破れを生じるなど取扱性が悪くなる場合もある。
【0040】
本発明の発泡成形品補強用不織布の縦方向及び横方向の伸度は特には限定されないが、好ましくは30〜200%であり、より好ましくは40〜150%、最も好ましくは50〜130%である。5%伸張時応力との兼ね合いはあるが、縦横方向共に伸度が30%未満では、深絞り金型などの部分的に屈曲伸張が必要な金型成型での変形追随性が不充分になり、仕上がり形状の不良や、破れを生じる場合がある。5%伸張時応力が低い場合、伸度が200%を越えると変形しやすく、セッティング時の煩雑化や深絞り成型では、部分的な伸び過ぎによる皺や弛みを生じる場合がある。
【0041】
本発明の発泡成形品補強用不織布の通気度は、特には限定されないが、好ましくは20〜500cc/cm/秒であり、より好ましくは50〜350cc/cm/秒であり、最も好ましくは80〜200cc/cm/秒である。通気度が20cc/cm/秒未満では、発泡成形時の膨張空気抜けが不均一となり、欠肉、樹脂抜けの発生を生じる場合がある。500cc/cm/秒を越えると発泡剤の漏れによる滲み出しを生じる場合がある。
【0042】
本発明の発泡成形品補強用不織布の見掛密度は特には限定されないが、好ましくは0.05〜0.15g/cmであり、より好ましくは0.07〜0.12g/cmである。
本発明の発泡成形品補強用不織布はこれまで説明したように積層構造を有している。基材層の見掛密度に対して被覆層の見掛密度は低くなっており、発泡成形品補強用不織布の見掛密度は嵩高層に支配される。見掛密度が0.05g/cm未満では、被覆層が嵩高過ぎて、耐摩耗性が悪くなる場合があり好ましくない。見掛密度が0.15g/cmを越えると被覆層の嵩高さが無くなり、制音効果が悪くなる場合があり好ましくない。
【0043】
本発明の発泡成形品補強用不織布の基材層となる長繊維不織布層の見掛密度は、特には限定されないが、素材の比重により異なるが、ポリプロピレンを用いた場合は0.08〜0.25g/cmが好ましく、0.10〜0.20g/cmがより好ましい。
【0044】
本発明の発泡成形品補強用不織布の基材層である長繊維不織布層の目付は、発泡剤の遮蔽機能を満たし、突出繊維構造を把持できれば、特には限定されないが、好ましくは20〜100g/m、より好ましくは30〜80g/m、最も好ましくは35〜60g/mである。20g/m未満では発泡剤の遮蔽機能を満たせなくなる場合がある。100g/mを越えると、成型時に金型追随性が悪くなる場合がある。
【0045】
本発明の発泡成形品補強用不織布の基材層である長繊維不織布層の素材は、特には限定されないが、高ガラス転移点温度のポリエチレンナフタレートやポリカーボネートでは、成型温度が低い場合、発泡成型時の金型追随性が劣る場合がある。発泡剤にポリウレタンを用いた低温での成型加工では、濡れ性がやや不良で漏れ難く遮断機能が高い、易金型追随性が良好なポリオレフィン素材が好ましい。汎用オレフィン類の中でもポリエチレンと比較して低温での耐衝撃性はやや劣るが、耐熱性、強度、剛性が高く、低温成型でも金型に追随しやすいポリプロピレンがより好ましい。
【0046】
本発明の発泡成形品補強用不織布の基材層である長繊維不織布層を構成する繊維の繊度は、特には限定されないが、遮断機能と補強機能が発現できる1.0〜6dtexが好ましく、1.5〜4dtexがより好ましい。繊維断面は必要に応じて、異形断面や中空断面、異繊度混繊なども選択できる。
【0047】
本発明の発泡成形品補強用不織布の被覆層である短繊維不織布層の目付は、特には限定されないが、20〜200g/mが好ましく、40〜120g/mがより好ましく、最も好ましくは60〜100g/mである。20g/m未満では被覆機能が不充分となる場合がある。200g/mを超えると成形時の金型追随性が低下して仕上がり不良となる場合や発泡体の軽量化が問題になる。
なお、被覆層は、基材層と積層した時に、充分に突出繊維構造を形成できる範囲においては、開繊ウエッブをニードルパンチして取扱性と形態保持性を付与してから積層したものが、摩擦耐久性が向上するのでより好ましい。
【0048】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、被覆層と基材層の2層構造とするのが好ましいが、被覆層と基材層の間に中間層を積層一体化することもでき、中間層は、特には限定されない。中間層は遮断層として用いることが可能である。
中間層を積層する場合、最上層となる被覆層の目付は、最下層の基材層面に突出繊維構造を形成でき、最上層となる被覆層でバネ受け機能を満たせる目付であれば特には限定されない。発泡成形品補強用不織布の目付を200g/m以下とする場合は、被覆層を50g/m、基材層と中間層を含めて150g/m以下となるよう設定するのが好ましい。
【0049】
本発明の発泡成形品補強用不織布の被覆層となる短繊維不織布層を構成する繊維の素材は、特には限定されないが、バネ材との圧縮磨耗に耐えられる耐磨耗性と耐クリープ特性を有する素材が好ましい。耐磨耗性と耐クリープ特性が良好なポリエステルやポリアミドが好ましく、汎用熱可塑性樹脂で安価なポリエステルが特に好ましい。
本発明でのポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート(PCHT)、ポリトリメチオレンテレフタレート(PTT)などのホモポリエステル及びそれらの共重合ポリエステルなどが例示できる。
本発明でのより好ましいポリエステルとしては、融点が220℃以上のポリエステルで、ガラス転移点温度が80℃以下のポリエステルが好ましく、ガラス転移点温度が70℃以下のポリエステルがより好ましい。好ましいポリエステルとしては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチオレンテレフタレート(PTT)及びそれらの共重合物や混合物などが例示でき、最も好ましいポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びそれらの共重合ポリエステルが挙げられる。
なお、特性を低下させない範囲で、必要に応じて、抗酸化剤、耐光剤、着色剤、抗菌剤、難燃剤、親水化剤などの改質剤も添加してもよい。
【0050】
本発明の発泡成形品補強用不織布の被覆層となる短繊維不織布層を構成する繊維の繊度は、特には限定されないが、好ましくは1〜15dtexであり、より好ましくは1.2〜10dtexであり、最も好ましくは1.4〜6dtexである。1dtex未満では、断面二次モーメントの向上による剛直性が不足して梁機能が不充分になる場合と、耐磨耗性が低下して耐久性が悪くなる場合ある。15dtexを越えると金型追随性が低下する場合がある。
【0051】
本発明の発泡成形品補強用不織布の被覆層となる短繊維不織布層を構成する繊維の繊維長は、特には限定されないが、好ましく30〜150mmであり、より好ましくは38〜120mmである。繊維長が20mm未満では、梁構造形成での梁機能が発揮できなくなる場合があり、250mmを越えると、混綿開繊時のマイグレーションが不充分になる場合がある。
【0052】
本発明の発泡成形品補強用不織布の被覆層となる短繊維不織布層を構成する繊維は、特には限定されない。単一成分の繊維であってもよく、異形断面との混繊や異繊度混繊なども採用できる。剛直性を向上させる場合、中空断面や異形断面を混繊することは好ましい実施形態である。
【0053】
上述の本発明要件を満たした発泡成形用補強材に適した発泡成形品補強用不織布は、所定の形状に切断して発泡成形品用補強材としてクッション用金型に突出繊維構造形成面を発泡剤側となるようにセットして発泡剤を注入発泡し、ウレタン発泡フォームからなる発泡成形体が得られる。発泡成形法としては、コールド発泡法、又はホット発泡法で発泡成形される。成形した発泡成形体は良好な形状に仕上り、発泡剤の滲み出しもなく、バネ受け材としては、擦過、屈曲、屈折音を抑制し、保形耐久性、耐摩耗性にも優れた発泡成形品が得られた。
また、所定形状への切断工程及び金型へのセッティングの操作性は、不織布の変形もなく、きわめて良好であった。
【0054】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、取扱性が特に優れており、加工工程でのコスト負荷を極力抑えたコストダウンに寄与することができる。
【0055】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、クッション用途に限定されるものではなく、発泡成形品の補強材として、車両用の各種内装材や、建築資材、電化製品の表面発泡成形品などの用途にも有用である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
なお、本発明の実施例および比較例で用いた評価方法は下記の方法でおこなった。
【0057】
(1)繊度[dtex]
各層の試料の最上層及び最下層の任意の場所5点を選び、光学顕微鏡を用いて、単繊維径をn=20で測定して、その平均値を平均単繊維径(D)とした。同場所5点の繊維を取り出し、密度勾配管を用いて、繊維の比重をn=5で測定し、その平均値を平均比重(ρ)を求めた。
ついで、平均単繊維径より平均単繊維断面積を求め、その値と平均比重から1万mあたりの繊維重量を求め、それを繊度(dtex)とした。なお、繊維径測定時、中空繊維等繊維径の判別が難しい場合は下記の(7)SEM写真の繊維断面から求めた。
【0058】
(2)目付[g/m
JIS L 1913『単位面積当たりの質量』に準拠して測定した。
【0059】
(3)厚さ[mm]
JIS L1913『厚さ』に準拠し、荷重20gf/cmでの厚みを測定した。
【0060】
(4)見掛密度[g/cm
上記(3)での厚みと(2)で測定した目付から下記式を用いて算出した。
見かけ密度=目付÷(厚さ×1000)
【0061】
(5)不織布の力学特性
JIS L1913 6.3 『引張強さ及び伸び率』に準拠して、標準雰囲気(22℃)にて、任意の場所5点の試料を切り出し、破断までの伸張荷重曲線を各点n=5で測定し、各値の総平均で算出した。
(5−1)5%伸張時応力[N/5cm]
22℃での5%伸張時応力[N/5cm]を求め、5%伸張時応力[N/5cm]の値とする。
(5−2)伸度[%]
22℃雰囲気下の破断伸度[%]を伸度とする。
(5−3)引張強力[N/5cm/g/m
22℃雰囲気下の破断までの最大荷重を引張強力[N/5cm/g/m]とする。
【0062】
(6)通気度(cc/cm/sec)
JIS L1096 8.27.1に準じたフラジール通気度測定機によって行った。
【0063】
(7)不織布の判別
被覆層が短繊維不織布か否かは、構成している繊維を引出して、短繊維形態であることを目視で確認する。基材層が長繊維不織布か否かは、交絡している他の繊維不織布層(突出繊維構造部を含む)を剥離して、長繊維で構成されていることを目視で確認する。
【0064】
(8)長繊維不織布層の部分圧着部の圧着ドット面積及び部分圧着部面積率
最下層の長繊維不織布層を他の繊維不織布層(突出繊維構造部を含む)と剥離して試料とし、任意の20箇所で30mm角に裁断し、SEMにて50倍の写真を撮る。撮影写真をA3サイズに印刷して圧着単位面積を切り抜き、面積(S0)を求める。次いで圧着単位面積内において圧着部のみを切り抜き個々の部分圧着部の圧着ドット面積(Si[mm])を求め、その平均値を部分圧着部の圧着ドット面積とする。圧着部面積積算値(ΣSi=Sp)より下式により部分圧着部面積率(P[%])を算出する。
P=Sp/S0 (n=20)
【0065】
(9)突出繊維構造
不織布のニードルパンチ打ち込み面の反対面に突出した繊維の有無を目視判定で行い、必要に応じ、代表される部分の突出繊維の1cm当りの突出繊維長をスケールでn=20にて測定し(mm以下は4捨五入)、平均値で示す。
【0066】
(10)引出し変形評価
JIS L1913 6.3 『引張強さ及び伸び率』に準拠した幅5cmの不織布試料を用いて、縦方向に対して10N/5cmの伸張応力で伸張回復処理を10回行い、試料を1時間放置した後、縦方向の不織布の伸び変形と目視による形態変化を求めた。
伸び変形5%未満、形態変化なし:○、伸び変形5%以上20%以下、形態変化微小:△、伸び変形20%以上、形態変化あり:×として評価した。
【0067】
(11)発泡評価
クッションパッド金型に所定の形状に切断した不織布を発泡成形品用補強材として、形状に馴染ませるようにセットして、セット状態をセット性として官能評価し、次いで、2液ウレタン樹脂にて65℃のコールド発泡を行い、成型品の評価を目視判定で行った。
(11−1)セット性
金型に馴染み易くセット容易:○、馴染み易いがセットし難い:△、馴染み難くセットし難い:×で官能評価した。
(11−2)滲み出し
成型品の補強材面にウレタンの滲み出しがなし:○、滲み出し微小:△、滲み出し明確にあり:×で目視判定した。
(11−3)皺
成型品の補強材面に皺発生なし:○、微小な皺発生:△、皺が発生:×で目視判定した。
(11−4)浮き
成型品の補強材面に浮きが発生なし:○、微小な浮きあり:△、浮きあり:×で目視と触感で判定した。
(11−5)破れ
成型品の補強材面に破れなし:○、破れ直前:△、破れあり:×で目視判定した。
(11−6)剥離
成型品の補強材面と発泡体との境界剥離のし易さを、成型品の補強材端部を1cm剥離して、手で補強材を発泡体から引裂くときに、境界が剥離しない:○、境界剥離に近い剥離を生じる:△、境界で剥離する:×で官能目視判定した。
(11−7)型添い性
成型品の補強材面が金型形状どうりに成型されている:○、わずかに形状が一致しない:△、形状に一致しない部分がある:×で目視評価した。
【0068】
(12)成型品の性能評価
(12−1)制音性
実車にパッドをセットして、時速60kmでの平地走行試験1時間での振動音、擦れ音を聞き、搭載座席に比べ静か:○、搭載座席と同等の静けさ:△、搭載座席と同等以下で煩い:×で官能評価した。
(12−2)耐磨耗性
成型品の補強材面側を発泡体を含めて厚み5mmにスライスした試料を用いて、JIS L 0849に定義される方法により、摩擦試験機II型(学振型)を用いて、補強材面を摩擦面としてセットし、10分間磨耗させて、損傷の程度を目視判定で級別して評価した。損傷なし:5、微小な損傷:4、損傷少しあり:3級、損傷中程度:2級、損傷大:1級とした。
(12−3)保形性
パッドを55cm角10ミリ鉄板上に置き、テンシロン(ボールドウィン社製UCT25T)で、同じ鉄板をロードセルに接合して接触する高さをHcmとすると、半分の高さまで圧縮回復(50%繰返し圧縮)を100回繰返し、補強材面の損傷状態を目視判定して以下の評価をした。○:損傷、剥離なし、△:剥離小、損傷なし、×:剥離あり、損傷あり。
【0069】
<実施例1>
メルトインデックス40g/10分のポリプロピレン(以下、「PP」と記述する)を用いて、紡糸温度240℃にて丸断面ノズルより単孔吐出量0.9g/分で紡糸し、牽引ジェットにて牽引しつつ開繊して、下方の引取りネット上に大部分の繊維の繊維配列が縦方向を垂線としたとき、垂線から30°以内に配列するように、引取りネットの端部に2cm高さのパンチングメタルからなる随伴流用幅規制板を設け、引取りネット面のサクション吸引風速を320m/分として長繊維ウエッブを積層し、繊度2dtexの長繊維からなる目付が40g/mのウエッブを得た。ついで、連続して、圧着面積率18%の楕円文様エンボスローラーを用いて、エンボス温度130℃、線圧20kN/mにてエンボス加工して、2dtexの連続繊維からなる目付が40g/m、繊維配列が27°、5%伸張時応力が縦方向64N/5cm、横方向11N/5cm、縦横比が5.8、圧着ドット面積が0.05mm、部分圧着部面積率が16%の基材層用スパンボンド不織布を得た。
1.4dtex丸断面で繊維長51mmの機械捲縮を有するポリエステル短繊維を開繊して、クロスレイヤーにて、目付80g/mとなるよう開繊ウエッブを積層後、連続して、ペネ20本/cm、続いてペネ120本/cmにてニードルパンチ加工を行い、ニードルパンチ不織布を得た。次いで、基材層用スパンボンド不織布上へ、目付80g/mのニードルパンチ不織布を積層後、連続して、ペネ120本/cm、ニードル針深度10mmにてウエッブ側からニードルパンチによる交絡処理を行って、積層交絡した発泡成形品補強用不織布を得た。
得られた発泡成形品補強用不織布は、短繊維不織布層と長繊維不織布層が交絡された目付が120g/m、見掛密度が0.09g/cmの不織布で、突出繊維数が116個/cmで大部分が短繊維からなる突出繊維長8mmの突出繊維構造を形成し、5%伸張時応力が、縦方向38N/5cm、横方向10N/5cmで縦/横比が3.8、通気度が110cc/cm/秒、伸度が縦72%、横106%であった。
得られた発泡成形品補強用不織布の評価結果を表1に示す。本発明要件を満たす実施例1は、引出し変形、金型セット性とも良好で、発泡成形での滲み出し、皺、浮き、破れ、剥離も無く、型添い性も良好であった。性能評価でも、制音性、耐磨耗性、保形性とも良好で、発泡成形品補強用としての優れた性能を持つ不織布であった。
【0070】
<実施例2>
積層した不織布のニードルパンチ加工でのペネ数を80本/cmにした以外、実施例1と同様にして得られた発泡成形品補強用不織布は、短繊維不織布層と長繊維不織布層が交絡された目付が120g/m、見掛密度が0.08g/cmの不織布で、突出繊維数が75個/cmで大部分が短繊維からなる突出繊維長8mmの突出繊維構造を形成し、5%伸張時応力が、縦方向42N/5cm、横方向12N/5cm、縦/横比が3.5、通気度が74cc/cm/秒、伸度が縦54%、横89%であった。
得られた発泡成形品補強用不織布の評価結果では、本発明要件を満たす実施例2は、引出し変形、金型セット性とも良好で、発泡成形での滲み出し、皺、浮き、破れ、剥離も無く、型添い性も良好であった。性能評価でも、制音性、耐磨耗性、保形性とも良好で、発泡成形品補強用としての優れた性能を持つ不織布であった。
【0071】
<実施例3>
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(以下PETと記述する)を用い、紡糸温度285℃、単孔吐出量0.6g/分にて溶融紡糸し、エジェクターにて引取りつつ開繊して、ネットコンベア上に大部分の繊維の繊維配列が縦方向を垂線としたとき、垂線から30°以内に配列するように、引取りネットの端部に2cm高さのパンチングメタルからなる随伴流用幅規制板を設け、引取りネット面のサクション吸引風速を360m/分として長繊維ウエッブを積層し、振落し、単糸繊度1.3dtexの長繊維からなる目付40g/mのウエッブを得た。ついで、圧着面積率18%の凸格子柄のエンボスローラーを用いて250℃、線圧40kN/mにてエンボス加工を行い、目付が40g/m、繊維配列が24°、5%伸張時応力が縦方向135N/5cm、横方向21N/5cm、縦横比が6.4、圧着ドット面積が0.34mm、部分圧着部面積比が17%の基材層用ポリエステル長繊維不織布を得た。
ついで、実施例1と同様にして短繊維ウエッブを交絡処理後、長繊維不織布に積層し、交絡処理して得られた発泡成形品補強用不織布は、目付が120g/m、見掛密度が0.09g/cm、突出繊維数が104個/cmで大部分が短繊維からなる突出繊維長8mmの突出繊維構造を形成し、5%伸張時応力が、縦方向44N/5cm、横方向12N/5cm、縦/横比が3.7、通気度が124cc/cm/秒、伸度が縦61%、横89%であった。
得られた発泡成形品補強用不織布の評価結果では、本発明要件を満たす実施例3は、引出し変形、金型セット性とも良好で、発泡成形での滲み出し、皺、浮き、破れ、剥離も無く、型添い性も良好であった。性能評価でも、制音性、耐磨耗性、保形性とも良好で、発泡成形品補強用としての優れた性能を持つ不織布であった。
【0072】
<比較例1>
メルトインデックス40g/10分のPPを用いて、紡糸温度230℃にてU型断面のノズルオリフィスを用いて、単孔吐出量1.2g/分で紡糸し、ノズル直下にて冷却風をU型の開口部側より急冷しつつ開繊して、引取りネットの端部に2cm高さのパンチングメタルからなる随伴流用幅規制板を設け、引取りネット面のサクション吸引風速を320m/分として長繊維を積層して、繊度3dtexのウエッブを得た。引き続き120℃の熱風にて5%制限収縮にて捲縮発現を行い、目付が100g/m、繊度が3dtex、捲縮数が21個/インチを有するウエッブを得た。
ついで、圧着面積率8%の凸型文様エンボスローラーを用いて、エンボス温度120℃、線圧15kN/mにてエンボス加工して、3dtexの連続繊維からなる目付が100g/m2、繊維配列が32°、5%伸張時応力が縦方向42N/5cm、横方向8N/5cm、縦横比が5.2、圧着ドット面積が1.0mm、部分圧着部面積比が8%の立体捲縮を有するスパンボンド不織布を得た。
得られたスパンボンド不織布を発泡成形品補強用不織布として評価した結果を表1に示す。
嵩高で5%伸張時応力の縦横比を高めたが、CD方向の繊維交絡が不充分で横伸びするなどの取扱性に問題があり、単層のため発泡剤の遮断機能も劣るため、発泡成形では、横伸びによる割れからの発泡剤漏れや、発泡剤の滲み出しを生じて、成型品の仕上がり品位が劣るものとなった。性能評価でも、耐磨耗性が特に悪く、制音性、保形性も劣る、発泡成形品補強用としては実用上問題のある不織布となった。
【0073】
<比較例2>
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と記述する)を用い、紡糸温度285℃、単孔吐出量1.0g/分にて溶融紡糸し、エジェクターにて引取りつつ開繊して、サクションの吸引風速を600m/分にて幅規制なしの状態でネットコンベア上に振落し、単糸繊度2.0dtexの長繊維からなる目付が40g/mのウエッブを得た。ついで、圧着面積率18%の凸格子柄のエンボスローラーを用いて230℃、線圧20kN/mにてエンボス加工を行い、圧着ドット面積が0.31mm、5%伸張時応力が縦方向85N/5cm、横方向24N/5cm、縦横比が3.4、部分圧着部面積率が16%の圧着部がやや弱い被覆層用ポリエステル長繊維不織布を得た。
実施例1で得た基材層用PP不織布に被覆層用PET不織布を積層して、PET不織布側からペネ120、ニードルの針深度を10mmでニードルパンチ加工による交絡処理を行って、得られた発泡成形品補強用不織布は、PET長繊維不織布層とPP長繊維不織布層が交絡された目付が80g/m、見掛密度が0.14g/cmの不織布で、突出繊維数が78個/cmで大部分がポリエステル繊維からなる突出繊維長3mmの突出繊維構造を形成し、5%伸張時応力が、縦方向42N/5cm、横方向12N/5cm、縦/横比が3.5、通気度が74cc/cm/秒、伸度が縦54%、横87%であった。
得られた発泡成形品補強用不織布の評価結果を表1に示す。被覆層に長繊維不織布を用いた比較例2は、本発明要件が外れるため、引出し変形、金型セット性とも良好ではあるが、発泡成形での皺、浮き、剥離が発生し、型添い性もやや劣るものであった。性能評価でも、耐磨耗性は良好だが、制音性がやや劣り、保形性が劣る発泡成形品補強用としは問題のある不織布であった。
【0074】
<比較例3>
メルトインデックス40g/10分のPPを用いて、紡糸温度240℃にて丸断面のノズルオリフィスを用いて、単孔吐出量1.2g/分で紡糸し、冷却細化しつつ開繊して、随伴流用幅規制板を設けず、引取りネット面のサクション吸引風速を520m/分として長繊維を積層して、繊度3dtex、目付30g/mの長繊維ウエッブを得た。ついで、圧着面積率18%の楕円文様エンボスローラーを用いて、エンボス温度130℃、線圧15kN/mにてエンボス加工して、3dtexの連続繊維からなる目付が30g/m2、繊維配列が54°、5%伸張時応力が縦方向25N/5cm、横方向12N/5cm、縦横比が2.1、圧着ドット面積が0.05mm、部分圧着部面積率が16%のスパンボンド不織布を得た。
次いで、スパンボンド不織布上に実施例1で用いたPET短繊維を目付30g/mとなるように開繊積層して、連続して、ペネ120本/cm、ニードル針深度10mmにてウエッブ側からニードルパンチによる交絡処理を行って、積層交絡した発泡成形品補強用不織布を得た。
得られた発泡成形品補強用不織布は、短繊維不織布層と長繊維不織布層が交絡された目付が60g/m、見掛密度が0.08g/cmの不織布で、突出繊維数が96個/cmで大部分が短繊維からなる突出繊維長8mmの突出繊維構造を形成し、5%伸張時応力が、縦方向9N/5cm、横方向5N/5cm、縦/横比が1.8、通気度が260cc/cm/秒、伸度が縦81%、横75%であった。
得られた発泡成形品補強用不織布を評価した結果を表1に示す。
5%伸張時応力の縦横比を低くした、本発明要件を外れた比較例3は、縦横とも伸びるなど取扱性に問題があり、発泡成形時には取り扱い時の伸びが変形追随性に斑を生じ、追随斑による割れから発泡剤の滲み出しも発生するなどして成型品の仕上がり品位が劣るものとなった。性能評価でも、発泡剤の滲み出しにより制音性が劣り、発泡成形品補強用としては問題のある不織布となった。
【0075】
<比較例4>
実施例1と同様にして得た目付が20g/m、繊維配列が22°、5%伸張時応力が縦方向16N/5cm、横方向4N/5cm、縦横比が4.0のPP長繊維不織布と、短繊維不織布の積層目付を20g/mとして積層後、ペネ80本/cmにてニードルパンチした以外、実施例1と同様にして作成した目付が40g/m、見掛密度が0.10g/cmの不織布は、突出繊維数が69個/cmで大部分が短繊維からなる突出繊維長6mmの突出繊維構造を形成し、5%伸張時応力が、縦方向8N/5cm、横方向4N/5cm、縦/横比が2.0、通気度が364cc/cm/秒であった。
得られた発泡成形品補強用不織布の評価結果を表1に示す。被覆層及び基材層の目付を下げ過ぎたため、本発明要件を外れた比較例4は、取扱性が劣り、発泡成形では、通気度が高く遮蔽機能が低下したため滲み出しを生じ、変形しやすいため破れも発生した。このため金型への型添い性も悪い成型品となった。性能評価でも、制音性、耐磨耗性、保形性ともにやや劣る、発泡成形品補強用としては問題のある不織布であった。
【0076】
<比較例5>
目付が80g/m、繊維配列が27°、5%伸張時応力が縦方向155N/5cm、横方向28N/5cm、縦横比が5.6としたPP長繊維不織布に、目付を140g/mとした短繊維ウエッブを積層した以外、実施例1と同様にして得た発泡成形品補強用不織布は、目付が220g/m、見掛密度が0.12g/cm、突出繊維数が118個/cmで大部分が短繊維からなる突出繊維長5mmの突出繊維構造を形成し、5%伸張時応力が、縦方向122N/5cm、横方向36N/5cm、縦/横比が3.4、通気度が18cc/cm/秒であった。
得られた発泡成形品補強用不織布の評価結果を表1に示す。目付を高くし過ぎたため、本発明要件を外れた比較例5は、取扱性は良好となるが、発泡成形では、皺や浮きを生じ、型添い性も不良ではみだしによる発泡剤の滲みもあり成型品の仕上がり形状は劣るものとなった。性能評価でも、制音性、耐磨耗性は優れるが、保形性がやや劣る発泡成形品補強用としは問題のある不織布であった。
【0077】
<比較例6>
1.4dtex丸断面で繊維長51mmの機械捲縮を有するポリエステル短繊維とを開繊して、クロスレイヤーにて、目付80g/mに積層したウエッブを、ペネ120、ニードル針深度10mmにてニードルパンチによる交絡処理を行って、被覆層用短繊維不織布を得た。ついで、被覆層の短繊維交絡不織布に、実施例1で得た基材層用PP不織布を積層し、基材層用不織布側からペネ50にてニードルパンチ交絡処理して一体化して発泡成形用補強不織布を作成した。
作成した不織布は目付が120g/m、見掛密度が0.06g/cm、突出繊維数が14個/cmで大部分が短繊維からなる突出繊維長2〜8mmの毛羽状突出繊維で、突出繊維が少ないと判断できる構造となり、5%伸張時応力は、縦26N/5cm、横8N/5cm、縦/横比が3.3、通気度が81cc/cm/秒であった。
得られた発泡成形品補強用不織布の評価結果を表1に示す。基材層表面に突出繊維構造を形成させなかった、本発明要件を外れた比較例6は、取扱性は問題なかったが、発泡成形では、皺や浮きを生じ、型添い性も不良で、部分的に基材層と被覆層との層間剥離も生じ、はみだしによる発泡剤の滲みもあり成型品の仕上がり形状は劣るものとなった。性能評価でも、制音性がやや劣り、耐磨耗性(基材層と被覆層の剥離を生じた)、保形性ともに劣る、発泡成形品補強用としは問題のある不織布であった。
【0078】
<比較例7>
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(以下PETと記述する)を用い、紡糸温度285℃、単孔吐出量1.0g/分にて溶融紡糸し、エジェクターにて引取りつつ開繊して、ネットコンベア上に繊維配列がランダムになるように速度調整して振落し、単糸繊度2.0dtexの長繊維からなる目付が80g/mのウエッブを得た。ついで、圧着面積率28%の凸格子柄のエンボスローラーを用いて250℃、線圧50kN/mにてエンボス加工を行い、圧着ドット面積が0.34mm、部分圧着部面積率が27%、5%伸張時応力が縦方向142N/5cm、横方向84N/5cm、縦横比が1.7の基材層用ポリエステル長繊維不織布を得た以外、実施例1と同様にして得られた発泡成形用補強不織布は、目付が160g/m、見掛密度が0.14g/cm、突出繊維数が115個/cmで大部分が短繊維からなる突出繊維長6mmの突出繊維構造を形成し、5%伸張時応力が、縦方向73N/5cm、横方向52N/5cm、縦/横比が1.4、通気度が43cc/cm/秒、伸度が縦28%、横30%であった。
得られた発泡成形品補強用不織布の評価結果を表1に示す。基材層の力学特性を高めたために、本発明要件を外れた比較例7は、取扱性は良好となるが、発泡成形では、皺や浮きを生じ、型添い性も不良で、部分的には、はみだしによる発泡剤の滲みもあり成型品の仕上がり形状は劣るものとなった。性能評価でも、制音性、耐磨耗性は良好だが、保形性が劣る、発泡成形品補強用としては問題のある不織布となった。
【0079】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、特に、柔軟でありながらも取扱上の耐伸張応力性を持ち、さらに遮蔽機能が高い基材層と、嵩高で制音性に優れる被覆層からなり、突出繊維構造によるアンカー効果で発泡成型部と補強材の一体化が良好で、低伸張時の伸びを抑制して取扱性に優れた発泡成形用補強材用途に最適な不織布である。そのため、発泡成形時の金型への追従性に優れ、発泡剤の滲み出しがなく、高品位な発泡成型体が得られる。そして、発泡成形体とバネ材間の摩擦によって発生する擦過音防止性に優れ、優れた補強効果と耐久性も得られるので、製造コストを低く抑えた高機能な発泡成型品を得るための補強材用途に適した発泡成形品補強用不織布を安価に提供できる。
本発明の発泡成形品補強用不織布は比較的軽量なため、軽量で高品位な発泡成型体を安価に製造でき、その発泡成型体を用いた車両も安価に軽量化でき、車両運用上での省エネルギー化にも寄与できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短繊維不織布層と緻密圧着部を形成した長繊維不織布層が積層され積層不織布であって、短繊維不織布層と長繊維不織布層は部分的に交絡絡合されており、短繊維不織布層を形成する繊維が長繊維不織布層を貫通して突出繊維構造を形成しており、積層不織布の縦方向の5%伸張時応力が10〜50N/5cm、横方向の5%伸張時応力が15N/5cm以下であり、縦方向の5%伸張時応力と横方向の5%伸張時応力の比が1.66以上である発泡成形品補強用不織布。
【請求項2】
縦方向の5%伸張時応力が15〜45N/5cm、横方向の5%伸張時応力が8〜15N/5cmであり、縦方向の5%伸張時応力と横方向の5%伸張時応力の比が2〜10、目付が50〜200g/mである請求項1記載の発泡成形品補強用不織布。
【請求項3】
長繊維不織布層の部分圧着処理は、圧着繊維集合部が独立しており、部分圧着部面積率が8〜25%、圧着ドット面積が0.01〜2.5mmである請求項1または2に記載の発泡成形品補強用不織布。
【請求項4】
短繊維不織布層はポリエステル繊維を主体として構成され、長繊維不織布層はポリオレフィン繊維から構成された請求項1〜3のいずれかに記載の発泡成形品補強用不織布。
【請求項5】
通気度が50〜350cc/cm/秒である請求項1〜4のいずれかに記載の発泡成形品補強用不織布。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の発泡成形品補強用不織布を補強布として用いた発泡成形品。

【公開番号】特開2013−19087(P2013−19087A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159535(P2011−159535)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】