説明

発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物

【課題】リサイクル可能であり、発泡特性に優れ、低硬度であり、耐オイルブリード性、成形加工性、ゴム弾性、圧縮永久歪み、引張強度、伸び等に優れる発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を提供する。
【解決手段】(a)エチレンを主体とする結晶性の重合体ブロックと、炭素数3〜30のα−オレフィンから選ばれるα−オレフィンおよびエチレンを主体とする非晶性の重合体ブロックとを含むオレフィンブロック共重合体100質量部に対し、(b)芳香族ビニル化合物から主として作られる少なくとも2つの重合体ブロックAと、共役ジエン化合物から主として作られる少なくとも1つの重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を10〜80質量部、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤0〜150質量部、(d)ポリプロピレン系樹脂0〜100質量部を含有する発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物に関し、特に、リサイクル可能であるとともに、発泡特性に優れることから成形体の外観が良好であり、低硬度であり、耐オイルブリード性を有し、さらに成形加工性(特に押出成形性)、ゴム弾性、圧縮永久歪み、引張強度や伸び等機械物性に優れる発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物に関する。
また本発明は、該発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に関する。
また本発明は、該発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる発泡成形体に関する。
さらに本発明は、該発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる工程を有する発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゴム弾性を有する軟質材料であって、加硫工程を必要とせず、熱可塑性樹脂と同様な成形加工性及びリサイクルが可能な熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPO)やポリスチレン系熱可塑性エラストマーの熱可塑性エラストマーが、自動車部品、家電部品、医療用部品、電線被覆、履物、雑貨等の分野で多用されている。
【0003】
最近、自動車などの内装材、情報機器、家電製品などの部品、振動・騒音対策用緩衝材に発泡成形品が広く要求されるようになり、この目的に合致する熱可塑性エラストマー発泡成形品が注目されている。このような用途に適した熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーを特に挙げることができる。しかし、これらポリスチレン系エラストマーは成形加工性に難があり、この課題を解決するために成形加工改良剤を添加する必要がある。しかし、成形加工改良剤は通常柔軟性を低下させるので、さらにゴム用軟化剤(可塑剤)を添加しなければならない。このような技術は、例えば特許文献1(特開平2−120334号公報)に開示されている。かかる発明による発泡成形品は、それ以前に知られている技術に比較して、柔軟性や風合いに優れ、表面のべとつき感も改善されてはいるが、長期間使用した場合に軟化剤のブリードアウトが生じ、使用できる用途は限定される。また、発泡倍率が低いために、柔軟性や外観も物足りない発泡成形品であった。従って、近年さらに柔軟性や耐久性が求められる発泡成形品の用途には、これらの技術では対応することができず、更に改良された技術が求められていた。
【0004】
また、特許文献2には、特定のメルトインデックスである結晶性プロピレン系樹脂と特定のメルトインデックスであるスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体とからなる混合物を、揮発性有機発泡剤の存在下で溶融押出して発泡させることを特徴とする結晶性プロピレン系樹脂含有発泡体の製造方法が開示されている。この組成物では、実際は低発泡倍率の成形体しか得られず、かつ、表面の平滑性にも劣るという問題点があった。このことから、このような製法には素材として一般的に加硫ゴム(EPDM)が用いられている。
【0005】
しかし、上記加硫ゴムの押出発泡成形においては、押出成形後に加硫処理が必須であるために生産効率が低く、また、熱可塑性でないためにリサイクル性にも劣ることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−120334号公報
【特許文献2】特開平2−41334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の目的は、リサイクル可能であるとともに、発泡特性に優れることから成形体の外観が良好であり、低硬度であり、耐オイルブリード性を有し、さらに成形加工性(特に押出成形性)、ゴム弾性、圧縮永久歪み、引張強度や伸び等機械物性に優れる発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物およびその製造方法を提供することにある。
また本発明の別の目的は、該発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を発泡成形してなる、リサイクル可能であるとともに、発泡特性に優れることから成形体の外観が良好であり、低硬度であり、耐オイルブリード性を有し、さらに成形加工性(特に押出成形性)、ゴム弾性、圧縮永久歪み、引張強度や伸び等機械物性に優れる発泡成形体を提供することにある。
さらに本発明の別の目的は、該発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる工程を有する発泡成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、特定のオレフィンブロック共重合体に、芳香族ビニル化合物から主として作られる少なくとも2つの重合体ブロックAと、共役ジエン化合物から主として作られる少なくとも1つの重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を特定量で配合した熱可塑性エラストマー組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の通りである。
【0009】
1.(a)エチレンを主体とする結晶性の重合体ブロック(ハードセグメント)と、炭素数3〜30のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンおよびエチレンを主体とする非晶性の重合体ブロック(ソフトセグメント)とを含むオレフィンブロック共重合体100質量部に対し、
(b)芳香族ビニル化合物から主として作られる少なくとも2つの重合体ブロックAと、共役ジエン化合物から主として作られる少なくとも1つの重合体ブロックBとからなるブロック共重合体、および/または、これを水素添加して得られるブロック共重合体10〜80質量部、
(c)非芳香族系ゴム用軟化剤0〜150質量部、および
(d)ポリプロピレン系樹脂0〜100質量部
を含有することを特徴とする発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
2.前記α−オレフィンの炭素数が、4〜20であることを特徴とする前記1に記載の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
3.前記α−オレフィンが、オクテン−1であることを特徴とする前記1または2に記載の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
4.さらに(e)発泡剤を含有することを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
5.前記(e)発泡剤の配合量が、前記(a)+(b)+(c)+(d)の合計100質量部に対し0.5〜10質量部であることを特徴とする前記4に記載の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
6.前記(e)発泡剤が、有機系化学発泡剤、無機系化学発泡剤、熱膨張性マイクロカプセルおよび水から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記4または5に記載の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
7.前記(d)ポリプロピレン系樹脂の配合量が前記(a)オレフィンブロック共重合体100質量部に対し10〜100質量部であることを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
8.前記(c)非芳香族系ゴム用軟化剤の配合量が、前記(a)オレフィンブロック共重合体100質量部に対し5〜150質量部であることを特徴とする前記1〜7のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
9.(a)エチレンを主体とする結晶性の重合体ブロック(ハードセグメント)と、炭素数3〜30のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンおよびエチレンを主体とする非晶性の重合体ブロック(ソフトセグメント)とを含むオレフィンブロック共重合体100質量部に対し、
(b)芳香族ビニル化合物から主として作られる少なくとも2つの重合体ブロックAと、共役ジエン化合物から主として作られる少なくとも1つの重合体ブロックBとからなるブロック共重合体、および/または、これを水素添加して得られるブロック共重合体10〜80質量部、
(c)非芳香族系ゴム用軟化剤0〜150質量部、
(d)ポリプロピレン系樹脂0〜100質量部、および
(e)発泡剤を前記(a)+(b)+(c)+(d)の合計100質量部に対し0.5〜10質量部
を溶融混練する工程を有する発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
10.(a)エチレンを主体とする結晶性の重合体ブロック(ハードセグメント)と、炭素数3〜30のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンおよびエチレンを主体とする非晶性の重合体ブロック(ソフトセグメント)とを含むオレフィンブロック共重合体100質量部に対し、
(b)芳香族ビニル化合物から主として作られる少なくとも2つの重合体ブロックAと、共役ジエン化合物から主として作られる少なくとも1つの重合体ブロックBとからなるブロック共重合体、および/または、これを水素添加して得られるブロック共重合体10〜80質量部、
(c)非芳香族系ゴム用軟化剤0〜150質量部、
(d)ポリプロピレン系樹脂0〜100質量部、および
(e)発泡剤を前記(a)+(b)+(c)+(d)の合計100質量部に対し0.5〜10質量部
を含有する発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を、所望の形状に成形してなることを特徴とする発泡成形体。
11.前記α−オレフィンの炭素数が、4〜20であることを特徴とする前記10に記載の発泡成形体。
12.前記α−オレフィンが、オクテン−1であることを特徴とする前記10または11に記載の発泡成形体。
13.前記(e)発泡剤が、有機系化学発泡剤、無機系化学発泡剤、熱膨張性マイクロカプセルおよび水から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記10〜12のいずれかに記載の発泡成形体。
14.前記(d)ポリプロピレン系樹脂の配合量が、前記(a)オレフィンブロック共重合体100質量部に対し、10〜100質量部であることを特徴とする前記10〜13いずれか1項に記載の発泡成形体。
15.前記(c)非芳香族系ゴム用軟化剤の配合量が、前記(a)オレフィンブロック共重合体100質量部に対し5〜150質量部であることを特徴とする前記10〜14のいずれかに記載の発泡成形体。
16.(a)エチレンを主体とする結晶性の重合体ブロック(ハードセグメント)と、炭素数3〜30のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンおよびエチレンを主体とする非晶性の重合体ブロック(ソフトセグメント)とを含むオレフィンブロック共重合体100質量部に対し、
(b)芳香族ビニル化合物から主として作られる少なくとも2つの重合体ブロックAと、共役ジエン化合物から主として作られる少なくとも1つの重合体ブロックBとからなるブロック共重合体、および/または、これを水素添加して得られるブロック共重合体10〜80質量部、
(c)非芳香族系ゴム用軟化剤0〜150質量部、
(d)ポリプロピレン系樹脂0〜100質量部、および
(e)発泡剤を前記(a)+(b)+(c)+(d)の合計100質量部に対し0.5〜10質量部
を含有する発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を、所望の形状に成形する工程を有することを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定のオレフィンブロック共重合体に、芳香族ビニル化合物から主として作られる少なくとも2つの重合体ブロックAと、共役ジエン化合物から主として作られる少なくとも1つの重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を特定量で配合したので、リサイクル可能であるとともに、泡の保持力や発泡倍率等の発泡特性に優れることから成形体の外観が良好であり、低硬度であり、耐オイルブリード性を有し、さらに成形加工性(特に押出成形性)、ゴム弾性、圧縮永久歪み、引張強度や伸び等機械物性に優れる発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物およびその製造方法、ならびに、該発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を発泡成形してなる発泡成形体およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物の各成分について具体的に説明する。
【0012】
成分(a)
本発明で使用される成分(a)であるオレフィンブロック共重合体は、エチレンを主体とする結晶性の重合体ブロック(ハードセグメント)と、炭素数3〜30のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンおよびエチレンを含み、かつ好ましくは後者のエチレンの割合がハードセグメントより少ない非晶性の重合体ブロック(ソフトセグメント)とを含むオレフィンブロック共重合体であり、各ブロックが交互に2以上、好ましくは3以上繋がったマルチブロック構造であることが望ましい。また直鎖状構造、ラジアル構造があるが特に直鎖状構造が好ましい。成分(a)は、当業界で公知のポリマーであり、例えば特表2007−529617号公報に開示されている。また、ブタジエン系共重合体を80%以上水素添加して得られるブロック共重合体は除外される。
【0013】
従来、メタロセン系触媒で合成されたエチレンとα−オレフィン共重合体は、エチレンとα−オレフィンがランダムに共重合したランダム共重合体であった。それに対して本発明の成分(a)は、上記のようにブロック共重合体という点で異なる。
また、ブタジエンから成るブロック共重合体を80%以上水素添加して得られるブロック共重合体、例えばJSR社製ダイナロンCEBC、すなわちC部分は1,4−ポリブタジエンブロックの水素添加物であるポリエチレンブロック(ハードセグメント)であり、EB部分は1,4−ブタジエンと1,2−ブタジエンのランダム構造からなる化合物を水素添加したエチレンとブチレンのランダム構造のブロック(ソフトセグメント)が挙げられるがこれは、圧縮永久歪に劣るため好ましくない。
【0014】
また、成分(a)は市販されているものも利用することができ、例えばダウ・ケミカル社から商品名INFUSE D9000、D9007、D9100、D9107、D9500、D9507、D9530、D9817、D9807等として市販されている。
【0015】
本発明における成分(a)は、前記特表2007−529617号公報に開示された方法にしたがって合成することもできる。例えば、(A)第1のオレフィン重合触媒と、(B)同等の重合条件下で触媒(A)によって調製されるポリマーとは化学的性質または物理的性質が異なるポリマーを調製可能な第2のオレフィン重合触媒と、(C)鎖シャトリング剤と、を組み合わせて得られる混合物または反応生成物を含む組成物を準備し、上記エチレンとα−オレフィンとを、付加重合条件下で、該組成物と接触させる工程を経て製造することができる。
重合は、好ましくは連続溶液重合法が適用される。連続溶液重合法は、触媒成分、鎖シャトリング剤、モノマー類、ならびに場合により溶媒、補助剤、捕捉剤および重合助剤が反応ゾーンに連続的に供給され、ポリマー生成物はそこから連続的に取り出される。
また、ブロックの長さは、前記触媒の比率および種類、鎖シャトリング剤の比率および種類、重合温度等を制御することによって変化させることができる。
なお、ブロック共重合体の合成方法において、その他の詳細な条件は、前記特表2007−529617号公報に開示されているので、適宜当該開示内容を採用することができる。
【0016】
本発明における成分(a)のソフトセグメントを構成するα−オレフィンとしては、炭素数3〜30、好ましくは炭素数4〜20、さらに好ましくは炭素数4〜8の直鎖または分岐のα−オレフィンであり、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。中でも1−オクテンを主体とする場合が相容性、発泡特性、低硬度、耐オイルブリード性、さらに成形加工性(特に押出成形性)、ゴム弾性、圧縮永久歪み、引張強度や伸び等の機械物性の点で好ましい。
【0017】
本発明における成分(a)の最適な構造としては、発泡特性、低硬度、耐オイルブリード性、さらに成形加工性(特に押出成形性)、ゴム弾性、圧縮永久歪み、引張強度や伸び等の機械物性の観点から、ハードセグメントがエチレンを主体とし1−オクテンを含む結晶性ブロックであり、ソフトセグメントがハードセグメントより1−オクテン含有比率が高い、1−オクテンとエチレンを主体とした非晶性ブロックであって、各ブロックが交互に2以上、好ましくは3以上繋がったマルチブロック構造である。
【0018】
本発明における成分(a)において、エチレン含有量は、発泡特性、低硬度、耐オイルブリード性、さらに成形加工性(特に押出成形性)、ゴム弾性、圧縮永久歪み、引張強度や伸び等の機械物性の観点から、好ましくは25〜97%、より好ましくは40〜96%、さらにより好ましくは55〜95%である。
【0019】
本発明における成分(a)において、メルトインデックス(ASTM D1238、190℃、2.16kg)は、発泡特性、低硬度、耐オイルブリード性、さらに成形加工性(特に押出成形性)、ゴム弾性、圧縮永久歪み、引張強度や伸び等の機械物性の観点から、好ましくは0.1〜100g/10分であり、より好ましくは0.3〜30g/10分である。
また、本発明における成分(a)において、密度(ASTM D792)は、発泡特性、低硬度、耐オイルブリード性、さらに成形加工性(特に押出成形性)、ゴム弾性、圧縮永久歪み、引張強度や伸び等の機械物性の観点から、好ましくは0.860〜0.930g/cmであり、より好ましくは0.865〜0.890g/cmである。
また、本発明における成分(a)において、硬度(ASTM D2240、ショアA)は、好ましくは50〜98であり、より好ましくは60〜90である。
また、本発明における成分(a)において、測定温度100℃での圧縮永久歪み(JIS K 6262)が65以下であることがシール性の点で好ましい。
また、本発明における成分(a)において、DSCによる融点は110〜125℃、より好ましくは115〜123℃であることが発泡特性、低硬度、耐オイルブリード性、さらに成形加工性(特に押出成形性)、ゴム弾性、圧縮永久歪み、引張強度や伸び等の機械物性の点で好ましい。
ここで、DSCによる融点は、示差走査熱量計(DSC)によって得られるピークトップ融点であり、具体的には、DSCを用い、サンプル量10mgを採り、190℃で5分間保持した後、−10℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、−10℃で5分間保持した後、10℃/分の昇温速度で200℃まで測定して求める値である。
【0020】
成分(b)
本発明における成分(b)であるブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物から主として作られる少なくとも2つの重合体ブロックAと、共役ジエン化合物から主として作られる少なくとも1つの重合体ブロックBとからなるブロック共重合体、および/またはこれを水素添加して得られるものである。例えば、A‐B‐A、B‐A‐B‐A、A‐B‐A‐B‐Aなどの構造を有する芳香族ビニル化合物‐共役ジエン化合物ブロック共重合体あるいは、これを水素添加して得られるものである。このブロック共重合体は全体として、芳香族ビニル化合物を好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは20〜50重量%含む。芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAは、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上の芳香族ビニル化合物、および任意的成分たとえば共役ジエン化合物から作られたホモ重合体または共重合体ブロックである。共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上の共役ジエン化合物、および任意的成分例えば芳香族ビニル化合物から作られたホモ重合体または共重合体ブロックである。また、これらの芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックA、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBにおいて、分子鎖中の共役ジエン化合物または芳香族ビニル化合物由来の単位の分布がランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加または減少するもの)、一部ブロック状またはこれらの任意の組合せでなっていてもよい。芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAまたは共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBがそれぞれ2個以上ある場合には、各重合体ブロックはそれぞれが同一構造であっても異なる構造であってもよい。
【0021】
ブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α‐メチルスチレン、ビニルトルエン、p‐第3ブチルスチレンなどのうちから1種または2種以上を選択でき、なかでもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどのうちから1種または2種以上が選ばれ、なかでもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。
【0022】
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBにおいて、そのミクロ構造を任意に選ぶことができ、例えばポリブタジエンブロックにおいては、1,2−ミクロ構造が好ましくは20〜50重量%、特に好ましくは25〜45%である。ポリイソプレンブロックにおいてはイソプレンの好ましくは70〜100重量%が1,4‐ミクロ構造を有し、かつイソプレンに由来する脂肪族二重結合の好ましくは少なくとも90%が水素添加されたものが好ましい。
【0023】
ブロック共重合体の数平均分子量は、好ましくは5,000〜1,500,000、より好ましくは、10,000〜550,000、更に好ましくは100,000〜400,000の範囲であり、分子量分布は10以下である。
【0024】
ブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組合せのいずれであってもよい。
【0025】
これらのブロック共重合体の製造方法としては数多くの方法が提案されているが、代表的な方法としては、例えば特公昭40−23798号公報に記載された方法により、リチウム触媒またはチーグラー型触媒を用い、不活性媒体中でブロック重合させて得ることができる。水素添加する方法も公知である。
具体的な例としては、水添物として、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体の部分水添物:SBBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体の部分水添物、スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体の部分水添物等、また、非水添物として、、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)等を挙げることができる。
【0026】
成分(c)
また本発明では、成分(c)として非芳香族系ゴム用軟化剤を配合することができる。成分(c)は、発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性および成形加工性の向上に効果がある。
成分(c)としては、非芳香族系の鉱物油または液状若しくは低分子量の合成軟化剤が挙げられる。一般にゴム用鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖が組合った混合物であって、一般に、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系、ナフテン環炭素数が30〜40%を占めるものをナフテン系、芳香族炭素数が30%以上を占めるものを芳香族系と呼び区別されている。本発明の成分(c)として用いられるゴム用鉱物油軟化剤は、上記のパラフィン系およびナフテン系が好ましい。芳香族系の軟化剤は、成分(c)との関係で分散性が悪く好ましくない。成分(c)として、パラフィン系の鉱物油軟化剤が特に好ましく、パラフィン系のなかでも芳香族環成分の少ないものが特に適している。
【0027】
該非芳香族系ゴム用軟化剤は、37.8℃における動的粘度が好ましくは20〜500cst、流動点が好ましくは−10〜−15℃、引火点(COC)が好ましくは170〜300℃を示す。
また、成分(c)は市販されているものを利用することができ、例えば出光興産社製、商品名ダイアナプロセスオイルPW‐90、PW−380等を挙げることができる。
【0028】
成分(d)
本発明においては、成分(d)として、ポリプロピレン系樹脂を配合することが好ましい。成分(d)を配合することにより、引張強さおよび発泡成形加工性がさらに向上する。
【0029】
(d)ポリプロピレン系樹脂
本発明で必要に応じて使用される(d)ポリプロピレン系樹脂は、結晶性ポリプロピレンが好ましく、例えば、結晶性のプロピレンの単独重合体または、プロピレンを主体とする結晶性の共重合体が挙げられる。共重合体としてはブロック共重合体、ランダム共重合体およびブロック・ランダム共重合体が例示される。当該成分としては、例えば、アイソタクチックポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン−1三元共重合体等の結晶性プロピレン系重合体が挙げられる。重合触媒は公知のチーグラー・ナッタ系であってもメタロセン系であってもよい。
【0030】
本発明における成分(d)において、DSCによる融点は、135℃〜165℃が好ましく、より好ましくは155℃〜165℃であり、さらに好ましくは160℃〜165℃である。この範囲であることにより冷却固化速度が早まり、成形加工性が特に良好となる。また、ガス保持力も向上するため、軽量な発泡成形体に寄与する。
また、本発明における成分(d)において、メルトインデックス(ASTM D1238、230℃、2.16kg)は0.1〜1000g/10分が好ましく、物性と成形加工性のバランスの点より0.3〜100g/10分がより好ましい。
【0031】
また、成分(d)は市販されているものも利用することができ、例えばサンアロマー社製、商品名PB222A、PB270A、日本ポリプロ社製、商品名EC9、プライムポリマー社製、商品名E−150GK、等が挙げられる。
【0032】
成分(e)
本発明の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を成形加工する際には、(e)発泡剤が使用される。
成分(e)としては、有機系化学発泡剤、無機系化学発泡剤、熱膨張性マイクロカプセルおよび水から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
有機系化学発泡剤としては、例えば、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;ジエチルアゾカルボキシレート、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、アゾジカルボン酸バリウム等のアゾ化合物;ヒドラジン、トリヒドラジントリアジン等のヒドラジン化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;テレフタルアジド、カルシウムアジド、4,4’−ジフェニルスルホニルアジド、p−トルエンスルホニルアジド等のアジド化合物;p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルカルバジド);シュウ酸誘導体等が挙げられる。これらの発泡剤は、1種単独または複数の組合せを用いることができる。
また、無機系化学発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等が挙げられる。これらの発泡剤は、1種単独または複数の組合せを用いることができる。
さらに発泡助剤を併用することによって、発泡効果をより高めることができる。発泡助剤としては、酸化亜鉛、硫酸鉛、尿素、ステアリン酸亜鉛等が用いられる。また、発泡剤がジニトロソペンタメチレンテトラミンの場合には、発泡助剤としては、サルチル酸、フタル酸、ホウ酸、尿素樹脂等が用いられる。
上記熱膨張性マイクロカプセルは、熱膨張によって体積膨張を生じ、比重を低下させる効果を発揮する発泡剤である。すなわち、マイクロカプセル内に熱膨張性の物質を封じ込め、加熱により該熱膨張性物質を膨張させて体積を膨張させる発泡剤であり、均一な微細セルが得られる。
本発明で用いる熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張温度は、120〜300℃が好ましい。また平均粒径としては、1〜50μmが好ましい。膨張倍率としては10〜100倍が好ましい。このような熱膨張性マイクロカプセルとしては、塩化ビニリデン・アクリロニトリルコポリマーを外殻とし、低沸点炭化水素(例えば、イソブタン)を内包したエクスパンセルが、エクスパンセル社から市販されている。また、同様な製品としてマツモトマイクロスフィアー(松本油脂製薬社製)、ファインセルマスター(大日精化工業社製)がある。
これとは別に、物理発泡剤が挙げられ、これは熱操作、圧力操作により被発泡体に封じ込めた発泡剤を膨張させて発泡させる発泡剤であって、例えば、ペンタン、ブタン等の揮発性の炭化水素、ハロゲン化炭化水素、窒素ガス、炭酸ガス、水などが挙げられ、中でも水が好ましい。
上記各種発泡剤は、適宜、混合して用いてもよい。
【0033】
(e)発泡剤を成分(a)、(b)、必要に応じて成分(c)および(d)を含有する組成物に添加する方法としては、(i)成分(a)〜(d)を溶融混練する際に添加してもよいし、(ii)成分(a)〜(d)を溶融混練後、ペレット化して成形機に投入する前にドライブレンドしてもよい。また、発泡剤を上記(i)で添加する場合、発泡剤の発泡は(1)成分(a)〜(d)と共に溶融混練する際でもよいし、(2)成分(a)〜(d)と共に溶融混練する際には発泡温度より低い温度で混練することにより発泡させず、成形時に発泡させてもよい。
【0034】
本発明の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物における各成分の配合割合について説明する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(a)のオレフィンブロック共重合体を100質量部に対し、成分(b)のブロック共重合体を10〜80質量部、成分(c)の非芳香族系ゴム用軟化剤を0〜150質量部および成分(d)のポリプロピレン系樹脂を0〜100質量部配合することを特徴とする。
成分(b)の配合量が10質量部未満では、発泡特性に劣り、成形体の外観が悪化する;成形加工性が悪化する;オイルブリードが発生する;引張強さ、伸び等の機械物性が悪化する;等の不具合が発生する。80質量部を超えると、発泡特性に劣り、成形体の外観が悪化する;成形加工性が悪化する;等の不具合が発生する。
成分(c)の配合量が150質量部を超えると、発泡特性に劣り、成形体の外観が悪化する;成形加工性が悪化する;オイルブリードが発生する;引張強さ等の機械物性が悪化する;等の不具合が発生する。
さらに好ましい配合割合は、成分(a)100質量部に対し、成分(b)が20〜70質量部、成分(c)が5〜140質量部である。
とくに好ましい配合割合は、成分(a)100質量部に対し、成分(b)が30〜60質量部、成分(c)が20〜130質量部である。
【0035】
成分(d)のポリプロピレン系樹脂を配合する場合、その配合量は、成分(a)オレフィンブロック共重合体100質量部に対し、上限は100質量部であるが下限は10質量部が好ましい。成分(d)の配合量が100質量部を超えると、硬度が硬くなり、さらに発泡が抑制されるため好ましくない。
成分(d)のさらに好ましい配合割合は、成分(a)100質量部に対し、20〜40質量部である。
【0036】
成分(e)の発泡剤を配合する場合、その配合量は、前記(a)+(b)+(c)+(d)の合計100質量部に対し0.5〜10質量部が好ましく、2〜6質量部がさらに好ましい。発泡剤の配合量が10質量部を超えると、成形のコントロールが困難になり、かつ製品表面外観が悪化するため好ましくない。
【0037】
また本発明の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、ステアリン酸、シリコーンオイル等の離型剤、ポリエチレンワックス等の滑剤、着色剤、顔料、アルミナ等の無機充填剤、難燃剤(水和金属化合物、赤燐、ポリりん酸アンモニウム、アンチモン、シリコーン)などを配合することができる。
【0038】
本発明の発泡成形用熱可塑性エラストマー用組成物は、成分(a)および(b)並びに必要に応じて成分(c)、成分(d)および成分(e)、さらにその他の成分を配合し、混練装置にて混練して簡単に得ることができる。また成分(a)および(b)並びに必要に応じて成分(c)成分(d)および成分(e)、さらにその他の成分を配合し、好ましくは140〜200℃の条件下で溶融混練することにより製造することができる。
混練装置としては、オートクレーブ、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、多軸押出機等を使用することができる。
【0039】
本発明の発泡成形体は、前記発泡成形用熱可塑性エラストマー用組成物を所望の形状に、押出成形、射出成形等の公知の手段によって得ることができる。中でも押出成形を採用することが、成形加工性の観点から好ましい。
なお、発泡は、組成物調製時に行なってもよいし、成形時に行なってもよい。
【0040】
また本発明の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物の具体的な用途としては、とくに制限されないが、例えば、ソフトな感触の発泡単層、または、一定の強度を得るための硬質材料を基材として持つ発泡複合成形体への適用が挙げられ、具体的には、自動車の内装材(シート表皮、ピラー、ウエザーストリップ等)や外装材(モール、トリム等)、工業部品(パイプ、チューブ、電線被覆材等)、家具(椅子の座部や肘掛け等)、雑貨(靴、スリッパ等)等が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0042】
実施例使用原料
成分(a)
オレフィンブロック共重合体:ダウ・ケミカル社製、商品名INFUSE D9007。エチレンからなるブロック(結晶性のハードセグメント)と、1−オクテンとエチレンとからなるブロック(非晶性のソフトセグメント)で(交互に)構成されたブロック共重合体。メルトインデックス(ASTM D1238、190℃、2.16kg)0.5g/10分、密度(ASTM D792)0.866g/cm3、硬度(ASTM D2240、ショアA)64、融点119℃。
オレフィンブロック共重合体:ダウ・ケミカル社製、商品名INFUSE D9107。エチレンからなるブロック(結晶性のハードセグメント)と、1−オクテンとエチレンとからなるブロック(非晶性のソフトセグメント)で(交互に)構成されたブロック共重合体。メルトインデックス(ASTM D1238、190℃、2.16kg)1g/10分、密度(ASTM D792)0.866g/cm3、硬度(ASTM D2240、ショアA)63、融点121℃。
【0043】
比較成分(a):エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、ダウ・ケミカル社製、商品名ENGAGE 8100。エチレンと1−オクテンとのランダム共重合体。メルトインデックス(ASTM D1238、190℃、2.16kg)1.0g/10分、密度(JIS K 6760)0.870g/cm3、硬度(ASTM D2240、ショアA)75、融点60℃。
【0044】
成分(b)
SEEPS:クラレ社製、商品名セプトン4077(スチレンの含有量:30重量%、数平均分子量:260,000、重量平均分子量:320,000、分子量分布:1.23、水素添加率:90%以上
SEBS:クレイトンポリマー社製、商品名クレイトンG1651、スチレン含有量:33重量%、数平均分子量(Mn):150,000、重量平均分子量(Mw):300,000、分子量分布:2.01、水素添加率:99%以上
【0045】
成分(c)
非芳香族系ゴム軟化剤:出光興産社製、商品名ダイアナプロセスオイルPW‐90、パラフィン系オイル、重量平均分子量:540、芳香族成分の含有量:0.1%以下
【0046】
成分(d)
ポリプロピレン系樹脂:サンアロマー社製、商品名PB222A。ポリプロピレン系ランダム共重合体。メルトインデックス(ASTM D1238、230℃、2.16kg)0.8g/10分、密度(JIS K 6760)0.9g/cm3
【0047】
成分(e)
発泡剤−1:永和化成工業社製、商品名ポリスレンEE205D、炭酸水素ナトリウム。
発泡剤−2:永和化成工業社製、商品名ポリスレンEE206、アゾジカルボンアミド。
発泡剤−3:大日精化工業社製、商品名ファインセルマスターMS405D、熱膨張性マイクロカプセル、平均粒径40μm、膨張開始温度180℃、膨張終了温度225℃。
【0048】
実施例1〜11および比較例1〜6
以下の表1の配合割合(質量部)に従って、発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を調製した。
なお、各成分の混合(ドライブレンド)は、以下の表1の配合割合(質量部)に従って、タンブラーを用いて行った。
次に、ドライブレンドした上記配合物を、L/D=47の二軸押出機を使用し、スクリュー回転数350rpm、加工温度200℃で混練しストランドカットでペレットを作製した。
下記の試験(1)〜(4)については、作製したペレットを熱プレス成形することにより、下記の試験(1)〜(4)に適合する試験片を調製した。
下記の試験(5)については、作製したペレットを下記で説明する条件で発泡押出成形し、下記の試験(5)に適合する試験片を調製した。
【0049】
このようにして調製した各成形体について、以下に示す物性を調べた。
【0050】
(1)硬度
ASTM D2240の規格に準拠し、上記6mm厚プレスシートを用いて測定した。
硬度が74未満である場合を◎、74〜84である場合を○、84を超える場合を△として評価した。
(2)引張強さ
JIS K 6301に準拠し、試験片は2mm厚プレスシートを、ダンベルで3号型に打抜いて使用した。引張速度が500mm/分とした。
(3)引張伸び
JIS K 6301に準拠し、試験片は2mm厚プレスシートを、ダンベルで3号型に打抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。
(4)圧縮永久歪
JIS K 6262の規格に準拠し測定した。測定温度は70℃、22時間で実施し、試験片は、小型試験片厚み 6.3±0.3mmのプレスシートを使用した。
(5)発泡押出成形性
押出成形機として、L/D=40の単軸押出機でダイスは丸棒タイプを用い、スクリュー回転数40rpm、加工温度180℃で押出成形を行った。サンプル成形品は、丸棒の形状を有し、サイズは直径15〜18mmであった。
発泡剤は押出成形機投入直前にドライブレンドし、成形機に投入した。成形機の温度は、使用した各発泡剤の発泡温度以上に設定した。
気泡形成の有無と気泡の大きさにより測定した。
なお、発泡押出成形性−1は、上記発泡剤−1を前記(a)+(b)+(c)+(d)の合計100質量部に対し3質量部添加した組成物について評価したものである。発泡押出成形性−2は、上記発泡剤−2を前記(a)+(b)+(c)+(d)の合計100質量部に対し2質量部添加した組成物について評価したものである。発泡押出成形性−3は、上記発泡剤−3を前記(a)+(b)+(c)+(d)の合計100質量部に対し3質量部添加した組成物について評価したものである。
発泡押出成形性は、大きい気泡が密に形成されている場合を◎、微細な気泡が密に形成されている場合を○、微細な気泡がまばらに形成されている場合を△、気泡の形成が見られないか極めて微細な場合を×として評価した。
(6)発泡製品外観
成形体を目視することにより評価した。
発泡製品外観は、表面性が滑らかでスキン層の形成が見られる場合を◎、表面に凹凸が見られるものの、スキン層の形成が見られる場合を○、表面の凹凸が粗く、スキン層に微細な気泡破れが見られる場合を△、スキン層が完全に破れ、外観が著しく悪い場合を×として評価した。なお、発泡製品外観−1は、上記発泡剤−1を3質量部添加した組成物について評価したものである。発泡製品外観−2は、上記発泡剤−2を2質量部添加した組成物について評価したものである。発泡製品外観−3は、上記発泡剤−3を3質量部添加した組成物について評価したものである。
発泡製品外観は、上記(5)で評価したサンプル成形品を用い、評価を行なった。
(7)耐ブリードアウト性
80℃に保ったギアオーブンに72時間放置した際の表面性とクラフト紙への移行で評価した。
耐ブリードアウト性は、表面にオイルのにじみが無く、クラフト紙への移行が無い場合を○、表面にオイルのにじみが少なく、クラフト紙への移行が僅かである場合を△、表面にオイルが著しくにじみ、クラフト紙への移行が多い場合を×として評価した。
耐ブリードアウト性は、上記(5)で評価したサンプル成形品を用い、評価を行なった。
【0051】
結果を表1に併せて示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1の各実施例結果から、本発明の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体は、特定のオレフィンブロック共重合体に、特定のブロック共重合体を特定量で配合したので、リサイクル可能であるとともに、泡の保持力や発泡倍率等の発泡特性に優れることから成形体の外観が良好であり、低硬度であり、耐オイルブリード性を有し、さらに成形加工性(特に発泡押出成形性)、ゴム弾性、圧縮永久歪み、引張強度や伸び等機械物性に優れる。とくに成分(d)のポリプロピレン系樹脂を配合した系では、成形加工性が特に優れる結果となった。
これに対し、比較例1は、本発明の成分(a)を、比較成分であるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体に変更した例であり、成形加工性に劣る結果となった。
比較例2は、成分(b)の配合量が本発明で規定する下限未満であるので、発泡特性に劣り、成形体の外観が悪化する;成形加工性が悪化する;オイルブリードが発生する;引張強さ、伸び等の機械物性が悪化する;等の不具合が発生した。
比較例3は、成分(b)の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、発泡特性に劣り、成形体の外観が悪化する;成形加工性が悪化する;等の不具合が発生した。
比較例4は、成分(c)の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、発泡特性に劣り、成形体の外観が悪化する;成形加工性が悪化する;オイルブリードが発生する;引張強さ等の機械物性が悪化する;等の不具合が発生した。
比較例5および6は、成分(a)を配合せず、ベース樹脂を成分(b)に変更した例であり、成形体の外観が悪化する;成形加工性が悪化する;引張伸び等の機械物性が悪化する;等の不具合が発生した。
実施例において、発泡剤は上述のように、成分(a)〜(d)を溶融混練しペレット化した後、成形前に発泡剤をドライブレンドして添加したものである。なお、発泡剤を成分(a)〜(d)を溶融混練する際に添加し、その発泡を該溶融混練時に行なった場合、あるいは、発泡剤を成分(a)〜(d)を溶融混練する際に添加し、該溶融混練温度は発泡温度より低い温度に設定して発泡剤を発泡させず、成形時に発泡させた場合についても、上記実施例と同様の良好な結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エチレンを主体とする結晶性の重合体ブロック(ハードセグメント)と、炭素数3〜30のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンおよびエチレンを主体とする非晶性の重合体ブロック(ソフトセグメント)とを含むオレフィンブロック共重合体100質量部に対し、
(b)芳香族ビニル化合物から主として作られる少なくとも2つの重合体ブロックAと、共役ジエン化合物から主として作られる少なくとも1つの重合体ブロックBとからなるブロック共重合体、および/または、これを水素添加して得られるブロック共重合体10〜80質量部、
(c)非芳香族系ゴム用軟化剤0〜150質量部、および
(d)ポリプロピレン系樹脂0〜100質量部
を含有することを特徴とする発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
前記α−オレフィンの炭素数が、4〜20であることを特徴とする請求項1に記載の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記α−オレフィンが、オクテン−1であることを特徴とする請求項1または2に記載の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
さらに(e)発泡剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
前記(e)発泡剤の配合量が、前記(a)+(b)+(c)+(d)の合計100質量部に対し0.5〜10質量部であることを特徴とする請求項4に記載の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
前記(e)発泡剤が、有機系化学発泡剤、無機系化学発泡剤、熱膨張性マイクロカプセルおよび水から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4または5に記載の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
前記(d)ポリプロピレン系樹脂の配合量が前記(a)オレフィンブロック共重合体100質量部に対し10〜100質量部であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項8】
前記(c)非芳香族系ゴム用軟化剤の配合量が、前記(a)オレフィンブロック共重合体100質量部に対し5〜150質量部であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項9】
(a)エチレンを主体とする結晶性の重合体ブロック(ハードセグメント)と、炭素数3〜30のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンおよびエチレンを主体とする非晶性の重合体ブロック(ソフトセグメント)とを含むオレフィンブロック共重合体100質量部に対し、
(b)芳香族ビニル化合物から主として作られる少なくとも2つの重合体ブロックAと、共役ジエン化合物から主として作られる少なくとも1つの重合体ブロックBとからなるブロック共重合体、および/または、これを水素添加して得られるブロック共重合体10〜80質量部、
(c)非芳香族系ゴム用軟化剤0〜150質量部、
(d)ポリプロピレン系樹脂0〜100質量部、および
(e)発泡剤を前記(a)+(b)+(c)+(d)の合計100質量部に対し0.5〜10質量部
を溶融混練する工程を有する発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項10】
(a)エチレンを主体とする結晶性の重合体ブロック(ハードセグメント)と、炭素数3〜30のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンおよびエチレンを主体とする非晶性の重合体ブロック(ソフトセグメント)とを含むオレフィンブロック共重合体100質量部に対し、
(b)芳香族ビニル化合物から主として作られる少なくとも2つの重合体ブロックAと、共役ジエン化合物から主として作られる少なくとも1つの重合体ブロックBとからなるブロック共重合体、および/または、これを水素添加して得られるブロック共重合体10〜80質量部、
(c)非芳香族系ゴム用軟化剤0〜150質量部、
(d)ポリプロピレン系樹脂0〜100質量部、および
(e)発泡剤を前記(a)+(b)+(c)+(d)の合計100質量部に対し0.5〜10質量部
を含有する発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を、所望の形状に成形してなることを特徴とする発泡成形体。
【請求項11】
前記α−オレフィンの炭素数が、4〜20であることを特徴とする請求項10に記載の発泡成形体。
【請求項12】
前記α−オレフィンが、オクテン−1であることを特徴とする請求項10または11に記載の発泡成形体。
【請求項13】
前記(e)発泡剤が、有機系化学発泡剤、無機系化学発泡剤、熱膨張性マイクロカプセルおよび水から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の発泡成形体。
【請求項14】
前記(d)ポリプロピレン系樹脂の配合量が、前記(a)オレフィンブロック共重合体100質量部に対し、10〜100質量部であることを特徴とする請求項10〜13いずれか1項に記載の発泡成形体。
【請求項15】
前記(c)非芳香族系ゴム用軟化剤の配合量が、前記(a)オレフィンブロック共重合体100質量部に対し5〜150質量部であることを特徴とする請求項10〜14のいずれかに記載の発泡成形体。
【請求項16】
(a)エチレンを主体とする結晶性の重合体ブロック(ハードセグメント)と、炭素数3〜30のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンおよびエチレンを主体とする非晶性の重合体ブロック(ソフトセグメント)とを含むオレフィンブロック共重合体100質量部に対し、
(b)芳香族ビニル化合物から主として作られる少なくとも2つの重合体ブロックAと、共役ジエン化合物から主として作られる少なくとも1つの重合体ブロックBとからなるブロック共重合体、および/または、これを水素添加して得られるブロック共重合体10〜80質量部、
(c)非芳香族系ゴム用軟化剤0〜150質量部、
(d)ポリプロピレン系樹脂0〜100質量部、および
(e)発泡剤を前記(a)+(b)+(c)+(d)の合計100質量部に対し0.5〜10質量部
を含有する発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を、所望の形状に成形する工程を有することを特徴とする発泡成形体の製造方法。

【公開番号】特開2013−28654(P2013−28654A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163439(P2011−163439)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】