説明

発泡成形用熱可塑性樹脂組成物、発泡成形品及び積層品

【課題】発泡倍率が2.5倍以上と高く、成形外観性及び耐熱性に優れる発泡成形品の形成に好適な発泡成形用熱可塑性樹脂組成物、発泡成形品及び積層品を提供する。
【解決手段】本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物は、〔A〕メルトマスフローレート(ISO1133に準拠、温度220℃、荷重98N)が、0.1〜15g/10分である熱可塑性樹脂(但し、下記(共)重合体〔B〕を除く。)100質量部に対し、〔B〕重量平均分子量が800,000〜10,000,000である(共)重合体0.1〜8質量部、〔C〕物理発泡剤0.1〜5質量部、〔D〕化学発泡剤0.05〜0.8質量部、及び、〔E〕タルク0.1〜5質量部を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の物性を有する熱可塑性樹脂、(共)重合体、物理発泡剤、化学発泡剤及びタルクを含有する発泡成形用熱可塑性樹脂組成物、この組成物を用いてなる発泡成形品及び積層品に関し、更に詳しくは、発泡倍率が2.2倍以上と高く、成形外観性及び耐熱性に優れる発泡成形品の形成に好適な発泡成形用熱可塑性樹脂組成物、発泡成形品及び積層品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建材用材料等として、樹脂を主成分とする樹脂組成物が用いられるようになっている。製品の軽量化をはかるために、特に、樹脂及び発泡剤を含有する樹脂組成物が広く適用されている。
特許文献1には、(A)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム、アクリル系ゴム、水素添加ゴム及びシリコーンゴムの群から選ばれた少なくとも1種のゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物又は芳香族ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル系単量体からなる単量体成分をグラフト重合してなるゴム強化熱可塑性樹脂50〜99.9質量%、並びに(B)芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル系単量体を共重合して得られ、極限粘度が1.5dl/g以上、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるMw/Mnが3.0を超える共重合体50〜0.1質量%を主成分とする熱可塑性樹脂と、化学発泡剤(アゾジカルボンアミド)とを含有する組成物が開示されている。
また、特許文献2には、全単量体単位の合計を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物よりなる単量体単位75〜95質量%、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位5〜25質量%及び他のビニル系化合物よりなる単量体単位0〜20質量%からなり、且つ、重量平均分子量が100,000〜300,000であるスチレン系樹脂を含む熱可塑性樹脂と、物理発泡剤とを含有する発泡成形用熱可塑性樹脂組成物、並びに、この組成物を用いて得られた発泡成形品が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−92618号
【特許文献2】特開2008−150476号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、発泡成形品を、建材、車内部材等における、特に、40℃〜80℃といった高い温度環境下における用途に適用することが求められている。
上記特許文献1に記載されている熱可塑性樹脂組成物によると、2.2倍を超える高い発泡倍率を有する発泡成形品が得られず、得られる発泡成形品の耐熱性が十分ではなかった。
また、上記特許文献2に記載されている熱可塑性樹脂組成物によると、2.2倍を超える高い発泡倍率を有する発泡成形品が得られるものの、耐熱性が十分ではなかった。
本発明の目的は、発泡倍率が2.2倍以上と高く、成形外観性及び耐熱性に優れる発泡成形品の形成に好適な発泡成形用熱可塑性樹脂組成物、発泡成形品及び積層品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定の物性を有する熱可塑性樹脂、(共)重合体及びタルクと、物理発泡剤及び化学発泡剤を併用した発泡剤とを含有する発泡成形用熱可塑性樹脂組成物により、発泡倍率が2.2倍以上と高く、成形外観性に優れ、40℃〜80℃といった高い温度環境下において使用されたときに、大きな変形を招くことなく耐熱性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下に示される。
1.〔A〕メルトマスフローレートが、0.1〜15g/10分である熱可塑性樹脂(但し、下記(共)重合体〔B〕を除く。)、〔B〕重量平均分子量が800,000〜10,000,000である(共)重合体、〔C〕物理発泡剤、〔D〕化学発泡剤、及び、〔E〕タルクを含有する発泡成形用熱可塑性樹脂組成物であって、上記(共)重合体〔B〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、0.1〜8質量部であり、上記物理発泡剤〔C〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、0.1〜5質量部であり、上記化学発泡剤〔D〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、0.05〜0.8質量部であり、且つ、上記タルク〔E〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、0.1〜5質量部であることを特徴とする発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
2.上記熱可塑性樹脂〔A〕が、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位を有するスチレン系樹脂を含み、このスチレン系樹脂の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量%に対して、50〜100質量%である上記1に記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
3.上記スチレン系樹脂が、芳香族ビニル系化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を用いてなるスチレン系共重合体、又は、ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化スチレン系樹脂を含む上記2に記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
4.上記(共)重合体〔B〕が、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位を有するスチレン系共重合体であり、このスチレン系共重合体の極限粘度(ジメチルホルムアミド中、30℃)が2〜10dl/gである上記1乃至3のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
5.上記物理発泡剤〔C〕が、沸点が−10℃〜55℃である化合物を含む上記1乃至4のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
6.上記タルク〔E〕の平均粒子径が0.5〜50μmである上記1乃至5のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
7.上記物理発泡剤〔C〕及び上記化学発泡剤〔D〕の含有割合が、両者の合計を100質量%としたときに、それぞれ、50〜90質量%及び10〜50質量%である上記1乃至6のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
8.上記1に記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物であって、上記熱可塑性樹脂〔A〕の一部である熱可塑性樹脂(Ax1)、及び、上記物理発泡剤〔C〕を含有し、該物理発泡剤〔C〕の含有割合が、上記熱可塑性樹脂(Ax1)100質量部に対して2.5〜10質量部である、物理発泡剤含有マスターバッチと、上記熱可塑性樹脂〔A〕の一部である熱可塑性樹脂(Ay1)、上記(共)重合体〔B〕、及び、上記タルク〔E〕を含有し、該(共)重合体〔B〕の含有割合が、上記熱可塑性樹脂(Ay1)100質量部に対して2.5〜40質量部であり、該タルク〔E〕の含有割合が、上記熱可塑性樹脂(Ay1)100質量部に対して2.5〜40質量部であり、且つ、上記物理発泡剤〔C〕を含有しない共重合体含有マスターバッチ(超高分子量重合体含有マスターバッチ)と、上記化学発泡剤〔D〕と、上記熱可塑性樹脂〔A〕の一部である熱可塑性樹脂(Az1)と、が混合されてなり、上記熱可塑性樹脂〔A〕が、上記熱可塑性樹脂(Ax1)、上記熱可塑性樹脂(Ay1)及び上記熱可塑性樹脂(Az1)からなることを特徴とする発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
9.上記1乃至8のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られたことを特徴とする発泡成形品。
10.上記1乃至8のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた成形部(V)と、他の材料からなる部材(W)とが積層してなることを特徴とする積層品。
【発明の効果】
【0006】
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物によれば、発泡倍率が2.2倍以上と高く、成形外観性及び耐熱性に優れる発泡成形品の形成及びその安定製造に好適である。物理発泡剤及び化学発泡剤が併用され、また、タルク〔E〕を含有していることから、安定した高倍率発泡を進めることができる。
上記熱可塑性樹脂〔A〕が、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位を有するスチレン系樹脂を含み、このスチレン系樹脂の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量%に対して、50〜100質量%である場合には、発泡倍率が2.2倍以上と高く、成形外観性に優れる発泡成形品の形成に好適である。
上記スチレン系樹脂が、芳香族ビニル系化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を用いてなるスチレン系共重合体、又は、ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化スチレン系樹脂を含む場合には、発泡倍率が2.2倍以上と高く、成形外観性に優れる発泡成形品の形成に好適である。
上記(共)重合体〔B〕が、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位を有するスチレン系共重合体であり、このスチレン系共重合体の極限粘度(ジメチルホルムアミド中、30℃)が2〜10dl/gである場合には、成形外観性を損なうことなく、成形加工性及び耐熱性に優れる発泡成形品の形成に好適である。
上記タルク〔E〕の平均粒子径が0.5〜50μmである場合には、発泡セルの大きさを均一にすることで安定した発泡を進めることができ、発泡倍率が2.2倍以上と高く、成形外観性及び耐熱性に優れる発泡成形品の形成及びその安定製造に好適である。
また、上記物理発泡剤〔C〕及び上記化学発泡剤〔D〕の含有割合が、両者の合計を100質量%としたときに、それぞれ、50〜90質量%及び10〜50質量%である場合には、発泡倍率が2.2倍以上と高く且つ均一なセル径を有し、成形外観性に優れる発泡成形品の安定製造に好適である。
【0007】
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物が、上記熱可塑性樹脂〔A〕の一部である熱可塑性樹脂(Ax1)、及び、上記物理発泡剤〔C〕を含有し、該物理発泡剤〔C〕の含有割合が、上記熱可塑性樹脂(Ax1)100質量部に対して2.5〜10質量部である、物理発泡剤含有マスターバッチと、上記熱可塑性樹脂〔A〕の一部である熱可塑性樹脂(Ay1)、上記(共)重合体〔B〕、及び、上記タルク〔E〕を含有し、該(共)重合体〔B〕の含有割合が、上記熱可塑性樹脂(Ay1)100質量部に対して2.5〜40質量部であり、該タルク〔E〕の含有割合が、上記熱可塑性樹脂(Ay1)100質量部に対して2.5〜40質量部であり、且つ、上記物理発泡剤〔C〕を含有しない共重合体含有マスターバッチと、上記化学発泡剤〔D〕と、上記熱可塑性樹脂〔A〕の一部である熱可塑性樹脂(Az1)と、が混合されてなり、上記熱可塑性樹脂〔A〕が、上記熱可塑性樹脂(Ax1)、上記熱可塑性樹脂(Ay1)及び上記熱可塑性樹脂(Az1)からなる場合には、発泡倍率が2.2倍以上と高く、成形外観性及び耐熱性に優れる発泡成形品の形成及びその安定製造に好適である。
【0008】
本発明の発泡成形品は、発泡倍率が2.2倍以上と高く、且つ、発泡セルが均一であり、成形外観性及び耐熱性に優れる。
本発明の積層品は、成形部(V)における成形外観性及び耐熱性に優れるので、外観性及び形状安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。
【0010】
1.発泡成形用熱可塑性樹脂組成物
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物は、〔A〕メルトマスフローレートが、0.1〜15g/10分である熱可塑性樹脂(但し、下記(共)重合体〔B〕を除く。以下、「成分〔A〕」ともいう。)、〔B〕重量平均分子量が800,000〜10,000,000である(共)重合体(以下、「超高分子量重合体〔B〕」又は「成分〔B〕」ともいう。)、〔C〕物理発泡剤(以下、「成分〔C〕」ともいう。)、〔D〕化学発泡剤(以下、「成分〔D〕」ともいう。)、及び、〔E〕タルク(以下、「成分〔E〕」ともいう。)を含有する発泡成形用熱可塑性樹脂組成物であって、上記(共)重合体〔B〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、0.1〜8質量部であり、上記物理発泡剤〔C〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、0.1〜5質量部であり、上記化学発泡剤〔D〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、0.05〜0.8質量部であり、且つ、上記タルク〔E〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、0.1〜5質量部であることを特徴とする。
尚、本発明において、上記メルトマスフローレートは、ISO1133に準拠し、温度220℃及び荷重98Nの条件で測定された値である。
【0011】
1−1.熱可塑性樹脂〔A〕
この成分〔A〕は、メルトマスフローレートが、0.1〜15g/10分である熱可塑性樹脂であれば、特に限定されず、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、スチレン・マレイン酸共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の芳香族ビニル化合物を用いてなる(共)重合体、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂等の、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位を有するスチレン系樹脂;ポリメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物の1種以上を用いた(共)重合体等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、アイオノマー等のオレフィン系樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンサルファイド;ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニリデン系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂;液晶ポリマー;ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のイミド系樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン系樹脂;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂;ウレタン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;ポリエチレンオキシド;ポリビニルアルコール;ポリビニルエーテル;ポリビニルブチラール;フェノキシ樹脂;感光性樹脂;生分解性プラスチック等において、上記物性を有する樹脂が用いられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、上記メルトマスフローレートが0.1〜15g/10分であることにより、得られる発泡成形品の成形外観性及び耐熱性に優れる。好ましいメルトマスフローレートは、0.1〜12g/10分であり、より好ましくは0.1〜10g/10分、更に好ましくは0.1〜8g/10分である。上記メルトマスフローレートが小さすぎると、発泡成形品の生産安定性が低下し、得られる発泡成形品の成形外観性が十分でない。また、上記メルトマスフローレートが大きすぎると、得られる発泡成形品の耐熱性が十分でない。
【0012】
また、上記成分〔A〕のガラス転移温度(以下、「Tg」という。)は、耐熱性、具体的には、40℃〜80℃といった高温下における形状保持の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは100℃〜160℃である。このTgが低すぎると、40℃〜80℃といった高温下において、発泡成形品が変形する場合がある。上記Tgは、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。
【0013】
本発明に係る上記成分〔A〕としては、上記物性を備える、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂等が好ましい。
【0014】
上記スチレン系樹脂(以下、「樹脂(A1)」という。)は、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位を含む樹脂である。この芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位の含有量は、上記樹脂(A1)を構成する構造単位の全量に対して、好ましくは5〜100質量%、より好ましくは10〜90質量%、更に好ましくは20〜85質量%である。
上記樹脂(A1)としては、芳香族ビニル化合物の1種以上からなる単量体、又は、芳香族ビニル化合物の1種以上と、共重合可能な他の単量体の1種以上とからなる単量体(以下、両方の単量体を総称して、「ビニル系単量体(b1)」という。)を(共)重合して得られたスチレン系(共)重合体(A11)、及び/又は、ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物の1種以上からなる単量体、又は、芳香族ビニル化合物の1種以上と、共重合可能な他の単量体の1種以上とからなる単量体(以下、両方の単量体を総称して、「ビニル系単量体(b2)」という。)を重合して得られたゴム強化スチレン系樹脂(A12)から構成されることが好ましい。尚、このゴム強化スチレン系樹脂(A12)は、通常、上記ビニル系単量体(b2)がゴム質重合体にグラフト重合しているグラフト化ゴム質重合体と、非グラフトである上記ビニル系単量体(b2)の(共)重合体とを含む樹脂である。上記のスチレン系(共)重合体(A11)、及び/又は、ゴム強化スチレン系樹脂(A12)を用いると、成形外観性に優れ、発泡倍率が、例えば2.2倍以上と高い発泡成形品を効率よく製造することができる。
【0015】
上記芳香族ビニル化合物としては、少なくとも1つのビニル結合と、少なくとも1つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されることなく用いることができる。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
【0016】
上記樹脂(A1)としてのスチレン系(共)重合体(A11)が共重合体である場合、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位以外の他の構造単位としては、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物、更には、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アミド基、カルボキシル基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物等から誘導された構造単位が挙げられる。この他の構造単位は、1種単独であるいは2種以上の組合せで含まれたものとすることができる。
【0017】
上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
上記マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、マレイミド系化合物からなる単位を導入する他の方法としては、例えば、無水マレイン酸を共重合し、その後イミド化する方法でもよい。
上記酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
また、上記のヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アミド基、カルボキシル基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシスチレン、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、ビニルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルアミド、アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
上記スチレン系(共)重合体(A11)が共重合体である場合、好ましい共重合体は、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を用いてなるスチレン系共重合体であり、より詳細には、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位と、シアン化ビニル化合物から誘導された構造単位と、必要に応じて含まれる他の構造単位とからなる共重合体である。これらの構造単位の含有割合は、全構造単位の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは50〜97質量%、3〜50質量%及び0〜47質量%、より好ましくは55〜95質量%、5〜45質量%及び0〜40質量%である。上記含有割合であれば、本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物により、耐薬品性に優れ、発泡倍率の高い発泡成形品を得ることができる。また、上記樹脂(A1)が上記スチレン系共重合体である場合には、このスチレン系共重合体に含まれる、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位及びシアン化ビニル化合物から誘導された構造単位の含有割合が、両者の合計を100質量%としたときに、それぞれ、好ましくは75〜95質量%及び5〜25質量%、より好ましくは80〜87質量%及び13〜20質量%であると、発泡倍率の高い発泡成形品を、高い安定性をもって製造することができる。
【0022】
上記スチレン系(共)重合体(A11)が共重合体である場合、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体等が挙げられる。
【0023】
上記スチレン系(共)重合体(A11)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、好ましくは100,000〜300,000であり、より好ましくは100,000〜270,000、更に好ましくは120,000〜250,000である。上記Mwがこの範囲にあれば、本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物における発泡剤、特に物理発泡剤〔C〕の含有量が安定し、本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物における物理発泡剤〔C〕の含有量が、経時により少なくなることを抑制することができる。これにより、成形加工性及び生産安定性に優れた発泡成形品を得ることができる。
【0024】
上記スチレン系(共)重合体(A11)は、重合開始剤の存在下又は非存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合することにより製造することができる。重合方法は、重合開始剤を用いる場合には、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等が好適であり、これらの重合方法を組み合わせて用いてもよい。また、重合開始剤を用いない場合は、熱重合とすることができる。
【0025】
上記重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b1)全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%である。
尚、必要に応じて、後述するゴム強化スチレン系樹脂(A12)の製造時に使用可能な連鎖移動剤、乳化剤等を用いることができる。
【0026】
上記スチレン系(共)重合体(A11)の製造の際には、ビニル系単量体(b1)の全量を反応系に収容した状態で重合を開始してよいし、任意に選択した単量体成分を分割添加又は連続添加して重合を行ってもよい。更に、上記重合開始剤を用いる場合には、反応系に一括して又は連続的に添加することができる。
【0027】
上記ゴム強化スチレン系樹脂(A12)は、ゴム質重合体(以下、「ゴム質重合体(a)」という。)の存在下、ビニル系単量体(b2)を重合して得られた樹脂である。
【0028】
上記ゴム質重合体(a)は、室温でゴム質であれば、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよいが、ジエン系重合体(ジエン系ゴム質重合体)及び非ジエン系重合体(非ジエン系ゴム質重合体)が好ましい。更に、上記ゴム質重合体(a)は、架橋重合体であってもよいし、非架橋重合体であってもよい。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
上記ジエン系重合体(ジエン系ゴム質重合体)としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン系共重合体ゴム;スチレン・イソプレン系共重合体ゴム;天然ゴム等が挙げられる。これらの共重合体は、ブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよい。また、これらの共重合体は水素添加(但し、水素添加率は50%未満。)されたものであってもよい。上記ジエン系重合体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
また、上記非ジエン系重合体(非ジエン系ゴム質重合体)としては、エチレン単位と、炭素数3以上のα−オレフィンから誘導された構造単位を含むエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム;ウレタン系ゴム;アクリル系ゴム;シリコーンゴム;シリコーン・アクリル系複合ゴム;共役ジエン系化合物から誘導された構造単位を含む(共)重合体を水素添加してなる重合体(但し、水素添加率は、通常、50%以上。)等が挙げられる。これらの共重合体は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。上記非ジエン系重合体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
上記ゴム質重合体(a)としては、ジエン系重合体が好ましい。
【0032】
上記ゴム強化スチレン系樹脂(A12)の形成に用いる上記ゴム質重合体(a)の形状は、特に限定されないが、粒子状である場合、その重量平均粒子径は、好ましくは100〜2,000nm、より好ましくは200〜1,000nmである。重量平均粒子径が上記範囲にあれば、本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる発泡成形品の成形加工性及び耐衝撃性に優れる。尚、上記重量平均粒子径は、電子顕微鏡写真を用いた画像解析法、レーザー回折法、光散乱法等により測定することができる。
【0033】
上記ゴム質重合体(a)が粒子状である場合、重量平均粒子径が上記範囲内にある限り、例えば、特開昭61−233010号公報、特開昭59−93701号公報、特開昭56−167704号公報等に記載されている公知の方法により肥大化したものを用いることもできる。
【0034】
上記ゴム質重合体(a)を製造する方法としては、平均粒子径の調整等を考慮し、乳化重合が好ましい。この場合、平均粒子径は、乳化剤の種類及びその使用量、開始剤の種類及びその使用量、重合時間、重合温度、攪拌条件等の製造条件を選択することにより調整することができる。また、上記平均粒子径(粒子径分布)の他の調整方法としては、異なる粒子径を有する上記ゴム質重合体(a)の2種以上をブレンドする方法でもよい。
【0035】
上記ゴム強化スチレン系樹脂(A12)の形成に用いる上記ビニル系単量体(b2)は、芳香族ビニル化合物のみであってよいし、この芳香族ビニル化合物と、例えば、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物等の芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物との組合せであってもよい。
【0036】
上記芳香族ビニル化合物としては、上記スチレン系(共)重合体(A11)の形成に用いられる芳香族ビニル化合物として例示した化合物を、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
【0037】
上記シアン化ビニル化合物としては、上記スチレン系(共)重合体(A11)の形成に用いられるシアン化ビニル化合物として例示した化合物を、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
【0038】
また、上記の(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物等についても、上記スチレン系(共)重合体(A11)の形成に用いられる化合物を、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
上記ビニル系単量体(b2)としては、芳香族ビニル化合物の1種以上、及び、この芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物の1種以上を組み合わせて用いることが好ましく、この場合の芳香族ビニル化合物と、それ以外の化合物との質量割合は、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、通常、45〜97質量%及び3〜55質量%、好ましくは50〜95質量%及び5〜50質量%である。上記芳香族ビニル化合物の割合が少なすぎると、成形加工性が劣る傾向にあり、多すぎると、得られる発泡成形品の耐薬品性、耐熱性等が十分でない場合がある。
【0040】
上記ビニル系単量体(b2)としては、好ましくは、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の組合せ、並びに、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び他の化合物((メタ)アクリル酸エステル化合物等)の組合せである。シアン化ビニル化合物を用いることにより、耐薬品性及び耐熱性等の物性バランスが向上する。
尚、上記ビニル系単量体(b1)及び上記ビニル系単量体(b2)において、構成成分及びその割合等が互いに同じであってよいし、異なってもよい。
【0041】
上記ゴム強化スチレン系樹脂(A12)は、上記ゴム質重合体(a)の存在下に、上記ビニル系単量体(b2)を重合することにより製造することができる。重合方法としては、乳化重合、溶液重合、塊状重合、及び、塊状−懸濁重合が好ましい。
【0042】
尚、上記ゴム強化スチレン系樹脂(A12)の製造の際には、ゴム質重合体(a)及び上記ビニル系単量体(b2)は、反応系において、上記ゴム質重合体(a)全量の存在下に、上記ビニル系単量体(b2)を一括添加して重合を開始してよいし、分割して又は連続的に添加しながら重合を行ってもよい。また、上記ゴム質重合体(a)の一部存在下、又は、非存在下に、上記ビニル系単量体(b2)を一括添加して重合を開始してよいし、分割して又は連続的に添加してもよい。このとき、上記ゴム質重合体(a)の残部は、反応の途中で、一括して、分割して又は連続的に添加してもよい。
【0043】
上記ゴム強化スチレン系樹脂(A12)を100質量部製造する場合、上記ゴム質重合体(a)の使用量は、通常、5〜80質量部である。また、上記ビニル系単量体(b2)の使用量は、上記ゴム質重合体(a)100質量部に対し、通常、25〜1,900質量部である。
【0044】
乳化重合によりゴム強化スチレン系樹脂(A12)を製造する場合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。
【0045】
上記重合開始剤としては、上記スチレン系(共)重合体(A11)の製造方法の説明にて例示した化合物を、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b2)全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%である。
尚、上記重合開始剤は、反応系に一括して、又は、連続的に添加することができる。
【0046】
上記連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;ターピノーレン類、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記連鎖移動剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b2)全量に対し、通常、0.05〜2.0質量%である。
尚、上記連鎖移動剤は、反応系に一括して、又は、連続的に添加することができる。
【0047】
上記乳化剤としては、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩;高級脂肪族カルボン酸塩、脂肪族リン酸塩等が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型化合物、アルキルエーテル型化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記乳化剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b2)全量に対し、通常、0.3〜5.0質量%である。
【0048】
乳化重合は、ビニル系単量体(b2)、重合開始剤等の種類に応じ、公知の条件で行うことができる。この乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、重合体成分を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。この凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸等の有機酸等が用いられる。
尚、上記樹脂(A1)に、ゴム強化スチレン系樹脂(A12)を2種以上含有させる場合には、各ラテックスから樹脂を単離した後、混合してもよいが、他の方法として、各樹脂をそれぞれ含むラテックスの混合物を凝固する等の方法がある。
【0049】
溶液重合、塊状重合及び塊状−懸濁重合による上記ゴム強化スチレン系樹脂(A12)の製造方法は、公知の方法を適用することができる。
【0050】
上記ゴム強化スチレン系樹脂(A12)のグラフト率は、通常、10〜200質量%、好ましくは15〜150質量%である。上記範囲にあれば、本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物の加工性に優れ、得られる発泡成形品の表面外観及び耐衝撃性に優れる。
【0051】
グラフト率は、下記式により求めることができる。
グラフト率(質量%)={(S−T)/T}×100
上記式において、Sは、1グラムのゴム強化スチレン系樹脂をアセトン(ゴム質重合体がアクリル系ゴムの場合、アセトニトリル)20ミリリットルに投入し、25℃で、振とう機により2時間振とうした後、5℃で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(グラム)であり、Tは、1グラムのゴム強化スチレン系樹脂に含まれるゴム質重合体の質量(グラム)である。
【0052】
また、上記ゴム強化スチレン系樹脂(A12)のアセトン(但し、上記ゴム質重合体(a)がアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリルを用いる。)に可溶な成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、通常、0.1〜1.5dl/g、好ましくは0.2〜1.2dl/g、より好ましくは0.2〜1.0dl/gである。この極限粘度[η]が上記範囲内であると、成形加工性に優れ、得られる発泡成形品の耐衝撃性にも優れる。
【0053】
上記極限粘度[η]は、以下の要領で求めることができる。
上記グラフト率を求める際に、遠心分離後に回収されたアセトン可溶分(含まれるゴム質重合体がアクリル系ゴムの場合、アセトニトリル可溶分)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点調製し、ウベローデ粘度管を用いて、30℃で各濃度の還元粘度を測定し、極限粘度[η]が求められる。
【0054】
上記のグラフト率及び極限粘度[η]は、上記ゴム強化スチレン系樹脂(A12)を製造する際に用いる、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を調整することにより、容易に制御することができる。
【0055】
上記樹脂(A1)が、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体(b2)を用いてなるゴム強化スチレン系樹脂(A12)を含む場合、即ち、上記樹脂(A1)が、上記ゴム強化スチレン系樹脂(A12)のみ、又は、上記ゴム強化スチレン系樹脂(A12)及び上記スチレン系共重合体(A11)からなる場合には、ゴム質重合体(a)を除く重合体成分において、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位及びシアン化ビニル化合物から誘導された構造単位の含有割合が、両者の合計を100質量%としたときに、それぞれ、好ましくは60〜100質量%及び0〜40質量%、より好ましくは65〜95質量%及び5〜35質量%であると、発泡倍率の高い発泡成形品を、高い安定性をもって製造することができる。
【0056】
上記樹脂(A1)は、好ましくは、スチレン系(共)重合体(A11)の1種以上、ゴム強化スチレン系樹脂(A12)の1種以上、並びに、スチレン系(共)重合体(A11)の1種以上と、ゴム強化スチレン系樹脂(A12)の1種以上との組合せである。
【0057】
上記成分〔A〕が、樹脂(A1)を含む場合、この樹脂(A1)の含有量は、上記成分〔A〕を100質量%とした場合、好ましくは50〜100質量%であり、より好ましくは55〜100質量%、更に好ましくは60〜100質量%である。上記樹脂(A1)の含有量が上記範囲にある成分〔A〕を含有する発泡成形用熱可塑性樹脂組成物は、発泡性及び微分散性に優れ、特に、発泡倍率が高く、発泡セルが均一であり且つ成形外観性に優れる発泡成形品の形成に好適である。
【0058】
上記のように、上記成分〔A〕は、樹脂(A1)のみからなるものであってよいし、この樹脂(A1)と他の樹脂とからなるものであってもよい。他の樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、並びに、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シアン化ビニル化合物、マレイミド系化合物等から選ばれた少なくとも1種のビニル系単量体から誘導された構造単位を含む(共)重合樹脂が好ましい。
尚、上記ポリカーボネート樹脂及び(共)重合樹脂は、それぞれ、単独で上記成分〔A〕として用いることもできる。また、ポリカーボネート樹脂は、上記(共)重合樹脂や、更に他の樹脂等と併用することもできる。
【0059】
上記ポリカーボネート樹脂は、主鎖にカーボネート結合を有するものであれば、特に限定されず、芳香族ポリカーボネートでもよいし、脂肪族ポリカーボネートでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。本発明においては、成形加工性、耐衝撃性、耐熱性の観点から、芳香族ポリカーボネートが好ましい。尚、上記ポリカーボネート樹脂は、末端が、R−CO−基、R’−O−CO−基(R及びR’は、いずれも有機基を示す。)に変性されたものであってもよい。
上記ポリカーボネート樹脂は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
上記芳香族ポリカーボネートとしては、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを溶融によりエステル交換(エステル交換反応)して得られたもの、ホスゲンを用いた界面重縮合法により得られたもの、ピリジンとホスゲンとの反応生成物を用いたピリジン法により得られたもの等を用いることができる。
【0061】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、分子内にヒドロキシル基を2つ有する化合物であればよく、ヒドロキノン、レゾルシノール等のジヒドロキシベンゼン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という。)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、9,9−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、ビス(p−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
上記芳香族ヒドロキシ化合物のうち、2つのベンゼン環の間に炭化水素基を有する化合物が好ましい。尚、この化合物において、炭化水素基は、ハロゲン置換された炭化水素基であってもよい。また、ベンゼン環は、そのベンゼン環に含まれる水素原子がハロゲン原子に置換されたものであってもよい。従って、上記化合物としては、ビスフェノールA、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられる。これらのうち、特にビスフェノールAが好ましい。
【0063】
芳香族ポリカーボネートをエステル交換反応により得るために用いる炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
上記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは、12,000〜40,000、より好ましくは14,000〜30,000、更に好ましくは16,000〜28,000である。この粘度平均分子量が上記範囲にあると、得られる発泡成形品の成形外観性に優れる。
【0065】
上記(共)重合樹脂としては、メタクリル酸メチルの単独重合体;メタクリル酸メチルと、他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを重合して得られた共重合体等が挙げられる。この共重合体の形成に用いられる他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−オクチル等の炭素数2〜8の炭化水素基を有するメタクリル酸アルキルエステル、及び、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−オクチル等の炭素数1〜8の炭化水素基を有するアクリル酸アルキルエステルが挙げられる。上記共重合体における、メタクリル酸メチルから誘導された構造単位の含有量は、この共重合体を構成する構造単位の全量に対して、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは85〜99質量%である。
上記成分〔A〕が、ポリカーボネート樹脂と、上記(共)重合樹脂とからなる場合、これらの含有割合は、両者の合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは70〜100質量%及び0〜30質量%、より好ましくは85〜95質量%及び5〜15質量%である。上記割合である発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いると、発泡倍率が2.2倍以上と高く、成形外観性及び耐熱性に優れる発泡成形品を効率よく製造することができる。
【0066】
上記成分〔A〕は、上記ポリカーボネート樹脂と、ポリエステル系樹脂とからなるものとすることができる。このポリエステル系樹脂は、分子の主鎖中にエステル結合を有する樹脂であれば、特に限定されないが、通常、飽和ポリエステル樹脂が用いられる。この飽和ポリエステル樹脂は、単独重合ポリエステルであってよいし、共重合ポリエステルであってもよい。
【0067】
上記ポリエステル系樹脂は、例えば、ジカルボン酸成分とジヒドロキシ成分との重縮合、オキシカルボン酸成分又はラクトン成分の重縮合等により得られたものを用いることができる。
上記ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸(2,6−ナフタレンジカルボン酸等)、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸等の炭素数8〜16程度の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体等、シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸等の炭素数8〜12程度の脂環式ジカルボン酸又はその誘導体等、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸等の炭素数2〜40程度の脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体等が挙げられる。
【0068】
尚、上記誘導体には、エステル形成可能な誘導体、例えば、ジメチルエステル等の低級アルキルエステル、酸無水物、酸クロライド等の酸ハライド等が含まれる。
これらジカルボン酸成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
また、上記ジヒドロキシ成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール等の直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2〜12程度のアルキレンジオール等の脂肪族アルキレンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環族ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシフェニル、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビスフェノールA、ビスフェノールAに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加した付加体(ジエトキシ化ビスフェノールA等)等の芳香族ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ジテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。
【0070】
尚、上記ジヒドロキシ成分は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン等の置換体であってもよい。
これらジヒドロキシ成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
上記オキシカルボン酸成分としては、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ジフェニレンオキシカルボン酸等のオキシカルボン酸及びその誘導体等が挙げられる。
これらオキシカルボン酸成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
上記ラクトン成分としては、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
これらラクトン酸成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
また、上記ポリエステル系樹脂が共重合ポリエステルである場合、その形成に用いられる共重合可能な単量体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等の直鎖状アルキレングリコール等のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリ(オキシ−アルキレン)単位を含み、繰り返し数が2〜4程度のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸等の非対称構造の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
更に、上記化合物以外に、必要に応じて、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール等の多官能性単量体を併用してもよい。
【0074】
上記ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチルテレフタレート、ポリネオペンチルテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等の単独重合ポリエステル、アルキレンテレフタレート単位及び/又はアルキレンナフタレート単位を主として含有する共重合ポリエステル、液晶ポリエステル等が挙げられる。これらのうち、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
上記成分〔A〕がポリカーボネート樹脂及びポリエステル系樹脂からなる場合、これらの含有割合は、両者の合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは5〜95質量%及び5〜95質量%、より好ましくは20〜80質量%及び20〜80質量%である。上記割合である発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いると、発泡倍率が2.2倍以上と高く、成形外観性及び耐熱性に優れる発泡成形品を効率よく製造することができる。
【0076】
上記成分〔A〕が、ポリアミド系樹脂である場合、このポリアミド系樹脂は、主鎖に酸アミド結合(−CO−NH−)を有する樹脂であれば、特に限定されない。上記ポリアミド系樹脂は、通常、環構造のラクタム又はアミノ酸の重合、あるいは、ジカルボン酸及びジアミンの縮重合により製造される。従って、このポリアミド系樹脂としては、ホモポリアミド、コポリアミド等を用いることができる。単独で重合可能な単量体としては、ε−カプロラクタム、アミノカプロン酸、エナントラクタム、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノノナン酸、ピペリドン等が挙げられる。
また、ジカルボン酸及びジアミンを縮重合させる場合のジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、テレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0077】
上記ポリアミド系樹脂としては、ナイロン4、6、7、8、11、12、6.6、6.9、6.10、6.11、6.12、6T、6/6.6、6/12、6/6T、6T/6I等が挙げられる。
尚、ポリアミド系樹脂の末端は、カルボン酸、アミン等で封止されていてもよい。カルボン酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。また、アミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミン等の脂肪族第1級アミン等が挙げられる。
上記ポリアミド系樹脂は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
1−2.超高分子量重合体〔B〕
この成分〔B〕は、重量平均分子量(Mw)が800,000〜10,000,000である(共)重合体であれば、特に限定されない。上記成分〔B〕は、好ましくは熱可塑性重合体であり、例えば、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位を含む(共)重合体(以下、「重合体(B1)」という。)、アルキル基の炭素数が1〜4である(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物から誘導された構造単位を含む(共)重合体(以下、「重合体(B2)」という。)、炭素数2〜6のα−オレフィンの(共)重合体(以下、「重合体(B3)」という。)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、上記重合体(B1)、(B2)及びポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
尚、上記Mwが800,000〜10,000,000であることにより、本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物は優れた成形加工性を有し、高い発泡倍率を有する発泡成形品の成形外観性及び耐熱性のバランスに優れる。好ましいMwは、1,000,000〜9,000,000であり、より好ましくは1,500,000〜8,000,000、更に好ましくは1,500,000〜7,000,000である。上記Mwが小さすぎると、得られる発泡成形品を、40℃〜80℃といった高い温度環境下において使用すると、変形等を生じる場合がある。また、上記Mwが大きすぎると、本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物が不均一となる場合がある。
また、上記成分〔B〕において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の比で表される多分散度(Mw/Mn)は、好ましくは4.0以上、より好ましくは5.0以上、更に好ましくは5.0〜15.0である。この多分散度が上記範囲にある成分〔B〕を用いると、成分〔A〕との混練性に優れる。尚、上記多分散度が4.0未満では、成分〔A〕と混練する場合に、長時間を要する場合がある。ここで、上記Mw及びMnは、標準ポリスチレンを用い、ジメチルホルムアミドを溶媒とした、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0079】
上記成分〔B〕のうち、上記重合体(B1)を形成する芳香族ビニル化合物としては、上記スチレン系樹脂(A1)の形成に用いた芳香族ビニル化合物が適用される。これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
【0080】
また、上記重合体(B1)は、芳香族ビニル化合物以外の他の重合性化合物から誘導された構造単位を有してもよく、例えば、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物、更には、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アミド基、カルボキシル基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物等から誘導された構造単位を有してもよい。他の構造単位は、1種単独であるいは2種以上の組合せで含まれたものとすることができる。上記他の重合性化合物についても、上記スチレン系樹脂(A1)の形成に用いた各ビニル系化合物が適用される。
【0081】
上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリルが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メタクリル酸メチル及びアクリル酸n−ブチルが好ましい。
上記マレイミド系化合物としては、N−フェニルマレイミド及びN−シクロヘキシルマレイミドが好ましい。
上記酸無水物としては、無水マレイン酸が好ましい。
上記ヒドロキシル基含有ビニル系化合物としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
上記エポキシ基含有ビニル系化合物としては、グリシジルメタクリレート好ましい。
また、上記アミド基含有ビニル系化合物としては、アクリルアミドが好ましい。
【0082】
上記重合体(B1)としては、本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物の成形加工性の観点から、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位と、シアン化ビニル化合物から誘導された構造単位とを含むスチレン系共重合体であることが好ましい。このスチレン系共重合体は、2元共重合体であってよいし、更に他の構造単位を含む3元共重合体、4元共重合体等であってもよい。
上記重合体(B1)が、下記構成を有すると、成形加工性を低下させることなく、高い発泡倍率を有し、成形外観性及び耐熱性のバランスに優れる発泡成形品を得ることができる。
【0083】
上記重合体(B1)が、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を用いて得られた2元共重合体である場合、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位、及び、シアン化ビニル化合物から誘導された構造単位の含有割合は、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは50〜95質量%及び5〜50質量%、より好ましくは55〜85質量%及び15〜45質量%、更に好ましくは65〜75質量%及び25〜35質量%である。シアン化ビニル化合物から誘導された構造単位の含有量が多すぎると、得られる発泡成形品の耐熱性が低下し、発泡成形品に着色を生じる場合がある。一方、上記含有量が少なすぎると、延性の低下を招く場合がある。
【0084】
また、上記重合体(B1)が、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物から誘導された構造単位以外に、他の構造単位を含む場合、この他の構造単位を形成する重合性化合物の使用量の上限は、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む全ての単量体成分100質量%に対して、好ましくは50質量%、より好ましくは25質量%である。但し、下限は、通常、16質量%である。上記使用量が50質量%を超えると、発泡成形用熱可塑性樹脂組成物の加工性が低下する傾向にある。
上記重合体(B1)が、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位、シアン化ビニル化合物から誘導された構造単位、及び、他の構造単位からなる場合、これらの構造単位の合計を100質量%に対して、それぞれ、好ましくは55〜85質量%、15〜45質量%及び0〜20質量%である。
【0085】
上記重合体(B2)は、アルキル基の炭素数が1〜4である(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物から誘導された構造単位を含む(共)重合体であり、好ましくはポリメタクリル酸メチルである。
【0086】
上記成分〔B〕は、特定のMwを有する(共)重合体であるが、上記成分〔B〕が、上記重合体(B1)又は(B2)である場合、極限粘度(ジメチルホルムアミド中、30℃)は、好ましくは2〜10dl/g、より好ましくは2〜8dl/g、更に好ましくは3〜7dl/gである。この極限粘度が上記範囲にあると、本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物の成形加工性に優れ、得られる発泡成形品の耐熱性にも優れる。
【0087】
上記極限粘度は、以下の要領で求めることができる。
上記成分〔B〕をジメチルホルムアミド100ミリリットルに溶解させ、濃度の異なるものを5点調製し、ウベローデ粘度管を用いて、30℃で各濃度の還元粘度を測定し、極限粘度が求められる。
【0088】
ここで、上記重合体(B1)及び(B2)の製造方法を説明する。重合方法は、通常、乳化重合又は懸濁重合が適用されるが、好ましくは乳化重合である。この乳化重合においては、反応系に対し、単量体成分を一括又は分割添加しながら重合することが好ましい。
【0089】
乳化重合を行う場合には、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、水等が用いられる。これらの成分は、上記樹脂(A1)の製造方法において例示した化合物を用いることができる。
上記重合開始剤の使用量は、単量体成分100質量部に対し、通常、0.01〜2質量部、好ましくは0.03〜0.5質量部、より好ましくは0.05〜0.3質量部である。この使用量が少なすぎると、重合反応の開始が安定してなされない場合がある。一方、この使用量が多すぎると、重合反応が急激に開始され、重合熱による発熱が大きくなり、重合温度の制御が困難になり、得られる重合体が低分子量化する場合がある。
上記連鎖移動剤の使用量は、単量体成分100質量部に対し、通常、0.02〜1質量部である。この使用量が少なすぎると、分子量を調整する効果が得られない場合がある。一方、この使用量が多すぎると、得られる重合体が低分子量化する場合がある。
また、上記乳化剤の使用量は、単量体成分100質量部に対し、通常、0.1〜10質量部、好ましくは0.3〜5質量部である。この使用量が少なすぎると、重合中のラテックスの安定性が低下する傾向にある。一方、この使用量が多すぎると、得られる重合体に含まれる乳化剤の残留濃度が高くなり、熱安定性が悪化し、着色を生じる場合がある。
【0090】
乳化重合の際の水の使用量は、単量体成分100質量部に対して、通常、110〜330質量部、好ましくは120〜300質量部、より好ましくは130〜270質量部である。上記使用量が少なすぎると、重合熱による発熱が大きくなって、重合温度の制御が困難になり、得られる成分〔B〕の分子量が本発明の範囲未満となる場合がある。
【0091】
乳化重合の際の重合温度は、単量体成分への連鎖移動定数、及び、得られる重合体の分子量の観点から、好ましくは50℃〜98℃、より好ましくは55℃〜98℃である。この重合温度が高すぎると、ラジカルの生成速度が速くなるため、得られる成分〔B〕の分子量が本発明の範囲未満となる場合がある。
上記重合温度は、重合を行っている間において、一定にすることが好ましい。また、重合時間は、得られる重合体の分子量の観点から、通常、3時間以上である。
【0092】
乳化重合の際の反応系は、ラテックス中の溶存酸素の影響で、重合活性が低下する傾向にあることから、窒素ガス等の不活性ガスによる置換を十分にすることが必要である。重合前の酸素濃度は、好ましくは3,000ppm以下、より好ましくは1,000ppm以下である。また、ハイドロサルファイト等の酸素除去剤を用いて、溶存酸素を除去することもできる。
【0093】
乳化重合により得られたラテックスは、公知の方法、例えば、凝固、洗浄、乾燥等を行った後、成分〔B〕が粉体として回収される。凝固工程で使用される凝固剤としては、硫酸、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウム等の水溶液が用いられる。
【0094】
上記重合体(B1)及び(B2)の重量平均分子量、数平均分子量及び極限粘度は、重合時に用いる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等の種類や量、単量体成分の添加方法、添加時間、重合時間、重合温度等を調整することによって、制御することができる。特に、上記成分〔B〕の極限粘度は、連鎖移動剤の添加等によって行うことができるが、重合開始剤の使用量により調整することが好ましい。上記重合体(B1)及び(B2)の好ましい製造方法は、CMC(臨界ミセル濃度)の低い乳化剤を使用した乳化重合において、連鎖移動剤を用いず、水溶性重合開始剤を少量使用し、単量体成分を多段で分割添加し、比較的低い重合温度で重合を進める方法である。
【0095】
また、上記重合体(B3)は、炭素数2〜6のα−オレフィン、即ち、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等の単独重合体又は共重合体であり、好ましくはポリエチレンである。
【0096】
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物において、上記成分〔B〕の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、0.1〜5質量部であり、好ましくは0.2〜4質量部、より好ましくは0.3〜3質量部である。成分〔B〕の含有割合が上記範囲にあると、本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物は優れた成形加工性を有し、高い発泡倍率を有する発泡成形品の成形外観性及び耐熱性のバランスに優れる。
【0097】
1−3.物理発泡剤〔C〕
この成分〔C〕は、沸点(大気圧)が−10℃〜55℃である化合物を含むものであれば、特に限定されない。この化合物としては、炭素原子数3〜6の脂肪族炭化水素等が挙げられ、特に、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン及びイソペンタンが好ましい。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。この化合物を用いると、発泡性、及び、発泡セルの微分散性に優れる。尚、沸点が−10℃〜55℃である化合物の含有量は、上記成分〔C〕100質量%に対し、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95〜100質量%である。
尚、上記成分〔C〕が複数の成分を含む場合には、沸点(大気圧)の平均値が−10℃〜55℃であることが好ましい。
【0098】
上記成分〔C〕が、他の成分を含む場合、エタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系化合物;塩化メチル、塩化エチル、ジクロロエタン、クロロホルム、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、ジフルオロエタン、トリフルオロエタン、フルオロクロロメタン、フルオロクロロエタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記成分〔C〕は、酸素原子を含む化合物である石油エーテル、炭酸ガス、窒素ガス等を含んでもよい。他の成分の含有量は、上記成分〔C〕100質量%に対し、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは0〜5質量%である。
【0099】
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物において、上記成分〔C〕の含有割合は、上記成分〔A〕100質量部に対して、0.1〜5質量部であり、好ましくは0.2〜4質量部、より好ましくは0.3〜3質量部である。成分〔C〕の含有割合が上記範囲にあると、高い発泡倍率を有し且つ均一なセル径を有する発泡成形品を効率よく製造することができる。
【0100】
1−4.化学発泡剤〔D〕
この成分〔D〕は、加熱等により体積膨張させることができ、樹脂材料の発泡成形に用いられるものであれば、特に限定されず、例えば、加熱によって分解して窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガス等のガスを発生させる熱分解型発泡剤;反応により、炭酸ガス、水素ガス等のガスを発生させる反応型発泡剤;中空粒子型発泡剤等が挙げられる。これらのうち、熱分解型発泡剤が好ましい。
上記熱分解型発泡剤としては、有機系発泡剤及び無機系発泡剤のいずれを用いてもよく、これらを組み合わせて用いることもできる。
【0101】
上記有機系発泡剤としては、アゾ化合物、ヒドラジン誘導体、ニトロソ化合物、トリアゾール化合物、アジド化合物、セミカルバジド化合物、イソシアネート化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アゾ化合物としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウム・アゾジカルボキシレート等が挙げられる。
ヒドラジン誘導体としては、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
ニトロソ化合物としては、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソ・テレフタルアミド、N,N’−ジニトロソ・ペンタメチレン・テトラミン等が挙げられる。
アジド化合物としては、カルシウムアジド、4,4’−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホニルアジド等が挙げられる。
【0102】
上記無機系発泡剤としては、炭酸塩化合物、水素化物、アジ化物、リン酸塩化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記炭酸塩化合物としては、重炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム等が挙げられる。
上記水素化物としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ナトリウム等が挙げられる。
上記アジ化物としては、アジ化ナトリウム等が挙げられる。
また、上記リン酸塩化合物としては、ポリリン酸アミド、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン等が挙げられる。
【0103】
上記熱分解型発泡剤としては、アゾ化合物が好ましい。
【0104】
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物において、上記成分〔D〕の含有割合は、上記成分〔A〕100質量部に対して、0.05〜0.8質量部であり、好ましくは0.1〜0.75質量部、より好ましくは0.2〜0.7質量部である。成分〔D〕の含有割合が上記範囲にあると、高い発泡倍率を有し且つ均一なセル径を有する発泡成形品を効率よく製造することができる。
【0105】
上記のように、本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物は、発泡剤として、上記成分〔C〕及び〔D〕を含む。高い発泡倍率を有し且つ均一なセル径を有する発泡成形品をより安定製造するためのこれらの含有割合は、両者の合計を100質量%としたときに、それぞれ、好ましくは50〜90質量%及び10〜50質量%、より好ましくは50〜85質量%及び15〜50質量%である。
【0106】
1−5.タルク〔E〕
この成分〔E〕は、一般に、含水ケイ酸マグネシウム(4SiO・3MgO・HO)として知られており、約60質量%のSiOと、約30質量%のMgOとを主成分とする鉱物である。本発明においては、微粒子として用いられる。尚、この成分〔E〕は、シランカップリング剤等を用いて表面処理されてなるものを用いてもよい。
【0107】
上記成分〔E〕の平均粒子径は、レーザー回折法等により測定された体積累積粒径の中心粒径、即ち、50%平均粒子径(以下、「D50」ともいう。)であり、好ましくは0.5〜50μm、より好ましくは1〜30μm、更に好ましくは3〜15μmである。このD50が上記範囲にある成分〔E〕を含有する発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いると、発泡性に優れ、発泡倍率が2.2倍以上と高く、成形外観性及び耐熱性に優れる発泡成形品を安定して製造することができる。尚、上記D50が大きくなると、発泡倍率が上がる傾向にあるが、発泡セル径が不均一となり、強度の低下をまねく場合がある。
上記成分〔E〕が、D50が0.5〜50μmであるタルクを、成分〔E〕全体に対して、好ましくは70質量%以上含むことにより、発泡性に優れ、発泡倍率が2.2倍以上と高く、成形外観性及び耐熱性に優れる発泡成形品を安定して製造することができる。
【0108】
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物において、上記成分〔E〕の含有割合は、上記成分〔A〕100質量部に対して、0.1〜5質量部であり、好ましくは0.5〜4質量部、より好ましくは0.8〜3.5質量部、更に好ましくは1.0〜3質量部である。成分〔E〕の含有割合が上記範囲にあると、高い発泡倍率であり且つ均一なセル径を有し、更に耐熱性に優れた発泡成形品を効率よく製造することができる。
【0109】
1−6.添加剤
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物は、目的、用途等に応じて、添加剤を含有したものとすることができる。この添加剤としては、他の樹脂、発泡助剤、充填材、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防汚剤等が挙げられる。
【0110】
上記発泡助剤において、上記成分〔C〕に対する発泡助剤(以下、「第1発泡助剤」という。)として、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;エチレンジクロライド、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物等の有機溶剤を用いることができる。
上記第1発泡助剤の含有量は、上記成分〔D〕100質量部に対して、通常、0.1〜2質量部である。
【0111】
また、上記発泡助剤において、上記成分〔D〕が熱分解型発泡剤を含む場合に、この熱分解型発泡剤に対する発泡助剤(以下、「第2発泡助剤」という。)として、クエン酸、酒石酸、サルチル酸、フタル酸、ステアリン酸等の有機酸;尿素及びその誘導体等を用いることができる。
【0112】
上記充填材としては、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ミルドファイバー、ガラスフレーク、セラミック繊維、アラミド粒子、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、各種ウィスカー、パルプ、木粉、もみがら、ペーパースラッジ等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記充填材の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部である。
【0113】
上記熱安定剤としては、ホスファイト系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、チオエーテル系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記熱安定剤の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、通常、0.01〜2質量部である。
【0114】
上記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ハイドロキノン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、硫黄含有化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記酸化防止剤の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、通常、0.01〜2質量部である。
【0115】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、金属錯塩等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ヒンダードアミン系化合物と併用すると好ましい場合がある。
上記紫外線吸収剤の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、通常、0.05〜2質量部である。
【0116】
上記老化防止剤としては、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記老化防止剤の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、通常、0.01〜2質量部である。
【0117】
上記帯電防止剤としては、帯電防止剤としては、低分子型帯電防止剤、高分子型帯電防止剤等が挙げられる。また、これらは、イオン伝導型でもよいし、電子伝導型でもよい。
低分子型帯電防止剤としては、アニオン系帯電防止剤;カチオン系帯電防止剤;非イオン系帯電防止剤;両性系帯電防止剤;錯化合物;アルコキシシラン、アルコキシチタン、アルコキシジルコニウム等の金属アルコキシド及びその誘導体;コーテッドシリカ、リン酸塩、リン酸エステル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、高分子型帯電防止剤としては、分子内にスルホン酸金属塩を有するビニル共重合体、アルキルスルホン酸金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、ベタイン等が挙げられる。更に、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等を用いることもできる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記帯電防止剤の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部である。
【0118】
上記可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル;ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソブチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等の脂肪酸エステル;トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸n−オクチルエステル、トリメリット酸系イソノニルエステル等のトリメリット酸エステル;ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート、ジエチレングリコールモノオレート、グリセリルモノリシノレート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、エポキシ化大豆油、ポリエーテルエステル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記可塑剤の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、通常、0.5〜5質量部である。
【0119】
上記滑剤としては、脂肪酸エステル、炭化水素樹脂、パラフィン、高級脂肪酸、オキシ脂肪酸、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪族アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、金属石鹸、シリコーン、変性シリコーン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記滑剤の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、通常、0.5〜5質量部である。
【0120】
上記難燃剤としては、有機系難燃剤、無機系難燃剤、反応系難燃剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機系難燃剤としては、臭素化エポキシ系化合物、臭素化アルキルトリアジン化合物、臭素化ビスフェノール系エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化架橋ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールシアヌレート樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA及びそのオリゴマー等のハロゲン系難燃剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステルやこれらを各種置換基で変性した化合物、各種の縮合型のリン酸エステル化合物、リン元素及び窒素元素を含むホスファゼン誘導体等のリン系難燃剤;ポリテトラフルオロエチレン、グアニジン塩、シリコーン系化合物、ホスファゼン系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0121】
無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム系化合物、モリブデン系化合物、スズ酸亜鉛等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
反応系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモフェノールグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、トリブロモフェノール、テトラブロモフタレート、テトラクロロ無水フタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、クロレンド酸(ヘット酸)、無水クロレンド酸(無水ヘット酸)、臭素化フェノールグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0122】
上記難燃剤の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、通常、0.5〜30質量部である。
尚、本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物に難燃剤を含有させる場合には、難燃助剤を用いることが好ましい。この難燃助剤としては、三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、酒石酸アンチモン等のアンチモン化合物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水和アルミナ、酸化ジルコニウム、ポリリン酸アンモニウム、酸化スズ、酸化鉄等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0123】
上記抗菌剤としては、銀系ゼオライト、銀−亜鉛系ゼオライト等のゼオライト系抗菌剤、錯体化銀−シリカゲル等のシリカゲル系抗菌剤、ガラス系抗菌剤、リン酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、銀−ケイ酸アルミン酸マグネシウム等のケイ酸塩系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、セラミック系抗菌剤、ウィスカー系抗菌剤等の無機系抗菌剤;ホルムアルデヒド放出剤、ハロゲン化芳香族化合物、ロードプロパルギル誘導体、チオシアナト化合物、イソチアゾリノン誘導体、トリハロメチルチオ化合物、第四アンモニウム塩、ビグアニド化合物、アルデヒド化合物、フェノール系化合物、ピリジンオキシド、カルバニリド、ジフェニルエーテル、カルボン酸、有機金属化合物等の有機系抗菌剤;無機・有機ハイブリッド抗菌剤;天然抗菌剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記抗菌剤の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部である。
【0124】
1−7.発泡成形用熱可塑性樹脂組成物
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物は、上記の成分〔A〕、〔B〕、〔C〕、〔D〕及び〔E〕を含有するものであるが、その形態は、特に限定されない。
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物の形態は、以下に例示される。
(1)成分〔A〕〜〔E〕のすべてを含むペレット
(2)成分〔A〕及び〔C〕を含むペレットと、成分〔B〕、〔D〕及び〔E〕を含むペレットとからなる混合物
(3)成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕を含むペレットと、成分〔D〕と、成分〔E〕とからなる混合物
(4)成分〔A〕の一部及び成分〔B〕を含むペレットと、成分〔A〕の残部及び成分〔C〕を含むペレットと、成分〔D〕と、成分〔E〕とからなる混合物
(5)上記成分〔A〕の一部及び成分〔C〕を含むペレットと、成分〔A〕の残部、成分〔B〕及び成分〔E〕を含むペレットと、成分〔D〕とからなる混合物
(6)上記成分〔A〕の一部及び成分〔C〕を含むペレットと、成分〔A〕の一部、成分〔B〕及び成分〔E〕を含むペレットと、成分〔A〕の残部を含むペレットと、成分〔D〕とからなる混合物
(7)成分〔A〕の一部及び成分〔B〕を含むペレットと、成分〔A〕の一部及び成分〔C〕を含むペレットと、成分〔A〕の残部及び成分〔E〕を含むペレットと、成分〔D〕とからなる混合物
(8)成分〔A〕の一部及び成分〔B〕を含むペレットと、成分〔A〕の一部及び成分〔C〕を含むペレットと、成分〔A〕の一部及び成分〔E〕を含むペレットと、成分〔A〕の残部を含むペレットと、成分〔D〕とからなる混合物
上記のうち、発泡倍率が2.2倍以上と高く且つ均一なセル径を有し、成形外観性及び耐熱性に優れる発泡成形品を高い生産性をもって製造することができることから、態様(5)〜(8)が好ましく、態様(6)〜(8)が特に好ましい。
【0125】
上記態様(6)で表される組成物は、好ましくは、上記成分〔A〕の一部である熱可塑性樹脂(Ax1)、及び、上記成分〔C〕を含有し、成分〔C〕の含有割合が、上記熱可塑性樹脂(Ax1)100質量部に対して2.5〜10質量部である、物理発泡剤含有マスターバッチ(以下、「組成物〔X1〕」ともいう。)と、上記成分〔A〕の一部である熱可塑性樹脂(Ay1)、上記成分〔B〕、及び、上記成分〔E〕を含有し、成分〔B〕の含有割合が、上記熱可塑性樹脂(Ay1)100質量部に対して2.5〜40質量部であり、成分〔E〕の含有割合が、上記熱可塑性樹脂(Ay1)100質量部に対して2.5〜40質量部であり、且つ、上記成分〔C〕を含有しない共重合体含有マスターバッチ(超高分子量重合体含有マスターバッチ。以下、「組成物〔Y1〕」ともいう。)と、上記成分〔D〕と、上記成分〔A〕の一部である熱可塑性樹脂(Az1)と、が混合されてなり、上記成分〔A〕が、上記熱可塑性樹脂(Ax1)、上記熱可塑性樹脂(Ay1)及び上記熱可塑性樹脂(Az1)からなる発泡成形用熱可塑性樹脂組成物(以下、「発泡成形用熱可塑性樹脂組成物〔I〕」という。)とすることができる。この発泡成形用熱可塑性樹脂組成物〔I〕において、組成物〔X1〕及び〔Y1〕の使用量(混合割合)は、成分〔A〕に対する成分〔B〕、〔C〕、〔D〕及び〔E〕の割合が本発明の範囲に入るように選択される。
以下、上記の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物〔I〕について説明する。
【0126】
上記発泡成形用熱可塑性樹脂組成物〔I〕において、組成物〔X1〕は、上記成分〔A〕の一部である熱可塑性樹脂(Ax1)、及び、上記成分〔C〕を含有し、成分〔C〕の含有割合が、上記熱可塑性樹脂(Ax1)100質量部に対して2.5〜10質量部、好ましくは2.5〜8質量部、より好ましくは3〜7質量部であり、好ましくは、上記成分が溶融混練されてなる物理発泡剤含有マスターバッチである。
また、組成物〔Y1〕は、上記成分〔A〕の一部である熱可塑性樹脂(Ay1)、上記成分〔B〕、及び、上記成分〔E〕を含有し、成分〔B〕の含有割合が、上記熱可塑性樹脂(Ay1)100質量部に対して2.5〜40質量部、好ましくは5〜40質量部、より好ましくは10〜40質量部であり、成分〔E〕の含有割合が、上記熱可塑性樹脂(Ay1)100質量部に対して2.5〜40質量部、好ましくは5〜30質量部、より好ましくは5〜20質量部であり、且つ、上記成分〔C〕を含有しない、好ましくは、上記成分が溶融混練されてなる共重合体含有マスターバッチである。
そして、上記発泡成形用熱可塑性樹脂組成物〔I〕は、更に、上記成分〔D〕と、上記成分〔A〕の一部である熱可塑性樹脂(Az1)とを含有する。
上記熱可塑性樹脂(Ax1)、(Ay1)及び(Az1)は、互いに同じ種類の樹脂であってよいし、いずれか2つが同じ種類の樹脂であってよいし、すべて異なる種類の樹脂であってもよい。上記熱可塑性樹脂(Ax1)、(Ay1)及び(Az1)は、好ましくはスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル系樹脂等である。尚、各樹脂については、上記説明が適用される。
【0127】
上記発泡成形用熱可塑性樹脂組成物〔I〕においては、上記熱可塑性樹脂(Ax1)、(Ay1)及び(Az1)は、同じ種類の樹脂であることが好ましい。この場合、構造単位の種類及びその割合等の構成が同じであることが好ましい。また、上記熱可塑性樹脂(Ax1)、(Ay1)及び(Az1)のメルトマスフローレートは、同一であってよいし、異なってもよい。
上記熱可塑性樹脂(Ax1)、(Ay1)及び(Az1)が互いに異なる樹脂であって、例えば、上記熱可塑性樹脂(Ax1)、(Ay1)及び(Az1)のうちの1つがスチレン系(共)重合体であり、他の2つが互いに異なるゴム強化スチレン系樹脂である場合、スチレン系(共)重合体と、ゴム強化スチレン系樹脂のアセトン可溶分(含まれるゴム質重合体がアクリル系ゴムの場合は、アセトニトリル可溶分)との間で、構造単位の種類及びその割合等の構成が同じ又はほぼ同じであることが好ましい。
また、上記熱可塑性樹脂(Ax1)、(Ay1)及び(Az1)のうちの2つが同じ樹脂であって、例えば、上記熱可塑性樹脂(Ax1)、(Ay1)及び(Az1)のうちの2つが互いに同一のスチレン系(共)重合体であり、他の樹脂がゴム強化スチレン系樹脂である場合、各アセトン可溶分(含まれるゴム質重合体がアクリル系ゴムの場合は、アセトニトリル可溶分)どうしの間で、構造単位の種類及びその割合等の構成が同じ又はほぼ同じであることが好ましい。
【0128】
上記熱可塑性樹脂(Ax1)、(Ay1)及び(Az1)は、特に好ましくは、いずれもスチレン系樹脂であり、以下に、詳説される。
上記発泡成形用熱可塑性樹脂組成物〔I〕において、好ましくは、上記熱可塑性樹脂(Ax1)及び(Ay1)がスチレン系(共)重合体であり、より好ましくは、上記熱可塑性樹脂(Ax1)、(Ay1)及び(Az1)がスチレン系(共)重合体である。このスチレン系(共)重合体は、全ての構造単位の合計を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位75〜95質量%と、シアン化ビニル化合物から誘導された構造単位5〜25質量%と、他のビニル系化合物から誘導された構造単位0〜20質量%とからなる共重合体であることが好ましい。この構成を有することで、組成物〔X1〕において、成分〔C〕の含有量が安定し、経時による組成物〔X1〕の組成変化が抑制されるだけでなく、組成物〔X1〕及び〔Y1〕の溶融混練を円滑に進めることができ、成形加工性に優れ、発泡倍率が高く、発泡性、発泡セルの微分散性、成形外観性、及び、耐熱性に優れた発泡成形品を得ることができる。尚、上記スチレン系(共)重合体の更に好ましい組成は、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位、シアン化ビニル化合物から誘導された構造単位、及び、他のビニル系化合物から誘導された構造単位の順に、それぞれ、75〜90質量%、10〜25質量%及び0〜15質量%である。
また、上記スチレン系(共)重合体のメルトマスフローレートは、好ましくは0.1〜15g/10分であり、より好ましくは0.1〜12g/10分、更に好ましくは0.1〜10g/10分、特に好ましくは0.1〜8g/10分である。上記範囲にあると、組成物〔X1〕及び〔Y1〕の溶融混練を円滑に進めることができ、成形加工性に優れ、発泡倍率が高く、発泡性、発泡セルの微分散性、成形外観性、及び、耐熱性に優れた発泡成形品を得ることができる。
そして、上記スチレン系(共)重合体のMwは、特に限定されないが、上記と同様の観点から、好ましくは100,000〜270,000、より好ましくは120,000〜250,000である。
【0129】
上記熱可塑性樹脂(Ax1)、(Ay1)及び(Az1)が、ゴム強化スチレン系樹脂である場合、このゴム強化スチレン系樹脂は、ゴム質重合体の存在下、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物からなるビニル系単量体を重合して得られた樹脂、又は、ゴム質重合体の存在下、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び他のビニル系化合物からなるビニル系単量体を重合して得られた樹脂であり、好ましくは後者である。そのアセトン可溶分(含まれるゴム質重合体がアクリル系ゴムの場合は、アセトニトリル可溶分)が、全ての構造単位の合計を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位75〜95質量%と、シアン化ビニル化合物から誘導された構造単位5〜25質量%と、他のビニル系化合物から誘導された構造単位0〜20質量%とからなることが好ましい。これらの含有量にある構造単位を有するゴム強化スチレン系樹脂を含む組成物〔X1〕もまた、その組成変化が抑制され、その結果、成形加工性に優れ、発泡倍率が高く、発泡性、発泡セルの微分散性、及び、成形外観性に優れた発泡成形品を得ることができる。上記アセトン可溶分又は上記アセトニトリル可溶分において、更に好ましい組成は、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位、シアン化ビニル化合物から誘導された構造単位、及び、他のビニル系化合物から誘導された構造単位の順に、それぞれ、75〜90質量%、10〜25質量%及び0〜15質量%である。
【0130】
上記熱可塑性樹脂(Ax1)、(Ay1)及び(Az1)は、スチレン系(共)重合体及びゴム強化スチレン系樹脂の混合物であってもよい。その場合、これらの樹脂の含有割合は、両者の合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは10〜90質量%及び90〜10質量%、より好ましくは50〜90質量%及び10〜50質量%である。上記含有割合がこの範囲にあると、上記効果に優れる。
【0131】
上記発泡成形用熱可塑性樹脂組成物〔I〕において、ゴム質重合体の含有割合は、得られる発泡成形品の耐衝撃性の観点から、含まれる樹脂成分の全量に対して、好ましくは5〜20質量%、より好ましくは7〜15質量%、更に好ましくは8〜12質量%である。
【0132】
上記発泡成形用熱可塑性樹脂組成物〔I〕において、組成物〔X1〕及び〔Y1〕は、上記必須成分以外に、添加剤を含有してもよい。また、上記熱可塑性樹脂(Az1)は、単独で用いてよいし、添加剤を含む溶融混練物として用いてもよい。
上記組成物〔X1〕及び〔Y1〕並びに上記熱可塑性樹脂(Az1)の形状及び大きさは、特に限定されず、形状について、例えば、平板状(円形、角形等)、柱状(円柱、角柱等)、線状、不定形状等とすることができる。
上記組成物〔X1〕及び〔Y1〕の製造方法は、後述する。
【0133】
また、上記発泡成形用熱可塑性樹脂組成物〔I〕に配合される成分〔D〕の形状等も、特に限定されず、粉末等をそのまま用いることができる。上記発泡成形用熱可塑性樹脂組成物〔I〕において、上記成分〔D〕の含有量は、上記組成物〔X1〕に含まれた熱可塑性樹脂(Ax1)、上記組成物〔Y1〕に含まれた熱可塑性樹脂(Ay1)、及び、上記熱可塑性樹脂(Az1)の合計100質量部に対して、0.05〜0.5質量部、好ましくは0.05〜0.3質量部、より好ましくは0.1〜0.25質量部である。
【0134】
ここで、物理発泡剤含有マスターバッチ、即ち、上記組成物〔X1〕の製造方法、並びに、共重合体含有マスターバッチ、即ち、上記組成物〔Y1〕の製造方法について、順次、説明する。
【0135】
上記組成物〔X1〕は、上記熱可塑性樹脂(Ax1)を溶融状態としながら、上記成分〔C〕を配合し、混練することにより製造することが好ましい。例えば、上記熱可塑性樹脂(Ax1)を溶融混練する工程(以下、「溶融工程」という。)、溶融工程により得られた溶融状態の上記熱可塑性樹脂(Ax1)に、上記成分〔C〕、又は、上記成分〔C〕及び添加剤を供給し、この混合物を溶融混練する工程(以下、「混練工程」という。)、混練工程により得られた混練物を線状体等とし、直ぐに上記線状体を冷却する工程(以下、「冷却工程」という。)、並びに、冷却した線状体を切断する工程(以下、「切断工程」という。)を、順次、備える方法により製造することができる。
【0136】
上記溶融工程においては、単軸押出機、二軸押出機、タンデム型押出機等の押出機を用い、上記熱可塑性樹脂(Ax1)を、その溶融温度以上で溶融混練する。
その後、上記混練工程においては、上記溶融工程において用いた押出機が、あるいは、別途準備した、上記例示した押出機が用いられ、溶融状態の上記熱可塑性樹脂(Ax1)中に、液化させた上記成分〔C〕、又は、液化させた上記成分〔C〕及び添加剤を供給し、通常、上記熱可塑性樹脂(Ax1)の溶融温度以上で溶融混練する。
【0137】
次いで、上記冷却工程においては、上記混練工程により得られた混練物を、押出機の出口に配設された、例えば、直径1〜5mmの押出孔から押し出して、連続した線状体等を形成する。そして、押し出された線状体を水等の冷媒の中に導入し、冷却する。
その後、冷却された線状体を適当な長さに切断することにより、所望の大きさの発泡剤含有マスターバッチを製造することができる。
【0138】
一方、上記組成物〔Y1〕は、上記熱可塑性樹脂(Ay1)及び成分〔B〕を溶融状態としながら、成分〔E〕、必要に応じて添加剤を配合し、これらを混練することにより製造することが好ましい。例えば、上記熱可塑性樹脂(Ay1)及び成分〔B〕等を溶融混練する工程(以下、「溶融混練工程」という。)、溶融混練工程により得られた混練物を線状体等とし、直ぐに上記線状体を冷却する工程(以下、「冷却工程」という。)、並びに、冷却した線状体を切断する工程(以下、「切断工程」という。)を、順次、備える製造方法により製造することができる。
【0139】
上記溶融混練工程においては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、タンデム型押出機等の押出機を用い、上記熱可塑性樹脂(Ay1)を、その溶融温度以上で溶融混練する。
その後、上記冷却工程においては、上記混練工程により得られた混練物を、押出機の出口に配設された、例えば、直径1〜5mmの押出孔から押し出して、連続した線状体等を形成する。そして、押し出された線状体を水等の冷媒の中に導入し、冷却する。
その後、冷却された線状体を適当な長さに切断することにより、所望の大きさの共重合体含有マスターバッチを製造することができる。
【0140】
2.発泡成形品
本発明の発泡成形品は、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られたことを特徴とする。
本発明の発泡成形品は、発泡セルが均一である。また、本発明の発泡成形品の発泡倍率(実施例に示された算出方法による)は、好ましくは2.2〜25倍、より好ましくは2.5〜20倍である。更に、密度は、好ましくは40〜500kg/m、より好ましくは50〜400kg/mである。
また、本発明の発泡成形品は、40℃〜80℃といった高い温度環境下において使用されたときに、大きな変形を生じることがなく、耐熱性に優れる。
【0141】
本発明の発泡成形品は、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、圧空成形等により製造することができる。
押出成形の場合、通常、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を溶融状態とし、ダイから押し出すことにより、同時に発泡され、板状(シート状)、筒状、半筒状、線状等の発泡成形品が得られる。
上記押出成形において、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を加熱溶融する場合には、スクリューを備える押出機等が用いられる。その加熱条件は、通常、上記成分〔A〕の種類により選択されるが、好ましくは130℃〜260℃である。
【0142】
本発明の発泡成形品を製造する方法は、好ましくは、上記発泡成形用熱可塑性樹脂組成物〔I〕を用いる方法である。この製造方法によると、原料成分の混練性が向上し、成形加工性が改良される。また、発泡性及び微分散性に優れ、特に、発泡倍率が高く、発泡セルが均一であり且つ成形外観性に優れる発泡成形品を安定して製造することができる。
上記発泡成形用熱可塑性樹脂組成物〔I〕の混練物を得た後、ダイから押し出すことにより、発泡成形品が製造される。この方法により、発泡倍率を2.2〜25倍という高倍率とすることができ、且つ、表面に、ほとんど破裂せず、緻密なスキン層を備える発泡成形品が得られる。他の成形方法を適用しても同様の発泡成形品を得ることができる。
【0143】
本発明の発泡成形品は、壁、床、枠、家具、化粧シート、間仕切り、ラティス、フェンス、雨樋、サイジングボード、カーポート、断熱材、芯材、代替合板等の住宅・事務所用内外装材;表示板等の土木・建設関連資材;車両用内外装関連資材;容器、トレー等の日用雑貨用品;電気・電子部品;スポーツ用品;玩具;遊戯機等の緩衝材、補強材等として用いることができる。
【0144】
更に、本発明の発泡成形品は、用途によっては、他の成形品、部材等と一体化させ、複合化させてなる物品として、これを用いることができ、上記用途に適用可能である。
【0145】
3.積層品
本発明の積層品は、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた成形部(V)(以下、「発泡成形部(V)」ともいう。)と、他の材料からなる部材(W)とが積層してなることを特徴とする。発泡成形部(V)が表側に配された積層品であってよいし(図1参照)、部材(W)が表側に配された積層品であってもよい(図2参照)。
本発明の積層品は、上記本発明の発泡成形品と同じ用途に好適である。その形状も上記本発明の発泡成形品と同様とすることができる。
【0146】
上記発泡成形部(V)は、発泡セルが均一である。また、上記発泡成形部(V)の密度は、好ましくは40〜500kg/m、より好ましくは50〜400kg/mである。
【0147】
上記部材(W)を構成する他の材料は、構成成分、発泡倍率等異なれば、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物でもよく、特に限定されないが、樹脂(組成物)からなるもの、他の有機材料からなるもの、無機材料からなるもの等が挙げられる。
樹脂(組成物)は、熱可塑性樹脂(組成物)であってよいし、硬化樹脂(組成物)であってもよい。この熱可塑性樹脂(組成物)に含まれる熱可塑性樹脂としては、本発明の積層品の用途等により選択されるが、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物に含まれる成分〔A〕と同じであってよいし、異なってもよい。また、この熱可塑性樹脂(組成物)は、発泡剤を含有してよいし、含有しなくてもよい。
無機材料は、金属、合金、酸化物、炭化物、窒化物、金属塩等が挙げられる。
尚、本発明の積層品において、上記の発泡成形部(V)及び部材(W)の層数は、いずれも、1層でも、2層でも、3層以上でもよい。また、上記発泡成形部(V)は、上記部材(W)の両面に備えてもよい(図3参照)。好ましい他の材料は、熱可塑性樹脂(組成物)である。
【0148】
図1の積層品1aは、部材(W)12の上方に、発泡成形部(V)11が積層されてなり、両者の厚さが同一であることを示す断面図である。発泡成形部(V)11及び部材(W)12の各厚さは、目的、用途等により、選択される。発泡成形部(V)11が部材(W)12より厚くてよいし、その逆でもよい。また、発泡成形部(V)11は、部材(W)12の全面にあってよいし、一部にのみあってもよい。発泡成形部(V)11及び部材(W)12の好ましい厚さは、それぞれ、1〜25mm、及び、0.1〜5mmである。
上記積層品1aの製造方法としては、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて発泡成形部(V)11を形成した後、別途、作製した部材(W)12を配設する方法;上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物と、上記部材(W)12を形成することとなる熱可塑性樹脂(組成物)とを用いて、共押出する方法;予め形成した部材(W)12の表面に、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた発泡成形部(V)11を配設する方法等が挙げられる。
【0149】
また、図2の積層品1bは、発泡成形部(V)11の上方に、部材(W)12が積層されてなることを示す断面図である。部材(W)12は、発泡成形部(V)の全面にあってよいし、一部にのみあってもよい。発泡成形部(V)11及び部材(W)12の各厚さは、目的、用途等により、選択される。発泡成形部(V)11が部材(W)12より厚くてよいし、その逆でもよい。また、図1のように同じであってもよい。更に、積層品として、均一の厚さであってよいし、部分的に異なる厚さであってもよい。例えば、上記の発泡成形部(V)11及び部材(W)12の好ましい厚さは、それぞれ、1〜25mm、及び、0.1〜5mmである。
上記積層品1bの製造方法についても、上記積層品1aの製造方法と同様とすることができる。
【0150】
また、本発明の積層品は、更に、図3のような断面構造を備える積層品1cとすることもできる。即ち、図3の積層品1cは、部材(W)12の両面に発泡成形部(V)11a及び11bを備える。各部材の厚さは、目的、用途等により選択されるが、発泡成形部(V)11a及び11b、部材(W)12の順に、好ましくは、1〜25mm、1〜25mm、及び、0.1〜5mmである。
上記の積層品1cの製造方法としては、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物と、上記部材(W)12を形成することとなる熱可塑性樹脂(組成物)とを用いて、共押出する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0151】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない、尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0152】
1.原料成分
下記の実施例及び比較例において用いる成分を示す。
【0153】
1−1.熱可塑性樹脂A
1−1−1.熱可塑性樹脂(A−1)
アクリロニトリル単位量が21%、及び、スチレン単位量が79%であるアクリロニトリル・スチレン共重合体を用いた。Mwは16万であり、メルトマスフローレート(ISO1133に準拠、温度220℃、荷重98N)は、27g/10分である。
【0154】
1−1−2.熱可塑性樹脂(A−2)
アクリロニトリル単位量が16%、及び、スチレン単位量が84%であるアクリロニトリル・スチレン共重合体を用いた。Mwは15万であり、メルトマスフローレート(ISO1133に準拠、温度220℃、荷重98N)は、30g/10分である。
【0155】
1−1−3.熱可塑性樹脂(A−3)
アクリロニトリル単位量が30%、及び、スチレン単位量が70%であるアクリロニトリル・スチレン共重合体を用いた。Mwは20万であり、メルトマスフローレート(ISO1133に準拠、温度220℃、荷重98N)は、12g/10分である。
【0156】
1−1−4.熱可塑性樹脂(A−4)
以下に示す、ゴム強化スチレン系樹脂40部と、アクリロニトリル・スチレン共重合体10部と、アクリロニトリル・スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体50部とをヘンシェルミキサーで混合した後、日本製鋼所社製二軸押出機「TEX44」(型式名)を用いて240℃で溶融混練して得られたペレットを、熱可塑性樹脂(A−4)として用いた。この熱可塑性樹脂(A−4)のメルトマスフローレート(ISO1133に準拠、温度220℃、荷重98N)は、2g/10分である。
・ゴム強化スチレン系樹脂
ジエン系ゴム質重合体として、重量平均分子量280nm及びトルエン不溶分80%のポリブタジエンゴム粒子を含むラテックスの存在下に、スチレン及びアクリロニトリルを乳化重合して得られた樹脂を用いた。このゴム強化スチレン系樹脂において、ポリブタジエンゴムの含有量は41.5%、スチレン単位量は43.5%、及び、アクリロニトリル単位量は15%である。また、このゴム強化スチレン系樹脂のグラフト率は55%であり、アセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.45dl/gである。
・アクリロニトリル・スチレン共重合体
アクリロニトリル単位量が33%、及び、スチレン単位量が67%である共重合体を用いた。極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.54dl/gである。
・アクリロニトリル・スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体
アクリロニトリル単位量が9%、スチレン単位量が51%、及び、N−フェニルマレイミド単位量が40%である共重合体(商品名「ポリイミレックスPAS−1460」、日本触媒社製)を用いた。極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.52dl/gである。
【0157】
1−1−5.熱可塑性樹脂(A−5)
上記ゴム強化スチレン系樹脂35部と、アクリロニトリル・スチレン共重合体15部と、以下に示すポリカーボネート樹脂50部とをヘンシェルミキサーで混合した後、日本製鋼所社製二軸押出機「TEX44」(型式名)を用いて240℃で溶融混練して得られたペレットを、熱可塑性樹脂(A−5)として用いた。この熱可塑性樹脂(A−5)のメルトマスフローレート(ISO1133に準拠、温度220℃、荷重98N)は、3g/10分である。
・ポリカーボネート樹脂
三菱エンジニアリングプラスチックス社製「NOVAREX 7022PJ」(商品名)を用いた。GPCによる粘度平均分子量は22,000である。
【0158】
1−1−6.熱可塑性樹脂(A−6)
テクノポリマー社製「テクノABS 130」(商品名)を用いた。この熱可塑性樹脂(A−6)のメルトマスフローレート(ISO1133に準拠、温度220℃、荷重98N)は、18g/10分である。
【0159】
1−2.共重合体(超高分子量重合体)B
General Electric Specialty Chemicals社製「ブレンデックス B869」(商品名)を用いた。GPCによるMwは240万である。
【0160】
1−3.物理発泡剤C
ブタン(大気圧における沸点−0.5℃)を用いた。
【0161】
1−4.化学発泡剤D
主成分をアゾジカルボンアミドとする、熱分解型発泡剤である「ビニホールAC#3」(商品名、永和化成工業社製)を用いた。
【0162】
1−5.タルクE
1−5−1.タルク(E−1)
日本タルク社製の微粉タルク「MICRO ACE K−1」(商品名)を用いた。レーザー回折法によるD50は8.0μmである。
【0163】
1−5−2.タルク(E−2)
日本タルク社製の微粉タルク「MICRO ACE SG−200」(商品名)を用いた。レーザー回折法によるD50は3μmである。
【0164】
1−5−3.タルク(E−3)
日本タルク社製の汎用タルク「MS」(商品名)を用いた。レーザー回折法によるD50は14μmである。
【0165】
1−6.展着剤
花王社製ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル「エマルゲン MS−110」(商品名)を用いた。
【0166】
2.組成物〔X〕(物理発泡剤含有マスターバッチ)の製造
製造例1(物理発泡剤含有マスターバッチX−1の製造)
シリンダー温度を170℃〜250℃に設定した、スクリュー径40mm単軸押出機に、上記熱可塑性樹脂(A−1)100部を供給してこれを溶融した。その後、物理発泡剤Cの4.5部を上記押出機後部の注入口から供給し、溶融混練した。
次いで、上記押出機の出口に配設した、5穴(2.5mmφ/穴)のダイを通して、ストランドを押出し、冷却後、切断することで、外径約2mm及び長さ3mmの円柱状の物理発泡剤含有マスターバッチ(X−1)を得た。
【0167】
上記物理発泡剤含有マスターバッチ(X−1)における物理発泡剤含有量及び発泡倍率を以下の方法により測定したところ、物理発泡剤含有マスターバッチ(X−1)の構成は、表1に示されるような結果を得た。
[ブタン含有量測定方法]
物理発泡剤含有マスターバッチ約10gを、200℃のホットプレート上に載置し、5分間加熱し、加熱前後の質量を精秤し、その差をブタン含有量とした。
[発泡倍率]
物理発泡剤含有マスターバッチの外形寸法から求めた、嵩体積、及び、樹脂の比重から、質量計算値W1を算出し、このW1と、質量実測値W2との比を発泡倍率とした。
発泡倍率(倍) = W1/W2
尚、樹脂の比重は、ISO1183に準じて測定されたものであり、熱可塑性樹脂(A−1)、(A−2)及び(A−3)は、いずれも1.08g/cmである。
【0168】
また、上記物理発泡剤含有マスターバッチ(X−1)の成形外観性を目視観察し、下記基準で判定した。その結果を表1に併記した。
○;表面が滑らかであった。
×;表面がスポンジのようになっていた。
【0169】
製造例2〜3(物理発泡剤含有マスターバッチX−2及びX−3の製造)
熱可塑性樹脂(A−2)又は(A−3)と、物理発泡剤Cとを、それぞれ、表1に示す割合で用いた以外は、上記と同様にして物理発泡剤含有マスターバッチ(X−2)及び(X−3)を製造し、各種評価を行った。その結果を表1に示した。
また、物理発泡剤Cを含有しない、熱可塑性樹脂(A−1)のみからなるマスターバッチペレット(X−4)も同様にして製造した(表1参照)。
【0170】
【表1】

【0171】
3.組成物〔Y〕(超高分子量重合体含有マスターバッチ)の製造
製造例4(超高分子量重合体含有マスターバッチY−1の製造)
シリンダー温度を220℃〜280℃に設定した、スクリュー径40mm単軸押出機に、上記熱可塑性樹脂(A−1)65部、超高分子量重合体Bの25部、及び、タルク(E−1)の10部を供給してこれを溶融した。
次いで、上記押出機の出口に配設した、5穴(2.5mmφ/穴)のダイを通して、ストランドを押出し、冷却後、切断することで、外径約2mm及び長さ3mmの円柱状の超高分子量重合体含有マスターバッチ(Y−1)を得た(表2参照)。
【0172】
製造例5(超高分子量重合体含有マスターバッチY−2の製造)
上記タルク(E−1)に代えて、タルク(E−2)を用いた以外は、製造例4と同様にして、超高分子量重合体含有マスターバッチ(Y−2)を得た(表2参照)。
【0173】
製造例6(超高分子量重合体含有マスターバッチY−3の製造)
上記タルク(E−1)に代えて、タルク(E−3)を用いた以外は、製造例4と同様にして、超高分子量重合体含有マスターバッチ(Y−3)を得た(表2参照)。
【0174】
製造例7(超高分子量重合体含有マスターバッチY−4の製造)
上記熱可塑性樹脂(A−1)75部及び超高分子量重合体Bの25部を用いた以外は、製造例4と同様にして、超高分子量重合体含有マスターバッチ(Y−4)を得た(表2参照)。
【0175】
【表2】

【0176】
4.発泡成形用熱可塑性樹脂組成物及び発泡成形品の製造並びに評価
実施例1
物理発泡剤含有マスターバッチ(X−1)20部と、超高分子量重合体含有マスターバッチ(Y−1)15部と、熱可塑性樹脂(A−4)からなるペレット65部と、化学発泡剤Dの0.5部と、展着剤0.1部とを、ヘンシェルミキサーで混合し、発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を得た。その後、スクリューを備える押出機(「FS50−22型」、池貝社製)に投入し、200℃で溶融混練した。次いで、8mmφの丸ダイスに、30mmφ又は23mmφのサイジングダイを配設した出口から排出させ、下記計算方法による発泡倍率を有する発泡成形品を得た(表3参照)。
尚、表3には、本発明に係る成分〔A〕全体としてのメルトマスフローレート(ISO1133に準拠、温度220℃、荷重98N)、Tg及び比重(ISO1133に準拠)と、成分〔A〕及び〔B〕の構成におけるメルトマスフローレート(ISO1133に準拠、温度220℃、荷重98N)とを併記した。
【0177】
[発泡倍率計算方法]
試験片の外形寸法から求めた嵩体積、及び、樹脂の比重から、質量計算値W1を算出し、このW1と、質量実測値W2との比を発泡倍率とした。
発泡倍率(倍) = W1/W2
【0178】
また、得られた発泡成形品について、各種評価を行った。その結果を表3に併記した。
(1)成形外観性
発泡成形品の外観を目視観察し、下記基準により判定した。
◎;歪みのない発泡成形品が得られ、その表面が滑らかであった。
○;歪みのない発泡成形品が得られたが、その表面の一部が毛羽立っていた。
△;わずかに歪みのある発泡成形品が得られ、その表面の一部が毛羽立っていた。
×;歪みのある発泡成形品が得られ、その表面のほぼ全面が毛羽立っていた。
(2)生産安定性
発泡成形品の製造時において、押出機のトルク、線速等の振れ幅をモニターし、下記基準により判定した。
◎;トルク、線速等が安定し、得られた発泡成形品の形状が一定であった。
○;トルク、線速等に若干の振れが発生し、得られた発泡成形品の形状もほぼ一定であった。
△;トルク、線速等に振れが発生し、得られた発泡成形品の形状にばらつきが発生した。
×;トルク、線速等が大きく振れ、得られた発泡成形品の形状のばらつきが激しかった。
(3)耐熱性
上記と同様にして、35mm×8mm×800mmの長尺状発泡成形品を作製して、これを耐熱性評価用の試験片とした。この試験片2を、その両端から170mmの位置で支持されるように、横方向に配置し、長さ方向の中心位置から下方に荷重70gをかけながら、温度70℃の条件下で放置した(図4参照)。24時間経過後、試験片の中心位置におけるたわみ量を測定した。
【0179】
実施例2〜8
表3〜表5に従って、物理発泡剤含有マスターバッチ、超高分子量重合体含有マスターバッチ等を用いた以外は、実施例1と同様にして、発泡成形用熱可塑性樹脂組成物及び発泡成形品を製造し、評価した。その結果を表3〜表5に示した。
【0180】
実施例9
熱可塑性樹脂(A−4)と、共重合体(超高分子量重合体)Bと、物理発泡剤Cと、化学発泡剤Dと、タルクEと、添着剤とを表5に記載の割合で、ヘンシェルミキサーにて混合し、発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を得た。その後、上記押出機「FS50−22型」に投入し、200℃で溶融混練し、原料成分含有熱可塑性樹脂体を得た。この原料成分含有熱可塑性樹脂体を用いて、実施例1と同様にして、発泡成形品の製造及び評価を行った。その結果を表5に示した。
【0181】
比較例1〜8
表6〜表8に従って、物理発泡剤含有マスターバッチ、超高分子量重合体含有マスターバッチ等を用いた以外は、実施例1と同様にして、発泡成形品を製造し、評価した。その結果を表6〜表8に示した。尚、成形外観性又は生産安定性の判定が「×」であった場合には、耐熱性(たわみ量)の評価は行わなかった。
【0182】
【表3】

【0183】
【表4】

【0184】
【表5】

【0185】
【表6】

【0186】
【表7】

【0187】
【表8】

【0188】
実施例1〜9は、本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いた例であり、発泡倍率が2.2倍以上と高く、成形外観性及び耐熱性に優れる発泡成形品を製造することができた。また、その生産安定性にも優れていた。特に、実施例1及び3は、上記性能に優れていた。
一方、比較例1は、成分〔D〕を含有しない組成物を用いた例であり、得られた発泡成形品の成形外観性及び耐熱性に劣っていた。比較例2は、成分〔B〕を含有しない組成物を用いた例であり、得られた発泡成形品の発泡倍率が十分でなく、成形外観性、耐熱性及び生産安定性に劣っていた。比較例3は、成分〔B〕を過剰に含有する組成物を用いた例であり、得られた発泡成形品の成形外観性、耐熱性及び生産安定性に劣っていた。比較例4は、メルトマスフローレートが高すぎる成分〔A〕を含有する組成物を用いた例であり、得られた発泡成形品の耐熱性が劣っていた。比較例5は、成分〔B〕を過剰に含有する組成物を用いた例であり、得られた発泡成形品の耐熱性及び生産安定性に劣っていた。比較例6は、成分〔C〕を含有しない組成物を用いた例であり、得られた発泡成形品の発泡倍率が十分でなく、成形外観性、耐熱性及び生産安定性に劣っていた。比較例7は、成分〔D〕を過剰に含有する組成物を用いた例であり、得られた発泡成形品の成形外観性、耐熱性及び生産安定性に劣っていた。また、比較例8は、成分〔E〕を含有しない組成物を用いた例であり、得られた発泡成形品の成形外観性及び耐熱性に劣っていた。
【0189】
5.積層品の製造
実施例10
[1]実施例1により得られた発泡成形用熱可塑性樹脂組成物と、[2]熱可塑性樹脂(A−8)とを、それぞれ、表材用及び基材用として用い、下記の共押出条件で、1.5mm及び3.5mmの厚さを有する積層品(表材は発泡成形部)を得た。
<押出条件>
[1]表材層;20mm押出機、160℃(押出温度)、40rpm(スクリュー回転数)、0.8m/分(引取速度)
[2]基材層;40mm押出機、190℃(押出温度)、20rpm(スクリュー回転数)、0.8m/分(引取速度)
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物は、押出成形等により、壁、床、枠、家具、化粧シート、間仕切り、ラティス、フェンス、雨樋、サイジングボード、カーポート、断熱材、芯材、代替合板等の住宅・事務所用内外装材;表示板等の土木・建設関連資材;車両用内外装関連資材;容器、トレー等の日用雑貨用品;電気・電子部品;スポーツ用品;玩具;遊戯機等の緩衝材、補強材等に好適な発泡成形品の形成に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】本発明の積層品の断面構造の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の積層品の断面構造の他の例を示す概略図である。
【図3】本発明の積層品の断面構造の他の例を示す概略図である。
【図4】実施例において、耐熱性の評価方法を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0192】
1a,1b及び1c;積層品
11,11a及び11b;成形部(V)
12;部材(W)
2;発泡成形品(試験片)
3;おもり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
〔A〕メルトマスフローレートが、0.1〜15g/10分である熱可塑性樹脂(但し、下記(共)重合体〔B〕を除く。)、
〔B〕重量平均分子量が800,000〜10,000,000である(共)重合体、
〔C〕物理発泡剤、
〔D〕化学発泡剤、及び、
〔E〕タルク
を含有する発泡成形用熱可塑性樹脂組成物であって、
上記(共)重合体〔B〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、0.1〜8質量部であり、
上記物理発泡剤〔C〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、0.1〜5質量部であり、
上記化学発泡剤〔D〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、0.05〜0.8質量部であり、且つ、
上記タルク〔E〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、0.1〜5質量部であることを特徴とする発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
上記熱可塑性樹脂〔A〕が、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位を有するスチレン系樹脂を含み、該スチレン系樹脂の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量%に対して、50〜100質量%である請求項1に記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
上記スチレン系樹脂が、芳香族ビニル系化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を用いてなるスチレン系共重合体、又は、ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化スチレン系樹脂を含む請求項2に記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
上記(共)重合体〔B〕が、芳香族ビニル化合物から誘導された構造単位を有するスチレン系共重合体であり、該スチレン系共重合体の極限粘度(ジメチルホルムアミド中、30℃)が2〜10dl/gである請求項1乃至3のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
上記物理発泡剤〔C〕が、沸点が−10℃〜55℃である化合物を含む請求項1乃至4のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
上記タルク〔E〕の平均粒子径が0.5〜50μmである請求項1乃至5のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
上記物理発泡剤〔C〕及び上記化学発泡剤〔D〕の含有割合が、両者の合計を100質量%としたときに、それぞれ、50〜90質量%及び10〜50質量%である請求項1乃至6のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物であって、
上記熱可塑性樹脂〔A〕の一部である熱可塑性樹脂(Ax1)、及び、上記物理発泡剤〔C〕を含有し、該物理発泡剤〔C〕の含有割合が、上記熱可塑性樹脂(Ax1)100質量部に対して2.5〜10質量部である、物理発泡剤含有マスターバッチと、
上記熱可塑性樹脂〔A〕の一部である熱可塑性樹脂(Ay1)、上記(共)重合体〔B〕、及び、上記タルク〔E〕を含有し、該(共)重合体〔B〕の含有割合が、上記熱可塑性樹脂(Ay1)100質量部に対して2.5〜40質量部であり、該タルク〔E〕の含有割合が、上記熱可塑性樹脂(Ay1)100質量部に対して2.5〜40質量部であり、且つ、上記物理発泡剤〔C〕を含有しない共重合体含有マスターバッチと、
上記化学発泡剤〔D〕と、
上記熱可塑性樹脂〔A〕の一部である熱可塑性樹脂(Az1)と、
が混合されてなり、上記熱可塑性樹脂〔A〕が、上記熱可塑性樹脂(Ax1)、上記熱可塑性樹脂(Ay1)及び上記熱可塑性樹脂(Az1)からなることを特徴とする発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られたことを特徴とする発泡成形品。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた成形部(V)と、他の材料からなる部材(W)とが積層してなることを特徴とする積層品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−116527(P2010−116527A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292690(P2008−292690)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】