説明

発泡成形部材の取付構造

【課題】クリップの個数が少なくとも、発泡成形部材を精度よく被取付部材に取り付けることが可能であり、且つ振動等によりクリップに過大な負荷が加えられることを防止することが可能な発泡成形部材の取付構造を提供する。
【解決手段】EA材1は、EA材本体2と、該EA材本体2を車体板金10に取り付けるためのクリップ20とを備えている。クリップ20は、EA材本体2と一体成形により一体化されている。車体板金10のEA材取付領域には、クリップ20が係止されるクリップ係止孔11が設けられている。車体板金10のEA材取付領域に、それぞれ、EA材1の位置決め手段としての凸部12が設けられている。車両走行時の振動等によりEA材本体2がクリップ20を回動中心として回動しようとしても、凸部12がEA材本体2の側面に当接して該EA材本体2の回動を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形部材の被取付部材への取付構造に係り、特に、該発泡成形部材は、発泡成形体と、該発泡成形体を被取付部材に取り付けるためのクリップとを備えており、このクリップは発泡成形体と一体成形により一体化されており、このクリップが、被取付部材に設けられた被係止部に係合することにより、発泡成形部材が被取付部材に取り付けられている発泡成形部材の取付構造に関する。特に、本発明は、衝撃エネルギー吸収材の車体板金への取付構造として好適な発泡成形部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアの裏側(車内側)には、車両の側面衝突時の衝撃エネルギー吸収(Energy Absorption:EA)のために、硬質ウレタンフォームよりなる衝撃エネルギー吸収材(以下、EA材と略すことがある。)が取り付けられている。このEA材を車体板金に取り付ける方法として、特開2007−161109号には、EA材本体にクリップを設けておき、このクリップを車体板金に設けられたクリップ係止孔に係合させることにより、EA材を車体板金に取り付けることが記載されている。同号では、このクリップは、EA材本体と一体成形により一体化されている。
【0003】
同号のクリップは、EA材本体の外面から突出した起立部と、該起立部の側面から側方へ張り出しており、この張り出し方向へ弾性的に進退可能な係止片とを備えた係止体を有している。起立体の基端側は、EA材本体中に埋設されたアンカーに連なっている。このクリップ付き硬質ウレタンフォーム製EA材を金型で発泡成形する場合には、金型内面に設けられたクリップ保持孔にクリップの係止体を挿入し、その基端側のアンカーがキャビティ内に露出するようにクリップを金型内面にセットしておいて発泡成形作業を行う。EA材を車体板金に取り付ける場合、車体板金のクリップ係止孔にクリップの係止体を押し込み、この係止体の係止片をクリップ係止孔の縁部に係合させる。これにより、クリップがクリップ係止孔内に係止され、このクリップを介してEA材が車体板金に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−161109
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、上記特開2007−161109号のようにEA材本体と一体化されたクリップによりEA材を車体板金に取り付けるように構成された取付構造にあっては、車両走行時の振動等によりEA材がクリップを支点として回動することを防止したり、この振動等によりクリップに加えられる負荷を軽減するために、少なくとも2個のクリップをEA材に設けてそれぞれ車体板金のクリップ係止孔に係合させるようにしている。これに対し、近年、EA材の製造コストの低減や、EA材の製造工程の簡易化等の観点から、できるだけ少ない個数のクリップにて、EA材を精度よく車体板金に取り付けることが可能であり、且つ振動等によりクリップに過度の負荷が加えられることを防止することが可能なEA材取付構造が望まれている。
【0006】
本発明は、クリップの個数が少なくとも、発泡成形部材を精度よく被取付部材に取り付けることが可能であり、且つ振動等によりクリップに過大な負荷が加えられることを防止することが可能な発泡成形部材の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(請求項1)の発泡成形部材の取付構造は、発泡成形部材を被取付部材に取り付けた発泡成形部材の取付構造であって、該発泡成形部材は、発泡成形体と、該発泡成形体と一体成形により一体化された、該発泡成形体を該被取付部材に取り付けるためのクリップとを備えており、該クリップが、該被取付部材に設けられた被係止部に係合することにより、該発泡成形部材が該被取付部材に取り付けられている発泡成形部材の取付構造において、該被取付部材に、該発泡成形体に当接して該発泡成形体の移動を防止する位置決め手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発泡成形部材の取付構造は、請求項1において、前記発泡成形部材は、前記クリップを1個のみ備えていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発泡成形部材の取付構造は、請求項1又は2において、前記位置決め手段は、前記被取付部材から突設された凸部よりなることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発泡成形部材の取付構造は、請求項3において、前記凸部は、前記発泡成形体の該凸部との対峙面に沿って延在していることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の発泡成形部材の取付構造は、請求項3又は4において、前記発泡成形体の前記被取付部材との対峙面に凹部が設けられており、該凹部に前記凸部が係合していることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6の発泡成形部材の取付構造は、請求項3ないし5のいずれか1項において、前記凸部の前記発泡成形体との対峙面の少なくとも基端側は、該基端側ほど該発泡成形体側となるように湾曲した湾曲面となっており、この湾曲面に該発泡成形体が当接していることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7の発泡成形部材の取付構造は、請求項3ないし6のいずれか1項において、前記被取付部材は板状材料よりなり、前記凸部は、該板状材料の一部を曲げ加工又は押し出し加工することにより形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項8の発泡成形部材の取付構造は、請求項1ないし7のいずれか1項において、前記発泡成形部材は衝撃エネルギー吸収材であり、前記被取付部材は車体板金であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明(請求項1)の発泡成形部材の取付構造にあっては、被取付部材に、発泡成形体に当接して該発泡成形体の移動を防止する位置決め手段が設けられている。そのため、振動等により発泡成形体がクリップを回動中心として回動しようとしても、この位置決め手段によって該発泡成形体の回動が阻止される。これにより、発泡成形部材に設けられるクリップの個数を少なくしても、発泡成形部材を精度よく被取付部材に取り付けることができる。また、発泡成形体は、このクリップと位置決め手段とによって支持されるため、発泡成形体からこれらに加えられる荷重が分散され、振動等によりクリップに加えられる負荷も軽減される。
【0016】
以上の通り、本発明では、振動等による発泡成形体の回動が位置決め手段によって阻止され、且つ振動等によりクリップに加えられる負荷も軽減されるため、請求項2の通り、発泡成形部材にクリップを1個だけ設けた場合でも、精度よく且つしっかりと発泡成形部材を被取付部材に取り付けることができる。
【0017】
請求項3の通り、被取付部材から凸部を突設し、これを位置決め手段とすることにより、位置決め手段を簡易な構成とすることができる。
【0018】
請求項4の通り、この凸部を、発泡成形体の該凸部との対峙面に沿って延在するように形成することにより、この凸部が発泡成形体に当接したときに、この凸部から発泡成形体に局所的に過大な負荷が加えられることが防止される。これにより、凸部が繰り返し発泡成形体に当接しても、発泡成形体の変形や破損が防止されるため、発泡成形体の耐久性が高いものとなる。また、長期にわたって発泡成形体のがた付きも防止される。
【0019】
請求項5のように、発泡成形体の被取付部材との対峙面に凹部を設け、この凹部に凸部を係合させることにより、発泡成形体の位置決め精度が向上する。
【0020】
請求項6の通り、凸部の発泡成形体との対峙面の少なくとも基端側を、該基端側ほど発泡成形体側となるように湾曲した湾曲面とし、この湾曲面に発泡成形体を当接させることが好ましい。これにより、発泡成形体が凸部に当接しても、凸部から発泡成形体に局所的に過大な負荷が加えられることが防止される。これにより、発泡成形体が振動等により繰り返し凸部に当接しても、発泡成形体の変形や破損が防止されるため、発泡成形体の耐久性が高いものとなる。また、長期にわたって発泡成形体のがた付きも防止される。
【0021】
請求項7のように、被取付部材が板状材料よりなる場合、この板状材料の一部を曲げ加工又は押し出し加工することによって凸部を形成するのが好ましい。このようにすることにより、容易に且つ簡易な加工設備にて被取付部材に凸部を形成することができる。
【0022】
請求項8の通り、本発明は、衝撃エネルギー吸収材の車体板金への取付構造に好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態に係る発泡成形部材の取付構造の分解斜視図である。
【図2】図1の発泡成形部材の取付構造の平面図である。
【図3】(a)図は図2のIII−III線に沿う断面図、(b)図は(a)図のB部分の拡大図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図1の発泡成形部材の取付構造において用いられているクリップの斜視図である。
【図6】図5のクリップの正面図である。
【図7】(a)図は図5のクリップの平面図、(b)図は図5のクリップの側面図である。
【図8】図7(a)のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】第2の実施の形態に係る発泡成形部材の取付構造の分解斜視図である。
【図10】図9の発泡成形部材の取付構造の平面図である。
【図11】(a)図は図9のXI−XI線に沿う断面図、(b)図は(a)図のB部分の拡大図である。
【図12】第3の実施の形態に係る発泡成形部材の取付構造の分解斜視図である。
【図13】(a)図は図12の発泡成形部材の取付構造の断面図、(b)図は(a)図のB部分の拡大図である。
【図14】第4の実施の形態に係る発泡成形部材の取付構造の分解斜視図である。
【図15】図14の発泡成形部材の底面側からの斜視図である。
【図16】図14の発泡成形部材の取付構造の平面図である。
【図17】(a)図は図16のXVII−XVII線に沿う断面図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図である。
【図18】第5の実施の形態に係る発泡成形部材の取付構造の分解斜視図である。
【図19】(a)図は図18の発泡成形部材の取付構造の断面図、(b)図は(a)図のB部分の拡大図である。
【図20】図14の凸部12Bの他の形状例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態では、EA材の車体板金への取付構造が例示されているが、本発明は、これ以外の発泡成形部材の被取付部材への取付構造にも適用可能である。
【0025】
[第1の実施の形態]
第1図は、第1の実施の形態に係る発泡成形部材の取付構造としてのEA材1の車体板金10への取付構造の分解斜視図、第2図はこの取付構造の平面図、第3図(a)は第2図のIII−III線に沿う断面図、第3図(b)は第3図(a)のB部分の拡大図、第4図は第2図のIV−IV線に沿う断面図、第5図はこの実施の形態において用いられているクリップの斜視図、第6図はこのクリップの正面図、第7図(a)はこのクリップの平面図、第7図(b)はこのクリップの側面図、第8図は第7図(a)のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【0026】
EA材1は、硬質ウレタンフォーム等の発泡合成樹脂成形体よりなるEA材本体2と、該EA材本体2を車体板金10に取り付けるためのクリップ20とを備えている。クリップ20は、EA材本体2と一体成形により一体化されている。この実施の形態では、クリップ20は、EA材1に1個だけ設けられている。なお、本発明の発泡成形体は、硬質ウレタン以外の材料により構成されてもよい。
【0027】
この実施の形態では、第1,2図の通り、EA材本体2は略切頭角錐形状となっている。このEA材本体2の底面(車体板金10との対峙面)にクリップ20が設けられている。クリップ20は、EA材本体2を平面視した状態において、このEA材本体2の底面の重心付近(好ましくは、この重心から半径70mm以下特に30mm以下の範囲)に配置されていることが好ましい。この実施の形態では、第2図の通り、EA材本体2を平面視した状態において、このEA材本体2の底面は略長方形状となっており、この長方形の中央付近にクリップ20が配置されている。このクリップ20の詳細な構成については後述する。なお、EA材本体2の形状は図示の形状に限定されない。
【0028】
第1,4図の通り、車体板金10のEA材取付領域には、クリップ20が係止される被係止部としてのクリップ係止孔11が設けられている。このクリップ係止孔11は、車体板金10をその厚さ方向に貫通している。この実施の形態では、車体板金10のEA材取付領域の中央部に1個だけクリップ係止孔11が設けられている。なお、第1図においては、該車体板金10は、EA材本体2と略同等の幅の帯板状となっているが、車体板金10の形状はこれに限定されない。また、この実施の形態では、該クリップ係止孔11は略円形の開口よりなるが、クリップ係止孔11の形状はこれに限定されない。
【0029】
この実施の形態では、車体板金10の該EA材取付領域の両側に、それぞれ、EA材1の位置決め手段としての凸部12が設けられている。凸部12同士の間隔は、これらを結ぶ方向(以下、EA材本体2の底面の幅方向という。)におけるEA材本体2の底面の幅と同等かそれよりも若干(好ましくは0.1〜4mm特に0.1〜2mm程度)大きなものとなっている。この実施の形態では、各凸部12は、車体板金10の両側の側縁に形成された舌片状部分をそれぞれその基端付近から該車体板金10のEA材取付面側(以下、前面側という。)に折り曲げ加工することにより形成されている。ただし、各凸部12の形成方法はこれに限定されない。第2図及び第3図(a)の通り、クリップ20をクリップ係止孔11に挿入してEA材1を車体板金10のEA材取付領域に設置した状態にあっては、EA材本体2の対向する1対の側面にそれぞれ各凸部12が対峙する。第2図の通り、車体板金10を平面視した状態において、各凸部12のEA材本体2との対峙面は、各々が対峙するEA材本体2の各側面に沿ってこれと略平行に延在している。
【0030】
なお、第2図の通り、車体板金10を平面視した状態において、各凸部12のEA材本体2との対峙面の幅Wは3mm以上特に10mm以上であることが好ましい。この幅Wが3mmよりも小さいと、車両走行時の振動等によりEA材本体2が各凸部12に当接したときに、各凸部12からEA材本体2に局所的に過大な負荷が加えられるおそれがある。この幅Wの上限に特に制限はなく、この幅Wは、各凸部12が対峙するEA材本体2の各側面の幅Wと同等かそれよりも大きくてもよい。この実施の形態では、第2図の通り、車体板金10を平面視した状態において、各凸部12は、各々が対峙するEA材本体2の各側面の幅方向の中間よりも一端側に配設されているが、各凸部12の配置はこれに限定されるものではない。例えば、各凸部12は、各々が対峙するEA材本体2の各側面の幅方向の中間付近に配設されてもよい。あるいは、前述のように各凸部12の幅WをEA材本体2の各側面の幅Wと同等以上とし、EA材本体2の各側面の幅方向の略全体にわたって各凸部12が対峙するように構成してもよい。この実施の形態では、凸部12同士は、EA材本体2を挟んで互いに正対するように配設されているが、正対していなくてもよい。
【0031】
第3図(b)の通り、各凸部12のEA材本体2との対峙面の少なくとも基端側は、車体板金10の前面に接近するほど該EA材本体2側となるように湾曲して該車体板金10の前面に滑らかに連なる湾曲面となっている。この凸部12の基端側の湾曲面に、EA材本体2の底面と側面との凸角部が当接している。この凸部12の基端側の湾曲面の曲率半径R(第3図(b))は、2〜50mm特に10〜20mmであることが好ましい。車体板金10の前面からの各凸部12の突出高さは、5〜50mm特に10〜30mmであることが好ましい。
【0032】
各凸部12は、各々の先端側(車体板金10の前面からの突出方向の先端側。以下、同様。)の板金の末端部分がEA材本体2に接触しないように形成されていることが好ましい。仮に各凸部12の先端側の板金の末端部分がEA材本体2の外面に接触すると、この末端部分のエッジ(角縁)によってEA材本体2の外面が削られてEA材本体2が変形又は破損するおそれがある。特にEA材本体2が硬質ウレタンよりなる場合には、この破損が生じ易い。この実施の形態では、第3図(a),(b)の通り、各凸部12は車体板金10の前面に対し略直角に起立しているが、これらと対峙するEA材本体2の各側面は、上部側ほど各凸部12から離隔するように傾いているので、各凸部12の先端側の板金の末端部分はEA材本体2の外面に接触しない。例えば仮に、各凸部12に対峙するEA材本体2の各側面が車体板金10の前面に対し略直角となっている場合には、各凸部12を先端側ほどEA材本体2から離隔するように車体板金10の前面に対し斜めに起立させるか、又は各凸部12の先端側をEA材本体2と反対側へ湾曲させてEA材本体2の外面に接触しないようにすることが好ましい。
【0033】
次に、第4〜8図を参照して、前記クリップ20の構成について説明する。この実施の形態では、クリップ20として、前述の特開2007−161109号に開示されたものと同様のものを用いている。
【0034】
このクリップ20は、合成樹脂の一体成形品よりなるものである。第4,5図の通り、このクリップ20は、EA材本体2の底面に沿って配置されるフランジ21と、該フランジ21からEA材本体2側に突設された軸部22と、該軸部22の先端から拡開しており、EA材本体2中に埋設されたアンカー23と、このアンカー23に設けられた切欠部24と、該フランジ21から該軸部22と反対側に突設された係止体30とを有している。
【0035】
この係止体30は、前記フランジ21から起立する円筒状の起立体31と、該起立体31の側面から側方へ張り出しており、この張り出し方向へ弾性的に進退可能な係止片32とを有する。
【0036】
この係止片32は、起立体31の起立方向と平行方向に延在している。この係止片32の延在方向の途中部分が最も側方に張り出した最凸部40となっており、該最凸部40よりも起立体31の先端側は、該先端側ほど張出方向の高さが小さくなる第1の斜面41となっており、該最凸部40よりもフランジ21側は、該フランジ21側ほど張出方向の高さが小さくなる第2の斜面42となっている。
【0037】
第1の斜面41と起立体31の筒軸心線方向との交叉角度は15〜25゜程度が好適であり、第2の斜面42と起立体31の筒軸心線方向との交叉角度は20〜30゜程度が好適である。
【0038】
係止片32の最もフランジ21側は、該フランジ21と平行な端面32eとなっている。この端面32eとフランジ21との距離(間隔)は1〜5mm程度が好適である。
【0039】
筒状の起立体31の側面に筒軸心線方向と平行方向に延在する2個の開口33が設けられている。各係止片32は、該開口33,33同士の縁部のうちフランジ21と反対側部分に対し弾性的に連なっている。
【0040】
この実施の形態では、起立体32に、直径方向に対峙して2個の開口33及び係止片32が設けられているが、起立体31の周方向に間隔をあけて3個以上の開口33及び係止片32が設けられてもよい。係止片32の数は2〜4程度が実用的である。
【0041】
起立体31の先端は、テーパ状に窄まっている。この実施の形態では、筒状起立体31は、外周面が円筒形であるが、内孔は十字形であるため、起立体31の先端からは4個の突起35が突出している。
【0042】
第4図の通り、このクリップ20は、フランジ21がEA材本体2の底面に沿って配置され、係止体30がEA材本体2から突出するように、軸部22及びアンカー23がEA材本体2中に埋設されている。
【0043】
詳しい図示は省略するが、EA材本体2を金型で発泡成形する場合、金型内面に設けられたクリップ保持孔にクリップ20の係止体30を挿入し、フランジ21が金型内面に重なり、軸部22及びアンカー23がキャビティ内に露出するようにクリップを金型内面にセットしておき、発泡成形作業を行う。これにより、EA材本体2と、該EA材本体2と一体化されたクリップ20とを備えたEA材1が製造される。
【0044】
このクリップ20のアンカー23には切欠部24が設けられているので、ウレタン等の樹脂がフランジ21とアンカー23との間に十分に入り込み、クリップ20がEA材としっかりと一体化する。
【0045】
このEA材1を車体板金10に取り付けるに当っては、EA材本体2を凸部12同士の間に配置し、クリップ20の起立体31の先端側をクリップ係止孔11に入り込ませてEA材本体2を車体板金10に押し付ける。なお、この起立体31は、先端がテーパ状に窄まっており、且つこの先端から突起35が突出しているので、起立体31をクリップ係止孔11内に容易に挿入することができる。また、この突起35によりクリップ係止孔11を探ることができるので、メクラ作業においても迅速にクリップ係止孔11を探し当てることができ、作業性が高い。
【0046】
起立体31をクリップ係止孔11に挿入すると、クリップ20の各係止片32の第1の斜面41がクリップ係止孔11の内周縁に当る。そして、起立体31がクリップ係止孔11に押し込まれるのに伴い、各係止片32が起立体31の縮径方向に後退してクリップ係止孔11内を通過する。最凸部40がクリップ係止孔11内を通過すると、係止片32が弾性的に元の形状に戻ろうとして起立体31の拡径方向に広がり出すため、第2の斜面42がクリップ係止孔11のEA材本体2と反対側の縁部に係合する。これにより、クリップ20がクリップ係止孔11内に係止され、EA材1がこのクリップ20を介して車体板金10に取り付けられる。
【0047】
この際、係止片32が弾性的に起立体31の拡径方向に広がり出そうとする力により、第2の斜面42がクリップ係止孔11のEA材本体2と反対側の縁部に押し付けられる。この第2の斜面42は、EA材本体2側ほど張出方向の高さが小さくなるように傾斜しているので、クリップ20には、クリップ係止孔11からEA材本体2と反対側へ抜け出そうとする力が作用する。これにより、EA材本体2がこのクリップ20によって車体板金10側へ引き付けられ、EA材本体2が車体板金10の前面に密着するようになる。また、このように係止片32の最凸部40よりもEA材本体2側が、該EA材本体2側ほど張出方向の高さが小さくなるように傾斜した第2の斜面42となっていることにより、車体板金10の厚さが比較的小さい場合でも、また車体板金10の厚さが比較的大きい場合でも、クリップ係止孔11のEA材本体2と反対側の縁部が第2の斜面42に当る限り、EA材1は車体板金10にしっかりと保持される。
【0048】
このEA材1の車体板金10への取付構造にあっては、EA材本体2は、1個のクリップ20のみによって車体板金10に取り付けられているが、車体板金10から突設された1対の凸部12が、EA材本体2の対向する1対の側面にそれぞれ対峙しているため、車両走行時の振動等によりEA材本体2がクリップ20を回動中心として回動しようとしても、各凸部12がEA材本体2の側面に当接して該EA材本体2の回動を阻止する。これにより、EA材1にクリップ20が1個しか設けられていなくても、EA材本体2を精度よく車体板金10に取り付けることができる。また、EA材本体2はクリップ20と各凸部12とによって支持されているため、EA材本体2からこれらに加えられる荷重が分散され、振動等によりクリップ20に加えられる負荷も軽減される。
【0049】
上記の通り、このEA材取付構造にあっては、EA材本体2を車体板金10に取り付けるためのクリップ20が1個で足り、クリップ20を複数個設ける必要がない。これにより、EA材1の製造コストの低減及び製造工程の簡易化を図ることが可能となる。
【0050】
この実施の形態では、各凸部12のEA材本体2との対峙面の基端側は、車体板金10の前面に接近するほど該EA材本体2側となるように湾曲して該車体板金10の前面に滑らかに連なる湾曲面となっており、この湾曲面にEA材本体2の底面と側面との凸角部が当接している。また、各凸部12は、各々の先端側の板金の末端部分がEA材本体2に接触しないように形成されている。そのため、EA材本体2が各凸部12に当接しても、各凸部12からEA材本体2に局所的に過大な負荷が加えられることが防止される。これにより、車両走行時の振動等によりEA材本体2が繰り返し各凸部12に当接しても、EA材本体2の変形や破損が防止されるため、EA材本体2の耐久性が高いものとなる。また、長期にわたってEA材本体2のがた付きも防止される。
【0051】
なお、このように各凸部12のEA材本体2との対峙面の基端側が車体板金10の前面に滑らかに連なる湾曲面となるように各凸部12を形成することにより、例えば各凸部12のEA材本体2との対峙面の基端側が車体板金10の前面と直角に交わるように各凸部12を形成する場合に比べて、加工精度が緩和されると共に、より簡易な加工方法により各凸部12Aを形成することができるため、この凸部12Aを形成するための加工作業の容易化及び加工設備の簡易化を図ることが可能である。また、この実施の形態では、車体板金10の両側の側縁にそれぞれ舌片状部分を形成し、これらを該車体板金10の前面側にそれぞれ折り曲げ加工することにより各凸部12を形成しているので、プレス成形等により車体板金10を成形する際に、各凸部12も同時に(即ち1工程にて)形成することができ、この凸部12を有する車体板金10の製造作業を容易化することが可能である。
【0052】
このEA材取付構造にあっては、車体板金10にEA材本体2の位置決め用の凸部12が設けられているが、これとは逆に、EA材本体2に凸部12を設け、このEA材本体2の凸部12を車体板金10に係合させてEA材本体2の位置決めを行うことも考えられる。しかしながら、一般的に、EA材本体2を構成する硬質ウレタンフォーム等の発泡合成樹脂は、車体板金10に比べて脆い材質であるため、凸部12をEA材本体2に設けて車体板金10に係合させた場合には、この凸部12は、車体板金10との当接により摩耗したり破損したりし易く、耐久性に乏しいものとなる。よって、凸部12は車体板金10に設けられることが望ましい。
【0053】
[第2の実施の形態]
第9図は、第2の実施の形態に係る発泡成形部材の取付構造としてのEA材1の車体板金10への取付構造の分解斜視図、第10図はこの取付構造の平面図、第11図(a)は第9図のXI−XI線に沿う断面図、第11図(b)は第11図(a)のB部分の拡大図である。
【0054】
前述の第1の実施の形態における凸部12は、車体板金10の両側の側縁に形成された舌片状部分をそれぞれ該車体板金10の前面側に折り曲げ加工することにより形成されているが、この実施の形態における凸部12Aは、車体板金10のEA材取付領域の両側部分をそれぞれプレス成形等の押し出し加工によって該車体板金10の前面側へ膨出させることにより形成されている。各凸部12Aは、車体板金10の両側の側縁からそれぞれ離隔した位置に形成されている。
【0055】
この実施の形態でも、凸部12A同士は、これらを結ぶ方向におけるEA材本体2の底面の幅と同等かそれよりも若干大きな間隔をあけて配設されている。この実施の形態では、各凸部12Aは、各々が対峙するEA材本体2の各側面と略平行方向に延在した略直方体形状となっている。この実施の形態でも、第11図(b)の通り、各凸部12AのEA材本体2との対峙面の基端側は、車体板金10の前面に接近するほど該EA材本体2側となるように湾曲して該車体板金10の前面に滑らかに連なる湾曲面となっており、この湾曲面にEA材本体2の底面と側面との凸角部が当接している。この凸部12Aの基端側の湾曲面の曲率半径R(第11図(b))は、2〜50mm特に10〜20mmであることが好ましい。車体板金10の前面からの各凸部12Aの突出高さは、5〜50mm特に10〜30mmであることが好ましい。
【0056】
この実施の形態では、各凸部12AのEA材本体2との対峙面の先端側は、該先端側ほどEA材本体2から離反するように湾曲して各凸部12Aの先端面に滑らかに連なる湾曲面となっている。この凸部12Aの先端側の湾曲面の曲率半径R’(第11図(b))は、2〜50mm特に5〜30mmであることが好ましい。
【0057】
この実施の形態のその他の構成は、前述の第1の実施の形態と同様であり、第9〜11図において第1〜8図と同一符号は同一部分を示している。上記以外の各凸部12Aの好ましい諸元値も、第1の実施の形態における各凸部12と同様である。
【0058】
この実施の形態にあっても、EA材本体2は、1個のクリップ20のみによって車体板金10に取り付けられているが、車体板金10から突設された1対の凸部12Aが、EA材本体2の対向する1対の側面にそれぞれ対峙しているため、車両走行時の振動等によりEA材本体2がクリップ20を回動中心として回動しようとしても、各凸部12AがEA材本体2の側面に当接して該EA材本体2の回動を阻止する。これにより、EA材1にクリップ20が1個しか設けられていなくても、EA材本体2を精度よく車体板金10に取り付けることができる。また、EA材本体2がクリップ20と各凸部12Aとによって支持されているため、EA材本体2からこれらに加えられる荷重が分散され、振動等によりクリップ20に加えられる負荷も軽減される。従って、この実施の形態にあっても、EA材本体2を車体板金10に取り付けるためのクリップ20が1個で足り、クリップ20を複数個設ける必要がない。これにより、EA材1の製造コストの低減及び製造工程の簡易化を図ることが可能である。
【0059】
この実施の形態でも、各凸部12AのEA材本体2との対峙面の基端側は、車体板金10の前面に接近するほど該EA材本体2側となるように湾曲して該車体板金10の前面に滑らかに連なる湾曲面となっており、この湾曲面にEA材本体2の底面と側面との凸角部が当接している。また、この実施の形態では、各凸部12Aは、車体板金10のうち、その両側の側縁から離隔した部分を押し出し加工によって該車体板金10の前面側へ膨出させることにより形成されているので、各凸部12AのEA材本体2との対峙面には、板金の末端部分が存在しない。さらに、この実施の形態では、各凸部12AのEA材本体2との対峙面の先端側は、該先端側ほどEA材本体2から離反するように湾曲した湾曲面となっている。そのため、車両走行時の振動等によりEA材本体2が各凸部12Aに当接しても、各凸部12AからEA材本体2に局所的に過大な負荷が加えられることが防止される。これにより、EA材本体2が繰り返し各凸部12Aに当接しても、EA材本体2の変形や破損が防止されるため、EA材本体2の耐久性が高いものとなる。また、長期にわたってEA材本体2のがた付きも防止される。
【0060】
なお、このように、各凸部12AのEA材本体2との対峙面の基端側が車体板金10の前面に滑らかに連なる湾曲面となり、且つこの対峙面の先端側が各凸部12Aの先端面に滑らかに連なる湾曲面となるように各凸部12Aを形成することにより、例えばこれらの面がそれぞれ直角に交わるように各凸部12Aを形成する場合に比べて、加工精度が緩和されると共に、より簡易な加工方法により各凸部12Aを形成することができるため、この凸部12Aを形成するための加工作業の容易化及び加工設備の簡易化を図ることが可能である。また、実施の形態では、車体板金10をプレス成形等により押し出し加工することによって各凸部12Aを形成しているので、プレス成形等により車体板金10を成形する際に、各凸部12Aも同時に(即ち1工程にて)形成することができ、この凸部12Aを有する車体板金10の製造作業を容易化することが可能である。
【0061】
[第3の実施の形態]
第12図は、第3の実施の形態に係る発泡成形部材の取付構造としてのEA材1の車体板金10への取付構造の分解斜視図、第13図(a)はこの取付部材の第11図(a)と同様部分の断面図、第13図(b)は第13図(a)のB部分の拡大図である。
【0062】
この実施の形態では、凸部12A同士の間隔は、これらを結ぶ方向におけるEA材本体2の底面の幅よりも小さなものとなっており、EA材本体2の底面の該幅方向の両端側には、各凸部12Aをそれぞれ受け入れる1対の凹部3が形成されている。この実施の形態では、各凹部3は、EA材本体2の底面と、各凸部12Aに対峙する各側面との凸角部を部分的に切り欠くようにして形成されている。第13図(a),(b)の通り、各凹部3の内面形状は、各凸部12AのEA材本体2側の外面形状と略合致する形状となっている。即ち、この実施の形態では、EA材1を車体板金10に取り付けた状態にあっては、各凸部12AがEA材本体2の各凹部3に係合し、各凸部12Aが各凹部3の内面に対峙する。
【0063】
この実施の形態のその他の構成は、前述の第2の実施の形態と同様であり、第12,13図において第9〜11図と同一符号は同一部分を示している。
【0064】
この実施の形態にあっては、各凸部12Aが、EA材本体2に形成された各凹部3に係合しているので、EA材本体2の位置決め精度が向上する。
【0065】
なお、前述の通り、各凸部12AのEA材本体2との対峙面の基端側は、車体板金10の前面に接近するほど該EA材本体2側となるように湾曲して該車体板金10の前面に滑らかに連なる湾曲面となっており、且つこの対峙面の先端側は、EA材本体2から離反するように湾曲した湾曲面となっている。そのため、各凸部12Aが各凹部3の内面に当接しても、各凹部3の内面に局所的に過大な負荷が加えられることが防止される。これにより、車両走行時の振動等により各凸部12Aが繰り返し各凹部3の内面に当接しても、各凹部3の内面の変形や破損が防止されるため、EA材本体2の耐久性が高いものとなり、且つ長期にわたってEA材本体2のがた付きも防止される。
【0066】
この実施の形態におけるその他の作用効果は、前述の第2の実施の形態と同様である。
【0067】
[第4の実施の形態]
第14図は、第4の実施の形態に係る発泡成形部材の取付構造としてのEA材1の車体板金10への取付構造の分解斜視図、第15図はこのEA材1の底面側からの斜視図、第16図はこの取付構造の平面図、第17図(a)は第16図のXVII−XVII線に沿う断面図、第17図(b)は第17図(a)のB−B線に沿う断面図である。
【0068】
この実施の形態では、車体板金10から1個の凸部12Bが突設されている。この凸部12Bは、車体板金10のEA材取付領域の内側、即ちEA材本体2の底面と対峙する位置に配置されている。この凸部12Bは、車体板金10のEA材取付領域の一部をそれぞれプレス成形等の押し出し加工によって該車体板金10の前面側へ膨出させることにより形成されている。第15図の通り、EA材本体2の底面には、この凸部12Bを受け入れる凹部4が形成されている。
【0069】
この実施の形態では、該凸部12Bは、第14,16図及び第17図(a),(b)の通り、略円形の平面視形状を有し、且つ先端側の外面が該先端側に向って凸に湾曲した略半球形状となっている。また、第17図(b)の通り、この凸部12Bの基端側の外面は、車体板金10の前面に接近するほど外径が大きくなるように湾曲し、該車体板金10の前面に滑らかに連なる湾曲面となっている。第17図(b)の通り、この凸部12Bの軸心線に沿う断面内において、この凸部12Bの基端側の外面の曲率半径Rは2〜50mm特に5〜10mmであることが好ましく、この凸部12Bの先端側の外面の曲率半径R’’は5〜80mm特に5〜30mmであることが好ましい。車体板金10の前面からの凸部12Bの突出高さは5〜50mm特に10〜30mmであることが好ましい。なお、凸部12Bの形状はこれに限定されるものではない。例えば、凸部12Bは、第20図の如く、その最先端部の外面が平坦面となっていてもよい。この場合、第20図の通り、該凸部12Bの最先端部の平坦面と側周面とが上記曲率半径R’’にて湾曲した湾曲面を介して滑らかに連なっていることが好ましい。
【0070】
この実施の形態では、凹部4は、第15図の通り、車体板金10を平面視した状態において、該凹部4からクリップ20への接近及び離反方向(以下、接離方向という。)に延在した楕円又は長穴形状となっている。EA材本体2の底面における凹部4の短軸方向の幅は、凸部12Bの外径と略同等となっている。第17図(b)の通り、凹部4の最深部の深さは、車体板金10の前面からの凸部12Bの突出高さと略同等かそれよりも若干深いものとなっている。第17図(b)の通り、凹部4の長軸方向と直交方向の断面内において、凹部4の最も深くなっている部分の内面は、凸部12Bの先端側の外面と略同等の曲率半径にて湾曲した凹曲面となっている。
【0071】
この実施の形態のその他の構成は、前述の第1の実施の形態と同様であり、第14〜17図において第1〜8図と同一符号は同一部分を示している。
【0072】
この実施の形態にあっては、車体板金10のEA材取付領域の内側に設けられた凸部12BがEA材本体2の底面の凹部4に係合している。そのため、車両走行時の振動等によりEA材本体2がクリップ20を回動中心として回動しようとしても、この凸部12Bによって該EA材本体2の回動が阻止される。これにより、EA材1にクリップ20が1個しか設けられていなくても、EA材本体2を精度よく車体板金10に取り付けることができる。また、EA材本体2がクリップ20と凸部12Bとによって支持されているため、EA材本体2からこれらに加えられる荷重が分散され、振動等によりクリップ20に加えられる負荷も軽減される。従って、この実施の形態にあっても、EA材本体2を車体板金10に取り付けるためのクリップ20が1個で足り、クリップ20を複数個設ける必要がない。これにより、EA材1の製造コストの低減及び製造工程の簡易化を図ることが可能である。
【0073】
この実施の形態でも、車体板金10の凸部12BがEA材本体2の底面の凹部4に係合しているので、EA材本体2の位置決め精度が高い。なお、この実施の形態では、凹部4は、クリップ20への接離方向に延在した楕円又は長穴形状となっているため、例えばEA材本体2の発泡合成樹脂の硬化時における収縮等により、EA材本体2に若干の寸法誤差があっても、凸部12Bを凹部4に係合させることができる。また、この凹部4の該クリップ20への接離方向と直交方向の幅は、凸部12Bの外径と略同等となっており、凸部12Bが凹部4の内面に当接した状態となっているか、又はEA材本体2がクリップ20を回動中心として回動しようとしても即座に凸部12Bが凹部4の内面に当接し、このEA材本体2の回動が防止される。
【0074】
この実施の形態でも、凸部12Bの基端側は、車体板金10の前面に接近するほど外径が大きくなるように湾曲して該車体板金10の前面に滑らかに連なる湾曲面となっている。また、この凸部12Bの先端側の外面は、該先端側に向って凸に湾曲した略半球形状の湾曲面となっている。そのため、凸部12Bが凹部4の内面に当接しても、凸部12Bから凹部4の内面に局所的に過大な負荷が加えられることが防止される。これにより、車両走行時の振動等により凸部12Bが繰り返し凹部4の内面に当接しても、凹部4の内面の変形や破損が防止されるため、EA材本体2の耐久性が高いものとなる。また、長期にわたってEA材本体2のがた付きも防止される。
【0075】
なお、このように、凸部12Bの基端側が車体板金10の前面に滑らかに連なる湾曲面となり、且つこの凸部12Bの先端側が略半球形状となるように凸部12Bを形成することにより、例えば凸部12Bの基端側の外周面が車体板金10の前面と直角に交わるように形成したり、凸部12Bを、先端面と側周面とが直角に交わる円柱形状に形成する場合に比べて、加工精度が緩和されると共に、より簡易な加工方法により凸部12Bを形成することができるため、この凸部12Bを形成するための加工作業の容易化及び加工設備の簡易化を図ることが可能である。また、実施の形態では、車体板金10をプレス成形等により押し出し加工することによって凸部12Bを形成しているので、プレス成形等により車体板金10を成形する際に、凸部12Bも同時に(即ち1工程にて)形成することができ、この凸部12Bを有する車体板金10の製造作業を容易化することが可能である。
【0076】
なお、この実施の形態では、凸部12B及び凹部4は1個ずつ設けられているが、複数個ずつ設けられてもよい。
【0077】
[第5の実施の形態]
第18図は、第5の実施の形態に係る発泡成形部材の取付構造としてのEA材1の車体板金10Aへの取付構造の分解斜視図、第19図(a)はこの取付部材の第3図(a)と同様部分の断面図、第19図(b)は第19図(a)のB部分の拡大図である。
【0078】
この実施の形態における車体板金10Aは、その両側の側縁部13,14がそれぞれ該車体板金10Aの裏面側(EA材取付面と反対側)に折り曲げられた略コ字形断面形状となっている。この車体板金10Aを平面視した状態において、この車体板金10Aの前面の幅は、EA材本体2の幅よりも小さいものとなっている。この車体板金10Aの前面の幅方向の中央付近にクリップ係止孔11が設けられている。なお、第18図においては、この車体板金10Aは、その延在方向の一端側から他端側まで側縁部13,14が裏面側へ折り曲げられた形状となっているが、この車体板金10AのEA材取付領域の両側においてのみ側縁部13,14が裏面側へ折り曲げられていてもよい。
【0079】
各側縁部13,14の基端側の外向き面(車体板金10Aの前面に連なる面)は、それぞれ、車体板金10Aの前面に接近するほど該車体板金10Aの幅方向中央側となるように湾曲して該車体板金10Aの前面に滑らかに連なる湾曲面となっている。この側縁部13,14の基端側の外向き面の曲率半径Rはそれぞれ2〜50mm特に5〜20mmであることが好ましい。
【0080】
この実施の形態では、EA材本体2の底面に、この車体板金10Aを受け入れる凹部5が形成されている。この凹部5は、EA材本体2の底面の幅方向と略直交方向に延設された凹溝よりなる。この凹部5は、EA材本体2の底面の幅方向の両端縁から該幅方向の中央側に離隔している。この凹部5の延在方向の両端側は、EA材本体2の底面の幅方向と直交方向の両端側の側面にそれぞれ開放している。車体板金10Aを平面視した状態において、この凹部5の幅は、車体板金10Aの幅と同等かそれよりも若干(好ましくは0.1〜4mm特に0.5〜2mm程度)大きなものとなっている。第19図(a)の通り、この凹部5の最深部の深さは、車体板金10Aの前面から各側縁部13,14の先端までの距離よりも小さいものとなっている。第19図(b)の通り、この凹部5の底面と両側の側面とが交わる隅部は、それぞれ、車体板金10Aの前面と各側縁部13,14の外向き面とを繋ぐ湾曲面と略同等の曲率半径にて湾曲した凹曲面となっている。この凹部5の幅方向及び延在方向の中央付近にクリップ20が配設されている。
【0081】
この実施の形態では、EA材1を車体板金10Aに取り付ける場合には、該車体板金10Aを凹部5内に係合させつつ、クリップ20をクリップ係止孔11に係合させる。EA材1が車体板金10Aに取り付けられた状態にあっては、該車体板金10Aの両側縁部13,14がそれぞれ凹部5の側面に対峙する。即ち、この実施の形態では、車体板金10Aの略全体が、EA材本体2の底面の凹部5に係合する凸部を構成したものとなっている。なお、前述の通り、凹部5の最深部の深さは、車体板金10Aの前面から各側縁部13,14の先端までの距離よりも小さいので、各側縁部13,14の先端側は、それぞれ凹部5の外部に延出している。そのため、各側縁部13,14の先端側における板金の末端部分はEA材本体2に接触しない。
【0082】
この実施の形態のその他の構成は、前述の第1の実施の形態と同様であり、第18,19図において第1〜8図と同一符号は同一部分を示している。
【0083】
この実施の形態にあっては、車体板金10AがEA材本体2の底面の凹部5に係合しており、該車体板金10Aの両側縁部13,14がそれぞれ凹部5の側面に対峙しているため、車両走行時の振動等によりEA材本体2がクリップ20を回動中心として回動しようとしても、この車体板金10Aの両側縁部13,14によって該EA材本体2の回動が阻止される。これにより、EA材1にクリップ20が1個しか設けられていなくても、EA材本体2を精度よく車体板金10Aに取り付けることができる。また、EA材本体2がクリップ20と車体板金10Aの両側縁部13,14とによって支持されているため、EA材本体2からこれらに加えられる荷重が分散され、振動等によりクリップ20に加えられる負荷も軽減される。従って、この実施の形態にあっても、EA材本体2を車体板金10Aに取り付けるためのクリップ20が1個で足り、クリップ20を複数個設ける必要がない。これにより、EA材1の製造コストの低減及び製造工程の簡易化を図ることが可能である。
【0084】
この実施の形態では、車体板金10Aの各側縁部13,14の基端側の外向き面は、それぞれ、車体板金10Aの前面に接近するほど該車体板金10Aの幅方向中央側となるように湾曲して該車体板金10Aの前面に滑らかに連なる湾曲面となっている。また、各側縁部13,14の先端側はそれぞれ凹部5の外部に延出しているため、各側縁部13,14の先端側における板金の末端部分はEA材本体2に接触しない。そのため、各側縁部13,14が凹部5の内面に当接しても、各側縁部13,14から凹部5の内面に局所的に過大な負荷が加えられることが防止される。これにより、車両走行時の振動等により各側縁部13,14が繰り返し凹部5の内面に当接しても、凹部5の内面の変形や破損が防止されるため、EA材本体2の耐久性が高いものとなる。また、長期にわたってEA材本体2のがた付きも防止される。
【0085】
なお、この実施の形態では、車体板金10Aの両側縁部13,14を裏面側へ折り曲げることにより、該車体板金10A自体を凹部5に係合する凸形状に成形しているため、前述の各実施の形態のように車体板金10に凸部12,12A,12Bを設けるのに比べて、車体板金10Aの成形が容易である。また、この実施の形態でも、車体板金10Aの各側縁部13,14は、各々の基端側の外向き面が車体板金10Aの前面に滑らかに連なる湾曲面となるように折り曲げ加工されるため、例えば各側縁部13,14の基端側の外向き面と車体板金10Aの前面とが直角に交わるように各側縁部13,14を折り曲げ加工する場合に比べて、加工精度が緩和されると共に、より簡易な加工方法を採用することができる。これにより、車体板金10Aの加工作業の容易化及び加工設備の簡易化を図ることが可能である。
【0086】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態をもとりうる。
【0087】
例えば、上記の実施の形態では、EA材1を車体板金10に取り付けるためのクリップ20として、特開2007−161109号に開示されたものと同様のものを用いているが、本発明の発泡成形部材の取付構造においては、上記以外の各種のクリップ(例えば特開2004−132462号等に開示されたクリップ)を用いることができる。
【0088】
上記の実施の形態は、EA材の車体板金への取付構造への本発明の適用例を示しているが、本発明は、これ以外の発泡成形部材の取付構造にも適用可能である。例えば、本発明は、車体板金に取り付けられたプレート等、車体板金以外の被取付部材への発泡成形部材の取付構造にも適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 EA材(発泡成形部材)
2 EA材本体(発泡成形体)
10 車体板金(被取付部材)
11 クリップ係止孔(被係止部)
12,12A,12B 凸部(位置決め手段)
13,14 側縁部(位置決め手段)
20 クリップ
21 フランジ
22 軸部
23 アンカー
24 切欠部
30 係止体
31 起立体
32 係止片
40 最凸部
41 第1の斜面
42 第2の斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形部材を被取付部材に取り付けた発泡成形部材の取付構造であって、
該発泡成形部材は、
発泡成形体と、
該発泡成形体と一体成形により一体化された、該発泡成形体を該被取付部材に取り付けるためのクリップと
を備えており、
該クリップが、該被取付部材に設けられた被係止部に係合することにより、該発泡成形部材が該被取付部材に取り付けられている発泡成形部材の取付構造において、
該被取付部材に、該発泡成形体に当接して該発泡成形体の移動を防止する位置決め手段が設けられていることを特徴とする発泡成形部材の取付構造。
【請求項2】
請求項1において、前記発泡成形部材は、前記クリップを1個のみ備えていることを特徴とする発泡成形部材の取付構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記位置決め手段は、前記被取付部材から突設された凸部よりなることを特徴とする発泡成形部材の取付構造。
【請求項4】
請求項3において、前記凸部は、前記発泡成形体の該凸部との対峙面に沿って延在していることを特徴とする発泡成形部材の取付構造。
【請求項5】
請求項3又は4において、前記発泡成形体の前記被取付部材との対峙面に凹部が設けられており、該凹部に前記凸部が係合していることを特徴とする発泡成形部材の取付構造。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか1項において、前記凸部の前記発泡成形体との対峙面の少なくとも基端側は、該基端側ほど該発泡成形体側となるように湾曲した湾曲面となっており、この湾曲面に該発泡成形体が当接していることを特徴とする発泡成形部材の取付構造。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれか1項において、前記被取付部材は板状材料よりなり、
前記凸部は、該板状材料の一部を曲げ加工又は押し出し加工することにより形成されていることを特徴とする発泡成形部材の取付構造。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、前記発泡成形部材は衝撃エネルギー吸収材であり、前記被取付部材は車体板金であることを特徴とする発泡成形部材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−122686(P2011−122686A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281768(P2009−281768)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】