説明

発泡樹脂容器及びその製造方法

【課題】軽量化と、容器を複数段積み上げての使用に耐えうる座屈強度を備えた発泡樹脂容器を提供することを課題とする。
【解決手段】24万〜35万の重量平均分子量Xを有する発泡ポリスチレン系樹脂粒子が充填された金型を蒸気圧Yの蒸気により加熱成形することで、上面に開口部を有する発泡樹脂容器を製造する方法であり、前記加熱成形が、下記式4.09X×10-7−0.0582≦Y≦3.64X×10-7−0.0273を満たす前記重量平均分子量Xと蒸気圧Yとの関係のもとで行われることを特徴とする発泡樹脂容器の製造方法により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂容器及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、魚介類、農産物、工業製品等を収容、保管又は輸送する際に好適に使用しうる上面に開口部を備えた発泡樹脂容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレンのような合成樹脂の発泡樹脂容器は、断熱性を備えている上に、軽量かつ衝撃吸収性に優れているという特性を有する。また、発泡樹脂容器は、発泡粒子を型内に充填し、型を加熱することで発泡粒子を互いに融着するという、比較的容易な方法により形成できる。このため、発泡樹脂容器は、野菜、果物、肉類、魚介類、工業製品等を、収容、保管又は輸送する際に使用する容器として汎用されている。
発泡樹脂容器の性質は、その発泡倍数を変化させることで大きく変わる。このため、発泡樹脂容器は、用途に応じて、適切な発泡倍数で使用されている。具体的には、魚介類、農産物、工業製品等の収容、保管又は輸送する際に使用される発泡樹脂容器は、一般的に50〜60倍の発泡倍数が好適とされ、この数値内で製品化されたものが市場に出回っている。
【0003】
更に、発泡倍数が高いほど、合成樹脂の量は少なくて済む。このため、発泡樹脂容器を安価に製造できる。しかしながら、発泡樹脂容器の倍数が大きいほど、その強度は低下する。
そこで、特許文献1では、形状を変えることで座屈強度を向上させた発泡樹脂容器及びその製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−274980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発泡樹脂容器には、より一層の軽量化及び使用に耐えられる強度が求められている。しかしながら、この観点からは、特許文献1に記載の発泡樹脂容器は満足のいくものではなかった。特に、発泡樹脂容器の発泡倍数を上げつつ、特許文献1に記載のように形状を変更した場合、一定の強度の向上は認められるものの、十分な軽量化を図ることは困難であり、軽量化と強度との両立という観点からは必ずしも満足のいくものではなかった。具体的には、強度の向上を目的として発泡樹脂容器の形状を変更した場合、発泡樹脂容器の形状を変更した箇所では強度向上は図れるものの、その箇所以外の部分において強度の向上を図ることができないことがあった。
このような、発泡樹脂容器は、収容、保管、輸送等の使用時の衝撃や振動に抗し切れず、破損等を起こすことがある。特に、発泡樹脂容器は、複数段積み上げて使用されることが多く、そのような使用形態でも耐えうる強度を有していることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者は、発泡樹脂容器の製造条件について見直したところ、発泡樹脂容器を構成するスチレン系樹脂の重量平均分子量と発泡成形時の蒸気圧が特定の関係を満たせば、強度を向上しうる発泡樹脂容器が得られることを見出し本発明に至った。
かくして本発明によれば、24万〜35万の重量平均分子量Xを有する発泡ポリスチレン系樹脂粒子が充填された金型を蒸気圧Yの蒸気により加熱成形することで、上面に開口部を有する発泡樹脂容器を製造する方法であり、
前記加熱成形が、下記式
4.09X×10-7−0.0582≦Y≦3.64X×10-7−0.0273
を満たす前記重量平均分子量Xと蒸気圧Yとの関係のもとで行われることを特徴とする発泡樹脂容器の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記製造方法で得られた発泡樹脂容器が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、形状を変えなくても、軽量化と、容器を複数段積み上げての使用に耐えうる座屈強度を備えた発泡樹脂容器を得ることができる。
更に、蒸気圧Yが、0.045〜0.095MPaの範囲である場合、より軽量化と座屈強度の向上した発泡樹脂容器を提供できる。
また、発泡樹脂容器が、60〜80倍の発泡倍数を有する場合、より軽量化と座屈強度の向上した発泡樹脂容器を提供できる。
更に、前記発泡樹脂容器が側壁部及び底部を有し、前記側壁部が前記底部より厚い場合、より軽量化と座屈強度の向上した発泡樹脂容器を提供できる。
また、発泡樹脂容器が、24万〜35万の重量平均分子量Xを有する発泡ポリスチレン系樹脂粒子の融着体から構成され、かつ溶剤及び可塑剤を合計量Z(重量%)含み、
重量平均分子量Xと合計量Z(重量%)とが、下記式
3.64X×10-6+0.52≦Z≦4.55X×10-6+1.21
を満たす関係を有する場合、より軽量化と座屈強度の向上した発泡樹脂容器を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の発明者は、収容、保管又は輸送する発泡樹脂容器への、野菜、果物、肉類、魚介類、工業製品等の収容、保管又は輸送が、発泡樹脂容器を複数段積み上げて行われることに着目し、このような状態で使用されても崩れることのない発泡樹脂容器の製造方法について鋭意検討した。その結果、発泡樹脂容器の座屈強度を向上させることが有用であるとの結論に至り、座屈強度を向上させる方法として、発泡樹脂容器を構成する発泡ポリスチレン系樹脂粒子の重量平均分子量と、成形時の蒸気圧とを、特定の範囲とすることが有効であることを見出し本発明に至った。
【0009】
本発明の発泡樹脂容器は、上面に開口部を有している。また、発泡樹脂容器を構成する発泡ポリスチレン系樹脂粒子の重量平均分子量Xと、成形時の蒸気圧Yとは、下記式を満たす関係を有する範囲で加熱成形が行われる。尚、下記式は、発明者が、複数の実験結果から経験的に見出したものである。
4.09X×10-7−0.0582≦Y≦3.64X×10-7−0.0273
蒸気圧Yが4.09X×10-7−0.0582より小さい場合、容器内部まで融着しなかったり、強度が低下することがある。また、3.64X×10-7−0.0273より大きい場合、容器表面に溶けが発生したり、強度が低下することがある。より好ましい重量平均分子量Xと蒸気圧Yは、下記式を満たす関係を有する範囲である。
3.64X×10-7−0.0423≦Y≦3.64X×10-7−0.0373
【0010】
また、具体的な重量平均分子量としては、24万〜35万の範囲が好ましく、28万〜32万の範囲がより好ましい。例えば重量平均分子量が24万の場合、蒸気圧は0.03966〜0.06006MPaの範囲内に、35万の場合、0.08495〜0.1001MPaの範囲内に、それぞれ設定される。また、重量平均分子量が大きくなると、蒸気圧が高くなる傾向がある。
更に、具体的な蒸気圧としては、0.045〜0.095MPaの範囲が好ましく、0.050〜0.085MPaの範囲がより好ましい。
次に、発泡樹脂容器が備える開口部の形状は、特に限定されず、四角形、五角形、六角形、円形、楕円形、不定形等が挙げられる。この形状は、収容、保管又は輸送される物品に応じて適宜設定できる。四角形が一般的である。
【0011】
また、発泡樹脂容器は、通常、側壁部と、側壁部につながる底部とを有する。
側壁部は、一般的には板状の形状を有しており、掴み易くするための取っ手や、更なる強度の向上のための補強部を備えていてもよい。
側壁部は、15〜22mmの厚さを有していることが好ましい。厚さが15mmより小さい場合、十分な座屈強度が得られないことがある。22mmより大きい場合、十分な座屈強度を得られるものの、発泡樹脂容器の原料コストが高くなることがある。より好ましい厚さは17〜22mmであり、更に好ましい厚さは18〜21mmである。
【0012】
側壁部は、150〜400mmの高さを有していることが好ましい。高さが150mmより小さい場合、発泡樹脂容器に収納可能な物品の量が減ることがある。400mmより大きい場合、十分な座屈強度が得られないことがある。より好ましい高さは150〜370mmであり、更に好ましい高さは160〜300mmである。
また、側壁部は、高い場合、十分な座屈強度を確保する観点から、厚いことが好ましい。一方、低い場合、原料コストを下げる観点から、薄いことが好ましい。厚さと高さは、1:6〜30の比の関係を有することが好ましい。
【0013】
底部の厚さは特に限定されず、発泡樹脂容器内に保持される物品の重量や底部の面積に応じて適宜設定できる。底部の厚さは、例えば、12〜22mmに設定できる。また、底部の面積は、通常、3×104〜20×104mm2である。
【0014】
更に、側壁部は、底部より厚いことが好ましい。厚いことにより座屈強度を向上できる。具体的には、側壁部は、底部の厚さの1.0〜1.5倍の厚さを有していることが好ましく、1.0〜1.2倍の厚さを有していることがより好ましい。
発泡樹脂容器は、60〜80倍の発泡倍数を有することが好ましい。この特定の範囲の発泡倍数を有することで、十分な座屈強度を備えたより軽量化した発泡樹脂容器を提供できる。より好ましい発泡倍数は、65〜75倍である。
【0015】
また、発泡樹脂容器を構成する発泡ポリスチレン系樹脂粒子の平均気泡径が、50〜100μmの範囲であることが好ましい。この範囲の平均気泡径を有することで、発泡樹脂容器に軽量化と座屈強度とを両立させることができる。
【0016】
発泡樹脂容器は、溶剤及び/又は可塑剤を含んでいることが好ましい。溶剤及び/又は可塑剤を含むことで、座屈強度に優れた発泡樹脂粒子を提供できる。
溶剤としては、スチレン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族有機化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、ジアセチル化グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ジイソブチルアジペートのようなアジピン酸エステル等が挙げられる。
【0017】
発泡樹脂容器中における溶剤及び可塑剤の合計量は、少ない場合、溶剤及び可塑剤を添加した効果が発現しないことがある。一方、含有量が多い場合、発泡樹脂容器に収縮や溶けが発生して外観が低下することがある。なお、溶剤及び可塑剤は両方含まれていてもよく、いずれか片方含まれていてもよい。いずれか片方含まれている場合は、合計量はその片方の量のみを意味する。また、合計量の単位は重量%である。
更に、発泡樹脂容器は重量平均分子量Xの発泡ポリスチレン系樹脂粒子の融着体から構成される。発明者は、複数の実験結果から重量平均分子量Xと溶剤及び可塑剤の合計量Z(単位は重量%)とが下記式を満たすことが好ましいことを経験的に見出している。
3.64X×10-6+0.52≦Z≦4.55X×10-6+1.21
上記関係式を重量平均分子量Xと合計量Zとが満たすことで、軽量化と、容器を複数段積み上げての使用に耐えうる座屈強度とがより向上した発泡樹脂容器を提供できる。
合計量Zが3.64X×10-6+0.52より小さい場合、容器内部まで融着しなかったり、強度が低下することがある。また、4.55X×10-6+1.21より大きい場合、容器表面に溶けが発生したり、強度が低下することがある。より好ましい重量平均分子量Xと合計量Zは、下記式を満たす関係を有する範囲である。
4.00X×10-6+0.64≦Z≦4.29X×10-6+0.97
更に好ましい重量平均分子量Xと合計量Zは、下記式を満たす関係を有する範囲である。
4.00X×10-6+0.64≦Z≦4.45X×10-6+0.65
【0018】
(ポリスチレン系樹脂)
発泡樹脂容器を構成する発泡ポリスチレン系樹脂粒子に含まれるポリスチレン系樹脂は、上記範囲の重量平均分子量を有する限り、特に限定されない。例えば、ポリスチレン系樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体等が挙げられる。ポリスチレン系樹脂は、スチレン由来の成分を50重量%以上含有していることが好ましく、ポリスチレンからなることがより好ましい。
【0019】
また、ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系モノマーと、このスチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体であってもよい。共重合体の場合、スチレン系モノマー由来の成分が主成分(50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは99.8〜99.9重量%)を占めることが好ましい。このようなビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の二官能性モノマー、無水マレイン酸、N−ビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0020】
(発泡樹脂容器の製造方法)
発泡樹脂容器は、上記重量平均分子量と蒸気圧の関係を満たすことを前提として、発泡ポリスチレン系樹脂粒子が充填された金型を蒸気により加熱成形することで得ることができる。蒸気による加熱成形時間は、特に限定されないが、例えば、10〜30秒間である。ここで、発泡ポリスチレン系樹脂粒子は、一般的に予備発泡粒子とも称される。
【0021】
この加熱成形は、より具体的には、次のように行われる。即ち、予備発泡粒子を多数の小孔を有する閉鎖された金型内に充填する。この金型を特定の蒸気圧の蒸気(水蒸気等)で加熱することにより、予備発泡粒子が発泡する。その結果、予備発泡粒子間の空隙が埋まると共に、予備発泡粒子が相互に融着一体化することで、発泡樹脂容器が製造できる。その際、発泡樹脂容器の密度は、例えば、金型内への予備発泡粒子の充填量を調整する等して調製できる。
予備発泡粒子は、発泡樹脂容器の成形前に、例えば常圧で、熟成させてもよい。予備発泡粒子の熟成温度は、20〜60℃が好ましい。熟成温度が低いと、予備発泡粒子の熟成時間が長くなることがある。一方、高いと、予備発泡粒子中の発泡剤が散逸して成形性が低下することがある。
【0022】
(発泡ポリスチレン系樹脂粒子:予備発泡粒子)
予備発泡粒子は、例えば、次の方法により製造できる。まず、ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る。次いで、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて予備発泡粒子を得ることができる。
【0023】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、例えば、
(i)水性媒体中にポリスチレン系樹脂種粒子(以下種粒子)を分散させ、これにスチレン系モノマーを連続的又は断続的に供給して重合開始剤の存在下で懸濁重合し、発泡剤を含浸させる方法、いわゆるシード重合法によって得られた粒子、あるいは
(ii)スチレン系モノマーを連続的又は断続的に水性媒体中に供給して重合開始剤の存在下で懸濁重合し、発泡剤を含浸させる方法、いわゆる懸濁重合法によって得られた粒子等を使用できる。後者の懸濁重合法が、製造コスト低減の観点から好ましい。懸濁重合法について、以下で説明する。
【0024】
(a)スチレン系モノマー
スチレン系モノマーとしては、上記ポリスチレン系樹脂の欄で挙げたスチレン系モノマーが使用される。また、スチレン系モノマーに上記ポリスチレン系樹脂の欄で挙げたビニルモノマーを加えてもよい。
(b)水性媒体
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。
【0025】
(c)重合開始剤
重合開始剤としては、いずれも通常のスチレンの懸濁重合において用いられるラジカル発生型重合開始剤を用いることができる。例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。分子量を調製し、残存モノマーを減少させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が80〜120℃の範囲にある複数種の重合開始剤を併用することが好ましい。
【0026】
(d)他の成分
スチレン系モノマーの液滴の分散性を安定させるために懸濁安定剤を用いてもよい。
懸濁安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難溶性無機化合物等が挙げられる。ここで、難溶性無機化合物を用いる場合には、アニオン界面活性剤が通常、併用される。
【0027】
アニオン界面活性剤は、上記懸濁安定剤による分散を安定化させるための補助安定剤として機能すると共に、一部がポリスチレン系樹脂粒子内に溶け込んだり、あるいは巻き込まれたりすることによって、得られる発泡樹脂容器内の気泡径の大きさに影響することがある。従って、所望の気泡膜厚の範囲内に入るようにアニオン界面活性剤の種類を選択すればよい。
【0028】
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸又はその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩等が挙げられる。
スチレン系モノマーに、気泡径を小さくするために、ポリオレフィンワックスを添加してもよい。
【0029】
(e)重合条件
重合は、使用するモノマー種、重合開始剤種、重合雰囲気種等により異なるが、通常、60〜150℃の加熱を、1〜10時間維持することにより行われる。
ポリスチレン系樹脂粒子の粒子径は、後述する予備発泡粒子の成形型内への充填性の点から、0.5〜1.7mmであることが好ましく、0.6〜1.4mmであることがより好ましい。この粒子径への調整は、懸濁重合後の粒子を所定のメッシュの篩で篩い分けることにより行うことができる。
【0030】
(f)含浸工程
発泡剤の含浸は、スチレン系モノマーの重合後の粒子に行ってもよく、成長途上粒子に発泡剤を含浸させてもよい。成長途上での含浸は、水性媒体中で含浸させる方法(湿式含浸法)により行うことができる。重合後の含浸は、湿式含浸法か、又は媒体非存在下で含浸させる方法(乾式含浸法)により行うことができる。また、重合の途中での含浸は、通常重合後期に行うことが好ましい。
【0031】
発泡剤としては、沸点がポリスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状又は液状の有機化合物が適している。例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物、HCFC−141b、HCFC−142b、HCFC−124、HFC−134a、HFC−152a等のハロゲン含有炭化水素、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガス等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。この内、炭化水素を使用するのが、オゾン層の破壊を防止する観点、及び空気と速く置換し、発泡樹脂容器の経時変化を抑制する観点で好ましい。
【0032】
発泡剤の使用量は、ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは1〜15重量部、より好ましくは2〜10重量部である。発泡剤の使用量は、少ないと、発泡樹脂容器の高発泡倍率化が困難となることがあると共に、予備発泡粒子同士の熱融着が不充分となって発泡樹脂容器の外観性が低下することがある。一方、多いと、発泡樹脂容器に収縮が生じたり又は予備発泡粒子中の発泡ガスの調整や発泡成形に時間を要して製造効率が低下したりすることがある。
【0033】
(k)その他
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に溶剤や可塑剤を添加してもよい。具体的な溶剤や可塑剤種は上記発泡樹脂容器の欄で挙げたものを使用できる。
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中における溶剤及び可塑剤の含有量は、それぞれ、少ない場合、溶剤及び可塑剤を添加した効果が発現しないことがある。一方、含有量が多い場合、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られた発泡樹脂容器に収縮や溶けが発生して外観が低下することがある。
【0034】
更に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、物性を損なわない範囲内において、発泡セル造核剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、融着促進剤、滑剤、着色剤等の他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤は、溶剤や可塑剤と同様の要領で発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含ませることができる。
【0035】
難燃剤としては、例えば、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA等が挙げられる。
また、難燃助剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイドのような有機過酸化物が挙げられる。
合着防止剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、炭酸カルシウム、高級脂肪酸アマイド等が挙げられる。
融着促進剤としては、例えばヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステル、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0036】
(l)予備発泡粒子
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、予備発泡機で水蒸気等を用いて予備発泡されて予備発泡粒子とされる。予備発泡粒子の嵩発泡倍数は、60〜80倍の範囲であることが好ましい。予備発泡粒子の嵩発泡倍数が60より小さい場合、発泡樹脂容器の軽量性が低下することがある。一方、嵩発泡倍数が80より大きい場合、発泡樹脂容器の断熱性能及び機械的強度が低下することがある。
【実施例】
【0037】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における各種測定法を下記する。
<重量平均分子量>
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて、重量平均分子量を測定する。その測定方法は次の通りである。なお、重量平均分子量はポリスチレン(PS)換算重量平均分子量を意味する。
試料50mgをテトラヒドロフラン(THF)10ミリリットルに溶解させ、非水系0.45μmのクロマトディスクで濾過した上でクロマトグラフを用いて測定する。クロマトグラフの条件は下記の通りとする。
液体クロマトグラフ:東ソー社製、商品名「ゲルパーミエーションクロマトグラフ HLC−8020」
カラム:東ソー社製、商品名「TSKgel GMH−XL−L」φ7.8mm×30cm×2本
カラム温度:40℃
キャリアーガス:テトラヒドロフラン(THF)
キャリアーガス流量:1ミリリットル/分
注入・ポンプ温度:35℃
検出:RI
注入量:100マイクロリットル
検量線用標準ポリスチレン:昭和電工社製、商品名「shodex」重量平均分子量:1030000と東ソー社製、重量平均分子量:5480000、3840000、355000、102000、37900、9100、2630、870
【0038】
<溶剤及び可塑剤の合計量>
ガスクロマトグラフ質量分析法で測定する。測定法を下記する。
試料0.2gをメチルエチルケトンに溶解し、メタノール40mlを加えて再沈殿させ、1時間攪拌後に濾過し、濾液にメタノールを加えて50mlにする(溶液A)。2mlメスフラスコに内部標準液としてのピレンを40μlを入れ、溶液Aを加えて2mlとし、ガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所製QP−5050A)にて溶剤及び可塑剤の合計量を測定する。ガスクロマトグラフ質量分析計の測定条件を下記する。
カラム:J&W社製DB−5、0.25μm×0.25mmφ×30m
カラム温度:初期温度70℃で1分間保持し、15℃/分で260℃まで昇温した後、10℃/分で昇温し、300℃で3分間保持する。
カラム流量1.2ml/分(He)、インジェクション温度240℃、インターフェイス温度280℃、検出器1.25kVとし、スキャンモードで測定する。
未重合で発泡樹脂容器に残存するスチレンモノマーは、容器中で溶剤として機能する。従って、実施例で測定する溶剤及び可塑剤の合計量は、スチレンも加えたものとする。
【0039】
<平均気泡径>
平均気泡径は、ASTM D2842−69の試験方法に準拠して測定する。具体的には、発泡樹脂容器の側辺部を垂直方向に切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(JOEL社製 商品名「JSM−6360LV」)を用いて100倍に拡大して撮影する。
次に、撮影した画像をA4用紙上に印刷し、任意の箇所に長さ60mmの直線を一本描き、この直線上に存在する気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出する。
平均弦長t=60/(気泡数×写真の倍率)
なお、直線を描くにあたっては、できるだけ直線が気泡に点接触することなく貫通した状態となるようにする。又、一部の気泡が直線に点接触してしまう場合には、この気泡も気泡数に含め、更に、直線の両端部が気泡を貫通することなく、気泡内に位置した状態となる場合には、直線の両端部が位置している気泡も気泡数に含める。
そして、算出された平均弦長tに基づいて次式により気泡径を算出することができる。平均気泡径(μm)D=t×1000/0.616
更に、撮影した画像の任意の5箇所において上述と同様の要領で平均気泡径を算出し、これらの平均気泡径の相加平均値を発泡樹脂容器の気泡径とする。
【0040】
<発泡倍数>
発泡樹脂容器(成形後、50℃で4時間以上乾燥させたもの)の長側面から切り出した試験片(100×300×20mm)の重量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(b)/(a)により発泡倍数(倍)を求める。
【0041】
<座屈強度>
万能試験機(オリエンテック社製 商品名「テンシロン UCT−10T」)に10kNのロードセルを接続し、試験片の開口部上に厚さ20mmの板を置き、その上から20mm/minの速度で圧縮試験測定を行い、2次最大点荷重値を座屈強度とする。
【0042】
<底抜き強度>
万能試験機(オリエンテック社製 商品名「テンシロン UCT−10T」)に10kNのロードセルを接続し、試験用の発泡樹脂容器を2つ重ねて上の容器を測定対象とする。上の容器の底面を20mm/minの速度で圧縮試験測定を行い、2次最大点荷重値を底抜き強度とする。
【0043】
<段積強度試験>
発泡樹脂容器を15個用意し、それぞれに水10kgを入れる。15個の容器を段積みして24時間静置し、下記基準で段積強度を評価する。
○:崩れていない
×:崩れている
<溶け数>
発泡樹脂容器表面の溶融している粒子数を測定する。同様の測定を、3個の容器について行い、測定結果の平均値を溶け数とする。
【0044】
実施例1
(発泡性スチレン系樹脂粒子の製造)
5リットルのオートクレーブにスチレンモノマー100重量部、水100重量部、ピロリン酸マグネシウム0.2重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.004重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.28重量部、t−ブチルパーオキシベンゾエート0.1重量部、ポリエチレンワックス0.06重量部を仕込み、90℃で5時間重合させた。その後、シクロヘキサン1.8重量部、ブタン9.0重量部を圧入して110℃にて5時間保った。冷却後、水を分離、乾燥した後、篩い分けして粒子径0.6mm〜1.4mmの発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た(重量平均分子量X24.8万)。次に、得られた発泡性ポリスチレン樹脂粒子の表面を、表面処理剤としての、ステアリン酸亜鉛0.1重量%、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド0.05重量%、ステアリン酸モノグリセライド0.05重量%で被覆することで、表面処理剤で被覆された発泡性粒子を得た。
得られた被覆された発泡性粒子を、予備発泡した後に20℃で24時間熟成し、予備発泡粒子を得た。
【0045】
(発泡樹脂容器の製造)
320mm×540mm×高さ170mmの箱形状のキャビティを有する成形型を備えた発泡ビーズ自動成形機(積水工機製作所社製 商品名「エース11型」)のキャビティ内に予備発泡粒子を充填し、0.045MPaの蒸気圧Yで15秒間加熱成形を行った。次に、金型のキャビティ内の発泡樹脂容器を12秒間水冷した後、減圧下にて放冷して、側面及び底面肉厚20mm、発泡倍数65倍の発泡容器を得た。
尚、4.09X×10-7−0.0582は0.043、3.64X×10-7−0.0273は0.063である。従って、蒸気圧Yは、0.043〜0.063MPaの範囲内で設定される。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量(シクロヘキサン+スチレン量)Zは1.8重量%であった。
【0046】
実施例2
容器製造時の蒸気圧Yを0.060MPaに変えたこと以外は、実施例1と同様にして発泡樹脂容器を得た。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量Zは1.8重量%であった。
実施例3
容器製造時の蒸気圧Yを0.050MPaに変えたこと以外は、実施例1と同様にして発泡樹脂容器を得た。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量Zは1.8重量%であった。
実施例4
発泡性粒子製造時のベンゾイルパーオキサイドを0.23重量部に、重量平均分子量Xを34.1万に、容器製造時の蒸気圧Yを0.085MPaに変えたこと以外は、実施例1と同様にして発泡樹脂容器を得た。
尚、4.09X×10-7−0.0582は0.081、3.64X×10-7−0.0273は0.097である。従って、蒸気圧Yは、0.081〜0.097MPaの範囲内で設定される。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量Zは1.8重量%であった。
【0047】
実施例5
発泡性粒子製造時のベンゾイルパーオキサイドを0.23重量部に、重量平均分子量Xを34.1万に、容器製造時の蒸気圧Yを0.095MPaに変えたこと以外は、実施例1と同様にして発泡樹脂容器を得た。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量Zは1.8重量%であった。
実施例6
発泡性粒子製造時のベンゾイルパーオキサイドを0.25重量部に、重量平均分子量Xを30.8万に、容器製造時の蒸気圧Yを0.070MPaに変えたこと以外は、実施例1と同様にして発泡樹脂容器を得た。
尚、4.09X×10-7−0.0582は0.068、3.64X×10-7−0.0273は0.085である。従って、蒸気圧Yは、0.068〜0.085MPaの範囲内で設定される。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量Zは1.8重量%であった。
【0048】
実施例7
重量平均分子量Xを30.8万に、発泡倍数を75倍に変えたこと以外は、実施例6と同様にして発泡樹脂容器を得た。重量平均分子量Xと蒸気圧Yとの関係は実施例6と同じ。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量Zは1.8重量%であった。
実施例8
底面の肉厚を19mmに変えたこと以外は、実施例6と同様にして発泡樹脂容器を得た。重量平均分子量Xと蒸気圧Yとの関係は実施例6と同じ。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量Zは1.8重量%であった。
実施例9
発泡性粒子製造時のポリエチレンワックスを0.04重量部に変えたこと以外は、実施例6と同様にして発泡樹脂容器を得た。重量平均分子量Xと蒸気圧Yとの関係は実施例6と同じ。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量Zは1.8重量%であった。
実施例10
発泡性粒子製造時のシクロヘキサンを1.3重量部に変えたこと以外は、実施例3と同様にして発泡樹脂容器を得た。重量平均分子量Xと蒸気圧Yとの関係は実施例3と同じ。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量Zは1.3重量%であった。
【0049】
実施例11
発泡性粒子製造時のシクロヘキサンを2.4重量部に変えたこと以外は、実施例3と同様にして発泡樹脂容器を得た。重量平均分子量Xと蒸気圧Yとの関係は実施例3と同じ。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量Zは2.4重量%であった。
実施例12
発泡性粒子製造時のシクロヘキサンを1.6重量部に変えたこと以外は、実施例4と同様にして発泡樹脂容器を得た。重量平均分子量Xと蒸気圧Yとの関係は実施例4と同じ。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量Zは1.6重量%であった。
実施例13
発泡性粒子製造時のシクロヘキサンを2.9重量部に変えたこと以外は、実施例4と同様にして発泡樹脂容器を得た。重量平均分子量Xと蒸気圧Yとの関係は実施例4と同じ。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量Zは2.9重量%であった。
実施例14
発泡性粒子製造時のシクロヘキサンを2.0重量部に変えたこと以外は、実施例6と同様にして発泡樹脂容器を得た。重量平均分子量Xと蒸気圧Yとの関係は実施例6と同じ。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量Zは2.0重量%であった。
実施例15
発泡性粒子製造時のシクロヘキサンを、シクロヘキサン1.0重量部、ジイソブチルアジペート1.1重量部に変えたこと以外は、実施例6と同様にして発泡樹脂容器を得た。重量平均分子量Xと蒸気圧Yとの関係は実施例6と同じ。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量(シクロヘキサン+ジイソブチルアジペート+スチレン量)Zは1.9重量%であった。
【0050】
比較例1
発泡性樹脂粒子製造時のベンゾイルパーオキサイドを0.31重量部に、重量平均分子量Xを22.9万に、容器製造時の蒸気圧Yを0.030MPaに変えたこと以外は、実施例1と同様にして発泡樹脂容器を得た。
尚、4.09X×10-7−0.0582は0.035、3.64X×10-7−0.0273は0.056である。比較例1では、0.035MPaより低い蒸気圧Yで発泡樹脂容器が製造されている。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量Zは1.8重量%であった。
【0051】
比較例2
容器製造時の蒸気圧Yを0.070MPaに変えたこと以外は、比較例1と同様にして発泡樹脂容器を得た。重量平均分子量Xと蒸気圧Yとの関係は比較例1と同じ。比較例2では、0.056MPaより高い蒸気圧Yで発泡樹脂容器が製造されている。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量Zは1.8重量%であった。
比較例3
発泡性粒子製造時のベンゾイルパーオキサイドを0.21重量部に、重量平均分子量Xを36.8万に、容器製造時の蒸気圧Yを0.080MPaに変えたこと以外は、実施例1と同様にして発泡樹脂容器を得た。
尚、4.09X×10-7−0.0582は0.092、3.64X×10-7−0.0273は0.107である。比較例3では、0.092MPaより低い蒸気圧Yで発泡樹脂容器が製造されている。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量Zは1.8重量%であった。
【0052】
比較例4
容器製造時の蒸気圧Yを0.110MPaに変えたこと以外は、比較例3と同様にして発泡樹脂容器を得た。重量平均分子量Xと蒸気圧Yとの関係は比較例3と同じ。比較例4では、0.107MPaより高い蒸気圧Yで発泡樹脂容器が製造されている。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量Zは1.8重量%であった。
比較例5
容器製造時の蒸気圧Yを0.100MPaに変えたこと以外は、実施例6と同様にして発泡樹脂容器を得た。重量平均分子量Xと蒸気圧Yとの関係は実施例6と同じ。比較例5では、0.085MPaより高い蒸気圧Yで発泡樹脂容器が製造されている。
得られた発泡樹脂容器の溶剤及び可塑剤の合計量Zは1.8重量%であった。
上記実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1から、発泡樹脂容器を構成する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の重量平均分子量と、成形時の蒸気圧とが、特定の範囲であれば、十分な座屈強度を有する発泡樹脂容器が得られることがわかる。
また、重量平均分子量と、可塑剤量とが、特定の範囲であれば、座屈強度がより改善された発泡樹脂容器が得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
24万〜35万の重量平均分子量Xを有する発泡ポリスチレン系樹脂粒子が充填された金型を蒸気圧Yの蒸気により加熱成形することで、上面に開口部を有する発泡樹脂容器を製造する方法であり、
前記加熱成形が、下記式
4.09X×10-7−0.0582≦Y≦3.64X×10-7−0.0273
を満たす前記重量平均分子量Xと蒸気圧Yとの関係のもとで行われることを特徴とする発泡樹脂容器の製造方法。
【請求項2】
前記蒸気圧Yが、0.045〜0.095MPaの範囲である請求項1に記載の発泡樹脂容器の製造方法。
【請求項3】
前記発泡樹脂容器が、60〜80倍の発泡倍数を有する請求項1又は2に記載の発泡樹脂容器の製造方法。
【請求項4】
前記発泡樹脂容器が側壁部及び底部を有し、前記側壁部が前記底部より厚い請求項1〜3のいずれか1つに記載の発泡樹脂容器の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の製造方法で得られた発泡樹脂容器。
【請求項6】
前記発泡樹脂容器が、24万〜35万の重量平均分子量Xを有する発泡ポリスチレン系樹脂粒子の融着体から構成され、かつ溶剤及び可塑剤を合計量Z(重量%)含み、
前記重量平均分子量Xと合計量Z(重量%)とが、下記式
3.64X×10-6+0.52≦Z≦4.55X×10-6+1.21
を満たす関係を有する請求項5に記載の発泡樹脂容器。

【公開番号】特開2013−82196(P2013−82196A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−44395(P2012−44395)
【出願日】平成24年2月29日(2012.2.29)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】