説明

発泡樹脂成形品の製造方法

【課題】発泡樹脂成形品の強度低下を抑制しつつスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることができる発泡樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】発泡樹脂成形品を成形した後にスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させる発泡樹脂成形品の製造方法は、本体部40とリブ部50とを一体的に成形する成形ステップと、倒し込み力F1を作用させてリブ部50を折除することにより本体部40のスキン層41の一部を開口させて発泡層42を露出させるリブ部折除ステップとを有し、成形ステップにおいて、リブ部50の倒し込み力作用面部51と反対側の面部52と、該面部52に倒し込み力F1の作用方向に連続する本体部40の面部43との間の角部31に形成されるスキン層52aを、リブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発泡性樹脂を成形型内に充填することによりスキン層と発泡層とを有する発泡樹脂成形品を成形した後に、スキン層の一部を開口させて発泡層を露出させる発泡樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば自動車用部品などの種々の工業用部品の分野において、軽量性、断熱性及び防音性等の優れた特性を有する発泡樹脂成形品が幅広く採用されている。かかる発泡樹脂成形品は、使用される目的及び用途などに応じて、好適な使用材料を選定し、また、成形品内部の気泡の形態や発泡倍率などの諸条件を好適に設定して成形されている。
【0003】
このような発泡樹脂成形品の成形方法として、樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂を固定型と可動型とでなる成形型内に充填した後に、可動型を型開き方向に移動させてキャビティの容積を拡大することにより、発泡性樹脂の発泡を促進させるようにした成形方法(所謂コアバック法)が知られている。
【0004】
かかる成形方法によって成形された発泡樹脂成形品は、成形型内に充填した発泡性樹脂が成形型によって表面から冷却されることにより、発泡樹脂成形品の表面に表面層である非発泡のスキン層が形成されるとともに該スキン層の内側に発泡性樹脂の発泡が促進された発泡層が形成されることとなる。
【0005】
このようにして成形される発泡樹脂成形品を断熱材や防音材として使用する場合、発泡樹脂成形品の表面に形成されるスキン層によって断熱効果や防音効果が低下することとなるので、断熱効果や防音効果を効果的に得るためには表面に形成されるスキン層を取り除くことが望まれる。
【0006】
断熱効果や防音効果が低下することを抑制するためにスキン層を取り除くものではないが、例えば特許文献1には、発泡体の表面に接着性シートを積層した後に、接着性シートと反対側の発泡体面に形成されたスキン層全体をスライス刃によりスライス除去するようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−344459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に記載されるように、表面に形成されるスキン層全体をスライス除去することにより、発泡層が露出して発泡樹脂成形品において断熱効果や防音効果を効果的に得ることができるものの、スキン層全体を除去すると発泡樹脂成形品の強度が大きく低下することが問題となる。
【0009】
これに対し、発泡樹脂成形品を成形した後に表面に形成されるスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることにより、発泡樹脂成形品の強度が低下することを抑制しつつ断熱効果や防音効果を効果的に得ることができるものと考えられる。
【0010】
このように表面に形成されるスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させる方法として、リブ部を発泡樹脂成形品の本体部と一体的に成形した後に、このリブ部を折除することによってリブ部に対応する部分のスキン層を開口させて発泡層を露出させることが考えられる。
【0011】
図6は、発泡樹脂成形品においてスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させる方法を説明するための説明図であり、図6(a)は、発泡樹脂成形品の本体部とリブ部とを一体的に成形した状態を示し、図6(b)は、リブ部を折除して発泡樹脂成形品の発泡層を露出させた状態を示している。
【0012】
図6(a)に示すように、表面に形成されるスキン層111と該スキン層111の内側に設けられた発泡層112とを有する本体部110と、該本体部110の表面のスキン層111から延びる非発泡のリブ部120とが一体的に形成された発泡樹脂成形品100を成形した後に、前記リブ部120に外部から所定の倒し込み力F1を作用させることにより、図6(b)に示すように、該リブ部120とともに本体部110のスキン層111の一部を開口させて、スキン層111に開口部111aを形成して発泡層112を露出させることが考えられる。
【0013】
図7は、発泡樹脂成形品の本体部とリブ部とを一体的に形成する方法を説明するための説明図であり、図7(a)は、固定型と可動型とでなる成形型内に発泡性樹脂を充填した状態を示し、図7(b)は、成形型内に発泡性樹脂を充填した後に可動型を型開き方向に移動した状態を示している。
【0014】
図6(a)に示す発泡樹脂成形品100は、図7(a)に示すように、固定型131と可動型132とによってキャビティ130aが形成されるとともに固定型131のキャビティ面131aにリブ部120を形成するための凹部131bが設けられた成形型130を用い、成形型130のキャビティ130aに注入経路133を通じて発泡性樹脂135を充填した後に、図7(b)に示すように、可動型132を型開き方向(矢印X1で示す方向)に移動させて発泡性樹脂135の発泡を促進させることにより成形することができる。
【0015】
図8は、発泡樹脂成形品のリブ部を折除した状態を説明するための説明図である。図7に示すようにして成形された発泡樹脂成形品100においてリブ部120を折除するために、図8(a)に示すように、発泡樹脂成形品100のリブ部120に該リブ部120の延びる方向と略直交する方向に外部から所定の倒し込み力F1を作用させると、図8(b)に示すように、リブ部120が倒し込み力F1の作用方向に傾いた後に、図8(c)に示すように、リブ部120が折除され、本体部110のスキン層111の一部を開口させて発泡層112を露出させることができる。
【0016】
しかしながら、このようにしてスキン層111の一部を開口させて発泡層112を露出させる場合、図8(b)及び図8(c)に示すように、リブ部120の倒し込み力作用面部122と反対側の面部123によって発泡層112の一部が窪むように圧潰され、発泡樹脂成形品100の強度が低下する畏れがある。
【0017】
また、図9は、従来の発泡樹脂成形品のリブ部を折除した別の状態を説明するための説明図である。図8(a)に示すように、発泡樹脂成形品100のリブ部120に外部から所定の倒し込み力F1を作用させると、図9に示すように、リブ部120に連続するスキン層111がリブ部120とともに大きく剥離して発泡樹脂成形品100の強度が低下する畏れがある。
【0018】
そこで、本発明は、リブ部を折除する際に発泡層が圧潰されたりリブ部に連続するスキン層が大きく剥離したりすることを抑制して、比較的簡単な方法によって発泡樹脂成形品の強度低下を抑制しつつスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることができる発泡樹脂成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
このため、本願の請求項1に係る発明は、溶融状態の発泡性樹脂を成形型内に充填することにより表面層であるスキン層と該スキン層の内側に設けられる発泡層とを有する発泡樹脂成形品を成形した後に、前記スキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させる発泡樹脂成形品の製造方法であって、発泡樹脂成形品の本体部と、該本体部の表面のスキン層から該表面と略直交する方向に延びるリブ部とを一体的に成形する成形ステップと、該成形ステップの後に、前記リブ部に該リブ部の延びる方向と略直交する方向に外部から所定の倒し込み力を作用させて該リブ部を折除することにより、前記本体部のスキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させるリブ部折除ステップと、を有し、前記成形ステップにおいて、前記リブ部の倒し込み力作用面部と反対側の面部と、該面部に前記倒し込み力の作用方向に連続する前記本体部の面部との間の角部に形成されるスキン層を、前記リブ部の倒し込み力作用面部に形成されるスキン層よりも薄く形成させるようにした、ことを特徴とする。
【0020】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記成形ステップにおいて、前記リブ部の倒し込み力作用面部に形成されるスキン層を、前記倒し込み力の作用方向において前記リブ部の少なくとも略中央部まで形成させるようにした、ことを特徴とする。
【0021】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記成形ステップにおいて、前記角部に、前記本体部から前記リブ部の延びる方向に突出するとともにスキン層と発泡層とを有する突出部を形成させるようにした、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本願の請求項1に係る発明によれば、発泡樹脂成形品の本体部と該本体部の表面から延びるリブ部とを一体的に成形する成形ステップと、倒し込み力を作用させてリブ部を折除することにより本体部のスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させるリブ部折除ステップとを有し、成形ステップでは、リブ部の倒し込み力作用面部と反対側の面部と、該面部に倒し込み力の作用方向に連続する本体部の面部との間の角部に形成されるスキン層を、リブ部の倒し込み力作用面部に形成されるスキン層よりも薄く形成させるようにしたことにより、リブ部を折除する際に発泡層が圧潰されたりリブ部に連続するスキン層が大きく剥離したりすることを抑制して、比較的簡単な方法によって発泡樹脂成形品の強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形品のスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることができる。したがって、強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形品の防音効果及び断熱効果を向上させることができる発泡樹脂成形品を比較的容易に製造することができる。
【0023】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、成形ステップにおいて、リブ部の倒し込み力作用面部に形成されるスキン層を、倒し込み力の作用方向においてリブ部の少なくとも略中央部まで形成させるようにしたことにより、リブ部の倒し込み力作用面部の強度を高めることができるので、リブ部を折除する際にリブ部の倒し込み力作用面部と本体部との間の角部に応力を集中させてリブ部をより確実に折除することができ、前記効果をより確実に得ることができる。
【0024】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、成形ステップにおいて、前記角部に、本体部からリブ部の延びる方向に突出するとともにスキン層と発泡層とを有する突出部を形成させるようにしたことにより、リブ部を折除する際に本体部の発泡層が圧潰されることをさらに抑制することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る発泡樹脂成形品の成形装置を示す概略説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る発泡樹脂成形品の断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る発泡樹脂成形品の断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る発泡樹脂成形品の断面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係る発泡樹脂成形品の断面図である。
【図6】発泡樹脂成形品においてスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させる方法を説明するための説明図である。
【図7】発泡樹脂成形品の本体部とリブ部とを一体的に成形する方法を説明するための説明図である。
【図8】発泡樹脂成形品のリブ部を折除した状態を説明するための説明図である。
【図9】発泡樹脂成形品のリブ部を折除した別の状態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る発泡樹脂成形品の成形装置を示す概略説明図である。図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る発泡樹脂成形品を成形するための成形装置Mは、開閉可能な成形型10と、成形型10内に溶融状態の発泡性樹脂を注入する注入手段として射出装置20とを備えている。
【0027】
成形型10は、常時静止状態に維持される固定型11と、固定型11に対して成形型10の開閉方向(図1の矢印X2方向)に移動可能に設けられた可動型12とで構成され、固定型11と可動型12を互いに組み合わせることで、発泡樹脂成形品の所定形状に対応したキャビティ10aが形成されている。
【0028】
本実施形態では、発泡樹脂成形品は、製品形状となる本体部と該本体部の表面のスキン層から該表面に略直交する方向に延びるリブ部とが一体的に形成されるので、固定型11は、発泡樹脂成形品の本体部の形状に応じてキャビティ面11aが形成されるとともに発泡樹脂成形品のリブ部の形状に応じてキャビティ面11aに凹状に四角柱状に窪んで形成される凹部11bが設けられている。
【0029】
また、本実施形態では、成形型10は金属製の材料を用いて形成されるが、固定型11の凹部11bを構成する側壁部11cの一部が成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料によって形成されている。具体的には、図1に示すように、固定型11において、凹部11bを構成する側壁部11cの一部が成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料、例えば耐熱性を有するポリイミド材料からなるシート部材15によって形成されている。
【0030】
なお、シート部材15は、後述するように、発泡樹脂成形品の本体部とリブ部とを一体的に成形した後に、リブ部をリブ部の延びる方向と略直交する方向に外部から所定の倒し込み力を作用させてリブ部を折除する際に、リブ部の外部から倒し込み力が作用する面部と反対側の面部を成形する部分に設けられている。
【0031】
可動型12もまた、発泡樹脂成形品の本体部の形状に応じてキャビティ面12aが形成されている。前述したように、可動型12は、成形型10の開閉方向に移動可能に構成され、溶融状態の発泡性樹脂を成形型10のキャビティ10a内に充填した後に型開き方向に移動することができるようになっている。なお、成形型10には、固定型11及び可動型12のキャビティ面11a及び12aをそれぞれ所定温度に保持するための冷却水路(不図示)が設けられている。
【0032】
一方、射出装置20は、溶融状態の発泡性樹脂21を成形型10のキャビティ10aに注入するものであり、樹脂22を混練溶融させるシリンダ23を備え、シリンダ23の内部にはスクリュー24が備えられている。また、スクリュー24の後端には、スクリュー駆動機構及び射出機構(共に不図示)が連結されている。
【0033】
射出装置20では、シリンダ23の周囲に設けられた加熱ヒータ(不図示)とスクリュー24とによって、シリンダ23に投入された樹脂22を順次加熱するとともに混練溶融させる。そして、混練溶融された樹脂22に対し、二酸化炭素又は窒素等の不活性ガスを含むボンベ25から超臨界流体発生装置26を介して超臨界状態にされた前記不活性ガスが、超臨界流体注入装置27によって注入され、樹脂22に発泡剤を含有させた発泡性樹脂21が形成される。
【0034】
シリンダ23内の発泡性樹脂21は、スクリュー24が前記スクリュー駆動機構によって回転されるとともに前記射出機構によって射出されることによって成形型10のキャビティ10aに注入される。成形型10、具体的には固定型11には、発泡性樹脂21を成形型10内に注入するための注入経路16が設けられている。
【0035】
本実施形態では、樹脂22としては、例えばポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられる。また、本実施形態では、発泡性樹脂21に含有される発泡剤に、物理発泡剤として超臨界状態にある流体を用いているが、その他の物理発泡剤を用いてもよい。あるいは、化学発泡剤を使用することも可能である。
【0036】
また、具体的には図示しなかったが、成形装置Mは、該成形装置Mを総合的に制御する制御ユニットを備えている。該制御ユニットは、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成されており、成形型10の作動制御、射出装置20の作動制御等の各種制御を行うように構成されている。
【0037】
次に、前記成形装置Mを用いた発泡樹脂成形品の成形について説明する。
図1に示すように成形型10が型閉じされた状態で、成形型10のキャビティ10aに、樹脂22に発泡剤として超臨界状態の流体を含有させた発泡性樹脂21が射出装置20から注入され、溶融状態の発泡性樹脂21が成形型10内に充填された後に、図7に関して説明した方法と同様に、成形型10のキャビティ10aの容積を拡大させるように可動型12が型開き方向に移動され、発泡樹脂成形品が成形される。
【0038】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る発泡樹脂成形品の断面図である。図1に示す成形型10を用いて発泡樹脂成形品を成形すると、図2に示すように、製品形状となる本体部40と、本体部40の表面から該表面と略直交する方向に延びる四角柱状のリブ部50とが一体的に形成された発泡樹脂成形品30が成形される。
【0039】
発泡樹脂成形品30の本体部40は、その表面が表面層である非発泡のスキン層41によって形成されるとともに、スキン層41の内側に発泡性樹脂21の発泡が促進された発泡層42が形成されている。
【0040】
一方、本体部40の表面のスキン層41から該表面と略直交する方向に延びるリブ部50は、外部から所定の倒し込み力F1が作用されることとなる倒し込み力作用面部51と反対側の面部(以下、適宜「反倒し込み力作用面部」という)52と、該面部52に倒し込み力F1の作用方向に連続する本体部40の面部43との間の角部31に形成されるスキン層が、リブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成される。具体的には、リブ部50の反倒し込み力作用面部52に形成されるスキン層52aが、倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成される。
【0041】
本実施形態では、発泡樹脂成形品30のリブ部50における反倒し込み力作用面部52を成形するための固定型11のキャビティ面11aにおける凹部11bの側壁部11cの一部が成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料からなるシート部材15によって形成されているので、発泡性樹脂21を成形型10内に充填した際にリブ部50の反倒し込み力作用面部52のスキン層52aが、リブ部50の倒し込み力作用面部51のスキン層51aよりも薄く形成されることとなる。
【0042】
また、発泡樹脂成形品30は、図2に示すように、リブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aが、倒し込み力F1の作用方向においてリブ部50の少なくとも略中央部まで形成され、リブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aとリブ部50の反倒し込み力作用面部52に形成されるスキン層52aとの間には発泡層が形成されている。
【0043】
次に、このようにして成形された発泡樹脂成形品30を成形装置Mから取り出した後に、発泡樹脂成形品30のリブ部50に、リブ部50の延びる方向と略直交する方向に外部から所定の倒し込み力F1を作用させてリブ部50を折除すると、図6(b)に示すように、本体部40のスキン層41の一部が開口して発泡層42が露出した発泡樹脂成形品30を製造することができる。
【0044】
このように、本実施形態に係る発泡樹脂成形品の製造方法は、発泡樹脂成形品30の本体部40と本体部40の表面から延びるリブ部50とを一体的に成形する成形ステップと、倒し込み力F1を作用させてリブ部50を折除することにより本体部40のスキン層41の一部を開口させて発泡層42を露出させるリブ部折除ステップとを有し、成形ステップでは、リブ部50の倒し込み力作用面部51と反対側の面部52と、該面部52に倒し込み力F1の作用方向に連続する本体部40の面部43との間の角部31に形成されるスキン層52aを、リブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成させるようにしている。
【0045】
これにより、リブ部を折除する際に発泡層が圧潰されたりリブ部に連続するスキン層が大きく剥離したりすることを抑制して、比較的簡単な方法によって発泡樹脂成形品の強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形品のスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることができる。したがって、強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形品の防音効果及び断熱効果を向上させることができる発泡樹脂成形品を比較的容易に製造することができる。
【0046】
また、成形ステップにおいて、リブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aを、倒し込み力F1の作用方向においてリブ部50の少なくとも略中央部まで形成させるようにしたことにより、リブ部50の倒し込み力作用面部51の強度を高めることができるので、リブ部50を折除する際にリブ部50の倒し込み力作用面部51と本体部40との間の角部32に応力を集中させてリブ部50をより確実に折除することができ、前記効果をより確実に得ることができる。
【0047】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る発泡樹脂成形品の断面図である。本発明の第2の実施形態に係る発泡樹脂成形品60は、本発明の第1の実施形態に係る発泡樹脂成形品30と同様に、リブ部50と本体部40との間の角部31に形成されるスキン層が、リブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成されるものであるが、リブ部50の反倒し込み力作用面部52に倒し込み力F1の作用方向に連続する本体部40の面部43に形成されるスキン層がリブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成されるものである。なお、第1の実施形態と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0048】
図3に示すように、本発明の第2の実施形態に係る発泡樹脂成形品60は、第1の実施形態に係る発泡樹脂成形品30と同様に、製品形状となる本体部40と、本体部40の表面から該表面に略直交する方向に延びるリブ部50とが一体的に形成され、リブ部50と本体部40との間の角部31に形成されるスキン層がリブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成される。
【0049】
しかしながら、発泡樹脂成形品60では、リブ部50の倒し込み力作用面部51のスキン層51aとリブ部50の反倒し込み力作用面部52のスキン層52aが連続してリブ部50全体が非発泡のスキン層で形成されるとともに、リブ部50の反倒し込み力作用面部52に倒し込み力F1の作用方向に連続する本体部40の面部43がリブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成される。
【0050】
この発泡樹脂成形品60は、図1に示す成形装置Mにおいて、リブ部50の反倒し込み力作用面部52に倒し込み力F1の作用方向に連続する本体部40の面部43を成形するための固定型11のキャビティ面11aが成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料からなるシート部材によって形成された成形型10を用いることで、前述した発泡樹脂成形品30と同様にして成形することができる。
【0051】
このようにして成形された発泡樹脂成形品60においても、発泡樹脂成形品60のリブ部50に、リブ部50の延びる方向と略直交する方向に外部から所定の倒し込み力F1を作用させてリブ部50を折除すると、図6(b)に示すように、本体部40のスキン層41の一部が開口して発泡層42が露出した発泡樹脂成形品60を製造することができる。
【0052】
このように、リブ部50の反倒し込み力作用面部52に倒し込み力F1の作用方向に連続する本体部40の面部43がリブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成される場合においても、リブ部を折除する際に発泡層が圧潰されたりリブ部に連続するスキン層が大きく剥離したりすることを抑制して、比較的簡単な方法によって発泡樹脂成形品の強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形品のスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることができる。
【0053】
図4は、本発明の第3の実施形態に係る発泡樹脂成形品の断面図である。本発明の第3の実施形態に係る発泡樹脂成形品70は、本発明の第1の実施形態に係る発泡樹脂成形品30と同様に、リブ部50と本体部40との間の角部31に形成されるスキン層が、リブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成されるものであるが、リブ部50の反倒し込み力作用面部52に形成されるスキン層52a及びリブ部50の反倒し込み力作用面部52に倒し込み力F1の作用方向に連続する本体部40の面部43に形成されるスキン層がリブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成されるものである。なお、第1の実施形態と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
図4に示すように、本発明の第3の実施形態に係る発泡樹脂成形品70は、第1の実施形態に係る発泡樹脂成形品30と同様に、製品形状となる本体部40と、本体部40の表面から該表面に略直交する方向に延びるリブ部50とが一体的に形成され、リブ部50と本体部40との間の角部31に形成されるスキン層がリブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成される。
【0055】
しかしながら、発泡樹脂成形品70では、リブ部50の反倒し込み力作用面部52に形成されるスキン層52aがリブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成されるとともに、リブ部50の反倒し込み力作用面部52に倒し込み力F1の作用方向に連続する本体部40の面部43に形成されるスキン層がリブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成される。
【0056】
この発泡樹脂成形品70は、図1に示す成形装置Mにおいて、リブ部50における反倒し込み力作用面部52を成形するための固定型11のキャビティ面11a及びリブ部50の反倒し込み力作用面部52に倒し込み力F1の作用方向に連続する本体部40の面部43を成形するための固定型11のキャビティ面11aが成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料からなるシート部材によって形成された成形型10を用いることで、前述した発泡樹脂成形品30と同様にして成形することができる。
【0057】
このようにして成形された発泡樹脂成形品70においても、発泡樹脂成形品70のリブ部50に、リブ部50の延びる方向と略直交する方向に外部から所定の倒し込み力F1を作用させてリブ部50を折除すると、図6(b)に示すように、本体部40のスキン層41の一部が開口して発泡層42が露出した発泡樹脂成形品70を製造することができる。
【0058】
このように、リブ部50の反倒し込み力作用面部52に形成されるスキン層52aがリブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成されるとともに、リブ部50の反倒し込み力作用面部52に倒し込み力F1の作用方向に連続する本体部40の面部43がリブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成される場合においても、リブ部を折除する際に発泡層が圧潰されたりリブ部に連続するスキン層が大きく剥離したりすることを抑制して、比較的簡単な方法によって発泡樹脂成形品の強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形品のスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることができる。
【0059】
図5は、本発明の第4の実施形態に係る発泡樹脂成形品の断面図である。本発明の第4の実施形態に係る発泡樹脂成形品80は、本発明の第1の実施形態に係る発泡樹脂成形品30と同様に、リブ部50と本体部40との間の角部31に形成されるスキン層が、リブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成されるものであるが、角部31に、本体部40からリブ部50の延びる方向に突出する突出部が形成されたものである。なお、第1の実施形態と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
図5に示すように、本発明の第2の実施形態に係る発泡樹脂成形品80は、第1の実施形態に係る発泡樹脂成形品30と同様に、製品形状となる本体部40と、本体部40の表面から該表面に略直交する方向に延びるリブ部50とが一体的に形成され、リブ部50と本体部40との間の角部31に形成されるスキン層がリブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成される。
【0061】
しかしながら、発泡樹脂成形品80では、リブ部50の反倒し込み力作用面部52とリブ部50の反倒し込み力作用面部52に倒し込み力F1の作用方向に連続する本体部40の面部43との間の角部31に、リブ部50と本体部40との間に突出する突出部35が形成され、突出部35は、本体部40からリブ部50の延びる方向に突出するように形成されるとともにリブ部50と本体部40との間の角部31に沿って略四角柱状に形成される。
【0062】
また、発泡樹脂成形品80では、突出部35は、該突出部35の表面に形成される非発泡のスキン層と該スキン層の内側に設けられる発泡層とを有するように形成され、該スキン層は、リブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成される。
【0063】
この発泡樹脂成形品80は、図1に示す成形装置Mにおいて、発泡樹脂成形品80の突出部35の形状に対応してキャビティ面11aに凹状に窪んで形成される溝部が設けられるととともに、該溝部が成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料からなるシート部材によって形成された成形型10を用いることで、前述した発泡樹脂成形品30と同様にして成形することができる。
【0064】
このようにして成形された発泡樹脂成形品80においても、発泡樹脂成形品80のリブ部50に、リブ部50の延びる方向と略直交する方向に外部から所定の倒し込み力F1を作用させてリブ部50を折除すると、本体部40のスキン層41の一部が開口して発泡層42が露出した発泡樹脂成形品80を製造することができる。
【0065】
このように、発泡樹脂成形品80の角部31に突出部35を形成させる場合においても、リブ部50と本体部40との間の角部31に形成されるスキン層が、リブ部50の倒し込み力作用面部51に形成されるスキン層51aよりも薄く形成されることにより、リブ部を折除する際に発泡層が圧潰されたりリブ部に連続するスキン層が大きく剥離したりすることを抑制して、比較的簡単な方法によって発泡樹脂成形品の強度低下を抑制しつつ発泡樹脂成形品のスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることができる。
【0066】
また、発泡樹脂成形品80の角部31に、本体部40からリブ部50の延びる方向に突出するとともにスキン層と発泡層とを有する突出部35を形成させることにより、リブ部を折除する際に本体部の発泡層が圧潰されることをさらに抑制することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0067】
本実施形態では、固定型11のキャビティ面11aに発泡樹脂成形品のリブ部50に対応する凹部11bが形成され、該凹部11bの一部が成形型10の他の部分よりも熱伝導率の低い材料からなるシート部材15によって形成されているが、リブ部50に対応する凹部を可動型12に設けるようにすることも可能である。また、本実施形態では、発泡層を露出させるために折除されるリブ部50が四角柱状に形成されているが、これに限定されるものではなく、円柱状などの他の形状に形成することも可能である。
【0068】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、本発明によれば、発泡樹脂成形品の強度低下を抑制しつつスキン層の一部を開口させて発泡層を露出させることができることが可能となるから、樹脂成形の技術分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0070】
10、130 成形型
21、135 発泡性樹脂
30、60、70、80、100 発泡樹脂成形品
31、32 角部
35 突出部
40、110 本体部
41、111 スキン層
42、112 発泡層
50、120 リブ部
51、122 倒し込み力作用面部
52、123 倒し込み力作用面部と反対側の面部
F1 倒し込み力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融状態の発泡性樹脂を成形型内に充填することにより表面層であるスキン層と該スキン層の内側に設けられる発泡層とを有する発泡樹脂成形品を成形した後に、前記スキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させる発泡樹脂成形品の製造方法であって、
発泡樹脂成形品の本体部と、該本体部の表面のスキン層から該表面と略直交する方向に延びるリブ部とを一体的に成形する成形ステップと、
該成形ステップの後に、前記リブ部に該リブ部の延びる方向と略直交する方向に外部から所定の倒し込み力を作用させて該リブ部を折除することにより、前記本体部のスキン層の一部を開口させて前記発泡層を露出させるリブ部折除ステップと、
を有し、
前記成形ステップにおいて、前記リブ部の倒し込み力作用面部と反対側の面部と、該面部に前記倒し込み力の作用方向に連続する前記本体部の面部との間の角部に形成されるスキン層を、前記リブ部の倒し込み力作用面部に形成されるスキン層よりも薄く形成させるようにした、
ことを特徴とする発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記成形ステップにおいて、前記リブ部の倒し込み力作用面部に形成されるスキン層を、前記倒し込み力の作用方向において前記リブ部の少なくとも略中央部まで形成させるようにした、
ことを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記成形ステップにおいて、前記角部に、前記本体部から前記リブ部の延びる方向に突出するとともにスキン層と発泡層とを有する突出部を形成させるようにした、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発泡樹脂成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−18186(P2013−18186A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153025(P2011−153025)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】