説明

発泡樹脂複合構造体の製造方法

【課題】 軽量でありながら、導電性や防虫などの機能を有する発泡樹脂複合構造体を実現する。
【解決手段】 上面から下面に連通した連通孔が存在し、連通孔の平均径が10〜150μmの母材1の上面に、銅粉が分散された粘度が2000mPa・s以下の樹脂水性エマルションなどの流動性材料4を配置し、減圧装置3を作動して減圧室2dを減圧する。これにより、流動性材料4が母材1の連通孔に浸透し、粉末が連通孔の内壁面に付着する。そして、その母材の乾燥後に樹脂水性エマルションなどの流動性材料を母材に浸透させ、粉末を固着するとともに連通孔を閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発泡樹脂製の母材を利用した発泡樹脂複合構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性や防虫などの機能を有する合成樹脂が提案されている。例えば、エポキシ樹脂などの熱可塑性樹脂に金属粉を混合した液状の樹脂複合材を射出成形し、導電性樹脂成型品を製造する方法が知られている(特許文献1)。また、エポキシ樹脂などの熱可塑性樹脂に防虫剤を混合した液状の樹脂複合材を射出成形し、導電性樹脂成型品を製造する方法が知られている(特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−255517号公報(第25〜39段落、表1,2)
【特許文献2】特開平6−183904号公報(第15〜24段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した従来の各方法によって製造された導電性樹脂成型品は、いずれも熱可塑性樹脂により成型されているため、重量が大きいという問題がある。
【0005】
そこでこの発明は、軽量でありながら、導電性や防虫などの機能を有する発泡樹脂複合構造体を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1ないし請求項19に記載の発明では、隣接する発泡セル(1c)同士が融着することにより独立気泡構造が形成されており、前記独立気泡間が連通することにより一の面(1a)から他の面(1b)に連通した連通孔(1d)が存在する母材(1)と、粉末(7)が分散されており、かつ、前記粉末を前記連通孔の内壁面に付着させる第1の成分が溶解または分散されてなる第1の流動性材料(4)と、前記粉末を前記連通孔の内壁面に付着させる第2の成分が含まれてなる第2の流動性材料(6)と、前記一の面よりも前記他の面における圧力の方が低くなるように前記一の面と他の面との間に差圧を発生させる差圧発生装置(3)と、を用意し、前記第1の流動性材料を前記一の面に配置する第1工程と、前記差圧発生装置によって前記一の面と他の面との間に差圧を発生させることにより、前記一の面に配置された前記第1の流動性材料を前記連通孔に浸透させ、その浸透した第1の流動性材料に含まれる前記粉末が、前記浸透した第1の流動性材料に含まれる前記第1の成分によって前記連通孔の内壁面(1e)に付着した状態を作る第2工程と、前記第2の流動性材料を前記一の面に配置する第3工程と、前記差圧発生装置によって前記一の面と他の面との間に差圧を発生させることにより、前記一の面に配置された前記第2の流動性材料を前記連通孔に浸透させ、その浸透した第2の流動性材料に含まれる前記第2の成分により前記粉末が前記連通孔の内壁面に固着した状態を作る第4工程と、を有するという技術的手段を用いる。
なお、上記の固着とは、付着よりも剥がれにくい状態をいう。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発泡樹脂成型品(5)の製造方法にいおて、前記第4工程が、前記差圧発生装置(3)によって前記一の面(1a)と他の面(1b)との間に差圧を発生させることにより、前記一の面に配置された前記第2の流動性材料(6)を前記連通孔(1d)に浸透させ、その浸透した第2の流動性材料に含まれる前記第2の成分により前記連通孔が閉塞された状態を作る工程であるという技術的手段を用いる。
【0008】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の発泡樹脂複合構造体(5)の製造方法において、前記第2工程において作る状態は、前記粉末(7)が、前記連通孔(1d)の前記一の面(1a)に開口した開口面から所定の深さ(d)の内壁面(1e)まで連続して付着した状態であるという技術的手段を用いる。
【0009】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体(5)の製造方法において、前記第2工程において作る状態は、前記粉末(7)が、前記連通孔(1d)の前記一の面(1a)に開口した開口面から前記他の面(1b)に開口した開口面までの内壁面(1e)に連続して付着した状態であるという技術的手段を用いる。
【0010】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体(5)の製造方法において、前記第2工程は、前記差圧発生装置(3)によって前記一の面(1a)と他の面(1b)との間に差圧を発生させることにより、前記一の面に配置された前記第1の流動性材料(4)を前記一の面から前記連通孔(1d)に浸透させるとともに前記一の面に残留させ、前記粉末(7)が前記連通孔の内壁面(1e)から前記一の面に連続して付着した状態を作る工程であり、前記第4工程は、前記差圧発生装置によって前記一の面と他の面との間に差圧を発生させることにより、前記一の面に配置された前記第2の流動性材料(6)を前記連通孔に浸透させるとともに前記一の面に残留させ、その第2の流動性材料に含まれる前記第2の成分により前記粉末が前記連通孔の内壁面から前記一の面に連続して固着した状態を作る工程であるという技術的手段を用いる。
【0011】
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の発泡樹脂成型品(5)の製造方法において、前記第2の成分が樹脂であるという技術的手段を用いる。
【0012】
請求項7に記載の発明では、請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の発泡樹脂成型品(5)の製造方法において、前記第1および第2の成分が樹脂であるという技術的手段を用いる。
【0013】
請求項8に記載の発明では、請求項6または請求項7に記載の発泡樹脂複合構造体(5)の製造方法において、前記第4工程は、前記前記差圧発生装置(3)によって前記一の面(1a)と他の面(1b)との間に差圧を発生させることにより、前記一の面に配置された前記第2の流動性材料(4)を前記連通孔(1d)に浸透させるとともに前記一の面に残留させ、その浸透した第2の流動性材料に含まれる前記第2の成分により前記粉末(7)が前記連通孔の内壁面(1e)に固着した状態を作るとともに前記第2の成分により前記一の面に膜(6a)を形成する工程であるという技術的手段を用いる。
【0014】
請求項9に記載の発明では、請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体(5)の製造方法において、前記第1および第2の流動性材料(4,6)の粘度がそれぞれ2000mPa・s以下であるという技術的手段を用いる。
【0015】
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載の発泡樹脂成型品(5)の製造方法において、前記第1の成分が少なくとも1vol%以上であるという技術的手段を用いる。
【0016】
請求項11に記載の発明では、請求項9または請求項10に記載の発泡樹脂複合構造体(5)の製造方法において、前記連通孔(1d)の平均径が10〜150μmであるという技術的手段を用いる。
【0017】
請求項12に記載の発明では、請求項11に記載の発泡樹脂複合構造体(5)の製造方法において、前記第1および第2の成分と前記粉末との合計の体積率を前記連通孔の平均径に応じてそれぞれ18〜95vol%の中から選択するという技術的手段を用いる。
【0018】
請求項13に記載の発明では、請求項1ないし請求項12のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体(5)の製造方法において、前記粉末(7)が導電性粉末および磁性粉末の少なくとも一方であるという技術的手段を用いる。
【0019】
請求項14に記載の発明では、請求項13に記載の発泡樹脂複合構造体(5)の製造方法において、前記導電性粉末(7)が少なくとも銅からなる粉末であるという技術的手段を用いる。
【0020】
請求項15に記載の発明では、請求項13または請求項14に記載の発泡樹脂複合構造体(5)の製造方法において、前記磁性粉末(7)が少なくともフェライトからなる粉末であるという技術的手段を用いる。
【0021】
請求項16に記載の発明では、請求項1ないし請求項15のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体(5)の製造方法において、前記粉末(7)が少なくともホウ酸からなる粉末であるという技術的手段を用いる。
【0022】
請求項17に記載の発明では、請求項1ないし請求項16のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法において、前記第1の流動性材料(4)は、アクリル系、合成ゴム系、酢酸ビニル系、エチレン系、エポキシ系およびウレタン系の少なくとも1つからなる溶剤型または分散型の樹脂であるという技術的手段を用いる。
【0023】
請求項18に記載の発明では、請求項1ないし請求項17のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体(5)の製造方法において、前記第2の流動性材料(6)は、アクリル系、合成ゴム系、酢酸ビニル系、エチレン系、エポキシ系およびウレタン系の少なくとも1つからなる溶剤型または分散型の樹脂であるという技術的手段を用いる。
【0024】
請求項19に記載の発明では、請求項17または請求項18に記載の発泡樹脂複合構造体(5)の製造方法において、前記第1の流動性材料(4)は、樹脂水性エマルションであるという技術的手段を用いる。
【0025】
請求項20に記載の発明では、請求項17ないし請求項19のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体(5)の製造方法において、前記第2の流動性材料(6)は、樹脂水性エマルションであるという技術的手段を用いる。
【0026】
なお、請求項1ないし請求項20に記載の母材とは、金型内に発泡ビーズなどの発泡樹脂原料を充填し、それを加熱発泡させて成型した金型の形状通りの発泡樹脂成型体そのもの、あるいは、その発泡樹脂成型体を、加熱したニクロム線などによって溶断して作成された発泡樹脂成型体のことである。
【0027】
また、上記の発泡樹脂成型体には、上記の金型の形状通りの発泡樹脂成型体そのもの、または、上記の溶断により作成された発泡樹脂成型体の所定の表面を粗面化した発泡樹脂成型体などが含まれる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0028】
(請求項1ないし請求項20に係る発明の効果)
発泡樹脂製の母材に形成された連通孔の内壁面に粉末を固着することができるため、その粉末が持つ機能を母材に与えることができる。
従って、軽量でありながら、粉末が持つ機能を有する発泡樹脂複合構造体を実現することができる。
【0029】
特に、母材は、隣接する発泡セル同士が融着することにより独立気泡構造が形成された、いわゆる発泡樹脂成型品であるため、連通孔は母材の各面に多数存在する。このため、第1の流動性材料を浸透させた面は、粉末が内壁面に固着した連通孔が多数開口しているため、粉末が持つ機能が最大に発揮される。
【0030】
例えば、粉末として導電性粉末または磁性粉末を用いれば、軽量でありながら、導電性または磁性を有する発泡樹脂複合構造体を実現することができる。この発泡樹脂複合構造体は、例えば、電磁シールド材や帯電防止材などとして用いることができる。
また、粉末としてホウ酸を用いれば、軽量でありながら、生物忌避効果を有する発泡樹脂複合構造体を実現することができる。この発泡樹脂複合構造体は、例えば、防虫効果を有する外壁断熱ボードなどの建材として用いることができる。また、海上構造物に浮力を与えるフロートとして用いれば、貝や藻などの生物がフロートに付着するのを防止することができる。
【0031】
(請求項2に係る発明の効果)
発泡樹脂製の母材に形成された連通孔を閉塞することができるため、連通孔から粉末がこぼれるおそれのない発泡樹脂複合構造体を実現することができる。また、発泡樹脂複合構造体を水に接触する用途に用いる場合は、連通孔を介して水漏れが発生するおそれのない発泡樹脂複合構造体を実現することができる。
【0032】
例えば、冷蔵庫やエアコンなどの水受皿(ドレンパン)として用いれば、軽量かつ水漏れの発生しない水受皿を実現することができる。
また、例えば、粉末として導電性粉末または磁性粉末を用いれば、軽量でありながら、導電性または磁性を有し、かつ、導電性粉末または磁性粉末が連通孔から漏れるおそれがない発泡樹脂複合構造体を実現することができる。従って、導電性粉末または磁性粉末が漏れることにより、導電性または磁性が低下するおそれがない。
【0033】
また、粉末としてホウ酸を用いれば、軽量でありながら、生物忌避効果を有し、かつ、ホウ酸が連通孔から漏れるおそれがない発泡樹脂複合構造体を実現することができる。従って、ホウ酸が漏れることにより、生物忌避効果が低下するおそれがない。
さらに、ホウ酸が連通孔の内壁面に固着した発泡樹脂複合構造体を外壁断熱材などに用いれば、シロアリを寄せ付けず、かつ、雨水の漏れるおそれのない外壁断熱材を実現することができる。
【0034】
(請求項3に係る発明の効果)
粉末が、連通孔の一の面に開口した開口面から所定の深さの内壁面まで連続して付着した状態を作ることができるため、母材の一の面にのみ粉末が付着しているものと比較して、母材に含有されている粉末の量を多くすることができる。
従って、粉末が持つ機能を発揮する時間を長くすることができる。また、母材の一の面に傷が付いた場合であっても、その傷が付いた領域にも粉末が露出するため、粉末が持つ機能が部分的に失われるおそれがない。
【0035】
例えば、粉末としてホウ酸を用いれば、軽量でありながら、生物忌避効果の持続時間の長い発泡樹脂複合構造体を実現することができる。また、傷が付いても生物忌避効果が部分的に失われるおそれがない。
また、粉末として導電性粉末または磁性粉末を用いれば、傷が付いても導電性または磁性が部分的に失われるおそれがない。
【0036】
(請求項4に係る発明の効果)
粉末が、連通孔の一の面に開口した開口面から他の面に開口した開口面までの内壁面に連続して付着した状態を作ることができるため、粉末が持つ機能を連通孔の一端から他端まで連続させることができる。
従って、粉末の持つ機能が一の面から他の面まで連続した発泡樹脂複合構造体を実現することができる。
【0037】
例えば、粉末として導電性粉末を用いれば、軽量でありながら、一の面と他の面との間が導通した発泡樹脂複合構造体を実現することができる。
また、粉末としてホウ酸を用いれば、軽量でありながら、一の面および他の面の両面に生物忌避効果を有する発泡樹脂複合構造体を実現することができる。
【0038】
(請求項5に係る発明の効果)
粉末が連通孔の内壁面および母材の一の面に固着し、かつ、連通孔の内壁面から母材の一の面まで連続した状態を作ることができるため、粉末が持つ機能を母材の一の面から連通孔の内壁面まで連続させることができる。
【0039】
特に、粉末が母材の一の面にも固着するため、連通孔の内壁面にのみ固着したものよりも母材の一の面における粉末の密度を高くすることができるので、一の面における粉末の持つ効果を大きくすることができる。
【0040】
例えば、粉末として導電性粉末を用いれば、軽量でありながら、一の面における電気抵抗の小さい発泡樹脂複合構造体を実現することができる。また、粉末として導電性粉末または磁性粉末を用いれば、軽量でありながら、電磁シールド効果の大きい発泡樹脂複合構造体を実現することができる。
また、粉末としてホウ酸を用いれば、軽量でありながら、一の面における生物忌避効果の大きい発泡樹脂複合構造体を実現することができる。
【0041】
(請求項6に係る発明の効果)
第2の成分が樹脂であるため、連通孔の内壁面や母材の一の面に対する粉末の固着力を大きくすることができるので、粉末が連通孔の内壁面や母材の一の面から剥がれ難い発泡樹脂複合構造体を実現することができる。
【0042】
(請求項7に係る発明の効果)
第1の成分が樹脂であるため、第2工程において連通孔の内壁面に付着した粉末が剥がれ難い。つまり、第4工程を開始する前に粉末の付着位置が変動するおそれが少ない。
また、第2の成分が樹脂であるため、連通孔の内壁面や母材の一の面に対する粉末の固着力を大きくすることができるので、粉末が連通孔の内壁面や母材の一の面から剥がれ難い発泡樹脂複合構造体を実現することができる。
【0043】
(請求項8に係る発明の効果)
第2の成分により母材の一の面に膜を形成するため、その一の面に固着した粉末をより一層剥がれ難くすることができる。
また、母材の一の面に開口している連通孔を総て閉塞することができるため、連通孔から漏れる粉末をなくすことができる。さらに、水漏れもなくすことができる。
【0044】
(請求項9に係る発明の効果)
第1の流動性材料の粘度が2000mPa・s以下であるため、第1の流動性材料を母材の連通孔に浸透させ易いので、第1の流動性材料に分散されている粉末を連通孔の内部まで到達させ易い。また、第2の流動性材料の粘度も2000mPa・s以下であるため、第2の流動性材料を母材の連通孔に浸透させ易いので、連通孔の内壁面に付着している粉末を第2の成分によって固着させ易い。
【0045】
(請求項10に係る発明の効果)
第1の成分が少なくとも1vol%以上であれば、粉末を連通孔の内壁面に付着させることができる。
【0046】
(請求項11に係る発明の効果)
連通孔の平均径が10〜150μmであるため、第1および第2の流動性材料を母材の連通孔に浸透させ易い。
【0047】
(請求項12に係る発明の効果)
第1および第2の成分と粉末との合計の体積率を母材の連通孔の平均径に応じてそれぞれ18〜95vol%の中から選択することにより、第1および第2の成分と粉末とを効率良くかつ低コストで母材の連通孔に浸透させることができる。
【0048】
(請求項13に係る発明の効果)
導電性粉末および磁性粉末の少なくとも一方が第1の流動性材料に分散されているため、導電性および磁性の少なくとも一方の性質を発泡樹脂複合構造体に持たせることができる。
【0049】
(請求項14に係る発明の効果)
少なくとも銅からなる粉末が第1の流動性材料に分散されてなるため、少なくとも導電性を発泡樹脂複合構造体に持たせることができる。
【0050】
(請求項15に係る発明の効果)
少なくともフェライトからなる粉末が第1の流動性材料に分散されてなるため、少なくとも磁性を発泡樹脂複合構造体に持たせることができる。
【0051】
(請求項16に係る発明の効果)
少なくともホウ酸からなる粉末が第1の流動性材料に分散されてなるため、少なくとも生物を忌避する性質などを発泡樹脂複合構造体に持たせることができる。
【0052】
(請求項17に係る発明の効果)
第1の流動性材料は、アクリル系、合成ゴム系、酢酸ビニル系、エチレン系、エポキシ系およびウレタン系の少なくとも1つからなる溶剤型または分散型の樹脂であるため、第1の流動性材料に分散されている粉末を樹脂の接着力を利用して連通孔の内壁面に付着させ易い。
【0053】
(請求項18に係る発明の効果)
第2の流動性材料は、アクリル系、合成ゴム系、酢酸ビニル系、エチレン系、エポキシ系およびウレタン系の少なくとも1つからなる溶剤型または分散型の樹脂であるため、連通孔の内壁面に付着している粉末の付着力を増大し、連通孔の内壁面に固着した状態にすることができる。
【0054】
(請求項19に係る発明の効果)
第1の流動性材料は、樹脂水性エマルションであるため、母材を溶解しない。また、水で希釈することにより容易に粘度調整をすることができる。さらに、VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)の発生が少ない。
【0055】
(請求項20に係る発明の効果)
第2の流動性材料は、樹脂水性エマルションであるため、母材を溶解しない。また、水で希釈することにより容易に粘度調整をすることができる。さらに、VOCの発生が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
〈第1実施形態〉
この発明の実施形態に係る発泡樹脂複合構造体の製造方法ついて図を参照しながら説明する。
【0057】
[母材の構造]
発泡樹脂複合構造体を製造するための母材の構造について図を参照しながら説明する。
図1は、母材の説明図であり、(a)は母材の斜視図、(b)は(a)に示す領域Dの拡大図である。図1(b)に示すように、母材1は、発泡ビーズなどの発泡樹脂成型原料が発泡して形成された発泡セル1cが多数集合して形成されている。各発泡セル1cは、加熱により相互に融着している。
【0058】
各発泡セル1cの間には、空隙1dが形成されており、各空隙1dはそれぞれ独立している。つまり、母材1は独立気泡構造に形成されている。但し、一部の空隙1d同士は連通しており、それにより、母材1には、一の面1aから他の面1bに連通した連通孔が多数形成されている。連通孔は、母材1の表面および裏面間に存在するだけでなく、表面および側面間または裏面および側面間にも存在する。
【0059】
[実験1]
本願発明者らは、母材1の連通孔に浸透可能な流動性材料の粘度の上限値を求めるための実験を行った。
【0060】
(装置)
母材1に流動性材料を浸透させるための装置について図を参照して説明する。図2は、装置に母材1および流動性材料4がセットされた状態の縦断面図である。
【0061】
装置は、容器2と、減圧装置3とを備える。容器2の上面は開口しており、その内部は中仕切り2aによって上下二つの空間に分かれている。上部空間2bは、母材1および流動性材料4を収容する空間に形成されており、下部空間2cは、減圧室2dになっている。中仕切り2aには、上部空間2bから減圧室2dに連通する通気口2eが複数箇所に貫通形成されている。減圧室2dは、減圧室2dの側壁に貫通形成された排気口2fに連通しており、排気口2fは、管3aを介して減圧装置3と接続されている。この実験では、減圧装置3として、減圧室2dの圧力を調整可能な真空ポンプを使用した。
【0062】
(実験内容)
流動性材料4として、粘度が1mPa・sの水と、この水よりも粘度の高い酢酸ビニル溶液とを用いた。また、酢酸ビニル溶液を希釈して粘度の異なる複数種類の流動性材料を作った。酢酸ビニル溶液は、メタノールで希釈した。母材1として、材質がEPS(Expanded Poly-Styrene:ビーズ法ポリスチレンフォーム)で、発泡倍率が異なり、連通孔の平均径が異なるものを複数種類用意した。その用意した母材1のうち連通孔の平均径が最も小さいものは12μmであり、最も大きいものは130μmである。また、各母材1の厚さは、25mmである。なお、連通孔の平均径の算出方法については後述する。
【0063】
そして、次の手順で実験を行った。まず、母材1を前述の装置の中仕切り2aの上に配置する。次に、その母材1の上に流動性材料4を配置する。次に、減圧装置3を作動させて減圧室2dを−80kPaに減圧し、真空引きを行った。そして、減圧開始から流動性材料4が母材1の連通孔を経て下面に到達するまでに要する時間を計測した。
【0064】
(実験結果)
図3は、発泡倍率が60倍、連通孔の平均径が70μm、空隙率(母材の容積に占める空隙の割合)が3%の母材に対する実験1の結果を示す図表である。同図に示すように、粘度が1mPa・sの水の場合は、減圧開始から瞬時で母材1の下面に到達した。そして、粘度が500、1000、1500mPa・sの酢酸ビニル溶液の希釈品の場合は、それぞれ計測時間が10秒、30秒、5分であった。また、粘度が2000mPa・sの酢酸ビニル溶液の希釈品の場合は、計測時間が15分で、溶液が下面に僅かに到達した。
また、各粘度における計測時間は、連通孔の平均径が小さいほど僅かに長くなり、連通孔の平均径が大きいほど僅かに短くなる傾向があったが、12〜130μmの範囲における連通孔の平均径の違いによる計測時間の差は小さかった。
【0065】
(結論)
上記の実験結果より、母材1に浸透可能な流動性材料の粘度の上限値は、2000mPa・sであることが分かった。
つまり、母材1の連通孔を閉塞するためには、樹脂が含まれており、かつ、粘度が2000mPa・s以下の流動性材料を用いれば良いことが分かった。
【0066】
[実験2]
次に、本願発明者らは、母材1に浸透可能な粉末の粒径の上限値を求めるための実験を行った。図4は、実験2の結果をまとめた図表であり、(a)は銅粉MA−CCの粒度分布を示す図表、(b)は銅粉MA−C04Jの粒度分布を示す図表、(c)は実験2の結果を示す図表である。
【0067】
(実験内容)
この実験では、粉末として三井金属鉱業(株)製の銅粉MA−CC(以下、銅粉Aという)およびMA−C04J(以下、銅粉Bという)の2種類を混合したものと用いた。図4(a)に示すように、銅粉Aの粒度分布は、75μm以上が4.6%、75〜63μmが5.8%、63〜45が14.8%、45μm以下が74.8%である(いずれもwt%)。また、図4(b)に示すように、銅粉Bの粒度分布は、8.4μm以上が10%、8.4μm以下が90%である(いずれもwt%)。また、この実験では、銅粉を分散する溶媒として水を用いた。そして、銅粉AおよびBを混合したものを水に分散して流動性材料を作成した。母材は、材質がEPSで発泡倍率が60倍、連通孔の平均径が70μm、空隙率が3%、厚さが20mmである。
【0068】
そして、実験1と同じ装置を用い、母材1の上面に上記の流動性材料を配置し、−80kPaで真空引きを行い、母材1の下面の状態を観察した。また、真空引きを終了した後に母材1を縦に切断し、その断面を観察した。また、銅粉A,Bの質量割合の異なる複数種類の流動性材料を作成して同様の実験を行った。
【0069】
(実験結果)
その結果、銅粉A,Bの体積率が1%:20%、5%:20%、15%:20%および20%:20%(いずれもwt%)の場合は、15秒間の真空引きで銅粉が母材1の下面に到達していることを観察した。また、母材1を乾燥後に縦に切断し、その断面を観察すると、母材全体に銅粉A,Bが含浸していることが分かった。
【0070】
また、銅粉Bを分散させず、銅粉Aのみを10wt%分散した場合は、水のみが母材1の下面に到達し、銅粉Aは到達しなかった。母材1の断面を観察すると、母材の表面のみに銅粉Aが残留していることが分かった。
また、銅粉Aを分散させず、銅粉Bのみを50%、40%、30%および20%(いずれもwt%)分散した場合は、いずれの場合も銅粉Bが母材1の下面に到達していることを観察した。また、各母材の断面を観察すると、いずれも母材全体に銅粉Bが含浸していることが分かった。
【0071】
(結論)
上記の実験結果から、銅粉Aのみでは、銅粉Aを母材1の連通孔に浸透させることができないが、銅粉Bのみでは、銅粉Bを母材1の連通孔に浸透させることができる。
つまり、粒径が約10μm以下の銅粉を水に分散してなる流動性材料を作成し、それを母材1の上面に配置し、真空引きを行うことにより、水に分散している銅粉を母材1の連通孔に浸透させることができる。
【0072】
[実験3]
次に、本願発明者らは、無機粉末が母材1の連通孔から流出しないために必要な樹脂量を求めるための実験を行った。図5は、実験3の結果をまとめた図表である。
【0073】
(実験内容)
この実験では、実験2と同じ母材を用いた。また、流動性材料として、BASFジャパン(株)製のアクロナールS400(アクロナールは、BASF社の登録商標)に前述の銅粉Bを分散してなるものを用いた。アクロナールS400は、アクリル酸エステル−スチレン共重合体樹脂の水性エマルションであり、その原液の樹脂分は、60vol%である。
【0074】
また、アクロナールS400を水によって希釈し、樹脂分および銅粉Bの比率が、30:6、2.5:10、2.5:6、1:50(単位はいずれもvol%)の流動性材料を作成した。また、水に銅粉Bを分散し、樹脂分が0vol%で銅粉Bが40vol%、50vol%および60vol%の3種類の流動性材料を作成した。なお、樹脂分を有する流動性材料および樹脂分を有さない流動性材料は、共に粘度は2000mPa・s以下である。
【0075】
そして、実験1と同じ装置を用い、母材1の上面に上記の流動性材料を配置し、−80kPaで真空引きを行い、母材1の下面の状態を観察した。
【0076】
(実験結果)
その結果、樹脂分が1〜30vol%の流動性材料の場合は、いずれも30秒間の真空引きを行った結果、水のみが母材1の下面から流出し、銅粉Bは流出しなかった。また、樹脂分が0vol%の流動性材料の場合は、いずれも15秒間の真空引きを行った結果、水および銅粉Bが母材1の下面から流出した。
【0077】
(結論)
上記の実験結果から、樹脂分が少なくとも1vol%含まれたアクロナールS400に銅粉Bを分散した流動性材料を母材1に浸透させれば、その後、母材1の上面に水を配置して真空引きを行っても銅粉Bが母材1の下面から流出することがない。
つまり、樹脂分が少なくとも1vol%含まれたエマルションに粒径が10μm以下の無機粉末を分散した流動性材料を用いれば、その無機粉末を母材に含浸させることができるとともに、その含浸した無機粉末が母材から流出しないようにすることができる。
【0078】
[実験4]
次に、本願発明者らは、有機粉末が母材1の連通孔から流出しないために必要な樹脂量を求めるための実験を行った。図6は、実験4の結果をまとめた図表である。
【0079】
(実験内容)
この実験では、実験3と同じ母材を用いた。また、流動性材料として、アクロナールS400にポリメタクリル酸メチルの粉末を分散してなるものを用いた。また、アクロナールS400を水によって希釈し、樹脂分および粉末の比率が、30:6、2.5:10、1:50(単位はいずれもvol%)の流動性材料を作成した。また、水に粉末を分散し、樹脂分が0vol%で粉末が40vol%、50vol%および60vol%の3種類の流動性材料を作成した。なお、樹脂分を有する流動性材料および樹脂分を有さない流動性材料は、共に粘度は2000mPa・s以下である。
【0080】
そして、実験3と同じ装置を用い、母材1の上面に上記の流動性材料を配置し、−80kPaで真空引きを行い、母材1の下面の状態を観察した。
【0081】
(実験結果)
その結果、樹脂分が1〜30vol%の流動性材料の場合は、いずれも30秒間の真空引きを行った結果、水のみが母材1の下面から流出し、粉末は流出しなかった。また、樹脂分が0vol%の流動性材料の場合は、いずれも15秒間の真空引きを行った結果、水および粉末が母材1の下面から流出した。
【0082】
(結論)
上記の実験結果から、樹脂分が少なくとも1vol%含まれたアクロナールS400にポリメタクリル酸メチルの粉末を分散した流動性材料を母材1に浸透させれば、その後、母材1の上面に水を配置して真空引きを行っても粉末が母材1の下面から流出することがない。
つまり、樹脂分が少なくとも1vol%含まれたエマルションに粒径が10μm以下の有機粉末を分散した流動性材料を用いれば、その有機粉末を母材に含浸させることができるとともに、その含浸した有機粉末が母材から流出しないようにすることができる。
【0083】
[実験5]
本願発明者らは、母材に止水効果を持たせるために必要な樹脂分および粉末の体積率を調べた。
【0084】
(実験内容)
この実験では、アクロナールS400を水で希釈したものに銅粉Bを分散し、樹脂分および銅粉の体積率が20〜76vol%の複数種類の流動性材料を用いた。また、母材として、連通孔の平均径が12〜130μmの複数種類の発泡樹脂成型体を用いた。そして、前述の各実験と同じ装置を用い、母材の上に流動性材料を配置し、−80kPaで真空引きを行い、流動性材料を母材に浸透させた。そして、母材を乾燥した後、同じ装置を用い、母材の上面に水を配置し、−80kPaで6分間真空引きを行い、母材の下面から水漏れしていないか観察した。
【0085】
(実験結果)
図7は、上記実験5の結果をまとめた図表であり、図8は、図7のデータをグラフ化したものである。例えば、図7に示すように、連通孔の平均径が70μmの母材に対して、樹脂分および粉末の体積率が少なくとも50vol%の流動性材料を浸透させれることにより、内部まで止水効果を有する発泡樹脂複合構造体を製造できることが分かった。
図8に示すように、流動性材料が浸透する前の母材の連通孔の平均径が大きくなるに従って、止水効果を得るために必要な樹脂分および粉末の体積率が増加している。グラフによって区画された領域のうち、グラフよりも上の領域(グラフの線上を含む)が、止水性を有する領域であり、グラフよりも下の領域が、止水性の無い領域である。
【0086】
止水性を有する領域の中でも、樹脂分および粉末の体積率が必要以上に大きくなると、流動性材料の粘度が2000mPa・sを超え、母材に浸透しなくなるため、粘度が2000mPa・sを超えないように樹脂分および粉末の体積率を選択する必要がある。
つまり、母材の12〜130μmの連通孔の平均径に応じて、止水性を有する領域に入るように樹脂分および粉末の体積率を20〜76vol%の中から選択し、粘度が2000mPa・s以下となるように流動性材料を作成すれば良い。
【0087】
また、図8に示すグラフから、母材の10〜150μmの連通孔の平均径に応じて、止水性を有する領域に入るように樹脂分および粉末の体積率を18〜85vol%の中から選択し、粘度が2000mPa・s以下となるように流動性材料を作成すれば良いことが分かった。
さらに、止水効果を出すために必要な流動性材料を最小限にして費用対効果を最大にするためには、グラフの線上にある体積率を選択することが望ましい。
【0088】
なお、低分子量のアクリル酸などを分散的に用いた場合、樹脂分および粉末の体積率が95vol%を超えても粘度が2000mPa・s以下になることもあるが、止水効果を出すことのできる樹脂の範囲では、上記の体積率を18〜95vol%の中から選択することにより、粘度を2000mPa・s以下に設定することができる。望ましくは、上記の体積率を18〜85vol%の中から選択すると、粘度を2000mPa・s以下に設定し易い。
【0089】
図9は、流動性材料が浸透した発泡樹脂複合構造体の説明図であり、(a)は発泡樹脂複合構造体の斜視図、(b)は(a)においてDで示す領域の拡大図である。同図(b)に示すように、発泡セル1c間に形成された連通孔は、樹脂層6によって閉塞されている。また、連通孔を形成していない空隙にも樹脂層6が形成されている。この樹脂層は、主として毛管現象によって空隙に浸透した流動性材料が乾燥し、流動性材料に含まれる樹脂が乾燥することにより形成されたものである。このように、連通孔を形成していない空隙にも樹脂層が形成されるため、発泡樹脂複合構造体の強度を高めることができる。
【0090】
[実験6]
本願発明者らは、真空引きを行う時間と、流動性材料の浸透深さとの関係を調べる実験を行った。図10は、実験6の結果を示す図表である。
【0091】
(実験内容)
この実験で使用した母材は、材質がEPSで、発泡倍率が60倍、連通孔の平均径が70μm、空隙率が3%、厚さが50mmである。また、流動性材料として、樹脂分20vol%のアクロナールS400にカーボンを10vol%分散したものを使用した。また、前述の各実験で使用した装置と同じ装置を用い、減圧室2dの圧力を−80kPaに設定した。そして、減圧室2dの圧力が−80kPaに達してから1分経過したときに母材を縦に切断してその断面を観察し、カーボンで黒色に変化している領域の深さを計測した。その後、真空引きの時間を2.5分および5分に変更して同様の計測を行った。
【0092】
(実験結果)
図10に示すように、真空引きの時間が1分、2.5分および5分における流動性材料の浸透深さは、それぞれ5mm、10〜20mm、25〜30mmであった。つまり、真空引きの時間が長くなるに従って流動性材料の浸透深さが増加した。
【0093】
図11は、連通孔の模式図であり、(a)は粉末が連通孔の途中まで浸透した状態を示す模式図、(b)は粉末が母材の下面まで浸透した状態を示す模式図である。
流動性材料によって連通孔1dの内部に運ばれた粉末の粒子7は、流動性材料に含まれる樹脂分6によって相互に付着し、粒子7の集合体となって連通孔1dの内部を閉塞し、その後送られてくる粒子7がその閉塞部位上に蓄積し、図11(a)に示すように、連通孔1dが粒子7で充填されるものと推測した。
また、真空引きの時間が長い程、粒子7の集合体が連通孔1dの下方へ移動し、その集合体による閉塞部位も下方へ移動するものと推測した。
【0094】
(結論)
真空引きを行っている時間を変更することにより、母材における流動性材料の浸透深さを制御できることが分かった。
【0095】
[実験7]
本願発明者らは、流動性材料に導電性を持たせる実験を行った。図12は、実験7の結果を示す図表である。
【0096】
(実験内容)
この実験で使用した流動性材料は、酢酸ビニル溶液(樹脂分60vol%)をメタノールで希釈したものに銅粉(MA−C04J)を分散したものである。また、銅粉と樹脂との比率(vol%)が異なる4種類の流動性材料を作成した。各流動性材料の粘度は2000mPa・s以下である。そして、作成した流動性材料を母材の上面に塗布し、母材を乾燥させて流動性材料に含まれる蒸発成分を蒸発させ、銅粉が分散された樹脂分によって母材の上面に膜を形成した。そして、その発泡樹脂複合構造体の上面に形成された膜表面の電気抵抗を測定した。
また、1種類の流動性材料に付き、上記の測定をA,B,Cの3つの同じ母材に対して行い、その平均値を求めた。
【0097】
(実験結果)
図11に示すように、発泡樹脂複合構造体の上面の電気抵抗は、7.31×10Ω〜2.11×1010Ωであり、発泡樹脂複合構造体の上面が導電性を有することが分かった。また、銅粉および樹脂の比率が変化しても、膜の電気抵抗に大差がないことが分かった。
【0098】
(結論)
上記の実験結果より、酢酸ビニルの希釈溶液に銅粉を分散してなる粘度2000mPa・s以下の流動性材料を母材に塗布することにより、その塗布面に導電性を有する発泡樹脂複合構造体を製造できることが分かった。また、母材の上面に上記の流動性材料が残留するように流動性材料を母材に浸透させ、乾燥させることにより、母材の上面に導電性膜を形成し、その導電性膜から母材の内部まで導通した発泡樹脂複合構造体を製造できると考えた。さらに、上記の流動性材料を母材の上面から下面まで浸透させることにより、母材の上下面が導通した発泡樹脂複合構造体を製造できると考えた。
【0099】
上記の導電性を有する発泡樹脂複合構造体は、様々な用途がある。例えば、帯電防止の必要な用途である。例えば、電気製品などを組立てる工場において電子部品を載置する皿や容器に用いることができる。
図13は、電子部品を載置する皿の説明図である。皿10において、電子部品20を載置する上面11には、上記の導電性膜が形成されており、その上面11は、連通孔を介して下面12と電気的に導通している。下面12は、グランドに接続されている。これにより、電子部品20に帯電している静電気を導電性膜を介してグランドに逃がすことができる。
【0100】
特に、上記の皿10は、ロボットによって電気製品を組み立てるラインにおいて、ロボットハンドが掴むICチップなどの電子部品を載置する皿として使用すると効果が大きい。つまり、電子部品に帯電している静電気を導電性膜からグランドに逃がすことができるため、ロボットハンドが電子部品を掴んだときに静電気の放電により、その電子部品が破壊されるおそれがない。
【0101】
[製造方法]
次に、発泡樹脂複合構造体の製造方法について図を参照しながら説明する。図14は、工程の流れを示すフローチャートである。図15は、母材の連通孔の模式図であり、(a)は粉末が連通孔の内壁面に付着した状態を示す模式図、(b)は連通孔に樹脂が浸透した状態を示す模式図である。
【0102】
まず、10〜150μmの中から所望の平均径の連通孔を有する母材を選択し、その母材を図2に示した装置に装填する(工程1)。次に、母材の上面に第1の流動性材料を配置し(工程2)、減圧装置を作動させて真空引きを行い、第1の流動性材料を母材の連通孔に浸透させる(工程3)。このとき、第1の流動性材料が母材の上面に膜状に残留するように真空引きを行う。第1の流動性材料は、粉末を母材の連通孔内部まで届ける役割をするものである。第1の流動性材料は、粉末が分散されており、かつ、その粉末を連通孔の内壁面に付着させる第1の成分が溶解または分散されてなる。
【0103】
例えば、第1の流動性材料として、第1の成分たる樹脂分が1vol%含まれた樹脂水性エマルションに粒径が10μm以下の無機または有機の粉末を分散してなる粘度2000mPa・s以下の流動性材料を用いる。この流動性材料を用いれば、前述の実験3,4で説明したように、流動性材料を母材の連通孔に浸透させることにより、流動性材料に含まれる粉末を連通孔の内部まで届けるとともに連通孔の内壁面に付着させることができ、かつ、その付着した粉末が移動したり、連通孔から流出したりしないようにすることができる。
【0104】
また、粉末の種類は、発泡樹脂複合構造体に持たせる機能に応じて選択する。例えば、導電性を有する発泡樹脂複合構造体を製造する場合は、粉末として銅粉などの導電性粉末を選択し、磁性を有する発泡樹脂複合構造体を製造する場合は、粉末としてフェライトなどの磁性粉末を選択する。また、生物忌避効果を有する発泡樹脂複合構造体を製造する場合は、粉末としてホウ酸または銅粉を選択する。
【0105】
次に、母材を乾燥させ、連通孔に浸透した第1の流動性材料および母材の上面に残留した第1の流動性材料に含まれる水などの蒸発成分を蒸発させる(工程4)。この乾燥は、自然乾燥でも良いし、温風を吹き付けて乾燥を促進させる強制乾燥でも良い。
図15(a)に示すように、乾燥後における母材の上面1aおよび連通孔の内壁面1eには、粉末の粒子7が付着している。各粒子7は、第1の流動性材料に含まれている樹脂分の粘着力によって付着しているため、剥がれ難い。
【0106】
次に、乾燥した母材を再度装置に装填し、その母材の上面に第2の流動性材料を配置し(工程5)、減圧装置を作動させて真空引きを行い、第2の流動性材料を母材の連通孔に浸透させる(工程6)。このとき、第2の流動性材料が母材の上面に膜状に残留するように真空引きを行う。第2の流動性材料は、母材の連通孔の内壁面に付着している粉末の付着力を増強し、かつ、連通孔を閉塞して止水性を出す役割をするものである。第2の流動性材料は、粉末を連通孔の内壁面に付着させる第2の成分が含まれてなる。
【0107】
例えば、第2の流動性材料として、第2の成分たる樹脂が分散された樹脂水性エマルションを用いる。この第2の流動性材料に分散する樹脂の体積率は、前の工程で用いた第1の流動性材料の樹脂分および粉末の体積率によって決定する。例えば、連通孔の平均径が70μmの母材を用い、工程3において樹脂分が1vol%で粉末が19vol%の第1の流動性材料を母材に浸透させたとする。
【0108】
ここで、図7に示したように、連通孔の平均径が70μmの母材の場合は、樹脂分および粉末の体積率が少なくとも50vol%あれば止水効果のある発泡樹脂複合構造体を製造することができる。従って、少なくとも30(=50−20)vol%の樹脂が分散された樹脂水性エマルションを第2の流動性材料として用いれば良い。
【0109】
つまり、第1の流動性材料に含まれる樹脂分および粉末と、第2の流動性材料に含まれる樹脂分は、それらの合計が少なくとも図7に示す体積率となるように、母材の連通孔の平均径に応じて決定すれば良い。
【0110】
なお、連通孔の内壁面に付着している粉末の付着力を増大させるだけで良く、止水効果が不要である場合は、30vol%未満の樹脂が分散された樹脂水性エマルションを第2の流動性材料として用いれば良い。
【0111】
次に、母材を乾燥させ、連通孔に浸透した第2の流動性材料および母材の上面に残留した第2の流動性材料に含まれる水などの蒸発成分を蒸発させる(工程7)。この乾燥は、自然乾燥でも良いし、温風を吹き付けて乾燥を促進させる強制乾燥でも良い。そして、乾燥により出来上がった発泡樹脂複合構造体を装置から取出す(工程8)。
【0112】
図15(b)に示すように、発泡樹脂複合構造体5の連通孔1dには、第2の流動性材料に含まれていた樹脂分6が浸透しており、その樹脂分6によって連通孔1dが閉塞されている。また、その樹脂分6が粉末の粒子7を覆うことにより、粒子7が内壁面1eに固着しており、より一層剥がれ難くなっている。さらに、上面1aには、樹脂分6の硬化により樹脂被膜6aが形成されている。
【0113】
また、粉末の粒子7は、上面1aから連通孔1dの内壁面1eまで連続して付着しているため、粉末が有する機能が上面1aから連通孔1dの内壁面1eまで連続して発揮される。さらに、上面1aが樹脂被膜6aによって覆われているため、樹脂分6によって閉塞されていない連通孔1dが存在する場合であっても、その連通孔1dを樹脂被膜6aによって閉塞することができるので、止水効果が失われるおそれがない。
【0114】
第1の流動性材料に含まれる第1の成分および第2の流動性材料に含まれる第2の成分は、同じ成分でも異なる成分でも良いが、粉末を連通孔の内部まで到達させるためには、粘度の低い材料を第1の流動性材料として選択することが望ましい。また、粉末の付着力および止水効果を高めるためには、エポキシ樹脂水性エマルションなど、接着力の高い樹脂を第2の成分として有する樹脂水性エマルションなどを第2の流動性材料として選択することが望ましい。
【0115】
[連通孔の平均径の算出方法]
次に、母材に形成されている連通孔の平均径の算出方法について説明する。
【0116】
まず、発泡前の予備発泡ビースの半径と、予備発泡ビーズによって囲まれて形成された空隙の半径との比率を求める。図16は、予備発泡ビースの模式図である。ここでは、予備発泡ビースを真球と仮定する。図示のように、予備発泡ビース6は相互に接触しており、3つの予備発泡ビース6によって囲まれた領域には空隙7が形成されている。ここで、その空隙7を、3つの予備発泡ビース6と接する毛細管8と仮定する。予備発泡ビース6の半径をA、毛細管8の半径をr、予備発泡ビース6および毛細管8の各中心を結んだ線L1と予備発泡ビース6の中心間を結んだ線L2とが成す角度をθとすると、θ=30°であるから、次の式(1)が成立する。
【0117】
cos30°=A/(A+r) ・・・(1)
【0118】
ここで、cos30°≒0.866を式(1)に代入し、rを求めると、
【0119】
r=0.155A ・・・(2)
【0120】
つまり、毛細管8の半径rと予備発泡ビース6の半径Aとの比率が求まった。ここで、発泡ビーズは真球の状態を維持しながら膨張すると仮定すると、上記の式(2)は、予備発泡ビーズを加熱発泡融着して製造される母材の連通孔の半径と発泡セルの半径との関係にも適用することができる。また、予備発泡ビーズ6によって囲まれた毛細管8は、予備発泡ビーズ6の発泡によって半径が大きくなるため、発泡の前後における毛細管の関係にも上記の式(2)を適用することができる。
【0121】
次に、実際に予備発泡ビース6を加熱発泡融着させて製造した母材に形成されている連通孔の平均径を求める。
【0122】
液体の毛細管圧力Fcは、次の式(3)で与えられることが知られている(引用文献:室井宗一著、(株)工文社発行の「ビギナーのための高分子ラテックス」)。
【0123】
Fc=12.9γ/C ・・・(3)
【0124】
ここで、γは液体の表面張力(N/m)、Cは毛細管を形成する発泡セルの半径(m)を示す。
【0125】
図17は、発泡倍率15倍の母材に対して行った水漏れ実験の結果を示す図表であり、図18は、発泡倍率60倍の母材に対して行った水漏れ実験の結果を示す図表である。両母材の材質は共にEPSであり、厚さは20mmである。図17より、発泡倍率15倍の母材では、真空圧が−10kPaで水が浸透している。また、図18より、発泡倍率60倍の母材では、真空圧が−4kPaで水が浸透している。
【0126】
まず、発泡倍率15倍の母材に形成された連通孔の平均径を求める。−10kPaで水が浸透(水漏れ発生)しているため、母材の1cm当りの毛細管圧力は、0.1kPaとなる。また、水の表面張力を70mN/mとする。そして、Fc=0.1kPaおよびγ=70mN/mを上記の式(3)に代入すると、
【0127】
0.1=(12.9×70)/(C×10) ・・・(4)
【0128】
上記の式(4)からCを求めると、C=90.3μmとなる。そして、C=90.3μmを前述の式(2)に代入すると、
【0129】
r=0.155×90.3μm≒14μm ・・・(5)
【0130】
となる。したがって、連通孔の平均径は、r×2=14μm×2=28μmになる。
【0131】
次に、発泡倍率60倍の母材に形成された連通孔の平均径を求めると、−4kPaで浸透(水漏れ発生)しているため、母材の1cm当りの毛細管圧力は、0.04kPaとなる。また、水の表面張力を70mN/mとする。そして、Fc=0.01kPaおよびγ=70mN/mを上記の式(3)に代入すると、
【0132】
0.04=(12.9×70)/(C×10) ・・・(6)
【0133】
上記の式(6)からCを求めると、C=225.75μmとなる。そして、C=225.75μmを前述の式(2)に代入すると、
【0134】
r=0.155×225.75μm≒35μm ・・・(7)
【0135】
となる。したがって、連通孔の平均径は、r×2=35μm×2=70μmになる。
【0136】
(実施形態の効果)
(1)上述の実施形態に係る発泡樹脂複合構造体の製造方法を実施すれば、発泡樹脂製の母材に形成された連通孔の内壁面に粉末を固着することができるため、その粉末が持つ機能を母材に与えることができる。
従って、軽量でありながら、粉末が持つ機能を有する発泡樹脂複合構造体を実現することができる。
【0137】
(2)特に、母材は、隣接する発泡セル同士が融着することにより独立気泡構造が形成された、いわゆる発泡樹脂成型品であるため、連通孔は母材の各面に多数存在する。このため、第1の流動性材料を浸透させた面は、粉末が内壁面に固着した連通孔が多数開口しているため、粉末が持つ機能が最大に発揮される。
【0138】
(3)また、発泡樹脂製の母材に形成された連通孔を閉塞することができるため、連通孔から粉末がこぼれるおそれのない発泡樹脂複合構造体を実現することができる。また、発泡樹脂複合構造体を水に接触する用途に用いる場合は、連通孔を介して水漏れが発生するおそれのない発泡樹脂複合構造体を実現することができる。
例えば、上記実施形態の発泡樹脂複合構造体を冷蔵庫やエアコンなどの水受皿として使用すれば、軽量でありながら、水漏れが発生しない水受皿を実現することができる。
【0139】
(4)さらに、粉末が、連通孔の一の面に開口した開口面から所定の深さの内壁面まで連続して付着した状態を作ることができるため、母材の一の面にのみ粉末が付着しているものと比較して、母材に含有されている粉末の量を多くすることができる。
従って、粉末が持つ機能を発揮する時間を長くすることができる。また、母材の一の面に傷が付いた場合であっても、その傷が付いた領域にも粉末が露出するため、粉末が持つ機能が部分的に失われるおそれがない。
例えば、水受皿の運搬中に水受皿が傷付いたり、水受皿の取付け作業中にドライバーなどの工具が水受皿に落下してひび割れたり、陥没したりした場合であっても、それらが原因で水が漏れるおそれがない。
【0140】
(5)さらに、発泡セル同士の融着が不完全で母材に隙間が形成されている場合であっても、その隙間にも樹脂分が浸透するため、融着が不完全なことに起因する水漏れをなくすことができる。
【0141】
(6)エポキシ樹脂水性エマルションなどの硬化性樹脂が分散された水性エマルションを母材に浸透させれば、連通孔に浸透した硬化性樹脂が硬化することにより、強度の高い発泡樹脂複合構造体を製造することができる。
【0142】
(7)粉末が、連通孔の一の面に開口した開口面から他の面に開口した開口面までの内壁面に連続して付着した状態を作ることができるため、粉末が持つ機能を連通孔の一端から他端まで連続させることができる。
従って、粉末の持つ機能が一の面から他の面まで連続した発泡樹脂複合構造体を実現することができる。
【0143】
(8)粉末が連通孔の内壁面および母材の一の面に固着し、かつ、連通孔の内壁面から母材の一の面まで連続した状態を作ることができるため、粉末が持つ機能を母材の一の面から連通孔の内壁面まで連続させることができる。
特に、粉末が母材の一の面にも固着するため、連通孔の内壁面にのみ固着したものよりも母材の一の面における粉末の密度を高くすることができるので、一の面における粉末の持つ効果を大きくすることができる。
【0144】
(9)第1の流動性材料に含まれる第1の成分として樹脂を選択することにより、連通孔に浸透した粉末を連通孔の内壁面に付着させ、移動しないようにすることができる。
【0145】
(10)第2の流動性材料に含まれる第2の成分として樹脂を選択することにより、連通孔の内壁面や母材の一の面に対する粉末の固着力を大きくすることができるので、粉末が連通孔の内壁面や母材の一の面から剥がれ難い発泡樹脂複合構造体を実現することができる。
【0146】
(11)第2の流動性材料に含まれる第2の成分として樹脂を選択し、その樹脂により母材の一の面に樹脂皮膜を形成するため、その一の面に固着した粉末をより一層剥がれ難くすることができる。
【0147】
(12)母材の一の面に開口している連通孔を総て閉塞することができるため、連通孔から漏れる粉末をなくすことができる。さらに、水漏れもなくすことができる。
【0148】
(13)第1の流動性材料の粘度が2000mPa・s以下であるため、第1の流動性材料を母材の連通孔に浸透させ易いので、第1の流動性材料に分散されている粉末を連通孔の内部まで到達させ易い。また、第2の流動性材料の粘度も2000mPa・s以下であるため、第2の流動性材料を母材の連通孔に浸透させ易いので、連通孔の内壁面に付着している粉末を第2の成分によって固着させ易い。
【0149】
(14)第1の流動性材料に含まれる第1の成分が少なくとも1vol%以上であれば、粉末を連通孔の内壁面に付着させることができる。
【0150】
(15)連通孔の平均径が10〜150μmであるため、第1および第2の流動性材料を母材の連通孔に浸透させ易い。
【0151】
(16)第1および第2の成分と粉末との合計の体積率を母材の連通孔の平均径に応じてそれぞれ18〜95vol%の中から選択することにより、第1および第2の成分と粉末とを効率良くかつ低コストで母材の連通孔に浸透させることができる。
【0152】
(17)銅粉が分散された第1の流動性材料を母材に浸透させることにより、導電性を有する発泡樹脂複合構造体を製造することができる。
【0153】
(18)第1および第2の流動性材料として樹脂水性エマルションを選択することにより、母材を溶解しない。また、水で希釈することにより容易に粘度調整をすることができる。さらに、VOCの発生が少ない。
【0154】
[他の実施形態]
(1)母材の上面に配置した流動性材料の上面を加圧する加圧装置を併用することもできる。例えば、図2に示す装置の上部空間2bに蓋を配置し、その蓋と流動性材料との間に形成される空間をエアポンプによって空気を送出して加圧する。この方法によれば、母材1の一の面および他の面間の差圧を効率良く増大させることができるため、母材1に対する流動性材料の浸透速度を速くすることができるので、発泡樹脂複合構造体の製造効率を高めることができる。
【0155】
(2)流動性材料を浸透させたくない母材の領域をフィルムなどで予めマスキングしておいても良い。この方法によれば、母材の所望の領域に流動性材料を浸透させることができる。
【0156】
(3)導電性の粉末として金、銀、銅、ニッケル、パラヂウム、白金、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛などの金属を粉末にしたもの、それら金属の合金を粉末にしたもの、酸化錫などの金属酸化物を粉末にしたもの、カーボンなどの導電性炭素同素体を粉末にしたも、ガラス、カーボン、マイカ、プラスチックなどの粒子の表面に導電の金属をコートしたものなどを用いることができる。
【0157】
(4)導電性の粉末に代えて、フェライトからなる磁性粉末を用いることもできる。これによれば、磁性を帯びた発泡樹脂複合構造体を製造することができる。また、フェライトに代えて、コバルトフェライト系磁性体、メタル磁性体、CrO、γ−Fe、FeN、Baフェライトなどの粉末を用いることもできる。さらに、導電性粉末および磁性粉末を混合したものを用いることにより、導電性および磁性を有する発泡樹脂複合構造体を製造することもできる。
【0158】
(5)ホウ酸からなる粉末を分散した流動性材料を母材に浸透させることもできる。これによれば、少なくとも生物を忌避する性質を有する発泡樹脂複合構造体を製造することができる。例えば、その発泡樹脂複合構造体を建築物の断熱材などに使用すれば、シロアリやゴキブリなどの害虫を除虫または殺虫することができる。また、その発泡樹脂複合構造体を海上構造物のフロートなどに使用すれば、フジツボなどの貝類がフロートに付着しないようにすることができる。また、ホウ酸を母材の内部まで浸透させることができるため、断熱材やフロートなどの表面が剥がれたり、欠けたりした場合であっても、生物忌避の効果を持続することができる。なお、銅粉にも生物忌避効果があるため、銅粉を母材に浸透させた発泡樹脂複合構造体を断熱材やフロートなどに適用した場合も、ホウ酸の場合と同様の効果を奏することができる。
【0159】
(6)また、ホウ酸または銅粉をマイクロカプセルに収容し、そのマイクロカプセルが多数集合してなる粉末を分散した流動性材料を母材に浸透させることもできる。例えば、マイクロカプセルの外殻を構成するシェル(壁材)として、外気温度が所定温度を超えると亀裂の入る性質のシェルを使用し、そのシェルにホウ酸をコア(芯物質)として内包する。そして、そのマイクロカプセルを粉末として分散した流動性材料を母材に浸透させることにより、外気温度が所定温度を超えると連通孔内のマイクロカプセルに亀裂が入り、ホウ酸の成分を外気中に放出することができる。例えば、その発泡樹脂複合構造体を建築物の断熱材などに使用すれば、シロアリやゴキブリなどの害虫を除虫または殺虫することができる。
【0160】
(7)また、時間の経過により自然分解するシェルを用いることもできる。なお、「マイクロカプセル」とは、直径がナノメートルからミリメートルの間の微小な容器のことをいう。また、マイクロカプセルには、密閉型および多孔型のものを含む。
【0161】
(8)粉末として、炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、カーボンブラック、二酸化ケイ素、酸化チタン、ガラス粉、中空ガラスバルーン、珪藻土、カオリン、パーライト、蛍石、ベントナイトなどを用いることができる。
【0162】
(9)流動性材料として、アクリル系、合成ゴム系、酢酸ビニル系およびエチレン系の少なくとも1つからなる溶剤型または分散型の樹脂を用いることができる。例えば、エポキシ樹脂水性エマルション 、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂水性エマルション 、変性脂肪族ポリアミン樹脂水性エマルション、生分解性樹脂水性エマルションなどの樹脂水性エマルションを用いることができる。
【0163】
また、第2の流動性材料として、エポキシ樹脂を用いることもできる。ここで、エポキシ樹脂とは、エポキシ樹脂に反応性希釈剤および硬化剤を混合してなるものをいう。また、エポキシ樹脂に溶剤を混合したもの、および混合していないものをいう。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、異節環状型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ウレタン変成エポキシ樹脂、ゴム変成エポキシ樹脂、エポキシ化エラストマー、エポキシ化ステアリン酸エステル、エポキシ化大豆油、エポキシ変成ポリシロキサン、可撓性エポキシ樹脂、エポキシ化(メタ)アクリル系オリゴマー及びエポキシ基を持つ反応性希釈剤等を用いることができる。
【0164】
また、エポキシ樹脂用硬化剤としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、無水メチルCD酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ヘット酸、ドデセニル無水コハク酸、ポリアゼライン無水コハク酸等の酸無水物系硬化剤;エチレンアミン類、ジエチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、脂肪族アミン変成体等の脂肪族アミン系硬化剤;m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタキシリレンジアミン、芳香族アミン変成体等の芳香族アミン系硬化剤;また、その他硬化剤として、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、ピペリジン、ポリアミド樹脂、フェノール系樹脂、ポリチオール樹脂、メルカプタン系化合物、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール系化合物等を用いることができる。
【0165】
また、エポキシ系樹脂向けの硬化促進剤として、第3級アミン、トリフェニルフォスフィン、スタナースオクトエート、三フッ化ホウ素錯体、ベンジルジメチルアミン、DBU、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、イソシアネート類、スルフォニウム塩類、ヨードニウム塩類、ジアゾニウム塩類、ヒドラジド系化合物、ナイロン塩系化合物、有機金属化合物類等をさらに用いても良い。
【0166】
(10)流動性材料を着色することもできる。その着色剤には、一般的な顔料または染料を用いることができる。顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、ドロマイト、桂砂、酸化鉄、カーボンブラック、シアニン系顔料、キナクドリン系顔料など、色材および充填剤として使用されるものがある。染料では、アゾ系染料、アントラキノン系染料、インジゴイド系染料、スチルベン系染料などがある。
【0167】
さらに、アルミフレーク、ニッケル粉、金粉、銀粉、銅粉、酸化チタンなどの金属粉を着色剤として用いても良い。
これらの着色剤によってエポキシ樹脂を着色することにより、発泡樹脂複合構造体の色や模様を変えることができる。
【0168】
(11)母材1を形成するための発泡樹脂原料としては、、特定の発泡温度において発泡するものである限り特に限定されないが、熱可塑性物質を主材とし、気体もしくは液体を発泡剤として含浸させたもの、あるいは、熱分解性の発泡剤を含有するものを好適に用いるが、両者を含有するものでも良い。また、熱可塑性物質は架橋されていても良い。
【0169】
熱可塑性物質を主材とし、気体もしくは液体を発泡剤として含浸させたものとしては、市販のポリスチレン発泡性ビーズ、ポリエチレン発泡性ビーズ、ポリプロピレン発泡性ビーズなどを用いても良いし、ブタン、ペンタン、フロン等の炭化水素、水、CO、Nを含浸させたものでも良い。また、熱分解性の発泡剤を含有するものとしては、下記に示す熱分解性の発泡剤および熱可塑性物質から適宜調製して用いても良い。この熱分解性の発泡剤と熱可塑性物質は、発泡剤の分解温度が熱可塑性物質の可塑化温度よりも高いことが好ましく、発泡剤の分解温度と熱可塑性物質の可塑化温度がほぼ等しくなるように選ばれることが、発泡材料を綺麗に発泡できることから更に好ましい。
【0170】
発泡材料の主材としては、加熱により軟化する物質である限り特に制限を受けず、熱可塑性樹脂として知られる一群の合成プラスチック材料が好適に用いられる。例えば、ポリ(スチレン);ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)等のオレフィン系樹脂;ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニル)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリ(フシ化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)体、フッ素化エチレンプロピレン共重合体、ポリ(テトラフルオロエチレン)、塩素化ポリ(塩化ビニル)、塩素化ポリ(エチレン)、塩素化ポリ(プロピレン)等のハロゲン化樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610 、ナイロン612 、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6、ナイロン46、N−メトキシメチル化ポリ(アミド)、アミノポリ(アクリルアミド)等のポリアミド;スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン−EPDM、ポリエチレン−EPDM、イソブチレン−無水レイン酸共重合体、アクリルニトリル−アクリレート−スチレン共重合体、アクリルニトリル−エチレン−スチレン共重合体、アクリルニトリル−スチレン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエンースチレン共重合体、アクリルニトリル−塩化ビニル−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の共重合体;さらに、アイオノマー、ケトン樹脂、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリ(メタクリル酸エステル)、ポリ(プロピオン酸ビニル)、ポリ(アセタール)、ポリ(アミドイミド)、ポリ(アリレート)、熱可塑性ポリ(イミド)、ポリ(エーテルイミド)、ポリ(エーテルエ−テルヶトン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(サルホン)、ポリ(エーテルサルホン)、ポリ(アミノサルホン)、ポリ(パラメチルスチレン)、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(フェニレンオキサイド)、ポリ(フェニレンサルファイド)、ポリ(ブタジエン)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(メチルペンテン)、ポリ(メチルメタクリレート)、液晶ポリマー、ポリ(ウレタン)等を挙げることができる。また、ポリ乳酸樹脂を用いることもできる。また、適宜、上記重合体の変成体、架橋体を用いても良いし、これらを組み合わせて成る共重合体を用いても良い。さらに、これらの熱可塑性樹脂は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0171】
発泡樹脂原料に混練する熱分解性の発泡剤としては、一般的に使用されている熱分解性発泡剤である限り特に限定されず、発泡樹脂原料の主材の可塑化温度に適合させて選ばれる。
このような熱分解性発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾシクロヘキシルニトリル、ジアゾアミノベンゼン、アゾジカルボンアミドエステル等のアゾ化合物;ジニトロソベンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物;p−トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、ベンゼンスルホニルヒドラジド(BSH)、p,p´−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3´−ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;4,4´−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホアジド等のアジド化合物;p−トルエンスルホセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモン、亜硝酸アンモン等を挙げることができる。さらに、これらの熱分解性発泡剤は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0172】
発泡樹脂原料には、これら発泡剤と共に、成形特性を改良する目的で各種の添加剤を配合してもよい。添加助剤として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの金属石鹸、亜鉛華硝酸亜鉛などの無機塩があげられる。
【0173】
発泡助剤は、使用する樹脂、発泡剤、助剤の種類によって異なるが、通常熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1〜2.0重量部程度の割合で添加されることが好ましい。これは、添加量が0.1重量部以下では効果が小さく、2.0重量部以上では効果が飽和する傾向があるためである。
【0174】
発泡性ビーズの大きさは、0.3ミリから5ミリが好適に用いられる。ここで発泡性ビーズの大きさとは、発泡性ビーズがほぼ球形の場合には平均直径とする。また、平らなものやストランド状のものの場合に発泡性ビーズの大きさといえば、最も幅が小さいサイズをさすものとし、以下、発泡性ビーズの大きさといえばこの例に倣うものとする。発泡性ビーズの大きさが0.3ミリから5ミリのものが好適に用いられるのは、発泡性ビーズの製造し易さと発泡性ビーズの表面積、そして伝熱遅れによる軟化ムラが出にくいということの兼ね合いの結果である。0.3ミリより小さいビーズの使用も可能であるが、しかしこの場合、ビーズの表面積の総和が大きくなるので最終的な発泡セルの接触する界面の面積が大きくなり、薄膜状剛性セル壁を構成する材料がずっと多く必要となる。したがって、圧縮強度は増すものの、軽量化の効果は小さくなる。
【0175】
また、発泡性ビーズ内部からの発熱をひきおこす仕組みを併用すれば、直径5ミリより大きな発泡性ビーズを用いることもできる。発泡性ビーズ内部からの発熱をひき起こす仕組みとしては、例えば、発泡性ビーズに金属粉を混ぜ込み高周波電磁場環境下での電磁誘導を利用することができる。
均質な発泡セル構造を持つ発泡樹脂複合構造体を得るためには、発泡性ビーズの大きさは、概略揃っているのが望ましい。しかし、厳密に揃っている必要はない。また、あえて発泡性ビーズの大きさに分布を持たせることで、発泡セル膜に特異な3次元構造を持たせることができるので、異なる大きさの発泡性ビーズを混ぜて用いることもある。
【0176】
さらに、発泡材料は、例えば予備発泡ビーズや発泡体の破砕品のような既に発泡している材料に高圧下でガスを含浸させたものでも良い。さらに、既に発泡成型されたチップ状、ストロー状などの形状の材料や発泡体の破砕品でも良く、その材料を凝縮して成型型内で加熱融着させて母材1を形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】母材の説明図であり、(a)は母材の斜視図、(b)は(a)に示す領域Dの拡大図である。
【図2】装置に母材1および流動性材料4がセットされた状態の縦断面図である。
【図3】発泡倍率が60倍、連通孔の平均径が70μm、空隙率が3%の母材に対する実験1の結果を示す図表である。
【図4】実験2の結果をまとめた図表であり、(a)は銅粉MA−CCの粒度分布を示す図表、(b)は銅粉MA−C04Jの粒度分布を示す図表、(c)は実験2の結果を示す図表である。
【図5】実験3の結果をまとめた図表である。
【図6】実験4の結果をまとめた図表である。
【図7】実験5の結果をまとめた図表である。
【図8】図7のデータをグラフ化したものである。
【図9】流動性材料が浸透した発泡樹脂複合構造体の説明図であり、(a)は発泡樹脂複合構造体の斜視図、(b)は(a)においてDで示す領域の拡大図である。
【図10】実験6の結果を示す図表である。
【図11】連通孔の模式図であり、(a)は粉末が連通孔の途中まで浸透した状態を示す模式図、(b)は粉末が母材の下面まで浸透した状態を示す模式図である。
【図12】実験7の結果を示す図表である。
【図13】電子部品を載置する皿の説明図である。
【図14】工程の流れを示すフローチャートである。
【図15】母材の連通孔の模式図であり、(a)は粉末が連通孔の内壁面に付着した状態を示す模式図、(b)は連通孔に樹脂が浸透した状態を示す模式図である。
【図16】予備発泡ビースの模式図である。
【図17】発泡倍率15倍の母材に対して行った水漏れ実験の結果を示す図表である。
【図18】発泡倍率60倍の母材に対して行った水漏れ実験の結果を示す図表である。
【符号の説明】
【0178】
1・・母材、1a・・上面(一の面)、1b・・下面(他の面)、1c・・発泡セル、
1d・・連通孔、2・・容器、2d・・減圧室、2e・・通気口、3・・減圧装置、
4・・流動性材料、5・・発泡樹脂複合構造体、6・・樹脂層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する発泡セル同士が融着することにより独立気泡構造が形成されており、前記独立気泡間が連通することにより一の面から他の面に連通した連通孔が存在する母材と、
粉末が分散されており、かつ、前記粉末を前記連通孔の内壁面に付着させる第1の成分が溶解または分散されてなる第1の流動性材料と、
前記粉末を前記連通孔の内壁面に付着させる第2の成分が含まれてなる第2の流動性材料と、
前記一の面よりも前記他の面における圧力の方が低くなるように前記一の面と他の面との間に差圧を発生させる差圧発生装置と、を用意し、
前記第1の流動性材料を前記一の面に配置する第1工程と、
前記差圧発生装置によって前記一の面と他の面との間に差圧を発生させることにより、前記一の面に配置された前記第1の流動性材料を前記連通孔に浸透させ、その浸透した第1の流動性材料に含まれる前記粉末が、前記浸透した第1の流動性材料に含まれる前記第1の成分によって前記連通孔の内壁面に付着した状態を作る第2工程と、
前記第2の流動性材料を前記一の面に配置する第3工程と、
前記差圧発生装置によって前記一の面と他の面との間に差圧を発生させることにより、前記一の面に配置された前記第2の流動性材料を前記連通孔に浸透させ、その浸透した第2の流動性材料に含まれる前記第2の成分により前記粉末が前記連通孔の内壁面に固着した状態を作る第4工程と、
を有することを特徴とする発泡樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項2】
前記第4工程が、前記差圧発生装置によって前記一の面と他の面との間に差圧を発生させることにより、前記一の面に配置された前記第2の流動性材料を前記連通孔に浸透させ、その浸透した第2の流動性材料に含まれる前記第2の成分により前記連通孔が閉塞された状態を作る工程であることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成型品の製造方法。
【請求項3】
前記第2工程において作る状態は、
前記粉末が、前記連通孔の前記一の面に開口した開口面から所定の深さの内壁面まで連続して付着した状態であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第2工程において作る状態は、
前記粉末が、前記連通孔の前記一の面に開口した開口面から前記他の面に開口した開口面までの内壁面に連続して付着した状態であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項5】
前記第2工程は、
前記差圧発生装置によって前記一の面と他の面との間に差圧を発生させることにより、前記一の面に配置された前記第1の流動性材料を前記一の面から前記連通孔に浸透させるとともに前記一の面に残留させ、前記粉末が前記連通孔の内壁面から前記一の面に連続して付着した状態を作る工程であり、
前記第4工程は、
前記差圧発生装置によって前記一の面と他の面との間に差圧を発生させることにより、前記一の面に配置された前記第2の流動性材料を前記連通孔に浸透させるとともに前記一の面に残留させ、その第2の流動性材料に含まれる前記第2の成分により前記粉末が前記連通孔の内壁面から前記一の面に連続して固着した状態を作る工程であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項6】
前記第2の成分が樹脂であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の発泡樹脂成型品の製造方法。
【請求項7】
前記第1および第2の成分が樹脂であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の発泡樹脂成型品の製造方法。
【請求項8】
前記第4工程は、
前記前記差圧発生装置によって前記一の面と他の面との間に差圧を発生させることにより、前記一の面に配置された前記第2の流動性材料を前記連通孔に浸透させるとともに前記一の面に残留させ、その浸透した第2の流動性材料に含まれる前記第2の成分により前記粉末が前記連通孔の内壁面に固着した状態を作るとともに前記第2の成分により前記一の面に膜を形成する工程であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項9】
前記第1および第2の流動性材料の粘度がそれぞれ2000mPa・s以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項10】
前記第1の成分が少なくとも1vol%以上であることを特徴とする請求項9に記載の発泡樹脂成型品の製造方法。
【請求項11】
前記連通孔の平均径が10〜150μmであることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項12】
前記第1および第2の成分と前記粉末との合計の体積率を前記連通孔の平均径に応じてそれぞれ18〜95vol%の中から選択することを特徴とする請求項11に記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項13】
前記粉末が導電性粉末および磁性粉末の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項14】
前記導電性粉末が少なくとも銅からなる粉末であることを特徴とする請求項13に記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項15】
前記磁性粉末が少なくともフェライトからなる粉末であることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項16】
前記粉末が少なくともホウ酸からなる粉末であることを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項17】
前記第1の流動性材料は、アクリル系、合成ゴム系、酢酸ビニル系、エチレン系、エポキシ系およびウレタン系の少なくとも1つからなる溶剤型または分散型の樹脂であることを特徴とする請求項1ないし請求項16のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項18】
前記第2の流動性材料は、アクリル系、合成ゴム系、酢酸ビニル系、エチレン系、エポキシ系およびウレタン系の少なくとも1つからなる溶剤型または分散型の樹脂であることを特徴とする請求項1ないし請求項17のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項19】
前記第1の流動性材料は、樹脂水性エマルションであることを特徴とする請求項17または請求項18に記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項20】
前記第2の流動性材料は、樹脂水性エマルションであることを特徴とする請求項17ないし請求項19のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−89366(P2010−89366A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261280(P2008−261280)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000163899)金山化成株式会社 (10)
【Fターム(参考)】