説明

発泡樹脂資材、リサイクル発泡樹脂資材および発泡樹脂資材の製造方法

【課題】安価でかつ容易に廃棄処理可能な発泡樹脂資材、リサイクル発泡樹脂資材および発泡樹脂資材の製造方法を提供する。
【解決手段】合成樹脂以外の材料の微粉体と熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを含む混合物を発泡させて得られたものである。合成樹脂以外の材料の微粉体を含むことから、従来の石油化学品からなる発泡樹脂資材と比較して、ポリオレフィンやポリウレタン等の含有割合が減るため、切削粉を焼却処分するとしても、黒煙や有害ガスの発生が少なく、環境に与える負荷を小さくすることができ、切削加工で生じる切削粉の廃棄処分をより安価でかつ容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家電、日用品、車、船舶他、あらゆる製造物のマスターモデルを製作する際の材料として用いられる発泡樹脂資材、リサイクル発泡樹脂資材および発泡樹脂資材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家電、日用品、車、船舶他、あらゆる製造物は、試作段階または製品の製作段階に入る前に、あらかじめ筐体のマスターモデルが製作されている。マスターモデルを製作することによって、製品の形状や強度をチェックしたり、製品を製作するための金型を作成したりしている。
【0003】
従来、マスターモデルは、ポリオレフィンやポリウレタン等に代表される石油化学品から製造された合成樹脂資材を切削加工することによって製作されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−322955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マスターモデル製作の際に、合成樹脂資材の切削加工により約80%が切削粉となるが、石油化学品から製造された合成樹脂資材の切削粉は容易に廃棄することができないため、産業廃棄物として費用をかけて処分されているのが現状である。マスターモデルは、商品として販売する製品の展開(モデルチェンジ)が早ければ早いほど、次から次へと作られることから、製造業者は切削粉の処分に多額の費用を費やすこととなる。従って、より安価に廃棄処分することが可能な資材が求められている。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みて、安価でかつ容易に廃棄処理可能な発泡樹脂資材、リサイクル発泡樹脂資材および発泡樹脂資材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発泡樹脂資材は、合成樹脂以外の材料の微粉体と熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを含む混合物を発泡させて得られたものである。
また、本発明の発泡樹脂資材は、合成樹脂以外の材料の微粉体と熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを混練して混合物とする混練工程と、混合物を発泡させる発泡工程とを含む発泡樹脂資材の製造方法によって得られる。
【0007】
本発明の発泡樹脂資材によれば、合成樹脂以外の材料の微粉体を含むことから、従来の石油化学品からなる合成樹脂資材と比較して、ポリオレフィンやポリウレタン等の含有割合が減るため、切削粉を焼却処分するとしても、黒煙や有害ガスの発生が少なく、環境に与える負荷を小さくすることができる。従って、切削加工で生じる切削粉の廃棄処分をより安価でかつ容易に行うことができる。
【0008】
合成樹脂以外の材料としては、燃焼時に黒煙や有害ガスを発生させる石油系の材料以外のものであればどのようなものであってもよい。また、微粉体の大きさとしてはマイクロメートルサイズ以下のものを用いるとよい。微粉体としてマイクロメートルサイズ以下の大きさのものを用いることにより、切削面が非常に滑らかなものとなる。
【0009】
また、本発明の発泡樹脂資材によれば、合成樹脂以外の材料からなる微粉体と、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを混合することにより、切削に適した均一で比重の軽い発泡樹脂資材を得られることがわかった。
【0010】
合成樹脂以外の材料の微粉体に熱可塑性樹脂のみを混合すると、熱可塑性樹脂の粘度の高さおよび切削時に発生する熱に起因して、切削部分に樹脂の毛羽立ちが生じたり、内部まで十分に発泡せずに比重が重くなったりする問題が発生し、マスターモデル製作用の発泡樹脂資材としては不十分であった。そこで、本発明者が鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを混合することにより、混合物の粘性が減少して十分な発泡が可能となること、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との架橋反応ならびに硬化が起こり、切削の際に、切削部分の樹脂の毛羽立ちが生じないことが明らかとなった。
【0011】
なお、合成樹脂以外の材料の微粉体の混合割合により、発泡樹脂資材の成形性や比重を調整することができる。また、熱可塑性樹脂は、微粉体と熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合物の粘度を調整したり、発泡樹脂資材の発泡度合いや発泡樹脂資材の粘性を調整したりする役割も有している。従って、混合物の混練りや流動性を良くするためには、熱可塑性樹脂の混合割合を調整するとよい。また、熱硬化性樹脂は、発泡樹脂資材の硬さを調整するものであり、切削の際の毛羽立ちを抑えたり、切削が容易なものにしたりするためには、熱硬化性樹脂の混合割合を調整するとよい。
【0012】
本発明の発泡樹脂資材は、微粉体として、食品加工の際に生じる食品残渣物、または、焼却灰や燃え滓などに含まれる燃焼残渣物を用いる方が望ましい。
【0013】
微粉体として、食品加工の際に排出される、卵殻やおから、コーヒーかすや茶がら等の食品残渣物や、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ等の焼却灰や燃え滓などに含まれる燃焼残渣物を用いることによって、従来、廃棄処分となっていた食品残渣物や燃焼残渣物を再利用することができる。また、食品残渣物や燃焼残渣物を含む発泡樹脂資材を焼却処分しても、石油化学品から製造された合成樹脂資材と比較して黒煙や有害ガスの発生をさらに抑えることができるので、廃棄処理をより安価でかつ容易に行うことができる。なお、食品残渣物や燃焼残渣物は、微粉体としてそれぞれ単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0014】
また、微粉体が食品残渣物であり、熱可塑性樹脂が生分解性樹脂であれば、発泡樹脂資材の切削粉や使用後の発泡樹脂資材をそのまま埋め立てたり放置したりしても土壌の微生物によって分解されるので、廃棄処分がさらに容易なものとなる。また、食品残渣物のうち、たとえば、卵殻を微粉体として使用する場合は、卵殻が炭酸カルシウムを主成分とすることから、田や畑に切削粉や使用後の発泡樹脂資材を埋め立てたり放置したりすれば、これらは田や畑の肥料とすることもできる。
【0015】
また、熱可塑性樹脂が生分解性樹脂である場合、混合物にはさらに微粒子状の金属を含有させる方が望ましい。熱可塑性樹脂が生分解性樹脂であると、生分解性樹脂の酸化、分解、腐蝕等により、発泡樹脂資材を長期にわたって保存することが困難となる。しかしながら、混合物に微粒子状の金属を含有させることにより、この微粒子状の金属が生分解性樹脂の酸化、分解、腐蝕等を防ぐので、発泡樹脂資材を長期にわたって保存することが可能となる。微粒子状の金属としては、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等を用いることができる。特に、銀には殺菌効果があることから、銀の微粒子を含有させることにより、生分解性樹脂の酸化、分解、腐蝕等を防ぐとともに発泡樹脂資材に殺菌性を付与することも可能となる。
【0016】
また、合成樹脂以外の材料の微粉体と熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物にさらに発泡剤を混合するとよい。
発泡剤を混合させることにより、混合物は、短時間でかつ十分に発泡することができるので、比重を軽くすることができるだけでなく、発泡樹脂資材の製造効率を上げることもできる。
【0017】
また、上述した発泡樹脂資材を切削することにより発生する切削粉を増量剤として用い、これに合成樹脂以外の材料の微粉体と熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを混合し、発泡させてリサイクル発泡樹脂資材としてもよい。
マスターモデルを製作する際には、発泡樹脂資材の約80%が切削粉となるが、この切削粉を、新たな発泡樹脂資材を製造するための増量剤として混合物に混合させることにより、切削粉の再利用を図ることができ、焼却処分などを行う場合に比べて環境に与える負荷をさらに小さくすることができるリサイクル発泡樹脂資材とすることができる。また、切削粉を増量剤として用いることにより、他の材料の必要量を減らすことができるので、環境への負荷をさらに小さくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、合成樹脂以外の材料の微粉体に、バインダーとしての熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを混合することにより、混合物を十分に発泡させることができ、比重の軽い発泡樹脂資材とすることができるので、持ち運びが容易で作業性に優れた発泡樹脂資材とすることができる。また、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との相乗効果により、本発明の発泡樹脂資材を切削加工しても切削部分の毛羽立ちが抑えられ、滑らかな表面とすることができるので、精度の高いマスターモデルを作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態における発泡樹脂資材について説明する。
本実施の形態における発泡樹脂資材は、合成樹脂以外の材料の微粉体と熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂と発泡剤との混合物を発泡させて得られる。
【0020】
合成樹脂以外の材料の微粉体としては、卵殻やおから、コーヒーかすや茶がら等の食品残渣物や、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ等の焼却灰や燃え滓などに含まれる燃焼残渣物を用いることができる。微粉体としては、燃焼時に黒煙や有害ガスを発生させる石油系の材料以外のものであればよい。上述した食品残渣物以外にも、石灰や木粉、無機物等の微粉末を用いることができる。
【0021】
微粉末の大きさとしては、マイクロメートルサイズ以下のものが望ましく、より望ましいのは、粒径が5〜100マイクロメートル程度のものである。微粉体をこのような大きさとすることにより、発泡樹脂資材を切削加工する際に、切削粉を細かい微粒子状のものとすることができ、マイクロメートルサイズで表面が切削されていくので、切削面が非常に滑らかなものとなる。
【0022】
熱可塑性樹脂としては、生分解性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテートコポリマー、ポリスチレン、熱可塑性エラストマー等を用いることができる。また、熱硬化性樹脂としては、ジアリルフタレートプリポリマー、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等を用いることができる。
【0023】
また、発泡剤としては、熱分解型の化学発泡剤、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、p,p−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、重炭酸ナトリウム等を用いることができる。また、熱分解型の化学発泡剤だけでは、混合物を発泡させた時に発泡ガスが抜けてしまい、十分に発泡できない場合がある。そこで、熱膨張性のマイクロ粒子をさらに混合させることで、発泡ガスの抜けを防止することもできる。
【0024】
熱硬化性樹脂の種類によっては、混合物にさらに架橋剤または硬化剤を混合させるとよい。架橋剤としてはジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5(第三ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(第三ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(第三ブチルペルオキシ)バレレート等を、また、硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン、フタル酸アンモニウム、シュウ酸、フタル酸等を用いることができる。
【0025】
次に、本実施の形態における発泡樹脂資材の製造方法について説明する。
(混練工程)
まず、微粉体と熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを練り込み機(加圧ニーダー)に入れ、温度を上げながら混ぜ合わせる。そして、この混合物に、発泡剤を添加し、1〜2分混練りする。この混合物を100〜110℃に加熱したロール又は押出し機を用いて、1〜30mmの厚さのシート又はブロック状にする。
【0026】
(予備成型)
シート又はブロック状にした混合物を下金型の中に積層状に配置していく。次に、温度をかけながら、この積層状態となっている混合物を上金型で上面側から圧縮してシート間の空気を排除していく。
【0027】
(本成型)
混合物が所定の温度となったら、上金型を一気に上昇させて混合物を発泡させる。
【0028】
このようにして発泡樹脂資材を形成することにより、比重が0.3〜1.5程度の非常に軽量でかつ硬質な発泡樹脂資材を得ることができる。得られた発泡樹脂資材は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との架橋反応ならびに硬化により、この発泡樹脂資材を切削しても、切削部分の樹脂の毛羽立ちが生じることなく、非常に滑らかな切削面を形成することが可能となっている。
【0029】
なお、本実施の形態における発泡樹脂資材の比重は、微粉体の含有量や発泡剤の添加量を調整することで、使用目的に沿った発泡樹脂資材を適宜製造することができる。
【実施例】
【0030】
合成樹脂以外の材料の微粉末として食品残渣物である卵殻が100質量部、熱可塑性樹脂として生分解性樹脂が60質量部、熱硬化性樹脂が40質量部、分散剤が6質量部、架橋剤が0.8質量部、発泡剤が9質量部、着色剤が0.5質量部となるように混合し、加圧ニーダーに入れ、115℃で5分間混練りした。次に、この混練りした混合物を110℃に加熱したロール機を用いて、厚さ2mm程度のシート状の混合物にした。
【0031】
次に、このシート状の混合物を、下金型の中に厚さ20mm程度となるように積層した。下金型および上金型を100℃に加熱するとともに、加熱された上金型で、積層されたシート状の混合物の全体厚さが15mm程度となるように上面側から5分間圧縮してシート間の空気を排除した。そして、金型の温度を上げて160℃で20分間加熱し、混合物が所定の温度に達した後、上金型を引き上げて混合物を一気に発泡させることによって、厚さ20mm程度、比重0.7程度の発泡樹脂資材を得た。このようにして得られた発泡樹脂資材は、切削に適した微細で均一な発泡セルを有していることがわかった。
【0032】
なお、本実施例では、予備成型と同じ金型で本成型を行ったが、製造時間を短縮したい場合は、あらかじめ160℃に加熱した本成型用の金型を用意しておき、予備成型後の混合物を本成型用の金型に移して、所定の温度まで加熱後発泡させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、安価でかつ容易に廃棄処理が可能であり、また、持ち運びが容易で作業性に優れた発泡樹脂資材、リサイクル発泡樹脂資材および発泡樹脂資材の製造方法として用いることができる。また、切削加工しても切削部分の毛羽立ちを抑えることができ、滑らかな表面とすることができるので、精度の高いマスターモデルを作製することが可能な発泡樹脂資材、リサイクル発泡樹脂資材および発泡樹脂資材の製造方法として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂以外の材料の微粉体と熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを含む混合物を発泡させて得られた発泡樹脂資材。
【請求項2】
前記微粉体は、食品加工の際に生じる食品残渣物である請求項1記載の発泡樹脂資材。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂は、生分解性樹脂である請求項2記載の発泡樹脂資材。
【請求項4】
前記混合物はさらに、微粒子状の金属を含むものである請求項3記載の発泡樹脂資材。
【請求項5】
前記微粉体は、焼却灰や燃え滓などに含まれる燃焼残渣物である請求項1記載の発泡樹脂資材。
【請求項6】
前記混合物はさらに発泡剤を含むものである請求項1から5のいずれかの項に記載の発泡樹脂資材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかの項に記載の発泡樹脂資材の切削粉と合成樹脂以外の材料の微粉体と熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを含む混合物を発泡させて得られたリサイクル発泡樹脂資材。
【請求項8】
合成樹脂以外の材料の微粉体と熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを混練して混合物とする混練工程と、前記混合物を発泡させる発泡工程とを含む発泡樹脂資材の製造方法。

【公開番号】特開2007−161903(P2007−161903A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360823(P2005−360823)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(505462677)株式会社グリーンテクノ21 (3)
【出願人】(503044019)
【出願人】(300032123)財団法人佐賀県地域産業支援センター (11)
【Fターム(参考)】