説明

発泡用樹脂組成物及び発泡成形体

【課題】色むらの発生を抑制し、外観が良好な発泡成形体を提供する。
【解決手段】(A)ポリオレフィン樹脂と、(B)発泡剤と、(C)黒色顔料と、(D)下記要件(a)及び(b)を満足するヒンダードアミン系光安定剤0.05〜5質量部と、を含有することを特徴とする樹脂組成物(ただし、前記(A)ポリオレフィン樹脂の含有量を100質量部とする)とする。
要件(a):炭素原子、酸素原子、窒素原子の何れかと結合している式(I)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を有する。


要件(b):酸解離定数(pka)が8未満を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡用樹脂組成物及び発泡成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂組成物は、剛性や耐衝撃性等に優れる材料であることから、自動車内外装材や電気部品箱体等の成形体として、広範な用途に利用されている。成形体の軽量化の目的で、発泡成形が行われている。ポリポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体の多くは高意匠性の観点から、顔料を添加して着色されていることが多い。そのため、成形体の色むらの発生を抑制する必要があり、成形体の色むらの発生について様々な検討が行われてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリオレフィン(A)及び顔料(B)を含むポリオレフィン組成物であって、顔料(B)がファーネス法で製造されたpH5以下のカーボンブラック(B−1)、及び、形状が球状で、平均粒子径が0.05〜0.25μmである黒鉄(B−2)を含むことを特徴とするポリオレフィン組成物が開示されている。引用文献1によれば、色分かれの発生を防止し、優れた外観を有する成形体を得ることが可能である。また、特許文献2には、ポリプロピレン95〜10重量部及び直鎖状低密度ポリエチレン5〜90重量部からなる樹脂成分100重量部に対し、顔料1〜150重量部及びワックスと金属セッケンから選ばれた滑剤0.1〜120重量部を配合したことを特徴とする着色用マスターバッチが記載されている。引用文献2によれば、成形体の物性を低下させることなく、色むらの発生がない成形体を得ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3689992号
【特許文献2】特許第3375262号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記樹脂組成物に光安定剤及び発泡剤を添加して発泡成形体を製造した場合、発泡剤との相互作用により顔料が凝集して色むらが発生してしまうことがあった。
以上の課題に鑑み、本発明では色むらの発生を抑制し、外観が良好な発泡成形体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は(A)ポリオレフィン樹脂と、(B)発泡剤と、(C)黒色顔料と、(D)下記要件(a)及び(b)を満足するヒンダードアミン系光安定剤0.05〜5質量部と、を含有することを特徴とする発泡用樹脂組成物(ただし、前記(A)ポリオレフィン樹脂の含有量を100質量部とする)を提供するものである。
要件(a):炭素原子、酸素原子、窒素原子の何れかと結合している式(I)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を有する。
【化1】

要件(b):酸解離定数(pka)が8未満を示す。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、色むらの発生を抑制し、外観が良好な発泡成形体を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔発泡用樹脂組成物〕
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂組成物は、(A)ポリオレフィン樹脂と、(B)発泡剤と、(C)黒色顔料と、(D)所定のヒンダードアミン系光安定剤と、を含有する。
[(A)ポリオレフィン樹脂]
(A)ポリオレフィン樹脂(以下、成分(A)ともいう)とは、オレフィンモノマーを主成分とする重合性モノマーを重合することによって製造された樹脂である。(A)ポリオレフィン樹脂の製造に使用される重合性モノマー中のオレフィンモノマーの割合は、好ましくは80重量%以上であり、90重量%以上がさらに好ましい。(A)ポリオレフィン樹脂中のオレフィンモノマーに由来する構成単位の含有量は、80重量%以上であり、90重量%以上がさらに好ましい。
ここで、本発明におけるオレフィンとは、炭素原子数2〜15の脂肪族不飽和炭化水素をいう。
(A)ポリオレフィン樹脂としては、オレフィンの単独重合体、少なくとも2種のオレフィンの共重合体が挙げられる。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂などが挙げられる。このうち、ポリプロピレン樹脂であることが好ましい。(A)ポリオレフィン樹脂としては、1種類の樹脂のみを用いてもよく、2種以上の樹脂を用いてもよい。
【0009】
本発明において、ポリエチレン樹脂とは、エチレンの単独重合体だけではなく、エチレンとα−オレフィンの共重合体をも包含する。エチレンとα−オレフィンの共重合体はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
α−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。中でも、1−ブテン,1−ペンテン,1−ヘキセン,1−オクテンを用いることが好ましい。
エチレンとα−オレフィンの共重合体としては、エチレン−1−ブテンランダム共重合体、エチレン−1−ペンテンランダム共重合体、エチレン−1−ヘキセンランダム共重合体、エチレン−1−オクテンランダム共重合等が挙げられる。
【0010】
また、本発明において、ポリプロピレン樹脂とは、プロピレンの単独重合体だけではなく、プロピレンとエチレンの共重合体、プロピレンとα−オレフィンの共重合体をも包含する。これらの共重合体はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
ポリプロピレン樹脂としては、具体的には、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体成分又は主にプロピレンからなる共重合体成分(以下、重合体成分(I)ともいう)と、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンの共重合体成分(以下、共重合体成分(II)ともいう)からなるポリプロピレン系共重合体等が挙げられる。これらのポリプロピレン樹脂は、単独又は2種以上を用いてもよい。
【0011】
ポリプロピレン樹脂の製造に用いられるα−オレフィンとしては、炭素原子数4〜12のα−オレフィンであり、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。このうち1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンを用いることが好ましい。
【0012】
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム共重合体等が挙げられる。
また、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体等が挙げられる。
【0013】
上記重合体成分(I)と、上記共重合体成分(II)と、からなるポリプロピレン系共重合体の重合体成分(I)における主にプロピレンからなる共重合体成分としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分等が挙げられる。また、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンの共重合体成分(前記共重合体成分(II))としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分等が挙げられる。
なお、上記共重合体成分(II)におけるエチレン及び/又はα−オレフィンの含有量は、10〜70質量%であることが好ましい。
【0014】
そして、前記重合体成分(I)と前記共重合体成分(II)からなるポリプロピレン系共重合体としては、例えば、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体等が挙げられる。
【0015】
本発明で用いられる(A)ポリオレフィン樹脂がポリプロピレン樹脂である場合、ポリプロピレン樹脂として、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、又は、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体を用いることが好ましい。
【0016】
また、本発明で用いられる(A)ポリオレフィン樹脂がポリプロピレン樹脂である場合、そのポリプロピレン樹脂の結晶性は、本発明の樹脂組成物や、それを成形して得られる成形品に求められる品質に応じて、適宜、決定すればよい。
ポリプロピレン樹脂の結晶性の指標は、融解温度(融点)や立体規則性をもとに決定される。立体規則性の程度は、アイソタクチックインデックスや、シンジオタクチックインデックスを用いて表される。そしてアイソタクチックインデックスの高いポリプロピレン樹脂は、アイソタクチックポリプロピレンと称され、シンジオタクチックインデックスの高いポリプロピレン樹脂は、シンジオタクチックポリプロピレンと称される。
【0017】
アイソタクチックインデックスは、A.ZambelliらによってMacromolecules,第6巻,第925頁(1973年)に記載されている13C−NMRを使用する測定方法によって得られるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖であり、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率(アイソタクチックペンダット分率と称し、[mmmm]で表す)で表される。NMR吸収ピークの帰属に関しては、Macromolecules,第8巻,第687頁(1975年)に基づいて行われる。具体的には13C−NMRスペクトルの、メチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率を求め、それをポリプロピレン樹脂のアイソタクチックインデックスとして用いることができる。アイソタクチックインデックスが小さいものは結晶性が低く、高いものは結晶性が高いことを示す。
【0018】
また、シンジオタクチックインデックスは、J.A.Ewen,R.L.Jones,and A.Razavi:J.Am.Chem.Soc.,110,6255(1988)、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1955.34.1143−1170の記載を参考に求められ、シンジオタクチックインデックスが小さいものは結晶性が低く、高いものは結晶性が高い。
【0019】
(A)ポリオレフィン樹脂の製造方法は、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法による製造方法が挙げられる。重合触媒としては、例えば、チーグラー型触媒、チーグラー・ナッタ型触媒が挙げられる。また、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物及び有機アルミニウム化合物からなる触媒系、及びこれらの触媒を無機粒子等に担持させた担持型触媒系等が挙げられる。
【0020】
また、重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒によるスラリー重合法、溶媒重合法、無溶媒による液相重合法、気相重合法、及びそれらを連続的に行う気相−気相重合法、液相−気相重合法等が挙げられ、これらの重合方法は、回分式であってもよく、連続式であってもよい。また、(A)ポリオレフィン樹脂を一段階で製造する方法であってもよく、二段階以上の多段階で製造する方法であってもよい。
特に、上記重合体成分(I)と上記共重合体成分(II)からなるポリプロピレン系共重合体の製造方法として、好ましくは、前記重合体成分(I)を製造する段階と前記共重合体成分(II)を製造する段階からなる少なくとも二段階の多段階の製造方法が挙げられる。
【0021】
(A)ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(以下、MFRともいう)は、0.01〜400g/10分であることが好ましい。MFRを400g/10分以下とすることにより、成形体の機械的強度を良好なものとすることが可能となる。そして、機械的強度や生産安定性の観点から、1〜400g/10分であることが好ましく、5〜200g/10分であることがより好ましく、10〜150g/10分であることが更に好ましい。なお、本発明におけるMFRは、A.S.T.M.D1238に従って、ポリプロピレンの場合には230℃、21.2N荷重で、ポリエチレンの場合には190℃、21.2N荷重で測定した値である。
【0022】
[(B)発泡剤]
本発明に係る樹脂組成物は、(B)発泡剤(以下、(B)成分ともいう)を含有する。
この(B)発泡剤は、化学発泡剤であり、樹脂の成形時に分解または反応してガスを発生する化合物であれば特に限定されず、無機化合物であっても、有機化合物であってもよく、2種以上を併用していてもよい。
有機系化学発泡剤の例としては、ポリカルボン酸、アゾ化合物、ニトロソ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド化合物等が挙げられる。無機系化学発泡剤の例としては重炭酸塩、炭酸塩、有機酸金属塩、亜硝酸塩等が挙げられる。
ポリカルボン酸としては、例えば、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸などが挙げられる。アゾ化合物としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ジメチル−2,2’−アゾビスブチレート、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチル−プロピオンアミジン]等が挙げられる。ニトロソ化合物としては、例えばN,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)が挙げられる。ヒドラジン誘導体としては、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド等が挙げられる。セミカルバジド化合物としては、例えばp−トルエンスルホニルセミカルバジドが挙げられる。その他の有機系化学発泡剤としては、トリヒドラジノトリアジン等が挙げられる。また、重炭酸塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等が挙げられる。有機酸金属塩としては、例えばクエン酸ナトリウムが挙げられる。亜硝酸塩としては、例えば亜硝酸アンモニウムが挙げられる。
【0023】
これらの発泡剤のうち、(A)ポリオレフィン樹脂の溶融温度以下では分解せずポリオレフィン樹脂の分解温度以下で分解する発泡剤を用いることが好ましい。具体的には、アゾジカルボンアミド(ADCA)、炭酸水素ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウムであることが好ましく、臭気や発泡体の色むらの発生を防止する観点からは炭酸水素ナトリウムを含有することがより好ましい。
【0024】
上記(B)発泡剤の添加量は、(A)ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、0.05質量部〜5質量部であることが好ましく、1質量部〜5質量部であることがより好ましい。添加量を0.05質量部以上とすることにより、所望の発泡倍率を有する発泡成形体を得ることが可能となる。また、添加量を5質量部以下とすることにより、臭気の発生や、発泡体の色むらの発生を防止することが可能となる。
【0025】
なお発泡剤を樹脂で希釈してマスターバッチとし、このマスターバッチを、(A)成分へ混合し、配合してもよい。この場合の樹脂は、ポリオレフィン樹脂であることが好ましく、溶融温度が(A)成分の溶融温度より低く、また溶融時の粘度が(A)成分の溶融時の粘度より低いポリオレフィン樹脂であることがより好ましい。
上記マスターバッチは、単軸又は二軸押出機やバンバリーミキサー、ニーダー等を使用して、発泡剤と樹脂を加熱溶融混練することにより得られる。また、マスターバッチに含有される(B)成分の濃度は、特に限定されるものではないが、マスターバッチの全量を100質量部とした場合、10質量部〜80質量部であることが好ましい。
【0026】
[(C)黒色顔料]
本発明に係る樹脂組成物は、(C)黒色顔料(以下、(C)成分ともいう)を含有する。(C)黒色顔料としては、カーボンブラック類、黒色有機顔料、酸化鉄系黒色顔料、チタン系黒色顔料、黒色無機顔料、ペリレン系黒色顔料、アゾ系顔料、基体表面に鉱物黒色コーティングを施した被覆粒子、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
カーボンブラック類としては、カーボンブラック(アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック、ミディアムサーマルブラック、ランプブラック(油煙))、ピーチブラック(植物炭)、ボーンブラック(骨炭)、ビチューム(アスファルト)、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ等が挙げられる。黒色有機顔料としては、アニリンブラック、フタロシアニンブラック等が挙げられる。
酸化鉄系黒色顔料としては、例えば鉄黒、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライトなど)、マグネタイト等が挙げられる。
黒色無機顔料としては、酸化銅、二酸化マンガン、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体等が挙げられる。チタン系黒色顔料としては、チタンブラック、スピネル黒等が挙げられる。ペリレン系黒色顔料としては、例えばペリレンブラックが挙げられる。
【0028】
アゾ系顔料としては、例えば、特開昭62−138857号公報、特開平3−266685号公報などに記載されているアゾ系有機顔料、特許第1726153号明細書、特開2002−179943公報、特開2002−256165公報、米国特許第6,623,556(B2)号明細書に記載されたアゾ系顔料であり、(2−ヒドロキシ−N−(2’−メチル−4’−メトキシフェニル)−1−{[4−[(4,5,6,7−テトラクロロ−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−3−イリデン)アミノ]フェニル]アゾ}−11H−ベンゾ[α]−カルバゾール−3−カルボキシアミド)が挙げられる。
【0029】
基体表面に鉱物黒色コーティングを施した被覆粒子としては、例えば特開2002−249676公報に記載の黒色色素であって、白色顔料を被覆した近赤外線反射性被覆粒子が挙げられる。
これらの(C)黒色顔料のうち、カーボンブラック、鉄黒を用いることが好ましく、カーボンブラックの中では着色力に優れるファーネスブラック、チャンネルブラックを用いることが好ましい
【0030】
上記(C)黒色顔料は酸性乃至中性であり、そのpHは、7.0以下、好ましくは2.0以上7.0以下であることが好ましい。pHを7.0以下とすることにより、十分な色むら改善効果を得ることが可能となる。なお、黒色顔料のpKaは、顔料試験方法JIS K 5101に記載の方法によって決定される。
(C)黒色顔料のpHの調整方法としては、酸素プラズマ処理や、カルボニル基、リン酸基、スルホニル基を持つ化合物を表面処理する方法等が挙げられる。
【0031】
(C)黒色顔料の平均粒径は、特に限定される事はないが、分散性の観点から、50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましい。
【0032】
(C)黒色顔料の添加量は、(A)ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、0.001質量部〜1.0質量部であることが好ましく、0.005質量部〜0.5質量部であることがより好ましく、0.005質量部〜0.3質量部であることが更に好ましい。0.001質量部以上とすることにより、十分な色むら改良効果を奏することが可能となる。
また、1.0質量部以下とすることにより、樹脂組成物の流動性を良好なものとすることが可能となる。
【0033】
(C)黒色顔料は、上記黒色顔料を単独又は2種以上併用して用いてもよい。なお黒色顔料を樹脂で希釈してマスターバッチとし、このマスターバッチを、(A)成分へ混合し、配合してもよい。この場合の樹脂は、ポリオレフィン樹脂であることが好ましく、溶融温度が(A)成分の溶融温度より低く、また溶融時の粘度が(A)成分の溶融時の粘度より低いポリオレフィン樹脂であることがより好ましい。
【0034】
上記マスターバッチは、単軸又は二軸押出機やバンバリーミキサー、ニーダー等を使用して、黒色顔料と樹脂を加熱溶融混練することにより得られる。また、マスターバッチに含有される(B)成分の濃度は、特に限定されるものではないが、マスターバッチの全量を100質量部とした場合、10質量部〜80質量部であることが好ましい。
【0035】
[(D)ヒンダードアミン系光安定剤]
本発明に係る樹脂組成物は、(D)ヒンダードアミン系光安定剤(以下、(D)成分ともいう)を含有する。
(D)ヒンダードアミン系光安定剤とは、下記要件(a)、(b)及び(c)を満足する化合物である。
要件(a):炭素原子、酸素原子、窒素原子の何れかと結合している式(I)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を有する。
【化2】


要件(b):酸解離定数pkaが8未満を示す。
【0036】
この(D)ヒンダードアミン系光安定剤は、さらには、その分子量が1000以上であること(要件(c))を満足することが好ましい。
【0037】
以下、上記各要件について詳しく説明する。
要件(a)については、式(I)で表される基は、耐光劣化安定性の観点から、好ましくは酸素原子又は窒素原子に結合しており、さらに好ましくは窒素原子に結合している。
また、要件(b)については、耐光劣化安定性及び色相安定性の観点から、好ましくは、ヒンダードアミン系光安定剤(D)の酸解離定数(pKa)は8未満であり、さらに好ましくは、7以下である。なお、酸解離定数(pKa)は、式(I)で表される基を有する化合物の固有の性質を示す指標であり、公知の滴定法(ブレンステッドの定義に基づく酸解離定数の測定方法)によって求められる値である。
また、要件(c)としては、好ましくは、射出成形時の蒸散による金型汚染の観点から、分子量が1000以上であり、より好ましくは2000以上である。
又、(D)ヒンダードアミン系光安定剤が重合体である場合には、数平均分子量が1000以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましい。
【0038】
中でも、一般式(II)で表されるマレイン酸イミド誘導体を構成単位として含有する共重合体を含有することが好ましい。
【化3】


[式中、R1は、炭素原子数10から30個のアルキル基を表し、nは1より大きい整数を表す。]
【0039】
本発明で用いられる(D)ヒンダードアミン系光安定剤は、好ましくは、R1が炭素原子数14〜28個のアルキル基である一般式(II)で示される構成単位を有する光安定剤であり、より好ましくは、R1が炭素原子数16〜26個のアルキル基である一般式(II)で示される構成単位を有する光安定剤であり、さらに好ましくは、R1が炭素原子数18〜22個のアルキル基である一般式(II)で示される構成単位を有する光安定剤である。なお、アルキル基は、直鎖状、環状何れの構造を形成した基でもよく、好ましくは直鎖状のアルキル基である。
【0040】
本発明の樹脂組成物に含有される(D)ヒンダードアミン系光安定剤の添加量は、(A)ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、0.05〜5質量部であり、好ましくは0.05〜0.5質量部であり、より好ましくは0.1〜0.3質量部である。(D)ヒンダードアミン系光安定剤の添加量を0.05質量部以上とすることにより、得られる発泡体の耐光劣化安定性を良好なものとすることが可能となる。また、添加量を5質量部以下とすることにより、成形時の型汚染を防止し、良好な外観を有する発泡体を得ることが可能となる。なお、(D)ヒンダードアミン系光安定剤は液体、粉末状、顆粒状、ペレット状等の形態で用いられる。また、樹脂、樹脂添加剤、顔料等の成分にあらかじめ高濃度に配合した組成物として用いられる。
また、上記(D)ヒンダードアミン系光安定剤は、他の光安定化剤(ヒンダードアミン系光安定剤を含む)と併用して用いてもよい。
【0041】
[(E)その他]
本発明に係る樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、一般にポリオレフィン樹脂に配合される他の樹脂や、添加剤を含有してもよい。例えば、分散剤、染料や顔料等の上記黒色顔料以外の着色剤、充填剤、造核剤、結晶化促進剤、透明化剤、気泡防止剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、加工助剤、滑剤、抗菌剤、有機系過酸化物、可塑剤、酸化チタン等の光触媒、等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
他の樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合)樹脂、AAS(特殊アクリルゴム/アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂、ACS(アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン共重合)樹脂、ポリクロロプレン、塩素化ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、エチレン/ビニルアルコール共重合樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール、グラフト化ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレートプリポリマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエン共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、天然ゴム等が挙げられる。これらは単独又は2種以上用いてもよい。
ポリスチレン樹脂としては、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが挙げられる。
【0043】
分散剤としては、ワックス、変性ワックス、金属石鹸、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等が挙げられる。これらは単独又は2種以上併用して用いてもよい。
ワックスとしては、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス等が挙げられる。変性ワックスとしては、例えば、分子構造中に酸性基を有するワックスが挙げられる。具体的には、マレイン酸変性ワックス、フマル酸変性ワックス、アクリル酸変性ワックス、メタクリル酸変性ワックス、クロトン酸変性ワックス等が挙げられる。金属石鹸としては、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、ラウリン酸、セバシン酸等の脂肪酸のナトリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩が挙げられる。
【0044】
また、無機顔料及び有機顔料等の上記黒色顔料以外の着色剤も配合することが可能である。無機顔料としては、弁柄、酸化チタン、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、酸化亜鉛、群青、コバルトブルー、炭酸カルシウム、チタンイエロー、鉛白、鉛丹、鉛黄、紺青等が挙げられる。有機顔料としては、キナクリドン、ポリアゾイエロー、アンスラキノンイエロー、ポリアゾレッド、アゾレーキイエロー、ペリレン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、イソインドリノンイエロー等が挙げられる。これらは単独又は2種以上併用して用いてもよい。
【0045】
〔発泡用樹脂組成物の製造方法〕
本発明の樹脂組成物は、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の混練機を用いて原料を混練することにより得られる。各成分の混練機への添加・混合は同時に行ってもよく、後述するように分割して混練をしてもよい。また、(B)発泡剤は成形時に添加することが好ましい。
【0046】
〔発泡成形体〕
本発明に係る発泡成形体は、(A)ポリオレフィン樹脂と、(B)発泡剤と、(C)黒色顔料と、(D)ヒンダードアミン系光安定剤と、を含有する樹脂組成物より得られるものである。発泡成形体は、例えば以下のような方法で製造される。
方法(1):(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分を一括で混合した後、(B)成分の分解温度以下、(A)成分の融点以上の温度にて溶融混練したのち、得られた組成物を発泡成形する方法。
方法(2):始めに(A)成分と(C)成分と(D)成分を溶融混練し、次いで(B)成分を加え発泡成形する方法。
方法(3):(A)成分に、(B)成分と(C)成分、(D)成分をドライブレンドさせ、発泡成形する方法。
【0047】
本発明に係る発泡成形体の用途としては、例えば、自動車材料、家電材料、OA機器材料、建材、排水設備、トイレタリー材料、各種タンク、コンテナー、シート等が挙げられる。
自動車材料としては、例えば、ドアートリム、ピラー、インストルメンタルパネル、コンソール、ロッカーパネル、アームレスト、ドアーインナーパネル、スペアタイヤカバー等の内装部品や、バンパー、スポイラー、フェンダー、サイドステップ、ドア・アウターパネル等の外装部品、その他エアインテークダクト、クーラントリザーブタンク、ラジエターリザーブタンク、ウインドウ・ウオッシャータンク、フェンダーライナー、ファン等の部品、また、フロント・エンドパネル等の一体成形部品等が挙げられる。
【0048】
家電材料としては、例えば、洗濯機用材料(外槽、内槽、蓋、パルセータ、バランサー、洗濯パン等)、乾燥機用材料(外装、内箱、蓋など)、掃除機用材料、炊飯器用材料、ポット用材料、保温機用材料、食器洗浄機用材料、空気清浄機用材料等が挙げられる。
OA機器・メディア関連材料としては、磁気記録媒体や光記録媒体のケース、パソコン用部品、プリンター用部品等が挙げられる。
建材としては、コンクリートなどを固める枠や、壁部材等が挙げられる。排水設備としては、パイプやポンプ部品等が挙げられる。コンテナー材料としては、食品充填用容器、運搬用コンテナ−、衣装コンテナー等が挙げられる。また、運送用パレットなどが挙げられる。
中でも、本発明の成形品の用途として、好ましくは、自動車材料、家電材料、建材、排水設備、コンテナー、運送用パレットである。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例によって、本発明を説明するが、本発明は、これらに実施例に限定されるものではない。
【0050】
実施例及び比較例で用いた樹脂成分及び組成物の物性の測定法を以下に示す。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
メルトフローレートは、JIS−K7210に規定された方法に従い、測定した。特に断りのない限り、測定温度は230℃であり、荷重は21.2Nであった。
【0051】
(2)エチレン含量(単位:質量%);(C2´)T
本実施例において、(A)ポリオレフィン樹脂として、ポリプロピレン樹脂(プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体)を用いた。このポリプロピレン樹脂中のエチレン含量は、測定する材料のプレスシートを作製し、赤外吸収スペクトルを測定して得られるメチル基(−CH)及びメチレン基(−CH−)の特性吸収の吸光度を用いて検量線法により求めた。
【0052】
(3)固有粘度([η]、単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2及び0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。固有粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法、すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。ポリプロピレンについては、溶媒としてテトラリンを用い、温度135℃で測定した。
【0053】
(4)プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の質量比率X
プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の質量比率Xは、プロピレン単独重合体部分とブロック共重合体の各々の結晶融解熱量を測定することにより、次式から計算で求めた。結晶融解熱量は示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。
X=1−(ΔHf)T/(ΔHf)P
(ΔHf)T:ブロック共重合体全体の融解熱量(cal/g)
(ΔHf)P:プロピレンホモポリマー部分の融解熱量(cal/g)
【0054】
(5)プロピレン−エチレンブロック共重合体におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン含量(単位:質量%)
プロピレン−エチレンブロック共重合体におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン含量は、赤外線吸収スペクトル法によりブロック共重合体におけるエチレン含量(質量%)を測定し、次式から計算で求めた。
(C2´)EP=(C2´)T/X
(C2´)T:全ブロック共重合体におけるエチレン含量(質量%)
(C2´)EP:プロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン含量(質量%)
【0055】
(6)プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の固有粘度([η]EP、単位:dl/g)
プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の固有粘度[η]EPは、プロピレン単独重合体部分と全ブロック共重合体の各々の固有粘度を測定することにより、次式から計算で求めた。
[η]EP=[η]T/X−(1/X−1)[η]P
[η]P:プロピレン単独重合体部分の固有粘度(dl/g)
[η]T:ブロック共重合体全体の固有粘度(dl/g)
なお、プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体の製造時に、該ブロック共重合体のプロピレン単独重合体部分となるプロピレン単独重合体の製造直後に、その一部を重合槽から抜き出した。抜き出したプロピレン単独重合体の固有粘度[η]Pを測定し、その測定値を、プロピレン単独重合体部分の固有粘度として用いた。
(7)平均粒子径
電子顕微鏡法により測定した。電子顕微鏡法とは、カーボンブラックをクロロホルムに投入し、200KHzの超音波を20分間照射し分散させた後、分散試料を支持膜に固定し、これを透過型電子顕微鏡で写真撮影し、写真上の直径と写真の拡大倍率により粒子径を計算する方法である。この操作を約1500回にわたって実施し、それらの値の算術平均値により求めた。
【0056】
(8)黒色顔料のpH値
JIS K 5101に記載の方法により測定した。
【0057】
(9)色むら
下記に示す射出成形により成形された100mm×400mm×2mm平板を用いて目視により色むらの有無を観察した。
表1及び表2において、記号「○」は平板に色むらの発生が認められなかったことを意味し、記号「×」は平板に色むらの発生が認められたことを意味する。
【0058】
(10)耐光安定性
スガ試験機(株)製、キセノンウエザーメータ(SX75AP型)を使用して耐光劣化安定性試験を行った。300MJ照射後に、試験片表面における亀裂等の外観異常の有無を評価した。試験条件を次に示した。
試験片寸法:射出成形により成形された100mm×400mm×2mm(厚み)の平板中央部を試験機ホルダサイズに切り出した試験片(65mm×150mm×2mm)
・照射光量:150w/m(300nm〜400nm領域)
・ブラックパネル温度:83℃
・試験機槽内湿度:50%RH
・亀裂等外観異常の観察:光学顕微鏡(100倍)による観察
表1及び表2において、記号「○」は試験片表面に亀裂の発生が認められなかったことを意味し、記号「×」は試験片表面に亀裂の発生が認められたことを意味する。
【0059】
(11)射出成形体の作製方法
上述の色むら評価用試験片及び耐光安定性評価用の試験片(射出成形体)は下記の方法に従い作製した。
実施例1、比較例1〜6に関しては住友重機械工業株式会社製 NEOMAT[登録商標]350/120型射出成形機を用い、成形温度230℃、金型冷却温度40℃、射出時間2sec、冷却時間30secで成形を行い、100mm×400mm×2mmの平板を作成した。
実施例2〜5に関しては、住友重機械工業株式会社製 SE130DU[登録商標]型射出成形機を用いて、成形温度230℃、金型冷却温度40℃、射出時間6.8sec、冷却時間30secで成形を行い、100mm×400mm×2mmの平板を作成した。
【0060】
〔ポリオレフィン系樹脂組成物〕
(1)ポリオレフィン樹脂(成分(A))
ポリオレフィン樹脂としては、プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−1)および、ポリエチレン樹脂(A−2)を用いた。
【0061】
プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−1)は、プロピレンからなる共重合体成分(以下、重合体成分(I)ともいう)と、プロピレンとエチレンの共重合体成分(以下、共重合体成分(II)ともいう)からなるポリプロピレン系共重合体である。これらのプロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体は17号公報の実施例5に記載の方法によって得られる触媒を用いて、液相−気相重合法(多段重合法)によって製造した。
【0062】
(A−1−1) プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体
(A−1−1)のMFR(230℃):102g/10分
(A−1−1)のエチレン含量:3.7質量%
(A−1−1)の極限粘度([η]Total):1.49dl/g
(A−1−1)の重合体成分(I)のアイソタクチック・ペンタッド分率:0.989
(A−1−1)の重合体成分(I)の極限粘度[η]:0.81dl/g
(A−1−1)中のプロピレン−エチレン共重合体重合体成分(II)の含有量:9.7質量%
(A−1−1)中のプロピレン−エチレン共重合体重合体成分(II)のエチレン含有量:38.1質量%
(A−1−1)のプロピレン−エチレン共重合体重合体成分(II)の極限粘度[η]II:7.8dl/g
【0063】
(A−1−2) プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体
(A−1−2)のMFR(230℃):147g/10分
(A−1−2)のエチレン含量:3.3質量%
(A−1−2)の極限粘度([η]Total):1.27dl/g
(A−1−2)の重合体成分(I)のアイソタクチック・ペンタッド分率:0.983
(A−1−2)の重合体成分(I)の極限粘度[η]:0.76dl/g
(A−1−2)中のプロピレン−エチレン共重合体重合体成分(II)の含有量:10.4質量%
(A−1−2)中のプロピレン−エチレン共重合体重合体成分(II)のエチレン含有量:31.7質量%
(A−1−2)のプロピレン−エチレン共重合体重合体成分(II)の極限粘度[η]II:5.76dl/g
【0064】
(A−1−3) プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体
(A−1−3)のMFR(230℃):73g/10分
(A−1−3)のエチレン含量:4.2質量%
(A−1−3)の極限粘度([η]Total):1.40dl/g
(A−1−3)の重合体成分(I)のアイソタクチック・ペンタッド分率:0.987
(A−1−3)の重合体成分(I)の極限粘度[η]:0.86dl/g
(A−1−3)中のプロピレン−エチレン共重合体重合体成分(II)の含有量:11.8質量%
(A−1−3)中のプロピレン−エチレン共重合体重合体成分(II)のエチレン含有量:35.2質量%
(A−1−3)のプロピレン−エチレン共重合体重合体成分(II)の極限粘度[η]II:5.02dl/g
【0065】
(A−2) ポリエチレン樹脂
ポリエチレン樹脂としては、エチレンとα−オレフィンのランダム共重合体として市販されている樹脂を用いた。
(A−2−1) ポリエチレン樹脂
製品名:エンゲージ8137 ダウケミカル株式会社製(エチレン−1−オクテン共重合体)
(A−2−2) ポリエチレン樹脂
製品名:エクセレンFX CX5505 住友化学株式会社製(エチレン−1−ブテン共重合)
【0066】
(2)発泡剤(成分(B))
発泡剤として、製品名ポリスレンEE425(永和化成製、炭酸水素ナトリウム18.5質量%、クエン酸ナトリウム13.5質量%、ポリプロピレン単独重合体70質量%含有の発泡剤マスターバッチ)を用いた。
【0067】
(3)黒色顔料(成分(C))
黒色顔料として、低級カーボンブラック(三菱化学製、pH=2.5、粒径23nm)を用いた。
【0068】
(4)ヒンダードアミン系光安定剤(成分(D))
ヒンダードアミン系光安定剤として、下記の(D−1)〜(D−6)の構造を有するものを用いた。
(D−1)
製品名:UVINUL[登録商標]5050H:BASFジャパン株式会社製
立体障害アミンオリゴマー「N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マレイン酸イミド、及びα−オレフィン(C20−24)からなる共重合体」
構造式:
【化4】

数平均分子量:3500
pKa:7.0
【0069】
(D−2)
製品名:アデカスタブLA52: 株式会社ADEKA製
化学名:テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート
構造式:
【化5】

分子量:847
pKa:8.9
【0070】
(D−3)
製品名:TINUVIN770DF:チバ・ジャパン株式会社製
化学名:ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート
構造式:
【化6】

分子量:481
pKa:9.0
【0071】
(D−4)
製品名:TINUVIN[登録商標]123:チバ・ジャパン株式会社製
化学名:ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート
構造式:
【化7】

分子量:737
pKa:4.4
【0072】
(D−5)
製品名:CHIMASSORB[登録商標]119FL:チバ・ジャパン株式会社製 化学名:N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物
構造式:
【化8】

分子量:2300
pKa:9.2
【0073】
(D−6)
製品名:UV3346:株式会社サイテック製
化学名:ポリ[(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]−ヘキサメチレン−[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]
構造式:
【化9】

数平均分子量:1600
pKa:9.0
【0074】
(5)その他成分(成分(E))
(E−1)有機過酸化物
製品名:パーヘキサ25B:日本油脂株式会社製
化学名:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン
(E−2)中和剤
ステアリン酸カルシウム:共同薬品株式会社製
(E―3)酸化防止剤
製品名:イルガフォス168:チバ・ジャパン株式会社製
(E−4)酸化防止剤
製品名:スミライザーGA80:住友化学株式会社製
化学名:3,9−ビス[2−(3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン
(E−5)分散剤
ステアリン酸亜鉛:日東化成工業株式会社製
(E−6)無機顔料
酸化チタン:HUNTSMAN株式会社製
【0075】
[実施例1]
上記成分(A)〜成分(E)それぞれ表1に記載の割合でタンブラーを用いて30分間攪拌、混合した。その後、二軸混練押出機(TEM−50A 東芝機械(株)製)を使用して押出量を50kg/hr、スクリュー回転数を200rpmで、200℃のシリンダ−設定温度条件にて、ベント吸引下で溶融混練し、着色ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
【0076】
上記着色ポリプロピレン樹脂組成物を、熱風乾燥器を用いて100℃で1時間乾燥後、上記着色ポリプロピレン樹脂組成物100質量部に対し、発泡剤である成分(B)を2.5部ドライブレンドし、射出成形で発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の評価結果を表1に示す。
【0077】
[実施例2]
(A−1−1)78質量部の代わりに(A−1−2)78質量部を使用した以外は、実施例1と同様の手順で着色ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
上記着色ポリプロピレン樹脂組成物を実施例1と同様に射出発泡成形を行い、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の評価結果を表1に示す。
【0078】
[実施例3]
(A−2−1)22質量部の代わりに(A−2−2)22質量部を使用した以外は、実施例2と同様の手順で着色ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
上記着色ポリプロピレン樹脂組成物を実施例2と同様に射出発泡成形を行い、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の評価結果を表1に示す。
【0079】
[実施例4]
成分(A)として(A−1−2)100質量部のみを使用した以外は、実施例1と同様の手順で着色ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
上記着色ポリプロピレン樹脂組成物を実施例1と同様に射出発泡成形を行い、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の評価結果を表1に示す。
【0080】
[実施例5]
(A−1−1)78質量部の代わりに(A−1−3)78質量部を使用した以外は、実施例1と同様の手順で着色ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
上記着色ポリプロピレン樹脂組成物を実施例1と同様に射出発泡成形を行い、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の評価結果を表1に示す。
【0081】
[比較例1]
(D)ヒンダードアミン系光安定剤として、(D−1)を(D−2)に変更した以外は、実施例1と同様の手順で着色ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
上記着色ポリプロピレン樹脂組成物を実施例1と同様に射出発泡成形を行い、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の評価結果を表2に示す。
【0082】
[比較例2]
(D)ヒンダードアミン系光安定剤として、(D−1)を(D−3)に変更した以外は、実施例1と同様の手順で着色ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
上記着色ポリプロピレン樹脂組成物を実施例1と同様に射出発泡成形を行い、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の評価結果を表2に示す。
【0083】
[比較例3]
(D)ヒンダードアミン系光安定剤として、(D−1)を(D−4)に変更した以外は、実施例1と同様の手順で着色ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
上記着色ポリプロピレン樹脂組成物を実施例1と同様に射出発泡成形を行い、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の評価結果を表2に示す。
【0084】
[比較例4]
(D)ヒンダードアミン系光安定剤として、(D−1)を(D−5)に変更した以外は、実施例1と同様の手順で着色ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
上記着色ポリプロピレン樹脂組成物を実施例1と同様に射出発泡成形を行い、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の評価結果を表2に示す。
【0085】
[比較例5]
(D)ヒンダードアミン系光安定剤として、(D−1)を(D−6)に変更した以外は、実施例1と同様の手順で着色ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
上記着色ポリプロピレン樹脂組成物を実施例1と同様に射出発泡成形を行い、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の評価結果を表2に示す。
【0086】
[比較例6]
実施例1と同様の手順で着色ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
上記着色ポリプロピレン樹脂組成物を用いて射出発泡成形を行う際に、(B)発泡剤を
添加しなかった以外は、実施例1と同様に射出発泡成形を行い、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の評価結果を表2に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオレフィン樹脂と、(B)発泡剤と、(C)黒色顔料と、(D)下記要件(a)及び(b)を満足するヒンダードアミン系光安定剤0.05〜5質量部と、を含有することを特徴とする樹脂組成物(ただし、前記(A)ポリオレフィン樹脂の含有量を100質量部とする)。
要件(a):炭素原子、酸素原子、窒素原子の何れかと結合している式(I)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を有する。
【化1】

要件(b):酸解離定数(pka)が8未満を示す。
【請求項2】
前記(B)発泡剤として、炭酸水素ナトリウムを含有する請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)黒色顔料として、カーボンブラックを含有する請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)ヒンダードアミン系光安定剤が、さらに要件(c):分子量が1000以上であることを満足することを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(D)ヒンダードアミン系光安定剤が、一般式(II)で表されるマレイン酸イミド誘導体成分を構成単位として含有する共重合体であることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の樹脂組成物。
【化2】

[式中、R1は、炭素原子数14〜28個のアルキル基を表し、nは1より大きい整数を表す。]
【請求項6】
請求項1から5いずれかに記載の樹脂組成物から製造された発泡成形体。

【公開番号】特開2010−168557(P2010−168557A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288436(P2009−288436)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】