説明

発泡用樹脂組成物用のマスターバッチ、発泡同軸ケーブル及びその製造方法

【課題】 本発明は、発泡同軸ケーブルの発泡絶縁体などに用いる高発泡度の発泡用樹脂組成物用のマスターバッチを提供するものである。
【解決手段】 かゝる本発明は、溶融時の破断張力5.0g以上(190℃)、MFR1.0g/10min(190℃、2.16Kgf)以上であるポリオレフィン系樹脂をベース樹脂とする発泡用樹脂組成物を発泡度80%以上で押出発泡させるためのマスターバッチであって、ポリオレフィン系樹脂と発泡時の成核剤としての金属不活性剤からなり、その配合比が99:1〜70:30であり、かつ、発泡成形後の樹脂中における金属不活性剤の含有量が0.01〜1.0質量%となるようにして用いる発泡用樹脂組成物用のマスターバッチにあり、これを、発泡用樹脂組成物と共に発泡同軸ケーブルの発泡絶縁体などに用いれば、高発泡度で、優れた特性のものが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高発泡度の発泡用樹脂組成物用のマスターバッチ、これを用いた発泡同軸ケーブル及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波用の同軸ケーブルは、近年になりその使用周波数帯域がGHzオーダーに達している。GHz帯域においては、低周波数帯域よりも減衰量(tanδなどの誘電特性)の小さい同軸ケーブルが要求されるため、内部導体(中心導体)上に被覆される絶縁体を発泡形成することが行われている(特許文献1〜2)。
【特許文献1】特許3227091号
【特許文献2】特許2668198号
【0003】
このような発泡同軸ケーブルにおいて、発泡セル(気泡核)を微細化することで、発泡絶縁体の潰れ性などの機械的特性を向上させることができ、また、VSWR(Voltage Standing Wave Ratio)を優れたものとすることができ、さらに、ケーブル製造も安定し、長尺成形できることが知られている。
【0004】
一方、発泡同軸ケーブルでは、内部導体の直上にポリエチレンなどの発泡絶縁体が被覆された構造であるため、高温環境下での使用によっては、絶縁体が導体(通常銅)との接触により害を受け(銅害)、樹脂の分子切断などの劣化が誘発され、減衰量が悪化することが知られている。
【0005】
また、現在までのところ、ポリエチレンなどの発泡用のベース樹脂に対して、アゾジカルボンアミド(ADCA)や4、4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)などの化学発泡剤を少量添加することにより、微細な発泡セルが得られることが判明している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このような化学発泡剤を、発泡セルの核となる成核剤として使用すると、発泡剤が熱分解されて、発泡ガスが生成される反応が起こると同時に、一般的には副反応も起こり、分解残渣などの副生成物が生成される。この副生成物の吸水性の影響により、添加量が少量であっても、減衰量に悪影響を及ぼすことが知られている。
【0007】
また、ケーブルを高温環境下で使用しようとする場合、上記したように銅害が発生し易いため、その劣化防止剤として酸化防止剤や銅害防止剤の金属不活性剤などを添加することも行われているが、これらの添加剤にあっても、多量に添加することで、減衰量を悪化させる懸念があった。
【0008】
さらに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末や窒化ホウ素粉末などを添加することにより、微細な発泡セルが得られるとされているが、窒化ホウ素粉末は高価で実用上の問題がある他、両粉末の場合、微細化が不十分であるという問題もあった。勿論、これらの粉末を用いる場合でも、ケーブルを高温環境下で使用するときには、劣化防止剤として、上記した酸化防止剤や銅害防止剤を別途添加する必要があった。
【0009】
このような状況下にあって、本発明者は、種々の試験を行ったところ、上記したADCAなどの化学発泡剤や、PTFE粉末、窒化ホウ素粉末などを使用することなくとも、銅害防止剤である、上記金属不活性剤を適宜添加することで、発泡セルの十分な微細化を図ることが可能であることを見い出し、提案した(引用文献3)。
より具体的には、用いる金属不活性剤としては、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾールなどのトリアゾール系のもの、又は、2’,3−ビス[3−[3,5−ジーtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]プロピオノヒドラジドなどのヒドラジド系のものが、良好であることを突き止めた。つまり、上記金属不活性剤が成核剤として機能し、発泡セルの微細化が可能となり、また、金属不活性剤自体は、銅害防止剤であるため、発泡絶縁体の劣化防止も可能であることが分った。さらに、このとき、酸化防止剤を併用すれば、より良好な結果が得られることも見い出した。
【特許文献3】特願2005−236290号
【0010】
しかし、引き続き、本発明者が試験、研究したところ、ベース樹脂として、後述する特定の特性を有する、ポリオレフィン系樹脂、特にエチレンプロピレン共重合体系樹脂を用いたところ、より高い高発泡(発泡度80%前半〜90%程度)が可能となり、電気特性の優れた発泡用樹脂組成物が得られることが分った。例えば、この発泡用樹脂組成物を同軸ケーブルの発泡絶縁体として押し出した場合、優れたVSWRが得られた。また、安定した長尺物の成形が可能であることも分った(引用文献4)。
【0011】
さらに、このポリオレフィン系樹脂、特にエチレンプロピレン共重合体系樹脂をベース樹脂とした発泡用樹脂組成物において、通常の樹脂成形では、押出機などの成形機を用い、その成形温度(成形機内の樹脂温度)を140〜230℃程度に設定していたが、本発明者が、使用する金属不活性剤の融点などを考慮して、成形温度に検討を加えたところ、成形機の成形温度を、発泡用樹脂組成物の成形可能な温度以上で、かつ、金属不活性剤の融点以下に設定すると、より良好な結果が得られることを見い出した。
【特許文献4】特願2006−065340号
【0012】
その後、さらに、本発明者が試験、研究したところ、上記のような高発泡度の発泡樹脂成形体、例えば発泡同軸ケーブルの発泡絶縁体を成形するにおいて、発泡時の成核剤として機能する金属不活性剤を、予めポリオレフィン系樹脂に所定の混合比で混合してマスターバッチを作り、これを、発泡用樹脂組成物に添加して混練する場合、金属不活性剤の良好な分散性が得られること、混練時における樹脂組成物の溶融張力低下の影響が低減できることなどを見い出した。これにより、結果として、優れた特性の発泡同軸ケーブルを得ることができた。
【0013】
この理由としては、以下のことが推測される。例えば、同軸ケーブルの絶縁体をなす発泡用樹脂組成物において、高発泡度に対応するためには、溶融張力の高い樹脂を用いる必要がある。しかし、高溶融張力の樹脂では、成形時の混練シェアにより樹脂分子の切断が生じ易く、これにより、樹脂の高溶融張力が低下することが懸念される。
一方で、成核剤としての金属不活性剤を、全樹脂組成物中に良好に混練させるためには、十分な混練(全練)を行う必要があり、この混練により、樹脂の溶融張力が失われ易くなる。結果として、樹脂全体の発泡度が低下するということが予想される。かといって、混練不十分では、金属不活性剤の良好な分散性が得られず、発泡制御がし難くなる。また、発泡セル径も大きく、かつ、不均一となって、外観やVSWRも悪化し、さらに、熱老化特性も低下するなどの問題が生じる。
【0014】
そこで、本発明者は、上記したように、予めマスターバッチを作り、これを、発泡用樹脂組成物に添加して混練することで、後述の試験(実施例)から明らかなように、金属不活性剤の良好な分散性と、樹脂の溶融張力の低下防止という矛盾する関係を両立させることができた。また、これにより、高価な混練機(混練シェアが比較的かかり難く、かつ、高い分散性のコンパウンドが得られる機器)などを用いることなく、通常の混練機や成形機などでも安定して、高発泡度の発泡樹脂成形体が得ちられることが可能となる。
【0015】
本発明は、この点に基づいてなされたものであり、高発泡度の発泡樹脂成形体が安定して得られる、発泡用樹脂組成物用のマスターバッチ、発泡同軸ケーブル及び発泡同軸ケーブル及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1記載の本発明は、溶融時の破断張力5.0g以上(190℃)、MFR1.0g/10min(190℃、2.16Kgf)以上であるポリオレフィン系樹脂をベース樹脂とする発泡用樹脂組成物を発泡度80%以上で押出発泡させるためのマスターバッチであって、ポリオレフィン系樹脂と発泡時の成核剤としての金属不活性剤からなり、その配合比が99:1〜70:30であり、かつ、発泡成形後の樹脂中における金属不活性剤の含有量が0.01〜1.0質量%となるようにして用いることを特徴とする発泡用樹脂組成物用のマスターバッチにある。
【0017】
請求項2記載の本発明は、前記マスターバッチのポリオレフィン系樹脂が、溶融時の破断張力5.0g以上(190℃)、MFR1.0g/10min(190℃、2.16Kgf)以上であるポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の発泡用樹脂組成物用のマスターバッチにある。
【0018】
請求項3記載の本発明は、前記マスターバッチのポリオレフィン系樹脂が、エチレンプロピレン共重合体系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の発泡用樹脂組成物用のマスターバッチにある。
【0019】
請求項4記載の本発明は、前記マスターバッチの金属不活性剤が、トリアゾール系、又はヒドラジド系のものであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の発泡用樹脂組成物用のマスターバッチにある。
【0020】
請求項5記載の本発明は、前記マスターバッチに酸化防止剤を添加することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の発泡用樹脂組成物用のマスターバッチにある。
【0021】
請求項6記載の本発明は、前記請求項1〜5記載のいずれかのマスターバッチと前記発泡用樹脂組成物とを用いて内部導体上に発泡絶縁体を被覆させたことを特徴とする発泡同軸ケーブルにある。
【0022】
請求項7記載の本発明は、前記発泡絶縁体と外部導体間に外スキン層を被覆したことを特徴とする請求項6記載の発泡同軸ケーブルにある。
【0023】
請求項8記載の本発明は、前記内部導体と前記発泡絶縁体間に内スキン層を被覆したことを特徴とする請求項6又は7記載の発泡同軸ケーブルにある。
【0024】
請求項9記載の本発明は、前記請求項1〜5記載のいずれかのマスターバッチを作り、これと発泡用樹脂組成物を押出機に供給して内部導体上に発泡絶縁体を被覆させることを特徴とする発泡同軸ケーブルの製造方法にある。
【発明の効果】
【0025】
本発明の発泡用樹脂組成物用のマスターバッチによると、予めポリオレフィン系樹脂に所定量の金属不活性剤(成核剤)が混合されたマスターバッチを作り、これを、発泡用樹脂組成物に添加して混練し、発泡されるため、金属不活性剤の良好な分散性が得られると共に、混練時の溶融張力低下の影響を低減させることができる。この結果、高発泡度(発泡度80%前半〜90%程度)の発泡樹脂成形体が得られる。また、発泡制御もし易く、発泡セル径も小さく、かつ、均一であるため、良好な外観やVSWRが得られる。さらに、熱老化特性の向上も得られる。さらにまた、成形に際して、通常の混練機や成形機でも安定して、高発泡度の発泡樹脂成形体を得ることができる。
【0026】
また、本発明の発泡同軸ケーブルによると、上記マスターバッチと発泡用樹脂組成物とにより、内部導体上に発泡絶縁体を被覆させれば、高発泡度で、特性の優れた発泡同軸ケーブルを得ることができる。
【0027】
また、この発泡同軸ケーブルにおいて、発泡絶縁体の外周に外スキン層を設けると、同時押出時、外観の凹凸やVSWRが改善され、ガス抜けの防止効果も得られ、より高い発泡度が得られる。
【0028】
また、この発泡同軸ケーブルにおいて、発泡絶縁体の外周に内スキン層を設けると、内部導体と発泡絶縁体間の密着性が向上し、引抜力の改善が可能となり、また、銅害が生じ難くなり、長尺形成がし易くなり、安定したケーブルの製造が可能となる。
【0029】
また、本発明の発泡同軸ケーブルの製造方法によると、予めポリオレフィン系樹脂に所定量の金属不活性剤(成核剤)が混合されたマスターバッチと、発泡用樹脂組成物を押出機に供給して内部導体上に発泡絶縁体を被覆させるため、通常の混練機や成形機により、優れた特性の同軸ケーブルを安定して製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の発泡用樹脂組成物用のマスターバッチは、例えばエチレンプロピレン共重合体系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はこれらの混合物などのポリオレフィン系樹脂に対して、発泡時成核剤として機能する金属不活性剤を混合してなり、その配合比は99:1〜70:30としてある。
【0031】
この配合比を、99:1〜70:30としたのは、例えばポリオレフィン系樹脂99質量部に対して金属不活性剤が1質量部未満では、金属不活性剤量が少な過ぎて、成核剤として機能が得られず、また、良好な分散が困難となるからである。逆に、ポリオレフィン系樹脂70質量部に対して金属不活性剤が30質量部を超えるようになると、金属不活性剤量が多過ぎて、ブルーム(染み出し)が生じるようになるからである。
【0032】
このようにして、金属不活性剤が分散されたマスターバッチを、発泡時、発泡用樹脂組成物と一緒に成形機(押出機など)に投入、発泡させる際、その投入量は、発泡成形体(発泡絶縁体など)の全樹脂に対する、金属不活性剤量が0.01〜1.0質量%となるように調整するものとする。金属不活性剤は、発泡時成核剤として機能するため、この配合範囲とすることで、良好な発泡状態が得られるようになる。即ち、発泡セル径が小さく、かつ、高い均一性が得られる。この結果、発泡度が高く、外観やVSWRに優れ、また、熱老化特性などの改善も図れる。
【0033】
この金属不活性剤としては、トリアゾール系、又は、ヒドラジド系のものを挙げることができる。具体的には、トリアゾール系としては、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、ヒドラジド系としては、2’,3−ビス[3−[3,5−ジーtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]プロピオノヒドラジドの使用が好ましい。これらの金属不活性剤は、通常銅害防止剤としての機能を有するため、その添加により、ケーブルなどでは銅害防止機能も得られる。
なお、必要により、金属不活性剤の他に、他の成核剤として、上記ADCAやOBSHなどのように、分解残渣の弊害のないものとして、例えば、適量のタルク、BN、フッ素樹脂、アゾジカルボンアミド、クレイなどを併用することもできる。
【0034】
このマスターバッチは、最終的に発泡用樹脂組成物に配合されるため、その成分のポリオレフィン系樹脂は、発泡用樹脂組成物側のベース樹脂である、ポリオレフィン系樹脂と同一、又は同種のものを用いることが望ましい。その特性は後述の如くである。
しかし、マスターバッチの発泡用樹脂組成物に対する配合量は、多くとも50質量%、通常は10質量%前後であるため、特に発泡用樹脂組成物側のベース樹脂と同一、又は同種のものに制約されるわけではない。従って、発泡用樹脂組成物側のベース樹脂に対して、良好に混練されるものであれば、上記した、エチレンプロピレン共重合体系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はこれらの混合物などのポリオレフィン系樹脂以外のもの使用も可能である。
【0035】
エチレンプロピレン共重合体系樹脂の市販品としては、FB3312(日本ポリプロ社製、密度0.9、溶融時の破断張力10g、MFR2.0g/10min)や、J703W(三井化学社製、密度0.91、溶融時の破断張力2g、MFR3.0g/10min)を挙げることができる。また、ポリプロピレンの市販品としては、VP103(三井化学社製、密度0.9、溶融時の破断張力10g、MFR2.0g/10min、ホモポリプロピレン)を挙げることができる。また、ポリエチレンの市販品としては、Z463(宇部丸善社製、密度0.918、溶融時の破断張力7g、MFR3.0g/10min、低密度ポリエチレン)、B128(宇部丸善社製、密度0.928、溶融時の破断張力10g、MFR1.0g/10min、低密度ポリエチレン)、J1019(宇部丸善社製、密度0.918、溶融時の破断張力3g、MFR10.0g/10min、低密度ポリエチレン)などを挙げることができ、適宜併用して溶融時の破断張力やMFRを適正な範囲に調整するものとする。
【0036】
このマスターバッチには、好ましくは、酸化防止剤を添加するとよい。この酸化防止剤は、特に限定されないが、例えば以下のものを挙げることができる。
なお、この酸化防止剤は、発泡絶縁体をなす発泡用樹脂組成物側に添加してもよい。さらには、マスターバッチ側と発泡用樹脂組成物側の両方に適宜添加することもできる。
(1)モノフェノール系では2,6−ジ−第三−ブチルフェノール、2,6−ジ−第三−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−第三−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−第三−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,4,6−トリ−第三−ブチルフェノール、オルト−第三−ブチルフェノールなど、
(2)ビス、トリス、ポリフェノール系では2,2’メチレン−ビス−(4−メチル−6−第三−ブチルフェノール)、2,2’メチレン−ビス−(4−エチル−6−第三−ブチルフェノール)、4,4’メチレン−ビス−(2,6−ジ−第三−ブチルフェノール)、4,4’ブチリデン−ビス−((4−メチル−6−第三−ブチルフェノール)、アルキル化ビスフェノール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−第三−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなど、
(3)ヒンダート・フェノール系ではテトラキシ−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−第三−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、n−オクタデシル−3(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三−ブチル・フェニル)プロピオネート、ヒンダートフェノール、ヒンダービストフェノールなど、
(4)チオビスフェノール系では4,4’チオビス−(6−第三−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’チオビス−(6−第三−ブチル−o−クレゾール)、ビス(3,5−ジ−第三−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、ジアルキル・フェノール・スルフィドなど、
(5)アミン系ではN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンなど、
(6)リン系ではトリス(ノニルフェノール)ホスファイ、トリス(混合物−及びジ−ノニルフェノール)ホスファイなど、
(7)その他、ジラウリル・チオジブロピオネート、ジステアリル・チオジブロピオネート、ジステアリル−β,β−チオブチレート、ラウリル・ステアリル・チオジブロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジブロピオネート、ジトリデシル−3,3’−チオジブロピオネート、含硫黄エステル化合物、アミル−チオグリコレート、1,1’−チオビス(2−ナフトール)、2−メルカプトベンズイミダゾール、ヒドラジン誘導などであり、これらは、単独でもよく、種々の形で併用することもできる。
【0037】
そして、その添加量は、マスターバッチと発泡用樹脂組成物との配合比を考慮して行う必要があり、結果として、これらの全樹脂量に対して、0.01〜1.0質量%となるように添加する。その理由は、0.01質量%未満では十分な添加効果、即ち熱老化特性の向上効果が得られず、逆に、1.0質量%を超えて添加効果の向上が見られず、添加量が多くなる分減衰量増加の悪影響が大きくなるからである。なお、好ましくは0.1質量%程度の添加量がよい。
【0038】
このマスターバッチにおける、ポリオレフィン系樹脂や金属不活性剤量、酸化防止剤、その他の添加剤などとの混練にあたっては、バンバリーミキサやロール、2軸押出機、単軸押出機、ニーダーなどを使用する。その際、条件によって分散性や樹脂分子の切断度合いが異なるため、これらの要件が最適になるようにして行うものとする。
【0039】
本発明の発泡同軸ケーブルにおいて、上記マスターバッチが配合される、発泡絶縁体の発泡用樹脂組成物のベース樹脂としては、特に限定されないが、好ましくは熱溶融成形可能な樹脂で、溶融時の破断張力5.0g以上(190℃)、MFR(メルトフローレシオ=melt flow ratio)1.0g/10min(190℃、2.16Kgf)以上である、ポリオレフィン系樹脂、例えばエチレンプロピレン共重合体系樹脂を用いるものとする。この樹脂は上記特性を有するものであれば、単独で用いてもよく、或いは、複数種の混合使用であってもよい。
【0040】
ここで、溶融時の破断張力5.0g以上(190℃)という特性については、より詳しくは、190℃下、キャピラリーレオメータでφ2.095×8.03mmのキャピラリーを用い、ピストンスピード10mm/min、炉体径:9.55mm、引取加速度400m/min2 のもとで測定した値のことである。この溶融時の破断張力5.0g未満だと、破断張力が足りないため、発泡時連続気泡が生じ易くなり、高発泡度が得られなくなるからである。また、MFR1.0g/10min(190℃、2.16Kgf)以上としたのは、MFR1.0g/10min未満だと、溶融時の伸びが足りず、高発泡度が得られなくなるからである。
【0041】
これらの条件を満たすエチレンプロピレン共重合体系樹脂の単独の市販品としては、FB3312(日本ポリプロ社製、密度0.9、溶融時の破断張力10g、MFR2.0g/10min)を挙げることができる。単独ではこれらの条件を満たすことができないが、例えばFB3312との混合使用により、条件が満たされるエチレンプロピレン共重合体系樹脂の市販品としては、J703W(三井化学社製、密度0.91、溶融時の破断張力2g、MFR3.0g/10min)を挙げることができる。例えば上記混合使用の場合、全体の樹脂量を100質量%としたとき、FB3312に対して、J703Wにあっては上限値として60質量%の範囲で混合することができる。その理由は、これらの混合量をあまり多くすると、上記した溶融時の破断張力とMFRの条件が満足できなくなるからである。
【0042】
また、エチレンプロピレン共重合体系樹脂のベース樹脂には、上記特性の破断張力やMFRが失われない範囲で、例えば、耐寒性の向上や折り曲げ時の座屈性の向上などのため、必要により適量のポリエチレン系樹脂を混合することができる。この樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)の使用が好ましい。これらを単独で又は混合として用いることもできる。これらの市販品としては、Hizex1300J(HDPE、三井化学工業社製)、2070(HDPE、宇部丸善ポリエチレン社製)、C180(LDPE、宇部丸善ポリエチレン社製)、B028(LDPE、宇部丸善ポリエチレン社製)などが挙げられる。
【0043】
さらに、エチレンプロピレン共重合体系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂としては、他の樹脂や添加剤などとの配合により、上記特性の破断張力やMFRに調整されたポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などを挙げることができる。特にポリエチレンの場合、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)の使用が好ましい。これらは単独で又は混合して用いることもできる。また、ポリエチレンとポリプロピレンを混合物として用いることも可能である。
【0044】
また、この発泡用樹脂組成物に対しては、必要により、その他の添加物、例えば架橋助剤、分散剤、無機フィラーなどを添加することができる。
【0045】
このような配合からなる発泡用樹脂組成物を、同軸ケーブルの内部導体上に発泡絶縁体として被覆させるには、上述したように、金属不活性剤が分散されたマスターバッチを、発泡時、発泡用樹脂組成物を所定量配合させて、成形機(押出機など)に投入し、発泡させる。ここで、発泡用樹脂組成物に対する、マスターバッチの配合量としては、多くとも50質量%、通常は10質量%前後として調整する。この配合は、手作業でも可能であるが、好ましくは、なるべく混練シェアの掛からないシェーカーミキサなどの機器を用いて混合するとよい(ブレンド)。この混合物を成形機のポッハーに供給するものとする。勿論、使用する成形機のL/D(L:シリンダ長さ、D:シリンダ径、)やDを考慮して、発泡用樹脂組成物に対する、マスターバッチの配合量を決め、適正な希釈度となるようにする。
【0046】
そして、本発明の発泡同軸ケーブルでは、必要により、発泡絶縁体の外周に、外スキン層を設けたり、内部導体の外周に内スキン層を設けるものとする。この外スキン層のベース樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂を用いるものとする。より好ましくは、溶融時の破断張力6.0〜20.0g(190℃)、MFR0.4g/10min(190℃、2.16Kgf)以上、タイプDデュロメータ硬さ55以上であるポリオレフィン系樹脂を用いるとよい。
【0047】
ここで、溶融時の破断張力6.0〜20.0g(190℃)という特性については、上述の場合と同様、より詳しくは、190℃下、キャピラリーレオメータでφ2.095×8.03mmのキャピラリーを用い、ピストンスピード10mm/min、炉体径:9.55mm、引取加速度400m/min2 のもとで測定した値のことである。この溶融時の破断張力を6.0〜20.0gとしたのは、6.0g未満だと、破断張力が足りないため、成形時外部へのガス抜けが生じたり、また、破断張力20.0gを超えると、膨らみ難く、高発泡度が得られ難くなるようになるからである。また、MFR0.4g/10min(190℃、2.16Kgf)以上としたのは、MFR1.0g/10min未満だと、溶融時の伸びが足りず、高発泡度が得られなくなるからである。さらに、タイプDデュロメータ硬さ(ショアD、JIS−K7215)を55以上としたのは、55未満では表面硬度が小さ過ぎて、十分な発泡絶縁体側などの潰れ防止機能、即ち、耐潰れ性が得られるからである。
【0048】
これらのポリオレフィン系樹脂には、必要により、上述した酸化防止剤、本来の銅害防止作用を得るための金属不活性剤を添加することができる。そして、これらのポリオレフィン系樹脂からなる外スキン層の場合、その厚さは20〜50μm程度が望ましい。20μm未満の厚さでは、薄過ぎて加工(被覆)自体が困難となり、また、所望の耐潰れ性の改善が図れないからである。一方、50μm程度を超えて厚過ぎるようになると、発泡層の発泡度が限界以上に大きくなり、発泡が連続してつながる連泡化するため、発泡絶縁体全体の発泡度が低下する恐れがあるからである。
【0049】
この外スキン層の被覆は、単独で行うこともできるが、好ましくは発泡絶縁体と同時押出するとよい。この同時押出の場合、外観の凹凸がなくなり、VSWRが改善されたり、ガス抜けの防止が得られ、より高い発泡度が得られるからである。
【0050】
また、内スキン層の材料としては、通常ポリエチレン(例えば低密度ポリエチレン)を用いる。内スキン層を設けると、内部導体と発泡絶縁体間の密着性が向上し、引抜力の改善が可能となり、また、銅害が生じ難くなり、長尺形成がし易くなり、安定したケーブルの製造が可能となる。内スキン層も単独で、又は発泡絶縁体や外スキン層と同時押出で行うこともできる。なお、内スキン層の厚さも20〜50μm程度とするのがよい。
【0051】
本発明の発泡同軸ケーブルにおいて、上記マスターバッチと発泡用樹脂組成物とを押出成形して発泡させるには、押出機などの成形装置に所望の発泡剤を注入して行う。この発泡剤としては、例えば物理発泡剤、又は化学発泡剤を挙げることができる。ここで、物理発泡剤としては、例えば窒素ガス、アルゴンガス、代替フロンガス、炭酸ガスなどの不活性ガスのガス発泡剤が使用できる。また、物理発泡剤としては、超臨界流体(SCF:Super Critical Fluid)を使用することも可能である。化学発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどが使用できる。これらの混合物も使用することができる。さらにまた、物理発泡剤と化学発泡剤を適宜併用することもできる。
【0052】
図1は、本発明に係る発泡同軸ケーブルの一例を示したものである。図中、1は撚線導体などの内部導体、2は上記本発明で用いられる発泡用樹脂組成物を、押出成形により、導体1上に被覆させた発泡絶縁体、3は金属編組やコルゲート銅パイプなどからなる金属層(外部導体)、4はポリエチレンなどからなるシース、5aは必要により施される、厚さ50μm程度の内スキン層、5bは発泡絶縁体2の外周に施した厚さ50μm程度の外スキン層である。このケーブル外径は、特に限定されないが、約3〜50mm程度のものとして形成される。なお、必要に応じて絶縁体2と金属層3の間にアルミテープなどを入れることもできる。
【0053】
ここで、外スキン層のベース樹脂としては、上述したように、溶融時の破断張力5.0〜20.0g(190℃)、MFR0.4g/10min(190℃、2.16Kgf)以上、タイプDデュロメータ硬さ55以上であるポリオレフィン系樹脂を用いる。この外スキン層を設けると、ケーブル外観も良好となり、また、発泡時のガス閉じ込め効果も得られるため、より高い高発泡度化が得られ、低減衰量の達成が可能となる。
【0054】
また、内スキン層を設けると、上述したように、内部導体と発泡絶縁体間の密着性が向上し、引抜力の改善が可能となり、また、銅害が生じ難くなり、長尺形成がし易くなり、安定したケーブルの製造が可能となる。この内スキン層の樹脂としては、エチレンプロピレン共重合体系樹脂やポリプロピレンも用いることが可能であるが、電気特性や銅害劣化特性の点からすると、ポリエチレンの使用が望ましい。
【0055】
図2は、本発明に係る発泡同軸ケーブルを製造するための押出装置系の一例を示したものである。10は第1押出機、11は第1押出機の樹脂供給口、12は第1押出機のクロスヘッド、20は冷却部、30は第1押出機へのガス発泡剤供給部(物理発泡剤供給部)、40は内スキン層用の第2押出機である。
【0056】
この押出装置系では、先ず、第1押出機10の樹脂供給口11から、ポリオレフィン系樹脂に対して所定量の金属不活性剤(成核剤)が配合分散されたマスターバッチと発泡用樹脂組成物のベース樹脂ペレット、必要な添加剤などをドライブレンドとして供給し、そのクロスヘッド12により、内部導体1上に発泡絶縁体を被覆させる。
この前に、好ましくは、内スキン層用の第2押出機40により、内部導体1上に低密度ポリエチレンなどの内スキン層5aを被覆する。ここで、第1押出機10の押出温度は、225℃などの温度として、使用する金属不活性剤の融点以下になるよう設定する。第2押出機の押出温度は140〜200℃程度に設定する。第1押出機10へは、ガス発泡剤供給部30から、発泡剤として窒素ガスなどを供給する。これにより、上述したように、金属不活性剤が成核剤として機能し発泡セルは微細化される。また、用いるベース樹脂のエチレンプロピレン共重合体系樹脂により高発泡度化される。なお、第1押出機10にあっては、樹脂供給口とガス発泡剤供給部を備えた別の混練用の押出機を連設させた2段押出機構造とすることも可能である。
【0057】
第1押出機10のクロスヘッド12により被覆された発泡絶縁体を冷却部20で冷却する。このとき、好ましくは、第3押出機(図示省略)の押出部を、例えばクロスヘッド12内に組み込み、上記した外スキン層5bを発泡絶縁体の外周に被覆させる。この第3押出機の押出温度は140〜200℃程度に設定する。この後、必要な外部導体、シースを施すことにより、上記した発泡同軸ケーブルが得られる。
【0058】
これらの押出成形は、通常の押出機により対応することができ、良好な生産性を持って行うことができる。なお、押出方式としては、各被覆層毎にタンデム(順次)に行ってもよく、また、同時押出としてもよい。また、各押出機における押出温度は、実測した樹脂温度であり、上述したように、発泡用樹脂組成物の成形可能な温度以上で、かつ、金属不活性剤の融点以下になるようにしてある。特に、発泡絶縁体用のメイン押出機である、第1押出機10において、シリンダ部分の温度を最も高い温度(押出機最高温度)に設定してある。また、発泡剤としては、窒素ガスの他に、上述したように、例えば、アルゴンガス、代替フロンガス、炭酸ガスなどの不活性ガスのガス発泡剤、超臨界流体などを用いることができる。また、化学発泡剤については、上述したように、分解残渣発生の問題があるが、超微量であれば添加することも可能であり、上記ガス発泡と併用することもできる。このような化学発泡剤しては、上述したように、アゾジカルボンアミド、4,4’オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどを使用することができる。
【0059】
なお、上記説明の場合、発泡同軸ケーブルが中心の説明であったが、本発明は、勿論この発泡同軸ケーブルに限定されるものではない。例えば、断熱材や遮音材などの発泡成形シートなどの発泡成形体に適用することもできる。
【0060】
〈実施例、比較例〉
先ず、表1〜表6に示す配合からなる、発泡用樹脂組成物用のマスターバッチと発泡用樹脂組成物とを用いて、発泡絶縁体と外スキン層及び内スキン層を有する、図1とほぼ同構造の発泡同軸ケーブルをサンプルケーブルとして製造した(実施例1〜12、比較例1〜7)。各サンプルケーブルの製造にあたっては、先ず、各マスターバッチにあっては、ポリオレフィン系樹脂と金属不活性剤及び酸化防止剤などを所定の配合比となるように、2軸押出機に投入して紐状に押し出し、水冷後、カットしてペレット状のマスターバッチを作成した。このマスターバッチと、所定の溶融張力、MFRを有する発泡用樹脂組成物のベース樹脂となるポリオレフィン系樹脂とをシェーカーミキサにより混合した。
【0061】
そして、これを、図2に示す押出装置系の押出機(単軸押出機、シリンダ径=80mm、L/D=30)に供給し、上述した温度設定、即ち、押出機の最大温度が210℃以下になるように設定して、発泡させた。
得られたケーブルの内部導体の外径は3mm、発泡絶縁体の外径は8mm、ケーブル全体の外径は11.1mmである。より具体的には、窒素ガスによるガス発泡で発泡絶縁体を被覆した後、コルゲートの外部導体と難燃ポリエチレンシースを施した。
【0062】
また、用いたマスターバッチのポリオレフィン系樹脂である、エチレンプロピレン共重合体系樹脂は、FB3312〔日本ポリプロ社製、密度0.9、溶融時の破断張力10g(190℃)、MFR(190℃)2.0g/10min〕、J703W〔三井化学社製、密度0.91、溶融時の破断張力2g(190℃)、MFR(190℃)3.0g/10min〕であり、ポリプロピレンは、VP103(三井化学社製、密度0.9、溶融時の破断張力10g、MFR2.0g/10min、ホモポリプロピレン)である。
【0063】
また、ポリエチレンはブレンド品(PE−1〜2)を用いた。
ブレンドPE−1〔低密度PE、密度0.923、溶融時の破断張力9.0g(190℃)、MFR(190℃)2.0g/10min〕、ブレンドPE−2〔低密度PE、密度0.923、溶融時の破断張力4.0g(190℃)、MFR(190℃)8.0g/10min〕の特性のものである。なお、ブレンドPE−1はZ463〔宇部丸善社製、低密度PE、密度0.918、溶融時の破断張力7g(190℃)、MFR(190℃)3.0g/10min〕とB128〔宇部丸善社製、低密度PE、密度0.928、溶融時の破断張力10g(190℃)、MFR(190℃)1.0g/10min〕とのブレンド物(混合比率50:50)、ブレンドPE−2はZ463〔宇部丸善社製、低密度PE、密度0.918、溶融時の破断張力7g(190℃)、MFR(190℃)3.0g/10min〕とJ1019〔宇部丸善社製、低密度PE、密度0.918、溶融時の破断張力3g(190℃)、MFR(190℃)10.0g/10min〕とのブレンド物(混合比率25:75)である。
【0064】
また、マスターバッチが配合される発泡用樹脂組成物ポリオレフィン系樹脂については、上述したエチレンプロピレン共重合体系樹脂である、FB3312〔日本ポリプロ社製、密度0.9、溶融時の破断張力10g(190℃)、MFR(190℃)2.0g/10min〕とブレンドPE−1の他に、ブレンドPE−3を用いた。
ブレンドPE−3は〔低密度PE、密度0.928、溶融時の破断張力12.0g(190℃)、MFR(190℃)0.8g/10min〕の特性のものである。なお、ブレンドPE−3はB128〔宇部丸善社製、低密度PE、密度0.928、溶融時の破断張力10g(190℃)、MFR(190℃)1.0g/10min〕とB028〔宇部丸善社製、低密度PE、密度0.928、溶融時の破断張力18g(190℃)、MFR(190℃)3.0g/10min〕とのブレンド物(混合比率80:20)である。
【0065】
また、金属不活性剤&成核剤(兼成核剤)はCDA−1M(旭電化工業社製、トリアゾール系もの=3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、加工時揮発性、分散性の改善を施したもの)、イルガノックスMD1024は(チバスペシャルティケミカルズ社製、ヒドラジド系のもの=2’,3−ビス[3−[3,5−ジーtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]プロピオノヒドラジド)、酸化防止剤はイルガノックス1010(ヒンダートフェノール系の酸化防止剤、チバスペシャルティケミカルズ社製)である。
なお、表中のマスターバッチのベース樹脂及び金属不活性剤(&成核剤)、発泡用樹脂組成物のベース樹脂及びマスターバッチの配合数値は質量部を示す。ただし、金属不活性剤(&成核剤)の最終配合配合量は質量%を示す。また、全ての実施例及び比較例において、マスターバッチと混合された発泡用樹脂組成物に対して、酸化防止剤を0.1質量%となるように添加してある。
【0066】
各サンプルケーブルについて、表3、表6に示すような、特性試験を行い、その特性〔発泡度、発泡倍率、平均発泡セル径、セルの均一性、VSWR、熱老化特性、コスト〕を求めた。
【0067】
〈発泡度試験〉
サンプルケーブルの発泡絶縁体を取り出し、発泡度は、発泡度=(1−発泡後の比重/発泡前の比重)×100の式により求めた。ここで、発泡度82%以上が合格レベルである。
【0068】
〈発泡倍率試験〉
サンプルケーブルの発泡絶縁体を取り出し、発泡倍率は、発泡倍率=1/(100−発泡度)×100の式により求めた。ここで、発泡倍率5.6以上が合格レベルである。
【0069】
〈平均発泡セル径試験〉
サンプルケーブルの発泡絶縁体断面を観察し、無作為に選択した100個のセルの「(長い方のセル径+短い方のセル径)/2」の平均を平均発泡セル径(mm)とした。ここで、0.25mm以下が合格レベルである。
【0070】
〈セルの均一性試験〉
サンプルケーブルの測定したセル径の標準偏差が、上記平均発泡セル径の30%未満であれば、「○」で表示し、30%以上であれば、「×」で表示した。
【0071】
〈VSWR試験〉
サンプルケーブルをネットワークアナライザー(アジレントテクノロジー社製、8722ES)を用いて測定した。この測定値は気泡が微細で均一なほど小さくなる。ここで、1.2未満が合格レベルで、1.0に近いほど良好と言える。
【0072】
〈熱老化特性試験〉
サンプルケーブルを90℃の恒温槽に所定時間投入し、その取り出してケーブルを解体し、発泡絶縁体部分に脆化やゲル化などが生じていないか否かを目視により観察した。
そして、2年以上の投入でも脆化やゲル化などが生じていないものを、「◎」で表示し、2年未満から1年以上で脆化やゲル化などが生じたものは、「○」で表示し、1年未満から0.5年以上で脆化やゲル化などが生じたものは、「△」で表示し、0.5年未満で脆化やゲル化などが生じたものは、「×」で表示した。
【0073】
〈コスト試験〉
サンプルケーブルにおける金属不活性剤の総配合量により判断した。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
【表5】

【0079】
【表6】

【0080】
上記の表1〜表6から明らかなように、本発明の発泡同軸ケーブルの場合(実施例1〜12)、全ての特性において良好であることが分かる。
【0081】
これに対して、本発明の条件を欠く発泡同軸ケーブルの場合(比較例1〜7)、いずれの点において問題があることが分る。
つまり、比較例1ではマスターバッチにおける金属不活性剤の配合量が少な過ぎるため、金属不活性剤の分散性が悪いものと推測できる。これにより、セル径が大きく、かつ、不均一で、結果として、発泡度が低く、VSWR、熱老化特性も悪いことが分かる。
比較例2ではマスターバッチにおける金属不活性剤の配合量が多過ぎる(飽和溶解量以上の量)ため、ブルームの発生が激しく、ケーブル化は断念せざるを得なかった。
比較例3では金属不活性剤の最終濃度が薄過ぎるため、セル径が大きく、かつ、不均一で、結果として、発泡度が低く、VSWR、熱老化特性も悪いことが分かる。
比較例4では金属不活性剤の最終濃度が大き過ぎて、コスト高となることが分かる。
比較例5ではマスターバッチのみの全練であるため、発泡成形時の溶解張力が足らず、高発泡度が得られないことが分かる。ただし、金属不活性剤の分散性はよいので、熱老化特性は良いことが分かる。
比較例6ではマスターバッチ側が適正なものでも、発泡用樹脂組成物のベース樹脂側の特性、即ち、溶解張力が小さ過ぎると、高発泡度が得られないことが分かる。また、セル径が大きく、かつ、不均一で、VSWRも悪いことが分かる。
比較例7ではマスターバッチ側が適正なものでも、発泡用樹脂組成物のベース樹脂側の特性、即ち、MFRが小さ過ぎると、高発泡度が得られないことが分かる。また、セル径が大きく、かつ、不均一で、VSWRも悪いことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る発泡同軸ケーブルの一例を示した縦断端面図である。
【図2】本発明に係る発泡同軸ケーブルを製造するための押出装置系の一例を示した概略説明図である。
【符号の説明】
【0083】
1・・・内部導体、2・・・発泡絶縁体、3・・・金属層(外部導体)、4・・・シース、5a・・・内スキン層、5b・・・外スキン層、10・・・第1押出機、12・・・第1押出機のクロスヘッド、20・・・冷却部、30・・・ガス発泡剤供給部、40・・・第2押出機、100・・・発泡成形シート、110・・・外スキン層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融時の破断張力5.0g以上(190℃)、MFR1.0g/10min(190℃、2.16Kgf)以上であるポリオレフィン系樹脂をベース樹脂とする発泡用樹脂組成物を発泡度80%以上で押出発泡させるためのマスターバッチであって、ポリオレフィン系樹脂と発泡時の成核剤としての金属不活性剤からなり、その配合比が99:1〜70:30であり、かつ、発泡成形後の樹脂中における金属不活性剤の含有量が0.01〜1.0質量%となるようにして用いることを特徴とする発泡用樹脂組成物用のマスターバッチ。
【請求項2】
前記マスターバッチのポリオレフィン系樹脂が、溶融時の破断張力5.0g以上(190℃)、MFR1.0g/10min(190℃、2.16Kgf)以上であるポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の発泡用樹脂組成物用のマスターバッチ。
【請求項3】
前記マスターバッチのポリオレフィン系樹脂が、エチレンプロピレン共重合体系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の発泡用樹脂組成物用のマスターバッチ。
【請求項4】
前記マスターバッチの金属不活性剤が、トリアゾール系、又はヒドラジド系のものであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の発泡用樹脂組成物用のマスターバッチ。
【請求項5】
前記マスターバッチに酸化防止剤を添加することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の発泡用樹脂組成物用のマスターバッチ。
【請求項6】
前記請求項1〜5記載のいずれかのマスターバッチと前記発泡用樹脂組成物とを用いて内部導体上に発泡絶縁体を被覆させたことを特徴とする発泡同軸ケーブル。
【請求項7】
前記発泡絶縁体と外部導体間に外スキン層を被覆したことを特徴とする請求項6記載の発泡同軸ケーブル。
【請求項8】
前記内部導体と前記発泡絶縁体間に内スキン層を被覆したことを特徴とする請求項6又は7記載の発泡同軸ケーブル。
【請求項9】
前記請求項1〜5記載のいずれかのマスターバッチを作り、これと発泡用樹脂組成物を押出機に供給して内部導体上に発泡絶縁体を被覆させることを特徴とする発泡同軸ケーブルの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−19379(P2008−19379A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194033(P2006−194033)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】