説明

発泡穀粉添加加熱食品

【課題】ふっくらと分厚く仕上がり、食感に優れて増量効果の高い加熱食品を提供する。
【解決手段】小麦粉、米粉、大麦粉、ライ麦粉、トウモロシ粉、テフ粉、ヒエ粉、黄粉、ヒヨマメ粉、エンドウマメ粉、蕎麦粉、アマランサス粉、片栗粉、葛粉、タピオカ粉、馬鈴薯粉、アビオス粉、栗粉、ドングリ粉等の穀物を加水し加熱して発泡させた後乾燥し粉砕して得られる発泡穀粉を添加してなる発泡穀粉添加加熱食品である。ふっくらと分厚く仕上がるので食感に優れるとともに、増量効果が高いので歩留まりの向上や製造コストの低減を図ることができ、しかも安全に食することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱食品に関する。詳しくは、ふっくらと分厚く仕上がり、食感に優れて増量効果の高い発泡穀粉添加加熱食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小麦粉は、7〜8割がデンプンであるがタンパク質を1割程度含んでおり、その主たるタンパク質であるグリアジンやグルテニンは、水を吸収するとグルテンとなり優れた伸展性を発揮するので、焼き菓子やパン等の加熱食品(ベイクド・フード)の生地材料として広く用いられてきた。
【0003】
しかし、小麦粉は、かかるグルテンがアレルゲンとなって食物アレルギーを引き起こすため、近年は小麦粉の代替材料への関心が高まってきている。その中でも、米粉は、アレルギー性グルテンを含まず、かつ米粉特有の粘弾性を有するとともに保水性にも優れるので、小麦粉代替材料として期待が寄せられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−267144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、米粉は小麦粉に比べて比重が大きいため、特に焼き菓子等の加熱食品に用いた場合、生地中の気泡が潰れてふっくらと分厚く仕上がり難いという欠点があった。そのため、加熱食品の食感が悪くなるばかりでなく、見た目の嵩を補うために種生地の消費量が多くなり、加熱時間も余計にかかるため、歩留まりの低下や製造コストの上昇を招くという問題があった。
【0006】
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、ふっくらと分厚く仕上がり、食感に優れて増量効果の高い加熱食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0008】
(1)即ち、本発明は、穀粉を発泡粉末化した発泡穀粉を添加してなる発泡穀粉添加加熱食品である。
【0009】
(2)本発明はまた、前記発泡穀粉は、前記穀粉を加水し加熱加圧して発泡させた後乾燥し粉砕して得られることを特徴とする(1)に記載の発泡穀粉添加加熱食品である。
【0010】
(3)本発明はまた、前記発泡穀粉は、平均粒径が20〜60メッシュである(1)又は(2)に記載の発泡穀粉添加加熱食品である。
【0011】
(4)本発明はまた、前記発泡穀粉は、粒度分布のd(0.1)が0.2〜20μm、d(0.5)が100〜1000μm及びd(0.9)が500〜2000μm(但し、d(0.1)は、粒子の体積を小さい方から大きい方へ積算していった場合の体積比10%の部分の粒子径を表し、d(0.5)は、前記体積比50%の部分の粒子径を表し、d(0.9)は前記体積比90%の部分の粒子径を表す)である(1)〜(3)の何れか1つに記載の発泡穀粉添加加熱食品である。
【0012】
(5)本発明はまた、前記発泡穀粉は、嵩密度が0.1〜0.5g/mlである請求項1〜4の何れか1項に記載の発泡穀粉添加加熱食品である。
【0013】
(6)本発明はまた、前記発泡穀粉は、α化度が80%以上である(1)〜(5)の何れか1つに記載の発泡穀粉添加加熱食品である。
【0014】
(7)本発明はまた、前記穀粉は、小麦粉、米粉、大麦粉、ライ麦粉、トウモロシ粉、テフ粉、ヒエ粉、黄粉、ヒヨマメ粉、エンドウマメ粉、蕎麦粉、アマランサス粉、片栗粉、葛粉、タピオカ粉、馬鈴薯粉、アビオス粉、栗粉及びドングリ粉からなる群より選択される少なくとも1つである(1)〜(6)の何れか1つに記載の発泡穀粉添加加熱食品である。
【0015】
(8)本発明はまた、前記穀粉は、小麦粉以外から選択される(7)に記載の発泡穀粉添加加熱食品である。
【0016】
(9)本発明はまた、通常小麦粉を使用する加熱食品において小麦粉の一部又は全部を前記発泡穀粉で代替して得られることを特徴とする(1)〜(8)の何れか1つに記載の発泡穀粉添加加熱食品である。
【0017】
(10)本発明はまた、菓子、パン、麺又は練り製品である、(1)〜(9)の何れか1つに記載の発泡穀粉添加加熱食品である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の発泡穀粉添加加熱食品によれば、穀粉を発泡粉末化した発泡穀粉を添加してなるので、ふっくらとした仕上がりとなり、優れた食感を得ることができる。また、分厚く仕上がり増量効果があるので、種生地の消費量を抑えることができ、加熱時間も短縮できるため、歩留まりの向上や製造コストの低下を達成することができる。
【0019】
また、本発明の発泡穀粉添加加熱食品によれば、発泡粉末化において加熱加圧処理されたほぼ無菌状態の発泡穀粉を使用するので、通常の穀粉を使用したものと比べて安全で日持ちの良い加熱食品とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の発泡穀粉添加加熱食品は、穀粉を発泡粉末化した発泡穀粉を添加してなることを特徴とするものである。
【0021】
本発明で利用される発泡穀粉の原料となる穀粉は、発泡粉末化が可能なものであれば特に限定されるものではない。ここで、本発明における穀粉とは、穀類、豆類、擬穀類等の粉末以外に、芋類や木の実等の粉末も含む概念であり、具体例を示せば、小麦粉、米粉、大麦粉、ライ麦粉、トウモロシ粉(コーンスターチ)、テフ粉、ヒエ粉等のイネ科穀物粉、黄粉(大豆粉)、ヒヨマメ粉、エンドウマメ粉等の豆類粉、蕎麦粉、アマランサス粉等の擬穀物粉、片栗粉、葛粉、タピオカ粉、馬鈴薯粉、アビオス粉等の芋類粉・根菜粉、栗粉、ドングリ粉等の木の実粉等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、特に米粉が弾性にすぐれ、膨潤に富むため好適に用いられる。
【0022】
本発明で利用される発泡穀粉は、上記原料穀粉を加水し加熱加圧して発泡させた後乾燥し粉砕することにより得ることができる。具体的には、上記原料穀粉をミキサーに投入し、原料水分が13〜25重量%となるように加水混合した後、エクストルーダー(生地成型機)に投入し、原料穀粉に所定量の水を添加し、20〜80℃で加圧・加熱しながら混合攪拌をおこなう。その後、大気中に放出し減圧して発泡体を成形し、得られた発泡体を所定の大きさにカットしながら冷却ベルト上に吐出して冷却乾燥する。得られた発泡体を粉砕機にかけ、所定の粒子性状に粉砕して、目的の発泡穀粉を得る。
【0023】
本発明で利用される発泡穀粉の平均粒径は、20〜60メッシュであることが好ましく、30〜50メッシュであることが特に好ましい。発泡穀粉の平均粒径が上記範囲未満では、あまり膨潤しないので好ましくなく、上記範囲を超えると吸水が悪く芯が残り異物感があり、また老化もしやすいので好ましくない。
【0024】
また、本発明で利用される発泡穀粉の粒度分布は、d(0.1)(粒子の体積を小さい方から大きい方へ積算していった場合の体積比10%の部分の粒子径)が0.2〜20μm、d(0.5)(同体積比50%の部分の粒子径)が100〜1000μm及びd(0.9)(同体積比90%の部分の粒子径)が500〜2000μmであることが好ましく、d(0.1)が1〜10μm、d(0.5)が200〜500μm及びd(0.9)が800〜1500μmであることが特に好ましい(数値範囲を補充して下さい)。発泡穀粉の粒度分布が上記範囲未満では、膨潤効果がないので好ましくなく、上記範囲を超えると吸水が悪く芯が残るので好ましくない。
【0025】
更に、本発明で利用される発泡穀粉の嵩密度は、0.1〜0.5g/mlであることが好ましく、0.1〜0.3g/mlであることが特に好ましい。発泡穀粉の嵩密度が上記範囲未満では、膨潤効果がないので好ましくなく、上記範囲を超えると吸水が悪く芯が残るので好ましくない。
【0026】
更に、本発明で利用される発泡穀粉のα化度は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが特に好ましい。発泡穀粉のα化度が上記範囲未満では、膨潤効果がないので好ましくない。
【0027】
本発明において、上記発泡穀粉を添加する加熱食品は、オーブンやレンジ等で加熱して製造するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、菓子、パン等が挙げられる他、麺又は練り製品等であってもよい。菓子の具体例としては、スポンジケーキ、パウンドケーキ(カトルカール)、カステラ、タルト、シュークリーム、スフレ、バウムクーヘン、ビスケット、クッキー、パンケーキ、パフ、マシュマロ等の洋菓子、饅頭、大福、団子、羊羹、最中、どら焼き、今川焼き、たい焼き、人形焼、がんずき等の和菓子等が挙げられ、パンの具体例としては、食パン、ロールパン、フランスパン、クロワッサン、デニッシュ、ベーグル、スコーン、ピロシキ、乾パン、菓子パン、揚げパン、ドーナツ等が挙げられる。これらの加熱食品うち、通常小麦粉を使用するものは、小麦粉を小麦粉以外の穀粉の発泡粉末で代替することにより、グルテンに起因する食物アレルギーを引き起こすことのない極めて安全な加熱食品とすることができるので特に好適である。
【0028】
次に、本発明の発泡穀粉添加加熱食品を、実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[比較例1]
【0029】
従来のバウムクーヘンの製造
【0030】
表1に示す材料組成に従い、従来のバウムクーヘンを製造した。
【表1】

【0031】
撹拌容器にローマッセ(アーモンドと砂糖が2:1のペースト、ローマジパンともいう)、水飴、バター及び塩を加えて泡立てた。これに、別途、卵黄にグラニュー糖20gを取り分けて加え、ラム酒、バニラオイル及びレモン果皮を入れ泡立てたものを加えて混合した。さらに、別途、生クリームに卵白と残りのグラニュー糖を数回に分けながら加え泡立てたものを加えて混合した。これに、小麦粉、ベーキングパウダー及びコーンスターチを一緒に篩って加えた。得られた生地をグラシン紙を巻きつけた回転するバウムクーヘンの心棒に浸し、オーブン中で回しながら約180度で約35分間焼いた。これを20回繰り返して、既定の太さ(直径約15cm)に焼き上げた。
[比較例2]
【0032】
米粉入りバウムクーヘンの製造
【0033】
表2に示す材料組成に従い、米粉(みたけ食品工業社製「米粉パウダー」)入りのバウムクーヘンを製造した。
【表2】

【0034】
撹拌容器にローマッセ、水飴、バター及び塩を加えて泡立てた。これに、別途、卵黄にグラニュー糖20gを取り分けて加え、ラム酒、バニラオイル及びレモン果皮を入れ泡立てたものを加えて混合した。さらに、別途、生クリームに卵白と残りのグラニュー糖を数回に分けながら加え泡立てたものを加えて混合した。これに、小麦粉、ベーキングパウダー、コーンスターチ及び米粉を一緒に篩って加えた。得られた生地をグラシン紙を巻きつけた回転するバウムクーヘンの心棒に浸し、オーブン中で回しながら約180度で約35分間焼いた。これを20回繰り返して、既定の太さ(直径約15cm)に焼き上げた。
【実施例1】
【0035】
発泡米粉入りバウムクーヘンの製造
【0036】
表3に示す材料組成に従い、発泡米粉(みたけ食品工業社製「リ・ネージュ」)入りのバウムクーヘンを製造した。なお、使用した発泡米粉の特性を表4に示した。
【表3】

【表4】

【0037】
撹拌容器にローマッセ、水飴、バター及び塩を加えて泡立てた。これに、別途、卵黄にグラニュー糖20gを取り分けて加え、ラム酒、バニラオイル及びレモン果皮を入れ泡立てたものを加えて混合した。さらに、別途、生クリームに卵白と残りのグラニュー糖を数回に分けながら加え泡立てたものを加えて混合した。これに、小麦粉、ベーキングパウダー、コーンスターチ及び発泡米粉を一緒に篩って加えた。得られた生地をグラシン紙を巻きつけた回転するバウムクーヘンの心棒に浸し、オーブン中で回しながら約180度で約35分間焼いた。これを17回繰り返して、既定の太さ(直径約15cm)に焼き上げた。
【0038】
上記の結果から明らかなように、小麦粉の配分量の一部を通常の米粉で代替した米粉入りバウムクーヘン(比較例2)は、小麦粉のみを用いた従来のバウムクーヘン(比較例1)と同じ厚みに焼き上がり、既定の太さに巻き上げるのに同じ巻数を要したのに対し、小麦粉の配分量の一部を発泡米粉で代替した本発明の発泡米粉入りバウムクーヘン(実施例1)は、従来のバウムクーヘンよりふっくらと分厚く焼き上がり、少ない巻数で既定の太さに巻上がった。これにより、本発明の発泡米粉入りバウムクーヘンは、従来のバウムクーヘンや比較例の米粉入りバウムクーヘンと比べて加熱時間が短縮されたばかりでなく、種生地の消費量も少なくなるので歩留まりも向上した。更に、本発明の発泡米粉入りバウムクーヘンは、従来のバウムクーヘンや比較例2の米粉入りバウムクーヘンよりふっくらと焼き上がるので、食感にも大変優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
上述したように、本発明の発泡穀粉添加加熱食品は、ふっくらと分厚く仕上がるので食感に優れるとともに、増量効果が高いので歩留まりの向上や製造コストの低減を図ることができ、しかも安全に食することができるので、菓子、パン等の加熱食品として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉を発泡粉末化した発泡穀粉を添加してなる発泡穀粉添加加熱食品。
【請求項2】
前記発泡穀粉は、前記穀粉を加水し加熱加圧して発泡させた後乾燥し粉砕して得られることを特徴とする請求項1に記載の発泡穀粉添加加熱食品。
【請求項3】
前記発泡穀粉は、平均粒径が20〜60メッシュである請求項1又は2に記載の発泡穀粉添加加熱食品。
【請求項4】
前記発泡穀粉は、粒度分布のd(0.1)が0.2〜20μm、d(0.5)が100〜1000μm及びd(0.9)が500〜2000μm(但し、d(0.1)は、粒子の体積を小さい方から大きい方へ積算していった場合の体積比10%の部分の粒子径を表し、d(0.5)は、前記体積比50%の部分の粒子径を表し、d(0.9)は前記体積比90%の部分の粒子径を表す)である請求項1〜3の何れか1項に記載の発泡穀粉添加加熱食品。
【請求項5】
前記発泡穀粉は、嵩密度が0.1〜0.5g/mlである請求項1〜4の何れか1項に記載の発泡穀粉添加加熱食品。
【請求項6】
前記発泡穀粉は、α化度が80%以上である請求項1〜5の何れか1項に記載の発泡穀粉添加加熱食品。
【請求項7】
前記穀粉は、小麦粉、米粉、大麦粉、ライ麦粉、トウモロシ粉、テフ粉、ヒエ粉、黄粉、ヒヨマメ粉、エンドウマメ粉、蕎麦粉、アマランサス粉、片栗粉、葛粉、タピオカ粉、馬鈴薯粉、アビオス粉、栗粉及びドングリ粉からなる群より選択される少なくとも1つである請求項1〜6の何れか1項に記載の発泡穀粉添加加熱食品。
【請求項8】
前記穀粉は、小麦粉以外から選択される請求項7に記載の発泡穀粉添加加熱食品。
【請求項9】
通常小麦粉を使用する加熱食品において小麦粉の一部又は全部を前記発泡穀粉で代替して得られることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の発泡穀粉添加加熱食品。
【請求項10】
菓子、パン、麺又は練り製品である、請求項1〜9の何れか1項に記載の発泡穀粉添加加熱食品。

【公開番号】特開2013−90628(P2013−90628A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−223707(P2012−223707)
【出願日】平成24年10月5日(2012.10.5)
【出願人】(300090178)みたけ食品工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】