発泡防止装置
【課題】河川域や海域に放水を行う放水路において泡の飛沫及び下流側への泡の混入を低減することができる発泡防止装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る発泡防止装置は、上流側の放水管1から放水される排水を貯水する水槽20と排水を放水する下流側の放水域7との間に設置され、水槽20が、上流側の上流側水槽20aと、上流側水槽20aより深さが深い下流側の下流側水槽20bと、から構成され、下流側水槽20bの底部を貫通させて設けられるとともに水槽20に貯水された排水を放水域7に放水する複数の放水管21a〜21cを、備え、複数の放水管21a〜21cが、水槽20の深さ方向に対して長さが異なるとともに、その天端における給水口の高さ位置が異なるものである。
【解決手段】本発明に係る発泡防止装置は、上流側の放水管1から放水される排水を貯水する水槽20と排水を放水する下流側の放水域7との間に設置され、水槽20が、上流側の上流側水槽20aと、上流側水槽20aより深さが深い下流側の下流側水槽20bと、から構成され、下流側水槽20bの底部を貫通させて設けられるとともに水槽20に貯水された排水を放水域7に放水する複数の放水管21a〜21cを、備え、複数の放水管21a〜21cが、水槽20の深さ方向に対して長さが異なるとともに、その天端における給水口の高さ位置が異なるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力又は火力などによる発電プラントや化学プラントなどにおいて、河川域や海域に放水を行う放水路及びこの放水路において泡の発生を防止するための発泡防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力又は火力などによる発電プラントに代表される種々のプラントにおいて、取水して冷却水に利用された後の排水を河川域や海域に放水するために、河川域や海域までの放水路が設けられている。この放水路では、外海潮位や水路損失の変動を吸収してサイフォン切れを防止するために、堰を設置して放水ピットが構成されることが多い。このような放水ピットが構成された放水路では、放水される水が堰を越流するときに泡が発生し、この泡により、以下に説明する種々の問題が発生する。
【0003】
又、従来、放水ピットを備えた放水路として、図18(a)に示すように、堰100aを備えた放水ピット100の上流側及び下流側それぞれに放水管101a,101bが設けられた構成のものと、図18(b)に示すように、放水ピット100の上流側に放水管101aが設けられるとともに放水ピット100の下流側を開水路とした構成のものとがある。そして、この図18(a)、(b)それぞれの放水路によると、放水ピット100の堰100aを排水が越えて流れ落ちる落水部102において、空気が巻き込まれて泡が発生する。
【0004】
図18(a)に示すように、放水ピット100の上流側及び下流側それぞれに放水管101a,101bが設けられた場合、堰100aの落水部102で発生した泡が下流側の水中に潜り込むことにより、放水管101b内に流れ込む。このように、放水管101b内に泡により空気が流れ込むことで、放水管101b内での圧損が増加するだけでなく、放水ピット100への逆噴射などといった脈動の要因ともなる。一方、図18(b)に示すように、放水ピット100の下流側を開水路とした場合、堰100aの落水部102で発生した泡により、その景観を損なうだけでなく、泡付着によって周辺構造物や漁網などが汚染される原因となる。又、開水路側が海域である場合、機器に対する泡の飛散によって、塩害が生じる可能性がある。
【0005】
このように、従来の放水路では、放水ピットの堰の下流側に落水部があり、この落水部において泡が発生するため、この泡に基づく様々な問題が生じる。この泡の発生を防止するために、落水部に有孔板を設けて泡を分散させて、泡のない底層から放水する放水ピットが提案されている(特許文献1参照)。この放水ピットは、堰の下流側に、底部を開放した壁を設けるとともに、堰と壁との間に有孔板が設けられた構成とされる。更に、有孔板の上面に落下水脈の水流の勢いを弱めるための障害物となるシルが設置され、壁に近い有孔板の下流側の孔を通過する流量を小さくしている。これにより、壁に近い下流側に発生する泡の貫入深さを浅くして、泡の少ない排水を放流させるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−4787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の放水ピットの構造によると、落水部において障害物となるシルが設置されることで、落下水脈の水流の勢いを弱める構造とされていることから、このシルによって飛沫する泡が発生する可能性がある。そして、前述したように、この泡の飛沫によって、放水ピットの周囲に設置された構造物に塩害が発生することとなる。
【0008】
それに対して、特許文献1の放水ピットの構造からシルを除いた場合、有孔板の上面が堰の天端に一致させた高さに設置されているため、堰を越えた水流の多くが壁側まで到達する。これにより、排水の多くが有孔板の壁側の孔を通過するため、壁側での水流の勢いが大きくなってしまう。よって、壁に近い下流側に発生する泡の貫入深さが深くなり、排水に泡を多く混入させてしまうこととなる。
【0009】
このような問題を鑑みて、本発明は、河川域や海域に放水を行う放水路において泡の飛沫及び下流側への泡の混入を低減することができる発泡防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の発泡防止装置は、上流側の放水管から放水される排水を貯水する水槽と前記排水を放水する下流側の放水域との間に設置され、前記水槽から前記放水域に前記水槽に貯水された排水を放水させる際の発泡を低減させる発泡防止装置において、前記水槽が、上流側の第1水槽と、上流側の前記第1水槽より深さが深い下流側の第2水槽と、から構成され、前記第2水槽の底部を貫通させて設けられるとともに前記水槽に貯水された排水を前記放水域に放水する複数の放水管を備え、前記複数の放水管が、前記水槽の深さ方向に対して長さが異なるとともに、その天端における給水口の高さ位置が異なることを特徴とする。
【0011】
このとき、前記第2水槽に設けられる前記複数の放水管のうち、少なくとも前記給水口の高さ位置が高いものに対して、前記給水口を覆うカバーが設けられるものとし、前記第2水槽の水位が前記給水口付近となったときの空気の混入を抑制させるものとしても構わない。
【0012】
又、前記第2水槽に設けられる前記複数の放水管が、上流側から下流側に向かって、前記給水口が低い位置にあるものから前記給水口が高い位置にあるものとなる順番で、配置されるものとしても構わない。
【0013】
更に、前記給水口が高い位置にある前記第2水槽に設けられる前記放水管の排出口に入口が接続され、接続された前記放水管からの排水を旋回させて空気と分離させるサイクロン装置と、前記サイクロン装置の蓋部に接続されて、前記サイクロン装置で分離された空気を空中に排出する空気排出管と、を備えるものとしても構わない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の発泡防止装置によれば、河川域や海域に放水を行う放水路において泡の飛沫及び下流側への泡の混入を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態の放水路の構成を示す概略断面図である。
【図2】図1の放水路の上面図である。
【図3】第2の実施形態の放水路の構成を示す概略断面図である。
【図4】図3の放水路の上面図である。
【図5】第3の実施形態の放水路の構成を示す概略断面図である。
【図6】第3の実施形態の放水路の別の構成を示す概略断面図である。
【図7】図6の放水路の高水位時と低水位時の状態を示す図である。
【図8】第4の実施形態の放水路の構成を示す概略断面図である。
【図9】第5の実施形態の放水路の構成を示す概略断面図である。
【図10】図9の放水路の上面図である。
【図11】図9の放水路の水位が変化した各段階における状態を示す図である。
【図12】第6の実施形態の放水路の構成を示す概略断面図である。
【図13】図12の放水路における放水管とカバーの関係を示す図である。
【図14】第7の実施形態の放水路の構成を示す概略断面図である。
【図15】第8の実施形態の放水路の構成を示す概略断面図である。
【図16】図16の放水路の高水位時と低水位時の状態を示す図である。
【図17】第8の実施形態の放水路の別の構成を示す概略断面図である。
【図18】従来の放水路の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の放水路構成を示す断面図である。
【0017】
図1に示す放水路は、発電所プラントの復水器で冷却水として使用された海水又は河川水を排水する放水管1と、放水管1からの排水を貯水する上流側水槽2と、上流側水槽2の下流側を堰き止める堰3と、堰3の下流側に構成される下流側水槽4と、下流側水槽4の下流側に設置され底部を開いて下流側に開放した壁5と、堰3と壁5の間の下流側水槽4を覆うとともに多複数の貫通した孔6aを備える有孔板6と、を備える。即ち、上流側水槽2と下流側水槽4が放水ピットとして機能する。
【0018】
又、有孔板6は、図2の上面図に示すように、水面に対して垂直に貫通した複数の孔6aをマトリクス状に備えた多孔板として構成され、図1に示すように、堰3の天端よりも少し低い位置に設置される。壁5は、その天端が堰3の天端よりも高い位置となるとともに、天端の逆側の下端が下流側水槽4の底と有孔板6との間の高さとなる。即ち、壁5の下端と下流側水槽4の底との間が開放されるとともに、壁5が下流側水槽4の水面側の流れを堰き止める。又、壁5の下端は、壁5の下流側の放水域7における水位が最低水位となる位置よりも高い位置となるように設定される。
【0019】
このように構成されることによって、放水管1より放水される排水が堰3で堰き止められて上流側水槽2に一時的に貯水され、堰3を越えた排水が下流側水槽4に流れ込む。このとき、堰3を越えた排水は、有孔板6の孔6aを通過して下流側水槽4に流れ込むが、有孔板6と堰3とで段差が設けられているため、堰3を越えた排水が堰3近傍の段差部分に落とし込まれる。そして、排水の一部が有孔板6の堰3近傍の孔6aを通過して下流側水槽4に流れ込むとともに、排水の残りが有孔板6の表面を壁5に向かって流れながら、壁5までの孔6aを通過して下流側水槽4に流れ込む。
【0020】
このように、有孔板6と堰3とで段差が形成されるように構成されることで、有孔板6の表面と堰3の天端とを同一高さとした場合のように、壁5側に排水の流れが偏ることを防ぎ、有孔板6表面上で均一に分散させることができる。よって、排水が堰3を超えると、堰3と壁5の間の下流側水槽4を覆う有孔板6によって、その流れが分散され、有孔板6の孔6aを通じて減勢された水流が下流側水槽4に流れ込むこととなる。
【0021】
そのため、有孔板6の孔6aより下流側水槽4に流れ込む水量を少なくすることができるため、結果的に、堰3を越えたときに発生する空気による泡の貫入深さを浅くすることができる。尚、このとき、排水路1からの排水の流量が多い放水路であるものほど、壁5への到達量を減らすために、堰3と有孔板6との段差の幅を大きくする。又、有孔板6の開口率が小さいものとしたときも、壁5への到達量を減らすために、堰3と有孔板6との段差の幅を大きくする。
【0022】
そして、有孔板6を通じて下流側水槽4に流れ落ちた排水は、壁5の下端と下流側水槽4の底との間の開放部分より、壁5より下流側の放水域7に流れ込むこととなる。このとき、上述したように、下流側水槽4では、有孔板6を通過して流れが分散された排水と共に流入する泡(空気)が、壁5の下端よりも深い位置まで到達することが少ない。そのため、壁6の下端よりも深い位置を越えて放水域7に流れ込む泡(空気)の量を抑制することができる。又、有孔板6全面を排水が流れるようにするとともに、有孔板6に障害物を設けた構成としないため、発生する泡の量も抑制することができる。
【0023】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図面を参照して説明する。図3は、本実施形態の放水路の構成を示す断面図である。図3に示す構成において、図1に示す構成と同一の目的で使用する部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0024】
図3に示す放水路では、図1に示したものと同様、放水管1より放水される排水を上流側水槽2で一時的に貯水し、堰3を越えた排水が有孔板6の孔6aによって分散されて下流側水槽4に流れ込む。このとき、従来と比べて、下流側水槽4内に巻き込む泡(空気)の量を低減できるが、下流側水槽4内に泡(空気)が巻き込まれて、その一部が放水域7に流れ込んでしまう。そのため、本実施形態では、放水域7に流れ込もうとする泡(空気)を回収して空中に排出する構成とする。
【0025】
即ち、図3に示す放水路は、図1に示すものと異なり、水面に対して垂直な方向に貫通した空気抜き管8aを備えた壁5aと、壁5aの下端において放水域7側まで延長して囲う空気回収部8と、を備える。空気回収部8は、下流側水槽4の底に対向した面を開いたコの字型の断面形状によって構成され、上流側の側面が壁5aの上流側側面と同一面となり、壁5aから下流の放水域7まで延長した構成とされる。又、空気回収部8は、壁5aの下端と接続される部分において、図4の上面図のように壁5aに複数並ぶように設けられた空気抜き管8aと接続された穴を備える。
【0026】
第1の実施形態の放水路(図1参照)においても、堰3を越えた排水が有孔板6の孔6aによって分散されて下流側水槽4に流れ込む際に、少量の泡(空気)であるが、いくらか巻き込まれて、排水と共に、壁5の下流側となる放水域7に壁5下端の下側より流れ込もうとする。それに対して、本実施形態の放水路では、壁5aに空気回収部8が設けられるため、空気回収部8の下側を通って、壁5aの下流側の放水域7に排水が流れるときに、排水と共に流れ込む泡(空気)が空気回収部8に捕獲される。
【0027】
そして、空気回収部8の上面側に泡(空気)が移動すると、壁5aを貫通して空気回収部8に接続された空気抜き管8aを通じて、空中に放出される。このように、空気回収部8及び空気抜き管8aを設けることによって、放水域7に排水と流れ込もうとする泡(空気)を捉えて、空中に排出することができ、放水域7に流れ込む泡(空気)の量を低減させることができる。
【0028】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について、図面を参照して説明する。図5は、本実施形態の放水路の構成を示す断面図である。図5に示す構成において、図1に示す構成と同一の目的で使用する部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0029】
図5に示す放水路では、図1に示したもののように、堰3と壁5とで固定支持される有孔板6の代わりに、下流側水槽4に貯水される水の水面に浮かぶ浮体構造物で構成された有孔板6xを備える。この有孔板6xは、堰3と壁5との間で狭持されるが、放水域7の水位、換言すると、下流側水槽4の水位に応じて、その高さ方向の位置が変動する。即ち、図5(a)のように、放水域7が低水位となる場合は、それに応じて有孔板6xが低い位置に移動し、堰3の天端との段差が大きくなり、逆に、図5(b)のように、放水域7が高水位となる場合は、それに応じて有孔板6xが高い位置に移動し、堰3の天端との段差が小さくなる。よって、有孔板6xと下流側水槽4に貯水される水の水面との間の空間をなくすことができるため、この空間によって発生する泡の巻き込みを抑制することができる。
【0030】
又、本実施形態においても、図1に示したものと同様、放水管1より放水される排水を上流側水槽2で一時的に貯水し、堰3を越えた排水が有孔板6xの孔6aによって分散されて下流側水槽4に流れ込む。このとき、上述したように、有孔板6xの下面が、下流側水槽4の水面と接しているため、有孔板6xの下面における泡の発生を抑制することができる。そして、下流側水槽4に流れ込んだ排水は、壁5の下端の下側を通って、壁5の下流側となる放水域7に放水される。
【0031】
尚、本実施形態において、下流側水槽4の水面に有孔板6xが常に浮いた状態とするため、放水域7が最低水域となったとき、その水面が壁5よりも低くならない位置とするとともに、放水域7が最高水域となったとき、その水面が堰3よりも高くならない位置とする。
【0032】
又、本実施形態において、図6に示すように、堰3及び壁5それぞれに、下流側水槽4に向いた面の上下に突起させて設けられた当て止め部3b,3c,5b,5cを備えるようにしても構わない。即ち、放水域7が高水位となる場合は、図7(a)のように、堰3及び壁5それぞれの上側に設けられた当て止め部3b,5bに有孔板6xが当接させて、堰3と有孔板6xとの段差が小さくなることを防ぐことができる。一方、放水域7が低水位となる場合は、図7(b)のように、堰3及び壁5それぞれの下側に設けられた当て止め部3c,5cに有孔板6xが当接させて、堰3と有孔板6xとの段差が大きくなることを防ぐことができる。
【0033】
<第4の実施形態>
本発明の第4の実施形態について、図面を参照して説明する。図8は、本実施形態の放水路の構成を示す断面図である。図8に示す構成において、図1に示す構成と同一の目的で使用する部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0034】
図8に示す放水路では、図1に示した構成に対して、壁5の下流側に水面より下に潜った状態となる潜り堰9と、潜り堰9の下流側に放水域7と仕切りとして設置される壁10と、を備え、壁5,10の間に混入した空気を浮上させるための水槽11を構成する。即ち、下流側水槽4の下流側に更にもう一つ壁5,10で水面側が仕切られた水槽11を構成し、その水槽11に、その天端が常に水面下となる潜り堰9が設けられる。又、壁10は、その天端及び下端が壁5の天端及び下端と同様の位置となるように設置される。
【0035】
このように構成することで、壁5,10で水面側が仕切られた水槽11では、下流側水槽4から流れ込んだ排水の流れが、潜り堰9によって水面側に向かう上方向に強制的に変更させられる。よって、下流側水槽4から排水と共に流れ込んできた泡(空気)が、この戻り堰9に影響される排水の流れに沿って水面側に向かうため、水面への泡(空気)の浮上を促進することができる。
【0036】
そして、水槽11で、下流側水槽4より排水と共に流れ込んだ泡(空気)を空中に放出されると、泡(空気)の混入量が低減した排水が壁10の下側を通って、壁10の下流側の放水域7に放水される。よって、本実施形態では、水槽11に潜り堰9を設けて、排水とともに流れ込んだ泡(空気)を水面に向かって流すことで、空中への泡(空気)の放出量を増加させるとともに、泡(空気)の混入量を低減した排水を放水域7へ放水することができる。
【0037】
尚、第2〜第4の実施形態における各構成を組み合わせても構わない。即ち、第2の実施形態の放水路に対して、第3の実施形態のように、放水域7の水位に応じて高さ位置が変わる有孔板6xを設けるものとしても構わない。又、第2及び第3の実施形態の放水路に対して、第4の実施形態のように、潜り堰9及び下流側の壁10を追加した構成としても構わない。
【0038】
<第5の実施形態>
本発明の第5の実施形態について、図面を参照して説明する。図9は、本実施形態の放水路の構成を示す断面図である。
【0039】
図9に示す放水路は、発電所プラントの復水器で冷却水として使用された海水又は河川水を排水する放水管1と、放水管1からの排水を貯水する水槽20と、放水域7に対して槽20から放水域7に排水を導く放水管21a〜21cと、を備える。そして、水槽20は、上流側水槽20a(第1水槽)と下流側水槽20b(第2水槽)とによって構成され、上流側水槽20aの底部が下流側水槽20bの底部よりも高い位置にあり、下流側水槽20bの底部が放水域7の底部よりも高い位置にある。更に、下流側水槽20bの下流側には壁20cが形成されることで、下流側水槽20bの底部と壁20cとによって放水域7との仕切りが構成される。
【0040】
又、下流側水槽20bの底部に設けられた穴を貫通するように設置された放水管21a〜21cは、放水管21a,21b,21cの順で、その長さが長いものとされ、水面に対して垂直になるように設置される。そして、放水管21a〜21cの排水口が下流側水槽20bの底部よりも低い位置で同位置となるように設置される。即ち、放水管21aの給水口が最も低い位置となるとともに、放水管21cの給水口が最も高い位置となり、放水管21bの給水口がその間の位置となる。更に、この放水管21a〜21cの内部には、放水管21a〜21c内を流れる排水の流量を絞るための絞り21x〜21zを備え、放水管21a〜21c内を流れる排水に抵抗が与えられる構成とされる。
【0041】
そして、放水管21a〜21cは、図10の上面図に示すように、下流側水槽20bに対して縦横に配列されたマトリクス状に配置される。又、排水の流れる方向に対して、上流側水槽20aに近い側に放水管21aが配列され、壁20cに近い側に放水管21cが配列され、放水管21a,21cそれぞれが配列されている間の位置に、放水管21bが配列される。即ち、放水管21a〜21cが、下流側に向かって、その給水口が高い位置となるように、放水管21a,21b,21cの順に配列される。
【0042】
このように構成するとき、放水域7が高水位である場合、図11(a)に示すように、水槽20においても高水位となり、下流側水槽20bでは、放水管21a〜21c全ての給水口が水槽20に貯水された排水の水面下に位置することとなる。よって、放水管1より放水された排水が、下流側水槽20bに設置された全ての放水管21a〜21cを通じて放水域7に放水されることとなる。よって、上流側の水槽20から下流側の放水域7に放水される排水流量が多くなる。
【0043】
又、放水域7が図11(a)の場合よりも水位が低くなって、図11(b)に示すように、水槽20においても図11(a)の場合よりも低い水位となる場合、下流側水槽20bでは、放水管21a,21bの給水口が水槽20に貯水された排水の水面下に位置し、放水管21cの給水口が排水の水面上に位置することとなる。よって、放水管1より放水された排水が、下流側水槽20bに設置された放水管21a,21bを通じて放水域7に放水されることとなる。よって、上流側の水槽20から下流側の放水域7に放水される排水流量が、図11(a)の場合より少なくなる。
【0044】
更に、放水域7が図11(b)の場合よりも水位が低くなって、図11(c)に示すように、水槽20においても図11(b)の場合よりも低い水位となる場合、下流側水槽20bでは、放水管21aの給水口が水槽20に貯水された排水の水面下に位置し、放水管21b,21cの給水口が排水の水面上に位置することとなる。よって、放水管1より放水された排水が、下流側水槽20bに設置された放水管21aを通じて放水域7に放水されることとなる。よって、上流側の水槽20から下流側の放水域7に放水される排水流量が、図11(b)の場合より更に少なくなる。
【0045】
このように、放水域7での水位が変化することで、水槽20での水位が変化し、この水位の変化に伴って、排水が通る放水管21a〜21cの本数を変えて、水槽20からの排水の放水量を変化させることができる。即ち、高水位となるときは、水槽20からの排水の放水量を多くし、低水位となるときは、水槽20からの排水の放水量を少なくする。これにより、放水域7での水位の変化に比べて、水槽20の水位の変化を小さくすることができる。即ち、長さの異なる放水管21a〜21cを使用することで、放水管21a〜21cによって、放水域7の影響による水槽20での水位変動を吸収させることができる。
【0046】
そして、水槽20において、放水管21a〜21cのうち、その給水口が水面下となる放水管に排水が流れ込むため、水槽20から放水域7へ排水を導く部分において、空気との接触部分をほぼなくすことができる。又、放水管21a〜21cそれぞれには、上述したように、その内部に絞り21x〜21zが設けられているため、逆流が防止されることとなる。又、放水管21aの給水口については、放水域7が最低水位となったときにおいても、水槽20に貯水された水に水面下に位置するように設置される。
【0047】
更に、本実施形態では、放水管21a〜21cにおいて、給水口が高い位置にある放水管21cが壁20c側に設置され、給水口が低い位置にある放水管21aが上流側水槽20a側に設置されるように、給水口が下流側に向かって高くなるように配置されている。しかしながら、この放水管21a〜21cの配置においては、図9に示す並びに限らず、給水口の高低をランダムに設定するものとしても構わない。尚、本実施形態のように、下流側に向かって順に給水口を高くすることで、低い水位において、排水が導入されない高い給水口の放水管が、排水が導入される低い給水口の放水管よりも上流側に存在することがない。よって、いずれの水位においても、給水口までに放水管自身が障害となることがないため、その泡の発生を抑制することができる。
【0048】
<第6の実施形態>
本発明の第6の実施形態について、図面を参照して説明する。図12は、本実施形態の放水路の構成を示す断面図である。図12に示す構成において、図9に示す構成と同一の目的で使用する部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0049】
図12に示す放水路では、図9に示した構成に対して、放水管21a〜21cにおいて、それぞれの給水口の上を覆うカバー22a〜22cが設置される。即ち、図9に示す構成では、水槽20における水位が、放水管21a〜21cの給水口付近の位置と一致したときには、給水口において排水と共に空気を吸い込んでしまい、泡の発生源となってしまう。それに対して、図12のように、放水管21a〜21cの給水口がそれぞれ、カバー22a〜22cで覆われるため、水位が給水口付近の位置となったときに、空気が給水口から流入することを防ぐことができる。
【0050】
この放水管21a〜21cとカバー22a〜22cの関係を、図13に示す。尚、図10において、放水管21が、図12の放水管21a〜21cを示し、カバー22が、図12のカバー22a〜22cを示す。カバー22は、放水管21の給水口の上側に位置して給水口を覆う蓋面22xと、蓋面22xと外周より放水管21の給水口より下の位置まで延ばした形状の側面22yと、によって構成される。このような形状のカバー22で、放水管21の給水口を覆うため、カバー22と放水管21との間の空間を狭くして、水槽20の水位が放水管21の給水口近傍となったときに吸い込む空気の量を抑えることができる。
【0051】
尚、本実施形態において、一番低い位置に給水口が設置される放水管21aについては、放水域7が最低水位となった場合においても、水槽20の水位より放水管21aの給水口が低い位置に位置するように、設置される。これにより、放水管21aの給水口が水槽20に貯水された水の水面下に常に位置するようにすることができる。このとき、放水管21aの給水口が空気に触れることがないため、カバー22aを設置しないものとしても構わない。
【0052】
<第7の実施形態>
本発明の第7の実施形態について、図面を参照して説明する。図14は、本実施形態の放水路の構成を示す断面図である。図14に示す構成において、図9に示す構成と同一の目的で使用する部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0053】
図14に示す放水路では、図9に示した構成に対して、放水管21bを除いた放水管21a,21cのみが配置された構成であるとともに、放水管21cから供給される水を螺旋状に旋回させることで排水から空気を分離するサイクロン装置23と、サイクロン装置23で分離された空気を空中に排出する空気排出管24と、を備える。このとき、サイクロン装置23の入口23aが、放水管21cの排水口に接続される。又、放水管21aについては、放水域7が最低水位となった場合においても、水槽20の水位より放水管21aの給水口が低い位置に位置するように、設置する。
【0054】
このように構成されるとき、図9の構成の場合と同様、放水域7の水位が低いときは、放水管21aのみから水槽20に貯水された排水が放水域7に流れ込み、又、放水域7の水位が高いときは、放水管21a,21cそれぞれから水槽20に貯水された排水が放水域7に流れ込む。このとき、水槽20の水位が放水管21cの給水口位置になるとき、第6の実施形態で説明したように、放水管21cによって排水と共に空気が吸い込まれる。
【0055】
しかしながら、本実施形態では、図14のように、サイクロン装置23が設置される構成とされるため、空気が混入した排水が放水管21cを通じてサイクロン装置23に吐出される。そして、サイクロン装置23においては、放水管21からの空気が混入した排水が旋回して出口23bに向かうことで、混入している空気が分離されることとなる。又、分離された空気はサイクロン装置23の上部に向かい、サイクロン23の蓋部の中央に接続された空気排出管24より、空中に排出される。
【0056】
尚、空気排出管24は、下流側水槽20bの底部を貫通するように設けられ、その天端が、水槽20に貯水される排水の最高水位よりも高い位置にとなるように設定される。このとき、空気排出管24の天端を水槽20の壁20cの天端よりも高い位置に設置することで、水槽20に貯水される排水の水位に対して常に高い位置とすることができる。又、放水管21a,21cは、第5の実施形態と同様、水槽20に縦横に配列されたマトリクス状に複数配置される。そして、複数の放水管21cそれぞれに対してサイクロン装置及び空気排出管24が設けられるものとしても構わないし、複数の放水管21cに対して1つのサイクロン装置及び空気排出管24が設けられるものとしても構わない。
【0057】
尚、本実施形態において、第6の実施形態と同様、排水管21a,21cそれぞれの給水口に、給水口を覆うためのカバー22a,22cを設けるものとしても構わない。又、本実施形態において、給水口の高さ位置が排水管21a,21cの給水口の高さ位置の間となる排水管が設けられるものとし、この排水管に対しても、サイクロン装置及び空気排出管が設置されるものとしても構わない。
【0058】
上述の第5〜第7の実施形態において、長さの違う2種類又は3種類の排水管21a〜21cが設置されるものとしたが、水位に対する制御を精細なものとするため、4種類以上の排水管が設置されるものとしても構わない。又、長さの異なる排水管に配列方法については、第5の実施形態でも記載したように、下流側に向かって給水口が高くなるように設置する方法に限らず、ランダムに設置するものとしても構わない。
【0059】
<第8の実施形態>
本発明の第8の実施形態について、図面を参照して説明する。図15は、本実施形態の放水路の構成を示す断面図である。
【0060】
図15の放水路は、発電所プラントの復水器で冷却水として使用された海水又は河川水を排水する放水管1と、放水管1からの排水を貯水する上流側水槽30と、上流側水槽30の下流側を堰き止める堰31と、堰31の下流側に構成される下流側水槽32と、下流側水槽32に貯水された排水を放水域7に放水するU字形状のサイフォン管33と、上流側水槽30から堰31を貫通して下流水槽32のサイフォン管33に挿入された放水管34と、を備える。
【0061】
このとき、上流側水槽30の底部30aが下流側水槽32の底部32aよりも高い位置にあり、下流側水槽32の底部32aが放水域7の底部よりも高い位置にある。そして、下流側水槽32が、底部32aと壁32bとによって放水域7としきられた構成となっている。又、堰31は、放水域7が高水位となることで上流側水槽30の水位が高くなったとき、その天端が水面下の低い位置となり、逆に、放水域7が低水位となることで上流側水槽30の水位が低くなったとき、その天端が水面よりも高い位置となるように、その高さが設定される。
【0062】
サイフォン管33は、下流側水槽32に設置されて底部32aに対して口がテーパー状に開いた形状となる上流側管33aと、放水域7に設置されて下端となる排水口が底部32aより低い位置となる下流側管33bと、上流側管33aと下流側管33bとを壁32bを越えて接続するU字型管33cと、によって構成される。このサイフォン管33は、最初の設置時において、真空ポンプで空気抜きが成されることで、サイフォン管33内が水で満たされた状態とされる。このようにサイフォン管33を構成することで、上流側管33aの給水口が、下流側管33bの排水口よりも高い位置となり、下流側水槽32の排水がサイフォン管33を通じて放水域7に放水されることとなる。
【0063】
又、堰31を貫通するように設けられた放水管34は、上流側水槽30の底部30a側に設けられ、サイフォン管33の上流側管33aの壁を貫通して上流側管33a内部に挿入される。そして、上流側管33aに挿入された放水管34の先端が、下流側水槽32の底部32aに向かって屈曲するような形状とされ、この放水管34の排水口が、上流側管33aの給水口よりも高い位置になるように設置される。
【0064】
このように構成したとき、放水域7が低水位である場合、図16(a)に示すように、下流側水槽32の水位がさがるとともに、上流側水槽30において堰31の天端よりも水位が低くなり、堰31を排水が越えることができない状態となる。尚、下流側水槽32では、その水位が放水管34よりも高い位置となり、放水管34が下流側水槽32に貯水された水の水面下に存在する。このとき、上流側水槽30からの排水が、放水管34を通じて、下流側水槽32におけるサイフォン管33の上流側管33a内部に放水される。
【0065】
そして、サイフォン管33の上流側管33a内部では、放水管34から排水が放水されるが、この放水される方向が上流側管33aの給水口の方向に向かう方向であり、上流側管33aを流れる方向に対して逆側となる。即ち、放水管34から排水が上流側管33aの水の流れに逆流するように排出され、放水管34からの放水に抵抗を与えられることとなる。これにより、放水管34から放水される排水の流量を少なくするため、上流側水槽30における水位変動を抑制することができる。そして、サイフォン管33において、下流側水槽32に貯水された排水が、上流側管33aから給水された後、U字型管33cを通じて下流側管33bより放水域7に排出される。
【0066】
又、放水域7が高水位である場合、図16(b)に示すように、下流側水槽32の水位が上がるとともに、上流側水槽30において堰31の天端よりも水位が高くなり、堰31を排水が越えて下流側水槽32に流れ込む。よって、下流側水槽32に貯水される排水量が多くなるが、サイフォン管33を通じて放水域7へ流れる排水の流量が多くなる。このように、サイフォン管33を通じて放水域7へ流れる排水の流量が多くなるため、上流側水槽30及び下流側水槽32の水位が上昇しすぎるのを抑制することができ、その水位変動を小さくすることができる。
【0067】
本実施形態では、サイフォン管33を通じて放水域7へ排水を放水するため、放水域7へ放水する排水に泡(空気)が混入することを防ぐことができる。又、上流側水槽30からサイフォン管33の上流側管33a内部まで挿入された放水管34を設けることで、放水域7が低水位となり、全体的に水位が下がったときでも、下流側水槽32に排水が供給される構成とすることができる。これにより、サイフォン管33が常に排水で満たされた状態とすることができ、空気の混入を防ぐことができる。
【0068】
尚、本実施形態では、放水管34をサイフォン管33の上流側管33a内部に挿入し、屈曲させることで抵抗を与え、放水管34から放水される排水の流量を少なくし、低水位時における水位の変動を抑制させるものとしたが、図17に示すように、放水管34の排水口が上流側管33a外部に在るものとしても構わない。このとき、放水管34の排水口を狭めることで抵抗を設けるものとするが、排水口が狭いと不純物や生物などにより排水口が詰まることがあるため、図15に示すように、上流側管33a内部に挿入し屈曲することで抵抗を与える方が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、原子力又は火力などによる発電プラントや化学プラントなどにおいて、河川域や海域から取水して冷却水などに利用された水を放水するための放水路に適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 放水管
7 放水域
20 水槽
20a 上流側水槽(第1水槽)
20b 下流側水槽(第2水槽)
21a 放水管
21b 放水管
21c 放水管
22 カバー
23 サイクロン装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力又は火力などによる発電プラントや化学プラントなどにおいて、河川域や海域に放水を行う放水路及びこの放水路において泡の発生を防止するための発泡防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力又は火力などによる発電プラントに代表される種々のプラントにおいて、取水して冷却水に利用された後の排水を河川域や海域に放水するために、河川域や海域までの放水路が設けられている。この放水路では、外海潮位や水路損失の変動を吸収してサイフォン切れを防止するために、堰を設置して放水ピットが構成されることが多い。このような放水ピットが構成された放水路では、放水される水が堰を越流するときに泡が発生し、この泡により、以下に説明する種々の問題が発生する。
【0003】
又、従来、放水ピットを備えた放水路として、図18(a)に示すように、堰100aを備えた放水ピット100の上流側及び下流側それぞれに放水管101a,101bが設けられた構成のものと、図18(b)に示すように、放水ピット100の上流側に放水管101aが設けられるとともに放水ピット100の下流側を開水路とした構成のものとがある。そして、この図18(a)、(b)それぞれの放水路によると、放水ピット100の堰100aを排水が越えて流れ落ちる落水部102において、空気が巻き込まれて泡が発生する。
【0004】
図18(a)に示すように、放水ピット100の上流側及び下流側それぞれに放水管101a,101bが設けられた場合、堰100aの落水部102で発生した泡が下流側の水中に潜り込むことにより、放水管101b内に流れ込む。このように、放水管101b内に泡により空気が流れ込むことで、放水管101b内での圧損が増加するだけでなく、放水ピット100への逆噴射などといった脈動の要因ともなる。一方、図18(b)に示すように、放水ピット100の下流側を開水路とした場合、堰100aの落水部102で発生した泡により、その景観を損なうだけでなく、泡付着によって周辺構造物や漁網などが汚染される原因となる。又、開水路側が海域である場合、機器に対する泡の飛散によって、塩害が生じる可能性がある。
【0005】
このように、従来の放水路では、放水ピットの堰の下流側に落水部があり、この落水部において泡が発生するため、この泡に基づく様々な問題が生じる。この泡の発生を防止するために、落水部に有孔板を設けて泡を分散させて、泡のない底層から放水する放水ピットが提案されている(特許文献1参照)。この放水ピットは、堰の下流側に、底部を開放した壁を設けるとともに、堰と壁との間に有孔板が設けられた構成とされる。更に、有孔板の上面に落下水脈の水流の勢いを弱めるための障害物となるシルが設置され、壁に近い有孔板の下流側の孔を通過する流量を小さくしている。これにより、壁に近い下流側に発生する泡の貫入深さを浅くして、泡の少ない排水を放流させるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−4787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の放水ピットの構造によると、落水部において障害物となるシルが設置されることで、落下水脈の水流の勢いを弱める構造とされていることから、このシルによって飛沫する泡が発生する可能性がある。そして、前述したように、この泡の飛沫によって、放水ピットの周囲に設置された構造物に塩害が発生することとなる。
【0008】
それに対して、特許文献1の放水ピットの構造からシルを除いた場合、有孔板の上面が堰の天端に一致させた高さに設置されているため、堰を越えた水流の多くが壁側まで到達する。これにより、排水の多くが有孔板の壁側の孔を通過するため、壁側での水流の勢いが大きくなってしまう。よって、壁に近い下流側に発生する泡の貫入深さが深くなり、排水に泡を多く混入させてしまうこととなる。
【0009】
このような問題を鑑みて、本発明は、河川域や海域に放水を行う放水路において泡の飛沫及び下流側への泡の混入を低減することができる発泡防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の発泡防止装置は、上流側の放水管から放水される排水を貯水する水槽と前記排水を放水する下流側の放水域との間に設置され、前記水槽から前記放水域に前記水槽に貯水された排水を放水させる際の発泡を低減させる発泡防止装置において、前記水槽が、上流側の第1水槽と、上流側の前記第1水槽より深さが深い下流側の第2水槽と、から構成され、前記第2水槽の底部を貫通させて設けられるとともに前記水槽に貯水された排水を前記放水域に放水する複数の放水管を備え、前記複数の放水管が、前記水槽の深さ方向に対して長さが異なるとともに、その天端における給水口の高さ位置が異なることを特徴とする。
【0011】
このとき、前記第2水槽に設けられる前記複数の放水管のうち、少なくとも前記給水口の高さ位置が高いものに対して、前記給水口を覆うカバーが設けられるものとし、前記第2水槽の水位が前記給水口付近となったときの空気の混入を抑制させるものとしても構わない。
【0012】
又、前記第2水槽に設けられる前記複数の放水管が、上流側から下流側に向かって、前記給水口が低い位置にあるものから前記給水口が高い位置にあるものとなる順番で、配置されるものとしても構わない。
【0013】
更に、前記給水口が高い位置にある前記第2水槽に設けられる前記放水管の排出口に入口が接続され、接続された前記放水管からの排水を旋回させて空気と分離させるサイクロン装置と、前記サイクロン装置の蓋部に接続されて、前記サイクロン装置で分離された空気を空中に排出する空気排出管と、を備えるものとしても構わない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の発泡防止装置によれば、河川域や海域に放水を行う放水路において泡の飛沫及び下流側への泡の混入を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態の放水路の構成を示す概略断面図である。
【図2】図1の放水路の上面図である。
【図3】第2の実施形態の放水路の構成を示す概略断面図である。
【図4】図3の放水路の上面図である。
【図5】第3の実施形態の放水路の構成を示す概略断面図である。
【図6】第3の実施形態の放水路の別の構成を示す概略断面図である。
【図7】図6の放水路の高水位時と低水位時の状態を示す図である。
【図8】第4の実施形態の放水路の構成を示す概略断面図である。
【図9】第5の実施形態の放水路の構成を示す概略断面図である。
【図10】図9の放水路の上面図である。
【図11】図9の放水路の水位が変化した各段階における状態を示す図である。
【図12】第6の実施形態の放水路の構成を示す概略断面図である。
【図13】図12の放水路における放水管とカバーの関係を示す図である。
【図14】第7の実施形態の放水路の構成を示す概略断面図である。
【図15】第8の実施形態の放水路の構成を示す概略断面図である。
【図16】図16の放水路の高水位時と低水位時の状態を示す図である。
【図17】第8の実施形態の放水路の別の構成を示す概略断面図である。
【図18】従来の放水路の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の放水路構成を示す断面図である。
【0017】
図1に示す放水路は、発電所プラントの復水器で冷却水として使用された海水又は河川水を排水する放水管1と、放水管1からの排水を貯水する上流側水槽2と、上流側水槽2の下流側を堰き止める堰3と、堰3の下流側に構成される下流側水槽4と、下流側水槽4の下流側に設置され底部を開いて下流側に開放した壁5と、堰3と壁5の間の下流側水槽4を覆うとともに多複数の貫通した孔6aを備える有孔板6と、を備える。即ち、上流側水槽2と下流側水槽4が放水ピットとして機能する。
【0018】
又、有孔板6は、図2の上面図に示すように、水面に対して垂直に貫通した複数の孔6aをマトリクス状に備えた多孔板として構成され、図1に示すように、堰3の天端よりも少し低い位置に設置される。壁5は、その天端が堰3の天端よりも高い位置となるとともに、天端の逆側の下端が下流側水槽4の底と有孔板6との間の高さとなる。即ち、壁5の下端と下流側水槽4の底との間が開放されるとともに、壁5が下流側水槽4の水面側の流れを堰き止める。又、壁5の下端は、壁5の下流側の放水域7における水位が最低水位となる位置よりも高い位置となるように設定される。
【0019】
このように構成されることによって、放水管1より放水される排水が堰3で堰き止められて上流側水槽2に一時的に貯水され、堰3を越えた排水が下流側水槽4に流れ込む。このとき、堰3を越えた排水は、有孔板6の孔6aを通過して下流側水槽4に流れ込むが、有孔板6と堰3とで段差が設けられているため、堰3を越えた排水が堰3近傍の段差部分に落とし込まれる。そして、排水の一部が有孔板6の堰3近傍の孔6aを通過して下流側水槽4に流れ込むとともに、排水の残りが有孔板6の表面を壁5に向かって流れながら、壁5までの孔6aを通過して下流側水槽4に流れ込む。
【0020】
このように、有孔板6と堰3とで段差が形成されるように構成されることで、有孔板6の表面と堰3の天端とを同一高さとした場合のように、壁5側に排水の流れが偏ることを防ぎ、有孔板6表面上で均一に分散させることができる。よって、排水が堰3を超えると、堰3と壁5の間の下流側水槽4を覆う有孔板6によって、その流れが分散され、有孔板6の孔6aを通じて減勢された水流が下流側水槽4に流れ込むこととなる。
【0021】
そのため、有孔板6の孔6aより下流側水槽4に流れ込む水量を少なくすることができるため、結果的に、堰3を越えたときに発生する空気による泡の貫入深さを浅くすることができる。尚、このとき、排水路1からの排水の流量が多い放水路であるものほど、壁5への到達量を減らすために、堰3と有孔板6との段差の幅を大きくする。又、有孔板6の開口率が小さいものとしたときも、壁5への到達量を減らすために、堰3と有孔板6との段差の幅を大きくする。
【0022】
そして、有孔板6を通じて下流側水槽4に流れ落ちた排水は、壁5の下端と下流側水槽4の底との間の開放部分より、壁5より下流側の放水域7に流れ込むこととなる。このとき、上述したように、下流側水槽4では、有孔板6を通過して流れが分散された排水と共に流入する泡(空気)が、壁5の下端よりも深い位置まで到達することが少ない。そのため、壁6の下端よりも深い位置を越えて放水域7に流れ込む泡(空気)の量を抑制することができる。又、有孔板6全面を排水が流れるようにするとともに、有孔板6に障害物を設けた構成としないため、発生する泡の量も抑制することができる。
【0023】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図面を参照して説明する。図3は、本実施形態の放水路の構成を示す断面図である。図3に示す構成において、図1に示す構成と同一の目的で使用する部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0024】
図3に示す放水路では、図1に示したものと同様、放水管1より放水される排水を上流側水槽2で一時的に貯水し、堰3を越えた排水が有孔板6の孔6aによって分散されて下流側水槽4に流れ込む。このとき、従来と比べて、下流側水槽4内に巻き込む泡(空気)の量を低減できるが、下流側水槽4内に泡(空気)が巻き込まれて、その一部が放水域7に流れ込んでしまう。そのため、本実施形態では、放水域7に流れ込もうとする泡(空気)を回収して空中に排出する構成とする。
【0025】
即ち、図3に示す放水路は、図1に示すものと異なり、水面に対して垂直な方向に貫通した空気抜き管8aを備えた壁5aと、壁5aの下端において放水域7側まで延長して囲う空気回収部8と、を備える。空気回収部8は、下流側水槽4の底に対向した面を開いたコの字型の断面形状によって構成され、上流側の側面が壁5aの上流側側面と同一面となり、壁5aから下流の放水域7まで延長した構成とされる。又、空気回収部8は、壁5aの下端と接続される部分において、図4の上面図のように壁5aに複数並ぶように設けられた空気抜き管8aと接続された穴を備える。
【0026】
第1の実施形態の放水路(図1参照)においても、堰3を越えた排水が有孔板6の孔6aによって分散されて下流側水槽4に流れ込む際に、少量の泡(空気)であるが、いくらか巻き込まれて、排水と共に、壁5の下流側となる放水域7に壁5下端の下側より流れ込もうとする。それに対して、本実施形態の放水路では、壁5aに空気回収部8が設けられるため、空気回収部8の下側を通って、壁5aの下流側の放水域7に排水が流れるときに、排水と共に流れ込む泡(空気)が空気回収部8に捕獲される。
【0027】
そして、空気回収部8の上面側に泡(空気)が移動すると、壁5aを貫通して空気回収部8に接続された空気抜き管8aを通じて、空中に放出される。このように、空気回収部8及び空気抜き管8aを設けることによって、放水域7に排水と流れ込もうとする泡(空気)を捉えて、空中に排出することができ、放水域7に流れ込む泡(空気)の量を低減させることができる。
【0028】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について、図面を参照して説明する。図5は、本実施形態の放水路の構成を示す断面図である。図5に示す構成において、図1に示す構成と同一の目的で使用する部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0029】
図5に示す放水路では、図1に示したもののように、堰3と壁5とで固定支持される有孔板6の代わりに、下流側水槽4に貯水される水の水面に浮かぶ浮体構造物で構成された有孔板6xを備える。この有孔板6xは、堰3と壁5との間で狭持されるが、放水域7の水位、換言すると、下流側水槽4の水位に応じて、その高さ方向の位置が変動する。即ち、図5(a)のように、放水域7が低水位となる場合は、それに応じて有孔板6xが低い位置に移動し、堰3の天端との段差が大きくなり、逆に、図5(b)のように、放水域7が高水位となる場合は、それに応じて有孔板6xが高い位置に移動し、堰3の天端との段差が小さくなる。よって、有孔板6xと下流側水槽4に貯水される水の水面との間の空間をなくすことができるため、この空間によって発生する泡の巻き込みを抑制することができる。
【0030】
又、本実施形態においても、図1に示したものと同様、放水管1より放水される排水を上流側水槽2で一時的に貯水し、堰3を越えた排水が有孔板6xの孔6aによって分散されて下流側水槽4に流れ込む。このとき、上述したように、有孔板6xの下面が、下流側水槽4の水面と接しているため、有孔板6xの下面における泡の発生を抑制することができる。そして、下流側水槽4に流れ込んだ排水は、壁5の下端の下側を通って、壁5の下流側となる放水域7に放水される。
【0031】
尚、本実施形態において、下流側水槽4の水面に有孔板6xが常に浮いた状態とするため、放水域7が最低水域となったとき、その水面が壁5よりも低くならない位置とするとともに、放水域7が最高水域となったとき、その水面が堰3よりも高くならない位置とする。
【0032】
又、本実施形態において、図6に示すように、堰3及び壁5それぞれに、下流側水槽4に向いた面の上下に突起させて設けられた当て止め部3b,3c,5b,5cを備えるようにしても構わない。即ち、放水域7が高水位となる場合は、図7(a)のように、堰3及び壁5それぞれの上側に設けられた当て止め部3b,5bに有孔板6xが当接させて、堰3と有孔板6xとの段差が小さくなることを防ぐことができる。一方、放水域7が低水位となる場合は、図7(b)のように、堰3及び壁5それぞれの下側に設けられた当て止め部3c,5cに有孔板6xが当接させて、堰3と有孔板6xとの段差が大きくなることを防ぐことができる。
【0033】
<第4の実施形態>
本発明の第4の実施形態について、図面を参照して説明する。図8は、本実施形態の放水路の構成を示す断面図である。図8に示す構成において、図1に示す構成と同一の目的で使用する部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0034】
図8に示す放水路では、図1に示した構成に対して、壁5の下流側に水面より下に潜った状態となる潜り堰9と、潜り堰9の下流側に放水域7と仕切りとして設置される壁10と、を備え、壁5,10の間に混入した空気を浮上させるための水槽11を構成する。即ち、下流側水槽4の下流側に更にもう一つ壁5,10で水面側が仕切られた水槽11を構成し、その水槽11に、その天端が常に水面下となる潜り堰9が設けられる。又、壁10は、その天端及び下端が壁5の天端及び下端と同様の位置となるように設置される。
【0035】
このように構成することで、壁5,10で水面側が仕切られた水槽11では、下流側水槽4から流れ込んだ排水の流れが、潜り堰9によって水面側に向かう上方向に強制的に変更させられる。よって、下流側水槽4から排水と共に流れ込んできた泡(空気)が、この戻り堰9に影響される排水の流れに沿って水面側に向かうため、水面への泡(空気)の浮上を促進することができる。
【0036】
そして、水槽11で、下流側水槽4より排水と共に流れ込んだ泡(空気)を空中に放出されると、泡(空気)の混入量が低減した排水が壁10の下側を通って、壁10の下流側の放水域7に放水される。よって、本実施形態では、水槽11に潜り堰9を設けて、排水とともに流れ込んだ泡(空気)を水面に向かって流すことで、空中への泡(空気)の放出量を増加させるとともに、泡(空気)の混入量を低減した排水を放水域7へ放水することができる。
【0037】
尚、第2〜第4の実施形態における各構成を組み合わせても構わない。即ち、第2の実施形態の放水路に対して、第3の実施形態のように、放水域7の水位に応じて高さ位置が変わる有孔板6xを設けるものとしても構わない。又、第2及び第3の実施形態の放水路に対して、第4の実施形態のように、潜り堰9及び下流側の壁10を追加した構成としても構わない。
【0038】
<第5の実施形態>
本発明の第5の実施形態について、図面を参照して説明する。図9は、本実施形態の放水路の構成を示す断面図である。
【0039】
図9に示す放水路は、発電所プラントの復水器で冷却水として使用された海水又は河川水を排水する放水管1と、放水管1からの排水を貯水する水槽20と、放水域7に対して槽20から放水域7に排水を導く放水管21a〜21cと、を備える。そして、水槽20は、上流側水槽20a(第1水槽)と下流側水槽20b(第2水槽)とによって構成され、上流側水槽20aの底部が下流側水槽20bの底部よりも高い位置にあり、下流側水槽20bの底部が放水域7の底部よりも高い位置にある。更に、下流側水槽20bの下流側には壁20cが形成されることで、下流側水槽20bの底部と壁20cとによって放水域7との仕切りが構成される。
【0040】
又、下流側水槽20bの底部に設けられた穴を貫通するように設置された放水管21a〜21cは、放水管21a,21b,21cの順で、その長さが長いものとされ、水面に対して垂直になるように設置される。そして、放水管21a〜21cの排水口が下流側水槽20bの底部よりも低い位置で同位置となるように設置される。即ち、放水管21aの給水口が最も低い位置となるとともに、放水管21cの給水口が最も高い位置となり、放水管21bの給水口がその間の位置となる。更に、この放水管21a〜21cの内部には、放水管21a〜21c内を流れる排水の流量を絞るための絞り21x〜21zを備え、放水管21a〜21c内を流れる排水に抵抗が与えられる構成とされる。
【0041】
そして、放水管21a〜21cは、図10の上面図に示すように、下流側水槽20bに対して縦横に配列されたマトリクス状に配置される。又、排水の流れる方向に対して、上流側水槽20aに近い側に放水管21aが配列され、壁20cに近い側に放水管21cが配列され、放水管21a,21cそれぞれが配列されている間の位置に、放水管21bが配列される。即ち、放水管21a〜21cが、下流側に向かって、その給水口が高い位置となるように、放水管21a,21b,21cの順に配列される。
【0042】
このように構成するとき、放水域7が高水位である場合、図11(a)に示すように、水槽20においても高水位となり、下流側水槽20bでは、放水管21a〜21c全ての給水口が水槽20に貯水された排水の水面下に位置することとなる。よって、放水管1より放水された排水が、下流側水槽20bに設置された全ての放水管21a〜21cを通じて放水域7に放水されることとなる。よって、上流側の水槽20から下流側の放水域7に放水される排水流量が多くなる。
【0043】
又、放水域7が図11(a)の場合よりも水位が低くなって、図11(b)に示すように、水槽20においても図11(a)の場合よりも低い水位となる場合、下流側水槽20bでは、放水管21a,21bの給水口が水槽20に貯水された排水の水面下に位置し、放水管21cの給水口が排水の水面上に位置することとなる。よって、放水管1より放水された排水が、下流側水槽20bに設置された放水管21a,21bを通じて放水域7に放水されることとなる。よって、上流側の水槽20から下流側の放水域7に放水される排水流量が、図11(a)の場合より少なくなる。
【0044】
更に、放水域7が図11(b)の場合よりも水位が低くなって、図11(c)に示すように、水槽20においても図11(b)の場合よりも低い水位となる場合、下流側水槽20bでは、放水管21aの給水口が水槽20に貯水された排水の水面下に位置し、放水管21b,21cの給水口が排水の水面上に位置することとなる。よって、放水管1より放水された排水が、下流側水槽20bに設置された放水管21aを通じて放水域7に放水されることとなる。よって、上流側の水槽20から下流側の放水域7に放水される排水流量が、図11(b)の場合より更に少なくなる。
【0045】
このように、放水域7での水位が変化することで、水槽20での水位が変化し、この水位の変化に伴って、排水が通る放水管21a〜21cの本数を変えて、水槽20からの排水の放水量を変化させることができる。即ち、高水位となるときは、水槽20からの排水の放水量を多くし、低水位となるときは、水槽20からの排水の放水量を少なくする。これにより、放水域7での水位の変化に比べて、水槽20の水位の変化を小さくすることができる。即ち、長さの異なる放水管21a〜21cを使用することで、放水管21a〜21cによって、放水域7の影響による水槽20での水位変動を吸収させることができる。
【0046】
そして、水槽20において、放水管21a〜21cのうち、その給水口が水面下となる放水管に排水が流れ込むため、水槽20から放水域7へ排水を導く部分において、空気との接触部分をほぼなくすことができる。又、放水管21a〜21cそれぞれには、上述したように、その内部に絞り21x〜21zが設けられているため、逆流が防止されることとなる。又、放水管21aの給水口については、放水域7が最低水位となったときにおいても、水槽20に貯水された水に水面下に位置するように設置される。
【0047】
更に、本実施形態では、放水管21a〜21cにおいて、給水口が高い位置にある放水管21cが壁20c側に設置され、給水口が低い位置にある放水管21aが上流側水槽20a側に設置されるように、給水口が下流側に向かって高くなるように配置されている。しかしながら、この放水管21a〜21cの配置においては、図9に示す並びに限らず、給水口の高低をランダムに設定するものとしても構わない。尚、本実施形態のように、下流側に向かって順に給水口を高くすることで、低い水位において、排水が導入されない高い給水口の放水管が、排水が導入される低い給水口の放水管よりも上流側に存在することがない。よって、いずれの水位においても、給水口までに放水管自身が障害となることがないため、その泡の発生を抑制することができる。
【0048】
<第6の実施形態>
本発明の第6の実施形態について、図面を参照して説明する。図12は、本実施形態の放水路の構成を示す断面図である。図12に示す構成において、図9に示す構成と同一の目的で使用する部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0049】
図12に示す放水路では、図9に示した構成に対して、放水管21a〜21cにおいて、それぞれの給水口の上を覆うカバー22a〜22cが設置される。即ち、図9に示す構成では、水槽20における水位が、放水管21a〜21cの給水口付近の位置と一致したときには、給水口において排水と共に空気を吸い込んでしまい、泡の発生源となってしまう。それに対して、図12のように、放水管21a〜21cの給水口がそれぞれ、カバー22a〜22cで覆われるため、水位が給水口付近の位置となったときに、空気が給水口から流入することを防ぐことができる。
【0050】
この放水管21a〜21cとカバー22a〜22cの関係を、図13に示す。尚、図10において、放水管21が、図12の放水管21a〜21cを示し、カバー22が、図12のカバー22a〜22cを示す。カバー22は、放水管21の給水口の上側に位置して給水口を覆う蓋面22xと、蓋面22xと外周より放水管21の給水口より下の位置まで延ばした形状の側面22yと、によって構成される。このような形状のカバー22で、放水管21の給水口を覆うため、カバー22と放水管21との間の空間を狭くして、水槽20の水位が放水管21の給水口近傍となったときに吸い込む空気の量を抑えることができる。
【0051】
尚、本実施形態において、一番低い位置に給水口が設置される放水管21aについては、放水域7が最低水位となった場合においても、水槽20の水位より放水管21aの給水口が低い位置に位置するように、設置される。これにより、放水管21aの給水口が水槽20に貯水された水の水面下に常に位置するようにすることができる。このとき、放水管21aの給水口が空気に触れることがないため、カバー22aを設置しないものとしても構わない。
【0052】
<第7の実施形態>
本発明の第7の実施形態について、図面を参照して説明する。図14は、本実施形態の放水路の構成を示す断面図である。図14に示す構成において、図9に示す構成と同一の目的で使用する部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0053】
図14に示す放水路では、図9に示した構成に対して、放水管21bを除いた放水管21a,21cのみが配置された構成であるとともに、放水管21cから供給される水を螺旋状に旋回させることで排水から空気を分離するサイクロン装置23と、サイクロン装置23で分離された空気を空中に排出する空気排出管24と、を備える。このとき、サイクロン装置23の入口23aが、放水管21cの排水口に接続される。又、放水管21aについては、放水域7が最低水位となった場合においても、水槽20の水位より放水管21aの給水口が低い位置に位置するように、設置する。
【0054】
このように構成されるとき、図9の構成の場合と同様、放水域7の水位が低いときは、放水管21aのみから水槽20に貯水された排水が放水域7に流れ込み、又、放水域7の水位が高いときは、放水管21a,21cそれぞれから水槽20に貯水された排水が放水域7に流れ込む。このとき、水槽20の水位が放水管21cの給水口位置になるとき、第6の実施形態で説明したように、放水管21cによって排水と共に空気が吸い込まれる。
【0055】
しかしながら、本実施形態では、図14のように、サイクロン装置23が設置される構成とされるため、空気が混入した排水が放水管21cを通じてサイクロン装置23に吐出される。そして、サイクロン装置23においては、放水管21からの空気が混入した排水が旋回して出口23bに向かうことで、混入している空気が分離されることとなる。又、分離された空気はサイクロン装置23の上部に向かい、サイクロン23の蓋部の中央に接続された空気排出管24より、空中に排出される。
【0056】
尚、空気排出管24は、下流側水槽20bの底部を貫通するように設けられ、その天端が、水槽20に貯水される排水の最高水位よりも高い位置にとなるように設定される。このとき、空気排出管24の天端を水槽20の壁20cの天端よりも高い位置に設置することで、水槽20に貯水される排水の水位に対して常に高い位置とすることができる。又、放水管21a,21cは、第5の実施形態と同様、水槽20に縦横に配列されたマトリクス状に複数配置される。そして、複数の放水管21cそれぞれに対してサイクロン装置及び空気排出管24が設けられるものとしても構わないし、複数の放水管21cに対して1つのサイクロン装置及び空気排出管24が設けられるものとしても構わない。
【0057】
尚、本実施形態において、第6の実施形態と同様、排水管21a,21cそれぞれの給水口に、給水口を覆うためのカバー22a,22cを設けるものとしても構わない。又、本実施形態において、給水口の高さ位置が排水管21a,21cの給水口の高さ位置の間となる排水管が設けられるものとし、この排水管に対しても、サイクロン装置及び空気排出管が設置されるものとしても構わない。
【0058】
上述の第5〜第7の実施形態において、長さの違う2種類又は3種類の排水管21a〜21cが設置されるものとしたが、水位に対する制御を精細なものとするため、4種類以上の排水管が設置されるものとしても構わない。又、長さの異なる排水管に配列方法については、第5の実施形態でも記載したように、下流側に向かって給水口が高くなるように設置する方法に限らず、ランダムに設置するものとしても構わない。
【0059】
<第8の実施形態>
本発明の第8の実施形態について、図面を参照して説明する。図15は、本実施形態の放水路の構成を示す断面図である。
【0060】
図15の放水路は、発電所プラントの復水器で冷却水として使用された海水又は河川水を排水する放水管1と、放水管1からの排水を貯水する上流側水槽30と、上流側水槽30の下流側を堰き止める堰31と、堰31の下流側に構成される下流側水槽32と、下流側水槽32に貯水された排水を放水域7に放水するU字形状のサイフォン管33と、上流側水槽30から堰31を貫通して下流水槽32のサイフォン管33に挿入された放水管34と、を備える。
【0061】
このとき、上流側水槽30の底部30aが下流側水槽32の底部32aよりも高い位置にあり、下流側水槽32の底部32aが放水域7の底部よりも高い位置にある。そして、下流側水槽32が、底部32aと壁32bとによって放水域7としきられた構成となっている。又、堰31は、放水域7が高水位となることで上流側水槽30の水位が高くなったとき、その天端が水面下の低い位置となり、逆に、放水域7が低水位となることで上流側水槽30の水位が低くなったとき、その天端が水面よりも高い位置となるように、その高さが設定される。
【0062】
サイフォン管33は、下流側水槽32に設置されて底部32aに対して口がテーパー状に開いた形状となる上流側管33aと、放水域7に設置されて下端となる排水口が底部32aより低い位置となる下流側管33bと、上流側管33aと下流側管33bとを壁32bを越えて接続するU字型管33cと、によって構成される。このサイフォン管33は、最初の設置時において、真空ポンプで空気抜きが成されることで、サイフォン管33内が水で満たされた状態とされる。このようにサイフォン管33を構成することで、上流側管33aの給水口が、下流側管33bの排水口よりも高い位置となり、下流側水槽32の排水がサイフォン管33を通じて放水域7に放水されることとなる。
【0063】
又、堰31を貫通するように設けられた放水管34は、上流側水槽30の底部30a側に設けられ、サイフォン管33の上流側管33aの壁を貫通して上流側管33a内部に挿入される。そして、上流側管33aに挿入された放水管34の先端が、下流側水槽32の底部32aに向かって屈曲するような形状とされ、この放水管34の排水口が、上流側管33aの給水口よりも高い位置になるように設置される。
【0064】
このように構成したとき、放水域7が低水位である場合、図16(a)に示すように、下流側水槽32の水位がさがるとともに、上流側水槽30において堰31の天端よりも水位が低くなり、堰31を排水が越えることができない状態となる。尚、下流側水槽32では、その水位が放水管34よりも高い位置となり、放水管34が下流側水槽32に貯水された水の水面下に存在する。このとき、上流側水槽30からの排水が、放水管34を通じて、下流側水槽32におけるサイフォン管33の上流側管33a内部に放水される。
【0065】
そして、サイフォン管33の上流側管33a内部では、放水管34から排水が放水されるが、この放水される方向が上流側管33aの給水口の方向に向かう方向であり、上流側管33aを流れる方向に対して逆側となる。即ち、放水管34から排水が上流側管33aの水の流れに逆流するように排出され、放水管34からの放水に抵抗を与えられることとなる。これにより、放水管34から放水される排水の流量を少なくするため、上流側水槽30における水位変動を抑制することができる。そして、サイフォン管33において、下流側水槽32に貯水された排水が、上流側管33aから給水された後、U字型管33cを通じて下流側管33bより放水域7に排出される。
【0066】
又、放水域7が高水位である場合、図16(b)に示すように、下流側水槽32の水位が上がるとともに、上流側水槽30において堰31の天端よりも水位が高くなり、堰31を排水が越えて下流側水槽32に流れ込む。よって、下流側水槽32に貯水される排水量が多くなるが、サイフォン管33を通じて放水域7へ流れる排水の流量が多くなる。このように、サイフォン管33を通じて放水域7へ流れる排水の流量が多くなるため、上流側水槽30及び下流側水槽32の水位が上昇しすぎるのを抑制することができ、その水位変動を小さくすることができる。
【0067】
本実施形態では、サイフォン管33を通じて放水域7へ排水を放水するため、放水域7へ放水する排水に泡(空気)が混入することを防ぐことができる。又、上流側水槽30からサイフォン管33の上流側管33a内部まで挿入された放水管34を設けることで、放水域7が低水位となり、全体的に水位が下がったときでも、下流側水槽32に排水が供給される構成とすることができる。これにより、サイフォン管33が常に排水で満たされた状態とすることができ、空気の混入を防ぐことができる。
【0068】
尚、本実施形態では、放水管34をサイフォン管33の上流側管33a内部に挿入し、屈曲させることで抵抗を与え、放水管34から放水される排水の流量を少なくし、低水位時における水位の変動を抑制させるものとしたが、図17に示すように、放水管34の排水口が上流側管33a外部に在るものとしても構わない。このとき、放水管34の排水口を狭めることで抵抗を設けるものとするが、排水口が狭いと不純物や生物などにより排水口が詰まることがあるため、図15に示すように、上流側管33a内部に挿入し屈曲することで抵抗を与える方が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、原子力又は火力などによる発電プラントや化学プラントなどにおいて、河川域や海域から取水して冷却水などに利用された水を放水するための放水路に適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 放水管
7 放水域
20 水槽
20a 上流側水槽(第1水槽)
20b 下流側水槽(第2水槽)
21a 放水管
21b 放水管
21c 放水管
22 カバー
23 サイクロン装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側の放水管から放水される排水を貯水する水槽と前記排水を放水する下流側の放水域との間に設置され、前記水槽から前記放水域に前記水槽に貯水された排水を放水させる際の発泡を低減させる発泡防止装置において、
前記水槽が、上流側の第1水槽と、上流側の前記第1水槽より深さが深い下流側の第2水槽と、から構成され、
前記第2水槽の底部を貫通させて設けられるとともに前記水槽に貯水された排水を前記放水域に放水する複数の放水管を備え、
前記複数の放水管が、前記水槽の深さ方向に対して長さが異なるとともに、その天端における給水口の高さ位置が異なることを特徴とする発泡防止装置。
【請求項2】
前記第2水槽に設けられる前記複数の放水管のうち、少なくとも前記給水口の高さ位置が高いものに対して、前記給水口を覆うカバーが設けられることを特徴とする請求項1に記載の発泡防止装置。
【請求項3】
前記第2水槽に設けられる前記複数の放水管が、上流側から下流側に向かって、前記給水口が低い位置にあるものから前記給水口が高い位置にあるものとなる順番で、配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発泡防止装置。
【請求項4】
前記給水口が高い位置にある前記第2水槽に設けられる前記放水管の排出口に入口が接続され、接続された前記放水管からの排水を旋回させて空気と分離させるサイクロン装置と、
前記サイクロン装置の蓋部に接続されて、前記サイクロン装置で分離された空気を空中に排出する空気排出管と、
を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発泡防止装置。
【請求項1】
上流側の放水管から放水される排水を貯水する水槽と前記排水を放水する下流側の放水域との間に設置され、前記水槽から前記放水域に前記水槽に貯水された排水を放水させる際の発泡を低減させる発泡防止装置において、
前記水槽が、上流側の第1水槽と、上流側の前記第1水槽より深さが深い下流側の第2水槽と、から構成され、
前記第2水槽の底部を貫通させて設けられるとともに前記水槽に貯水された排水を前記放水域に放水する複数の放水管を備え、
前記複数の放水管が、前記水槽の深さ方向に対して長さが異なるとともに、その天端における給水口の高さ位置が異なることを特徴とする発泡防止装置。
【請求項2】
前記第2水槽に設けられる前記複数の放水管のうち、少なくとも前記給水口の高さ位置が高いものに対して、前記給水口を覆うカバーが設けられることを特徴とする請求項1に記載の発泡防止装置。
【請求項3】
前記第2水槽に設けられる前記複数の放水管が、上流側から下流側に向かって、前記給水口が低い位置にあるものから前記給水口が高い位置にあるものとなる順番で、配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発泡防止装置。
【請求項4】
前記給水口が高い位置にある前記第2水槽に設けられる前記放水管の排出口に入口が接続され、接続された前記放水管からの排水を旋回させて空気と分離させるサイクロン装置と、
前記サイクロン装置の蓋部に接続されて、前記サイクロン装置で分離された空気を空中に排出する空気排出管と、
を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発泡防止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−62747(P2012−62747A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220242(P2011−220242)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【分割の表示】特願2006−316168(P2006−316168)の分割
【原出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【分割の表示】特願2006−316168(P2006−316168)の分割
【原出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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