説明

発泡魚肉加工食品

【課題】 「はんぺん」とは相違するふわふわとした食感を喫食者に与える新規な発泡魚肉加工食品を得ること、特に、スフレ様の食感を喫食者に与え、焼き加熱しても冷却後縮まない新規な発泡魚肉加工食品を得ることを目的とする。
【解決手段】 魚肉すり身を食塩と起泡剤と共に擂潰して気泡を充分に泡立てた気泡混入すり身を加熱した発泡魚肉加工食品であって、起泡剤として卵白を用い、魚肉すり身100重量部に対して、卵白が120重量部〜220重量部使用されているもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な発泡魚肉加工食品に関するものであり、スフレ様の食感を与える新規な発泡魚肉加工食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
「はんぺん」は、魚肉すり身と山芋によって気泡をたくさん抱き込ませた生地を茹でて得られたかまぼこである。非常に柔らかく口当たりが良く、おでん種の他、そのまま食べてもおいしい練製品である。この「はんぺん」をベースとした新たな発泡魚肉加工食品も幾つか提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、「はんぺん」は茹で、蒸しの加熱工程により処理されることから最終製品の「はんぺん」の表面にぬめり感が残ることも課題の一つであり、係る課題が新たな開発の障壁になっていた。
【0004】
また、魚肉練製品としては、常に新しい製品が待ち望まれており、練製品素材自体の改良、加熱凝固法の選択・改良、練製品素材と一緒にあわせる食材の選択等の工夫を日夜行っている現状である。
【0005】
一方、卵白を泡立てたメレンゲに様々な材料を混ぜてオーブンで焼いて作る、軽くふわふわとした料理としての「スフレ」がある。特に、チーズやチョコレート等を入れて甘く味付けしたデザートとしてのスフレは近年絶大な人気がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−245407
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、「はんぺん」のバラエティー化の一つとして同様な食感、外観を有する「スフレ様はんぺん」も期待される。この場合、「はんぺん」を焼き加熱処理することが製造条件の一つとなる。しかしながら、従来の「はんぺん」を焙焼加熱処理すると加熱膨張し、その後冷却すると縮んでしまうという品質上の問題があった。
【0008】
本発明は、「はんぺん」とは相違するふわふわとした食感を喫食者に与える新規な発泡魚肉加工食品を得ること、特に、スフレ様の食感を喫食者に与え、焼き加熱しても冷却後縮まない新規な発泡魚肉加工食品を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載された発明に係る発泡魚肉加工食品は、魚肉すり身を食塩と起泡剤と共に擂潰して気泡を充分に泡立てた気泡混入すり身を加熱した発泡魚肉加工食品であって、
前記起泡剤として、卵白を用い、
前記魚肉すり身100重量部に対して、卵白が120重量部〜220重量部使用されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2に記載された発明に係る発泡魚肉加工食品は、前記加熱する前の気泡混入すり身の密度が0.4〜0.6g/cm とされたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載された発明に係る発泡魚肉加工食品は、請求項1又は2に記載の加熱が、焙焼によるものであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に記載された発明に係る発泡魚肉加工食品は、請求項3に記載の焙焼が、過熱水蒸気で行われることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、はんぺんとは相違するふわふわとした食感を喫食者に与える新規な発泡魚肉加工食品を得ることができるという効果がある。特に、焙焼によって加熱されたものでは、表面がパリッとしており、その内部は気泡によりスフレのような食感を有し、焼き加熱しても冷却後縮まない新規な発泡魚肉加工食品を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の発泡魚肉加工食品の一実施例の製造工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明においては、魚肉すり身を食塩と起泡剤と共に擂潰して気泡を充分に泡立てた気泡混入すり身を加熱した発泡魚肉加工食品であって、
前記起泡剤として、卵白を用い、前記魚肉すり身100重量部に対して、卵白が120重量部〜220重量部使用されているものである。
【0016】
魚肉すり身100重量部に対して、卵白を120重量部以上、220重量部以下とする。120重量部より下回ると、気泡が抜けてふんわり感がなく、ねっちりとした食感となる。220重量部より上回ると、ヌル感のあるメレンゲ様食感となり、口どけのよいスフレ様食感とは相違する食感となる。
【0017】
本発明での魚肉すり身としては、食塩を添加して擂潰することにより塩ズリ身を得ることができる魚肉生身を用いることができる。魚肉としては、ぐち,えそ,はも,かれい,とびうお,ひらめ,すけそうだら,さめ等の魚肉生身や、冷凍すり身を解凍した魚肉生身を用いる。採肉した魚肉生身の場合は、水晒し,脱水し、2〜3%の食塩及び起泡剤を加えて擂潰して気泡を充分に泡立てた気泡混入すり身生地を得る。冷凍すり身の場合は解凍後2〜3%の食塩及び起泡剤を加えて擂潰して気泡を充分に泡立てた気泡混入すり身生地を得る。
【0018】
本発明の起泡剤としては、卵白を用いることを必須とする。卵白としては、生卵白の他にも、冷凍卵白を解凍して用いることができ、乾燥卵白は水を加えて例えば8倍にして使用することができる。また、卵白以外で用いることのできる起泡剤としては、おろし山芋、全卵、卵黄が挙げられるが、魚肉すり身に気泡を抱かせるような働きをし、食用に供されるものであればこれに限定されるものではない。
【0019】
本発明の気泡混入すり身生地は、魚肉すり身を食塩と起泡剤と共に擂潰して気泡を充分に泡立てて得られるが、その気泡を泡立てる過程はどのように行っても良い。例えば、魚肉すり身、食塩、起泡剤の全てを同時に添加して擂潰して気泡を泡立てても良いし、魚肉すり身と食塩とで塩摺り身を作成した上で起泡剤を加えて更に擂潰して気泡を泡立てても良いし、起泡剤単独を予め起泡させた上で魚肉すり身又は塩摺り身に加えて更に擂潰して気泡を泡立てても良い。
【0020】
本発明の気泡混入すり身生地の好ましい密度は0.4g/cm 以上、0.6g/cm 以下である。0.4g/cm を下回った場合には、気泡が抜けて膨らみの割れが生じる。0.6g/cm を上回った場合には、加熱した後では、ふんわり感がなくなる。
【0021】
本発明の発泡魚肉加工食品を製造する際には、魚肉すり身を食塩と起泡剤と共に擂潰して気泡を充分に泡立てた気泡混入すり身とする気泡すり身作製工程と、前記気泡混入すり身を加熱する加熱工程とを備えた発泡魚肉加工食品の製造法において、
前記気泡すり身作製工程では、
前記魚肉すり身100重量部に対して、起泡剤としての卵白が120重量部〜220重量部使用されており、前記加熱工程の直前の気泡混入すり身を泡立てることにより、新規な発泡魚肉加工食品を製造することができる。
【0022】
好ましくは、加熱工程の直前の気泡混入すり身の密度が0.4〜0.6g/cm となるように泡立てることにより、新規な発泡魚肉加工食品を製造することができる。
【0023】
本発明の気泡混入すり身生地は加熱されて気泡を内部に閉じ込められた状態で食される。加熱方法としては、種々の加熱方法を採用することができる。例えば、熱湯で茹でる加熱、蒸気で蒸す蒸し加熱、油で揚げる油ちょう加熱、材料に通電して材料の抵抗により電気エネルギーを熱エネルギーに変換して加熱するジュール熱による加熱、高温雰囲気で焙り焼く焙焼加熱等が採用される。特に、焙焼加熱では高温雰囲気に曝された箇所は焦げ目が形成され、スフレ様の食感を得ることができる。
【0024】
この焙焼加熱では、180〜250℃に加熱されたオーブン内で焙焼される他に、180〜250℃の過熱水蒸気内で焙焼されることにより、短い時間で加熱されることができ、表面も良好な焦げが形成される。また、この過熱水蒸気による焙焼加熱で冷却後縮まないことが達成できる。
【0025】
本発明の発泡魚肉加工食品は形状には捕らわれるものではない。可能であれば如何なる形状をも取りうる。前述の通り、焙焼加熱によって加熱するのであれば、焙られる表面が露出するような形状が好ましいが、加熱される前の気泡混入すり身は安定した形状を取り難い。そのため、加熱に耐える容器内に投入され、上表面を平らに均す程度の形状にすることが好ましくは取られる。これにより、上表面は焙焼により焙られ、しかも、スフレのように気泡が焙焼による加熱で膨張して、焼き菓子のスフレのような形状により近い形状となる。
【実施例】
【0026】
1.製造方法
図1は本発明の発泡魚肉加工食品の一実施例の製造工程を示す工程図である。図に示す通り、発泡魚肉加工食品の原料は、魚肉すり身100重量部に対して、食塩3重両部と、生卵白120〜220重量部とを含む。その他の原料としては、調味のための砂糖10重量部、その他調味料微量、食品の保水性を向上させるための澱粉28重量部や、発泡を助長する増粘多糖類0.6重量部を添加しても良い。尚、添加水100重量部を含む。
【0027】
これら原料を撹拌する。この撹拌工程は、全ての原料を撹拌装置に投入して一気に撹拌して発泡させても良いが、予め魚肉すり身及び食塩等の塩すり身原料を撹拌装置に投入して発泡前生地を作成した上で、別にメレンゲ状に発泡させておいた卵白を投入した上で発泡させる発泡工程を行った方が、均一な発泡状態のものが速く作成できる。発泡工程は、気泡混入すり身の密度が0.4〜0.6g/cm となった状態で終了させる。
【0028】
気泡混入すり身は耐熱性の容器に充填される。詳しくは、耐熱性の紙製深皿容器の8割程度の容量となるように気泡混入すり身を投入される。尚、上表面は平たくされる。耐熱性の容器に入れた気泡混入すり身はスチームオーブンに入れられて焙焼加熱される。スチームオーブンは180〜250℃の過熱水蒸気が充満したオーブンであり、乾いた空気と比べて大きな熱エネルギーを有する過熱水蒸気によって、速やかに加熱される。このスチームオーブンに8分〜15分放置(加熱後中心温度:75℃〜90℃)した後、放冷冷却し、冷却後10℃以下で保存する。尚、このスチームオーブンによる加熱により、冷却後縮むことがないことが確認された。
【0029】
2.魚肉すり身と卵白との比率
表1に示す通り、魚肉すり身を塩摺りした後、でん粉、砂糖、調味料、添加水を添加し、生卵白をすり身100重量部に対して、各々100重量部、120重量部、220重量部、240重量部を添加して生身をすりあげ、群にわけ、発泡機にて密度を0.45g/cm に合わせ耐熱容器(伊達巻用鍋)に充填成型し200℃のスチームオーブンで10分間焙焼加熱を実施した。
【0030】
製造した発泡魚肉加工食品を冷却後、各群の組成で製造された発泡魚肉加工食品を10人のパネラーにより官能評価により効果を確認した。結果を次の表2に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
表2に示す通り、発泡魚肉加工食品としては、魚肉100部に対し卵白120部〜220部が良好であった。
【0034】
3.密度の影響確認
魚肉すり身を塩摺りした後、でん粉、砂糖、調味料、添加水を添加し、生卵白をすり身100部に対しそれぞれ120部、220部を添加して生身をすりあげ、群にわけ、発泡機にて密度を0.3、0.4、0.6、0.8g/cm に合わせ耐熱容器(伊達巻用鍋)に充填成型し200℃のスチームオーブンで10分間焼加熱を実施した。
【0035】
製造した発泡魚肉加工食品を冷却後、各群の組成で製造された発泡魚肉加工食品を10人のパネラーにより官能評価により効果を確認した。結果を次の表3に示す。
【0036】
表3に示す通り、に生身状態の密度は0.4〜0.6が縮みもなく良好であった。
【0037】
【表3】

【0038】
以上の通り、本発明の発泡魚肉加工食品は、はんぺんとは相違するふわふわとした食感を喫食者に与える新規な発泡魚肉加工食品である。特に、焙焼によって加熱されたものでは、表面がパリッとしており、その内部は気泡によりスフレのような食感を有し、焼き加熱しても冷却後縮まない新規な発泡魚肉加工食品である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚肉すり身を食塩と起泡剤と共に擂潰して気泡を充分に泡立てた気泡混入すり身を加熱した発泡魚肉加工食品であって、
前記起泡剤として、卵白を用い、
前記魚肉すり身100重量部に対して、卵白が120重量部〜220重量部使用されていることを特徴とする発泡魚肉加工食品。
【請求項2】
前記加熱する前の気泡混入すり身の密度が0.4〜0.6g/cm とされたことを特徴とする請求項1に記載の発泡魚肉加工食品。
【請求項3】
前記加熱が、焙焼によるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡魚肉加工食品。
【請求項4】
前記焙焼が、過熱水蒸気で行われることを特徴とする請求項3に記載の発泡魚肉加工食品。

【図1】
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【公開番号】特開2011−239720(P2011−239720A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114327(P2010−114327)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000141509)株式会社紀文食品 (39)
【Fターム(参考)】