説明

発熱体収納用密封ケース

【課題】 密封性,防湿性及び防塵性を確保し、ケース内壁の防滴性を得るとともに、放熱性を高めて電子機器及び電子部品の集積度の許容範囲を大きくして汎用性を拡大する。
【解決手段】 発熱体を密封状態に収納するケース本体の上方に、これを覆って冷却空気流路を形成する上部カバーが配され、冷却空気流路に外部空気との熱交換を行なう熱交換部が配されるとともに、熱交換部とケース本体の内部とに、外部ファン及び内部ファンが配されて、空気の強制循環が行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発熱体収納用密封ケースに係り、特に、防塵,防湿,防滴,放熱性を高める技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】航空機用及び各種産業用電子機器や電子部品にあっては、種々の環境で利用されており、電子機器及び電子部品を収納するケースには、それぞれの環境に適合した機能が求められている。
【0003】従来、電子機器等の収納用ケースは、多くは金属製とされるとともに、外部環境に対する密閉性を有するものが活用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、電子機器及び電子部品は、その集積化にともなって発熱量が大きくなり、放熱性に加えて、電子機器等の作動時と非作動時との温度変化が顕著になる傾向を示し、外部環境との温度差に基づいてケース内壁に水滴が付着する等の新たな問題が生じて、これらを総合的に配慮することが要求される
【0005】本発明は、これらの課題に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとしている。
■外部環境との隔離により、密封性,防湿性及び防塵性を確保すること。
■ケース内部の空気の対流を改善して、ケース内壁の防滴性を高めること。
■放熱性を高めて電子機器及び電子部品の集積度び許容範囲を大きくすること。
■汎用性を拡大すること。
【0006】
【課題を解決するための手段】電子機器及び電子部品等の発熱体にあっては、ケース本体の内部に密封状態に収納され、ケース本体は、アルミダイキャスト等の金属製とされるとともに、必要に応じて複数分割構造とされる。ケース本体の内部には、ラック部または内壁面等によって支持された状態に、電子回路基板や電子機器等の発熱体が配され、内部ファンにより強制空冷される。ケース本体の上方には、これを覆うように上部カバーが配され、上部カバーには空気取入れ口が開けられるとともに、ケース本体と上部カバーとの間に冷却空気流路が形成され、冷却空気流路に配された外部ファンにより空気の挿通化が図られる。ケース本体の隔壁には、両方向に突出状態の突起状フィン及びリブ状フィンが配され、上方位置の突起状フィン及び冷却空気流路により熱交換部が形成される。上部カバーの周囲の下縁部は、ケース本体の側部に間隙を開けて被せられ、間隙の部分が熱交換後の空気を放出する排出開口とされる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る発熱体収納用密封ケースの一実施形態について、図1ないし図6に基づき説明する。各図において、符号Xは発熱体(電子回路基板,電子機器)、1はケース本体、2は上部カバー、3は内部ファン、4は外部ファン、5は熱交換部である。
【0008】前記ケース本体1は、図1,図4及び図6等に示すように、発熱体Xを密封状態に収納するものであり、内部の環境を外部から隔離した状態とするとともにアルミダイキャスト等により作製され金属製とされる隔壁11と、該隔壁11に対してその両面に突出状態に配される突起状フィン12Aと、少なくとも外側面(望ましくは両側面)に突出状態に配されるリブ状フィン12Bと、隔壁11の内部に配され発熱体Xを支持するラック部13と、背面位置に配され垂直壁等の支持構造物に取り付けるための上部取付脚14A及び下部取付脚14Bとを具備している。
【0009】さらに、ケース本体1にあっては、図3及び図5に示すように、本体A,B,Cの部分に3分割される構造が採用されており、L型状横断面の隔壁11を有する本体Aに対して、必要に応じてI型状横断面の隔壁11を有する本体B,Cを取り外して、内部側方を開放し得るように設定される。これら本体A,B,Cの各接合部11aは、ボルト・ナット等の締結具11bで締結されるとともに、シール材等により気密性を保持するように組み付けされる。
【0010】前記上部カバー2は、図1及び図2に示すように、ケース本体1の上方に、フレーム部2Aが一体に配され、該フレーム部2Aに平板状の上板部2Bが締結具11bにより取り付けられ、上板部2Bに空気取入れ口21が開けられるとともに、ケース本体1との間に冷却空気流路22が形成され、フレーム部2Aの下縁部23が、ケース本体1の上側部に対して間隙を形成した状態に配され、該間隙の部分が熱交換後の空気を外部に放出するための排出開口24とされている。また、上板部2Bには、ケーブル接続口25が配されて、電気ケーブルYによりケース本体1の内部の発熱体Xとの電気接続が行なわれる。
【0011】前記内部ファン3は、ケース本体1の内底部に配されて、図1に矢印で示すように、内部空気を循環させて、隔壁11に対して直接または突起状フィン12A,リブ状フィン12Bを経由して放熱を行なうとともに、これらの内表面の付近に空気流を形成して、水滴の付着を防止するようにしている。
【0012】前記外部ファン4は、図1に示すように、上部カバー2の空気取入れ口21に取り付けられ、熱交換部5及び冷却空気流路22に外気を導入するように設定される。
【0013】前記熱交換部5は、隔壁11及びその近傍に形成されるが、特に、ケース本体1の上面とその近傍の突起状フィン12Aと冷却空気流路22との部分が、熱交換効率を向上させる点で重要視される。
【0014】このように構成されている発熱体収納用密封ケースにあって、電子回路基板等(発熱体)Xをケース本体1の内部に収納する場合には、本体A,B,Cを分割状態としておき、電子機器Xにあっては、ケース本体1の内壁面に直接取り付け、電子回路基板Xにあっては、図5に示すように、ラック部13に立てた状態に取り付ける等の設定がなされる。
【0015】発熱体Xをケース本体1の内部に収納した状態で作動させると、ケース本体1の内部空気の温度が上昇する。この際に内部ファン3を運転すると、図1に矢印で示すように、ケース本体1の内部に空気の強制循環流が形成されて、ラック部13に取り付けられている発熱体Xにあっては、空気流に伝達されることにより除熱が行なわれ、隔壁11の内面に支持されている発熱体Xにあっては、その熱が直接的に隔壁11または空気流に伝達されることにより除熱が行なわれる。
【0016】したがって、隔壁11の温度上昇にともなって、突起状フィン12A及びリブ状フィン12B等から放熱が行なわれることになるが、加えて、外部ファン4を作動させると、図1の矢印で示すように、冷却空気流路22の部分に空気が挿通して、高温状態の熱交換部5における突起状フィン12A等の除熱が行なわれ、熱交換後の空気が排出開口24から外部に排出される。この外部ファン4の作動により、特に高温状態となる図1に示す熱交換部5の突起状フィン12A等を効率よく冷却し得るようになり、ケース本体1の内部に、電子回路基板,電子機器Xを高集積状態に収納している場合にあっても、これらの放熱性を高めて安定作動を確保することができる。
【0017】なお、発熱体Xが発熱している場合に、内部ファン3及び外部ファン4が停止していると、ケース本体1の内部にあっては、図1の矢印で示すように、自然対流が生じて放熱が行なわれるが、この際に、熱交換部5を経由して冷却空気流路22に熱が伝達されると、上部カバー2の内部空気が、図1の矢印と反対方向に流れる自然対流が生じて、排出開口24から取り入れられた空気が熱交換後に、空気取入れ口21から排出される。このため、内部ファン3及び外部ファン4の一方、または両方を停止させた場合にあっても、最小限の冷却作用が確保される。
【0018】
【発明の効果】本発明に係る発熱体収納用密封ケースによれば、以下のような効果を奏する。
(1) 発熱体がケース本体の内部に密封状態に収納され、ケース本体が、アルミダイキャスト等の金属製とされることにより、外部環境との隔離を行なって、密封性,防湿性,及び防塵性を確保することができる。
(2) ケース本体の内部に循環流を生じさせることにより、ケースの内壁面に水滴が生成される現象の発生を防止することができる。
(3) 発熱体を、ラック部または内壁面等に複数分割した状態に支持させて、内部ファンにより強制空冷することにより放熱性を高めて、電子機器及び電子部品の集積度び許容範囲を大きくすることができる。
(4) ケース本体の上方に上部カバーを配して冷却空気流路を形成し、外部ファンにより熱交換部の空気の挿通化を行なうことにより、ケース本体の放熱性を高めて、発熱体の健全性を確保することができる。
(5) ケース本体の隔壁に、突起状フィンやリブ状フィンを配して放熱性を高めるとともに、上部カバーの下縁部とケース本体との空気流通性を確保することにより、放熱性の向上に加えて、内部ファン及び外部ファンの停止時の放熱性を確保し、汎用性を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る発熱体収納用密封ケースの一実施形態を示す正断面図である。
【図2】 本発明に係る発熱体収納用密封ケースの一実施形態を示す平面図である。
【図3】 本発明に係る発熱体収納用密封ケースの一実施形態を示す左側面図である。
【図4】 図1の発熱体の正面図である。
【図5】 図3のV−V線矢視図である。
【図6】 図4のVI−VI線矢視図である。
【符号の説明】
X 発熱体(電子回路基板,電子機器)
Y 電気ケーブル
1 ケース本体
A,B,C 本体
2 上部カバー
2A フレーム部
2B 上板部
3 内部ファン
4 外部ファン
5 熱交換部
11 隔壁
11a 接合部
11b 締結具
12A 突起状フィン
12B リブ状フィン
13 ラック部
14A 上部取付脚
14B 下部取付脚
21 空気取入れ口
22 冷却空気流路
23 下縁部
24 排出開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】 発熱体(X)を密封状態に収納するケース本体(1)の上方に、これを覆って冷却空気流路(22)を形成する上部カバー(2)が配され、冷却空気流路に外部空気との熱交換を行なう熱交換部(5)が配されることを特徴とする発熱体収納用密封ケース。
【請求項2】 上部カバー(2)の下縁部(23)と、ケース本体(1)の上方側部との間に、熱交換後の空気を放出するための排出開口(24)が形成されることを特徴とする請求項1記載の発熱体収納用密封ケース。
【請求項3】 ケース本体(1)の内部に、電子回路基板や電子機器等の発熱体(X)を支持するラック部(13)が配されることを特徴とする請求項1または2記載の発熱体収納用密封ケース。
【請求項4】 冷却空気流路(22)に、空気の挿通化を図る外部ファン(4)が配されることを特徴とする請求項1、2または3記載の発熱体収納用密封ケース。
【請求項5】 ケース本体(1)の内部に、内部空気を強制循環させる内部ファン(3)が配されることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の発熱体収納用密封ケース。
【請求項6】 ケース本体(1)の隔壁(11)に、両方向に突出状態の突起状フィン(12A)または外方に突出状態のリブ状フィン(12B)が配されることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の発熱体収納用密封ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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