説明

発熱具

【課題】汎用性に優れ、使用する発熱剤及び水の量に対して発熱量が大きい発熱具を提供すること。
【解決手段】水との接触により発熱する発熱剤、発熱剤の上に配置されている、中央に開口部を有する自己支持性枠体、そして前記枠体の一辺に固定された状態にて枠体の上に載置されている、易引裂き性かつ非透湿性の袋体に水を封入した水袋からなる積層体、この積層体の自己支持性枠体の上記の辺に対向する辺に一方の端部が固定され、他方の端部が枠体と水袋との間を通り、枠体の前者の辺の位置から上に伸び、水袋の上面に沿って、上記一方の端部が固定された枠体の辺を超えて伸びている長尺状開封具、そして上記積層体及び長尺状開封具を、開封具の上記他方の端部を外側に引き出した状態で封入する易引裂き性かつ非透湿性の外袋からなる発熱具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁当あるいは惣菜などの食品を収容する食品トレイの下側に配置して、前記食品を加熱するために有利に用いることができる発熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、弁当あるいは惣菜などの食品を収容する食品トレイの下側に、水との接触により発熱する発熱剤(例、生石灰粉末)を用いた発熱具を配置して、食品トレイに収容された食品を、食前に適温に加熱することは知られている。また、このような発熱具を用いて、例えば、日本酒などの飲み物を加熱することも知られている。
【0003】
特許文献1には、上面が開口した容器本体、この容器本体の底に収容されている発熱具(加熱部材)、発熱具の上に重ねて配置された食品トレイ(食品容器)、そして容器本体の蓋などから構成される加熱容器が開示されている。
【0004】
図6は、同文献に記載されている発熱具の構成を示す分解斜視図である。図6の発熱具60は、発熱剤が封入された発熱剤袋61、水が封入された水袋62、そして発熱剤袋61及び水袋62の破断に用いる紐63の一方の端部63aが固定されたプレート64から構成されている。この発熱剤袋61及び水袋62の各々は、例えば、ポリエチレン等の合成樹脂製のフィルムから形成される。
【0005】
この発熱具60の紐63を図6に記入した矢印が示す方向に引っ張ると、発熱剤袋61と水袋62とが引き裂かれ、各々の袋から流れ出た発熱剤と水とが接触そして反応することで生じた熱によって水蒸気が発生する。そして、この水蒸気により発熱具60の上に配置された食品トレイに収容された食品が加熱される。この発熱具60は、水袋62から流れ出た水が、前記の容器本体の底から外部に漏れ出ないようにするため、容器本体の底に収容された受け皿(同文献の図3を参照)の上に配置され使用される。
【0006】
図7は、特許文献2に記載されている発熱具の構成を示す分解斜視図である。図7の発熱具70は、上面に開口部を有するケース75、ケース75に収容されている粒状の発熱剤71、発熱剤71の上に配置されている水袋72、発熱剤71と水袋72との間に配置されている、水袋破断用の紐73の一方の端部73aが固定された支持材74、発熱剤71と空気中の水分との接触を抑制するためにケース75の上端周縁に貼り着けられた防湿シート76、そして防湿シートの上に重ねて貼り着けられた水蒸気透過シート77から構成されている。
【0007】
この発熱具70の紐73を図7に記入した矢印が示す方向に引っ張ると、防湿シート76と水袋72とが引き裂かれて水袋72から水が流れ出し、この水と発熱剤とが接触そして反応して水蒸気が発生する。この水蒸気は、紐73によって引き裂かれた防湿シート76の開口、そして水蒸気透過シート77を通ってケース75の外部に流れ出し、食品の加熱に利用される。
【0008】
図8は、特許文献3に記載されている発熱具の構成を示す斜視図である。図8の発熱具80は、透水性袋体に発熱剤が収容された構成の発熱部材81と水袋82とを収納袋85に封入した構成を有している。この発熱具80の水袋82には、そのシール部82aに切り込み82bを入れて形成したテープ片83が備えられている。
【0009】
この発熱具80のテープ片83を図8に記入した矢印が示す方向に引っ張ると、収納袋85と水袋82とが引き裂かれて水袋82から水が流れ出し、この水と発熱部材に収容されている発熱剤とが接触そして反応して水蒸気が発生する。この水蒸気は、テープ片83によって引き裂かれた収納袋85の側端開口から流れ出し、食品の加熱に利用される。
【特許文献1】特開平11−292155号公報
【特許文献2】特開2002−360439号公報
【特許文献3】実開平5−68434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発熱具は、例えば、各種サイズの弁当箱(容器本体、食品トレイ及び蓋から構成されるもの)と組み合わされて販売されるため、これに応じてサイズを柔軟に変更できる汎用性に優れたものであることが望ましい。また、発熱具は、使用する発熱剤及び水の量に対して発熱量が大きいものであることが望ましい。
【0011】
特許文献1の発熱具は、使用の際に発熱具のサイズに応じた受け皿を必要とする。通常、このような受け皿としては、樹脂成形品が用いられる。このような受け皿の成形に用いる金型は高価(金型一個当たり数百万円程度)なものであるため、(各種サイズの弁当箱に対応する)各種サイズの発熱具の各々について受け皿を作製することは現実的ではない。このため、このような発熱具は、使用の際に用いる受け皿のサイズ、すなわち発熱具のサイズを、各種サイズの弁当箱に応じて柔軟に変更することが難しく、汎用性の低いものである。
【0012】
また、この発熱具においては、発熱剤袋及び水袋の下側に、両者の破断に用いる紐の一方の端部が固定されたプレートが配置されている。このため、水袋から流れ出たのちに、水袋と発熱剤袋との隙間、発熱剤袋とプレートとの隙間、あるいはプレートの周囲もしくは裏側(プレートと受け皿との隙間)に流れ込んだ水は、発熱剤に接触することができない。従って、この発熱具は、十分に大きな発熱量を得るには予め水袋に多めに水を入れておく必要があるため、使用する発熱剤及び水の量に対する発熱量が小さいものである。
【0013】
特許文献2の発熱具は、発熱剤と水袋とを封入するケースを必要とする。通常、このようなケースには樹脂成形品が用いられるため、このような発熱具もまた、上記の受け皿を備える発熱具の場合と同様の理由により汎用性が低いものである。
【0014】
また、この発熱具は、水袋から流れ出たのちに、開封後の水袋と支持材との隙間に流れ込んだ水は、発熱剤に接触することができない。従って、この発熱具もまた、十分に大きな発熱量を得るには予め水袋に多めに水を入れておく必要があるため、使用する発熱剤及び水の量に対する発熱量が小さいものである。
【0015】
特許文献3の発熱具は、発熱剤袋と水袋とを密閉収納するために収納袋が用いられているが、使用時にテープ片によって引き裂かれた収納袋の側端開口から収納袋の外部に水が流れ出すため、発熱具を上記の特許文献1の発熱具の場合と同様に受け皿の上に配置して使用する必要があり、その汎用性は未だ十分ではない。
【0016】
また、この発熱具は、上記のように収納袋の外部に流れ出した水、そして水袋から流れ出たのちに、開封後の水袋と収納袋との隙間に流れ込んだ水は、発熱剤に接触することができない。従って、この発熱具もまた、使用する発熱剤及び水の量に対する発熱量が小さいものである。
【0017】
本発明の課題は、汎用性に優れ、使用する発熱剤及び水の量に対して発熱量が大きい発熱具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、上述した課題について研究を重ねた結果、発熱剤、長尺状開封具の一方の端部が固定されている、中央に開口部を備える自己支持性枠体、そして水袋をこの順に積層して外袋に封入し、そして使用の際に長尺状開封具により水袋と外袋の上面とが引き裂かれるように発熱具の構成を工夫することにより、上記のようなケースや受け皿を必要とせず、そして使用の際に水袋から流れ出た水の殆どが発熱剤に接触して、使用する発熱剤及び水の量に対して大きな発熱量が得られる発熱具を提供できることを見出し、本発明に到達した。
【0019】
従って、本発明は、水との接触により発熱する発熱剤、発熱剤の上に配置されている、中央に開口部を有する自己支持性枠体、そして前記枠体の一辺に固定された状態にて枠体の上に載置されている、易引裂き性かつ非透湿性の袋体に水を封入した水袋からなる積層体、この積層体の自己支持性枠体の上記の辺に対向する辺に一方の端部が固定され、他方の端部が枠体と水袋との間を通り、枠体の前者の辺の位置から上に伸び、水袋の上面に沿って、上記一方の端部が固定された枠体の辺を超えて伸びている長尺状開封具、そして上記積層体及び長尺状開封具を、開封具の上記他方の端部を外側に引き出した状態で封入する易引裂き性かつ非透湿性の外袋からなる発熱具にある。
【0020】
本発明の発熱具の好ましい態様は、次の通りである。
(1)発熱剤が透水性袋体に収容されている。
(2)自己支持性枠体が、その開口部に沿って設けられた、水の移動方向を案内するスカート部を有する。
(3)自己支持性枠体が厚紙もしくは段ボール製である。
(4)外袋及び袋体の各々が、金属層が積層された樹脂フィルムからなる。
【0021】
本発明はまた、上面が開口し、側壁に孔部を有する箱体、箱体の底部に収容されている発熱具、発熱具の上に配置されている食品トレイ、そして箱体の開口を塞ぐ蓋体からなる食品加熱用の容器であって、この発熱具として上記の本発明の発熱具が用いられ、その長尺状開封具の上記他方の端部が箱体の孔部を通って外部に引き出されていることを特徴とする食品加熱容器にもある。
【0022】
本発明の食品加熱容器の好ましい態様は、次の通りである。
(1)発熱具がその外袋の外側表面の一部にて箱体に固定されている。
(2)発熱具が、その自己支持性枠体の水袋が固定された辺から下側に伸びる脚部と、この脚部の下側から枠体と平行に伸びる延長部とを持ち、この延長部の下面に対応する外袋の外側表面にて箱体に接着され固定されている。
【発明の効果】
【0023】
本発明の発熱具においては、使用の際に長尺状開封具により水袋と外袋の上面とが引き裂かれるため、水袋から流れ出た水は、外袋の内部に保持され外部に流れ出ることはない。従って、本発明の発熱具は、発熱剤や水袋を収容するケース、あるいは使用の際に水袋から流れ出る水の受け皿を必要としないため、そのサイズを柔軟に変更できる汎用性に優れたものである。
【0024】
そして、本発明の発熱具の自己支持性枠体が備える開口部は、使用時に水袋から流れ出た水の外袋外部への流出を防止すると共に、この水の大部分を通過させ、その下側にある発熱剤の上方に案内して接触させる働きをする。すなわち、本発明の発熱具においては、水袋から流れ出た水は、例えば、上記の特許文献1の発熱具のように水袋と発熱剤袋との隙間、発熱剤袋とプレートとの隙間、あるいはプレートの周囲もしくは裏側(プレートと収納袋との隙間)に流れ込むことがなく、その大部分が枠体の開口部を通過して発熱剤に接触する。このため、本発明の発熱具は、使用する発熱剤及び水の量に対して大きな発熱量を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の発熱具を、添付の図面を用いて説明する。図1は、本発明の発熱具の構成例を示す斜視図であり、そして図2は、図1に記入した切断線II−II線に沿って切断した発熱具10の断面図である。また、図3は、図2に示す発熱具10の積層体17を外袋19に収容する前の状態を示す斜視図であり、そして図4は図3に示す積層体17の分解斜視図である。
【0026】
図1から図4に示すように、本発明の発熱具10は、水との接触により発熱する発熱剤11、発熱剤11の上に配置されている、中央に開口部12を有する自己支持性枠体13、そして枠体13の一辺13aに固定された状態にて枠体13の上に載置されている、易引裂き性かつ非透湿性の袋体14に水15を封入した水袋16からなる積層体17、積層体17の自己支持性枠体13の上記の辺13aに対向する辺13bに一方の端部18bが固定され、他方の端部18aが枠体13と水袋16との間を通り、枠体13の前者の辺13aの位置から上に伸び、水袋16の上面に沿って、上記一方の端部18bが固定された枠体13の辺13bを超えて伸びている長尺状開封具18、そして積層体17及び長尺状開封具18を、開封具18の上記他方の端部18aを外側に引き出した状態で封入する易引裂き性かつ非透湿性の外袋19などから構成されている。
【0027】
この発熱具10の長尺状開封具18を図2に記入した矢印が示す方向に引っ張ると、水袋16と外袋19の上面とが引き裂かれ、水袋16から流れ出た水が自己支持性枠体13の開口部12を通過して発熱剤11に接触し、両者の反応により生じた熱によって水蒸気が発生する。このようにして発生した水蒸気は、枠体13の開口部、そして開封具により引き裂かれた外袋19の上面開口を通って外部に流れ出し、そして発熱具10の上に配置された食品トレイに収容された食品の加熱に利用される。
【0028】
発熱具10においては、使用の際に長尺状開封具18により水袋16と外袋19の上面とが引き裂かれるため、水袋16から流れ出た水は、外袋19の内部に保持され外部に流れ出ることはない。従って、発熱具10は、発熱剤や水袋を収容するケース、あるいは使用の際に水袋から流れ出る水の受け皿を必要としないため、そのサイズを柔軟に変更できる汎用性に優れたものである。例えば、生産量の少ない弁当についても、金型を用いる樹脂成形によってケースや受け皿を作製する必要がないため、これに応じたサイズの発熱具を低価格にて提供することができる。
【0029】
発熱剤11としては、水との接触により発熱する公知の発熱剤、例えば、生石灰粉末、あるいは生石灰粉末とアルミニウム粉末との混合物などを用いることができる。また、発熱剤としては、粉末状の発熱剤を樹脂バインダーで結着させて(例えば、シート状、あるいは粒状に)成形したものを用いてもよい。
【0030】
前記の生石灰粉末とアルミニウム粉末との混合物からなる発熱剤は、例えば、特開2001−226668号公報に詳しく記載されている。また、より大きな発熱量を得るために、発熱剤(あるいは水袋に封入する水)に塩化ナトリウム等を添加することも好ましい。塩化ナトリウム等を添加した発熱剤については、例えば、特開2006−152090号公報に詳しく記載されている。
【0031】
発熱剤11は、図2に示すように、例えば、不織布あるいは和紙などから形成された透水性袋体21に収容されていることが好ましい。この袋体の「透水性」とは、使用する粉末状の発熱剤を袋体の外部に大量には透過させず、かつ内部に水を透過させことができるる程度の透水性を持つことを意味している。
【0032】
発熱剤11が透水性袋体21に収容されていると、水袋16から流れ出たのちに枠体13の開口部12を通過した水が、先ず袋体21の上側に収容された発熱剤に接触し、次いで袋体21の外側表面を伝わりながら袋体の側面の側に収容された発熱剤に接触し、そして外袋19の底に流れ落ちて袋体21の下側に収容された発熱剤に接触する。すなわち、発熱具10の使用を開始した直後に透水性袋体21に収容された発熱剤11に効率良く水を接触させて大きな発熱量を得ることができるため、食品を短時間で加熱することができる。
【0033】
発熱剤11の上には、中央に開口部12を有する自己支持性枠体13が配置される。仮に、この枠体13に開口部12が設けられていない場合には、発熱具を使用する際に長尺状開封具18によって水袋16及び外袋19の上面を引き裂いた場合に、水袋16から流れ出た水が下方に流れ難いため、その一部分が開封具18で引き裂かれた外袋19の上面開口から外部に流れ出てしまう。枠体13に開口部12が設けられていると、開封具18により水袋16が引き裂かれた際に、水袋16から流れ出た水が直ちに枠体13の開口部12を通って枠体13の下側に流れ落ちるため、上記のような外袋19の外部への水の流出を防止することができる。
【0034】
更に自己支持性枠体13の開口部12は、水袋16から流れ出た水の大部分を通過させて、その下側にある発熱剤11の上方に案内して接触させる働きをする。すなわち、発熱具10において、水袋16から流れ出た水は、例えば、上記の特許文献1の発熱具のように水袋と発熱剤袋との隙間、発熱剤袋とプレートとの隙間、あるいはプレートの周囲もしくは裏側(プレートと収納袋との隙間)に流れ込むことがなく、その大部分が開口部12を通過して発熱剤11に接触する。すなわち、前記の各特許文献に記載された従来の発熱具が持つ、発熱剤11と接触しない水を生じさせる原因となる隙間が存在しなため、発熱具10は、使用する発熱剤及び水の量に対して大きな発熱量を示す。
【0035】
また、自己支持性枠体13の開口部12は、発熱剤と水との接触により発生した水蒸気の大部分を通過させ、その真上にある外袋19の上面開口から効率良く流出させる働きもする。仮に、枠体13に開口部12が設けられていないと、発熱剤と水との接触により発生した水蒸気が、枠体13の下側からその外側周縁と外袋19との隙間を通り、その際に水蒸気が冷却されてその一部分が水に戻るため、外袋19の上面開口から流出する蒸気の量が少なくなる。
【0036】
自己支持性枠体13は、その開口部12に沿って設けられた、水の移動方向を案内するスカート部23a、23bを有していることが好ましい。このようなスカート部23a、23bを設けることにより、水袋16から流れ出た水が、各々のスカート部の表面に沿って移動して発熱剤11の上方に案内されると共に、この水が発熱剤と接触することにより発生した水蒸気の大部分を、枠体13の開口部12を通過させて外袋19の上面開口から流出させることができる(枠体13の外側周縁と外袋19との隙間を通る水蒸気の量を少なくすることができる)ため、食品をより短時間で加熱することができる。
【0037】
また、上記のように発熱剤11が透水性袋体21に収容されている場合に、この袋体21とスカート部23a、23bとを図2に示すように接着テープ24で固定すると、発熱剤11を収容した袋体21の外袋19の内部での移動を防止することができ、また水との反応により発熱剤11の体積が膨張した場合であっても、各々のスカート部が枠体13の開口部12との接続部を中心に揺動可能であるため、接着テープ24がスカート部23a、23bから剥がれることなく、発熱剤11が収容された袋体21を枠体13の開口部12の下側に安定に配置しておくことができる。
【0038】
自己支持性枠体13は、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂に代表される樹脂材料、あるいは厚紙や段ボールなどから形成される。自己支持性枠体13は、厚紙もしくは段ボール製であることが好ましい。これにより、枠体13を、上記のスカート部23a、23b、そして後述の脚部35及び延長部36と共に一枚の段ボールシートから容易に組み立てることができるようになり、また発熱具の廃棄も容易になる。
【0039】
そして、本発明の発熱具10においては、水袋16から流れ出た水の大部分が枠体13の開口部12を通過するため、枠体13には水が殆ど接触しない。このため、枠体13が厚紙もしくは段ボール製である場合であっても、枠体13が水を殆ど吸収しない(但し、発熱具にて発生した水蒸気は徐々に吸収する)ため、発熱剤及び水の量に対する発熱量が大きく低下することはない。
【0040】
なお、枠体の「自己支持性」とは、発熱具を使用する際に長尺状開封具を引っ張り、この枠体に力が加わった場合に、枠体が折れ曲がったり、あるいは大きく湾曲したりしない程度に自己の形状を保つことのできる程度の強度を持つことを意味する。このような強度を持つか否かは、枠体に開封具を接続して引っ張り、この枠体に力を加えることで容易に確認できる。なお、段ボール製の枠体を用いる場合には、枠体が高い強度(上記自己支持性)を示すように、段ボールのフルートの長さ方向を長尺状開封具を引っ張る方向と一致させることが好ましい。
【0041】
自己支持性枠体13の強度は、枠体の材料、厚み、あるいは開口部の大きさなどによって容易に調節することができる。例えば、上記のような段ボール製の枠体は、その厚みが1mm程度(そのフルートの長さ方向を長尺状開封具を引っ張る方向に一致させた場合)もあれば十分な自己支持性を示す。
【0042】
この自己支持性枠体13の上には、枠体13の一辺13aに固定された状態にて、易引裂き性かつ非透湿性の水袋16が載置される。
【0043】
この水袋16を形成するフィルムの透湿度が高いと、発熱具を製造してから使用する迄の間に、水袋16に封入されている水が外部に水蒸気として透過して、この水蒸気が外袋19の内部にある発熱剤11に接触するため、発熱具の使用時に十分な発熱量が得られなくなる場合がある。
【0044】
この水袋の「非透湿性」とは、発熱具を製造してから使用する迄の間に、水袋の水が水蒸気として外部に透過した場合であっても、使用の際に発熱具によって実用的な発熱量が得られる程度に、水袋が低い透湿度を持つフィルムから形成されていることを意味する。例えば、駅弁や仕出し弁当の加熱に用いる発熱具は、その製造後に比較的に速やかに使用されるが、災害時に被災者に供給される弁当の加熱に用いる発熱具は、災害に備えて予め大量に製造しておくことが必要であるため、使用する迄に長期間保管される場合が多い。従って、上記の災害時に用いる発熱具の水袋は、駅弁や仕出し弁当用の発熱具の場合と比較して、より低い透湿度を持つフィルムから形成することが必要である。
【0045】
水袋16を形成するフィルムとしては、通常、その透湿度が10g/(m2・24時間)以下のものが用いられ、この透湿度は0.01〜5.0g、更には0.01〜1.5、特に0.01〜0.50g/(m2・24時間)の範囲にあることが好ましい。前記のように、長期間保管される発熱具(例えば、上記の災害時に用いる発熱)の場合には、水袋を形成するフィルムの透湿度は0.01〜1.5、特に0.01〜0.50g/(m2・24時間)の範囲にあることが好ましい。なお透湿度は、温度40℃、湿度90%RHの条件にて日本工業規格の測定方法(JIS K 7129(B))に従って測定した値を意味する。
【0046】
水袋16を形成するフィルムの例としては、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルムもしくはポリ塩化ビニル樹脂フィルムなどの樹脂フィルム、アルミニウムなどの金属層が積層された樹脂フィルム(以下、金属層付き樹脂フィルムという)、あるいはこれらのフィルムの二以上を積層した積層フィルムから形成される。このようなフィルムの透湿度は、例えば、樹脂フィルムや金属層の材料や厚み、あるいはフィルムの層構成によって容易に調節することができる。
【0047】
水袋16は、金属層付き樹脂フィルムから形成されていることが好ましい。金属層は水蒸気を殆ど透過させないため、水袋16を、低透湿で且つ開封具による引き裂きが容易な厚みの薄いフィルムから形成することができるからである。図1及び図2に示す発熱具10の水袋16(および後述の易引裂き性且つ非透湿性の外袋19)を形成するフィルムとしては、厚みが12μmのアルミ蒸着ポリエステルフィルム(金属層付き樹脂フィルム)の蒸着面に、厚みが60μmのポリプロピレンフィルムをラミネートした市販の積層フィルム(透湿度:0.2g/(m2・24時間))が用いられている。
【0048】
また、水袋の「易引裂き性」とは、発熱具を使用する際に使用者が長尺状開封具を手で引っ張った際に、この水袋に加わる力によって水袋を引き裂き可能であることを意味しており、例えば、図2〜図4に示すように、水袋16に開封具18による引き裂きを補助する切り込み16aが設けられた状態にて引き裂き可能であることも含まれる。そして、水袋の引き裂きを容易にするため、上記の水袋を形成する樹脂フィルムは、一軸延伸処理されたものであることが好ましい。
【0049】
図2〜図4に示すように、発熱具10の水袋16は、枠体13の一辺13aに、例えば、ステープラの綴じ針25によって固定されている。また、上記の水袋16の引き裂きを補助する切り込み16aに長尺状開封具18を通し、この切り込み16aの端部近傍を綴じ針25で固定しておくと、開封具18が切り込み16aから外れることがないため、水袋16を確実に引き裂くことが可能になる。水袋16と枠体13の固定方法に特に制限はなく、例えば、両者を接着テープ(あるいは接着剤)を用いて互いに固定してもよい。
【0050】
そして、発熱具10の水袋16と外袋19の上面との引き裂きに用いる長尺状開封具18の一方の端部18bは、枠体13の上記の水袋16が固定された辺13aに対向する辺13bに固定され、他方の端部18aは、枠体13と水袋16との間を通り、枠体13の辺13aの位置から上に伸び、水袋16の上面に沿って、上記一方の端部18bが固定された枠体13の辺13bを超えて伸びている。
【0051】
この長尺状開封具18としては、長尺状の紐あるいはテープが用いられる。開封具18として長尺状で広い幅(例えば、2〜3cm)を持つテープを用いると、テープによって外袋19の上面が大きく引き裂かれるため、外袋19の上面開口からより多くの量の蒸気を流出させることができる。長尺状のテープは、例えば、樹脂フィルムや合成紙から形成することが好ましい。
【0052】
長尺状開封具18の端部18bと枠体13との固定方法に特に制限はなく、例えば、図2及び図4に示すように枠体13の辺13bに切り込み28を設け、この切り込み28に開封具18の結び目を引っ掛けて固定してもよいし、接着テープやステープラの綴じ針などを利用して固定してもよい。
【0053】
そして、上記の発熱剤11、枠体13及び水袋16から構成される積層体17と長尺状開封具18とは、開封具18の他方の端部18aを外側に引き出した状態にて易引裂き性かつ非透湿性の外袋19に封入される。
【0054】
この外袋の「易引裂き性」は、水袋の場合と同様に開封具により引き裂可能であることを意味し、また「非透湿性」とは、使用の際に発熱具によって実用的な発熱量が得られる程度に、外袋が低い透湿度を持つフィルムから形成されていることを意味する。外袋の形成に用いるフィルムの例は、水袋の場合と同様である。
【0055】
図2及び図3に示すように、外袋19には長尺状開封具18の端部18aを外側に引き出すための切り込み19aが形成されている。この外袋19に、積層体17を、開封具18の端部18aが切り込み19aを通して外側に引き出された状態にて収容したのち、例えば、熱融着によって外袋19の開口を閉じ、切り込み19aに接着テープ(好ましくは金属層を備える低透湿度を示すもの)26を貼り付け、そして開封具18の引き出し部分を公知の樹脂(例、アクリル樹脂系あるいはエポキシ樹脂系の低透湿性を示す接着剤)27で塞ぐことにより、外袋19に積層体17を封入することができる。外袋19としては、上記の切り込み19aに代えて、長尺状開封具18の端部18aを引き出すための孔部が形成されたものを用いてもよい。
【0056】
また、図2に示すように、発熱具10の自己支持性枠体13は、その水袋16が固定された辺13aから下側に伸びる脚部35と、脚部35の下側から枠体13と平行に伸びる延長部36とを備えていることが好ましい。後に説明するように、この延長部36を利用することによって、発熱具10を、例えば、弁当箱の底に接着固定することが容易になり、これにより長尺状開封具18を引っ張る際に発熱具10の弁当箱内部での移動が防止される。このため、長尺状開封具18を用いて水袋16と外袋19の上面とを更に確実に開封することができるようになる。
【0057】
図5は、本発明の食品加熱容器の構成例を示す断面図である。図5の食品加熱容器30は、上面が開口し、側壁に孔部31を有する箱体32、箱体32の底部に収容されている発熱具10、発熱具10の上に配置されている食品トレイ33、そして箱体32の開口を塞ぐ蓋体34から構成される食品加熱用の容器であり、その発熱具10として図1及び図2に示す本発明の発熱具が用いられ、その長尺状開封具18の上記他方の端部18aが箱体32の孔部31を通って外部に引き出されていることに特徴がある。
【0058】
この食品加熱容器30が備える発熱具10の長尺状開封具18の端部18aの側を、図に記入した矢印51が示す方向に引っ張ることにより、上記のように発熱具10の水袋と外袋19の上面とが引き裂かれ、外袋19の上面開口から蒸気が流出する。この蒸気は、図に記入した矢印52が示すように、食品トレイ33の周縁部に設けられた孔部33aを通過して、例えば、食品トレイに入れたご飯38を加熱したのち、蓋体34に設けられた孔部34aを通って外部に流れ出る。このような食品加熱容器30の箱体32、食品トレイ33及び蓋体34の材料や構成等は、従来の発熱具を備える加熱容器で用いられているものと同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0059】
そして、上記のように食品加熱容器30が備える本発明の発熱具10の長尺状開封具18を引っ張った際には、その枠体の端部の側(図5において右側)が箱体32の右側の側壁内側面に接触し、水袋を支持固定している自己支持性枠体の位置が固定されるため、水袋と外袋の上面とが確実に引き裂かれる。
【0060】
発熱具10は、その外袋19の外側表面の一部にて箱体32に固定されていることが好ましい。発熱具10と箱体32とが互いに固定されていると、発熱具10が箱体32の内部で移動できなくなるため、開封具18により更に確実に水袋と外袋の上面とを引き裂くことができるようになる。
【0061】
更に、上記のように発熱具10の枠体13に、図2に示すような脚部35と延長部36とが備えられていると、例えば、図5に示すように、両面接着テープ37(あるいは接着剤)を発熱具10の延長部に対応する外袋19の外側表面に付設したのち、発熱具を箱体32の底に収容し、その延長部上方の位置に力を加えて箱体の底に押し付けることにより、発熱具10と箱体32とを確実且つ容易に接着固定することができる。
【0062】
前記のように、本発明の発熱具は、各種のサイズの弁当箱に応じて柔軟にサイズを変更できる汎用性に優れたものであるため、例えば、少量生産する弁当(例えば、季節限定の弁当)についても、これに応じたサイズの発熱具を低価格にて提供できる。また、本発明の発熱具は、使用する発熱剤や水の量に対する発熱量が大きいため、そのサイズ(特に厚み)を小さくすることができる。このため、本発明の発熱具は、多様なサイズの容器に入れられて販売され、通常、高さの低い容器が好ましく用いられる惣菜についても、これに応じたサイズ(特に小さい厚み)を持つ発熱具を低価格にて提供できる。このように、本発明の発熱具を用いることにより、これまで発熱具の使用に適していなかった季節限定の弁当や惣菜等を、食前に加熱して温かい状態で消費者に提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の発熱具の構成例を示す斜視図である。
【図2】図1に記入した切断線II−II線に沿って切断した発熱具10の断面図である。
【図3】図2に示す発熱具10の積層体17を外袋19に収容する前の状態を示す斜視図である。
【図4】図3に示す積層体17の分解斜視図である。
【図5】本発明の食品加熱容器の構成例を示す断面図である。
【図6】従来の発熱具の構成例を示す分解斜視図である。
【図7】従来の発熱具の別の構成例を示す分解斜視図である。
【図8】従来の発熱具の更に別の構成例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
10 発熱具
11 発熱剤
12 開口部
13 自己支持性枠体
13a、13b 枠体の辺
14 袋体
15 水
16 水袋
16a 切り込み
17 積層体
18 長尺状開封具
18a、18b 長尺状開封具の端部
19 外袋
19a 切り込み
21 袋体
22 発熱剤袋
23a、23b スカート部
24 接着テープ
25 綴じ針
26 接着テープ
27 低透湿性樹脂
28 切り込み
30 食品加熱容器
31 孔部
32 箱体
33 食品トレイ
33a 孔部
34 蓋体
34a 孔部
35 脚部
36 延長部
37 両面接着テープ
38 ご飯
51、52 矢印
60 発熱具
61 発熱剤袋
62 水袋
63 紐
63a 紐の端部
64 プレート
70 発熱具
71 粒状の発熱剤
72 水袋
73 紐
73a 紐の端部
74 支持材
75 ケース
76 防湿シート
77 水蒸気透過シート
80 発熱具
81 発熱部材
82 水袋
82a シール部
82b 切り込み
83 テープ片
85 収納袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水との接触により発熱する発熱剤、該発熱剤の上に配置されている、中央に開口部を有する自己支持性枠体、そして該枠体の一辺に固定された状態にて該枠体の上に載置されている、易引裂き性かつ非透湿性の袋体に水を封入した水袋からなる積層体、該積層体の自己支持性枠体の上記の辺に対向する辺に一方の端部が固定され、他方の端部が枠体と水袋との間を通り、該枠体の前者の辺の位置から上に伸び、水袋の上面に沿って、上記一方の端部が固定された枠体の辺を超えて伸びている長尺状開封具、そして上記積層体及び長尺状開封具を、該開封具の上記他方の端部を外側に引き出した状態で封入する易引裂き性かつ非透湿性の外袋からなる発熱具。
【請求項2】
発熱剤が透水性袋体に収容されている請求項1に記載の発熱具。
【請求項3】
自己支持性枠体が、その開口部に沿って設けられた、水の移動方向を案内するスカート部を有する請求項1もしくは2に記載の発熱具。
【請求項4】
自己支持性枠体が厚紙もしくは段ボール製である請求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載の発熱具。
【請求項5】
外袋及び袋体の各々が、金属層が積層された樹脂フィルムからなる請求項1乃至4のうちのいずれかの項に記載の発熱具。
【請求項6】
上面が開口し、側壁に孔部を有する箱体、該箱体の底部に収容されている発熱具、該発熱具の上に配置されている食品トレイ、そして該箱体の開口を塞ぐ蓋体からなる食品加熱用の容器であって、該発熱具が請求項1乃至5のうちのいずれかの項に記載の発熱具であり、その長尺状開封具の上記他方の端部が箱体の孔部を通って外部に引き出されていることを特徴とする食品加熱容器。
【請求項7】
発熱具がその外袋の外側表面の一部にて箱体に固定されている請求項6に記載の食品加熱容器。
【請求項8】
発熱具が、その自己支持性枠体の水袋が固定された辺から下側に伸びる脚部と該脚部の下側から枠体と平行に伸びる延長部とを持ち、該延長部の下面に対応する外袋の外側表面にて箱体に接着され固定されている請求項6に記載の食品加熱容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−35919(P2008−35919A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210225(P2006−210225)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(596064857)株式会社ヨシザワ (11)
【Fターム(参考)】