説明

発熱具

【課題】使用時の清涼感がよく、保存中の清涼感の変質が起こりにくい発熱具を提供すること。
【解決手段】発熱具100は、被酸化性金属及び活性炭を含む発熱部121と、少なくとも一部に通気性を有し、かつ発熱部121を収容する袋体110とを備える。発熱具100は、以下の成分A及び成分Bを含有する香料組成物によって賦香されている。成分A及び成分Bの質量の総和と活性炭の質量との比率[(成分A+成分B)/活性炭]が0.04〜0.2である。香料組成物は、発熱部121と袋体110との間に施されていることが好適である。
〔成分A〕環状エーテル構造を有するモノテルペノイド。
〔成分B〕環状ケトン構造を有するモノテルペノイド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体に装着して用いられる発熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、人体の皮膚に適用される温熱水蒸気の発生体を種々提案した(例えば特許文献1及び2参照)。
【0003】
例えば特許文献1は、目及び目の周囲に適用される目枕本体と冷却体又は温熱水蒸気発生体からなる冷却・温熱目枕にかかる発明であり、目枕本体にリラックス感、リフレッシュ感、入眠感を誘発する香気成分、例えばラベンダー、ジャスミン、ミント、ローズ等の芳香性のある化合物を付与することが記載されている。特許文献2には、化粧料成分や薬剤成分を分散させた水蒸気発生体が記載されており、例えばユーカリエキス等の薬剤成分を水に溶解させるか又は水に分散させて水蒸気発生組成物中に添加できることが記載されている。
【0004】
これらの文献とは別に、特許文献3には、ガス透過性の扁平状包装袋内に、空気との接触により発熱する発熱組成物と、メントール、ショウノウを主成分とした薬効組成物と、芳香性の香料とを混合充填してなる芳香性発熱包装体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−245915号公報
【特許文献2】特開2001−187727号公報
【特許文献3】特開昭62−153216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1及び2に記載の水蒸気発生体や特許文献3に記載の発熱包装体のように、鉄粉等の被酸化性金属を含む発熱組成物は、一般に、酸化反応の促進剤として活性炭も含有している。このような発熱組成物と、上述のような一般的な香気成分とを単純に共存させると、香気成分の種類によっては発熱組成物に含まれる活性炭に吸着してしまい、水蒸気発生体等の使用時における香気成分の揮散量が十分とならない場合がある。特に、香気成分が清涼感を呈する成分の場合は、単純に付与量を増やして吸着分を補おうとすると、製造直後の製品は刺激感が強すぎて好ましくない場合がある。また、清涼感を呈する成分は一般に複数の化合物の混合物であるところ、成分の種類によって活性炭への吸着性が相違することに起因して、仕込み段階における成分の組成が変化し、使用時の清涼感と刺激感のバランスが仕込み段階と相違する場合もある。
【0007】
本発明の課題は、前述した従来技術よりも性能が更に向上した清涼感を呈する発熱具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、被酸化性金属及び活性炭を含有する発熱具に対し、特定の2成分を含有する香料組成物を用いることで、その相乗効果により、保存中の清涼感の質の変化を効果的に防止し得、清涼感が維持できることを見出した。
すなわち、本発明は、被酸化性金属及び活性炭を含む発熱部と、少なくとも一部に通気性を有し、かつ該発熱部を収容する袋体とを備え、以下の成分A及び成分Bを含有する香料組成物によって賦香されており、成分A及び成分Bの質量の総和と活性炭の質量との比率[(成分A+成分B)/活性炭]が0.04〜0.2である発熱具を提供するものである。
〔成分A〕環状エーテル構造を有するモノテルペノイド。
〔成分B〕環状ケトン構造を有するモノテルペノイド。
【0009】
また本発明は、被酸化性金属及び活性炭を含む発熱部が、着用者の肌面に近い側の少なくとも一部に通気性を有する収容体に収容されてなり、該肌面と反対の面が、以下の成分A及び成分Bを含有する香料組成物によって賦香されてなり、成分A及び成分Bの質量の総和と活性炭の質量との比率[(成分A+成分B)/活性炭]が0.04〜0.2である発熱体を提供するものである。
〔成分A〕環状エーテル構造を有するモノテルペノイド。
〔成分B〕環状ケトン構造を有するモノテルペノイド。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用時の清涼感が良好に呈され、保存中に清涼感の質の変化が起こりにくく清涼感が維持された発熱具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の発熱具の一実施形態としての蒸気温熱具を示す平面図である。
【図2】図1に示す実施形態の蒸気温熱具の分解斜視図である。
【図3】図1に示す実施形態の蒸気温熱具の長手方向に沿う断面図である。
【図4】図1に示す実施形態の蒸気温熱具における発熱体の平面図及び断面図である。
【図5】図1に示す実施形態の蒸気温熱具の別の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の発熱具の一実施形態としての蒸気温熱具100の平面図が示されている。この蒸気温熱具100は、いわゆるアイマスクタイプのものであり、ヒトの両目に当接させて、所定温度に加熱された水蒸気(以下、「蒸気温熱」とも言う。)を目及びその周囲に付与するために用いられるものである。この蒸気温熱具100は成分A及び成分Bを含有する香料組成物を特定量用いて賦香されている。
【0013】
蒸気温熱具100は本体部101と耳掛け部102とを有している。本体部101は、長手方向Xとこれに直交する幅方向Yを有する横長の形状をしている。本体部101は略長円形をしている。耳掛け部102は一対で用いられ、各耳掛け部102は本体部101の長手方向(X方向)の各端部にそれぞれ取り付けられている。蒸気温熱具100は、各耳掛け部102を着用者の耳に掛けて、本体部101で着用者の両目を覆うように装着される。この着用状態下、蒸気温熱具100から発生した蒸気温熱が着用者の目に施され、また清涼感を呈する成分が揮発し、それらによって目の疲れや充血、眼精疲労が緩和され、また爽快感とともにリラックス感が得られる。
【0014】
図2には、蒸気温熱具100の分解斜視図が示されている。同図においては、耳掛け部102は本体部101上に配置されている。また図3には、蒸気温熱具100のX方向に沿う断面図が示されている。蒸気温熱具100の本体部101は、大別して1個の袋体110と2個の発熱体120とから構成されている。各発熱体120は袋体110内に収容されている。
【0015】
袋体110は、着用者の肌に近い側に位置する第1の伸縮性シート111と、着用者の肌から遠い側に位置する第2の伸縮性シート112を有している。2枚の伸縮性シート111,112は同形であり、略長円形をしている。そして、伸縮性シート111,112の外形が本体部101の外形をなしている。2枚の伸縮性シート111,112はそれらを重ね合わせ、それらの周縁部を接合し、かつX方向の中央部をY方向に沿って接合することで、内部に2つの空間を有する袋体110となされる。伸縮性シート111,112を接合するためには、例えばホットメルト粘着剤を用いることができる。図2には、第2の伸縮性シート112の内面(第1の伸縮性シート111との対向面)においてホットメルト粘着剤が塗布された領域が、細かいドットで示されている。
【0016】
第1及び第2の伸縮性シート111,112は少なくとも一方向に伸縮性を有する。伸縮性シート111,112が一方向にのみ伸縮性を有する場合、本体部101の長手方向(X方向)又は幅方向(Y方向)と一致することが好ましい。伸縮性シート111,112が互いに直交する二方向に伸縮性を有する場合、該方向は、本体部101の長手方向及び幅方向とそれぞれ一致することが好ましい。ここで、伸縮性シートとは、伸長及び伸長回復性(収縮性)のいずれか一方又は両方の性質を有するシートを包含する。例えば、伸縮性シート111,112の少なくとも一方が、一方向に伸長性を有するものであれば良く、また伸縮性シート111,112の一方が伸長性を有し、他方が伸長及び伸長回復性を有するものであっても良い。
【0017】
袋体110には、そのX方向に延びる2つの長辺の中央部の位置において、該長辺からY方向に沿って内方に切れ込んだ略V字形のノッチ部113a,113bが形成されている。ノッチ部113a,113bは、切れ込みの程度が異なっている。ノッチ部113aは、蒸気温熱具100を装着したときに、着用者の眉間又はその近傍に位置する。ノッチ部113bは、蒸気温熱具100を装着したときに、着用者の鼻梁に位置する。したがって、ノッチ部113aよりもノッチ部113bの方が切れ込みの程度が大きくなっている。なお、図1に示すノッチ部113a,113bは、それらの少なくとも一方がスリットであってもよい。
【0018】
図4(a)及び(b)には、発熱体120の平面図及び断面図が示されている。発熱体120は平面視して略正方形をしている。発熱体120は、発熱部121及び該発熱部121を収容する収容体122を備えている。収容体122は扁平なものであり、その外形は発熱体120の外形をなしている。収容体122は、複数のシート材が貼り合わされることで、発熱部121が収容される密閉空間が形成されたものである。扁平な形状を有する収容体122は、着用者の肌に近い側に位置する第1の面123、及びそれと反対側であり、使用者の肌から遠い側に位置する第2の面124を有している。
【0019】
収容体122はその周縁に、第1の面123及び第2の面124をそれぞれ構成するシート材の周縁部を互いに接合して形成された閉じた形状の周縁接合部125を有している。周縁接合部125は連続に形成されている。収容体122は、周縁接合部125よりも内側の部分において第1の面123と第2の面124とが非接合状態になっている。それによって収容体122には、発熱部121を収容する単一の密閉空間が形成されている。
【0020】
収容体122における第1の面123は空気及び水蒸気の透過が可能なように通気性を有している。一方、第2の面124は、第1の面123よりも難通気性であるか、又は非通気性である。第1の面123は単一のシート材から構成されている。第2の面124は、2枚のシート材の積層体から構成されている。第1の面123を構成するシート材は、例えば透湿フィルムからなる。第2の面を構成するシート材は、例えば第1の面123を構成する透湿フィルムよりも透湿度の低い透湿フィルム又は非透湿フィルムと紙との積層体からなる。この場合、紙が外方(つまり第2の伸縮性シート112側)を向くように配置される。
【0021】
図3及び図4には、袋体110と発熱体120との固定の状態が示されている。発熱体120は、袋体110における第2の伸縮性シートの112の内面と、固定部103a,103bの位置において固定されている。各固定部103a,103bは、長手方向及び短手方向を有する異方性のある形状をしている。各固定部103a,103bの長手方向は、袋体110の主たる伸長方向(すなわち同図中、X方向)と交差(好ましくは直交)するように延びている。また、各発熱体120において、各固定部103a,103bは、袋体10の主たる伸長方向(すなわち同図中、X方向)と直交する方向(すなわち同図中、Y方向)に延びる中心線である縦中心線L(図1参照)からみて、最も近い位置に設けられている。この位置に固定部103a,103bが設けられていることによって、蒸気温熱具100をX方向に伸長させて装着した場合に、左右の目の上に発熱体120が首尾よく位置するようになる。図3及び図4において、固定部103a,103bは異方性のある形状をしているが、伸縮性シート111,112の特性に影響しない範囲で発熱体120と袋体110が一部で固定されていれば、固定部103a,103bの形状はドット状や点でもよい。また固定部103a,103bによる発熱体120の固定位置は、発熱体120の中央部や縦中心線Lから離れた位置でもよく、あるいは縦中心線Lと直交してもよい。
【0022】
蒸気温熱具100における耳掛け部102は、その使用前の状態では、図2及び図3に示すように、本体部101における伸縮性シート111上に配置されている。蒸気温熱具100を使用するときには、図1に示すように、耳掛け部102をX方向の外方へ向けて反転させて、開いた状態にする。使用前の状態、すなわち左右の耳掛け部102が本体部101上に位置している状態においては、左右の耳掛け部102によって形成される輪郭は、本体部101の輪郭とほぼ同じになっている。
【0023】
以上の構成を有する蒸気温熱具100によれば、伸縮性を有する袋体110は、発熱体120の各辺から外方に延出した部分が伸縮可能であるとともに、各固定部103a,103bを除く両者の重なり合い部も伸縮可能になっている。したがって、袋体110の伸びしろを大きくとることができる。その結果、蒸気温熱具100は良好なフィット性を示す。しかも、発熱体120は、袋体110の内面に固定されているので、発熱体120の位置ずれが防止され、発熱体120は、蒸気温熱を施したい部位(すなわち目及びその周囲)にとどまることになる。この観点から、各固定部103a,103bにおいては、該固定部103a,103bの形成によって袋体110の伸縮性が失われており、伸縮性を発現しないことが好ましい。各固定部103a,103bにおいて袋体110の伸縮性を失わせるためには、例えば該固定部103a,103bを、接着剤やヒートシール等によって形成すればよい。更に、本体部101が伸縮性を有することで、耳掛け部102を耳に掛けたときに耳に加わる荷重が、着用者の顔のサイズに起因する影響を受けにくくなるという利点もある。
【0024】
本実施形態の蒸気温熱具100は、上述した構造上の特徴を有することに加え、清涼感を呈する香料の中でも特定の構造を有する2成分の総和を活性炭に対して特定比率にて用いることで賦香されていることに関しても特徴を有している。具体的には、蒸気温熱具100は、以下の成分A及び成分Bを含む香料組成物を特定量用いて賦香されている。
〔成分A〕環状エーテル構造を有するモノテルペノイド。
〔成分B〕環状ケトン構造を有するモノテルペノイド。
【0025】
後述するように、蒸気温熱具100における発熱部は活性炭を含有するところ、活性炭は香気成分の一部を吸着することがある。このことに起因して、蒸気温熱具100の使用時において清涼感が低下してしまう場合や、保存中に清涼感の質が変化する場合がある。しかし、本発明者らの検討の結果、香料組成物として、前記の成分A及び成分Bを活性炭に対して特定比率にて含有するものを用いることで、保存中の清涼感の質の変化を効果的に防止し得るため、清涼感が維持し得、蒸気温熱具100の使用時における清涼感と刺激感のバランスが非常に良好となり得ることが判明した。すなわち、成分A及び成分Bの質量の総和と活性炭の質量との比率[(成分A+成分B)/活性炭]が0.04〜0.2である。更に好ましくは0.1〜0.19、また更に好ましくは0.15〜0.18である。
【0026】
前記の成分Aの環状エーテル構造を有するモノテルペノイドは、炭素数が10のテルペン類で、かつ、分子内に3〜6員環のエーテル構造を有する化合物であることが好ましい。この化合物として、例えば1,8−シネオール、1,4−シネオール、ネロールオキサイド、ミロキサイド、ローズオキサイド、リメトール、メントフラン、リナロールオキサイドなどを用いることができる。成分Aは1種類でも良いが2種類以上を組み合わせても良い。
【0027】
一方、前記の成分Bの環状ケトン構造を有するモノテルペノイドは、炭素数が10のモノテルペノイドで、かつ、分子内に5〜6員環構造を有し、環状分子に酸素分子が二重結合で結合した化合物であることが好ましい。この化合物として、例えばカンファー、メントン、カルボン、プレゴン、ピペリトン、フェンチョンなどを用いることができる。成分Aは1種類でも良いが2種類以上を組み合わせても良い。
【0028】
成分A及び成分Bの総和は、発熱具全体の質量に対して好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.03〜3質量%の含有量であると良い。このように比較的少量の使用であっても、活性炭に対する比率が前述のとおりであれば、十分に満足すべき結果が得られる。
【0029】
前記香料組成物中における成分Aと成分Bとの質量比(A/B)は、清涼感の強さや成分A、成分Bそれぞれを単独で使用した場合に比べて、成分Aと成分Bを組み合わせることによって感じられる香りのバランスや質の良さから、9〜1.5が好ましく、5〜2が更に好ましく、4〜3が一層好ましい。
【0030】
本発明において用いられる香料組成物は、成分A及び成分Bを前記特定量含むものあるいは前記特定量含むよう組み合わせて用いればいずれでも良く、例えば、精油を用いることもできる。そのような精油としては、例えば天然精油の一種であるユーカリオイル、ローズマリーオイル、ラベンダーオイル、ローズオイル、ライムオイル、ペパーミントオイル、スペアミントオイルなどが挙げられる。保存中の清涼感の質の変化の確実な防止や清涼感の維持の観点からは、香料組成物中の成分A及びBの質量の総和が50質量%以上、特に70質量%以上、とりわけ80質量%以上であることが好ましい。もちろん、香料組成物として成分A及び成分Bのみ(つまり100%)を用いてもよい。
本発明で用いられる香料組成物は、清涼感を呈する成分としての前記の成分A及び成分Bを含むとともに、これとは別の清涼感を呈する成分である以下の成分Cの含有量が少ないことが、蒸気温熱具100の使用時における清涼感及び保存中の清涼感の質の変化の防止や清涼感の維持の観点から有効である。この観点から、香料組成物に以下の成分Cが含まれる場合には、該成分Cの含有量は、発熱体の活性炭に対して5.5質量%以下、特に4.5質量%以下、とりわけ3.5質量%以下であることが好ましい。もちろん最も好ましいのは、香料組成物が成分Cを実質的に含んでいないことである。
〔成分C〕メントール類。
【0031】
前記のメントール類としては、l−メントール及びdl−メントールに加え、メントールの類縁化合物が挙げられる。該類縁化合物としては、酢酸メンチル、、乳酸メンチル、コハク酸モノメンチル等が挙げられる。
【0032】
本発明で用いられる香料組成物を調合する場合、前記の成分A及び成分B以外に、例えば「合成香料 化学と商品知識」(印藤元一著 化学工業日報社)に記載の香料成分を、本発明の効果を妨げない範囲で配合することもできる。具体的には、ヘキシルシンナミックアルデヒド、2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)−プロパナール、4−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、バニリン等のアルデヒド類;アネトール、オイゲノール等のフェノール類;γ―ノナラクトン、γ―ウンデカラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0033】
本発明で用いられる香料組成物には、前記の成分A及び成分Bに加え、本発明の効果を妨げない範囲であれば、更に溶剤等が配合されていてもよい。使用可能な溶剤としては、エタノール、プロピレングリコール、トリアセチン、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、エチルジグリコール、イソプロピルミリステート、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート及びジエチルフタレート等が挙げられる。例えば、賦香する際に、香料組成物をスプレー等で直接添加する方法のほか、香料組成物を溶剤等に溶解して添加する方法がある。更に、粉体や油脂の担体に賦香して、粉末香料やペースト状の賦香物とする方法を採用することができる。
【0034】
香料組成物は一般に液状物である。香料組成物は、種々の手段で蒸気温熱具100に施すことができる。香料組成物の清涼感が十分になり、また清涼感の質の変化を効果的に防止し得、清涼感の維持し得る観点からは、香料組成物は、発熱部121と袋体110との間に施されていることが好ましい。この場合、袋体110を構成する第1及び第2の伸縮性シート111,112のうち、第1の伸縮性シート111と発熱部121との間に香料組成物を施してもよく、第2の伸縮性シート112と発熱部121との間に香料組成物を施してもよい。特に、香料組成物は、発熱体120における収容体122の外面に施されていることが好ましい。とりわけ、第2の伸縮性シート112と発熱部121との間に位置する第2の面124(図4(b)参照)の外面に香料組成物が施されていると、香料組成物の清涼感が非常に高くなり、また清涼感の質の変化や清涼感の維持を一層効果的に防止できるので好ましい。
【0035】
先に述べたとおり、発熱体120の収容体122における第2の面124は、内側に位置する透湿フィルム又は非透湿フィルムと、外側に位置する紙との積層体からなるところ、香料組成物は最外面を構成する材料である紙に施されていることが好ましい。これによって、賦香を容易に行うことができるとともに、発熱部121に含まれる活性炭による影響を極力低減することができる。この場合、香料組成物を施す紙の種類に特に制限はなく、木材パルプを主たる原料とする一般的な紙を用いることができる。また、賦香可能な材質であれば、紙のほか不織布、織布等の繊維材料により構成されたシート材や、多孔質性フィルム等、吸湿・吸油性を有するシートも使用できる。
【0036】
本実施形態の変形例として、図5に示す実施形態を採用することもできる。図5に示す実施形態においては、袋体110における第2の伸縮性シート112と、発熱体120との間に、香料組成物がシート材料に施されてなる賦香シート130が配されている。賦香シート130は、第2の伸縮性シート112及び発熱体120の収容体122と非接合状態になっているか、又は位置ずれが起こらない程度に軽度に接合されている。図5に示す実施形態によっても、上述の実施形態と同様の効果が奏される。
【0037】
賦香シート130を構成するシート材料としては、液状物である香料組成物を保持し得るものが用いられる。そのような材料としては、例えば紙、不織布、織布等の繊維材料が好適に用いられる。シート材料は、収容体122と同形でもよく、あるいは収容体122よりも小さな形状のものでもよい。
【0038】
次に蒸気温熱具100を構成する主たる部材の材料について説明する。袋体110を構成する第1及び第2の伸縮性シート111,112としては、少なくとも一部に通気性を有する伸縮性材料であればその種類に特に制限はない。袋体110、特に第1の伸縮性シート111は着用者の身体に直接触れるものなので、風合いの良好な材料から伸縮性シート111,112を構成することが好ましい。伸縮性シートとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリアクリル等からなる合成繊維;セルロース、シルク、コットン、ウール等からなる天然繊維;又はそれらを複合した繊維等から構成される。あるいは、伸縮性シートとしては、2種以上の繊維を用いて、エアスルー法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、メルトブローン法、カード法、熱融着法、水流交絡法、溶剤接着法により製造された不織布を用いることができる。また、不織布以外に、編み物地等も使用できる。特に、風合いや、弾力性の観点から、伸縮性シート111,112として伸縮性を有する不織布を用いることが好ましい。伸縮性を有する不織布としては、構成繊維として弾性繊維(例えば、ポリウレタン、ポリエステル)を含むエアスルー不織布やスパンボンド不織布等が好ましく、風合いの観点から不織布をシリコーンや界面活性剤等で表面処理したものを使用することもできる。2枚の伸縮性シート111,112は同種のものでもよく、あるいは異種のものでもよい。
【0039】
伸縮性シート111,112が不織布である場合、肌に対する感触を良好にするためには、該不織布111,112の坪量や厚み、構成繊維の太さを適切に選択すればよい、この観点から、伸縮性シート111,112は、その坪量が10〜200g/m2、特に20〜130g/m2の不織布からなることが好ましい。また、保温及び結露防止の観点から、伸縮性シート112は、坪量30g/m2以上であることが好ましく、使用時の温感の観点から伸縮性シート111は、坪量130g/m2以下であることが好ましい。保温・使用時の温感・使用感から、坪量は、肌に遠い側の伸縮性シート112が肌に近い側の伸縮性シート111と同じか又はそれよりも大きい方が好ましい。
【0040】
伸縮性シート111,112は、最も伸縮する方向における50%伸長時の荷重が10N/5cm以下、特に6N/5cm以下、とりわけ2N/5cm以下であることが好ましい。最も伸縮する方向における50%伸長時の荷重をこの範囲に設定することによって、小さな力で大きく伸長することができるので、蒸気温熱具100を装着した状態での突っ張り感を低減させることができる。この荷重の下限値に特に制限はなく、小さければ小さいほど好ましい。
【0041】
50%伸長時の荷重の測定方法は次のとおりである。伸縮性シート11,12をその最も伸長する方向へ10cm、それと直交する方向へ5cmの寸法で矩形状に切り取り測定片を得る。測定片を、チャック間距離5cmで引張試験機に取り付け、速度10cm/minで伸長させる。そして、50%伸長時(元の長さの1.5倍の長さに伸ばしたとき)の荷重を測定する。測定は3回行い、その平均値を算出する。
【0042】
次に、発熱体120について説明する。発熱体120においては、第1の面213及び第2の面124の通気度を適切に調整することで、第1の面123を通じて水蒸気が優先的に放出されるように構成されている。具体的には、第2の面の通気度は、第1の面の通気度よりも大きい。ここで、通気度はJIS P8117によって測定される値であり、一定の圧力のもとで100mlの空気が6.42cm2の面積を通過する時間で定義される。したがって、通気度が大きいことは空気の通過に時間がかかること、即ち通気性が低いことを意味している。逆に、通気度が小さいことは通気性が高いことを意味している。このように、通気度の大小と通気性の高低とは逆の関係を示す。本実施形態において、第1の面213及び第2の面124の通気性を比較すると、第1面123の方が、第2の面124と同じか又はそれよりも高くなっている。すなわち、先に述べたとおり、第2の面124は非通気性であるか、又は難通気性(即ち、通気性を有するものの、第1の面123よりも低い通気性を有している)である。
【0043】
収容体122は、通気面である第1の面123と、それに対向する非通気面である第2の面124とを有する扁平な形態をしており、通気面である第1の面123を通じて蒸気温熱が発生するようになされている。あるいは、収容体122は、通気面である第1の面123と、それに対向する難通気面である第2の面124とを有する扁平な形態をしており、通気面である第1の面123を通じて蒸気温熱が発生するようになされている。第2の面124が難通気性である場合、第1の面123と第2の面124の通気度をバランスさせることで、空気は第2の面124を通じて優先的に収容体122内に流入するとともに、水蒸気は第1の面123を通じて優先的に放出される。
【0044】
第2の面124が難通気性である場合、該第2の面124を通じての空気の流入を確保しつつ、該面124を通じての水蒸気の放出を抑制させる観点から、第2の面124の通気度を、第1の面123の通気度の5倍以上、特に10倍以上とすることが好ましい。あるいは、第1の面123の通気度と第2の面124の通気度との比(第1の面/第2の面)を0.5以下、特に0.2以下とすることも好ましい。これによって、第2の面124を通じての水蒸気の放出を一層減じさせることができ、かつ第1の面123を通じての水蒸気の放出を一層増加させることができる。一方、第2の面124が非通気性である場合、収容体122内への空気の流入、及び水蒸気の発生は、専ら第1の面123を通じて行われる。
【0045】
第2の面124が難通気性である場合、該面124の通気度を、5000秒以上とすることが好ましく、10000秒以上とすることが更に好ましく、20000秒以上とすることが一層好ましく、30000秒以上とすることが更に一層好ましい。一方、第1の面123の通気度は、第2の面124が非通気性であるか又は難通気性であるかを問わず、1000〜50000秒であることが好ましい。
【0046】
発熱体20における第1の面123及び第2の面124はいずれもシート材から構成されている。通気度を支配しかつ粉体の漏れ出しを防止するシート材としては、メルトブローン不織布や透湿性フィルムが好適に用いられる。透湿性フィルムは、熱可塑性樹脂及び該樹脂と相溶性のない有機又は無機のフィラーの溶融混練物をフィルム状に成形し、一軸又は二軸延伸して得られたものであり、微細な多孔質構造になっている。種々の通気度及び透湿度を有するシート材を組み合わせて積層シートを構成することで、第1の面123及び第2の面124の通気度を所望の値に設定する自由度が増す。先に述べたとおり、第2の面124は積層構造になっており、最外面が紙から構成されていると好ましい。
【0047】
発熱体120における発熱部121は、被酸化性金属、活性炭、電解質及び水を含む。そのような発熱部121は、例えば発熱シート又は発熱粉体の形態を取っている。発熱部121が発熱シートの形態の場合には、発熱シートは、被酸化性金属、活性炭、繊維状物、電解質及び水を含む含水状態の繊維シートであることが好ましい。すなわち、発熱シートは、被酸化性金属、活性炭及び繊維状物を含有する成形シートに、電解質水溶液を含有させて構成されていることが好ましい。発熱シートとしては、湿式抄造により得られたシート状物や、発熱粉体を紙等で挟持してなる積層体等が挙げられる。そのような発熱シートは、例えば本出願人の先の出願に係る特開2003−102761号公報に記載の湿式抄造法や、ダイコーターを用いたエクストルージョン法を用いて製造することができる。一方、発熱部121が発熱粉体の形態の場合には、発熱粉体は被酸化性金属、活性炭、電解質及び水を含んで構成されていることが好ましい。発熱シート及び発熱粉体のうち、着用者がどのような姿勢であっても水蒸気を均一に適用し得る点から、発熱シートを用いることが好ましい。また、発熱シートは、発熱粉体に比較して、発熱の温度分布を均一化することが容易であり、また、被酸化性金属の担持能力が優れている点からも有利である。
【0048】
発熱部121が発熱シートの形態の場合、該発熱シートは60〜90質量%の被酸化性金属、5〜25質量%の活性炭及び5〜35質量%の繊維状物を含む成形シートに、該成形シート100質量部に対して、1〜15質量%の電解質を含む電解質水溶液が30〜80質量部含有されて構成されていることが好ましい。一方、発熱部121が発熱粉体の形態の場合、該発熱粉体は、20〜50質量%、特に25〜40質量%の被酸化性金属、及び、3〜25質量%、特に5〜20質量%の活性炭を含む固形分100質量部に対して、0.3〜10質量%、特に0.5〜5質量%の電解質を含む電解質水溶液が20〜70質量部、特に30〜60質量部含有されて構成されていることが好ましい。発熱シートや発熱粉体を構成する各種材料としては、通常用いられているものと同様のものを用いることができる。また、先に述べた特開2003−102761号公報に記載の材料を用いることもできる。すなわち、被酸化性金属としては例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、カルシウム等の粉末や繊維が挙げられる。これらの中でも取り扱い性、安全性、製造コストの点から鉄粉が好ましく用いられる。被酸化性金属が粉末である場合その粒径は0.1〜300μmであることが好ましく、特に粒径が0.1〜150μmものを50重量%以上含有するものを用いることも好ましい。活性炭として例えば、椰子殻炭、木炭粉、暦青炭、泥炭、亜炭等が挙げられ、本発明において、被酸化性金属への酸素保持/供給剤として機能する。被酸化性金属と効果的に接触し得る点から、その粒径は0.1〜500μmであることが好ましく。特に0.1〜200μmのものを50質量%以上含有することが好ましい。電解質としては水に電解して被酸化金属の酸化を促進するものであれば如何なるものでも良いが、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は重金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物若しくは水酸化物等が挙げられ、中でも、導電性、化学的安定性、生産コストに優れる点から塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化鉄(第1、第2)等の各種塩化物が好ましく用いられる。
【0049】
本実施形態の蒸気温熱具100は、その使用前は、その全体が酸素バリア性を有する包装材(図示せず)によって包装されて、発熱部21が空気中の酸素と接触しないようになっている。酸素バリア性の材料としては、例えばその酸素透過係数(ASTM D3985)が10cm3・mm/(m2・day・MPa)以下、特に2cm3・mm/(m2・day・MPa)以下であるようなものが好ましい。具体的にはアルミニウムフィルム等の金属や、ポリオレフィン等のプラスティックの単層フィルムのほか、エチレン−ビニルアルコール共重合体やポリアクリロニトリル等のフィルム、又はそのようなフィルムにセラミック若しくはアルミニウム等を蒸着したフィルムが挙げられる。
【0050】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態の蒸気温熱具100は、これを着用者の両目に当接させて使用するものであったが、これに代えて、これを着用者の身体、例えば肩、腰、肘、膝等に貼り付けて用いてもよい。あるいは衣類に貼り付けて用いてもよい。蒸気温熱具100を着用者の身体に貼り付ける場合には、耳掛け部102に代えて、袋体110における第1の伸縮性シート111の表面に、粘着剤等からなる固定手段を設ければよい。衣類に貼り付ける場合には、袋体110における第2の伸縮性シート112の表面に、同様の固定手段を設ければよい。
【0051】
また前記の実施形態は、本発明の発熱具を蒸気温熱具に適用した例であるが、本発明は、蒸気温熱具以外の発熱具、例えば使い捨てカイロとして知られている、水蒸気の発生を実質的に伴わずに発熱する身体加温用の発熱具にも同様に適用することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0053】
〔実施例1ないし6及び比較例1ないし6〕
図1ないし図4に示す構造の蒸気温熱具を以下の(1)ないし(3)の手順で作製した。
(1)シート状発熱部121の作製
<原料組成物配合>
・被酸化性金属:鉄粉、同和鉱業株式会社製、商品名「RKH」:78.5%
・繊維状物:パルプ繊維(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名 NBKP「Mackenzi(CSF200mlに調整)」):13%
・活性炭:平均粒径45μm、(日本エンバイロケミカル株式会社製、商品名「カルボラフィン」)8.5%
【0054】
前記原料組成物の固形分(被酸化性金属、繊維状物及び活性炭の合計)100部に対し、カチオン系凝集剤であるポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(星光PMC(株)製、商品名「WS4020」)0.7部及びアニオン系凝集剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)製、商品名「HE1500F」0.18部を添加した。更に、水(工業用水)を、固形分濃度が12%となるまで添加しスラリーを得た。
【0055】
<抄造条件>
前記スラリーを用い、これを抄紙ヘッドの直前で0.3%に水希釈し、傾斜型短網抄紙機によって、ライン速度15m/分にて抄紙して湿潤状態の成形シートを作製した。
【0056】
<乾燥条件>
成形シートをフェルトで挟持して加圧脱水し、そのまま140℃の加熱ロール間に通し、含水率が5%以下になるまで乾燥した。乾燥後の坪量は450g/m2、厚さは0.45mmであった。このようにして得られた成形シートの組成を熱重量測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6200)を用いて測定した結果、鉄78.5%、活性炭13%、パルプ8.5%であった。
【0057】
<シート状発熱部121の作製>
得られた成形シートに、該成形シート100部に対し電解液量が42部となるように、下記電解液を注入した。毛管現象を利用して成形シート全体に電解液を浸透させて、矩形のシート状発熱部121(坪量:460g/m2、寸法49mm×49mm)を得た。
【0058】
<電解液>
電解質:精製塩(NaCl)
水:工業用水
電解液濃度:5%
【0059】
(2)発熱体120の作製
収容体122における第1の面123を、炭酸カルシウムを含む多孔質の延伸ポリエチレン透湿性フィルム(通気度2,500秒)から構成した。第2の面124は、ポリエチレン製の非透湿フィルムの一面にティッシュペーパーを接着剤でラミネートしたものを用いた。上述のシート状発熱部121の1枚を間にして、第1の面のフィルムと第2の面のフィルムとを、ティッシュペーパーが外方を向くように重ね、周縁部においてフィルムどうしを接合し、矩形の発熱体120を得た。そしてティッシュペーパーに、以下の表1及び表2に示す各香料成分を含浸させた。
【0060】
(3)蒸気温熱具100の作製
第1及び第2の伸縮性シート111,112として、ポリエチレンテレフタレート不織布(ニードルパンチ法、坪量100g/m2、厚さ0.72mm;呉羽テック(株))を用い、図2に示すように、両伸縮性シート111,112の間に、前記で得られた発熱体120を2個挟み、周縁部において伸縮性シート111,112どうしを接合した。また、発熱体120と第2の伸縮性シート112とを、図1及び図3に示す符号103a,103bの位置において接合した。更に、第1のシート111の外面に、図2に示すように耳掛け部102を取り付け、目的とする蒸気温熱具100を得た。以上の各操作は、酸素が存在しない雰囲気下に行った。伸縮性シート111,112は、図1中、X方向に伸縮可能なものであり、50%伸長時の荷重は0.8N/5cmであった。得られた蒸気温熱具100を、酸素バリア性を有する個装袋(PET13μm/アルミニウム7μm/ポリプロピレン40μmの積層フィルム)の中に封入した。
【0061】
個装袋に封入された蒸気温熱具を、香料成分の安定化のため一晩放置した。一晩放置した蒸気温熱具(これを賦香直後の蒸気温熱具という)、並びに50℃及び5℃の恒温槽で1週間、2週間及び4週間保存した蒸気温熱具について、個装袋を開封して、蒸気温熱具の発熱及び水蒸気発生を開始させた。そして、開封から3分後における香料組成物の清涼感の強さを以下の基準で評価した。また、
50℃の恒温槽で1週間、2週間及び4週間保存した蒸気温熱具について、香料組成物の刺激感を以下の基準で評価した。更に、総合判定を以下の基準で行った。それらの結果を以下の表1及び表2に示す。
【0062】
〔香料組成物の清涼感の強さの変化及び刺激感の評価〕
匂いの専門パネル2名に実施例及び比較例の蒸気温熱具の香りを嗅がせ、量的な変化について清涼感を0〜6までの7段階絶対評価させせた。また、刺激感を、◎○×の3段階で評価させた。
<清涼感の評価基準:7段階絶対評価>
0:無臭
1:ごくわずかに匂う
2:弱く匂う
3:はっきり匂う
4:強く匂う
5:かなり強く匂う
6:非常に強く匂う
<刺激感の変化の評価基準:3段階絶対評価>
◎:良好な刺激
○:少々強い刺激
×:非常強い刺激
【0063】
〔総合判定〕
上述の香料成分の評価において、清涼感及び刺激感の変化のいずれか一方の好ましくないものを×とし、それ以外を○とした。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
表1及び表2に示す結果から明らかなように、各実施例の蒸気温熱具(本発明品)は、これを長期間保存した後でも、清涼感及び刺激感のいずれについても、賦香直後に対して大きな変化せず、非常に良好な清涼感及び刺激感が維持された。一方、活性炭に対して成分A及び成分Bの量が多量である比較例1の蒸気温熱具は、刺激感が強く良好な清涼感が得られなかった。活性炭に対して成分A及び成分Bの量が少量である比較例2の蒸気温熱具は、清涼感非常に弱く好ましくなかった。また、成分A及び成分Bを含有する香料組成物のかわりに、成分Cの量が多量の比較例3は、賦香直後は清涼感を示すものの、時間が経過するとともに急激にその清涼感は失われてしまった。成分Aのみを含有する香料組成物を用いた比較例4の蒸気温熱具は、清涼感はやや持続するが香りにボリュームがなくなり清涼感の質のバランスが悪くなってしまった。成分Bのみを含有する香料組成物を用いた比較例5及び6の蒸気温熱具も、清涼感がなくなり、また香りのバランスもよくなくなり清涼感の質が悪くなってしまった。
【符号の説明】
【0067】
100 蒸気温熱具
101 本体部
102 耳掛け部
110 袋体
111 第1の伸縮性シート
112 第2の伸縮性シート
120 発熱体
121 発熱部
122 収容体
123 第1の面
124 第2の面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被酸化性金属及び活性炭を含む発熱部と、少なくとも一部に通気性を有し、かつ該発熱部を収容する袋体とを備え、以下の成分A及び成分Bを含有する香料組成物によって賦香されており、成分A及び成分Bの質量の総和と活性炭の質量との比率[(成分A+成分B)/活性炭]が0.04〜0.2である発熱具。
〔成分A〕環状エーテル構造を有するモノテルペノイド。
〔成分B〕環状ケトン構造を有するモノテルペノイド。
【請求項2】
前記香料組成物中における成分Aと成分Bとの質量比(A/B)が9〜1.5である請求項1記載の発熱具。
【請求項3】
前記香料組成物が、前記発熱部と前記袋体との間に施されている請求項1又は2に記載の発熱具。
【請求項4】
前記発熱部が、少なくとも一部に通気性を有する収容体内に収容されて発熱体を構成しており、該収容体の外面に前記香料組成物が施されている請求項3記載の発熱具。
【請求項5】
前記収容体の最外面が紙から構成されており、該紙に前記香料組成物が施されている請求項4記載の発熱具。
【請求項6】
前記発熱部が、少なくとも一部に通気性を有する収容体内に収容されて発熱体を構成しており、該発熱体と前記袋体の間に、前記香料組成物がシート材料に施されてなる賦香シートが配されている請求項5記載の発熱具。
【請求項7】
被酸化性金属及び活性炭を含む発熱部が、着用者の肌面に近い側の少なくとも一部に通気性を有する収容体に収容されてなり、該肌面と反対の面が、以下の成分A及び成分Bを含有する香料組成物によって賦香されてなり、成分A及び成分Bの質量の総和と活性炭の質量との比率[(成分A+成分B)/活性炭]が0.04〜0.2である発熱体。
〔成分A〕環状エーテル構造を有するモノテルペノイド。
〔成分B〕環状ケトン構造を有するモノテルペノイド。
【請求項8】
請求項7に記載の発熱体が、少なくとも一部に通気性を有する袋体に収容されてなる発熱具。
【請求項9】
香料組成物が、直接又は溶剤とともに発熱体に賦香されている請求項4又は8に記載の発熱具。
【請求項10】
前記香料組成物が以下の成分Cを含有しないか、又は含有したとしても該成分Cの含有量が、該発熱体の活性炭の質量に対して5.5質量%以下である請求項1〜6、8、9のいずれかに記載の発熱具。
〔成分C〕メントール類。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−160885(P2011−160885A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24679(P2010−24679)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】