説明

発熱性透光シートおよび発熱性透光膜屋根構造物

【課題】可視光領域の透過性が高く、しかも近赤外線を吸収して昇温する透光シート、および、結露発生を防止し、かつ、屋根上の着雪状態を逐次コントロール可能な膜屋根構造物の提供。
【解決手段】本発明の発熱性透光シートは、熱変換性樹脂層を有する光線透過シートであって、この熱変換性樹脂層が、合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島相構造を有し、この海島相構造において、海成分相または島成分相の、いずれか一方の相が、近赤外線吸収性無機化合物微粒子、及び近赤外線吸収性有機色素から選ばれた少なくとも一種の近赤外線吸収性物質を含有する相で、もう一方の相が、光拡散性物質からなる粒子を含有することによって得られ、さらに、その発熱性透光シートを用いて構築した膜構造物において、発熱性透光シートに近赤外線を照射することで、近赤外線を熱エネルギーに変換し、内部の結露発生を防止し、かつ、屋根上の着雪状態を逐次コントロール可能な透光膜屋根構造物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線を吸収して昇温する発熱性透光シートと、そのシートを用いた発熱性透光膜屋根構造物に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、可視光領域の透過性が高く、アミューズメントスペース、イベントスペース、雨天運動場、テント倉庫、イベント向けテント、農園芸ハウスなどの膜構造物、及びこれらの明かり採り構造に好適に用いることの出来る発熱性透光シートと、それを膜構造物屋根材に用い、近赤外線を照射したときに、その光線透過シートが近赤外線を熱エネルギーに変換することで、近赤外線を吸収して発熱して、内部の結露発生を防止し、さらに屋根上の降雪を逐次融解除去することの出来る、発熱性透光膜屋根構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テント倉庫、イベント向けテント、作業用テント、農園芸ハウス、アミューズメントスペース、イベントスペース、雨天運動場など、繊維織物と合成樹脂による複合シート材で覆われた膜構造物は、フレキシブルで組立や施工が容易であり、屋外での耐久性が高い理由で広く用いられている。しかし、特にこれらの用途で、密閉空間を構築する膜構造物においては、季節によってシートの内側表面に結露を発生することがある。この結露の滴下は、テント倉庫であれば保管中の商品を濡らしたり、農園芸ハウスにおいては葉や果実を変色させたり病害を発生させるなどの問題を有している。また、これらの膜構造物への降雪により、屋根部が雪の重みで変形したり、積雪により太陽光の透過が遮られて内部環境を暗くすることがしばしばあった。
【0003】
結露に関しては、シートに断熱層、例えば発泡樹脂層を設けることで、シート内側表面温度の低下が少なくなり、結露を抑えることが可能となるが、十分な効果を得るためには数ミリ〜1センチ程度の発泡樹脂層が必要であり、膜構造物を形成するシートとしては実用性に欠けるものであった。また、シート内側に吸水能力を有する層を設けることで結露水を吸収し、結露を防止する試みも開示されている。(例えば特許文献1および2参照)しかし、その吸水能力には限界があり、一定量の水分しか吸収できず、これによりシートが重くなり、更にはカビが生え易いという問題があった。また、シート内側表面を親水性にし、水滴の発生を抑制する試みも開示されている。(例えば特許文献3参照)この方法によれば、付着した水分が濡れ拡がり、水滴を形成しにくくはなるが、結露水を地面に逃がすための誘導構造が必要となり、膜構造物内部の外観を悪くする。
【0004】
積雪に関しては、足場の無い膜構造物上に人が登って直接人力で雪を下ろすことは危険である。積雪地帯では屋根を急角度にして重力落下させるなどの対策も可能であるが、雪が滅多に降らない地域でこのような設計の実施は困難である。またフッ素樹脂の滑り易さを利用して雪を落下させる試みも行われているが(例えば特許文献4参照)、使用経過に伴いフッ素樹脂コーティング表面に煤塵汚れが付いた状態では初期のような落雪効果が得られなくなることがあった。また、赤外線吸収層を有するシートを用い、太陽光線を受けてシートの温度を上げ、積雪を溶かしながら落として除去する方法も提案されている。(例えば特許文献5参照)しかし、夜間の降雪や長時間にわたる降雪では、太陽光線の効果を利用することは困難である。更に、屋根材にヒーターを組み込むことで着雪を防止する方法も提案されている(例えば特許文献6参照)が、装置や費用が大掛かりとなり、膜構造物の屋根部を重くすると同時に、採光性を損なう問題を有していた。
【0005】
以上述べた様に現在までのところ、結露発生を防止し、屋根上の着雪状態をコントロールすることが出来、しかも高い採光性を得られる膜構造物は存在しておらず、従って、結露発生を防止し、かつ、屋根上の着雪状態を逐次コントロール可能なシートを用いることによって、それにより得られる膜屋根構造物が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−024439号公報
【特許文献2】特開平05−336846号公報
【特許文献3】特開平07−102094号公報
【特許文献4】特開平04−085369号公報
【特許文献5】特開2006−009452号公報
【特許文献6】特開平10−292565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題を解決すべく、採光性(可視光線の透過性)に優れ、近赤外線を吸収して昇温する発熱性透光シートを提供し、それを膜構造物屋根材に用い、近赤外線を照射したときに、その光線透過シートが近赤外線を熱エネルギーに変換することで、内部の結露発生を防止し、さらに屋根上の降雪を逐次融解除去することの出来る発熱性透光膜屋根構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討の結果、熱変換性樹脂層を有する光線透過シートにおいて、前記熱変換性樹脂層を合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島相構造とし、前記海島相構造において、海成分相または島成分相の、いずれか一方の相が、近赤外線吸収性無機化合物微粒子、及び近赤外線吸収性有機色素から選ばれた少なくとも一種の近赤外線吸収性物質を含有する相で、もう一方の相が光拡散性物質からなる粒子を含有することで、高い透光性を有しながら、近赤外線を吸収した際の発熱性が、樹脂層全体にこれらの近赤外線吸収性物質を含有させるのと同等以上となる発熱性透光シートが得られ、それを膜構造物屋根材に用い、近赤外線を照射したときに、その光線透過シートが近赤外線を熱エネルギーに変換することで、その熱によって膜構造物内部の結露発生を防止し、屋根上に降った雪を逐次融解除去することの出来る発熱性透光膜屋根構造物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明の発熱性透光シートは、熱変換性樹脂層を有する光線透過シートであって、前記熱変換性樹脂層が、合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島相構造を有し、前記海島相構造において、海成分相または島成分相の、いずれか一方の相が、近赤外線吸収性無機化合物微粒子、及び近赤外線吸収性有機色素から選ばれた少なくとも一種の近赤外線吸収性物質を含有する相で、もう一方の相が、光拡散性物質からなる粒子を含有することが好ましい。本発明の発熱性透光シートは、光線透過シートの最外層に防汚層が設けられていることが好ましい。本発明の発熱性透光シートは、前記防汚層の表面における水との静止接触角が、15〜50°であることが好ましい。本発明の発熱性透光シートは、前記防汚層の表面における水との静止接触角が、80〜110°であることが好ましい。本発明の発熱性透光シートは、前記近赤外線吸収性無機化合物微粒子が、タングステン酸化物、複合タングステン酸化物、6ホウ化物(一般式XBで表され、XはY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Ba、SrおよびCaから選択される1種または2種の元素)、及びハイドロタルサイト類から選ばれた一種以上を含むことが好ましい。本発明の発熱性透光シートは、前記近赤外線吸収性有機色素が、フタロシアニン系化合物、ナフトールキノン系化合物、イモニウム系化合物、アントラキノン系化合物、アミニウム系化合物、及びニッケル−チオール系錯体化合物から選ばれた1種以上を含むことが好ましい。本発明の発熱性透光シートは、前期光拡散性物質からなる粒子が、セラミック粒子、干渉雲母粒子、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズおよび樹脂粒子から選ばれた少なくとも一種を含むことが好ましい。本発明の発熱性透光シートにおいて、前記光線透過シートが、粗目編織物を基布として含む積層体であることが好ましい。本発明の発熱性透光膜屋根構造物は、熱変換性樹脂層を有する光線透過シートを屋根材とする膜構造物であって、前記熱変換性樹脂層が、海島相構造を有し、前記海島相構造において、海成分相または島成分相の、いずれか一方の相が、近赤外線吸収性無機化合物微粒子、及び近赤外線吸収性有機色素から選ばれた少なくとも一種の近赤外線吸収性物質を含有し、もう一方の相が、光拡散性物質からなる粒子を含有することによって、前記光線透過シートに近赤外線を照射したときに、近赤外線を熱エネルギーに変換することが好ましい。本発明の発熱性透光膜屋根構造物は、前記光線透過シートの最外層に、防汚層が設けられていることが好ましい。本発明の発熱性透光膜屋根構造物は、前記光線透過シートが、粗目編織物を基布として含む積層体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可視光領域の透過性が高く、しかも近赤外線を効率よく吸収して発熱する発熱性透光シートの提供が可能となり、それを膜構造物屋根材に用い、発熱性透光シートに近赤外線を照射することで、シート内側表面の結露発生を防止し、屋根上への降雪を逐次コントロールして積雪荷重による構造物への負荷を防止でき、降雪時にも外からの明かりを確保可能な透光膜屋根構造物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の発熱性透光シートの一例を示し、熱変換性樹脂層が海島相構造を 有し、島成分相が近赤外線吸収性物質を含み、海成分相が光拡散性物質から なる粒子を含む状態を示す図
【図2】本発明の発熱性透光シートの一例を示し、熱変換性樹脂層が海島相構造を 有し、島成分相が光拡散性物質からなる粒子を含み、海成分相が近赤外線吸 収性物質を含む状態を示す図
【図3】本発明の発熱性透光膜屋根構造物の一例として、テント倉庫を示す図
【図4】本発明の発熱性透光膜屋根構造物の一例として、イベント向けテントを 示す図
【図5】本発明の発熱性透光膜屋根構造物の一例として、農園芸ハウスを示す図
【図6】実施例・比較例において発熱性を評価した構成を示す図
【図7】実施例・比較例において結露発生防止性を評価した構成を示す図
【図8】実施例・比較例において滑雪性を評価した構成を示す図
【図9】実施例・比較例において融雪性を評価した構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の発熱性透光シートは、熱変換性樹脂層を有する光線透過シートであって、その熱変換性樹脂層は、合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島相構造を有し、海島相構造の、海成分相または島成分相の、いずれか一方の相が、近赤外線吸収性無機化合物微粒子、及び近赤外線吸収性有機色素から選ばれた少なくとも一種の近赤外線吸収性物質を含有する相で、もう一方の相が、光拡散性物質からなる粒子を含有することで、高い透光性(可視光線の透過性)を有しながら、近赤外線を吸収した際の発熱性が樹脂層全体にこれらの近赤外線吸収性物質を含有させるのと同等以上となる発熱性透光シートが得られるものである。その形態は、樹脂シート(樹脂フィルム)、または、粗目編織物を基布として含む基布含有積層体である。樹脂シートはカレンダー成型法、Tダイス押出法、あるいはキャスティング法等の方法により成型することができ、発熱性透光シートが熱変換性樹脂層単層であっても良く、熱変換性樹脂層を含む複数の樹脂シートを積層した積層体であっても良い。基布含有積層体は、カレンダー成型法、Tダイス押出法またはキャスティング法等により成型されたフィルム又はシートを、粗目編織物の片面または両面に接着層を介在して積層する方法、あるいは粗目編織物の両面に目抜け空隙部を介して熱ラミネート積層する方法により製造することもでき、これらのフィルム又はシートに少なくとも1層の熱変換性樹脂層が含まれていれば良く、2層以上が熱変換性樹脂層であっても良い。本発明の発熱性透光シートの可視光透過率(JISZ8722.5.4(条件g))は、樹脂シートの場合40〜90%、基布含有積層体である場合30〜80%であることが好ましい。
【0013】
本発明において、熱変換性樹脂層は、合成樹脂ブレンドの溶融、または合成樹脂ブレンドの液状合成樹脂の攪拌混合物により公知の加工方法によって成型される。本発明で好ましく用いられる合成樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂(PE,PPなど)、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂(PET,PEN,PBTなど)、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など、可視光透過率が高く可撓性のある熱可塑性樹脂および硬化性樹脂が挙げられる。
【0014】
本発明における熱変換性樹脂層は、合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島相構造を有し、この合成樹脂ブレンドの組み合わせについて、非相溶であれば特に制限はない。非相溶の組合せ例としては、塩化ビニル樹脂とポリエチレン、塩化ビニル樹脂とポリプロピレン、塩化ビニル樹脂とスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂とスチレン系共重合樹脂、塩化ビニル樹脂とシリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂とフッ素含有共重合体樹脂、塩化ビニル樹脂とビニルエステル樹脂、ポリスチレンとポリエチレン、ポリスチレンとポリプロピレン、ウレタン樹脂とポリエチレン、ウレタン樹脂とポリプロピレン、ポリエステル樹脂とポリエチレン、ポリエステル樹脂とポリプロピレン、ポリアミドとポリカーボネート、アクリル樹脂とポリスチレン、アクリル樹脂とポリカーボネート、ポリアミドとポリスチレン、ポリアミドとポリプロピレンなど2種類の合成樹脂のブレンドが好ましい。これらの非相溶の可撓性樹脂対に対して、さらに別種の樹脂を含有することもできる。
【0015】
これらの非相溶混合物は相分離構造を示す白濁概観の海島相構造であることが好ましい。この海島相構造において海成分相と島成分相は種類の異なる樹脂で構成され、例えば合成樹脂Aと合成樹脂Bからなる非相溶混合物において、合成樹脂Aと合成樹脂Bとの比率設定により、海成分相を合成樹脂Aで構成し、島成分相を合成樹脂Bで構成することができ、また海成分相を合成樹脂Bで構成し、島成分相を合成樹脂Aで構成することもできる。また非相溶の熱可塑性樹脂対A−Bに対して、さらに別種の熱可塑性樹脂Cを含有する場合、海島相構造において島成分相が熱可塑性樹脂Bによる島成分相と熱可塑性樹脂Cによる島成分相で構成されてもよく、同様に島成分相が熱可塑性樹脂Aによる島成分相と熱可塑性樹脂Cによる島成分相で構成されてもよい。熱変換性樹脂層が海島相構造を有し、海成分相と島成分相のいずれか一方が近赤外線吸収性物質を含有する相で、もう一方の相が、光拡散性物質からなる粒子を含有することで、近赤外線が照射された際に、光拡散性物質からなる粒子を含有する相において近赤外線が散乱され、もう一方の相に含有された近赤外線吸収性物質が、近赤外線を効率良く吸収して熱エネルギーに変換する事ができ、樹脂層全体に近赤外線吸収性物質を含有させることなく高い発熱性が得られる。一方、光拡散性物質からなる粒子を含有する相において、可視光線の散乱を抑えることで、樹脂層全体に近赤外線吸収性物質を含有させるのに比べて、高い可視光透過率(JISZ8722.5.4(条件g))を得ることができる。
【0016】
島成分相を構成する合成樹脂の比率は、海成分相を構成する合成樹脂の体積に対して3〜50体積%が好ましく、5〜40体積%がより好ましい。海島相構造を有する熱変換性樹脂層全体に対する島成分含有率は2.9〜33.3体積%が好ましく、4.7〜28.6体積%がより好ましい。海島相構造を有する熱変換性樹脂層全体に対する島成分含有率が2.9体積%未満では、島成分相に近赤外線吸収性物質が含まれる場合の発熱効果が不十分になる事があり、海成分相に近赤外線吸収性物質が含まれる場合には、海島相構造を有さない場合と差が無くなる。一方島成分含有率が33.3体積%を超えると、熱変換性樹脂層の樹脂強度が低下し、得られるシートの強度や耐久性が低くなるので好ましくない。また島成分相の形状は球状、歪んだ球状、碁石状、ラグビーボール状などである。島成分相の平均粒子径は0.4〜30μmであり、特に1〜20μmが好ましい。島成分相の平均粒子径が0.4μmより大きいことによって、熱変換性樹脂層内部で近赤外線が散乱され、海成分相または島成分相が含有する近赤外線吸収性物質で吸収されやすくなり、一方可視光線の散乱は抑えられるため、高い可視光透過率を維持しながら良好な近赤外線吸収効果を得ることができる。島成分相の平均粒子径が0.4μm未満では、近赤外線の散乱が低下する一方可視光線の散乱が強くなり、近赤外線吸収効果と可視光透過率が低下する事がある。島成分相の平均粒子径が30μmを超えると、可視光線を反射して、可視光透過率が低下する事がある。本発明において海島相構造を有する熱変換性樹脂層の厚さは、0.03〜1.0mm、好ましくは0.05〜0.5mmである。熱変換性樹脂層の厚さが0.03mm未満では、十分な発熱が得られないことがあり、1.0mmを超えると、得られるシートの風合いが硬くなり、生産性及び取り扱い性に問題を生じることがある。
【0017】
本発明の熱変換性樹脂層において近赤外線吸収性無機化合物微粒子に用いられるタングステン酸化物は、WyOzで表記したとき(ただしW:タングステン、O:酸素)、2.2≦z/y<3.0である事が好ましい。三酸化タングステン(WO)中には有効な自由電子が存在しないため近赤外線領域の吸収特性が少なく、近赤外線吸収性物質としてはあまり有効ではない。z/yが2.2以上であれば、タングステン酸化物中にWOの結晶相が現れるのを回避することが出来ると伴に、材料としての化学的安定性を得ることが出来る。本発明において近赤外線吸収性無機化合物微粒子に用いられる複合タングステン酸化物微粒子は、式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Csの内から選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素)で表され、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3であることが好ましい。タングステン酸化物へ、元素Mを添加して複合タングステン酸化物とすることで、複合タングステン酸化物中に自由電子が生成され、近赤外線領域に自由電子由来の吸収特性が発現し、近赤外線吸収性物質として有効となる。ここで、元素Mの添加量を示すx/yの値が0.001より大きければ、十分な量の自由電子が生成され目的とする近赤外線吸収性を得ることが出来る。元素Mの添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、近赤外線吸収性も上昇するが、x/yの値が1程度で当該効果も飽和する。また、x/yの値が1より小さければ、当該近赤外線吸収性物質中に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。一方酸素量の制御を示すz/yの値については、上述したタングステン酸化物同様2.2≦z/y<3.0である事が好ましいが、複合タングステン酸化物の場合、z/y=3.0であっても、元素Mが加えられた事による自由電子の供給があるため、近赤外線吸収性物質として有効である。タングステン酸化物または複合タングステン酸化物の平均粒子径は、1〜1000nmである事が好ましく、2〜200nmであることがより好ましい。平均粒子径が1000nmを越えると、粒子を含む樹脂の隠蔽性が高くなり、可視光透過率が低下することがある。平均粒子径が小さいほど隠蔽性が低くなり、200nm以下であれば可視光透過率の高い熱変換性樹脂層を得ることができるが、1nm未満の粒子は入手が困難であり、また樹脂中への分散が困難である。海成分相または島成分相に含まれるタングステン酸化物または複合タングステン酸化物は、海成分相または島成分相を構成する合成樹脂100質量部に対して0.001〜5質量部が好ましく、0.005〜3質量部がより好ましい。0.001質量部未満では添加による近赤外線吸収効果が不十分となって、十分な近赤外線吸収性が得られないことがある。5質量部を超えて添加しても近赤外線吸収効果の向上はわずかであり、添加量が多くなることで透過色が濃い青色を示し、可視光透過率が低下し、かつ、経済的にも不利となる。
【0018】
本発明の熱変換性樹脂層において近赤外線吸収性無機化合物微粒子に用いられる6ホウ化物は、一般式XBで表される化合物である。(XはY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Ba、SrおよびCaから選択される1種または2種の元素、Bはホウ素)6ホウ化物は、近赤外線領域に吸収を有するため、添加することで発熱性を付与することができる。6ホウ化物粒子の平均粒子径は1〜800nmであることが好ましく、2〜200nmであることがより好ましい。平均粒子径が800nmを越えると、粒子を含む樹脂の隠蔽性が高くなり、可視光透過率が低下することがある。平均粒子径が小さいほど隠蔽性が低くなり、200nm以下であれば、より高い可視光透過率の熱変換性樹脂層を得ることができるが、1nm未満の粒子は入手が困難であり、また樹脂中への分散が困難である。海成分相または島成分相を構成する樹脂100質量部に対する6ホウ化物の添加量は0.001〜5質量部が好ましく、0.005〜3質量部がより好ましい。添加量が0.001質量部未満では添加による近赤外線吸収効果が不十分となって、十分な近赤外線吸収性が得られないことがある。5質量部を超えて添加しても近赤外線の吸収性向上効果はわずかであり、添加量が多くなることで透過色が濃い緑色を示し、可視光透過率が低下し、かつ、経済的にも不利となる。
【0019】
本発明の熱変換性樹脂層において近赤外線吸収性無機化合物微粒子に用いるハイドロタルサイト類化合物は、一般式[M2+1−x3+(OH)][An−x/n・mHO]で表される層構造を有する複水酸化物である。(式中M2+はMg2+、Fe2+、Zn2+、Ca2+、Li2+、Ni2+、Co2+、Cu2+等の2価の金属イオンを表し、M3+はAl3+、Fe3+、Mn3+、In3+、Ce3+等の3価の金属イオンを表し、An−はOH、F、Cl、Br、NO3−、CO2−、SO2−、Fe(CN)3−、CHCOO、シュウ酸イオン、サリチン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン等のn価の層間陰イオンを表し、x及びmはそれぞれ0<x<0.5、0≦m、の範囲にある)ハイドロタルサイト類化合物は、屈折率が1.5程度と一般的な樹脂の屈折率に近いため、ハイドロタルサイト類化合物と樹脂との界面での光散乱がほとんど無く、可視光領域の光の吸収がほとんど無いので、樹脂に添加しても色相の変化や可視光透過率の低下がほとんど無い。しかも赤外線領域に吸収を有するため、これを加えることで、色相や可視光透過率への影響を最小限に抑えながら、近赤外線の吸収性を向上させることができる。海成分相または島成分相を構成する樹脂100質量部に対するハイドロタルサイト類化合物の添加量は、0.1〜15質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。添加量が0.1質量部未満では添加の効果が得られないことがあり、15質量部を超えて添加しても近赤外線の吸収性向上効果はわずかであり、また、樹脂層が硬くなり柔軟性が損なわれる事がある。ハイドロタルサイト類化合物粒子の平均粒子径は0.01〜10μmであることが樹脂への分散性の観点から好ましく、0.1〜3μmがより好ましい。
【0020】
本発明において、上記タングステン酸化物、複合タングステン酸化物、6ホウ化物、およびハイドロタルサイト類化合物は、樹脂への分散性を向上させるために、表面をシリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、及び高級脂肪酸等で被覆されたものを用いても良い。
【0021】
本発明の熱変換性樹脂層において近赤外線吸収性有機色素として、フタロシアニン系化合物、ナフトールキノン系化合物、イモニウム系化合物、アントラキノン系化合物、アミニウム系化合物、及びニッケル−チオール系錯体化合物から選ばれた1種以上を用いることが好ましく、これらは特開昭51−135886号公報、特開昭56−143242号公報、特開昭58−13676号公報、特開昭60−23451号公報、特開昭61−115958号公報、特開昭63−295578号公報、特開平4−174402号公報、特開平5−93160号公報、特開平5−222302号公報、及び特開平6−264050号公報などに記されている公知の色素から選んで用いることができる。海成分相及び島成分相に含む近赤外線吸収性有機色素は、海成分相または島成分相を構成する合成樹脂100質量部に対して0.01〜3.0質量部であることが好ましく、特に0.1〜2.0質量部が好ましい。添加量が0.01質量部未満では近赤外線吸収効果が不十分となって、十分な発熱性が得られないことがある。3.0質量部を超えて添加しても近赤外線の吸収性向上効果はわずかであり、また、添加量が多くなることで透過色が濃い着色を示し、可視光透過率が低下することがある。
【0022】
本発明の熱変換性樹脂層において、海成分相あるいは島成分相の何れか一方の相に含有される近赤外線吸収性物質として、上記近赤外線吸収性無機化合物微粒子、及び近赤外線吸収性有機色素の中から選んだ1種のみを用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。2種以上を組み合わせて用いる場合、樹脂に含まれる近赤外線吸収性物質の量は、それぞれの特性に応じて決定する事が出来るが、海成分相または島成分相を構成する樹脂100質量部に対する個々の添加量が上記の範囲内で、かつ合計で0.01〜15質量部であることが好ましく、0.1〜6質量部がより好ましい。これらの近赤外線吸収性物質が、上記の添加量で海成分相あるいは島成分相の何れか一方の相のみに含有されることで、可視光線の透過を妨げずに、近赤外線を吸収して熱エネルギーに変換することができる。
【0023】
本発明の熱変換性樹脂層において、海成分相あるいは島成分相のいずれか一方の相が上記近赤外線吸収性物質を含有し、もう一方の相が、光拡散性物質からなる粒子を含有することで、光拡散性物質を含有する相で近赤外線を散乱し、近赤外線吸収性物質を含有する相で吸収する事ができ、この熱変換性樹脂層を有する光線透過シートに近赤外線を照射した際に、高い発熱性を得る事ができる。本発明において光拡散性物質としては、セラミックス粒子、干渉雲母粒子、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズおよび樹脂粒子から選ばれた少なくとも一種の光拡散性物質からなる粒子が好ましく用いられる。
【0024】
本発明に用いるセラミックス粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化タングステン(WO)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化スズ、酸化インジウム、二酸化ケイ素、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化リン、及び、ケイ化モリブデン等のセラミックス、あるいはそれらの複合セラミックスからなる粒子が好ましく用いられ、中でも、可視光領域に吸収が少なく屈折率の高い酸化チタン、酸化タングステン(WO)、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム(ジルコニア)が特に好ましく用いられる。セラミックス粒子の平均粒子径は、その屈折率によっても異なるが、0.3〜3.0μmである事が好ましく、0.4〜2.1μmであることがより好ましい。平均粒子径をこの範囲にすることで、光拡散性物資を含有する相における可視光線の散乱を抑え、かつ近赤外線を効果的に散乱することができる。セラミックス粒子の平均粒子径が3.0μmを越えると、粒子を含む樹脂の隠蔽性が高くなり、可視光透過率が低下することがあり、0.3μm未満であると近赤外線の散乱効果が不十分になり、しかも可視光線を散乱して可視光透過率が低下することがある。光拡散性物資を含有する相におけるセラミックス粒子の添加量は、相を構成する樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。添加量が0.01質量部未満では近赤外線散乱効果が不足し、十分な発熱性が得られないことがある。20質量部を超えて添加すると、可視光線透過率が低下することがあり、また、樹脂強度が低下して、得られる発熱性透光シートの耐久性に悪影響を及ぼすことがある。上記セラミックス粒子は、樹脂への分散性を向上させるために、表面をシリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、及び高級脂肪酸等で被覆されたものを用いても良い。なお、セラミックス粒子は樹脂に比べて熱伝導性が高く、これらを用いることで、熱変換性樹脂層の熱をより速やかに発熱性透光シート表面に伝えることができ、膜構造物に用いた場合、膜構造物内部の結露発生の防止や、屋根上の降雪の逐次融解除去を、更に効果的に行える様になる。
【0025】
本発明に用いる干渉雲母粒子としては、雲母粒子表面が、酸化チタン薄膜、又は酸化チタン/酸化ケイ素/酸化チタン(TiO/SiO/TiO)の3層による複層構造を有する薄膜で被覆された、光干渉性粒子であることが好ましい。干渉雲母粒子の平均粒子径は1〜100μmが好ましく、5〜60μmがより好ましい。平均粒子径が100μmを超えるとそれを含む樹脂が金属様の光沢を呈し、可視光透過率が低下することがあり、1μm未満では、近赤外線の散乱が十分に得られないことがある。光拡散性物資を含有する相における干渉雲母粒子の添加量は、相を構成する樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。添加量が0.01質量部未満では近赤外線散乱効果が不足し、十分な発熱性が得られないことがある。20質量部を超えて添加すると、可視光線透過率が低下することがあり、また、樹脂強度が低下して、得られる発熱性透光シートの耐久性に悪影響を及ぼすことがある。
【0026】
本発明に用いるガラスビーズとしては、中空ガラスビーズ、中実ガラスビーズが例示され、ガラス粒子としては、ガラス粉末、ガラスビーズ破砕体が例示される。本発明に用いる樹脂ビーズとしては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、エポキシ系樹脂等からなる樹脂ビーズが例示され、これらの樹脂ビーズはコア−シェル複層構造を有していてもよく、また架橋構造を有していてもよい。樹脂粒子は、これら樹脂ビーズを破砕して得られる不定形粒子である。ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズ、および樹脂粒子の平均粒子径は1〜20μmが好ましく、1〜8μmがより好ましい。平均粒子径が20μmを超えると、光拡散性物資を含有する相における可視光線の散乱が強くなり可視光透過率が低下する事があり、平均粒子径が1μm未満では、近赤外線の散乱が不十分になることがある。光拡散性物資を含有する相におけるガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズ、または樹脂粒子の添加量は、光拡散性物資を含有する相を構成する樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、1〜20質量部がより好ましい。添加量が0.1質量部未満では近赤外線散乱効果が不足し、十分な発熱性が得られないことがある。50質量部を超えて添加すると、可視光線透過率が低下することがあり、また、樹脂強度が低下して、得られる発熱性透光シートの耐久性に悪影響を及ぼすことがある。
【0027】
光拡散性物質からなる粒子は、上記のうち1種を選択して用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合、樹脂に含まれる光拡散性物質からなる粒子の量は、それぞれの特性に応じて決定する事が出来るが、近赤外線吸収性物質非含有相を構成する樹脂100質量部に対する個々の添加量が上記の範囲内で、かつ合計で0.01〜50質量部であることが好ましく、0.1〜20質量部がより好ましい。光拡散性物質からなる粒子の内、高屈折率のセラミックスである酸化チタン、酸化タングステン(WO)、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、及び干渉雲母粒子が特に好ましく用いられ、2種以上を組み合わせて用いる場合には、これらを含む組み合わせとする事が好ましい。
【0028】
本発明の熱変換性樹脂層は海島相構造を有し、海成分相または島成分相のいずれか一方の相のみに近赤外線吸収性物質を含むため、発熱性透光シートの色相に対する近赤外線吸収性無機化合物微粒子や近赤外線吸収性有機色素の影響は低く抑えられ、海成分相、及び/または、島成分相に更に顔料を加えて着色することも可能である。特に島成分相のみに近赤外線吸収性物質を含む熱変換性樹脂層は、近赤外線吸収性物質による着色が少ないため、顔料による着色の自由度が高く、好ましい。着色に用いる顔料には特に制限は無く、従来公知の有機顔料、無機顔料から適宜選択して用いることが出来、また、必要に応じて蛍光顔料、蓄光顔料、蛍光増白剤などを用いることも出来る。本発明の熱変換性樹脂層はまた、海成分相および島成分相にそれぞれ独立して、この他に公知の添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、可撓性付与剤、充填剤、接着剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、加工助剤、抗菌剤、防黴剤などが例示される。
【0029】
本発明の発熱性透光シートにおいて、経時的な汚れの付着による可視光透過率の低下を防止し、且つ美観を維持するために、光線透過シートの少なくともおもて側最外層に防汚層が設けられていることが好ましい。防汚層は発熱性透光シートの可視光透過性を損なわず、極度の隠蔽性を伴わないものである限り、その形成方法及び素材に特に限定はない。このような防汚層は例えば、溶剤に可溶化されたアクリル系樹脂もしくはフッ素系樹脂の少なくとも1種以上からなる樹脂溶液あるいは樹脂分散液を塗布して形成した塗膜、これらにシリカ微粒子、またはコロイダルシリカを含む塗膜、オルガノシリケート及び/又はその縮合体を含む塗布剤で塗布し親水性被膜層を形成したもの、光触媒性無機材料(例えば光触媒性酸化チタン)と結着剤とを含む塗布剤を塗布し光触媒層を形成したもの、少なくとも最外表面がフッ素系樹脂により形成されたフィルムを接着剤もしくは熱溶融加工により積層したもの、等から適宜選択することができる。光線透過シートと防汚層との間には、必要に応じて、光線透過シート表面と防汚層の接着性を向上するための接着層、防汚層が光触媒性物質を含む場合に光触媒によって樹脂が分解するのを妨げるための保護層、光線透過シートを構成する樹脂に含まれる添加剤が防汚層に移行するのを妨げるための添加剤移行防止層、等を形成してもよい。また、必要に応じて、上記の防汚層が形成された面とは反対の面に防汚層や、その他、発熱性透光シートの傷つきを防ぐための傷つき防止層、発熱性透光シートをロール状に巻き取って保管している間に、反対面側の樹脂層に含まれる添加剤が防汚層上に移行するのを防ぐための添加剤移行防止層、等を従来公知の方法で形成しても良い。
【0030】
本発明の発熱性透光シートにおいて、最外層に設けられる防汚層表面の水に対する静止接触角は15〜50°であることが好ましく、15〜30°がより好ましい。静止接触角が50°以下であることで、表面に汚れが付着した場合でも雨などによって洗い流されやすく、更に、汚れを含んだ雨が表面を流れる際に濡れ拡がりやすいため、筋状の汚れが残りにくい。また、降り始めの雪による溶水が発熱性透光シート表面に水膜を形成し、後からの降雪を効率的に溶かすことができる。静止接触角が15°〜50°であると、膜構造物において近赤外線が照射されていない時に降雪があった場合、雪が付着しやすく積雪を生じやすいが、近赤外線を照射して発熱性透光シートに触れている部分の雪を融かすことで、発熱性透光シート表面と雪との間に水膜が形成され、雪を容易に滑落させることができる。静止接触角が15°未満であると更に雪が付着しやすく、積雪をより生じやすくなり、近赤外線を照射してシートに触れた雪を融かしても、溶水が速やかにぬれ拡がってしまい、シート表面と雪との間に水膜が形成されにくく、雪が滑落するまでに時間を要する事がある。最外層に設けられる防汚層表面の水に対する静止接触角はまた、80〜110°であることも好ましく、95〜110°がより好ましい。静止接触角が80°以上であることで、表面に汚れが付着しにくく、汚れが付着しても落としやすい特性が得られる。更に、静止接触角が80°以上であることで雪が付着しにくく、膜構造物において近赤外線が照射されていない時に降雪があっても、初期的に積雪を生じにくく、また、多少の降雪があっても、近赤外線を照射して発熱性透光シートに触れている部分の雪を融かすことで、雪を滑落除去することができる。静止接触角が110°を超える防汚層は、フッ素系樹脂を用いても、溶液のコーティングやフィルムのラミネートなど通常の加工方法では困難であり、スパッタリングやメッキ法など特殊な加工方法を必要とするため汎用性が無く、たとえ静止接触角が110°を超えても、上記の効果はさほど向上しない。なお、防汚層表面の水に対する静止接触角が50°を超えて80°未満の場合だと、表面に汚れが付着しやすく、付着した汚れは落ちにくく、雨などによっても洗い流されにくいことがある。また、初期的に雪の付着を防止する効果が低く、近赤外線を照射して雪を融かしても、雪の滑り性が不十分で、滑落するまでに時間を要する事がある。
【0031】
本発明の発熱性透光シートの少なくともおもて面側は平滑であることが好ましく、その凹凸は十点平均粗さRz値(JIS B0601−1994)が30μm未満であることが好ましく、15μm未満であることがより好ましい。外部に面する表面が平滑であることで、近赤外線の照射によって上昇した熱が雪に伝わりやすくなり、融雪の効率が向上する。更に、降雪初期において雪が屋根上に留まり難くなり、積雪を生じにくくなる。この様な平滑な表面を得る方法としては、例えば、シートの一方の面を鏡面エンボスによって平滑にしたり、平滑な工程フィルム(例えばポリエステルフィルム)上に、カレンダー成型法、Tダイス押出法、キャスティング法等などによりシートを形成した後に、工程フィルムを剥離除去する方法などを例示することができる。
【0032】
本発明の発熱性透光シートは、強度、耐久性、寸法安定性などを付与するために、粗目編織物を基布として含む積層体である事が好ましい。ここで、粗目編織物としては、糸間間隙をおいて平行に配置された経糸及び緯糸を含む糸条により構成された粗目状の編織物(空隙率は最大90%、好ましくは5〜50%)を用いることができる。粗目編織物を構成する糸条としては、マルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条、モノフィラメント糸条、スプリットヤーン糸条、テープヤーン糸条などいずれであってもよいが、得られるシートの柔軟性及び強度の観点から、マルチフィラメント糸条が好ましい。粗目編織物に用いられる繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維などの合成繊維、木綿、麻などの天然繊維、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの無機繊維が挙げられ、これらは単独または2種以上からなる混用繊維によって構成されていてもよい。織布を用いる場合、平織、綾織、繻子織、模紗織などいずれの構造をとるものでもよいが、平織織物は、得られる発熱性透光シートの縦緯物性バランスに優れているため好ましく用いられる。編布を用いるときはラッセル編の緯糸挿入トリコットが好ましく用いられる。粗目編織物には必要に応じて撥水処理、吸水防止処理、接着処理、難燃処理などが施されていても良い。
【0033】
本発明の発熱性透光膜屋根構造物は、熱変換性樹脂層を有する光線透過シートを屋根材とする膜構造物であって、熱変換性樹脂層が、合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島相構造を有し、その海島相構造において、海成分相または島成分相の、いずれか一方の相が、近赤外線吸収性無機化合物微粒子、及び近赤外線吸収性有機色素から選ばれた少なくとも一種の近赤外線吸収性物質を含有し、もう一方の相が光拡散性物質からなる粒子を含有することで、近赤外線を照射したときに、近赤外線を熱エネルギーに変換して、内部の結露発生を防止し、屋根上に降った雪を逐次融解除去することが出来るものである。
【0034】
本発明において近赤外線とは、膜構造物内部に設置される近赤外線照射装置から照射される近赤外線のほか、太陽光に含まれる近赤外線も包含する。近赤外線照射装置としては、防災上の理由から、灯油、油、ガス、石炭等の燃焼を伴うランプ、ヒーター及びバーナーよりも、電気的に近赤外線を放射する装置が好ましい。具体的には、ハロゲンヒーター、カーボンヒーターの様な加熱装置や、白熱電球、ハロゲンランプ、水銀灯等の照明器具から適宜選択して、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。これらの近赤外線照射装置は近赤外線領域(波長800〜2500nm)の波長の光を放射する装置であれば良く、その放射のピークは必ずしも近赤外線領域に無くても良い。
【0035】
近赤外線は、空気にはほとんど吸収されず、熱変換性樹脂層で吸収されて熱エネルギーに変換され、発熱性透光シートの温度が上昇する。膜構造物内側の発熱性透光シート表面温度を露点温度(水蒸気を含む空気を冷却したとき、水の凝結が始まる温度)よりも高く維持できれば結露発生を防ぐことができ、膜構造物屋根部外側の発熱性透光シート表面温度を2℃よりも高く維持すれば、屋根上に降った雪を逐次融解除去することができる。露点温度は膜構造物内部の温度と相対湿度を測定して、計算から求めることが出来るが、露点計を用いれば直接測定することも出来る。発熱性透光シートの表面温度は、接触式の熱伝対を用いた温度センサーや、非接触式の放射温度計等により測定することが出来る。露点温度と発熱性透光シートの(おもて側あるいは内側)表面温度の測定結果に連動して、近赤外線照射装置のオンオフや出力の上げ下げを自動的に調整可能にする事で、常に最適の状態を保ち、かつ、電力の無駄を省くことができる。露点温度を具体的に示すと、例えば、冬季、内部が20℃に暖房された膜構造物において、内部の相対湿度が50%である場合の露点温度は約9℃であり、結露発生を防止するためには、発熱性透光シートの内側表面温度が9℃を超える様維持する必要がある。また、梅雨の時期、例えば膜構造物内の温度が25℃、相対湿度が90%である場合の露点温度は約23℃であり、結露発生を防止するためには、発熱性透光シートの内側表面温度が23℃を超えるよう維持する必要がある。従来の高透光性シートを用いた場合、シートが近赤外線を十分に吸収しないため、この様なシート表面温度を得るためには、近赤外線照射装置を高い密度で配置して高出力の近赤外線を照射する必要があった。一方、濃色に着色したシートであれば近赤外線を十分に吸収して温度を上げることができるため、少ない近赤外線照射で、高いシート表面温度を得る事ができるが、その様なシートを膜構造物に用いると可視光透過率が低いため、晴れた日の昼間でも照明を点灯する必要があった。しかし、本発明の発熱性透光膜屋根構造物に用いる発熱性透光シートは、晴れた日の昼間であれば、太陽光に含まれる近赤外線を吸収して温度が上昇するため、近赤外線照射装置を作動させる必要はほとんど無く、可視光透過率も高いため、照明を点灯する必要も無い。晴天でなくても日中は照明なしで十分な明るさを得ることができ、シートが露点温度を下回る場合や降雪時には、近赤外線照射装置を適宜作動させることで、内部の結露発生を防止し、さらに屋根上の降雪を逐次融解除去することが出来る。
【0036】
図3は、本発明の発熱性透光膜屋根構造物として、テント倉庫(8−1)の例を示したものである。屋根部及び壁部には、熱変換性樹脂層を有し粗目編織物を基布として含むターポリンタイプの発熱性透光シート(1)が用いられており、屋根部の内側には、近赤外線を照射するための反射板の付属した複数の直管ハロゲンヒーター(9−1)が、屋根側に向けて間隔を置いて設置されている。テント倉庫内には露点温度計(図示しない)が設置され、発熱性透光シート内側表面には接触式熱電対温度センサー(図示しない)が複数箇所取り付けられ、各温度センサーの測定値が常に露点温度を超える様に、ハロゲンヒーターの出力を制御することで、結露発生が防止される。テント倉庫内を特に暖房していない場合、露点温度が2℃を下回る状況があり、上記の設定では融雪ができない事があるため、露点温度にかかわり無く、例えば発熱性透光シートの表面温度の下限が2℃となる様に制御することで、降雪時に逐次雪を融解除去することも可能となる。発熱性透光シートは粗目編織物を基布として含む事で、テント倉庫に用いるシートとして十分な強度を有し、また、熱変換性樹脂層を有することで、晴天時の昼間には太陽光に含まれる近赤外線を吸収してシートの温度が上昇するため、日中はハロゲンヒーターは作動させないか、あるいは低出力で作動させるだけで結露発生を防止することができる。発熱性透光シートは可視領域の光を良く通すために、昼間であれば晴天でなくても、照明なしで内部での作業が可能な明るさを得ることが出来、降雪時であっても雪を逐次融解除去することが出来るため、積雪によって光が遮られることがない。なお図3では、ハロゲンヒーターは固定されているが、テント倉庫を支える骨材(図示しない)にレールを設置するなどして、主棟(10)から軒先(11)までの間を自在に行き来出来る様にしても良く、また、夜間等外部からの光が不足する際の作業用光源として、近赤外線照射装置を兼ねる照明装置を設置しても良く、また、近赤外線照射装置とは別に照明装置を設置しても良い。
【0037】
図4は、本発明の発熱性透光膜屋根構造物としてイベント向けテント(8−2)の例を示したものである。このテントはドーム状の屋根部と、円筒状の壁部を有しており、壁部上端の円周に沿って、近赤外線照射装置としてハロゲンランプ(9−2)が屋根側に向けて複数配置されている。屋根部には、熱変換性樹脂層を有し粗目編織物を基布として含むターポリンタイプの発熱性透光シート(1)が用いられている。発熱性透光シートは粗目編織物を基布として含む事で、イベント向けテントに用いるシートとして十分な強度を有し、また、熱変換性樹脂層を有することで、太陽光に含まれる近赤外線を吸収して発熱性透光シートの温度が上昇するため、晴天時の昼間にはハロゲンランプは点灯させないか、あるいは低出力で作動させるだけで結露発生を防止することができる。発熱性透光シートは可視領域の光を良く通すために、昼間であれば晴天でなくても、イベント会場の設営作業が可能な程度の明るさを、照明なしで得ることが出来る。ハロゲンランプを点灯すれば、その放射に含まれる近赤外線がシートの温度を上げて結露発生を防止し、可視光がテント内部を照らす照明として機能する。上記のテント倉庫同様、露点温度計と温度センサーを用いて発熱性透光シートの温度を管理することも可能であり、その場合、内部の明るさとシート温度を適切に制御するために、別の照明装置や近赤外線照射装置を併用することもできる。
【0038】
図5は本発明の発熱性透光膜屋根構造物を用いた農園芸ハウス(8−3)の例を示すものである。このハウスはアーチ状の屋根部と垂直な裾部を有しており、屋根部内側には近赤外線照射装置として反射板のついた複数の直管ハロゲンヒーター(9−1)が間隔を置いて屋根側に向けて配置されている。屋根部には、熱変換性樹脂層を有し粗目編織物を基布として含むターポリンタイプの発熱性透光シート(1)が用いられている。農園芸ハウス内には露点温度計(図示しない)が設置され、発熱性透光シート内側表面には接触式熱電対温度センサー(図示しない)が複数箇所取り付けられ、各温度センサーの測定値が常に露点温度を超える様に、ハロゲンヒーターの出力を制御することで、結露発生が防止される。また、発熱性透光シートの内側表面温度の下限が2℃となる様に制御することで、降雪にも備えることができる。発熱性透光シートに基布が含まれることで、耐久性や強度(特に耐引裂性)を付与することが出来、含まれる基布の空隙率を高くすることで、シートの可視光透過率を作物の育成に十分な光を取り入れられる程度まで高めることが出来る。また、農園芸ハウスにおいては、太陽光に含まれる近赤外線により、ハウス内の作物や土壌の温度が過度に上昇するのを防ぐために、夏場に遮光シートを用いる事があり、その着け外し作業が大きな負担となっているが、本発明の発熱性透光シートは、近赤外線を吸収して遮蔽し、ハウス内の作物や土壌に到達する近赤外線を大幅に減じる効果があるため、作業の負担を軽減することが出来る。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
下記実施例及び比較例で作成したシートについて、以下の評価を行った。
(1)発熱性
試験環境:20℃×65%の恒温恒湿室内に於いて、実施例・比較例で作成したシート
(12)を、50cm四方に裁断して、恒温恒湿室内に24時間以上静置してから、図
6の様に垂直に設置し、その裏面側50cmの位置に、ハロゲンランプ(100V、
85Wのレフランプ型、ウシオライティング(株)製)(9−2)を、ランプの中心点
とシートの中心点とを結ぶ直線の方向が垂直方向に重なる様に固定した。
測定方法:ハロゲンランプを100Vの電圧で10分間点灯してから消灯し、その後速や
かにシート中心部の温度を熱伝対センサを用いた接触式の表面温度計により測定した。
なお、測定面は以下の実施例・比較例に記す。
(2)結露発生防止性
試験環境:内側のサイズが高さ50cm×幅50cm×長さ50cmで、外気温遮断性と気密性
を有し、内部を冷却可能な温調装置が付属し、面の一つの中央に20cm四方の孔を有
する箱型構造体(13)を作成した。箱型構造体の孔部に、実施例・比較例で作成した
シート(12)を30cm四方に裁断して、シートのおもて面を、箱型構造体内部に向
け、箱の内部と外部の空気の流通が無い様に密着させて貼り付け、シートを貼り付けた
面を垂直にして20℃×65%の恒温恒湿室内に設置した。シートの裏面側50cmの
位置に、発熱性試験で用いたのと同じハロゲンランプ(9−2)を、ランプの中心点と
シートの中心点とを結ぶ直線の方向が垂直方向に重なる様に固定した。(図7参照)な
おハロゲンランプは電圧を無段階に調節可能な電源(図示しない)に接続した。
測定方法:箱型構造体内部の温度が20℃である状態で、100Vの電圧でハロゲンラン
プを点灯し、その1分後に箱型構造体に付属した温調装置を作動させ、箱型構造体内部
の温度を5℃に調整した。箱型構造体内部の温度が5℃で安定した段階で、シート裏面
を観察し、結露が生じていなければ、ハロゲンランプに供給する電圧を5V下げ、10
分後にシート裏面を観察する。この操作を繰り返して、最小50Vまで電圧を下げ、以
下の様に評価した。
1:50Vでも結露が発生しなかった。
2:50〜70Vで結露が発生した。
3:75〜90Vで結露が発生した。
4:95〜100Vで結露が発生した。
*20℃×65%における露点温度は13.2℃であり、シートのおもて面側が5℃雰
囲気に曝された状態において、シートの裏側表面が13.2℃を下回ると結露を生じ
る。より低い電圧で13.2℃を超える状態に維持できるシートが、近赤外線照射に
より結露発生を防止する効果の高いシートである。
(3)滑雪性
試験環境:幅60cm、長さ100cmのアルミフレーム1(14)を用意し、実施例・
比較例で作成したシート(12)の4辺を固定して展張した。次に、シートのおもて面
中心部分に幅20cm、長さ20cm、厚さ5cmの雪塊1(15)を配置し、シート
を固定したアルミフレームごと15°の傾斜をつけて周辺を覆う板や天板の無い架台1
(16)に固定した。シートの裏面側には、発熱性試験で用いたのと同じハロゲンラン
プ(9−2)を、ランプの中心点とシートの中心点とを結ぶ直線の方向が垂直方向に重
なり、ランプとシートの距離が50cmになる様に固定した。(図8参照)なお、一連
の作業は、評価も含めて全て0℃の保冷倉庫内にて行った。また、シート上への雪塊の
配置は、同保冷倉庫内にシートを1時間静置してから行った。
雪塊作成方法:0℃保冷倉庫内で水平に置いたシート上に底の無い型枠(内側のサイズ:
長さ20cm、幅20cm、深さ30cm)を直接乗せ、型枠内に―5℃の屋外で採取
した200gの新雪を入れ、5cmの均一な厚さになる様に圧縮成型し、型枠を取り除
いた。
評価方法:100Vの電圧でハロゲンランプを点灯し、雪塊の状態を1時間毎に観察し、
雪塊が滑り落ちて、シート上の雪が無くなるまでの時間を測定して、以下の様に評価し
た。
1:1時間以内に、シート上の雪が無くなった。
2:1時間を超えて2時間以内にシート上の雪が無くなった。
3:2時間を過ぎても雪が残っていた。
(4)融雪性
試験環境:幅30cm、長さ30cmのアルミフレーム2(17)を用意し、実施例・比
較例で作成したシート(12)の4辺を固定して展張した。次に、シートのおもて面中
心部分に幅10cm、長さ10cm、厚さ1cmの雪塊2(18)を配置し、シートを
固定したアルミフレームごと周辺を覆う板や天板の無い水平な架台2(19)に固定し
た。シートの裏面側には、発熱性試験で用いたのと同じハロゲンランプ(9−2)を、
ランプの中心点とシートの中心点とを結ぶ直線の方向が垂直方向に重なり、ランプとシ
ートの距離が20cmになる様に固定した。(図9参照)なお、一連の作業は、評価も
含めて全て0℃の保冷倉庫内にて行った。また、シート上への雪塊の配置は、同保冷倉
庫内にシートを1時間静置してから行った。
雪塊作成方法:0℃保冷倉庫内で水平に置いたシート上に底の無い型枠(内側のサイズ:
長さ10cm、幅10cm、深さ10cm)を直接乗せ、型枠内に―5℃の屋外で採取
した10gの新雪を入れ、1cmの均一な厚さになる様に圧縮成型し、型枠を取り除い
た。
評価方法:100Vの電圧でハロゲンランプを点灯して、10分毎に観察し、以下の様に
評価した。
1:30分以内に雪が完全に融けていた。
2:30分を超えて60分以内に雪が完全に融けていた。
3:60分を経過しても、雪が一部残っていた。
(5)可視光透過率
JIS Z8722.5.4(条件g)に従いミノルタ分光測色計CM−3600dを用いて測定
した。
(6)静止接触角
シートのおもて面について、接触角計(CA−D型、協和科学(株)製)を用いて、
20℃・65%の恒温恒湿室内において、液滴法により、蒸留水に対する静止接触角を
測定した。測定は蒸留水の滴下30秒後に行った。
(7)十点平均粗さRz値(JISB601-1994)
シートの断面の粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、最高から
5番目までの山頂の標高の平均値と最深から5番目までの谷底の標高の平均値との和
の値を求めた。
【0041】
[実施例1]
下記配合1の光拡散性物質含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、下記配合2のタングステン酸化物微粒子含有スチレンブタジエンブロックコポリマー(SBS)の熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物1を得た。配合1において光拡散性物質として平均粒子径1.0μmの酸化チタン粒子を、配合2においてタングステン酸化物微粒子として平均粒子径80nmのWO2.72を、それぞれ用いた。この非相溶樹脂混合物1を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの熱変換性樹脂層用フィルム1−1を成型した。一方、配合1から酸化チタン粒子を省略した軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて、厚さ0.25mmのフィルム1−2を成型した。次いで、得られたフィルム1−1とフィルム1−2の中間に下記基布1を挿入し、熱圧着により積層してターポリン状の光線透過シートを得た。フィルム1−1からなる熱変換性樹脂層を顕微鏡観察すると、タングステン酸化物微粒子含有スチレンブタジエンブロックコポリマーが島成分相を構成しており、酸化チタン粒子含有軟質塩化ビニル樹脂が海成分相を構成していた。熱変換性樹脂層における島成分含有率は11.7体積%、島成分相の平均粒子径は6.2μmであった。次に熱変換性樹脂層側の表面を鏡面エンボスにより平滑にしてから、エンボス面側に、下記配合3からなる加工液をグラビアコーターを用いて塗布し、120℃で3分間乾燥後冷却して、5g/mのフッ素樹脂含有防汚層を形成し、僅かに白濁した淡い青色の発熱性透光シートを得た。この発熱性透光シートについて、防汚層を設けた面をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、発熱性試験についてはおもて面側の表面温度を測定した。
<配合1>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
光拡散性物質(酸化チタン粒子:平均粒子径1μm) 2質量部

<配合2>
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー 100質量部
(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名:アサフレックス830)
タングステン酸化物微粒子(WO2.72:平均粒子径80nm) 1.5質量部

<配合3>
フルオロオレフィンビニルエーテル樹脂 100質量部
(旭硝子(株)製、商品名:フロロトップ1053、固形分50質量%)
イソホロン系イソシアネート硬化剤 10質量部
(武田薬品工業(株)製、商品名:タケネートD−140N、固形分75質量%)
シリカ((株)トクヤマ製、商品名:ファインシールX37) 5質量部
メチルエチルケトン(溶剤) 100質量部

(基布1)
ポリエステル833dtexマルチフィラメントを用いた粗目状平織り布
密度 たて(経糸) 18本/インチ よこ(緯糸) 19本/インチ

【0042】
[実施例2]
下記配合4の組成物からなる光拡散性物質含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、下記配合5の組成物からなる複合タングステン酸化物微粒子含有スチレンブタジエンブロックコポリマー(SBS)の熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物2を得た。配合4において光拡散性物質として、平均粒子径1μmの酸化チタン粒子と、平均粒子径6μmの架橋ポリスチレン粒子を、併用して用いた。また、配合5において、複合タングステン酸化物微粒子として平均粒子径80nmのNa0.33WOを用いた。この非相溶樹脂混合物2を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの熱変換性樹脂層用フィルム2−1を成型した。一方、配合4から酸化チタン粒子と架橋ポリスチレン粒子を省略した軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて、厚さ0.25mmのフィルム2−2を成型した。次いで、得られたフィルム2−1とフィルム2−2の中間に下記基布1を挿入し、熱圧着により積層してターポリン状の光線透過シートを得た。得られた光線透過シートの熱変換性樹脂層を顕微鏡観察すると、複合タングステン酸化物微粒子含有スチレンブタジエンブロックコポリマーが島成分相を構成しており、酸化チタン粒子と架橋ポリスチレン粒子を含有する軟質塩化ビニル樹脂が海成分相を構成していた。熱変換性樹脂層における島成分含有率は10.7体積%、島成分相の平均粒子径は6.2μmであった。次に、光線透過シートの熱変換性樹脂層側の表面を鏡面エンボスにより平滑にしてから、表裏両面に下記配合6からなる加工液をグラビアコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却して5g/mの添加剤移行防止層を形成した。次いで、鏡面エンボスを施した側の添加剤移行防止層上に下記配合7からなる加工液をグラビアコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して1.5g/mの接着・保護層を形成し、更に、その上に下記配合8からなる加工液をグラビアコーターで塗布し、120℃で2分間乾燥後冷却して、1.5g/mの光触媒含有防汚層を形成して、透明性のある淡い青色の発熱性透光シートを得た。この発熱性透光シートについて、防汚層を設けた面をおもて面として、各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、発熱性試験についてはおもて面側の表面温度を測定した。
<配合4>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
光拡散性物質(酸化チタン粒子:平均粒子径1μm) 1質量部
光拡散性物質(架橋ポリスチレン粒子:平均粒子径6μm) 15質量部

<配合5>
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー 100質量部
(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名:アサフレックス830)
複合タングステン酸化物微粒子(Na0.33WO:平均粒子径80nm)
1.5質量部

<配合6>
ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂 20質量部
(エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、商品名:カイナー7201)
MEK(溶剤) 80質量部

<配合7>
シリコーン含有量3mol%のアクリルシリコーン樹脂を8質量%(固形分)含有する
エタノール−酢酸エチル(50/50質量比)溶液 100質量部
メチルシリケートMS51(コルコート(株)製)の
20%エタノール溶液(ポリシロキサン) 8質量部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤) 1質量部

<配合8>
コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製、商品名:スノーテックスO)67質量部
メチルトリメトキシシラン 33質量部
光触媒:酸化チタンを10質量%含有する水分散液
(住友化学(株)製、商品名:TS-S4420) 10質量部
希釈溶剤(エチルアルコール) 30質量部

【0043】
[実施例3]
下記配合9の光拡散性物質含有軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物に、下記配合10の6ホウ化物微粒子含有ビニルエステル樹脂攪拌混合物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えて撹拌し、6ホウ化物微粒子含有ビニルエステル樹脂を均一分散させ非相溶樹脂混合物液3を得た。配合9において、光拡散性物質として雲母粒子表面を(TiO/SiO/TiO)の3層による複層構造を有する薄膜で被覆した、平均粒子径30μmの干渉雲母粒子を、配合10において、6ホウ化物として平均粒子径80nmのLaBを、それぞれ用いた。次に、PETフィルムの1面上にこの樹脂混合物液3を2.5mmのクリアランスでコートし、電気炉で180℃×5分間加熱して樹脂混合物液3を固化させ、PETフィルム付の熱変換性樹脂層用フィルム3−1を成型した。一方、配合9から干渉雲母粒子を省略した軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物をPETフィルムの1面上に2.5mmのクリアランスでコートし、電気炉で180℃×5分間加熱して固化させ、PETフィルム付のフィルム3−2を成型した。得られたフィルム3−1とフィルム3−2の中間に、基布1をPETフィルムが外側になる様に重ねて挿入し、熱圧着により積層してからPETフィルムを除去して、両面が平滑なターポリン状の光線透過シートを得た。フィルム3−1からなる熱変換性樹脂層を顕微鏡観察すると、6ホウ化物微粒子含有ビニルエステル樹脂が島成分相を構成しており、光拡散性物質含有軟質塩化ビニル樹脂が海成分相を構成していた。熱変換性樹脂層における島成分含有率は7.8体積%、島成分相の平均粒子径は7.2μmであった。次に、実施例2と同様にして表裏両面に添加剤移行防止層を形成し、更に熱変換性樹脂層の側の添加剤移行防止層上に接着・保護層、光触媒含有防汚層の順に形成して、パール調の光沢を有し淡い緑色の発熱性透光シートを得た。この発熱性透光シートについて、防汚層を設けた面をおもて面として、各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、発熱性試験についてはおもて面側の表面温度を測定した。
<配合9>
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 50質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 20質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
光拡散性物質(干渉雲母粒子:平均粒子径30μm) 2質量部

<配合10>
ビニルエステル樹脂 100質量部
(日本ユピカ(株)製、商品名:ネオポール8319)
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
6ホウ化物微粒子(LaB:平均粒子径80nm) 1質量部

【0044】
[実施例4]
配合11の光拡散性物質含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、下記配合12の複合タングステン酸化物微粒子・ハイドロタルサイト類化合物含有スチレンブタジエンブロックコポリマー(SBS)の熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して17質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物4を得た。配合11において、光拡散性物質として平均粒子径2μmの酸化アルミニウム粒子を、配合12において複合タングステン酸化物微粒子として平均粒子径80nmのCs0.33WOと、ハイドロタルサイト類化合物として平均粒子径2.8μmの水澤化学工業(株)製「MIZUKALAC(商品名)」を、それぞれ使用した。この非相溶樹脂混合物4を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの熱変換性樹脂層用フィルム4−1を成型した。一方、配合11から酸化アルミニウム粒子を省略した軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて、厚さ0.25mmのフィルム4−2を成型した。次いで、得られたフィルム4−1とフィルム4−2の中間に基布1を挿入し、熱圧着により積層してターポリン状の光線透過シートを得た。フィルム4−1からなる熱変換性樹脂層を顕微鏡観察すると、複合タングステン酸化物微粒子・ハイドロタルサイト類化合物含有スチレンブタジエンブロックコポリマーが島成分を構成しており、酸化アルミニウム粒子含有軟質塩化ビニル樹脂が海成分相を構成していた。熱変換性樹脂層における島成分含有率は10.0体積%、島成分の平均粒子径は6.2μmであった。次に、この光線透過シートの熱変換性樹脂層側の表面を鏡面エンボスにより平滑にしてから、実施例2と同様にして表裏両面に添加剤移行防止層を形成し、更に鏡面エンボスを施した側の添加剤移行防止層上に接着・保護層、光触媒含有防汚層を順次形成して、僅かに白濁した淡い青色の発熱性透光シートを得た。この発熱性透光シートについて、防汚層を設けた面をおもて面として、各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、発熱性試験についてはおもて面側の表面温度を測定した。
<配合11>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
光拡散性物質(酸化アルミニウム粒子:平均粒子径2μm) 2質量部

<配合12>
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー 100質量部
(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名:アサフレックス830)
複合タングステン酸化物微粒子(Cs0.33WO:平均粒子径80nm)
0.7質量部
ハイドロタルサイト類化合物 5質量部
(水澤化学工業(株)製、商品名:MIZUKALAC、平均粒子径:2.8μm)

【0045】
[実施例5]
下記配合13の光拡散性物質含有軟質フッ素樹脂の熱溶融混練物に、下記配合14のフタロシアニン系化合物含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を、軟質フッ素樹脂単体の質量に対して10質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、塩化ビニル樹脂を均一分散させ非相溶樹脂混合物5を得た。配合13において、光拡散性物質として雲母粒子表面を(TiO/SiO/TiO)の3層による複層構造を有する薄膜で被覆した、平均粒子径30μmの干渉雲母粒子を、配合14において、フタロシアニン系化合物として(株)日本触媒社製:イーエクスカラー702K(商品名)を、それぞれ用いた。この樹脂混合物5を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの熱変換性樹脂層用フィルム5−1を成型した。一方、配合13から干渉雲母粒子を省略した軟質フッ素樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム5−2を成型した。次いで、得られたフィルム5−1とフィルム5−2の中間に基布1を挿入し、熱圧着により積層してターポリン状とし、更にフィルム5−1からなる熱変換性樹脂層側の表面を鏡面エンボスにより平滑にして、パール調の光沢を有し淡い緑色の発熱性透光シートを得た。この熱変換性樹脂層は、海成分が軟質フッ素樹脂からなり、防汚層を兼ねる層である。熱変換性樹脂層を顕微鏡観察すると、フタロシアニン系化合物含有軟質塩化ビニル樹脂が島成分を構成しており、干渉雲母粒子含有軟質フッ素樹脂が海成分を構成していた。熱変換性樹脂層全体に対する島成分含有率は13.4体積%、島成分相の平均粒子径は1.7μmであった。この発熱性透光シートについて、フィルム5−1を積層した面をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、発熱性試験についてはおもて面側の表面温度を測定した。
<配合13>
軟質フッ素樹脂 100質量部
(四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン−フッ化ビニリデン三元共重合体樹脂)
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
光拡散性物質(干渉雲母粒子:平均粒子径30μm) 2質量部

<配合14>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
フタロシアニン系化合物((株)日本触媒製、商品名:イーエクスカラー702K)
1質量部

【0046】
[実施例6]
配合1の光拡散性物質含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、下記配合15の複合タングステン酸化物微粒子含有ポリエチレン樹脂の熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、ポリエチレン樹脂を均一分散させた非相溶樹脂混合物6を得た。配合15において、複合タングステン酸化物微粒子として平均粒子径80nmのNa0.33WOを用いた。この樹脂混合物6を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの熱変換性樹脂層用フィルムを成型した。このフィルムを熱変換性樹脂層として基布1の両面に、熱圧着により積層してターポリン状の光線透過シートを得た。熱変換性樹脂層を顕微鏡観察すると、複合タングステン酸化物微粒子含有ポリエチレン樹脂が島成分相を構成しており、酸化チタン粒子含有軟質塩化ビニル樹脂が海成分相を構成していた。熱変換性樹脂層における島成分含有率は12.1体積%、島成分相の平均粒子径は10.2μmであった。次に一方の側の熱変換性樹脂層の表面を鏡面エンボスにより平滑にしてから、エンボス面側に、配合3からなる加工液をグラビアコーターを用いて塗布し、120℃で3分間乾燥後冷却して、5g/mのフッ素樹脂含有防汚層を形成し、僅かに白濁した淡い青色の発熱性透光シートを得た。この発熱性透光シートについて、防汚層を設けた面をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、発熱性試験についてはおもて面側の表面温度を測定した。
<配合15>
低密度ポリエチレン樹脂(密度0.945) 100質量部
複合タングステン酸化物微粒子(Na0.33WO:平均粒子径80nm)
1質量部

【0047】
[実施例7]
配合4の光拡散性物質含有軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物に、下記配合16の複合タングステン酸化物微粒子含有シリコーン樹脂攪拌混合物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して13質量%加えて撹拌し、複合タングステン酸化物微粒子含有シリコーン樹脂を均一分散させた非相溶樹脂混合物液7を得た。配合16において複合タングステン酸化物として、平均粒子径80nmのCs0.33WOを用いた。次に、PETフィルムの1面上にこの樹脂混合物液7を2.5mmのクリアランスでコートし、電気炉で180℃×5分間加熱して樹脂混合物液7を固化させ、PETフィルム付の熱変換性樹脂層用フィルム7−1を成型した。一方、配合4から酸化チタン粒子と架橋ポリスチレン粒子を省略した軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物をPETフィルムの1面上に2.5mmのクリアランスでコートし、電気炉で180℃×5分間加熱して固化させ、PETフィルム付のフィルム7−2を成型した。得られたフィルム7−1とフィルム7−2の中間に、基布1をPETフィルムが外側になる様に重ねて挿入し、熱圧着により積層してからPETフィルムを除去して、両面が平滑なターポリン状の光線透過シートを得た。フィルム7−1からなる熱変換性樹脂層を顕微鏡観察すると、複合タングステン酸化物微粒子含有シリコーン樹脂が島成分相を構成しており、酸化チタン粒子と架橋ポリスチレン粒子を含有する軟質塩化ビニル樹脂が海成分相を構成していた。熱変換性樹脂層における島成分含有率は6.1体積%、島成分相の平均粒子径は3.4μmであった。次に、実施例2と同様にしておもて裏両面に添加剤移行防止層を形成し、更にフィルム7−2側の添加剤移行防止層上に接着・保護層、光触媒含有防汚層の順に形成して、実施例7の、透明性のある淡い青色の発熱性透光シートを得た。この発熱性透光シートについて、防汚層を設けた面をおもて面として、各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、発熱性試験については裏面側の表面温度を測定した。
<配合16>
CY52−110(東レダウコーニングシリコーン(株)製シリコーン樹脂)
A液 50質量部
B液 50質量部
複合タングステン酸化物微粒子(Cs0.33WO:平均粒子径80nm)
2.5質量部

【0048】
[実施例8]
下記配合17のタングステン酸化物微粒子含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、下記配合18の光拡散性物質含有スチレンブタジエンブロックコポリマー(SBS)の熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して40質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、光拡散性物質含有スチレンブタジエンブロックコポリマー(SBS)を均一分散させた非相溶樹脂混合物8を得た。配合17において、タングステン酸化物微粒子として平均粒子径80nmのWO2.72を、配合18において、光拡散性物質として平均粒子径1μmの酸化チタン粒子を、それぞれ用いた。この非相溶樹脂混合物8を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの熱変換性樹脂層用フィルム8−1を成型した。一方、配合17からタングステン酸化物微粒子を省略した軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて、厚さ0.25mmのフィルム8−2を成型した。次いで、得られたフィルム8−1とフィルム8−2の中間に基布1を挿入し、熱圧着により積層してターポリン状の光線透過シートを得た。フィルム8−1からなる熱変換性樹脂層を顕微鏡観察すると、酸化チタン粒子含有スチレンブタジエンブロックコポリマーが島成分相を構成しており、タングステン酸化物微粒子含有軟質塩化ビニル樹脂が海成分相を構成していた。熱変換性樹脂層における島成分含有率は20.9体積%、島成分相の平均粒子径は6.2μmであった。次に熱変換性樹脂層側の表面を鏡面エンボスにより平滑にしてから、エンボス面側に、配合3からなる加工液をグラビアコーターを用いて塗布し、120℃で3分間乾燥後冷却して、5g/mのフッ素樹脂含有防汚層を形成し、僅かに白濁した淡い青色の発熱性透光シートを得た。この発熱性透光シートについて、防汚層を設けた面をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、発熱性試験についてはおもて面側の表面温度を測定した。
<配合17>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
タングステン酸化物微粒子(WO2.72:平均粒子径80nm) 0.3質量部

<配合18>
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー 100質量部
(旭化成ケミカルズ(株)社製、商品名:アサフレックス830)
光拡散性物質(酸化チタン粒子:平均粒子径1μm) 3質量部

【0049】
実施例1〜8の発熱性透光シートは何れも、海島相構造を有し、海成分相または島成分相の何れか一方が近赤外線吸収性物質を含有し、もう一方の相(近赤外線吸収性物質非含有相)が光拡散性物質を含有する熱変換性樹脂層を有しており、近赤外線照射により効率よく発熱し、結露の発生を防止することができ、融雪性に優れ、しかも高い可視光透過率を示すシートであった。これらのシートのおもて面側表面の水に対する静止接触角はそれぞれ15〜50°または80〜110°を満たし、滑雪性の評価では、すべてのシートにおいて1時間以内に雪塊が完全に滑り落ちていた。
【0050】
[比較例1]
非相溶樹脂混合物1から成型したフィルム1−1の代わりに、配合1から光拡散性物質を省略した軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物から成型した厚さ0.25mmのフィルム比1―1を用いた以外は、実施例1と同様にして、無色透明のシートを作成した。このシートについて、防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、発熱性試験についてはおもて面側の表面温度を測定した。
【0051】
比較例1のシートはフィルム比1―1が海島相構造を有さず、近赤外線吸収性物質も光拡散性物質も含まないため、実施例1と比べて、発熱性、結露発生防止性、滑雪性、および融雪性に劣るシートであった。
【0052】
[比較例2]
非相溶樹脂混合物1から成型したフィルム1−1の代わりに、配合1の光拡散性物質含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物から成型した厚さ0.25mmのフィルム比2―1を用いた以外は、実施例1と同様にして、乳白のシートを作成した。このシートについて、防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、発熱性試験についてはおもて面側の表面温度を測定した。
【0053】
比較例2のシートはフィルム比2―1からなる層が海島相構造を有さず、近赤外線吸収性物質を含まないため、実施例1と比べて、発熱性、結露発生防止性、滑雪性、および融雪性に劣るシートであった。また、フィルム比2―1は海島相構造を有さず、全体に光拡散性物質を含有するため、比較例1に比べて可視光透過率が劣っていた。
【0054】
[比較例3]
非相溶樹脂混合物1から成型したフィルム1−1の代わりに、下記配合19のタングステン酸化物微粒子含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物から成型した厚さ0.25mmのフィルム比3―1を用いた以外は、実施例1と同様にして、透明性のある青色のシートを作成した。このシートについて、防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、発熱性試験についてはおもて面側の表面温度を測定した。
<配合19>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
タングステン酸化物微粒子(WO2.72:平均粒子径80nm) 0.3質量部

【0055】
比較例3のシートは、近赤外線吸収性物質としてタングステン酸化物微粒子を含むフィルム比3−1からなる層を有し、面積あたりのタングステン酸化物微粒子の含有量が実施例1と同等であったが、フィルム比3−1が海島相構造を有さず、光拡散性物質も含まないため、近赤外線を十分に吸収することができず、実施例1と比べて、発熱性および結露発生防止性が劣り、滑雪性、融雪性も劣っていた。また、海島相構造を有さず、タングステン酸化物微粒子が全体に分散していたため、可視光透過率も劣っていた。
【0056】
[比較例4]
配合2からタングステン酸化物微粒子を省略した以外は、実施例1と同様にして、僅かに白濁した色相のシートを作成した。このシートについて、防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、発熱性試験についてはおもて面側の表面温度を測定した。
【0057】
比較例4のシートは、海島相構造の層を有し、海成分相に光拡散性物質を含有するものの、島成分相に近赤外線吸収性物質を含まないため、近赤外線を効率的に吸収することができず、実施例1と比べて、発熱性、結露発生防止性、滑雪性および融雪性が劣っていた。
【0058】
[比較例5]
非相溶樹脂混合物1から成型したフィルム1−1の代わりに、下記配合20の組成物からなるタングステン酸化物微粒子含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物から成型した厚さ0.25mmのフィルム比5−1を用いた以外は、実施例1と同様にしてターポリン状のシートを得た。このシートのフィルム比5−1を積層した側の表面を鏡面エンボスにより平滑にしてから、実施例2と同様にして表裏両面に添加剤移行防止層を形成し、更にフィルム比5−1の側の添加剤移行防止層上に接着・保護層、光触媒含有防汚層の順に形成して、透明性のある青色のシートを作成した。このシートについて、光触媒含有防汚層を設けた面をおもて面として、各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、発熱性試験についてはおもて面側の表面温度を測定した。
<配合20>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
タングステン酸化物微粒子(WO2.72:平均粒子径80nm) 1質量部

【0059】
比較例5のシートは、フィルム比5−1からなる層に近赤外線吸収性物質としてタングステン酸化物微粒子を含み、面積あたりのタングステン酸化物微粒子の含有量が実施例1の3.8倍であったが、フィルム比5−1からなる層が海島相構造を有さず、光拡散性物質も含まないため、近赤外線を効率的に吸収することができず、発熱性、結露発生防止性、滑雪性および融雪性は実施例1と同程度であり、更に海島相構造を有さないため、可視光透過率が大きく劣っていた。
【0060】
[比較例6]
非相溶樹脂混合物1から成型したフィルム1−1の代わりに、配合19の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物から成型した厚さ0.25mmのフィルム比6−1を用い、防汚層を設けなかった以外は、実施例1と同様にしてシートを作成した。このシートの、フィルム比6−1を積層した側の表面を鏡面エンボスにより平滑にし、透明性のある青色のシートを作成した。このシートについて、鏡面エンボスにより平滑にした面をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、発熱性試験についてはおもて面側の表面温度を測定した。
【0061】
比較例6のシートは、比較例3から防汚層を省略した構成であり、比較例3と同様、近赤外線吸収性物質としてタングステン酸化物微粒子を含み、面積あたりのタングステン酸化物微粒子の含有量が実施例1と同等であったが、フィルム比6−1からなる層が海島相構造を有さないため、近赤外線を効率的に吸収することができず、発熱性、結露発生防止性および融雪性が劣っていた。また、防汚層を有さず、水に対する静止接触角が68°であったため、滑雪性の評価においては、2時間を過ぎても雪が残っており、比較例3よりも更に劣った結果であった。
【0062】
[比較例7]
非相溶樹脂混合物1から成型したフィルム1−1の代わりに、下記配合21の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物から成型した厚さ0.25mmのフィルム比7−1を用いた以外は、実施例1と同様にしてシートを作成し、白濁した青色のシートを作成した。このシートについて、防汚層を形成した面をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、発熱性試験についてはおもて面側の表面温度を測定した。
<配合21>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
光拡散性物質(酸化チタン粒子:平均粒子径1μm) 1.8質量部
タングステン酸化物微粒子(WO2.72:平均粒子径80nm) 0.3質量部

【0063】
比較例7のシートは、フィルム比7−1からなる層が光拡散性物質とタングステン酸化物微粒子を含有し、それぞれ面積あたりの含有量が実施例1と同等であったが、フィルム比7−1からなる層が海島相構造を有さないため、近赤外線を効率的に吸収することができず、発熱性、結露発生防止性および融雪性が劣り、滑雪性、融雪性も劣っていた。また、海島相構造を有さず、光拡散性物質およびタングステン酸化物微粒子が全体に分散していたため、可視光透過率も実施例1に比べて低かった。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の発熱性透光シートは、可視光領域の透過性が高く、しかも近赤外線を吸収して効率よく昇温する発熱性を有しているため、本発明の発熱性透光シートを用いて構築した膜構造物において、発熱性透光シートに近赤外線を照射することで、近赤外線を熱エネルギーに変換し、内部の結露発生を防止し、かつ、屋根上の着雪状態を逐次コントロール可能な透光膜屋根構造物を得ることが出来るので、アミューズメントスペース、イベントスペース、雨天運動場、テント倉庫、イベント向けテント、農園芸ハウスなどの膜構造物、及びそれらの明かり採り構造に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0067】
1:発熱性透光シート
2:熱変換性樹脂層
3:島成分相
3−1:近赤外線吸収性物質を含有する島成分相
3−2:光拡散性物質からなる粒子を含有する島成分相
4:海成分相
4−1:近赤外線吸収性物質を含有する海成分相
4−2:光拡散性物質からなる粒子を含有する海成分相
5:防汚層
6:海島相構造を有さない樹脂層
7:基布
8:発熱性透光膜屋根構造物
8−1:テント倉庫
8−2:イベント向けテント
8−3:農園芸ハウス
9:近赤外線照射装置
9−1:ハロゲンヒーター
9−2:ハロゲンランプ
10:主棟
11:軒先
12:実施例・比較例で作成したシート
13:箱型構造体
14:アルミフレーム1
15:雪塊1
16:架台1
17:アルミフレーム2
18:雪塊2
19:架台2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱変換性樹脂層を有する光線透過シートであって、前記熱変換性樹脂層が、合成樹脂ブレンドによる非相溶混合物からなる海島相構造を有し、前記海島相構造において、海成分相または島成分相の、いずれか一方の相が、近赤外線吸収性無機化合物微粒子、及び近赤外線吸収性有機色素から選ばれた少なくとも一種の近赤外線吸収性物質を含有する相で、もう一方の相が、光拡散性物質からなる粒子を含有することを特徴とする、発熱性透光シート。
【請求項2】
前記光線透過シートの最外層に防汚層が設けられている、請求項1に記載の発熱性透光シート。
【請求項3】
前記防汚層の表面における水との静止接触角が、15〜50°である請求項2に記載の融雪シート。
【請求項4】
前記防汚層の表面における水との静止接触角が、80〜110°である請求項2に記載の融雪シート。
【請求項5】
前記近赤外線吸収性無機化合物微粒子が、タングステン酸化物、複合タングステン酸化物、6ホウ化物(一般式XBで表され、XはY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Ba、SrおよびCaから選択される1種または2種の元素)、及びハイドロタルサイト類から選ばれた一種以上を含む、請求項1から4いずれか1項に記載の発熱性透光シート。
【請求項6】
前記近赤外線吸収性有機色素が、フタロシアニン系化合物、ナフトールキノン系化合物、イモニウム系化合物、アントラキノン系化合物、アミニウム系化合物、及びニッケル−チオール系錯体化合物から選ばれた1種以上を含む、請求項1から4いずれか1項に記載の発熱性透光シート。
【請求項7】
前期光拡散性物質からなる粒子が、セラミックス粒子、干渉雲母粒子、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズおよび樹脂粒子から選ばれた少なくとも一種を含む、請求項1〜6いずれか1項に記載の発熱性透光シート。
【請求項8】
前記光線透過シートが、粗目編織物を基布として含む積層体である、請求項1〜7いずれか1項に記載の発熱性透光シート。
【請求項9】
熱変換性樹脂層を有する光線透過シートを屋根材とする膜構造物であって、前記熱変換性樹脂層が、海島相構造を有し、前記海島相構造において、海成分相または島成分相の、いずれか一方の相が、近赤外線吸収性無機化合物微粒子、及び近赤外線吸収性有機色素から選ばれた少なくとも一種の近赤外線吸収性物質を含有し、もう一方の相が、光拡散性物質からなる粒子を含有することによって、前記光線透過シートに近赤外線を照射したときに、近赤外線を熱エネルギーに変換することを特徴とする、発熱性透光膜屋根構造物。
【請求項10】
前記光線透過シートの最外層に、防汚層が設けられている、請求項9に記載の発熱性透光膜屋根構造物。
【請求項11】
前記光線透過シートが、粗目編織物を基布として含む積層体である、請求項9または10に記載の発熱性透光膜屋根構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−195792(P2011−195792A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67179(P2010−67179)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】