説明

発熱樹脂シート、およびその製造方法

【課題】特に車両窓の透視面箇所に使用して有益であり且つ、表面の曇り除去や、表面上の積雪の融解などを効率的に行える発熱樹脂シート17を提供する。
【解決手段】電熱線6をポリカーボネート樹脂シート9の肉部中に埋設した発熱樹脂シート17である。発熱樹脂シート17中の電熱線6は、その表面の大部分が前記肉部の材料に密接しているが、電熱線6の略全長範囲の任意断面の一部が連続して発熱樹脂シート17の一方の表面の外方に露出している。熱可塑性樹脂シート17には、よりも硬質で熱伝導性の大きい材料からなるハードコート層が少なくとも前記一方の表面を被うように形成る。シート17は、電熱線6に電流を流した状態の下で、該電熱線6を熱可塑性樹脂シート9の少なくとも一方の表面に押圧するように実施して製造する。
該製造において、耐熱粘着フィルム、電熱線6及び剥離フィルムとからなる電熱線貼着シートや、治具板の上面に複数のポスト部材を備えた電熱線貼着シート製造具が使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電熱線を備えた発熱樹脂シート、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート板は、硬質な樹脂素材としてガラス素材に代わって車両用の窓など母材として利用されている。一方、車両用の窓として電熱線を配した曇り除去に関する技術が知られているが、いずれの技術についてもガラスを窓の母材とするものである。ガラスは温度に対する耐性が高く、電熱線を焼付けることができるが、ポリカーボネート板は樹脂であり120〜250℃の比較的低温で溶融するために、ガラス窓における技術を適用するのは難しい。
【0003】
例えば、特許文献1においては、ポリビニール・プチラール重合体ではあるが樹脂シートに、抵抗線を埋め込み自動車用の窓の曇り止めに利用する技術が開示されているが、この樹脂シートは窓ガラスの母材ではなく、ガラスに挟まれた、抵抗線の不規則な模様を提供するシートに過ぎない。
【0004】
すなわち、特許文献1では、樹脂シートを使って不規則な模様を作るために、熱可塑性樹脂シートをたるませておき、かつ抵抗線もたるませた状態で両者を接触させて抵抗線に電気エネルギーを供給することにより、熱可塑性樹脂シートと抵抗線とが接触した部分(両者をたるませるので点接触となる)において、抵抗線を埋め込む。そして、熱可塑性樹脂シートが収縮することにより不規則な模様を形成するものである。さらに、抵抗線が熱可塑性樹脂シートから突出する部分は、ガラスによりサンドイッチされる際に圧縮されてさらに不規則な模様を形成するものである。
【0005】
一方、ポリカーボネート板を母材として利用し、ポリカーボネート板表面上に存在した積雪の融解などのために電熱線を埋め込んでなる発熱樹脂シートとして、例えば特許文献2に開示されたものが存在している。この発熱樹脂シートによれば、ポリカーボネート中に電熱線を装着するために、複数のポリカーボネート板を加工し組み合わせた中空構造をあらかじめ作製し、その中空構造箇所に仕切りを隔てて電熱線を配設するものである。
【0006】
このような、発熱樹脂シートにおいては、中空構造内に存在する空気が断熱材として働くため、電熱線で発せられた熱をポリカーボネート板表面に伝導させる上での阻害要因になってしまい、ポリカーボネート板表面の曇り除去や積雪の融解などが効率的に行われない。ちなみに、空気の熱伝導率は29mW/m・k程度であり、ポリ力ーボネート樹脂の熱伝導率は190mW/m・k程度である。また、窓用のガラスに代えることができるような透明性も、その構造からして期待できない。
【特許文献1】特開昭50−3111号公報
【特許文献2】実登3029638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特に車両窓の透視面箇所に使用して有益であり且つ、表面の曇り除去や、表面上の積雪の融解などを効率的に行える発熱樹脂シートを提供する。また、その該発熱樹脂シートを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願の発明に係る発熱樹脂シートは、電熱線が透明な熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の表面に密状に埋設されると共に前記一方の表面上の前記電熱線の略全長範囲の任意断面の一部が連続して前記一方の表面の外方に露出し、前記熱可塑性樹脂シートよりも硬質で熱伝導性の大きい材料からなるハードコート層が少なくとも前記一方の表面を被うように形成されている。
【0009】
また、本発明による発熱樹脂シートの製造方法は、電熱線に電流を流して120〜250℃の範囲内の温度とした状態の下で、該電熱線をポリカーボネート樹脂シートの表面に押圧板により押圧することにより、前記一方の表面上の該電熱線の略全長範囲を、連続状に且つ断面の一部が連続して外方へ露出するように且つ前記一方の表面から殆ど突出させない状態に埋め込むものである。
【発明の効果】
【0010】
本願発明に係る発熱樹脂シートによれば、電熱線に通電することにより発生したジュール熱が電熱線の埋設箇所のほぼ全表面と密状に接触した接触面を通じてポリカーボネート樹脂シートの肉部に伝導され、さらに該肉部を経てポリカーボネート樹脂シートの表面まで伝導されるだけではなく、ポリカーボネート樹脂よりも良熱伝導性材料からなるハードコート層によっても、電熱線で発生したジュール熱を電熱線から離れたポリカーボネート樹脂シート箇所まで効果的に伝導拡散させることができる。
【0011】
また、本願発明に係る発熱樹脂シートの製造方法によれば、電熱線の発生したジュール熱で熱可塑性樹脂シートの表面のうち電熱線と接触した箇所が溶融し、押圧板によって押圧することにより、溶融された箇所に該電熱線が埋め込まれ、かつ押圧板は熱可塑性樹脂シートの表面に至るまで押圧した時点で、電熱線をさらに埋め込ませることができなくなるため、電熱線を連続状に且つ断面の一部が連続して外方へ露出するように且つ前記表面から殆ど突出させない状態に埋め込ませることができる。
【0012】
以上のような効用により、電熱線による加熱を要する窓材、ドア材、壁材、床材などとして有用に使用することができる上に、特に車両窓(作業車のキャビンの窓など)の透視面箇所に使用して有益となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
〈第1実施形態〉
図1は電熱線粘着シートの製造工程を示す説明図、図2は電熱線粘着シートを示す斜視図である。
【0015】
PET(ポリエチレンテレフタレート)やポリイミドを基材とする透明な耐熱粘着フィルム1を用意する。該フイルム1は片面を粘着面となされると共に耐熱性として、150〜250℃程度の加熱で少なくとも熔融せず、かつ粘着材も同程度の温度に耐えるものが選択される。また粘着面の粘着剤は、さらに耐熱粘着フィルム1の接着される対象から容易に剥がすことのできるものが選択される。
【0016】
一方、電熱線粘着シート製造具2を用意する。該製造具2は、上面が平面となされた治具板3を形成し、治具板3の上面の一端部に複数のポスト部材4aを列状に且つ上下動可能に設け、治具板3の他端部に前記一端部のポスト部材4aの配置に対し千鳥配列となる列状に配置された複数のポスト部材4bを上下動可能に設け、さらに治具板3の上方に第1押圧板5を上下移動可能に設けた構成とする。
【0017】
そして、一条の電熱線6、即ち例えばφ0.05〜0.5mm程度のニクロム線(80重量部Ni−20重量部Cr)を、左右で対向したポスト部材4a、4bに九十九折り状に掛け回して、多数の直線状部6aが平行に配置された状態の予め設計されたパターン(計画パターン)が得られるように治具板3上に位置決めする。次に治具板3に対応した大きさとなされた方形の耐熱粘着フィルム1の粘着面を左右各側のポスト部材4a、4bの上端面に貼り付ける。次に図示しない流体圧シリンダ装置などの駆動手段を介して、押圧板5を下方移動させると共に、左右各側のポスト部材4a、4bを治具板3に対し同時に下方変位させる。そして、第1押圧板5が耐熱粘着フィルム1を治具板3の上面に押しつけた後に、左右端部のポスト部材4a、4bを治具板3の上面よりも下側へ変位させる。
【0018】
この結果、電熱線6の端末部6bを除くその全体が耐熱粘着フィルム1の粘着面に押圧されてこれに貼着され固定された状態となる。次に第1押圧板5を上方移動させ、治具板3の上面から耐熱粘着フィルム1を電熱線6と共に取り上げる。そして最後に耐熱粘着フィルム1の粘着面に剥離フィルム7を電熱線6の端末部6bを除くその全体が被われた状態に貼着する。これにより、図2示すような電熱線粘着シート8が作成される。なお、耐熱粘着フィルム1を、第1押圧板5を使用しないで手作業で治具板3上面に押さえ付けるようになすことも差し支えない。
【0019】
該電熱線粘着シート8は次のように作成しても良い。
即ち、厚み0.2mm程度のニクロムからなる電熱材フィルムを、透明な耐熱粘着フィルム1に貼り付けた状態で、トムソン型などを利用して電熱材フィルムのみに対して打ち抜き加工を施し、不要な電熱材フィルム部分を耐熱粘着フィルム1から剥離する。これによりニクロムからなる電熱線6が耐熱粘着フィルム1の粘着面上に計画パターンで配置され貼着された状態となって残存する。この後、先と同様に、耐熱粘着フィルム1の粘着面に剥離フィルム7を電熱線6の被われた状態に貼着する。
【0020】
図3は電熱線粘着シート8を熱可塑性樹脂シート(ポリカーボネート樹脂シート)9に貼着する工程を示す説明図、図4は電熱線粘着シート8を熱可塑性樹脂シート9に貼着した状態の第1中間品10を示す斜視図である。図3に示すように、電熱線粘着シート8から前記剥離フィルム7を剥がした状態となしたものを、ポリカーボネート樹脂シート9上に位置合わせをしながら載置状態となし、次に耐熱粘着フィルム1を手などでポリカーボネート樹脂シート9の上面に押さえ付け耐熱粘着フィルム1の粘着面の粘着力を介して貼り付け、図4に示す第1中間品10を作成する。
【0021】
図5は第1中間品10の上下面に非導電材料からなる第2押圧板(例えばポリカーボネート樹脂板など)11を介し押圧力を付与する工程を示す説明図、図6は電熱線6に通電する工程を示す説明図である。図5に示すように、耐熱粘着フィルム1の上面に第2押圧板11を位置させ、図示しない流体圧シリンダ装置などからなるプレス機により第2押圧板11に押し力を付与し電熱線6及び耐熱粘着フィルム1をポリカーボネート樹脂シート9上面に対し押さえ付ける。このさい、電熱線6の端末箇所6bなど第2押圧板11による押圧力を付与したくない箇所の真上となる押圧板部分11a、11bは予め切除しておく。
【0022】
そして図6に示すように、電熱線6の各端末箇所6bに導電線12a、12bを介して直流電源装置13を接続し、電熱線6の表面温度が略200℃程度になるように、直流電源装置13の電源電圧を調整する。電圧に対する電熱線6の表面温度はあらかじめ熱電対や赤外線式非接触温度計などで測っておいてもよいし、電熱線6の長さに対して発熱量(消費電力)が所望の値になるように電圧や電流を設定してもよい。この状態の下で、プレス機により第2押圧板11を下方へ押圧して、ポリカーボネート樹脂シート9に対し耐熱粘着フィルム1及び電熱線6を押し付けた状態とする。このさいの第2押圧板11の耐熱粘着フィルム1に対する圧力は略、1MPa〜100MPa(0.1kg/cm〜10kg/cm)の範囲で設定するのが望ましい。プレス時間は温度にもよるが、10〜30秒程度とする。 第2押圧板11によって電熱線6を押圧することにより、溶融された箇所に該電熱線が埋め込まれ、かつ第2押圧板11はポリカーボネート樹脂シート9の表面に至るまで押圧した時点で、シート9の表面に当たり電熱線6さらに埋め込ませることができなくなるため、電熱線6を連続状に且つ断面の一部が連続して外方へ露出するように、且つシート9の表面から殆ど突出させない状態に埋め込むことせることができる。一方、プレス時間が短いと、電熱線6の埋め込みが不十分となり、後にハードコート層を形成させるさいに、ポリカーボネート樹脂シート9に対するハードコート層の被覆状態が不均一になったりする。
【0023】
このような電熱線6への通電処理中において、電熱線6の発生したジュール熱が耐熱粘着フィルム1を通じて第2押圧板11に逃げ、電熱線6の表面温度が下がるようになる。ポリカーボネート樹脂シート9の熱伝達率は第2押圧板11の熱伝達率よりも低いので、電熱線6にて発生した熱は、電熱線6がポリカーボネート樹脂シート9と接触している部分にのみに適用され、シート9内に拡散することが少なくなる。このため、電熱線6が埋設される部分のみが溶融されることになる。
【0024】
また、このような作用を処理当初から利用するには、あらかじめ第2押圧板11を下方変位させて図6に示すように耐熱粘着フィルム1の上面に接触させ、該接触状態で電熱線6に通電し、電熱線6を発熱させる。このようにすると、第2押圧板11を耐熱粘着フィルム1に接触させる前に電熱線6が異常に高温になって耐熱粘着フィルム1を溶かすなどの不都合が回避される。
【0025】
図7はポリカーボネート樹脂シート9に電熱線6が埋設された状態を示す斜視図、図8は図7のa−a部を示す断面図である。前記プレス時間が経過した後、第2押圧板11を上方変位させ、耐熱粘着フィルム1を剥がすと、図7に示す第2中間品14が形成される。このさい、電熱線6の上部はポリカーボネート樹脂シート9の肉部で被われないため、図8に示すように最上部が外方へ露出した状態になる。このさい、電熱線6は上部表面のみが露出し、残りのほとんどが密状に埋め込まれた状態となるので、耐熱粘着フィルム1が剥がされても電熱線6がポリカーボネート樹脂シート9から脱落するようなことは生じない。
【0026】
次に、透明なメタクリル酸メチル樹脂(通称、アクリル樹脂)系塗料をディツプ方式により塗布する。該塗料には、紫外線に対する耐候性を確保するため、UV吸収剤を添加したり、赤外線に対する遮蔽効果を付与するため、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)やITO(スズドープ酸化インジウム)等のセラミクス粒子を分散させておいてもよい。ディップ方式の塗膜形成作用により、第2中間品14のポリカーボネート樹脂シート9の上下の表面に膜が形成される。該ディップ方式の塗布処理が終了した状態の第2中間品14は130℃の雰囲気下での60分程度の加熱乾燥を経て、シロキサン系塗料中に浸漬され、次いで120℃程度の加熱乾燥により縮合化反応が進行されるものとなる。
【0027】
図9はこの縮合化反応の終了した状態の第3中間品15を示す斜視図である。該第3中間品15の上下面にはポリカーボネート樹脂シート9よりも硬質なシリコン系ハードコート層16が形成された状態となる。下地のアクリル樹脂の膜はプライマー層(図19中の符号16aで示す層と同じもの)を形成して、ポリカーボネート樹脂シート9とシリコン系ハードコート層16との密着性を維持させたり、熱膨張差に起因するクラック発生などを防止する上で寄与するものである。シリコン系ハードコート層16や前記プライマー層の膜厚は、塗料の粘度や密度、浸漬時の引き上げ速度や、環境温度などの影響を受けるが、それぞれ数μm程度である。
【0028】
図10は製品である発熱樹脂シート17を示す斜視図である。図9に示す第3中間品15にニッケルやクロム製の接続端子18a、18bが取り付けられて図10に示す発熱樹脂シート17が完成されるのであり、接続端子18a、18bと電熱線6とはスポット溶接又はねじ止めなどにより接続される。
【0029】
ポリカーボネート樹脂は一般に窓材として使われるガラスに比べ、熱伝導率が1/5程度、単位体積当たりの熱容量は65%程度なので、熱が伝わりにくいが温まり易いという性質がある。また前記プライマ一層をなすアクリル樹脂の熱伝導率は、ポリカーボネート樹脂と略同じであるが、シリコン系ハードコート層16はガラスと同等の熱伝導性を持たせることができて、電熱線6に近接した箇所を通じて電熱線6のジュール熱が効果的に伝導され、電熱線6から離れた位置のハードコート層16及びポリカーボネート樹脂シート9の温度上昇を促進し、発熱樹脂シート17全体の温度を均一化させる働きを示す。したがって、電熱線6の埋設側のハードコート層16はこれの表面の霜や曇りを取り除いたり積雪を融解する上で有効に働くのであり、さらに反対面のハードコート層16と共働して該反対面の曇りや霜を取り除く上でも、時間が若干かかるものの十分な昇温効果が得られるものである。
【0030】
図11はポリカーボネート樹脂シート9の厚さが5mmとなされた本発明に係る発熱樹脂シート17の場合と、該発熱樹脂シート17のポリカーボネート樹脂シート9がガラスで置き換えられたものである場合とのそれぞれについて、電熱線6の存在する側の反対側の表面(反対面)についての温度と、電熱線6への通電時間との関係を実験により確認した結果を示すグラフである。この図20から明らかなように、それぞれの場合で反対面は通電時間の大きさに若干の差はあるものの、通電時間に対しほぼ同様に昇温するものとなった。
【0031】
ちなみに、ポリカーボネート樹脂とガラスとの物性を対比すると次のとおりである。
【0032】
熱貫流率は前者が4.3kcal/mh℃であるのに対し、後者が5.2kcal/mh℃であり、また熱伝導率は前者が0.17kcal/mh℃であるのに対し、後者が0.86kcal/mh℃であり、また比熱は前者が0.27cal/g℃であるのに対し、後者が0.2cal/g℃であり、また密度は前者が1.2g/cmであるのに対し、後者が2.5g/cmであり、さらに表面状態は前者が撥水性を有するのに対し、後者が親水性を有している。
【0033】
〈第2実施形態〉
図12は電熱線粘着シート8の製造工程を示す説明図、図13は電熱線粘着シート8を示す斜視図である。
【0034】
先の実施形態において使用した電熱線粘着シート製造具2を用意し、先と同様な一条の電熱線6を、図12に示すように左右各側のポスト部材4a、4bに九十九折り状に掛け回し、多数の直線状部6aを平行に配置した状態の計画パターンの得られるように治具板3上に位置決めする。次に左右のポスト部材4a、4bの列間の距離よりも小さい左右巾の方形となされた耐熱粘着フィルム1を治具板3上面で左右各側のポスト部材4a、4bの列間範囲に位置合わせし手で押さえて貼着させる。
【0035】
次に図示しない流体圧シリンダ装置などの駆動手段を介して第1押圧板5を下方移動させ、第1押圧板5が耐熱粘着フィルム1を治具板3上面に押しつけた後に、左右各側のポスト部材4a、4bを治具板3の上面よりも下側へ変位させる。このさい、九十九折りされた電熱線6の左右端部のUターン箇所を除いた範囲箇所が耐熱粘着フィルム1の粘着面に押圧され貼着され固定された状態となる。次に第1押圧板5を上方移動させ、治具板3の上面から耐熱粘着フィルム1を電熱線6と同体状に取り上げる。そして最後に、図13示すように耐熱粘着フィルム1の粘着面に剥離フィルム7を電熱線6の被われた状態に貼着する。これにより電熱線粘着シート8が作成される。
【0036】
図14は電熱線粘着シート8を貼着されるポリカーボネート樹脂シート9を示す斜視図であり、ポリカーボネート樹脂シート9の左右各端部の上面には予め前後方向へ細長い窪み19a、19bを切削加工などで作成しておき、各窪み19a、19bにバスバー20a、20bを装着する。
【0037】
次に図13に示す電熱線粘着シート8から剥離フィルム7を剥がした状態となしたものを、図14に示すポリカーボネート樹脂シート9の上面に位置合わせをしながら載置し手で押さえるなどして、電熱線粘着シート8の耐熱粘着フィルム1の粘着面を貼着させる。そして、九十九折りされた電熱線6の左右各端部をその対応するバスバー20a、20bの上面に載置しスポット溶接などで接続して、第1中間品10を形成する。
【0038】
図15は耐熱粘着フィルム1及び電熱線6を第1中間品10のポリカーボネート樹脂シート9上面に押さえる工程を示す説明図、図16は電熱線6に通電する工程を示す説明図、図17は第2中間品14を示す斜視図である。図15に示すように、耐熱粘着フィルム1の上面に第2押圧板11を位置させ、図示しない流体圧シリンダ装置などからなるプレス機により第2押圧板11に押し力を付与し電熱線6及び耐熱粘着フィルム1をポリカーボネート樹脂シート9の上面に既述と同様に押さえ付ける。
【0039】
そして図16に示すように、ポリカーボネート樹脂シート9の左右各側のバスバー20a、20bに導電線12a、12bを介して直流電源装置13を接続し、既述と同様に、直流電源装置13の電源電圧を調整し通電する。このような電熱線6への通電が終了した後、第2押圧板11を上方変位させ、第1中間品10から耐熱粘着フィルム1を剥がすと、図17に示す第2中間品14が形成される。このさい、電熱線6の上部は先と同様にポリカーボネート樹脂シート9の肉部で完全には被われず、図8に示すと同様に外方へ露出した状態になる。
【0040】
図18は製品としての発熱樹脂シート17を示す斜視図である。図17に示す第2中間品14が得られた後、先と同様に、ハードコート層16の形成処理を行いさらにハードコート層16に2つのスルーホールd1、d1を形成する。このさい、スルーホールd1はハードコート層16のエッチングか、マスクを使ったリフトオフにより作成される。各スルーホールd1には電源を接続するための接続端子18a、18bが装着されその対応するバスバー20a、20bにスポット溶接又はねじ止めなどにより接続される。
【0041】
図19Aは図18におけるb1−b1部の断面構造を示す図であり、図18Bは図18におけるb2−b2部の断面構造を示す図である。16aはアクリル樹脂からなるプライマー層である。なお、これら図中の既述部位にはその対応する符号を付して説明を省略する。
【0042】
〈第3実施形態〉
図20は当該実施形態に係る発熱樹脂シート17の斜視図、図21は図20のc−c部を示す断面図である。
【0043】
当該実施形態に係る発熱樹脂シート17は、第2実施形態の場合と同様に、ポリカーボネート樹脂シート9の上下の何れか一方の表面(図21では下側の表面)に電熱線6が計画パターンで埋設されると共に該一方の表面の左右各端部に該電熱線6の結合されたバスバー20a、20bが装着されている。また先の第1及び第2実施形態とは異なって、ポリカーボネート樹脂シート9の他方の表面にも図20に示すように電熱線6が計画パターンで埋設されており、この電熱線6は左右各端部のUターン箇所で一本づつに切断され、それぞれの左右端箇所6cがポリカーボネート樹脂シート9の左右各端部に形成された厚さ方向の小孔9aを通じて反対側の表面に導かれ、その対応する側のバスバー20a、20bにスポット溶接などで接続されている。
【0044】
ポリカーボネート樹脂シート9はガラスに比べ加工性がよいため、電熱線6(ニクロム線)が通るような小孔9aは容易に加工される。またポリカーボネート樹脂シート9の上下の表面に電熱線6を埋設する処理は、ポリカーボネート樹脂シート9の上下に、電熱線粘着シート8から剥離フィルム7を剥離したものである裸状シートを配置した状態となしておき、これら裸状シートの外側にプレス機で押し力を付与することにより、ポリカーボネート樹脂シート9の上下の表面のそれぞれに耐熱粘着フィルム1及び電熱線6を同時に押圧し、この状態で既述したところに準じて各表面上の電熱線に通電する。これにより一回のプレス処理及び通電処理により電熱線の埋設処理を行うことができる。またディツプ方式のハードコート処理を実施することによってポリカーボネート樹脂シート9の上下各表面に同時にハードコート層16を形成できる。これにより当該実施形態の発熱樹脂シート17の能率的な製造が可能となる。その他の点は第2実施形態の場合に準じる。
【0045】
当該実施形態の発熱樹脂シート17はポリカーボネート樹脂シート9の上下各表面をその対応する電熱線6で効果的に加熱することができ、前記上下各表面の曇りや霜・積雪などを迅速且つ効率的に除去できるものとなる。
以上本発明の実施形態の説明において、電熱線6としてNi-Crの合金(通称ニクロム)を用いたが、これに限らず、抵抗材料として一般的に用いられるCu-Mn-Ni合金(マンガニン)、Cu-Ni合金、Fe-Cr合金等も同様に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1実施形態に係る電熱線粘着シートの製造を示す説明図である。
【図2】前記電熱線粘着シートを示す斜視図である。
【図3】前記電熱線粘着シートを熱可塑性樹脂シートに貼着する工程を示す説明図である。
【図4】第1実施形態に係る発熱樹脂シートの第1中間品を示す斜視図である。
【図5】前記第1中間品の上下面に押圧板を介し押圧力を付与する工程を示す説明図である。
【図6】前記第1中間品の電熱線に通電する工程を示す説明図である。
【図7】第1実施形態に係る発熱樹脂シートの第2中間品を示す斜視図である。
【図8】図7のa−a部を示す断面図である。
【図9】第1実施形態に係る発熱樹脂シートの第3中間品を示す斜視図である。
【図10】第1実施形態に係る発熱樹脂シートの製品を示す斜視図である。
【図11】第1実施形態の発熱樹脂シートの場合と該シートのポリカーボネート樹脂シートがガラス材である場合のそれぞれについての温度上昇特性を図示したグラフである。
【図12】第2実施形態に係る電熱線粘着シートの製造工程を示す説明図である。
【図13】第2実施形態に係る電熱線粘着シートを示す斜視図である。
【図14】第2実施形態に係るポリカーボネート樹脂シートを示す斜視図である。
【図15】第2実施形態に係る第1中間品を第2押圧板で押さえる工程を示す説明図である。
【図16】第2実施形態に係る第1中間品の電熱線に通電する工程を示す説明図である。
【図17】第2実施形態に係る第2中間品を示す斜視図である。
【図18】第2実施形態に係る発熱樹脂シートの製品を示す斜視図である。
【図19】第2実施形態に係る発熱樹脂シートを示し、Aは図17におけるb1−b1部の断面構造を示す図であり、Bは図17におけるb2−b2部の断面構造を示す図である。
【図20】第3実施形態に係る発熱樹脂シートの製品を示す斜視図である。
【図21】図20のc−c部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 耐熱粘着フィルム
3 治具板
5 押圧板
6 電熱線
7 剥離フィルム
8 電熱線貼着シート
9 熱可塑性樹脂シート(ポリカーボネート樹脂シート)
14a ポスト部材
14b ポスト部材
16 ハードコート層
17 発熱樹脂シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電熱線が透明な熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の表面に密状に埋設されると共に前記一方の表面上の前記電熱線の略全長範囲の任意断面の一部が連続して前記一方の表面の外方に露出し、前記熱可塑性樹脂シートよりも硬質で熱伝導性の大きい材料からなるハードコート層が少なくとも前記一方の表面を被うように形成されることを特徴とする発熱樹脂シート。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂シートがポリカーボネート樹脂シートであり、またハードコート層がシリコン系ハードコート層であることを特徴とする請求項1記載の発熱樹脂シート。
【請求項3】
電熱線に電流を流し該電熱線を120〜250℃の範囲内の温度とした状態の下で、該電熱線をポリカーボネート樹脂シートの表面に押圧板により押圧することにより、前記表面上の該電熱線の押圧された範囲を、連続状に且つ断面の一部が連続して外方へ露出するように且つ前記表面から殆ど突出させない状態に埋め込むことを特徴とする発熱樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
耐熱粘着フィルムの粘着面に電熱線を計画パターンで配置し貼着した電熱線貼着シートを作成し、該電熱線粘着シートをこれの粘着面を介して透明な熱可塑性樹脂シートの表面に貼着した後、前記電熱線に電流を流すことを特徴とする請求項3の発熱樹脂シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−76411(P2009−76411A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246584(P2007−246584)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(399034253)株式会社レニアス (21)
【Fターム(参考)】