説明

発熱樹脂シート及びその製造方法

【課題】軽くて取扱性に優れ、導電性ペースト2が簡便に合成樹脂シート1に接着され、曲げ加工が容易に行え、割れ難いものとなされた発熱樹脂シート100を実現させる。
【解決手段】窓、壁、屋根又は床などの透視用材料、採光用材料或いは暖房用材料として使用されるものであって、合成樹脂シート1の表面に導電性ペースト2が、熱電線パターンとして印刷される。この熱電線パターンは、該導電性ペースト2に電源17を接続して通電しジュール熱により硬化させて得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓、壁、屋根又は床などの透視用材料、採光用材料又は暖房用材料として使用される発熱樹脂シート、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板の表面に導電性ペーストを印刷した後、加熱炉内で120℃〜680℃程度で加熱し焼成したものとした発熱ガラス板が知られている。
【0003】
特許文献1、2、3に示される発熱ガラス板は、建築物の窓ガラスや車両用の窓ガラスとして使用されており、固化状態の導電性ペーストに電源から給電することにより導電性ペーストが電熱線となってガラス板を加熱し、ガラス表面上の結露、積雪又は氷結などを防止し或いは除去することができるものである。
【0004】
さらに他の応用的な使用も可能であり、例えば建築物の壁や床の面材料として使用した場合は、導電性ペーストが電熱線となって壁や床を加熱し、寒冷地において快適な居住空間を提供することができるのであり、また建築物の屋根の暴露面に使用した場合は、導電性ペーストが電熱線となって該暴露面を加熱し、屋根上への積雪を防止したり、屋根上の積雪の下面を溶かして地面に滑落させることができる。
【0005】
一方、透視用材料、採光用材料としてガラス以外にも、合成樹脂シートに電熱線を設けたものが、特許文献4に開示されている。特許文献4では、合成樹脂シートの肉部内の挿通孔内にニクロム線或いは複合発熱繊維からなる電熱線を挿通させてなる発熱樹脂シートを開示している。
【特許文献1】特開2004−327356号公報
【特許文献2】特開2003−160029号公報
【特許文献3】特開平6−191896号公報
【特許文献4】登録実用新案第3029638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂シートはガラスに比べ重量が軽く取り扱いが容易である。一方、導電性ペーストはキュア温度(硬化温度)の低いものも存在するが、一般には樹脂シートの変形温度(例えば、ポリカーボネートでは140度)を超えおり、加熱炉に投入して硬化温度まで上昇させると樹脂シート表面の平坦性に影響を与えるものとなる。尚、ポリカーボネートのヴィカット軟化点(軟化温度)は156℃であり、溶融温度は250℃である。
【0007】
一方、特許文献4の合成樹脂シートでは、樹脂シートと電熱線との間に空気が存在したものとなるため、合成樹脂シートを電熱線により効率的に加熱することができず、また挿通孔やこれの内方に存在した空気が光を不揃いに屈折させるために合成樹脂シートを透して見た像が歪むので車両用窓ガラスには不向きである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は取り扱いが容易な発熱樹脂シートを実現させることを目的とするものであるため、合成樹脂シートと、前記合成樹脂シートの表面にマスク印刷された導電性ペーストによりなる電熱線パターンと、該シリコン系ハードコート層が合成樹脂シートよりも硬質でしかも大きな熱伝導率を有しているシリコン系ハードコート層とを有し、前記導体ペーストとその直下の合成樹脂シートが溶融接着されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る発熱樹脂シートの製造方法は、透光発熱樹脂シートを製造する方法であって、合成樹脂シートの表面に導電性ペーストのパターンをマスク印刷し、該導電性ペーストに電源を接続して通電しジュール熱を発生させることにより、前記導電性ペーストを硬化させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
上記した本発明の発熱樹脂シートによれば、ガラスよりも軽量化されて取扱性に優れた、車両や建築物の窓の透視材料などとして有益に使用可能な熱電線を備えた合成樹脂シートを提供できるものである。
【0011】
すなわち、シリコン系ハードコート層の存在により、発熱樹脂シートの表面を傷の付き難いものとなすことができると共に、ハードコート層により熱電線パターンの間箇所を能率的に加熱することができ、発熱樹脂シートの表面の結露、積雪、氷結を早く消失させることができる。
【0012】
また、本発明の発熱樹脂シートの製造方法によれば、合成樹脂シートの平坦性及び透明性を損なうことなく、導電性ペーストを硬化させて接着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
〈発熱樹脂シートの実施形態〉
図1は本発明に係る発熱樹脂シートを右寄り上方から見た斜視図、図2は図1のx1−x1部を示す側方視断面図、図3は前記発熱樹脂シートの一部が存在しない状態を示した斜視図である。
【0014】
これらの図において、1は発熱樹脂シート100の基礎材料をなす平面視方形状の合成樹脂シートである。具体的な材料は既知の合成樹脂の中から発熱樹脂シート100の用途に適したものを採用すればよいが、例えば自動車や建築物の窓の透視材として使用するときは、透光性能に優れ引張力や圧縮力に対して強くしかも軽量で傷が付きにくい合成樹脂を採用するのがよいのであり、また壁材として使用するときは不透明で熱伝導率ができるだけ小さく比較的丈夫な合成樹脂を採用し、床材として使用するときは不透明で熱伝達率が小さく耐衝撃性に優れ傷が付きにくい合成樹脂材料を採用する。合成樹脂シート1の材料として、特にポリカーボネート樹脂を採用したときは、殆どの用途に支障なく使用できる発熱樹脂シート100が得られる。
【0015】
2は合成樹脂シート1の上面に略数μm〜数十μm程度の厚さに印刷された導電性ぺーストであり、電熱線としてのパターンを構成するものである。導電性ぺースト2は、後述する多数条パターン3に接着され硬化された状態となされている。該導電性ペースト2は導電成分と、これをペースト化する有機ビヒクルなどからなっており、導電成分としては基本的には銀が用いられ、粉末の形態で導電性ペースト2に含有される。導電性ペースト2の抵抗値を調整するため、銀のほかに、パラジウム、白金、金及びロジウムなどの導電性金属が含まれていてもよい。有機ビヒクルとしては、導電性ペースト2に対して印刷性を付与し得る有機質樹脂であればよく、例えばエチルセルロース樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂などをα−テルピネオール、ブチルカルビトールアセテートなどの溶剤に溶解したものが用いられる。
【0016】
上記多数条パターン3は、図1に示す例では、縦方向b1の巾が略1mm程度で横方向b2の長さが略200mm程度となされた6本の水平直条部3aを略13mmの間隔で平行に且つ縦方向b1へ配列し、これら水平直条部3aの右端側には合成樹脂シート1の上辺側から4本の水平直条部3aを電気的に結合した上下向きの上側結合条部3bを有すると共に合成樹脂シート1の下辺側から2本の水平直条部3aを電気的に結合した上下向きの下側結合条部3cを有し、且つ、それら6本の水平直条部3aの左端側には合成樹脂シート1の上辺側から2本の水平直条部3aを電気的に結合した上下向きの上側結合条部3dを有すると共に合成樹脂シート1の下辺側から4本の水平直条部3aを電気的に結合した上下向きの下側結合条部3eを有するものとなされている。このさい、上記結合条部3b、3c、3d、3eは何れも横方向b2の巾を略10mmとなされている。
【0017】
該多数条パターン3は全体として2本の水平直条部3a(a1)、3a(a2)、2本の水平直条部3a(a3)、3a(a4)、及び、2本の水平直条部3(a5)、3a(a6)を直列に接続した回路構造となされており、該回路構造の各端末部をなす結合条部3c、3dのそれぞれには2つの比較的小さい第1透孔4、4が形成されている。
【0018】
5はメタクリル酸メチル樹脂(アクリル樹脂)層であり、固化状態の導電性ペースト2を含めて、合成樹脂シート1の上下の表面の全体を適宜な手法により例えば数μm程度の層厚で被覆したものとなされている。
【0019】
6はシリコン系ハードコート層であり、上下のアクリル樹脂層5の外面の全体を適宜な手法により例えば数μmの層厚で被覆したものとなされている。このさい、上記アクリル樹脂層5は、合成樹脂シート1とシリコン系ハードコート層6との密着性維持や、熱膨張差に起因するクラック発生などを防止するプライマー層として機能するものである。
【0020】
上記したアクリル樹脂層5及びシリコン系ハードコート層6のうち結合部3c、3dのそれぞれを被った箇所には方形状の第2透孔7、7が形成され、図2に示すように、第2透孔7内のそれぞれに金属端子8を挿入されると共に、金属端子8がそれぞれの外方側の表面を大気に露出された状態で、第1透孔4及びこれに螺着される止めネジ9によって固定され固化状態の導電性ペースト2に電気結合されるか或いは止めネジを使用しないで半田付けなどにより固化状態の導電性ペースト2に電気結合される。
【0021】
〈発熱樹脂シートの製造方法の実施形態〉
厚さが例えば5mm程度であり、横方向長さが29cmで縦方向長さが21cmの長方形板となされた合成樹脂シート1を用意する。合成樹脂シート1は例えば窓などの透視材料として使用される場合には透明なポリカーボネート樹脂シートを使用するのがよい。以下、ポリカーボネートをこの素材として説明する。この合成樹脂シート1の一方の表面に導電性ペースト2を上記した多数条パターン3でスクリーン印刷する。
【0022】
図4はこの印刷で使用される装置の主要な部品を斜め上方から見た斜視図、図5はスクリーン印刷中のインク透過部パターンとその内方の導電性ペーストの関係を示す説明図である。スクリーン版10は上方視方形状の枠体13の下面に上記多数条パターン3に対応したインク透過部パターン14を有するスクリーン膜15を張着されたものとなされている。
【0023】
印刷に際しては、被写体としての合成樹脂シート1を図示しない支持台上に水平状にセットする。次に合成樹脂シート1に対しスクリーン膜15を設定する(図5A)。そして、スキージにより、スクリーン膜15上の導電性ペースト2をインク透過部パターン14の内方に押し込む(図5B)のであり、これによりインク透過部パターン14内に満たされた導電性ペースト2が合成樹脂シート1の上面に接着される。
【0024】
スクリーン膜15を取り外した時にインク透過パターン14内から抜け出る(図5C)。このとき、側周面箇所がスクリーン膜15の組織と擦れて掻き上げられるため、導電性ペースト2がインク透過パターン14内から完全に抜け出たとき、図5Dに示すように上方へ突出した先鋭状のバリ2aが形成される。
【0025】
このような状態に印刷された多数条パターン3の導電性ペースト2を、そのまま大気中で或いは比較的低い加熱温度の加熱炉内で乾燥させ固化させた場合は、バリ2aがそのままの形状で固化して残存するため、該導電性ペースト2を被覆する液状の被覆剤(プライマーコート剤、ハードコート剤)を塗布したとき、塗布された被覆剤が乾燥する前にバリ2aの先端が露出するか或いはそれに近い状態となって被覆層が適正に形成されない状態が生じる。導電ペーストとしては、長時間室温にて硬化するものもあるが、バリ2aが残ったままの硬化となってしまう。一般にバリ2aは、導電性ペースト2に適当なレべリング剤を添加することにより回避できる場合があるが、多数条パターン3の高さが数10μmに達する場合、そのエッジ部分において被覆剤が覆いきれず、パターンが露出してしまうという問題が起こりやすい。
【0026】
またポリカーボネートを素材とする合成樹脂シート1の変形温度は140℃、ヴィカット軟化点は156℃であり、本実施例において使用する導電性ペースト2のキュア温度硬化温度の温度より低いため、ガラスの場合のように硬化温度に達するように炉内に投入することができない。
【0027】
このような事態に配慮して、以後の処理は、次のように実施する。
合成樹脂シート1にスクリーン印刷された導電性ペースト2を大気中で或いは比較的低い加熱温度の加熱炉内で乾燥させるなどして初期的な乾燥を実施する。具体的には、合成樹脂シート1が変形する温度よりもやや低い温度(130℃)で加熱される加熱炉内で例えば乾燥させることにより導電性ペースト2が以後に行われる処理において変形しない程度に硬化させて加熱炉から取り出す。
【0028】
図6は導電性ペースト2に通電して硬化させる様子を示す説明図である。温度を下げると、導電性ペースト2の電気抵抗値が高くなるため、加熱乾燥させた温度を下げずに、2つの結合条部3c、3dに導電線16a、16bを介して直流電源17の正極と負極を接続し、直流電力を多数条パターン3の導電性ペースト2からなる回路構造に供給する。これにより導電性ペースト2の回路構造を電熱線として機能させジュール熱により硬化温度に到達させる。
【0029】
このさい、該導電性ペースト2の加熱温度は、導電性ペースト2の硬化が進むに伴って直流電源の電圧を調整することにより漸次に高温とし、最終的に合成樹脂シート1が溶融する温度(250℃)としてもよい。本実施例としては、ヴィカット軟化点よりも高い170度に設定して30分間通電加熱した。
【0030】
このように合成樹脂シート1のヴィカット軟化点以上に加熱すると、導電性ペースト2と合成樹脂シート1との接触箇所の近傍の合成樹脂シート1が軟化し、導電性ペースト2は、合成樹脂シート1がガラスである場合に較べ遙かに低い加熱温度で焼き付けられたとほぼ同様な状態となり、この後、合成樹脂シート1が固化温度まで降下されたとき、導電性ペースト2は合成樹脂シート1に強力に接着された状態となる。
【0031】
図7は、合成樹脂シート1と導電性ペースト2の加熱前後の断面を示す摸式図である。図7Aの状態から、導電性ペースト2に通電すると、導電性ペースト2はジュール熱で発熱する。その熱で導電性ペースト2の直下の合成樹脂シート1が軟化する。この時、導電性ペースト2は軟化した樹脂シートの中に沈み込むことになる(矢印イ)。このときの様子を図7Bに示す。導電性ペースト2の沈み込みによって、軟化した合成樹脂は導電性ペースト2の側面にせり出す(矢印ロ)し、導電性ペースト2のパターンエッジ20の頂上の高さに向けて合成樹脂が盛り上がる。その結果、導電性ペースト2の左右のパターンエッジ20が溶融した樹脂により埋まり、なだらかな起伏を有する断面形状が形成される。
【0032】
図8は印刷直後から通電加熱後までの表面高さの変化を、導電性ペースト2を横切るように探蝕子により測定した結果を示すものである。図8Aにおいて、探触子はY方向に移動させて高さXを測定した。図中、X方向の単位はμmであり、高さXの基準(0点)は、導電性ペースト2から十分離れた位置の合成樹脂シートの表面高さ(合成樹脂シートの基準面高さという)とした。また、Y方向の単位はmmである。
【0033】
図8Bは印刷時の形状を示しており、立ち上りが急峻(図中ハ参照)で、起伏が大きな表面形状が得られている。図8Cに示すように、合成樹脂シート1(ポリカーボネート樹脂シート)の変形温度手前の130℃で1時間硬化乾燥した後においては、基準面高さからの立ち上がりが若干緩くなっている(図中二参照)ものの大きな変化は認められなかった。一方、図8Dに示すように、導電体ペーストのキュア温度170度に設定して30分通電加熱した場合、基準面高さからの高さの立ち上がりが滑らかになり(図中ホ参照)、その高さも低くなっている。導電性ペースト2のパターン幅は上方からの観察測定によれば、一連の工程で変化はない。したがって、表面の高さ変化が滑らかになったのは、導電性ペースト2の沈み込みと、合成樹脂シート1の側面へのせり上がりの結果であるといえる。
【0034】
次に、固化された導電性ペースト2の印刷された合成樹脂シート1(第1中間品)に透明なメタクリル酸メチル樹脂(アクリル樹脂)系塗料をディップ方式により塗布してアクリル樹脂層5を形成する。この際、予め紫外線に対する耐候性を確保するため、UV吸収剤を添加したり、赤外線に対する遮蔽効果を付与するため、酸化スズのナノ粒子を分散させておいてもよい。これにより、ディップ方式による塗膜形成により、合成樹脂シート1の上下の表面にアクリル樹脂の膜が形成される。この膜の形成された状態の第1中間品を加熱乾燥して、第2中間品を得る。この加熱乾燥は、合成樹脂シート1がポリカーボネート樹脂シートである場合には、例えば、130℃程度の雰囲気下で略60分間継続される。
【0035】
次に第2中間品をシロキサン系塗料中に浸漬し、この後、例えば120℃程度の雰囲気下で加熱乾燥させる。これにより縮合化反応が進み、合成樹脂シート1(例えばポリカーボネート樹脂)やアクリル樹脂層5に較べ硬質であり且つ合成樹脂シート1よりも熱伝導率の大きいものであるシリコン系ハードコート層6が各アクリル樹脂層5の外面の全体を被覆するように形成される。
【0036】
ここにおいて、下地のアクリル樹脂層5は既述したように、合成樹脂シート1とシリコン系ハードコート層6との密着性維持や、熱膨張差に起因するクラック発生などを防止するプライマー層として機能する。またアクリル樹脂層5やシリコン系ハードコート層6のそれぞれの層厚は、塗料の粘度や密度、浸漬時の引上げ速度や環境温度の影響を受けるのであって、例えば数μm程度となされる。
【0037】
図9は、アクリル樹脂層5やシリコン系ハードコート層6による被覆状態を示す模式的に表した断面図である。
図9Aは、合成樹脂シート1の樹脂の変形温度よりも低く、かつ導電性ペースト2のキュア温度よりも低い常温乾燥あるいは130度にて導電性ペースト2を加熱した場合の第1中間体をシリコン系ハードコート層6で被覆状況の断面を示している。この断面形状を参照すると、導電性ペースト2のパターンエッジ20の付近において、立ち上がりが急峻であるためアクリル樹脂層5およびシリコン系ハードコート層6における被覆性が悪くエッジ部分が露出し易い。一方、図9Bに示すように、図9Aと比較して、合成樹脂シート1の表面形状が滑らかに導電性ペースト2のパターンエッジの頂点に連続した形状となるため、アクリル樹脂層5、シリコン系ハードコート層による良好な被覆性を達成できる。
【0038】
最後に、図1及び図2に示すようにシリコン系ハードコート層6及びアクリル樹脂層5のうち各結合部3c、3dを被う箇所に第1透孔4及び第2透孔7を形成し、該透孔7内に金属端子8を嵌挿し、止めネジ9及び第1透孔4を介して固定するか或いは固化状態の導電性ペースト2に半田付けするなどして、その対応する結合条部3c、3dに結合させる。
【0039】
〈発熱樹脂シートの使用例〉
次に上記のように形成した図1に示す発熱樹脂シート100の使用例及び各部の作用について説明する。
【0040】
合成樹脂シート1が透明なポリカーボネート樹脂シート又はこれに準じた物性を有するものとなされ且つアクリル樹脂層5やシリコン系ハードコート層6が透明となされた発熱樹脂シート100は、例えば、建設土木機械(クレーン、バックホー、ブルドーザなど)のキャビン内の運転手の視界を確保するために形成されるキャビン用窓の透視材料などとして使用される。
【0041】
そして、2つの金属端子9に導電線及びスイッチを介してバッテリーの正極及び負極を接続させる。そして必要時にスイッチを入り状態として多数条パターン3となされた固化状態の導電性ペースト2からなる回路構造に通電する。このさいの電流及び電圧は発熱樹脂シート100の製造時の導電性ペースト2の硬化処理におけるそれらよりも小さいものである。これにより固化状態の導電性ペースト2が電熱線として作用し、ジュール熱を発生する。
【0042】
このジュール熱は合成樹脂シート1の肉部を経て伝導される一方で、固化状態の導電性ペースト2の近傍のアクリル樹脂層5を経てシリコン系ハードコート層6に伝導され、以後は合成樹脂シート1よりも熱伝導率の大きいシリコン系ハードコート層6の肉部内を迅速に伝導される。これにより、多数の水平直条部3aの間をなす発熱樹脂シート100部分はシリコン系ハードコート層6の存在しない場合よりも早く加熱されて、発熱樹脂シート100の表面の結露、積雪或いは氷結を迅速に消失されて透視性能を正常に発揮できる状態に回復される。
【0043】
また合成樹脂シート1は機械的強度を大となし得るため、発熱樹脂シート100を衝撃に強くて破損し難いものとなす上で寄与する。
【0044】
またシリコン系ハードコート層6は合成樹脂シート1よりも硬質となって傷が付き難いものとなるのであり、さらには発熱樹脂シート100はその殆どが合成樹脂であるためガラスよりも大幅に軽量となすことができる。
【0045】
上記では合成樹脂シート1が透明なポリカーボネート樹脂シートである場合についての好ましい使用例について説明したが、本発明はこれに限らず、他の任意な車両や建築物の窓の透視材料や採光材料など種々の用途に使用して差し支えないものであり、このさい建築物などに使用するときは固化状態の導電性ペースト2への電力供給は商用交流電源から直流電力を得て供給するのがよい。
【0046】
さらに発熱樹脂シート100は屋根、壁、床の面材料としても使用することもできるのであり、この場合は、透視可能であることや迅速な加熱の必要は必ずしも必要とされないのであり、したがって導電性ペースト2を除いた合成樹脂シート1などの各部は用途に適した任意な合成樹脂材料で形成すればよい。
【0047】
尚、本実施例においては、導体ペーストのキュア温度として合成樹脂シートのヴィカット転移点を越えるものとしたが、変形温度を超えるキュア温度を持つ導体ペーストであっても、本実施例のように導体ペーストへの通電制御において変形温度を超えるように通電設定とすることにより、合成樹脂シート表面の平坦性を失うことなく硬化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施例に係る発熱樹脂シートを右寄り上方から見た斜視図である。
【図2】図1のx1−x1部を示す側方視断面図である。
【図3】発熱樹脂シートの斜視図である。
【図4】スクリーン印刷で使用されるスクリーン版を斜め上方から見た斜視図である。
【図5】スクリーン印刷中の、インク透過部パターンとその内方の導電性ペーストとの関係を示す説明図である。
【図6】導電性ペーストをこれに通電して乾燥させる様子を示す説明図である。
【図7】断面形状の変化の説明図である。
【図8】断面形状の実測図である。
【図9】水平直条部や結合条部の被覆状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 合成樹脂シート(ポリカーボネート樹脂シート)
2 導電性ペースト
3 多数条パターン
6 シリコン系ハードコート層
17 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂シートと、
前記合成樹脂シートの表面にマスク印刷された導電性ペーストによりなる電熱線パターンと、
該シリコン系ハードコート層が合成樹脂シートよりも硬質でしかも大きな熱伝導率を有しているシリコン系ハードコート層とを有することを特徴とする発熱樹脂シート。
【請求項2】
前記電熱線パターンのパターンエッジの頂上は、前記合成樹脂シートの基準面高さに対して高い位置にあり、前記電熱線パターンエッジにおいて、前記合成樹脂シートは、前記基準面高さから前記パターンエッジ頂上の高さ向けて盛り上がる膜厚を有するものであることを特徴とする請求項1記載の発熱樹脂シート。
【請求項3】
前記合成樹脂シートがポリカーボネート樹脂シートであることを特徴とする請求項1又は2記載の発熱樹脂シート。
【請求項4】
透光発熱樹脂シートを製造する方法であって、合成樹脂シートの表面に導電性ペーストのパターンをマスク印刷し、
該導電性ペーストに電源を接続して通電してジュール熱を発生させることにより、前記導電性ペーストを硬化させることを特徴とする発熱樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
前記導体ペーストへの通電は、前記樹脂シートの変形温度よりも高い温度設定となる通電であることを特徴とする請求項4の発熱樹脂シートの製造方法。
【請求項6】
前記導体ペーストへの通電は、前記樹脂シートのヴィカット転移点よりも高い温度設定となる通電であることを特徴とする請求項4の発熱樹脂シートの製造方法。
【請求項7】
前記導電性ペーストが硬化した後に、前記導電性ペーストの存在する側の前記合成樹脂シート表面を、前記導電性ペーストを含めてハードコート層で被覆することを特徴とする請求項4又は5記載の発熱樹脂シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−117292(P2009−117292A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292036(P2007−292036)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(399034253)株式会社レニアス (21)
【Fターム(参考)】