説明

発熱量および排気ガスの測定装置

【課題】高精度に効率よくエマルジョン燃料の燃焼時の発熱量を計測し、かつ、同時に排気ガスのNOx濃度やSOx濃度を計測できる発熱量および排気ガスの測定装置を提供する。
【解決手段】燃料供給部4に接続されたバーナー1が装着された燃焼筒10を、燃焼生成排気系統20と測定系統30とに対して移動自在に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、低公害燃料として用いる安定性の高いエマルジョン燃料等の燃料を燃焼筒で燃焼した際の、発熱量および排気ガスの測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラー等の各種燃焼装置では、燃焼効率の向上と同時に大気汚染を防止するために、排気ガスのNOx(窒素酸化物)濃度やSOx(イオウ酸化物)濃度や煤塵濃度を減少させることへの要請が強まっている。
【0003】
純燃料油に水を混合してエマルジョン化(乳化)したエマルジョン燃料は、石油系燃料の使用量を減少させると共に、NOxや煤煙スラッグ等を減少させることができる。すなわち、エマルジョン燃料は、高温の燃焼筒内に噴霧されたとき、燃料液滴中の水は瞬時に沸騰して、燃料液滴を微粒化(ミクロ爆発)する。これによって高速で高効率の燃焼を実現し、COや煤の生成を抑制できる。また、水の蒸発によって火炎温度が低下するので、排気ガス中のNOxの低減効果もあるので低公害燃料として用いることができる。
【0004】
エマルジョン燃料を製造する場合は、インライン型の混合装置である、スタティックミキサーや高圧ホモジナイザ等を用いて燃料を混合して製造している。
【0005】
製造されたエマルジョン燃料としては、例えば、有機物を熱分解させて生成した炭素素材を粉化処理し、所定割合の水を混合させた液状炭素燃料が知られている(例えば、特許文献1)。
【0006】
また、燃料1に対し水2〜5を加えてエマルジョン化した加水燃料も知られている(例えば、特許文献2)。
【0007】
また、有機性物質の熱分解により生成した炭化物と液体状可燃成分とを混合したエマルジョン燃料も知られている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−130663号公報
【特許文献2】特開2002−89832号公報
【特許文献3】特開2005−272636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、エマルジョン燃料は様々な種類が存在するためその評価が必要になる。つまり、ボイラー等の各種燃焼装置で使用する燃料として、様々な種類のエマルジョン燃料を評価するためには、燃料の燃焼時の発熱量や排気ガスのNOx濃度やSOx濃度等を適切に計測する必要がある。
【0010】
しかしながら、現状では、効率よくエマルジョン燃料の燃焼時の発熱量を高精度で計測し、かつ、同時に排気ガスのNOx濃度やSOx濃度等を計測できる発熱量および排気ガスの測定装置は見当たらない。
【0011】
本発明はこれらの事情に基づいてなされたもので、高精度に効率よくエマルジョン燃料の燃焼時の発熱量を計測し、かつ、同時に排気ガスのNOx濃度やSOx濃度を計測できる発熱量および排気ガスの測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施の形態に係る発熱量および排気ガスの測定装置は、燃料供給部に接続されたバーナーが装着され、所定方向に移動自在な燃焼筒と、この燃焼筒に着脱自在に結合して、前記燃焼筒とともに一体の燃焼室を形成する燃焼室及びその周囲に形成された貯水室を有する測定容器と、この測定容器が前記燃焼筒から分離された状態において、一端に設けられた開口部が前記燃焼筒の排出口に対向する位置に配置され、前記燃焼筒が前記測定容器に結合した状態において、前記燃焼筒の排出口に対向する位置から前記燃焼筒の移動を妨げない位置に退避するように設けられた回動排気管と、前記測定容器に設けられた発熱量測定部と、前記燃焼室の排出部に接続された排気管路と、この排気管路に設けられた排気ガス測定部と、を有することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の上記発熱量および排気ガスの測定装置においては、前記燃焼筒の入り口側には、回動排気管からの排熱流あるいは前記測定容器の燃焼室からの排熱流が戻り排熱管により還流されて供給されることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置においては、前記燃料供給部から前記バーナーには定量ポンプにより定量の燃料が送り込まれることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置においては、前記燃焼筒は中央部の直径が最大で、かつ、前記排出口の直径が最小であることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置においては、前記燃焼筒は、該燃焼筒に対するバーナーの位置が調整可能であることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置においては、前記測定容器には、この測定容器に前記燃焼筒が装着されたことを検知するセンサが設けられ、このセンサの出力信号により、前記発熱量測定部と前記排気ガス測定部とが作動することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置においては、前記測定容器からの排熱流は、分岐管路により前記排気ガス測定部と前記燃焼筒とに分岐して導かれることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置においては、前記測定容器には圧力制御弁が設けられ、該圧力制御弁に連動したリミットスイッチによって前記測定容器に貯水されている水の沸騰時間を検出することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置においては、前記排気ガス測定部は、排気ガスのNOx濃度とSOx濃度を計測することを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置においては、前記バーナーは燃料の旋回流を発生する渦流式噴射ノズルを備え、この燃料噴射ノズルからの燃料の噴射により、前記燃焼筒の内部に火炎旋回流が形成されることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置においては、前記戻り排熱管により還流される排熱流は、前記燃焼筒の入り口側の対称位置に形成されている一対の取り込み口から前記燃焼筒内に導入されることにより、前記バーナーとともに前記燃焼筒内に火炎の旋回流を形成することを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置においては、前記燃焼筒は中央部の直径が最大で、かつ、前記排出口の直径が最小であることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置においては、前記測定容器からの排熱流は、分岐管路により前記排気ガス測定部と前記燃焼筒とに分岐して導かれることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置においては、前記燃焼室の排出部に接続された排気管路は、前記燃焼室の排出部に接続された分岐管と、この分岐管の一方に第1の流量調整バルブを介して一端が接続された主排気管とからなり、前記主排気管の他端は前記排気ガス測定部に接続されていることを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置においては、前記主排気管の途中には、前記測定容器の上方に配置された固定排気管の一端が燃焼・測定切替バルブを介して接続されており、また、前記固定排気管の他端には管継ぎ手が設けられており、この管継ぎ手により前記回動排気管が、この管継ぎ手の周囲に回動可能に接続されていることを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置においては、前記戻り排熱管はその長さが伸縮可能に形成されており、前記燃焼筒の移動機構は、ラック及びピニオン機構により構成されていることを特徴とするものである。
【0028】
また、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置においては、前記戻り排熱管は、前記燃焼室の排出部側の分岐管の他方に第2の流量調整バルブを介して接続されていることを特徴とするものである。
【0029】
また、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置においては、前記戻り排熱管は、第3の流量調整バルブを介して戻し用分岐管の一端に接続され、この戻し用分岐管の他端は第4の流量調整バルブを介して送風機に接続されるとともに、前記戻り排熱管の第3の端部は前記第2の流量調整バルブを介して前記燃焼室排出部側の分岐管に接続されていることを特徴とするものである。
【0030】
また、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置においては、前記燃料供給部は、純燃料油に水を混合してエマルジョン化したエマルジョン燃料を前記バーナーに供給することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、高精度に効率よくエマルジョン燃料の燃焼時の発熱量を計測でき、かつ、同時に排気ガスのNOx濃度やSOx濃度を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の発熱量および排気ガスの測定装置の実施形態の一例を示す模式構成図。
【図2】本発明の発熱量および排気ガスの測定装置の燃焼生成系統の動作を説明する模式説明図。
【図3】本発明の発熱量および排気ガスの測定装置の測定系統の動作を説明する模式説明図。
【図4】本発明の発熱量および排気ガスの測定装置に燃料を供給する燃料供給部の模式構成図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置についての実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
【0034】
図1は、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置の実施形態の一例を示す概略構成図である。
【0035】
燃料の発熱量および排気ガスの測定装置60は、測定対象のエマルジョン燃料等の燃料を燃焼させる燃焼筒10と、この燃焼筒10が選択的に結合する排気系統20および測定系統30から構成されている。
【0036】
燃焼筒10は、管軸に沿ってその直径が変化する水平に配置された筒状体であり、入り口にはバーナー1が、燃焼筒10の内側に向けて炎を噴射するように、装着されている。燃焼筒10の出口は開放され、燃焼排気ガスの排出口11を形成している。燃焼筒10は、バーナー1が装着されている入口から排出口11に向って、徐々に直径が増加し中央部12で最大になる。その後、直径は徐々に縮小し、排出口11で最小になる。燃焼筒10はバーナー1を装着した状態で全体が矢印Aで示すように水平方向に往復移動が可能となっている。すなわち、燃焼筒10の下部には、例えば、ラック13aとピニオン13bとの組み合わせによる往復移動機構13が設けられている。
【0037】
燃焼筒10に装着されたバーナー1には、図示しないが、燃料噴射ノズル2とその両側に空気供給ノズルおよび予熱用点火ノズルが列設されている。燃料噴射ノズル2は渦流式噴射ノズルを用いている。渦流式噴射ノズルは、例えば、ノズル筒内に接線方向から高圧ガスを流入させることによりノズル筒内で旋回流(または、回転流)が形成される。この渦流式噴射ノズルを用いた燃料噴射ノズル2からの燃料の噴射により、燃焼筒10の内部に燃焼時の火炎による旋回流が形成される。
【0038】
また、バーナー1の燃焼筒10に対する装着位置や、バーナー1に対する燃料噴射ノズル2の突出長についてはそれぞれ調整可能な構造になっている。
【0039】
また、燃焼筒10には、燃焼筒10の入り口近傍の対称位置に形成されている2個の排熱流取り込み口10a、10bが設けられている。この排熱流取り込み口10a、10bには、後述する測定容器31から排出した排熱流が還流して送り込むための戻り排熱管32が接続されている。この戻り排熱管32は、例えばダイヤフラムのように、その長さが伸縮自在に形成されており、その端部は燃焼筒10の排熱流取り込み口10a、10bのそれぞれに接続するために分岐されている。
【0040】
戻り排熱管32から還流されてくる戻りの排熱流は、燃焼筒10の対称位置に形成されている取り込み口10a、10bから取り込まれると、図示しないが、燃焼筒10の取り込み口10a、10bに設けられたガイド板に導かれて旋回流が形成される。この形成された旋回流と燃料噴射ノズル2によって形成される火炎の旋回流とは、旋回方向が一致しているので燃焼時の燃焼筒10の内部の火炎は合流した強力な旋回流となる。
【0041】
バーナー1には、燃焼筒10の外部に設けられた燃料供給管路3が接続されている。この燃料供給管路3には定量ポンプPと燃料供給バルブV4とを介して燃料供給部4が接続されている。したがって、燃料供給管路3から供給される燃料は、定量ポンプPにより定量ずつバーナー1に供給される。
【0042】
なお、燃焼筒10には特に図示はしないが、室内の温度を測定する温度センサが設けられており、温度センサによって燃焼筒10の燃焼状態が検知でき、燃焼がガス化燃焼状態になったか否かも判断することができる。
【0043】
次に、燃焼生成排気系統20について説明する。燃焼生成排気系統20は、回動排気管21と、一端がこの回動排気管21と管継ぎ手22を介して接続され、他端に燃焼・測定切替バルブV2が接続された固定排気管23とにより構成されている。回動排気管21は、互いに平行な両端部とこれらの両端部に直交する中央部からなる、全体としてZ字型に曲折された管体である。この回動排気管21の一端には、燃焼筒10の排出口11に対向配置される径大な開口部24が設けられている。回動排気管21の他端は、固定排気管23の一端に回転可能に嵌合されている。これにより、回動排気管21は、その中央部と開口部24が固定排気管23に接続された管継ぎ手22の周囲に回動可能に設けられている。
【0044】
回動排気管21の径大な開口部24は、燃焼筒10が回動排気管21方向に移動した場合、その排出口11が開口部24内に挿入可能に形成されている。
【0045】
また、回動排気管21の開口部24の外側にはロープ係止部25が設けられ、このロープ係止部25にロープ26の一端が係止されている。ロープ26の他端側は、固定排気管23の近傍に固定されたプーリ27に巻回されている。プーリ27はモータMの回転軸によって回転され、これによってロープ26を巻き取り、あるいは巻戻す。ロープ26の巻き取り動作によって、回動排気管21は固定排気管23に接続された管継ぎ手22を中心として回動する。回動排気管21の開口部24は、燃焼筒10の排気口に対向する位置から上方に移動する。この結果、燃焼筒10が測定容器31に結合される位置まで往復移動する際の妨げにならない位置に退避する。
【0046】
燃焼・測定切替バルブV2は、燃焼筒10の燃焼動作の間は開放し、後述する測定動作の際は閉止するように作動する。
【0047】
次に、測定系統30について説明する。測定系統30は、測定容器31とこの測定容器31に接続されている各種管路と、各種測定手段により形成されている。
【0048】
測定容器31は内部に200Lの水を貯水する密閉された貯水室33と、その中央部に貯水室33貫通して設けられた燃焼室34により構成されている。燃焼室34は、入り口側の嵌合部35および出口側の排出部36の直径よりも中央部の直径が拡大された筒状に形成されている。燃焼室34の入り口側の嵌合部35には、燃焼筒10の排出口11が着脱自在に嵌合し、嵌合した状態で、燃焼筒10と合体して、全体で一体化した燃焼筒を形成する。
【0049】
測定容器31の嵌合部35の外側の対向した位置には、光電変換素子37と光源38が検知センサとして配置されている。この検知センサは、燃焼筒10の測定容器31への嵌合及び離脱状態が検知される。検知された信号は、後述する発熱量検出部39と排気ガス検出部51に入力される。
【0050】
また、測定容器31の上部には注入バルブV21を介して接続された注水管41と、圧力制御弁42が設けられている。圧力制御弁42は貯水室33の水が加熱されて蒸気を発生した際に作動し、貯水室33の内部の圧力を制御すると共に、図示しないが、圧力制御弁42に連動するリミットスイッチが作動してその出力信号を発熱量検出部39に印加する。測定容器31の下部には排水バルブV22を介して排水管43が接続されている。また、貯水室33の各部には温度センサ44が設けられている。なお、特に図示はしないが貯水室33には水位を測定する水位計が設置されている。
【0051】
燃焼室34の排出部36には分岐管45が接続されている。分岐管45の一方は第1流量調整バルブV23を介して主排気管46に接続されている。また、分岐管45の他方は第2流量調整バルブV24を介して戻し用分岐管53に接続されている。
【0052】
主排気管46は、また、管路の途中で燃焼・測定切替バルブV2を介して排気ガス測定部47に接続されている。主排気管46は、高温の排気流を排気ガス測定部47の上端部48に導き、ここから大気中に排気する。上端部48には排気ガス検出部51が設置されている。なお、排気ガス中に粒子状浮遊物質等が混在している場合は落下して、排気ガス測定部47の下端に設けられた集塵部49に収納される。
【0053】
戻し用分岐管53の一方は第3流量調整バルブV25を介してブロアーBに接続されている。また、他方は第4流量調整バルブV26を介して戻り排熱管32に接続されている。
【0054】
次に、上述の構成の発熱量および排気ガスの測定装置の動作について、燃焼生成系統の動作と測定系統の動作に分けて説明する。
【0055】
<燃焼生成系統の動作>
図2は、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置の燃焼生成系統の動作を説明する概略構成図である。なお、図2において、図1と同一個所には同一符号を付して、重複を避けるため詳細な説明は省略する。
【0056】
燃焼生成系統の動作においては、バーナー1が装着された燃焼筒10の排出口11が、燃焼生成排気系統20の回動排気管21の開口部24に挿入されている。この場合、燃焼・測定切替バルブV2は開の状態になっている。
【0057】
まず、バーナー1の空気供給ノズルから空気が送り込まれた状態で、予熱用点火ノズルから供給されるプロパンガス等の予熱ガスに点火される。予熱ガスの燃焼により、燃焼筒10の内部が予熱される。この予熱により、燃焼筒10の内部が所定温度まで加熱されると、燃焼筒10に設けられている温度センサが所定温度を検知する。この検知結果により、燃料供給バルブV4が開かれると共に、燃料供給部4に接続された定量ポンプPが作動し、定量ずつの燃料がバーナー1に送り込まれる。同時に燃料噴射ノズル2が作動して送り込まれてきた燃料を旋回流として燃焼筒10の内部に送り込み燃焼筒10の内部で着火して火炎の旋回流を形成する。この着火により予熱ノズルは噴射を停止し、燃焼筒10の内部では燃料の燃焼により火炎の旋回流が形成されてガス化燃焼状態になる。
【0058】
例えば、エマルジョン燃料の場合は、高温の燃焼筒10の内部に噴霧されたとき、燃料液滴中の水は瞬時に沸騰して、燃料液滴を微粒化(ミクロ爆発)する。これによって高速で高効率の燃焼を実現し、COや煤の生成を抑制できる。
【0059】
しかも、燃焼筒10は中央部12の直径が拡大されているので、燃料噴射ノズル2から噴射された火炎の旋回流は、中央部12で拡大された火炎の旋回流を形成する。この火炎の旋回流は、直進流に比べて燃焼筒10の内部に長時間滞留して高効率に燃焼する。それにより、ほぼ完全燃焼の状態になる。
【0060】
燃焼の際の排気ガスは、燃焼筒10の排出口11から、それが挿入されている回動排気管21の開口部24を介してその内部に導かれる。この排気ガスは、さらに、回動排気管21に連通している固定排気管23と燃焼・測定切替バルブV2を経由して主排気管46に導かれる。
【0061】
主排気管46の端部に接続された第1流量調整バルブV23および燃焼室34の排出部36側の分岐管45に接続された第2流量調整バルブV24は開かれている。また、分岐管45の他端に接続された調整バルブV24、戻し用分岐管47に接続された流量調整バルブV25、V26も開かれており、これらの調整バルブV24〜V26を介してブロワーBからの風が送り込まれる。したがって、主排気管46に導かれた燃焼室34からの排気流の一部は図2で示すように上方に向かい上端部48から外部に排気される。燃焼室34からの残りの排気流は下方に向かいブロワーBにより戻り排熱管32を経由して燃焼室34に200℃程度の戻り排熱流として還流される。還流された戻り排熱流は、燃焼室34に取り込まれると、取り込み口10a、10b近傍に設けられたガイド板(図示せず)に導かれて旋回流が形成される。したがって、この旋回流は、燃焼筒10の内部で燃料噴射ノズル2から噴射された燃料の火炎の旋回流と合流して、強力な火炎の旋回流を形成し、燃焼筒10の内部での燃料の滞留時間を長くしてより燃焼効率を高めている。
【0062】
<測定系統の動作>
図3は、本発明の発熱量および排気ガスの測定装置における測定系統の動作を説明する概略構成図である。なお、図3において、図1と同一個所には同一符号を付して、その個々の説明を省略する。
【0063】
上述の燃焼生成系統の動作において、燃焼筒10の温度センサが、燃焼筒10の内部が所定温度に到達したと検知する。この所定温度においては、燃焼筒10の内部は、ガス化燃焼によるほぼ完全燃焼が行われている状態となっている。
【0064】
この状態において、燃焼筒10内の燃料の燃焼による発熱量および排気ガスの測定は次のように行われる。まず、燃焼筒10の往復移動機構13であるピニオン13bを回転させてラック13aを図の左方向に移動させ、燃焼筒10の排出口11を回動排気管21の開口部24から離脱させる。その後に、モータMを回転させて巻き取りプーリ27を回転させ、ロープ26を巻き取って回動排気管21を、管継ぎ手22を支点として回動させる。回動排気管21は燃焼筒10の排出口11との対向位置から上方に移動し、燃焼筒10が測定容器31に対して往復移動する際の妨げにならない位置に退避する。その際、燃焼・測定切替バルブV2は閉止する。
【0065】
次に、燃焼筒10の往復移動機構を動作させて、燃焼筒10を図の右方向、すなわち、測定容器31に向かって移動させる。燃焼筒10はその排気口が測定容器31の嵌合部35に嵌合される。測定容器31の燃焼室34は、燃焼筒10の排気口が嵌合部35に嵌合された状態で、燃焼筒10と合体して一体になり、全体で一体の燃焼筒を形成する。
【0066】
この場合、測定容器31の燃焼室34は、中央部でその直径が拡大された構造であるので、燃焼室34でも火炎の旋回流が長時間滞留する。それにより、貯水室33の内部に満たされている水は沸騰するまで効率よく加熱される。加熱により貯水室33内の水が沸騰すると貯水室33の内部の圧力が高まり圧力制御弁42が上昇する。この上昇動作に連動してリミットスイッチ(不図示)が動作して発熱量検出部39のタイマ(不図示)を停止させる。なお、このタイマは、燃焼筒10の排気口が測定容器31の嵌合部35に嵌合され、全体で一体の燃焼筒を形成した時点において計測動作を開始するものとする。
【0067】
したがって、貯水室33内の水200リットルの水を初期温度から沸騰温度(100℃)まで上昇させるために要した熱量(=燃焼による発熱量)を得るための時間を測定することができる。また、その結果から、燃料ごとの燃焼筒での燃焼による単位時間当たりの発熱量も算出することができる。
【0068】
ところで、上記燃焼筒での加熱により水が得た熱量Qは、
Q(cal)=m(g)×T(℃)
m;加熱される水の質量、T;上昇温度
式で算出される。この熱量Qはすなわち、[水が得た熱量]=[燃焼筒での発熱量]である。
【0069】
この場合、燃焼筒10と貯水室33が予め一体に形成された固定型のボイラーの場合は、貯水室に貯水されている水は、燃焼筒の予熱の際の影響で加熱部に近いところが高温になる。そのため、貯水室に貯水されている水の初期状態は、温度勾配が生じていて温度が均一ではない。したがって、水の初期状態の温度を正確に特定しにくい。これに対して、本実施例の場合は、燃焼筒10の予熱は貯水室33と離間した位置でおこなわれる。そのため、燃焼筒10の予熱による影響を排除することができる。したがって、測定開始時の貯水室33の内部の水の温度は均一であり、それに対する沸騰温度との温度差を高精度に算出することが可能である。
【0070】
もちろん、異なる燃料についての発熱量の比較は、それぞれの燃料について、沸騰するまでの時間を測定することにより比較することができる。
【0071】
一方、排気ガスの測定は、主たる対象がNOx(窒素酸化物)濃度とSOx(イオウ酸化物)濃度である。測定は、燃焼筒10が測定容器31と一体になって燃焼している状態で、測定容器31の排出部36から排出されて主排気管46を上昇した排気ガスを対象に排気ガス検出部51で測定する。
【0072】
すなわち、排気ガス検出部51は、主排気管46の上端部48の近傍にサンプリングプローブ52を配置し、サンプリングプローブ52の端部にNOxセンサ(不図示)とSOxセンサ(不図示)とを接続して、NOx濃度とSOx濃度とを計測している。
【0073】
サンプリングプローブ52は、主排気管46の排気ガス流に対して平行な方向に向くように直角に曲げられた中空パイプ型の吸引ノズルで、例えば硬質ガラス、石英、ステンレス鋼などの耐食性、耐熱性に優れた材料で作製されている。
【0074】
NOxセンサは、特に限定はされないが公知のものを用いる。例えば、化学発光式ガス分析計であっても、ジルコニア式のものであってもよい。
【0075】
また、SOxセンサも、公知の化学発光式ガス分析計を用いて計測することができる。
【0076】
例えば、測定ガス中の窒素酸化物を化学発光方式で測定するには、NOxを含んだ試料ガスとオゾン(O3)とを反応槽に導き、一酸化窒素(NO)とO3との反応により発生する発光を光電子増倍管で検出することにより測定する。
【0077】
また、試料ガス中のNOx濃度とSOx濃度とを同時に測定し、精度よく定量するためには、赤外線吸収法や紫外線吸収法を使用するか、あるいは、NOxとSOxとで測定原理の異なる検出器を用いて別個に検出することもできる。
【0078】
上述の動作により、燃焼中の燃料の発熱量の算出とNOx濃度とSOx濃度との測定を併せておこなうことができる。
【0079】
次に、上述の測定装置60に測定対象の燃料を供給する燃料供給部4について説明する。上述の説明で、バーナー1には、燃料供給管路3が接続されており、この燃料供給管路3には定量ポンプPと燃料供給バルブV4とを介して燃料供給部4が接続されている。それにより、燃料供給管路3から供給される燃料は、定量ポンプPにより定量ずつバーナー1に供給されことを説明した。
【0080】
つまり、燃料供給部4は、エマルジョン燃料を製造するエマルジョン燃料製造装置としての機能を有している。
【0081】
図4は、燃料にC重油と水に、消石灰と尿素とを加えたエマルジョン燃料を製造するエマルジョン燃料製造装置である燃料供給部4の概略構成図である。
【0082】
燃料供給部4は、約8,000G程度が付与された加圧水(機能水)を収納する機能水用タンクT1とC重油を収納する重油用タンクT2とが、それぞれバルブVa、Vbを介して管路5a、5bで混合・攪拌機6に入力できるように接続されている。
【0083】
混合・攪拌機6としては、公知のものを使用することができる。例えば、ラインミキサ、矢羽タービン翼、フルマージン型翼、高せん断型タービンミキサ、ホモジナイザ等の高せん断速度の撹拌装置を有効に用いることができる。
【0084】
また、両タンクT1、T2にはそれぞれ、加熱用のヒータH1、H2と温度計7が設置され、重油用タンクT2には攪拌用のプロペラ8が設けられている。
【0085】
混合・攪拌機6の出力側は、管路6aを介してヒータH3を有する保温用の保温タンクT3に接続されている。
【0086】
なお、本発明は上記の実施形態のそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…バーナー、2…燃料噴射ノズル、3…燃料供給管路、4…燃料供給部、5a、5b…管路、6…混合・攪拌機、7…温度計、8…プロペラ、10…燃焼筒、11…排出口、12…中央部、13…往復移動機構、13a…ラック、13b…ピニオン、20…燃焼生成排気系統、21…回動排気管、22…管継ぎ手、23…固定排気管、24…開口部、25…ロープ係止部、26…ロープ、27…巻き取りプーリ、30…測定系統、31…測定容器、32…戻り排熱管、33…貯水室、34…燃焼室、35…嵌合部、36…排出部、37…光電素子、38…光源、39…発熱量検出部、41…注水管、42…圧力制御弁、43…配水管、44…温度センサ、45…分岐管、46…主排気管、47…戻し用分岐管、48…上端部、51…排気ガス検出部、52…サンプリングプローブ、60…発熱量および排気ガスの測定装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給部に接続されたバーナーが装着され、所定方向に移動自在な燃焼筒と、
この燃焼筒に着脱自在に結合して、前記燃焼筒とともに一体の燃焼室を形成する燃焼室及びその周囲に形成された貯水室を有する測定容器と、
この測定容器が前記燃焼筒から分離された状態において、一端に設けられた開口部が前記燃焼筒の排出口に対向する位置に配置され、前記燃焼筒が前記測定容器に結合した状態において、前記燃焼筒の排出口に対向する位置から前記燃焼筒の移動を妨げない位置に退避するように設けられた回動排気管と、
前記測定容器に設けられた発熱量測定部と、前記燃焼室の排出部に接続された排気管路と、
この排気管路に設けられた排気ガス測定部と、
を有することを特徴とする発熱量および排気ガスの測定装置。
【請求項2】
前記燃焼筒の入り口側には、回動排気管からの排熱流あるいは前記測定容器の燃焼室からの排熱流が戻り排熱管により還流されて供給されることを特徴とする請求項1記載の発熱量および排気ガスの測定装置。
【請求項3】
前記燃料供給部から前記バーナーには定量ポンプにより定量の燃料が送り込まれることを特徴とする請求項2記載の発熱量および排気ガスの測定装置。
【請求項4】
前記燃焼筒は中央部の直径が最大で、かつ、前記排出口の直径が最小であることを特徴とする請求項3記載の発熱量および排気ガスの測定装置。
【請求項5】
前記燃焼筒は、該燃焼筒に対するバーナーの位置が調整可能であることを特徴とする請求項4記載の発熱量および排気ガスの測定装置。
【請求項6】
前記測定容器には、この測定容器に前記燃焼筒が装着されたことを検知するセンサが設けられ、このセンサの出力信号により、前記発熱量測定部と前記排気ガス測定部とが作動することを特徴とする請求項5記載の発熱量および排気ガスの測定装置。
【請求項7】
前記測定容器からの排熱流は、分岐管路により前記排気ガス測定部と前記燃焼筒とに分岐して導かれることを特徴とする請求項6記載の発熱量および排気ガスの測定装置。
【請求項8】
前記測定容器には圧力制御弁が設けられ、該圧力制御弁に連動したリミットスイッチによって前記測定容器に貯水されている水の沸騰時間を検出することを特徴とする請求項7記載の発熱量および排気ガスの測定装置。
【請求項9】
前記排気ガス測定部は、排気ガスのNOx濃度とSOx濃度を計測することを特徴とする請求項8記載の発熱量および排気ガスの測定装置。
【請求項10】
前記バーナーは燃料の旋回流を発生する渦流式噴射ノズルを備え、この燃料噴射ノズルからの燃料の噴射により、前記燃焼筒の内部に火炎旋回流が形成されることを特徴とする請求項2記載の発熱量および排気ガスの測定装置。
【請求項11】
前記戻り排熱管により還流される排熱流は、前記燃焼筒の入り口側の対称位置に形成されている一対の取り込み口から前記燃焼筒内に導入されることにより、前記バーナーとともに前記燃焼筒内に火炎の旋回流を形成することを特徴とする請求項10記載の発熱量および排気ガスの測定装置。
【請求項12】
前記燃焼筒は中央部の直径が最大で、かつ、前記排出口の直径が最小であることを特徴とする請求項11記載の発熱量および排気ガスの測定装置。
【請求項13】
前記測定容器からの排熱流は、分岐管路により前記排気ガス測定部と前記燃焼筒とに分岐して導かれることを特徴とする請求項6記載の発熱量および排気ガスの測定装置。
【請求項14】
前記燃焼室の排出部に接続された排気管路は、前記燃焼室の排出部に接続された分岐管と、この分岐管の一方に第1の流量調整バルブを介して一端が接続された主排気管とからなり、前記主排気管の他端は前記排気ガス測定部に接続されていることを特徴とする請求項13記載の発熱量および排気ガスの測定装置。
【請求項15】
前記主排気管の途中には、前記測定容器の上方に配置された固定排気管の一端が燃焼・測定切替バルブを介して接続されており、また、前記固定排気管の他端には管継ぎ手が設けられており、この管継ぎ手により前記回動排気管が、この管継ぎ手の周囲に回動可能に接続されていることを特徴とする請求項14記載の発熱量および排気ガスの測定装置。
【請求項16】
前記戻り排熱管はその長さが伸縮可能に形成されており、前記燃焼筒の移動機構は、ラック及びピニオン機構により構成されていることを特徴とする請求項15記載の発熱量および排気ガスの測定装置。
【請求項17】
前記戻り排熱管は、前記燃焼室の排出部側の分岐管の他方に第2の流量調整バルブを介して接続されていることを特徴とする請求項16記載の発熱量および排気ガスの測定装置。
【請求項18】
前記戻り排熱管は、第3の流量調整バルブを介して戻し用分岐管の一端に接続され、この戻し用分岐管の他端は第4の流量調整バルブを介して送風機に接続されるとともに、前記戻り排熱管の第3の端部は前記第2の流量調整バルブを介して前記燃焼室排出部側の分岐管に接続されていることを特徴とする請求項17記載の発熱量および排気ガスの測定装置。
【請求項19】
前記燃料供給部は、純燃料油に水を混合してエマルジョン化したエマルジョン燃料を前記バーナーに供給することを特徴とする請求項18記載の発熱量および排気ガスの測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−78594(P2010−78594A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195913(P2009−195913)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(503465487)株式会社ブイエスディー (7)
【出願人】(507028941)株式会社フジミプラント (5)
【Fターム(参考)】