発現系
【課題】完全パリンドロームオペレーター配列に基づくタンパク質発現系を提供する。
【解決手段】発現系は、プロモーター;および完全パリンドロームオペレーター配列を含み、ここにおいて、該プロモーターは、T7ではない。発現系に用いることができるプロモーターは、一般的には、宿主RNAポリメラーゼに基づくプロモーター系、好ましくは、大腸菌(E.coli)RNAポリメラーゼに基づくプロモーター系である。用いることができるプロモーターの例には、T7A1、T7A2、T7A3、λpL、λpR、lac、lacUV5、trp、tac、trc、phoAおよびrrnBが含まれる。発現系は、好ましくは、発酵によるリコンビナントタンパク質の生産に用いられる。
【解決手段】発現系は、プロモーター;および完全パリンドロームオペレーター配列を含み、ここにおいて、該プロモーターは、T7ではない。発現系に用いることができるプロモーターは、一般的には、宿主RNAポリメラーゼに基づくプロモーター系、好ましくは、大腸菌(E.coli)RNAポリメラーゼに基づくプロモーター系である。用いることができるプロモーターの例には、T7A1、T7A2、T7A3、λpL、λpR、lac、lacUV5、trp、tac、trc、phoAおよびrrnBが含まれる。発現系は、好ましくは、発酵によるリコンビナントタンパク質の生産に用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リコンビナントポリペプチドの微生物発現に適する発現系に関する。
【背景技術】
【0002】
T7に基づく完全パリンドロームオペレーター配列に基づくタンパク質発現系は、米国特許第6,537,779号により知られている。T7に基づく系は、T7系の操作が、必要なファージポリメラーゼを発現するλDE3プロファージを大腸菌(Escherichia coli)宿主菌株中に挿入して、溶原性宿主菌株を生じることによって一般的に与えられるファージポリメラーゼを必要とするという欠点を有する。そのファージポリメラーゼは、ファージポリメラーゼの遺伝子(例えば、T7 RNAポリメラーゼ)を有する特殊なλ形質導入ファージでの感染によって細胞へと送達することもできる。λDE3プロファージは、溶菌ファージ粒子を形成するプロファージの切除に必要な遺伝的要素を欠いている。しかしながら、λDE3溶原性宿主菌株は、ファージ粒子を放出すること、したがって、発酵プラントにおいて望ましくない感染を引き起こすことが分かった。実際に、λDE3菌株の使用は、ある種の発酵プラント作業者によって認められていない。
【0003】
誘導前の異種タンパク質の発現は、若干の異種タンパク質が、全体の生産性を減少させる宿主細胞成長およびプラスミド安定性に有害な作用を有するという理由で望ましくない。これを免れるために、T7に基づく発現系は、概して、異種タンパク質の発現を二つのレベルで制御する。第一に、T7 RNAポリメラーゼを生じるT7 RNAポリメラーゼ遺伝子発現の誘導は、T7プロモーターからの発現を推進するのに必要とされる。第二に、T7プロモーターそれ自体も、誘導される必要がある。これは、T7に基づく発現系を操作する複雑さを増加させる。
【0004】
目的のタンパク質のための発現系/発酵法の選択および最適化を、主に経験的な方法とする、いろいろな制御様式および誘導様式での極めて多数の異種タンパク質発現系が存在する。これは、時間の浪費であり且つ望ましくない。したがって、ファージポリメラーゼおよび溶原性宿主菌株の使用を伴うことなく、改善された発現制御および改善されたタンパク質発現レベルを与えることができる系が要求される。更に、原核細胞、更には、哺乳動物および酵母の細胞などの真核細胞において、誘導性異種発現を与えることができる系が要求される。
【発明の開示】
【0005】
本発明により、完全パリンドロームオペレーター配列に基づくタンパク質発現系であって、
(a)プロモーター;および
(b)完全パリンドロームオペレーター配列
を含む;そのプロモーターがT7ではないことを特徴とするタンパク質発現系を提供する。
【0006】
本発明の発現系に用いることができるプロモーターは、一般的には、宿主RNAポリメラーゼに基づくプロモーター系、好ましくは、大腸菌(E.coli)RNAポリメラーゼに基づくプロモーター系である。用いることができるプロモーターの例には、T7A1、T7A2、T7A3、λpL、λpR、lac、lacUV5、trp、tac、trc、phoAおよびrrnBが含まれる。
【0007】
本発明による発現系に用いることができるオペレーター配列には、lac、gal、d
eoおよびglnが含まれる。一つまたはそれを超える完全パリンドロームオペレーター配列を用いることができる。多くの好ましい態様において、二つの完全パリンドロームオペレーター配列を用いるが、最も好都合には、一方のオペレーター配列は、プロモーターの下流に位置していて、もう一方のオペレーター配列は、プロモーターの上流に位置している。二つのオペレーター系を用いる場合、それらオペレーター配列は、好ましくは、プロモーターの制御を最大にするように間隔を置く。多くの態様において、その間隔は、85〜150塩基対間隔、好ましくは、90〜126塩基対間隔、そして最も好ましくは、91または92塩基対間隔である。ある種の態様において、オペレーター配列は、転写出発点と重なる。
【0008】
オペレーター系は、一般的には、適当なリプレッサー配列と一緒に用いられるということは理解されるであろう。リプレッサー配列は、リプレッサータンパク質を生じ、例えば、lacオペレーターを用いた場合、lacI遺伝子配列を生じる。他のlacリプレッサー配列を用いてもよく、例えば、lacIQ配列は、lacリプレッサータンパク質のレベルを増加させるのに用いることができる。リプレッサー配列は、宿主細胞ゲノムによってまたは追加の適合性プラスミドを用いることによって与えることもできる。
【0009】
発現系は、宿主細胞ゲノム中に組み込むことができるが、好ましくは、プラスミドなどの染色体外要素内に含まれる。或いは、発現系は、ファージまたはウイルスベクター中に包含されてよく、これらは、宿主細胞系中に発現系を送達するのに用いることができる。プラスミドまたは発現ベクターは、当該技術分野において知られている方法によって組み立てることができる。プラスミドは、典型的に、一つまたはそれを超える次のもの:選択可能マーカー、例えば、抗生物質耐性を与える配列;cer安定性配列;および発現カセットを更に含む。その発現系は、所望のタンパク質の分泌が必要とされる場合、シグナル配列を包含してもよい。
【0010】
発現は、イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)、イソブチル−C−ガラクトシド(IBCG)のようなIPTG類似体、ラクトースまたはメリビオースなどの誘導物質の追加によって誘導することができる。他の誘導物質を用いることができるが、それは、他のところに一層十分に記載されている(例えば、The Operon, eds Miller and Renznikoff (1978) を参照されたい)。誘導物質は、個々に、または組合せ
で用いることができる。適当なプラスミドまたは発現ベクターの構築は、当科学者に明らかであろう。
【0011】
本発明の発現系は、宿主細胞において、特に、微生物においてタンパク質を発現させるのに用いることができる。本明細書中で用いられる「タンパク質」は、概して、約10を超えるアミノ酸を有するペプチドまたはタンパク質を意味する。宿主細胞は、原核生物または真核生物であってよい。原核細胞の例には、細菌細胞、例えば、E.coli、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、霊菌(Serratia marsescens)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を含めたグラム陰性細菌細胞;および枯草菌(Bacillus subtilis)を含めたグラム陽性細菌細胞が含まれる。真核細胞の例には、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンセヌ
ラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などの酵
母が含まれる。用いることができる哺乳動物宿主細胞には、ヒト胚性腎およびPERC.6細胞などのヒト細胞系;NS0細胞などのネズミ細胞系;そして具体的には、乳児ハムスター腎細胞などのハムスター細胞系、特に、チャイニーズハムスター卵巣細胞が含まれる。糸状菌、植物、昆虫、両生類の細胞または卵巣種のものなどの他の真核宿主細胞も、用いることができる。好ましい宿主細胞は、細菌、具体的には、腸内細菌(enterobacteriacae)、好ましくは、E.coli、特に、そのBまたはK12菌株である。
【0012】
本発明の発現系は、一般的には、プラスミドの形で用いられ、そしてプロモーターおよび完全パリンドロームオペレーター配列を含むプラスミドであって、そのプロモーターがT7ではないプラスミドは、本発明の別の側面を形成する。それらプラスミドは、自律複製性プラスミドまたは組込みプラスミドであってよい。
【0013】
本発明の発現系は、好都合には、タンパク質、特に、リコンビナントタンパク質の製造に、リコンビナント細胞を培養することによって用いられる。タンパク質の発現について、プロモーターおよびオペレーター配列は、発現されるタンパク質をコードしているDNAに機能的に連結しているということは理解されるであろう。
【0014】
したがって、本発明は、更に、タンパク質の製造方法であって、
(a)プロモーター;
(b)完全パリンドロームオペレーター配列;および
(c)タンパク質のための発現カセット
を含む;プロモーターがT7ではないことを特徴とする発現系を発現することを含む方法を提供する。
【0015】
所望ならば、同じであってよいしまたは異なっていてよい一つまたはそれを超えるプロモーター、オペレーター配列および発現カセットが存在してよい。
その発現系は、用いられる細胞について当該技術分野において周知の方法によって発現される。好ましい発現方法は、リコンビナント細胞を増殖培地中で、特に、発酵によって培養後、発現されたタンパク質を回収することを包含する。「増殖培地」という用語は、リコンビナント細胞を成長させるのに用いられる栄養培地を意味する。多くの態様において、栄養素溶液を用いる。与えられたリコンビナント細胞に適する増殖培地は、当該技術分野において周知である。
【0016】
本発明を、次の実施例によって、制限を伴うことなく詳しく説明する。
【実施例】
【0017】
1.pAVE系列ベクターの生成
pAVE011、pAVE012およびpAVE013ベクター
pAVE011の生成用の出発ベクターは、US6,537,779号に記載のように製造されたpZT7#2.0であった。pZT7#2.0は、pAT153ベクター主鎖、cer安定性配列、tetA/R、目的の遺伝子の上流の単一天然lacオペレーター配列および上流T4転写ターミネーターを有する。T7A3プロモーターおよび二重完全パリンドロームlacオペレーターを、このプラスミド中に、合成オリゴヌクレオチドリンカーを用いてNcoI、EcoRIおよびXbaI制限酵素部位によってクローン化した。
【0018】
リンカー12.1は、オリゴヌクレオチド1および2.1:
【0019】
【化1】
【0020】
をアニーリングすることによって製造した。
次に、そのリンカーを、プラスミドpZT7#2.0に連結し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にNcoI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。形質転換細胞の初期スクリーニングは、NcoIを用いた制限消化によった。配列は、シークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE012と称した。
【0021】
次に、T7A3プロモーターカセットを、プラスミドpAVE012に連結しているアニーリングされたオリゴヌクレオチドであるオリゴヌクレオチド3および4:
【0022】
【化2】
【0023】
をアニーリングすることによってpAVE012中にクローン化し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE011と称した。
【0024】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化して、pAVE013を生じた。pAVE013のプラスミド地図を、図18に示す。これは、オペレーターおよびプロモーターの配置と、構築に用いられる制限酵素部位を示している。オペレーターは、双方とも完全パリンドロームlacオペレーターである。RBSは、リボソーム結合部位である。そのベクターは、pAT153ベクター主鎖、cer安定性配列、誘導性テトラサイクリン耐性遺伝子(tetA/R)および上流T4転写ターミネーターを包含する。
【0025】
pAVE038およびpAVE041ベクター
pAVE038の生成用の出発ベクターは、US6,537,779号に記載のように
製造されたpZT7#2.0であった。tacプロモーターおよび単一天然lacオペレーターを、このプラスミド中に、合成オリゴヌクレオチドリンカーを用いてEcoRIおよびXbaI制限酵素部位によってクローン化した。
【0026】
リンカー1112は、オリゴヌクレオチド11および12:
【0027】
【化3】
【0028】
をアニーリングすることによって製造した。
次に、そのリンカーを、プラスミドpZT7#2.0に連結し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。形質転換細胞の初期スクリーニングは、NcoIを用いた制限消化によった。配列は、シークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE038と称した。
【0029】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化して、pAVE041を生じた。
pAVE037およびpAVE040ベクター
pAVE037の生成用の出発ベクターは、US6,537,779号に記載のように製造されたpZT7#2.0であった。tacプロモーターおよび単一完全パリンドロームlacオペレーターを、このプラスミド中に、合成オリゴヌクレオチドリンカーを用いてEcoRIおよびXbaI制限酵素部位によってクローン化した。
【0030】
リンカー1314は、オリゴヌクレオチド13および14:
【0031】
【化4】
【0032】
をアニーリングすることによって製造した。
次に、そのリンカーを、プラスミドpZT7#2.0に連結し、そしてクローニング宿
主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。形質転換細胞の初期スクリーニングは、NcoIを用いた制限消化によった。配列は、シークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE037と称した。
【0033】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化して、pAVE040を生じた。
pAVE028およびpAVE030ベクター
pAVE028の生成用の出発ベクターは、pAVE012であった。T7A3プロモーターカセットを、プラスミドpAVE012に連結しているアニーリングされたオリゴヌクレオチドであるオリゴヌクレオチド5および6:
【0034】
【化5】
【0035】
をアニーリングすることによってpAVE012中にクローン化し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE028と称した。
【0036】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化して、pAVE030を生じた。
pAVE007およびpAVE031ベクター
pAVE007の生成用の出発ベクターは、US6,537,779号に記載のように製造されたpZT7#2.0であった。T7A3プロモーターおよび単一完全パリンドロームlacオペレーターを、このプラスミド中に、合成オリゴヌクレオチドリンカーを用いてEcoRIおよびXbaI制限酵素部位によってクローン化した。
【0037】
T7A3プロモーターを含有するリンカーは、オリゴヌクレオチド3および4:
【0038】
【化6】
【0039】
から製造した。
オリゴヌクレオチド3および4を、アニーリングした後、形成されたリンカーを、プラスミドpZT7#2.0に連結し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE007と称した。
【0040】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化して、pAVE031を生じた。
pAVE029およびpAVE027ベクター
pAVE029の生成用の出発ベクターは、US6,537,779号に十分に記載のように製造されたpZT7#2.0であった。λpLプロモーターおよび単一完全パリンドロームlacオペレーターを、このプラスミド中に、合成オリゴヌクレオチドリンカーを用いてEcoRIおよびXbaI制限酵素部位によってクローン化した。
【0041】
リンカー78は、オリゴヌクレオチド7および8:
【0042】
【化7】
【0043】
をアニーリングすることによって製造した。
次に、リンカーを、プラスミドpZT7#2.0に連結し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。形質転換細胞の初期スクリーニングは、NcoIを用いた制限消化によった。配列は、シークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE029と称した。
【0044】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてク
ローン化して、pAVE027を生じた。
pAVE043およびpAVE044ベクター
pAVE043の生成用の出発ベクターは、pAVE012であった。tacプロモーターカセットを、プラスミドpAVE012に連結しているアニーリングされたオリゴヌクレオチドであるオリゴヌクレオチド17および18:
【0045】
【化8】
【0046】
をアニーリングすることによってpAVE012中にクローン化し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE043と称した。
【0047】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化して、pAVE044を生じた。
pAVE034およびpAVE035ベクター
pAVE034の生成用の出発ベクターは、pAVE012であった。λpLプロモーターカセットを、プラスミドpAVE012に連結しているアニーリングされたオリゴヌクレオチドであるオリゴヌクレオチド9および10:
【0048】
【化9】
【0049】
をアニーリングすることによってpAVE012中にクローン化し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE034と称した。
【0050】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてク
ローン化して、pAVE035を生じた。
pAVE020およびpAVE021ベクター
pAVE020の生成用の出発ベクターは、pAVE012であった。λpLプロモーターカセットを、プラスミドpAVE012に連結しているアニーリングされたオリゴヌクレオチドであるオリゴヌクレオチド7および8:
【0051】
【化10】
【0052】
をアニーリングすることによってpAVE012中にクローン化し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE020と称した。
【0053】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化して、pAVE021を生じた。
pAVE016およびpAVE017ベクター
pAVE016の生成用の出発ベクターは、pAVE012であった。tacプロモーターカセットを、プラスミドpAVE012に連結しているアニーリングされたオリゴヌクレオチドであるオリゴヌクレオチド15および16:
【0054】
【化11】
【0055】
をアニーリングすることによってpAVE012中にクローン化し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE016と称した。
【0056】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてク
ローン化して、pAVE017を生じた。
pAVE049ベクター
pAVE049の生成用の出発ベクターは、pAVE017であった。tacプロモーターカセットは、変化しなかった。二つのオペレーター間の91〜124塩基対間隔を増加させるために、EcoRIリンカーをクローン化した。これは、オリゴヌクレオチド19および20:
【0057】
【化12】
【0058】
から製造した。
初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE049と称した。
【0059】
pAVE046ベクター
分泌ベクターpAVE046の生成用の出発ベクターは、pAVE027であった。D1.3Fab発現カセット(図1、SEQ ID NO17)を、NdeI−BamHIフラグメントとしてクローン化した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE046と称した。
【0060】
【表1】
【0061】
2.リコンビナント菌株の生成
E.coli 菌株W3110(American Type Culture Collection よりATCC27325として入手可能)およびBL21(EMD Biosciences Inc, San Diego, USA より入
手可能)を、エレクトロポレーションにより、下の表2に記載のプラスミドで形質転換した。得られたリコンビナント菌株を精製し、グリセロール貯蔵液中において−80℃で維持した。
【0062】
【表2】
【0063】
比較例1
T7A3プロモーターを含むが、いずれのオペレーターも不含のプラスミドの生成用の出発ベクターは、pZT7#2.0であった。T7A3プロモーターを、このプラスミド中に、合成オリゴヌクレオチドリンカーを用いてEcoRIおよびXbaI制限酵素部位によってクローン化した。
【0064】
リンカー2122は、オリゴヌクレオチド21および22:
【0065】
【化13】
【0066】
をアニーリングすることによって製造した。
次に、リンカーを、プラスミドpZT7#2.0に連結し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。22クローンを、制限消化物およびシークエンス法によってスクリーニングした。
【0067】
正しいT7A3プロモーター配列と一致したクローンは無かった(全て、配列中に突然変異を含有した)。これは、この強力な構成的プロモーターを含有するプラスミドの構築に問題があるということを示唆している。
【0068】
比較例2
単一天然Lacオペレーター配列の制御下のT7A3プロモーターを含むプラスミドの生成用の出発ベクターは、pZT7#2.0であった。T7A3プロモーターおよび天然Lacオペレーター(LacO)配列を、このプラスミド中に、合成オリゴヌクレオチドリンカーを用いてEcoRIおよびXbaI制限酵素部位によってクローン化した。
【0069】
リンカー2324は、オリゴヌクレオチド23および24:
【0070】
【化14】
【0071】
をアニーリングすることによって製造した。
次に、リンカーを、プラスミドpZT7#2.0に連結し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。94クローンを、制限消化およびシークエンス法によってスクリーニングした。再度、正しい配列と一致したクローンは無かった。しかしながら、一つのクローンは、ほぼ無傷な配列を有することが判明した。このクローンは、その配列中の約−37位に追加の「G」を含有した。予想される配列は、この領域中に−GG−を含有するので、その突然変異の正確な位置を指定することは難しい。ヒトTNFα遺伝子を、ほぼ無傷な配列を有するプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化した。クローニング宿主菌株XL−Blue MR(Stratagene)から20コロ
ニーをスクリーニングした。一つは、(上記の追加の「G」以外に)突然変異不含の陽性クローンであった。このプラスミドを、生産宿主(ATCC27325)中に形質転換し、そしてそのプラスミドを再度配列決定した。
【0072】
これは、そのプラスミドが、T7A3プロモーターおよびヒトTNFα双方の配列中に著しい突然変異を含有したことを示し、T7A3プロモーターの使用が、天然lacオペレーター配列の制御下でさえも、プラスミド不安定性を生じるということを示した。
【0073】
実施例3
CLD032バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)
、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。
これを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている2個の250mlエルレンマイヤー(Erlenmeyer)フラスコに接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、一方のフラスコを、0.0
5mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導し、もう一方のフラスコは、基底発現を監視するために未誘導のままにした。インキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積レベルは、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルのデンシトメトリー走査を用いて決定した。それら結果を、下の表3に要約する。
【0074】
【表3】
【0075】
総合すると、比較例1および2および実施例3に示されたデータは、強力なT7A3プロモーターの有効な制御が、驚くべきことに、単一完全パリンドロームオペレーター配列を用いて達成されたということを示している。これは、単一天然オペレーターの使用(比較例2)が、安定なリコンビナント生産菌株が樹立されることを可能にする十分な基底制御を与えなかったとすると、全く予想外であった。高生産物蓄積レベルは、誘導について比較的低濃度の誘導物質を用いて、単一完全パリンドローム制御系で達成された。基底発現(誘導物質の不存在下)は認められたが、それは、有意に延長されたインキュベーション(24時間)後にのみ明らかであった。
【0076】
実施例4
CLD018バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)
、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。
その種培養物を、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlの種培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、0.05mMおよび1mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導した。フラスコは、未誘導のままにもし、そしてそれらフラスコのインキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積レベルは、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルのデンシトメトリー走査を用いて決定した。それら結果を、下の表4に要約する。
【0077】
【表4】
【0078】
このデータは、強力なT7A3プロモーターの更なる制御が、91bp間隔を置いた二つの完全パリンドロームオペレーター配列を用いて実現されうるということを示した。基底発現(誘導物質の不存在下)は、単一完全パリンドロームオペレーターを用いて達成されたものから対照抑制へと有意に減少した。二重完全パリンドローム配列を用いて達成された基底発現の制御は、基底発現の制御に二つの異なった制御要素を必要とするUS6,537,779号のT7系と比較した場合、予想外であった。この実施例において、基底発現の制御は、E.coli RNAポリメラーゼの高バックグラウンドにおいて達成した。
【0079】
実施例5
CLD026バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)
、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。
これを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、0.05mMおよび0.005mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導した。フラスコは、未誘導のままにもし、そしてインキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積レベルは、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルのデンシトメトリー走査を用いて決定した。それら結果を、下の表5に要約する。
【0080】
【表5】
【0081】
それら結果は、二つの完全パリンドロームオペレーター配列の間隔を(91〜92bpへと)1bpだけ変更することが、達成された最終蓄積レベルおよび基底発現双方の点で、性能に悪影響を与えることはなかったということを示した。予想外にも、IPTG濃度を(0.05mM〜0.005mMへと)10倍減少させることは、誘導された生産性を有意に減少させることはなかった。
【0082】
実施例6
CLD042およびCLD043バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。各々10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、別々に、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した各々2x5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。これらを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこれら培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに別々に接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、0.5mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導した。各々の菌株培養物が入っているフラスコは、未誘導のままにもし、そしてインキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積レベルは、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルのデンシトメトリー走査を用いて決定した。20時間インキュベーション後のCLD042およびCLD043の未誘導培養物中のhTNFαの基底蓄積レベルを、試料採取された細菌のSDS−PAGE後のウェスタンブロット分析(抗hTNFα抗体を用いた)によって比較した。それらブロットを走査し、データを規格化して、比較を可能にした。それら結果を、下の表6に要約する。
【0083】
【表6】
【0084】
それら結果は、単一完全パリンドロームオペレーター配列を用いて、tacプロモーター系の誘導された生産性に悪影響を与えることなく、基底発現(誘導物質の不存在下)を4倍減少させることができるということを示した。
【0085】
実施例7
CLD019バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)
、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。
これを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、それらフラスコを、0.5mM、0.1mM、0.05mMおよび0.005mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導した。フラスコは、未誘導のままにもし、そしてインキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積レベルは、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルのデンシトメトリー走査を用いて決定した。それら結果を、図2に示す。
【0086】
図2に示されたデータは、tacプロモーターと二重完全パリンドロームオペレーター配列との組合せが、誘導に用いられるIPTGの濃度によって発現測度を直接的にモジュレーションすることができる系をもたらすということを示した。このような系を利用して、異種タンパク質の発現をモジュレーションする、例えば、可溶性形のタンパク質の蓄積を最大にする、またはリコンビナント細胞の増殖および生産性への異種タンパク質分泌が有することがありうる有害な作用の問題を回避することができる。
【0087】
実施例8
CLD030バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)
、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。
これを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、0.05mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導し、他のフラスコは未誘導のままにし、そしてインキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積レベルは、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルのデンシトメトリー走査を用いて決定した。それら結果を、下の表7に要約する。
【0088】
【表7】
【0089】
表7に示されたデータは、極めて強力なλpLプロモーターの制御が、驚くべきことに、単一完全パリンドロームオペレーター配列を用いて達成することができるということを明らかに示している。高生産物蓄積レベルは、単一完全パリンドローム制御系を用いて達成することができる。
【0090】
実施例9
CLD021およびCLD038バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。各々10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、別々に、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。これらを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、1mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導し、もう一つのフラスコは、未誘導のままにし、そしてインキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積は、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルおよびSDS−PAGE後のウェスタンブロット分析(抗hTNFα抗体を用いた)を用いて決定した。そのデータを、表8に要約する。CLD038菌株についてのウェスタンブロット分析を、図3に示す。
【0091】
【表8】
【0092】
これら結果は、91bpかまたは92bp間隔を有する二重完全パリンドロームオペレーター配列とλpLプロモーターとの組合せが、極めて堅固な抑制を生じたということを示した。ウェスタンブロットは、標的タンパク質の基底発現が検出されなかったことを示している。誘導時に、低レベル発現レベルを達成した。これら結果は、λpLプロモーターが、極めて強力なプロモーターであるとすると、全く予想外であった。このような系は、例えば、宿主細胞に高毒性のタンパク質の発現を支配するのに用いることができる。それは、制御された発現が、例えば、膜タンパク質の発現および挿入に好都合である場合に用いることができる。
【0093】
実施例10
CLD028およびCLD035バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。各々10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、別々に、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した各々2x5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。これらを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこれら培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに別々に接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、1mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導し、そしてインキュベーションを上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積レベルは、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルのデンシトメトリー走査を用いて決定した。それら結果を、下の表9に要約する。
【0094】
【表9】
【0095】
これらデータは、前の実施例4および5に示されたデータと総合して、E.coli K−
12およびB双方の菌株を用いることができるということを示した。
実施例11
発酵接種材料は、下記の菌株について各々200μlのグリセロール貯蔵液を、15μg/mlのテトラサイクリンを補足した200mLの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)が入っている2.0Lバッフル付きシェークフラスコに加えることによって増大させた。接種材料は、シェーカー・インキュベーター中、37℃において250rpmの撹拌で12時間増殖させた。200mlのシェークフラスコ接種材料を用いて、10Lのバッチ増殖培地が入っている15L作業容量発酵装置に接種した。発酵は、下記の操作条件下で行った。温度は、37℃で制御し、そして35%(w/v)水酸化アンモニウムの自動添加によって、pHを6.8で制御した。溶存酸素張力(dissolved oxygen tension)(dOT)設定点は、30%の空気飽和とし、発酵装置撹拌機速度の250rpm最小値〜1500rpm最大値までの自動調整、および入口ガス流への酸素の自動補給によって制御した。発酵装置容器への空気流量は、最後まで10L/分であった。発酵装置中の圧力は、50〜200mbarで維持した。
【0096】
発酵は、バッチ様式で、炭素源(すなわち、グリセロール)が消耗するまで行ったが、それは、接種後約10時間に認められ且つdOTの鋭敏な上昇を特徴とした。バッチ供給発酵は、炭素源排出地点において、1Lの培地につき11g/時のグリセロール供給量で供給されるグリセロール/塩化マグネシウムの添加によって開始した。誘導は、発酵中のバイオマスレベルがOD600=50〜60に達したら、0.5mMの最終濃度へのIPTGの添加によって行った。バッチ供給相は、誘導後12時間続けた。試料を採取して、採取時のバイオマスレベル(OD600)およびhTNFα蓄積(%TCP)/hTNFαタイター(g/L)を決定した(Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲル)。
【0097】
バッチ増殖培地の組成を、表10に与える。
【0098】
【表10】
【0099】
供給されるグリセロール/塩化マグネシウムの組成を、表11に与える。
【0100】
【表11】
【0101】
それら結果を、表12に要約する。CLD30菌株のhTNFα生産性プロフィールを、図4に示す。
【0102】
【表12】
【0103】
データは、明らかに、異種タンパク質の製造のためのそれら系の有用性を示している。高生産物タイターは、単純で包括的な未最適化発酵・誘導法を用いて達成した。図4に例示される生産性プロフィールによって示されるようなプラスミドpAVE027の制御特性は、異種タンパク質、具体的には、分泌を最大にするように発現の制御を必要とするタンパク質の生産を最大にするのに利用することができる。
【0104】
実施例12
CLD050バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)
、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。
これを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、0.05mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導し、別のフラスコは未誘導のままにし、そしてインキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積レベルは、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルのデンシトメトリー走査を用いて決定した。それら結果を、下の表13に要約する。
【0105】
【表13】
【0106】
驚くべきことに、二重完全パリンドロームオペレーター配列は、その間隔を増加させた場合に作用した。二重完全パリンドロームの間隔を変更して、例えば、他のプロモーター
の有効な制御を達成することができる。
【0107】
実施例13
CLD048バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)
、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。
これを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに接種した。そのフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、0.1mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導し、そしてインキュベーションを、上記の条件下で更に2時間続けた。次に、細胞と、残留細胞不含増殖培地を採取した。採取された細胞に、浸透圧ショック細胞分画を更に行って、可溶性E.coli ペリプラ
ズム画分に分配されたタンパク質を含有する細胞画分を単離した。可溶性ペリプラズム抽出物および残留増殖培地中の生物学的に活性なD1.3Fabの蓄積は、精製された活性D1.3Fabで作成された標準曲線に関するELISA検定において、リゾチーム(lysoszyme)(抗原)へのD1.3Fabの結合を決定することによって算定した。E.coli のペリプラズム中および残留増殖培地中(ペリプラズムから増殖培地への物質の漏出による)の生物学的に活性なD1.3Fabの蓄積を、表14に示す。ペリプラズムおよび残留増殖培地中のD1.3Fabの蓄積を、1単位のバイオマス(OD600)につき培養物1リットル当たりのμg活性物質として規格化した。
【0108】
【表14】
【0109】
異種タンパク質、具体的には、複雑なジスルフィド結合形成を必要とするタンパク質の高レベル分泌を可能にするようにこの系によって与えられる制御の有用性は、明らかに、E.coli ペリプラズム中の生物学的に活性なD1.3Fabの高レベルの分泌および蓄積
によって例示される。更に、バッチ供給発酵(例えば、前の実施例11または下の実施例14に記載の)を用いて、このようなタンパク質を高収率で製造することができる方法は、当業者に明らかであろう。
【0110】
実施例14
実施例11に記載の発酵法を、CLD048を用いて繰り返した。誘導は、発酵中のバイオマスレベルがOD600=約50に達したら、0.15mMの最終濃度へのIPTGの添加によって行った。バッチ供給相は、誘導後35〜45時間続けた。次に、細胞と、残留細胞不含増殖培地を採取した。採取された細胞に、浸透圧ショック細胞分画を更に行って、可溶性E.coli ペリプラズム画分に分配されたタンパク質を含有する細胞画分を
単離した。可溶性ペリプラズム抽出物および残留増殖培地中の生物学的に活性なD1.3Fabの蓄積は、精製された活性D1.3Fabで作成された標準曲線に関するELISA検定において、リゾチーム(lysoszyme)(抗原)へのD1.3Fabの結合を決定す
ることによって算定した。ペリプラズムおよび残留増殖培地中のD1.3Fabの蓄積を、「培養物1リットル当たりのmg活性物質」として規格化した。
【0111】
E.coli のペリプラズム中および残留増殖培地中(ペリプラズムから増殖培地への物
質の漏出による)の生物学的に活性なD1.3Fabの蓄積を、表15に示す。
【0112】
【表15】
【0113】
生物学的に活性なD1.3Fabの高レベル分泌は、発現系を用いて示す。
実施例15
合成二重特異性単一鎖四価ダイアボディー(diabody)(bsctDb)を設計したが
、それは、D1.3からの可変軽領域および可変重領域(抗リゾチーム)と、A5B7(抗CEA(癌胎児性抗原))を、単一ポリペプチド鎖上で連結していた。この分子のDNA配列を、図5に示す(SEQ ID NO22)。これを、NdeIおよびNotIで消化されたpAVE46中にNdeI/NotIフラグメントとしてクローン化した。リコンビナントプラスミドを、制限消化物によってスクリーニングし、シークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE078と称した。pAVE078を、E.coli W3110中に形質転換して、CLD073を製造し、それを精製し、グリセロ
ール貯蔵液中において−80℃で維持した。
【0114】
CLD0073バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid
)、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した
。これを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている2個の250ml Erlenmeyer フラスコに接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、0.5mMかまたは0.1mMの最終濃度へのIPTGで誘導し、そしてインキュベーションを、上記の条件下で更に20時間続けた。次に、細胞と、残留細胞不含増殖培地を採取した。採取された細胞に、浸透圧ショック細胞分画を更に行って、可溶性E.coli ペリプラズム画分に分配されたタ
ンパク質を含有する細胞画分を単離した。ペリプラズム抽出物および残留増殖培地中の生物学的に活性なD1.3−A5B7 bsctDbの発現、分泌、フォールディングおよび蓄積は、競合的ELISA検定においてCEA(抗原)への抗CEA単クローン性抗体の結合の阻害を決定することによって、および競合的ELISA検定においてリゾチーム(抗原)への抗リゾチームFab抗体フラグメントの結合によって算定した。
【0115】
得られたデータは、D1.3−A5B7 bsctDbの大部分が、誘導の最後に残留増殖培地中に分配されたこと(ペリプラズムからの漏出)を示した。このデータ(競合的ELISA検定におけるbsctDbの結合)を、表16に示す。得られたデータは、0.5mMのIPTGで誘導された培養物からの残留増殖培地試料が、競合ELISA検定
において抗CEAおよび抗リゾチーム双方の抗体の結合を競合的に阻害するということを示している。0.1mMのIPTGで誘導された培養物からの残留増殖培地試料は、低下した阻害レベルを示して、この試料中の生物学的に活性なD1.3−A5B7 bsctDbの一層低い蓄積レベルを示している。
【0116】
【表16】
【0117】
新しい発現系を用いると、E.coli を用いて生じることが困難であった複雑な多重鎖
異種タンパク質を生じることが可能である。これは、生物学的に活性な形の二重特異性単一鎖四価ダイアボディーが、新しい発現系を用いてE.coli 中で生じることができると
いうことを示すことによって例示された。これは、更に、発現系の有用性を例示している。
【0118】
実施例16
グルタチオン−S−トランスフェラーゼ−3Cプロテイナーゼ融合(GST−3C)遺伝子を、NdeIおよびXhoIで消化されたpAVE011中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化した。インサートの配列を、図6に示す(SEQ ID NO23)。リコンビナントプラスミドを、制限消化物によってスクリーニングし、シークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE052と称した。pAVE052を、E.coli BL21中に形質転換して、CLD054を製造し、それを精製し
、グリセロール貯蔵液中において−80℃で維持した。
【0119】
ヒトインターフェロンα2(IFNα2)遺伝子を、NdeIおよびXhoIで消化されたpAVE011中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化した。インサートの配列を、図7に示す(SEQ ID NO24)。リコンビナントプラスミドを、制限消化物によってスクリーニングし、シークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE058と称した。pAVE058を、E.coli W3110中に形質
転換して、CLD059を製造し、それを精製し、グリセロール貯蔵液中において−80℃で維持した。
【0120】
ヒトエリトロポエチン(EPO)遺伝子は、E.coli 中の発現に最適化されたコドン
であったが、それを、NdeIおよびXhoIで消化されたpAVE011中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化した。インサートの配列を、図8に示す(SEQ ID NO25)。リコンビナントプラスミドを、制限消化物によってスクリーニングし、シークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE061と称した。pAVE061を、E.coli W3110中に形質転換して、CLD060を製造し
、それを精製し、グリセロール貯蔵液中において−80℃で維持した。
【0121】
CLD054、CLD059およびCLD060を用いたバッチ供給発酵を、実施例1
1に記載の培地および方法条件を用いて行った。発酵は、表19に記載のように30℃または37℃で維持した。発酵は、バッチ様式で、炭素源(すなわち、グリセロール)が消耗するまで行った。バッチ供給発酵は、この時点で、グリセロール(714g/L)および硫酸マグネシウム(30g/L)を含有する供給材料の添加によって開始した。誘導は、発酵中のバイオマスレベルがOD600=50〜60に達したら、IPTGの添加によって行った。用いられるIPTG濃度を、表17に記載する。バッチ供給相は、誘導後12〜15時間続けた。試料を、発酵の間中採取して、バイオマスレベル(OD600)およびタンパク質生産物を決定した((GST−3C、IFNα2およびEPO)タイター(g/L)、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルを用いて)。
【0122】
【表17】
【0123】
表17に示されたデータは、更に、広範囲の異種タンパク質の製造のためのそれら系の有用性を示す。高生産物タイターは、誘導に用いられたIPTG濃度のみの操作と共役した単純で包括的な発酵法を用いて達成する。これは、治療的に有用な異種タンパク質の方法開発時刻表を縮小するのに特に有益である。
【0124】
実施例17
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)からのL−2−ハロアルカノエートデハロゲナーゼ(hadL)遺伝子を、PCRを用いて遺伝子操作されたNdeIおよびSpeI部位を用いてクローン化した。その遺伝子配列を、図9に示す(SEQ ID NO26)。プラスミドpAVE011を、NdeIおよびSpeIで消化し、バンドをゲル抽出した。hadL遺伝子を、NdeIおよびSpeIで消化し、そしてhadL遺伝子を、ゲル抽出し且つpAVE011に連結して、pAVE075を生じた。シュードモナス・サバスタノイ(Pseudomonas savastanoi)複製起点を、PCRを用いて、プラスミドpCN60(ATCC77101;Nieto C, et al. (1990) Gene 87: 145-149)から
コピーした。
【0125】
用いられたプライマーは、次であった。
【0126】
【化15】
【0127】
そのPCR産物を、最初に、TOPO TA pCR2.1(Invitrogen)中に、次に、BglII消化によってpAVE075中にクローン化した。得られたプラスミドpAVE086を、Pseudomonas putida NCIMB12018中にエレクトロポレーションに
よって形質転換して、CLD075を製造し、それを精製し、グリセロール貯蔵液中において−80℃で維持した。CLD075バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)、10
g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。これを
、オービタルシェーカー中において30℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている2個の250ml Erlenmeyer フラスコに別々に接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において30℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、一つのフラスコを、0.5mMの最終濃度へのIPTGで誘導し、もう一つのフラスコは、未誘導のままにして、基底発現を監視した。インキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のHadLタンパク質の蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。HadLの蓄積レベルは、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルのデンシトメトリー走査を用いて決定した。
【0128】
HadLタンパク質の発現および蓄積を、図10に示す。そのデータは、T7A3:DPPS91発現系が、別の原核生物宿主系において機能したことを示している。驚くべきことに、その発現系は、Pseudomonas putida において、宿主系としてE.coli を用いた場合に認められるのと同じ効率で行った。基底発現は、誘導物質の不存在下における23時間インキュベーション後でも検出されなかった。高レベルのタンパク質発現および蓄積は、Pseudomonas putida において、IPTGを用いた誘導後に達成した。
【0129】
実施例18
Pseudomonas putida CLD075を用いたバッチ供給発酵を、実施例11に記載の包
括的なE.coli 培地および方法条件を用いて行った。発酵は、30℃およびpH7.0
で維持した(25%水酸化アンモニウムおよび10%リン酸で制御される)。発酵は、バッチ様式で、炭素源(すなわち、グリセロール)が消耗するまで行った。バッチ供給発酵は、この時点で、グリセロール(714g/L)および硫酸マグネシウム(30g/L)を含有する供給材料の添加によって開始した。誘導は、発酵中のバイオマスレベルがOD600=50に達したら、1mMのIPTG(最終濃度)の添加によって行った。バッチ供給相は、誘導後12〜15時間続けた。試料を、発酵の間中採取して、バイオマスレベル(OD600)およびHadLタンパク質蓄積((%TCP)試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲル)を決定した。誘導後のCLD075の増殖およびHadLタンパク質の発現/蓄積を、図11に示す。
【0130】
高レベルのタンパク質発現および蓄積(>40%TCP)は、Pseudomonas putida に
おいて発現系を用いて、E.coli で用いるために設計された包括的な増殖培地を用いる
だけで達成した。
【0131】
実施例19
合成Galリプレッサー遺伝子(E.coli)を、(EP0502637号に記載の)ベクターpZen042中に、PstI部位中へのPstIフラグメントとしてクローン化した。クローンは、時計回りおよび反時計回り双方の配向のGalリプレッサー遺伝子で識別した。反時計回り配向のクローンを選択して、pAVE071を生じた。
【0132】
Galプロモーターおよびオペレーター配列の構築は、US6,537,779号に記載のように製造されたプラスミドpZT7#2.0中で開始した。pZT7#2.0は、pAT153ベクター主鎖、cer安定性配列、tetA/R、目的の遺伝子の上流の単一天然lacオペレーター配列および上流T4転写ターミネーターを有する。天然Galオペレーター配列を修飾して、完全パリンドロームオペレーター配列を生じた。これを、上記のプラスミド中に、合成リンカーを用いてEcoRIおよびXbaI制限酵素部位によってクローン化した。リンカーGalBは、オリゴヌクレオチドGalB1およびGalB2:
【0133】
【化16】
【0134】
をアニーリングすることによって製造した。
次に、そのリンカーを、プラスミドpZT7#2.0に連結し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にEcoRI/XbaIフラグメントとして形質転換した。形質転換細胞の初期スクリーニングは、AgeIを用いた制限消化によった。配列は、シークエンス法によって確認した。hTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化した。
【0135】
hTNFα遺伝子および部分Gal完全パリンドロームオペレーター配列を、XmaIおよびMscIで消化し、そしてXmnIおよびXmaIで消化されたpAVE071中に連結することによってクローン化した。クローンは、hTNFα遺伝子の存在について、制限消化によってスクリーニングした。
【0136】
上流完全パリンドロームGalオペレーターおよびGalプロモーターを、各々、このプラスミド中に、合成リンカーを用いてStuIおよびEcoRI部位によってクローン化した。リンカーGalAは、オリゴヌクレオチドGalA1およびGalA2:
【0137】
【化17】
【0138】
をアニーリングすることによって製造した。
リンカーの存在は、MfeIでの消化で検出し、シークエンス法によって確認した。このプラスミドを、E.coli 菌株W3110中に形質転換して、CLD085を生じ、そ
れを精製し、グリセロール貯蔵液中において−80℃で維持した。
【0139】
CLD085バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。これを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに接種した。そのフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、10.0mMの最終濃度へのガラクトースで誘導した。インキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積レベルは、試料採取された細菌のSDS−PAGE後の(抗hTNFα抗体を用いた)ウェスタンブロット分析を用いて決定した。そのデータを、図17に示す。これは、完全パリンドロームgalオペレーター配列を、galリプレッサー遺伝子と組み合わせて用いることが、誘導物質の不存在下におけるgalプロモーターの極めて堅固な抑制をもたらすが、驚くべきことに、誘導物質ガラクトースを加えた場合に、誘導能力がなお維持されているということを示している。
【0140】
実施例20
非組込み酵母ベクターを、次のように構築した。
(1)XhoIで消化されたpCR2.1(Invitrogen)中へのXhoIフラグメントとしてのクローン配列1(Saccharomyces cerevisiae CYC1プロモーターの下流のE
.coli LacI)。クローン配列1を、図15に示す(SEQ ID NO35)。
【0141】
(2)プラスミド2を生じるように工程1で構築された、HindIIIで消化されたプ
ラスミド中へのHindIIIフラグメント(PCRで製造される)としてのクローン配列
2(Saccharomyces cerevisiae MF−α1遺伝子プロモーターであって、MF−α1プ
ロモーター領域の両側に完全パリンドロームlacオペレーター配列を含むものと、タンパク質エラフィン(elafin)の遺伝子配列であって、下流に位置するC末端c−myc標識(エラフィン−cmyc)を含むものから成る)。クローン配列2を、図16に示す(SEQ ID NO36)。
【0142】
(3)LEU2(選択マーカー遺伝子)および酵母2μ複製起点を含有する、YEp13(ATCC37115)からのSpeIフラグメントを、SpeIで消化されたプラスミド2中にクローン化して、pAVE091を生じる。
【0143】
pAVE091プラスミドDNAを、Saccharomyces cerevisiae XS95−6C(A
TCC204688)中にエレクトロポレーションによって形質転換し、そして陽性コロニーを、ロイシン不含の酵母脱落培地(yeast drop-out medium)上で選択した(Kaiser C, Michaelis S and Mitchel A (Methods in Yeast Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Manual, 1994))。エラフィン−cmycタンパク質発現を決定するシェークフラスコ増殖研究を、同じ培地を用いて行った。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において30℃、200rpmでインキュベートした。クローンを、約3のODへと増殖させ、そして0.5mMのIPTG(最終濃度)で誘導した。インキュベーションを、上記の条件下で更に16時間続け、その間に、増殖培地中へのエラフィン−cmycタンパク質の分泌と増殖の測定用に試料を採取した。残留増殖培地中へのエラフィン−cmycの分泌は、Wiedow O, et al, J Biol Chem. (1990) 265(25):14791-5 に記載のように、
エラスターゼ阻害酵素検定を用いて決定した。4時間のIPTG誘導後、増殖培地中に30mg/Lの活性エラフィンタンパク質が存在した。これは、本発明の発現系が、酵母において有効であることを示している。
【0144】
実施例21
二重完全パリンドロームlacオペレーター配列に隣接した構成的ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)プロモーターを含有するDNAフラグメントを合成した。これを、発現ベクター中にクローン化したところ、IgG Fcタンパク質を発現した。得られたプラスミドを、pAVE081と称したが、それは、pCMV−Script(Stratagene)に由来し、そしてNdeI/NheIフラグメント上の二重完全パリンドロームlacオペレーター配列に隣接したhCMVプロモーターを、ベクターの多重クローニング部位中のIgG FcDNA配列と一緒に含有する。hCMVプロモーターおよび二重完全パリンドロームlacオペレーターのDNA配列を、図12に示す(SEQ ID NO33)。IgG Fcタンパク質のDNA配列を、図13に示す(SEQ ID NO34)。IgG Fcタンパク質を発現するpAVE081およびlacリプレッサーを発現するpCMVlacI(Stratagene)の一時的コトランスフェクションを、当該技術分野において十分に記載されているように行って、IgG Fcタンパク質が、IPTG誘導性hCMVプロモーター・二重完全パリンドロームlacオペレーター発現系の制御下で発現されうるか否かを決定した。
【0145】
2mlのチャイニーズハムスター卵巣(Chinese Hamster Ovary)(血清不含培地中の
懸濁増殖に適応したCHO細胞系ECACC85050302)懸濁培養物を、1.5x105個/mlの生菌数で、6ウェル組織培養プレートの各ウェルに加えた。次に、それら6ウェル組織培養プレートを、給湿37℃インキュベーター中において5%CO2で一晩(16時間)インキュベート後、トランスフェクション配合物を、等量のpCMVlacI(Stratagene)DNAを含む2μgのpAVE081 DNA、6μlのトランスフェクション試薬および94μlの増殖培地を1ウェルに付き含有して調製した。100μlのトランスフェクション配合物を、CHO細胞が入っている各々のウェルに加えた。次に、それら6ウェル組織培養プレートを、給湿37℃インキュベーター中において5%CO2でインキュベートした。増殖培地中へのIgG Fcタンパク質の発現/分泌レベルを決定するために、一組のウェル(2日目)を、5mMのIPTG(最終濃度)で誘導し、別の組のウェルを未誘導のままにした。3日目に、IPTGで誘導された組のウェルおよび未誘導のままのものから試料採取した(IPTG誘導後および未誘導)。IgG Fcタンパク質のCHO細胞による増殖培地中への発現および分泌は、当該技術分野において十分に確立されているELISAによって決定した。得られたデータを、図14に示す。
【0146】
そのデータは、明らかに、発現系の幅広い有用性を示している。その発現系は、hCMVプロモーターのような、哺乳動物細胞の系と一緒に典型的に用いられる強力な構成的プロモーターを制御して、哺乳動物細胞中において制御可能な誘導性方式でタンパク質を発現するのに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リコンビナントポリペプチドの微生物発現に適する発現系に関する。
【背景技術】
【0002】
T7に基づく完全パリンドロームオペレーター配列に基づくタンパク質発現系は、米国特許第6,537,779号により知られている。T7に基づく系は、T7系の操作が、必要なファージポリメラーゼを発現するλDE3プロファージを大腸菌(Escherichia coli)宿主菌株中に挿入して、溶原性宿主菌株を生じることによって一般的に与えられるファージポリメラーゼを必要とするという欠点を有する。そのファージポリメラーゼは、ファージポリメラーゼの遺伝子(例えば、T7 RNAポリメラーゼ)を有する特殊なλ形質導入ファージでの感染によって細胞へと送達することもできる。λDE3プロファージは、溶菌ファージ粒子を形成するプロファージの切除に必要な遺伝的要素を欠いている。しかしながら、λDE3溶原性宿主菌株は、ファージ粒子を放出すること、したがって、発酵プラントにおいて望ましくない感染を引き起こすことが分かった。実際に、λDE3菌株の使用は、ある種の発酵プラント作業者によって認められていない。
【0003】
誘導前の異種タンパク質の発現は、若干の異種タンパク質が、全体の生産性を減少させる宿主細胞成長およびプラスミド安定性に有害な作用を有するという理由で望ましくない。これを免れるために、T7に基づく発現系は、概して、異種タンパク質の発現を二つのレベルで制御する。第一に、T7 RNAポリメラーゼを生じるT7 RNAポリメラーゼ遺伝子発現の誘導は、T7プロモーターからの発現を推進するのに必要とされる。第二に、T7プロモーターそれ自体も、誘導される必要がある。これは、T7に基づく発現系を操作する複雑さを増加させる。
【0004】
目的のタンパク質のための発現系/発酵法の選択および最適化を、主に経験的な方法とする、いろいろな制御様式および誘導様式での極めて多数の異種タンパク質発現系が存在する。これは、時間の浪費であり且つ望ましくない。したがって、ファージポリメラーゼおよび溶原性宿主菌株の使用を伴うことなく、改善された発現制御および改善されたタンパク質発現レベルを与えることができる系が要求される。更に、原核細胞、更には、哺乳動物および酵母の細胞などの真核細胞において、誘導性異種発現を与えることができる系が要求される。
【発明の開示】
【0005】
本発明により、完全パリンドロームオペレーター配列に基づくタンパク質発現系であって、
(a)プロモーター;および
(b)完全パリンドロームオペレーター配列
を含む;そのプロモーターがT7ではないことを特徴とするタンパク質発現系を提供する。
【0006】
本発明の発現系に用いることができるプロモーターは、一般的には、宿主RNAポリメラーゼに基づくプロモーター系、好ましくは、大腸菌(E.coli)RNAポリメラーゼに基づくプロモーター系である。用いることができるプロモーターの例には、T7A1、T7A2、T7A3、λpL、λpR、lac、lacUV5、trp、tac、trc、phoAおよびrrnBが含まれる。
【0007】
本発明による発現系に用いることができるオペレーター配列には、lac、gal、d
eoおよびglnが含まれる。一つまたはそれを超える完全パリンドロームオペレーター配列を用いることができる。多くの好ましい態様において、二つの完全パリンドロームオペレーター配列を用いるが、最も好都合には、一方のオペレーター配列は、プロモーターの下流に位置していて、もう一方のオペレーター配列は、プロモーターの上流に位置している。二つのオペレーター系を用いる場合、それらオペレーター配列は、好ましくは、プロモーターの制御を最大にするように間隔を置く。多くの態様において、その間隔は、85〜150塩基対間隔、好ましくは、90〜126塩基対間隔、そして最も好ましくは、91または92塩基対間隔である。ある種の態様において、オペレーター配列は、転写出発点と重なる。
【0008】
オペレーター系は、一般的には、適当なリプレッサー配列と一緒に用いられるということは理解されるであろう。リプレッサー配列は、リプレッサータンパク質を生じ、例えば、lacオペレーターを用いた場合、lacI遺伝子配列を生じる。他のlacリプレッサー配列を用いてもよく、例えば、lacIQ配列は、lacリプレッサータンパク質のレベルを増加させるのに用いることができる。リプレッサー配列は、宿主細胞ゲノムによってまたは追加の適合性プラスミドを用いることによって与えることもできる。
【0009】
発現系は、宿主細胞ゲノム中に組み込むことができるが、好ましくは、プラスミドなどの染色体外要素内に含まれる。或いは、発現系は、ファージまたはウイルスベクター中に包含されてよく、これらは、宿主細胞系中に発現系を送達するのに用いることができる。プラスミドまたは発現ベクターは、当該技術分野において知られている方法によって組み立てることができる。プラスミドは、典型的に、一つまたはそれを超える次のもの:選択可能マーカー、例えば、抗生物質耐性を与える配列;cer安定性配列;および発現カセットを更に含む。その発現系は、所望のタンパク質の分泌が必要とされる場合、シグナル配列を包含してもよい。
【0010】
発現は、イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)、イソブチル−C−ガラクトシド(IBCG)のようなIPTG類似体、ラクトースまたはメリビオースなどの誘導物質の追加によって誘導することができる。他の誘導物質を用いることができるが、それは、他のところに一層十分に記載されている(例えば、The Operon, eds Miller and Renznikoff (1978) を参照されたい)。誘導物質は、個々に、または組合せ
で用いることができる。適当なプラスミドまたは発現ベクターの構築は、当科学者に明らかであろう。
【0011】
本発明の発現系は、宿主細胞において、特に、微生物においてタンパク質を発現させるのに用いることができる。本明細書中で用いられる「タンパク質」は、概して、約10を超えるアミノ酸を有するペプチドまたはタンパク質を意味する。宿主細胞は、原核生物または真核生物であってよい。原核細胞の例には、細菌細胞、例えば、E.coli、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、霊菌(Serratia marsescens)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を含めたグラム陰性細菌細胞;および枯草菌(Bacillus subtilis)を含めたグラム陽性細菌細胞が含まれる。真核細胞の例には、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンセヌ
ラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などの酵
母が含まれる。用いることができる哺乳動物宿主細胞には、ヒト胚性腎およびPERC.6細胞などのヒト細胞系;NS0細胞などのネズミ細胞系;そして具体的には、乳児ハムスター腎細胞などのハムスター細胞系、特に、チャイニーズハムスター卵巣細胞が含まれる。糸状菌、植物、昆虫、両生類の細胞または卵巣種のものなどの他の真核宿主細胞も、用いることができる。好ましい宿主細胞は、細菌、具体的には、腸内細菌(enterobacteriacae)、好ましくは、E.coli、特に、そのBまたはK12菌株である。
【0012】
本発明の発現系は、一般的には、プラスミドの形で用いられ、そしてプロモーターおよび完全パリンドロームオペレーター配列を含むプラスミドであって、そのプロモーターがT7ではないプラスミドは、本発明の別の側面を形成する。それらプラスミドは、自律複製性プラスミドまたは組込みプラスミドであってよい。
【0013】
本発明の発現系は、好都合には、タンパク質、特に、リコンビナントタンパク質の製造に、リコンビナント細胞を培養することによって用いられる。タンパク質の発現について、プロモーターおよびオペレーター配列は、発現されるタンパク質をコードしているDNAに機能的に連結しているということは理解されるであろう。
【0014】
したがって、本発明は、更に、タンパク質の製造方法であって、
(a)プロモーター;
(b)完全パリンドロームオペレーター配列;および
(c)タンパク質のための発現カセット
を含む;プロモーターがT7ではないことを特徴とする発現系を発現することを含む方法を提供する。
【0015】
所望ならば、同じであってよいしまたは異なっていてよい一つまたはそれを超えるプロモーター、オペレーター配列および発現カセットが存在してよい。
その発現系は、用いられる細胞について当該技術分野において周知の方法によって発現される。好ましい発現方法は、リコンビナント細胞を増殖培地中で、特に、発酵によって培養後、発現されたタンパク質を回収することを包含する。「増殖培地」という用語は、リコンビナント細胞を成長させるのに用いられる栄養培地を意味する。多くの態様において、栄養素溶液を用いる。与えられたリコンビナント細胞に適する増殖培地は、当該技術分野において周知である。
【0016】
本発明を、次の実施例によって、制限を伴うことなく詳しく説明する。
【実施例】
【0017】
1.pAVE系列ベクターの生成
pAVE011、pAVE012およびpAVE013ベクター
pAVE011の生成用の出発ベクターは、US6,537,779号に記載のように製造されたpZT7#2.0であった。pZT7#2.0は、pAT153ベクター主鎖、cer安定性配列、tetA/R、目的の遺伝子の上流の単一天然lacオペレーター配列および上流T4転写ターミネーターを有する。T7A3プロモーターおよび二重完全パリンドロームlacオペレーターを、このプラスミド中に、合成オリゴヌクレオチドリンカーを用いてNcoI、EcoRIおよびXbaI制限酵素部位によってクローン化した。
【0018】
リンカー12.1は、オリゴヌクレオチド1および2.1:
【0019】
【化1】
【0020】
をアニーリングすることによって製造した。
次に、そのリンカーを、プラスミドpZT7#2.0に連結し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にNcoI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。形質転換細胞の初期スクリーニングは、NcoIを用いた制限消化によった。配列は、シークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE012と称した。
【0021】
次に、T7A3プロモーターカセットを、プラスミドpAVE012に連結しているアニーリングされたオリゴヌクレオチドであるオリゴヌクレオチド3および4:
【0022】
【化2】
【0023】
をアニーリングすることによってpAVE012中にクローン化し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE011と称した。
【0024】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化して、pAVE013を生じた。pAVE013のプラスミド地図を、図18に示す。これは、オペレーターおよびプロモーターの配置と、構築に用いられる制限酵素部位を示している。オペレーターは、双方とも完全パリンドロームlacオペレーターである。RBSは、リボソーム結合部位である。そのベクターは、pAT153ベクター主鎖、cer安定性配列、誘導性テトラサイクリン耐性遺伝子(tetA/R)および上流T4転写ターミネーターを包含する。
【0025】
pAVE038およびpAVE041ベクター
pAVE038の生成用の出発ベクターは、US6,537,779号に記載のように
製造されたpZT7#2.0であった。tacプロモーターおよび単一天然lacオペレーターを、このプラスミド中に、合成オリゴヌクレオチドリンカーを用いてEcoRIおよびXbaI制限酵素部位によってクローン化した。
【0026】
リンカー1112は、オリゴヌクレオチド11および12:
【0027】
【化3】
【0028】
をアニーリングすることによって製造した。
次に、そのリンカーを、プラスミドpZT7#2.0に連結し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。形質転換細胞の初期スクリーニングは、NcoIを用いた制限消化によった。配列は、シークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE038と称した。
【0029】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化して、pAVE041を生じた。
pAVE037およびpAVE040ベクター
pAVE037の生成用の出発ベクターは、US6,537,779号に記載のように製造されたpZT7#2.0であった。tacプロモーターおよび単一完全パリンドロームlacオペレーターを、このプラスミド中に、合成オリゴヌクレオチドリンカーを用いてEcoRIおよびXbaI制限酵素部位によってクローン化した。
【0030】
リンカー1314は、オリゴヌクレオチド13および14:
【0031】
【化4】
【0032】
をアニーリングすることによって製造した。
次に、そのリンカーを、プラスミドpZT7#2.0に連結し、そしてクローニング宿
主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。形質転換細胞の初期スクリーニングは、NcoIを用いた制限消化によった。配列は、シークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE037と称した。
【0033】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化して、pAVE040を生じた。
pAVE028およびpAVE030ベクター
pAVE028の生成用の出発ベクターは、pAVE012であった。T7A3プロモーターカセットを、プラスミドpAVE012に連結しているアニーリングされたオリゴヌクレオチドであるオリゴヌクレオチド5および6:
【0034】
【化5】
【0035】
をアニーリングすることによってpAVE012中にクローン化し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE028と称した。
【0036】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化して、pAVE030を生じた。
pAVE007およびpAVE031ベクター
pAVE007の生成用の出発ベクターは、US6,537,779号に記載のように製造されたpZT7#2.0であった。T7A3プロモーターおよび単一完全パリンドロームlacオペレーターを、このプラスミド中に、合成オリゴヌクレオチドリンカーを用いてEcoRIおよびXbaI制限酵素部位によってクローン化した。
【0037】
T7A3プロモーターを含有するリンカーは、オリゴヌクレオチド3および4:
【0038】
【化6】
【0039】
から製造した。
オリゴヌクレオチド3および4を、アニーリングした後、形成されたリンカーを、プラスミドpZT7#2.0に連結し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE007と称した。
【0040】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化して、pAVE031を生じた。
pAVE029およびpAVE027ベクター
pAVE029の生成用の出発ベクターは、US6,537,779号に十分に記載のように製造されたpZT7#2.0であった。λpLプロモーターおよび単一完全パリンドロームlacオペレーターを、このプラスミド中に、合成オリゴヌクレオチドリンカーを用いてEcoRIおよびXbaI制限酵素部位によってクローン化した。
【0041】
リンカー78は、オリゴヌクレオチド7および8:
【0042】
【化7】
【0043】
をアニーリングすることによって製造した。
次に、リンカーを、プラスミドpZT7#2.0に連結し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。形質転換細胞の初期スクリーニングは、NcoIを用いた制限消化によった。配列は、シークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE029と称した。
【0044】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてク
ローン化して、pAVE027を生じた。
pAVE043およびpAVE044ベクター
pAVE043の生成用の出発ベクターは、pAVE012であった。tacプロモーターカセットを、プラスミドpAVE012に連結しているアニーリングされたオリゴヌクレオチドであるオリゴヌクレオチド17および18:
【0045】
【化8】
【0046】
をアニーリングすることによってpAVE012中にクローン化し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE043と称した。
【0047】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化して、pAVE044を生じた。
pAVE034およびpAVE035ベクター
pAVE034の生成用の出発ベクターは、pAVE012であった。λpLプロモーターカセットを、プラスミドpAVE012に連結しているアニーリングされたオリゴヌクレオチドであるオリゴヌクレオチド9および10:
【0048】
【化9】
【0049】
をアニーリングすることによってpAVE012中にクローン化し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE034と称した。
【0050】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてク
ローン化して、pAVE035を生じた。
pAVE020およびpAVE021ベクター
pAVE020の生成用の出発ベクターは、pAVE012であった。λpLプロモーターカセットを、プラスミドpAVE012に連結しているアニーリングされたオリゴヌクレオチドであるオリゴヌクレオチド7および8:
【0051】
【化10】
【0052】
をアニーリングすることによってpAVE012中にクローン化し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE020と称した。
【0053】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化して、pAVE021を生じた。
pAVE016およびpAVE017ベクター
pAVE016の生成用の出発ベクターは、pAVE012であった。tacプロモーターカセットを、プラスミドpAVE012に連結しているアニーリングされたオリゴヌクレオチドであるオリゴヌクレオチド15および16:
【0054】
【化11】
【0055】
をアニーリングすることによってpAVE012中にクローン化し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE016と称した。
【0056】
ヒトTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてク
ローン化して、pAVE017を生じた。
pAVE049ベクター
pAVE049の生成用の出発ベクターは、pAVE017であった。tacプロモーターカセットは、変化しなかった。二つのオペレーター間の91〜124塩基対間隔を増加させるために、EcoRIリンカーをクローン化した。これは、オリゴヌクレオチド19および20:
【0057】
【化12】
【0058】
から製造した。
初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE049と称した。
【0059】
pAVE046ベクター
分泌ベクターpAVE046の生成用の出発ベクターは、pAVE027であった。D1.3Fab発現カセット(図1、SEQ ID NO17)を、NdeI−BamHIフラグメントとしてクローン化した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE046と称した。
【0060】
【表1】
【0061】
2.リコンビナント菌株の生成
E.coli 菌株W3110(American Type Culture Collection よりATCC27325として入手可能)およびBL21(EMD Biosciences Inc, San Diego, USA より入
手可能)を、エレクトロポレーションにより、下の表2に記載のプラスミドで形質転換した。得られたリコンビナント菌株を精製し、グリセロール貯蔵液中において−80℃で維持した。
【0062】
【表2】
【0063】
比較例1
T7A3プロモーターを含むが、いずれのオペレーターも不含のプラスミドの生成用の出発ベクターは、pZT7#2.0であった。T7A3プロモーターを、このプラスミド中に、合成オリゴヌクレオチドリンカーを用いてEcoRIおよびXbaI制限酵素部位によってクローン化した。
【0064】
リンカー2122は、オリゴヌクレオチド21および22:
【0065】
【化13】
【0066】
をアニーリングすることによって製造した。
次に、リンカーを、プラスミドpZT7#2.0に連結し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。22クローンを、制限消化物およびシークエンス法によってスクリーニングした。
【0067】
正しいT7A3プロモーター配列と一致したクローンは無かった(全て、配列中に突然変異を含有した)。これは、この強力な構成的プロモーターを含有するプラスミドの構築に問題があるということを示唆している。
【0068】
比較例2
単一天然Lacオペレーター配列の制御下のT7A3プロモーターを含むプラスミドの生成用の出発ベクターは、pZT7#2.0であった。T7A3プロモーターおよび天然Lacオペレーター(LacO)配列を、このプラスミド中に、合成オリゴヌクレオチドリンカーを用いてEcoRIおよびXbaI制限酵素部位によってクローン化した。
【0069】
リンカー2324は、オリゴヌクレオチド23および24:
【0070】
【化14】
【0071】
をアニーリングすることによって製造した。
次に、リンカーを、プラスミドpZT7#2.0に連結し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にXbaI/EcoRIフラグメントとして形質転換した。初期スクリーニングは、プラスミドDNAの制限消化物によった。次に、配列をシークエンス法によって確認した。94クローンを、制限消化およびシークエンス法によってスクリーニングした。再度、正しい配列と一致したクローンは無かった。しかしながら、一つのクローンは、ほぼ無傷な配列を有することが判明した。このクローンは、その配列中の約−37位に追加の「G」を含有した。予想される配列は、この領域中に−GG−を含有するので、その突然変異の正確な位置を指定することは難しい。ヒトTNFα遺伝子を、ほぼ無傷な配列を有するプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化した。クローニング宿主菌株XL−Blue MR(Stratagene)から20コロ
ニーをスクリーニングした。一つは、(上記の追加の「G」以外に)突然変異不含の陽性クローンであった。このプラスミドを、生産宿主(ATCC27325)中に形質転換し、そしてそのプラスミドを再度配列決定した。
【0072】
これは、そのプラスミドが、T7A3プロモーターおよびヒトTNFα双方の配列中に著しい突然変異を含有したことを示し、T7A3プロモーターの使用が、天然lacオペレーター配列の制御下でさえも、プラスミド不安定性を生じるということを示した。
【0073】
実施例3
CLD032バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)
、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。
これを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている2個の250mlエルレンマイヤー(Erlenmeyer)フラスコに接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、一方のフラスコを、0.0
5mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導し、もう一方のフラスコは、基底発現を監視するために未誘導のままにした。インキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積レベルは、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルのデンシトメトリー走査を用いて決定した。それら結果を、下の表3に要約する。
【0074】
【表3】
【0075】
総合すると、比較例1および2および実施例3に示されたデータは、強力なT7A3プロモーターの有効な制御が、驚くべきことに、単一完全パリンドロームオペレーター配列を用いて達成されたということを示している。これは、単一天然オペレーターの使用(比較例2)が、安定なリコンビナント生産菌株が樹立されることを可能にする十分な基底制御を与えなかったとすると、全く予想外であった。高生産物蓄積レベルは、誘導について比較的低濃度の誘導物質を用いて、単一完全パリンドローム制御系で達成された。基底発現(誘導物質の不存在下)は認められたが、それは、有意に延長されたインキュベーション(24時間)後にのみ明らかであった。
【0076】
実施例4
CLD018バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)
、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。
その種培養物を、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlの種培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、0.05mMおよび1mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導した。フラスコは、未誘導のままにもし、そしてそれらフラスコのインキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積レベルは、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルのデンシトメトリー走査を用いて決定した。それら結果を、下の表4に要約する。
【0077】
【表4】
【0078】
このデータは、強力なT7A3プロモーターの更なる制御が、91bp間隔を置いた二つの完全パリンドロームオペレーター配列を用いて実現されうるということを示した。基底発現(誘導物質の不存在下)は、単一完全パリンドロームオペレーターを用いて達成されたものから対照抑制へと有意に減少した。二重完全パリンドローム配列を用いて達成された基底発現の制御は、基底発現の制御に二つの異なった制御要素を必要とするUS6,537,779号のT7系と比較した場合、予想外であった。この実施例において、基底発現の制御は、E.coli RNAポリメラーゼの高バックグラウンドにおいて達成した。
【0079】
実施例5
CLD026バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)
、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。
これを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、0.05mMおよび0.005mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導した。フラスコは、未誘導のままにもし、そしてインキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積レベルは、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルのデンシトメトリー走査を用いて決定した。それら結果を、下の表5に要約する。
【0080】
【表5】
【0081】
それら結果は、二つの完全パリンドロームオペレーター配列の間隔を(91〜92bpへと)1bpだけ変更することが、達成された最終蓄積レベルおよび基底発現双方の点で、性能に悪影響を与えることはなかったということを示した。予想外にも、IPTG濃度を(0.05mM〜0.005mMへと)10倍減少させることは、誘導された生産性を有意に減少させることはなかった。
【0082】
実施例6
CLD042およびCLD043バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。各々10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、別々に、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した各々2x5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。これらを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこれら培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに別々に接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、0.5mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導した。各々の菌株培養物が入っているフラスコは、未誘導のままにもし、そしてインキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積レベルは、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルのデンシトメトリー走査を用いて決定した。20時間インキュベーション後のCLD042およびCLD043の未誘導培養物中のhTNFαの基底蓄積レベルを、試料採取された細菌のSDS−PAGE後のウェスタンブロット分析(抗hTNFα抗体を用いた)によって比較した。それらブロットを走査し、データを規格化して、比較を可能にした。それら結果を、下の表6に要約する。
【0083】
【表6】
【0084】
それら結果は、単一完全パリンドロームオペレーター配列を用いて、tacプロモーター系の誘導された生産性に悪影響を与えることなく、基底発現(誘導物質の不存在下)を4倍減少させることができるということを示した。
【0085】
実施例7
CLD019バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)
、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。
これを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、それらフラスコを、0.5mM、0.1mM、0.05mMおよび0.005mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導した。フラスコは、未誘導のままにもし、そしてインキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積レベルは、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルのデンシトメトリー走査を用いて決定した。それら結果を、図2に示す。
【0086】
図2に示されたデータは、tacプロモーターと二重完全パリンドロームオペレーター配列との組合せが、誘導に用いられるIPTGの濃度によって発現測度を直接的にモジュレーションすることができる系をもたらすということを示した。このような系を利用して、異種タンパク質の発現をモジュレーションする、例えば、可溶性形のタンパク質の蓄積を最大にする、またはリコンビナント細胞の増殖および生産性への異種タンパク質分泌が有することがありうる有害な作用の問題を回避することができる。
【0087】
実施例8
CLD030バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)
、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。
これを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、0.05mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導し、他のフラスコは未誘導のままにし、そしてインキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積レベルは、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルのデンシトメトリー走査を用いて決定した。それら結果を、下の表7に要約する。
【0088】
【表7】
【0089】
表7に示されたデータは、極めて強力なλpLプロモーターの制御が、驚くべきことに、単一完全パリンドロームオペレーター配列を用いて達成することができるということを明らかに示している。高生産物蓄積レベルは、単一完全パリンドローム制御系を用いて達成することができる。
【0090】
実施例9
CLD021およびCLD038バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。各々10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、別々に、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。これらを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、1mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導し、もう一つのフラスコは、未誘導のままにし、そしてインキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積は、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルおよびSDS−PAGE後のウェスタンブロット分析(抗hTNFα抗体を用いた)を用いて決定した。そのデータを、表8に要約する。CLD038菌株についてのウェスタンブロット分析を、図3に示す。
【0091】
【表8】
【0092】
これら結果は、91bpかまたは92bp間隔を有する二重完全パリンドロームオペレーター配列とλpLプロモーターとの組合せが、極めて堅固な抑制を生じたということを示した。ウェスタンブロットは、標的タンパク質の基底発現が検出されなかったことを示している。誘導時に、低レベル発現レベルを達成した。これら結果は、λpLプロモーターが、極めて強力なプロモーターであるとすると、全く予想外であった。このような系は、例えば、宿主細胞に高毒性のタンパク質の発現を支配するのに用いることができる。それは、制御された発現が、例えば、膜タンパク質の発現および挿入に好都合である場合に用いることができる。
【0093】
実施例10
CLD028およびCLD035バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。各々10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、別々に、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した各々2x5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。これらを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこれら培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに別々に接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、1mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導し、そしてインキュベーションを上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積レベルは、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルのデンシトメトリー走査を用いて決定した。それら結果を、下の表9に要約する。
【0094】
【表9】
【0095】
これらデータは、前の実施例4および5に示されたデータと総合して、E.coli K−
12およびB双方の菌株を用いることができるということを示した。
実施例11
発酵接種材料は、下記の菌株について各々200μlのグリセロール貯蔵液を、15μg/mlのテトラサイクリンを補足した200mLの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)が入っている2.0Lバッフル付きシェークフラスコに加えることによって増大させた。接種材料は、シェーカー・インキュベーター中、37℃において250rpmの撹拌で12時間増殖させた。200mlのシェークフラスコ接種材料を用いて、10Lのバッチ増殖培地が入っている15L作業容量発酵装置に接種した。発酵は、下記の操作条件下で行った。温度は、37℃で制御し、そして35%(w/v)水酸化アンモニウムの自動添加によって、pHを6.8で制御した。溶存酸素張力(dissolved oxygen tension)(dOT)設定点は、30%の空気飽和とし、発酵装置撹拌機速度の250rpm最小値〜1500rpm最大値までの自動調整、および入口ガス流への酸素の自動補給によって制御した。発酵装置容器への空気流量は、最後まで10L/分であった。発酵装置中の圧力は、50〜200mbarで維持した。
【0096】
発酵は、バッチ様式で、炭素源(すなわち、グリセロール)が消耗するまで行ったが、それは、接種後約10時間に認められ且つdOTの鋭敏な上昇を特徴とした。バッチ供給発酵は、炭素源排出地点において、1Lの培地につき11g/時のグリセロール供給量で供給されるグリセロール/塩化マグネシウムの添加によって開始した。誘導は、発酵中のバイオマスレベルがOD600=50〜60に達したら、0.5mMの最終濃度へのIPTGの添加によって行った。バッチ供給相は、誘導後12時間続けた。試料を採取して、採取時のバイオマスレベル(OD600)およびhTNFα蓄積(%TCP)/hTNFαタイター(g/L)を決定した(Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲル)。
【0097】
バッチ増殖培地の組成を、表10に与える。
【0098】
【表10】
【0099】
供給されるグリセロール/塩化マグネシウムの組成を、表11に与える。
【0100】
【表11】
【0101】
それら結果を、表12に要約する。CLD30菌株のhTNFα生産性プロフィールを、図4に示す。
【0102】
【表12】
【0103】
データは、明らかに、異種タンパク質の製造のためのそれら系の有用性を示している。高生産物タイターは、単純で包括的な未最適化発酵・誘導法を用いて達成した。図4に例示される生産性プロフィールによって示されるようなプラスミドpAVE027の制御特性は、異種タンパク質、具体的には、分泌を最大にするように発現の制御を必要とするタンパク質の生産を最大にするのに利用することができる。
【0104】
実施例12
CLD050バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)
、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。
これを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、0.05mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導し、別のフラスコは未誘導のままにし、そしてインキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積レベルは、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルのデンシトメトリー走査を用いて決定した。それら結果を、下の表13に要約する。
【0105】
【表13】
【0106】
驚くべきことに、二重完全パリンドロームオペレーター配列は、その間隔を増加させた場合に作用した。二重完全パリンドロームの間隔を変更して、例えば、他のプロモーター
の有効な制御を達成することができる。
【0107】
実施例13
CLD048バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)
、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。
これを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに接種した。そのフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、0.1mMの最終濃度へのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)で誘導し、そしてインキュベーションを、上記の条件下で更に2時間続けた。次に、細胞と、残留細胞不含増殖培地を採取した。採取された細胞に、浸透圧ショック細胞分画を更に行って、可溶性E.coli ペリプラ
ズム画分に分配されたタンパク質を含有する細胞画分を単離した。可溶性ペリプラズム抽出物および残留増殖培地中の生物学的に活性なD1.3Fabの蓄積は、精製された活性D1.3Fabで作成された標準曲線に関するELISA検定において、リゾチーム(lysoszyme)(抗原)へのD1.3Fabの結合を決定することによって算定した。E.coli のペリプラズム中および残留増殖培地中(ペリプラズムから増殖培地への物質の漏出による)の生物学的に活性なD1.3Fabの蓄積を、表14に示す。ペリプラズムおよび残留増殖培地中のD1.3Fabの蓄積を、1単位のバイオマス(OD600)につき培養物1リットル当たりのμg活性物質として規格化した。
【0108】
【表14】
【0109】
異種タンパク質、具体的には、複雑なジスルフィド結合形成を必要とするタンパク質の高レベル分泌を可能にするようにこの系によって与えられる制御の有用性は、明らかに、E.coli ペリプラズム中の生物学的に活性なD1.3Fabの高レベルの分泌および蓄積
によって例示される。更に、バッチ供給発酵(例えば、前の実施例11または下の実施例14に記載の)を用いて、このようなタンパク質を高収率で製造することができる方法は、当業者に明らかであろう。
【0110】
実施例14
実施例11に記載の発酵法を、CLD048を用いて繰り返した。誘導は、発酵中のバイオマスレベルがOD600=約50に達したら、0.15mMの最終濃度へのIPTGの添加によって行った。バッチ供給相は、誘導後35〜45時間続けた。次に、細胞と、残留細胞不含増殖培地を採取した。採取された細胞に、浸透圧ショック細胞分画を更に行って、可溶性E.coli ペリプラズム画分に分配されたタンパク質を含有する細胞画分を
単離した。可溶性ペリプラズム抽出物および残留増殖培地中の生物学的に活性なD1.3Fabの蓄積は、精製された活性D1.3Fabで作成された標準曲線に関するELISA検定において、リゾチーム(lysoszyme)(抗原)へのD1.3Fabの結合を決定す
ることによって算定した。ペリプラズムおよび残留増殖培地中のD1.3Fabの蓄積を、「培養物1リットル当たりのmg活性物質」として規格化した。
【0111】
E.coli のペリプラズム中および残留増殖培地中(ペリプラズムから増殖培地への物
質の漏出による)の生物学的に活性なD1.3Fabの蓄積を、表15に示す。
【0112】
【表15】
【0113】
生物学的に活性なD1.3Fabの高レベル分泌は、発現系を用いて示す。
実施例15
合成二重特異性単一鎖四価ダイアボディー(diabody)(bsctDb)を設計したが
、それは、D1.3からの可変軽領域および可変重領域(抗リゾチーム)と、A5B7(抗CEA(癌胎児性抗原))を、単一ポリペプチド鎖上で連結していた。この分子のDNA配列を、図5に示す(SEQ ID NO22)。これを、NdeIおよびNotIで消化されたpAVE46中にNdeI/NotIフラグメントとしてクローン化した。リコンビナントプラスミドを、制限消化物によってスクリーニングし、シークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE078と称した。pAVE078を、E.coli W3110中に形質転換して、CLD073を製造し、それを精製し、グリセロ
ール貯蔵液中において−80℃で維持した。
【0114】
CLD0073バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)およびグルコース(1g/L)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid
)、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した
。これを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている2個の250ml Erlenmeyer フラスコに接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、0.5mMかまたは0.1mMの最終濃度へのIPTGで誘導し、そしてインキュベーションを、上記の条件下で更に20時間続けた。次に、細胞と、残留細胞不含増殖培地を採取した。採取された細胞に、浸透圧ショック細胞分画を更に行って、可溶性E.coli ペリプラズム画分に分配されたタ
ンパク質を含有する細胞画分を単離した。ペリプラズム抽出物および残留増殖培地中の生物学的に活性なD1.3−A5B7 bsctDbの発現、分泌、フォールディングおよび蓄積は、競合的ELISA検定においてCEA(抗原)への抗CEA単クローン性抗体の結合の阻害を決定することによって、および競合的ELISA検定においてリゾチーム(抗原)への抗リゾチームFab抗体フラグメントの結合によって算定した。
【0115】
得られたデータは、D1.3−A5B7 bsctDbの大部分が、誘導の最後に残留増殖培地中に分配されたこと(ペリプラズムからの漏出)を示した。このデータ(競合的ELISA検定におけるbsctDbの結合)を、表16に示す。得られたデータは、0.5mMのIPTGで誘導された培養物からの残留増殖培地試料が、競合ELISA検定
において抗CEAおよび抗リゾチーム双方の抗体の結合を競合的に阻害するということを示している。0.1mMのIPTGで誘導された培養物からの残留増殖培地試料は、低下した阻害レベルを示して、この試料中の生物学的に活性なD1.3−A5B7 bsctDbの一層低い蓄積レベルを示している。
【0116】
【表16】
【0117】
新しい発現系を用いると、E.coli を用いて生じることが困難であった複雑な多重鎖
異種タンパク質を生じることが可能である。これは、生物学的に活性な形の二重特異性単一鎖四価ダイアボディーが、新しい発現系を用いてE.coli 中で生じることができると
いうことを示すことによって例示された。これは、更に、発現系の有用性を例示している。
【0118】
実施例16
グルタチオン−S−トランスフェラーゼ−3Cプロテイナーゼ融合(GST−3C)遺伝子を、NdeIおよびXhoIで消化されたpAVE011中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化した。インサートの配列を、図6に示す(SEQ ID NO23)。リコンビナントプラスミドを、制限消化物によってスクリーニングし、シークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE052と称した。pAVE052を、E.coli BL21中に形質転換して、CLD054を製造し、それを精製し
、グリセロール貯蔵液中において−80℃で維持した。
【0119】
ヒトインターフェロンα2(IFNα2)遺伝子を、NdeIおよびXhoIで消化されたpAVE011中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化した。インサートの配列を、図7に示す(SEQ ID NO24)。リコンビナントプラスミドを、制限消化物によってスクリーニングし、シークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE058と称した。pAVE058を、E.coli W3110中に形質
転換して、CLD059を製造し、それを精製し、グリセロール貯蔵液中において−80℃で維持した。
【0120】
ヒトエリトロポエチン(EPO)遺伝子は、E.coli 中の発現に最適化されたコドン
であったが、それを、NdeIおよびXhoIで消化されたpAVE011中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化した。インサートの配列を、図8に示す(SEQ ID NO25)。リコンビナントプラスミドを、制限消化物によってスクリーニングし、シークエンス法によって確認した。得られたプラスミドを、pAVE061と称した。pAVE061を、E.coli W3110中に形質転換して、CLD060を製造し
、それを精製し、グリセロール貯蔵液中において−80℃で維持した。
【0121】
CLD054、CLD059およびCLD060を用いたバッチ供給発酵を、実施例1
1に記載の培地および方法条件を用いて行った。発酵は、表19に記載のように30℃または37℃で維持した。発酵は、バッチ様式で、炭素源(すなわち、グリセロール)が消耗するまで行った。バッチ供給発酵は、この時点で、グリセロール(714g/L)および硫酸マグネシウム(30g/L)を含有する供給材料の添加によって開始した。誘導は、発酵中のバイオマスレベルがOD600=50〜60に達したら、IPTGの添加によって行った。用いられるIPTG濃度を、表17に記載する。バッチ供給相は、誘導後12〜15時間続けた。試料を、発酵の間中採取して、バイオマスレベル(OD600)およびタンパク質生産物を決定した((GST−3C、IFNα2およびEPO)タイター(g/L)、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルを用いて)。
【0122】
【表17】
【0123】
表17に示されたデータは、更に、広範囲の異種タンパク質の製造のためのそれら系の有用性を示す。高生産物タイターは、誘導に用いられたIPTG濃度のみの操作と共役した単純で包括的な発酵法を用いて達成する。これは、治療的に有用な異種タンパク質の方法開発時刻表を縮小するのに特に有益である。
【0124】
実施例17
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)からのL−2−ハロアルカノエートデハロゲナーゼ(hadL)遺伝子を、PCRを用いて遺伝子操作されたNdeIおよびSpeI部位を用いてクローン化した。その遺伝子配列を、図9に示す(SEQ ID NO26)。プラスミドpAVE011を、NdeIおよびSpeIで消化し、バンドをゲル抽出した。hadL遺伝子を、NdeIおよびSpeIで消化し、そしてhadL遺伝子を、ゲル抽出し且つpAVE011に連結して、pAVE075を生じた。シュードモナス・サバスタノイ(Pseudomonas savastanoi)複製起点を、PCRを用いて、プラスミドpCN60(ATCC77101;Nieto C, et al. (1990) Gene 87: 145-149)から
コピーした。
【0125】
用いられたプライマーは、次であった。
【0126】
【化15】
【0127】
そのPCR産物を、最初に、TOPO TA pCR2.1(Invitrogen)中に、次に、BglII消化によってpAVE075中にクローン化した。得られたプラスミドpAVE086を、Pseudomonas putida NCIMB12018中にエレクトロポレーションに
よって形質転換して、CLD075を製造し、それを精製し、グリセロール貯蔵液中において−80℃で維持した。CLD075バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)、10
g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。これを
、オービタルシェーカー中において30℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている2個の250ml Erlenmeyer フラスコに別々に接種した。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において30℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、一つのフラスコを、0.5mMの最終濃度へのIPTGで誘導し、もう一つのフラスコは、未誘導のままにして、基底発現を監視した。インキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のHadLタンパク質の蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。HadLの蓄積レベルは、試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲルのデンシトメトリー走査を用いて決定した。
【0128】
HadLタンパク質の発現および蓄積を、図10に示す。そのデータは、T7A3:DPPS91発現系が、別の原核生物宿主系において機能したことを示している。驚くべきことに、その発現系は、Pseudomonas putida において、宿主系としてE.coli を用いた場合に認められるのと同じ効率で行った。基底発現は、誘導物質の不存在下における23時間インキュベーション後でも検出されなかった。高レベルのタンパク質発現および蓄積は、Pseudomonas putida において、IPTGを用いた誘導後に達成した。
【0129】
実施例18
Pseudomonas putida CLD075を用いたバッチ供給発酵を、実施例11に記載の包
括的なE.coli 培地および方法条件を用いて行った。発酵は、30℃およびpH7.0
で維持した(25%水酸化アンモニウムおよび10%リン酸で制御される)。発酵は、バッチ様式で、炭素源(すなわち、グリセロール)が消耗するまで行った。バッチ供給発酵は、この時点で、グリセロール(714g/L)および硫酸マグネシウム(30g/L)を含有する供給材料の添加によって開始した。誘導は、発酵中のバイオマスレベルがOD600=50に達したら、1mMのIPTG(最終濃度)の添加によって行った。バッチ供給相は、誘導後12〜15時間続けた。試料を、発酵の間中採取して、バイオマスレベル(OD600)およびHadLタンパク質蓄積((%TCP)試料採取された細菌の全細胞溶解産物の Colloidal Blue 染色SDS−PAGEゲル)を決定した。誘導後のCLD075の増殖およびHadLタンパク質の発現/蓄積を、図11に示す。
【0130】
高レベルのタンパク質発現および蓄積(>40%TCP)は、Pseudomonas putida に
おいて発現系を用いて、E.coli で用いるために設計された包括的な増殖培地を用いる
だけで達成した。
【0131】
実施例19
合成Galリプレッサー遺伝子(E.coli)を、(EP0502637号に記載の)ベクターpZen042中に、PstI部位中へのPstIフラグメントとしてクローン化した。クローンは、時計回りおよび反時計回り双方の配向のGalリプレッサー遺伝子で識別した。反時計回り配向のクローンを選択して、pAVE071を生じた。
【0132】
Galプロモーターおよびオペレーター配列の構築は、US6,537,779号に記載のように製造されたプラスミドpZT7#2.0中で開始した。pZT7#2.0は、pAT153ベクター主鎖、cer安定性配列、tetA/R、目的の遺伝子の上流の単一天然lacオペレーター配列および上流T4転写ターミネーターを有する。天然Galオペレーター配列を修飾して、完全パリンドロームオペレーター配列を生じた。これを、上記のプラスミド中に、合成リンカーを用いてEcoRIおよびXbaI制限酵素部位によってクローン化した。リンカーGalBは、オリゴヌクレオチドGalB1およびGalB2:
【0133】
【化16】
【0134】
をアニーリングすることによって製造した。
次に、そのリンカーを、プラスミドpZT7#2.0に連結し、そしてクローニング宿主菌株XL−1 Blue MR(Stratagene)中にEcoRI/XbaIフラグメントとして形質転換した。形質転換細胞の初期スクリーニングは、AgeIを用いた制限消化によった。配列は、シークエンス法によって確認した。hTNFα遺伝子を、このプラスミド中にNdeI/XhoIフラグメントとしてクローン化した。
【0135】
hTNFα遺伝子および部分Gal完全パリンドロームオペレーター配列を、XmaIおよびMscIで消化し、そしてXmnIおよびXmaIで消化されたpAVE071中に連結することによってクローン化した。クローンは、hTNFα遺伝子の存在について、制限消化によってスクリーニングした。
【0136】
上流完全パリンドロームGalオペレーターおよびGalプロモーターを、各々、このプラスミド中に、合成リンカーを用いてStuIおよびEcoRI部位によってクローン化した。リンカーGalAは、オリゴヌクレオチドGalA1およびGalA2:
【0137】
【化17】
【0138】
をアニーリングすることによって製造した。
リンカーの存在は、MfeIでの消化で検出し、シークエンス法によって確認した。このプラスミドを、E.coli 菌株W3110中に形質転換して、CLD085を生じ、そ
れを精製し、グリセロール貯蔵液中において−80℃で維持した。
【0139】
CLD085バイアルを、−80℃フリーザーから取り出し、融解させた。10μlの融解したグリセロール貯蔵液を、テトラサイクリン(10μg/ml)を補足した5mlの Luria Broth(LB;5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)、10g/Lのトリプトン(Oxoid)および5g/Lの塩化ナトリウム)中に接種した。これを、オービタルシェーカー中において37℃で16時間インキュベートした。次に、500μlのこの培養物を用いて、50mlの Luria Broth(上記の組成)が入っている250ml Erlenmeyer フラスコに接種した。そのフラスコを、オービタルシェーカー中において37℃、200rpmでインキュベートした。増殖は、OD600=0.5〜0.7まで監視した。この時点で、フラスコを、10.0mMの最終濃度へのガラクトースで誘導した。インキュベーションを、上記の条件下で続け、その間に、細菌細胞内のhTNFαの蓄積と増殖の測定用に試料を採取した。hTNFαの蓄積レベルは、試料採取された細菌のSDS−PAGE後の(抗hTNFα抗体を用いた)ウェスタンブロット分析を用いて決定した。そのデータを、図17に示す。これは、完全パリンドロームgalオペレーター配列を、galリプレッサー遺伝子と組み合わせて用いることが、誘導物質の不存在下におけるgalプロモーターの極めて堅固な抑制をもたらすが、驚くべきことに、誘導物質ガラクトースを加えた場合に、誘導能力がなお維持されているということを示している。
【0140】
実施例20
非組込み酵母ベクターを、次のように構築した。
(1)XhoIで消化されたpCR2.1(Invitrogen)中へのXhoIフラグメントとしてのクローン配列1(Saccharomyces cerevisiae CYC1プロモーターの下流のE
.coli LacI)。クローン配列1を、図15に示す(SEQ ID NO35)。
【0141】
(2)プラスミド2を生じるように工程1で構築された、HindIIIで消化されたプ
ラスミド中へのHindIIIフラグメント(PCRで製造される)としてのクローン配列
2(Saccharomyces cerevisiae MF−α1遺伝子プロモーターであって、MF−α1プ
ロモーター領域の両側に完全パリンドロームlacオペレーター配列を含むものと、タンパク質エラフィン(elafin)の遺伝子配列であって、下流に位置するC末端c−myc標識(エラフィン−cmyc)を含むものから成る)。クローン配列2を、図16に示す(SEQ ID NO36)。
【0142】
(3)LEU2(選択マーカー遺伝子)および酵母2μ複製起点を含有する、YEp13(ATCC37115)からのSpeIフラグメントを、SpeIで消化されたプラスミド2中にクローン化して、pAVE091を生じる。
【0143】
pAVE091プラスミドDNAを、Saccharomyces cerevisiae XS95−6C(A
TCC204688)中にエレクトロポレーションによって形質転換し、そして陽性コロニーを、ロイシン不含の酵母脱落培地(yeast drop-out medium)上で選択した(Kaiser C, Michaelis S and Mitchel A (Methods in Yeast Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Manual, 1994))。エラフィン−cmycタンパク質発現を決定するシェークフラスコ増殖研究を、同じ培地を用いて行った。それらフラスコを、オービタルシェーカー中において30℃、200rpmでインキュベートした。クローンを、約3のODへと増殖させ、そして0.5mMのIPTG(最終濃度)で誘導した。インキュベーションを、上記の条件下で更に16時間続け、その間に、増殖培地中へのエラフィン−cmycタンパク質の分泌と増殖の測定用に試料を採取した。残留増殖培地中へのエラフィン−cmycの分泌は、Wiedow O, et al, J Biol Chem. (1990) 265(25):14791-5 に記載のように、
エラスターゼ阻害酵素検定を用いて決定した。4時間のIPTG誘導後、増殖培地中に30mg/Lの活性エラフィンタンパク質が存在した。これは、本発明の発現系が、酵母において有効であることを示している。
【0144】
実施例21
二重完全パリンドロームlacオペレーター配列に隣接した構成的ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)プロモーターを含有するDNAフラグメントを合成した。これを、発現ベクター中にクローン化したところ、IgG Fcタンパク質を発現した。得られたプラスミドを、pAVE081と称したが、それは、pCMV−Script(Stratagene)に由来し、そしてNdeI/NheIフラグメント上の二重完全パリンドロームlacオペレーター配列に隣接したhCMVプロモーターを、ベクターの多重クローニング部位中のIgG FcDNA配列と一緒に含有する。hCMVプロモーターおよび二重完全パリンドロームlacオペレーターのDNA配列を、図12に示す(SEQ ID NO33)。IgG Fcタンパク質のDNA配列を、図13に示す(SEQ ID NO34)。IgG Fcタンパク質を発現するpAVE081およびlacリプレッサーを発現するpCMVlacI(Stratagene)の一時的コトランスフェクションを、当該技術分野において十分に記載されているように行って、IgG Fcタンパク質が、IPTG誘導性hCMVプロモーター・二重完全パリンドロームlacオペレーター発現系の制御下で発現されうるか否かを決定した。
【0145】
2mlのチャイニーズハムスター卵巣(Chinese Hamster Ovary)(血清不含培地中の
懸濁増殖に適応したCHO細胞系ECACC85050302)懸濁培養物を、1.5x105個/mlの生菌数で、6ウェル組織培養プレートの各ウェルに加えた。次に、それら6ウェル組織培養プレートを、給湿37℃インキュベーター中において5%CO2で一晩(16時間)インキュベート後、トランスフェクション配合物を、等量のpCMVlacI(Stratagene)DNAを含む2μgのpAVE081 DNA、6μlのトランスフェクション試薬および94μlの増殖培地を1ウェルに付き含有して調製した。100μlのトランスフェクション配合物を、CHO細胞が入っている各々のウェルに加えた。次に、それら6ウェル組織培養プレートを、給湿37℃インキュベーター中において5%CO2でインキュベートした。増殖培地中へのIgG Fcタンパク質の発現/分泌レベルを決定するために、一組のウェル(2日目)を、5mMのIPTG(最終濃度)で誘導し、別の組のウェルを未誘導のままにした。3日目に、IPTGで誘導された組のウェルおよび未誘導のままのものから試料採取した(IPTG誘導後および未誘導)。IgG Fcタンパク質のCHO細胞による増殖培地中への発現および分泌は、当該技術分野において十分に確立されているELISAによって決定した。得られたデータを、図14に示す。
【0146】
そのデータは、明らかに、発現系の幅広い有用性を示している。その発現系は、hCMVプロモーターのような、哺乳動物細胞の系と一緒に典型的に用いられる強力な構成的プロモーターを制御して、哺乳動物細胞中において制御可能な誘導性方式でタンパク質を発現するのに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
完全パリンドロームオペレーター配列に基づくタンパク質発現系であって、
(a)プロモーター;および
(b)完全パリンドロームオペレーター配列
を含む;該プロモーターがT7ではないことを特徴とするタンパク質発現系。
【請求項2】
プラスミドであって、
(a)プロモーター;および
(b)完全パリンドロームオペレーター配列
を含む;該プロモーターがT7ではないことを特徴とするプラスミド。
【請求項3】
タンパク質のための発現カセットを更に含む、請求項2に記載のプラスミド。
【請求項4】
プラスミドが、自律複製性プラスミドである、請求項2または請求項3に記載のプラスミド。
【請求項5】
プラスミドが、組込みプラスミドである、請求項2または請求項3に記載のプラスミド。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のプラスミドで形質転換された宿主細胞。
【請求項7】
タンパク質の製造方法であって、
(a)プロモーター;
(b)完全パリンドロームオペレーター配列;および
(c)タンパク質のための発現カセット
を含む;該プロモーターがT7ではないことを特徴とする発現系を発現することを含む方法。
【請求項8】
プロモーターが、宿主細胞ポリメラーゼプロモーターである、請求項1〜7のいずれかに記載の発現系、プラスミド、宿主細胞または方法。
【請求項9】
プロモーターが、大腸菌(E.coli)RNAポリメラーゼプロモーターである、請求項8に記載の発現系、プラスミド、宿主細胞または方法。
【請求項10】
プロモーターが、T7A1、T7A2、T7A3、λpL、λpR、lac、lacUV5、trp、tac、trc、phoAまたはrrnBである、請求項1〜7のいずれかに記載の発現系、プラスミド、宿主細胞または方法。
【請求項11】
オペレーター系が、lac、gal、deoまたはglnである、請求項1〜10のいずれかに記載の発現系、プラスミド、宿主細胞または方法。
【請求項12】
二つの完全パリンドロームオペレーター配列を用い、好ましくは、一方のオペレーター配列は、プロモーターの下流に位置していて、もう一方のオペレーター配列は、プロモーターの上流に位置している、請求項1〜11のいずれかに記載の発現系、プラスミド、宿主細胞または方法。
【請求項13】
オペレーター配列が、85〜150塩基対間隔、好ましくは、90〜126塩基対間隔、そして最も好ましくは、91または92塩基対間隔を置く、請求項12に記載の発現系、プラスミド、宿主細胞または方法。
【請求項14】
タンパク質を製造する方法であって、
(a)請求項3に記載のプラスミドで形質転換された宿主細胞を培養し;そして
(b)該タンパク質を回収すること
を含む方法。
【請求項15】
宿主細胞が、E.coli である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
プラスミドが、請求項8〜13のいずれか1項に記載のプラスミドである、請求項14および請求項15両方に記載の方法。
【請求項1】
完全パリンドロームオペレーター配列に基づくタンパク質発現系であって、
(a)プロモーター;および
(b)完全パリンドロームオペレーター配列
を含む;該プロモーターがT7ではないことを特徴とするタンパク質発現系。
【請求項2】
プラスミドであって、
(a)プロモーター;および
(b)完全パリンドロームオペレーター配列
を含む;該プロモーターがT7ではないことを特徴とするプラスミド。
【請求項3】
タンパク質のための発現カセットを更に含む、請求項2に記載のプラスミド。
【請求項4】
プラスミドが、自律複製性プラスミドである、請求項2または請求項3に記載のプラスミド。
【請求項5】
プラスミドが、組込みプラスミドである、請求項2または請求項3に記載のプラスミド。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のプラスミドで形質転換された宿主細胞。
【請求項7】
タンパク質の製造方法であって、
(a)プロモーター;
(b)完全パリンドロームオペレーター配列;および
(c)タンパク質のための発現カセット
を含む;該プロモーターがT7ではないことを特徴とする発現系を発現することを含む方法。
【請求項8】
プロモーターが、宿主細胞ポリメラーゼプロモーターである、請求項1〜7のいずれかに記載の発現系、プラスミド、宿主細胞または方法。
【請求項9】
プロモーターが、大腸菌(E.coli)RNAポリメラーゼプロモーターである、請求項8に記載の発現系、プラスミド、宿主細胞または方法。
【請求項10】
プロモーターが、T7A1、T7A2、T7A3、λpL、λpR、lac、lacUV5、trp、tac、trc、phoAまたはrrnBである、請求項1〜7のいずれかに記載の発現系、プラスミド、宿主細胞または方法。
【請求項11】
オペレーター系が、lac、gal、deoまたはglnである、請求項1〜10のいずれかに記載の発現系、プラスミド、宿主細胞または方法。
【請求項12】
二つの完全パリンドロームオペレーター配列を用い、好ましくは、一方のオペレーター配列は、プロモーターの下流に位置していて、もう一方のオペレーター配列は、プロモーターの上流に位置している、請求項1〜11のいずれかに記載の発現系、プラスミド、宿主細胞または方法。
【請求項13】
オペレーター配列が、85〜150塩基対間隔、好ましくは、90〜126塩基対間隔、そして最も好ましくは、91または92塩基対間隔を置く、請求項12に記載の発現系、プラスミド、宿主細胞または方法。
【請求項14】
タンパク質を製造する方法であって、
(a)請求項3に記載のプラスミドで形質転換された宿主細胞を培養し;そして
(b)該タンパク質を回収すること
を含む方法。
【請求項15】
宿主細胞が、E.coli である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
プラスミドが、請求項8〜13のいずれか1項に記載のプラスミドである、請求項14および請求項15両方に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−78323(P2013−78323A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−255098(P2012−255098)
【出願日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【分割の表示】特願2008−552885(P2008−552885)の分割
【原出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(508236033)フジフィルム・ダイオシンス・バイオテクノロジーズ ・ユーケイ・リミテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【分割の表示】特願2008−552885(P2008−552885)の分割
【原出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(508236033)フジフィルム・ダイオシンス・バイオテクノロジーズ ・ユーケイ・リミテッド (8)
【Fターム(参考)】
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