説明

発育中のイヌにおける骨造形及び軟骨細胞機能を向上する方法

【課題】発育中のイヌにおいて骨造形及び軟骨細胞機能を向上するプロセスを提供すること。
【解決手段】該プロセスは、適切な量と比率の食物性n−6及びn−3脂肪酸類を含有するペットフード組成物を、発育中のイヌに投与することを含む。組成物は、タンパク質源、脂肪源、繊維源及び炭水化物源を更に含むことができる。好ましい濃度のn−6及びn−3脂肪酸類を使用すると、炎症の下方調節要素群の合成及び組織内蓄積を促進することができ、それらの要素群が骨形成を刺激し、骨造形を最適化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発育中のイヌに適切な量及び比率のn−6/n−3脂肪酸類を含むペットフード組成物を投与して、それらの動物における骨造形(bone modeling)及び軟骨細胞機能を強化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カナダ特許第2,145,716号により、食物性のn−6及びn−3脂肪酸類(オメガ−6及びオメガ−3脂肪酸類とも呼ばれる)及びそれらがイヌに存在する比率が、その動物の皮膚及び獣毛の健康に影響を及ぼすということが分っている。研究の結果は、n−6及びn−3脂肪酸類を最適な比率で食餌に配合すると、ある種の炎症性皮膚症状を患っているイヌに有益な効果を与えるということを示している。
【0003】
長骨の成長及び骨造形は、子犬の遺伝的性質、環境の影響及び栄養の間の複合した相互作用によって調節される。これらの相互作用は、機能的に適切な形態とカルシウム及びリンの生体恒常性における骨格の役割とのバランスのとれた骨の構造を生み出す。犬の長骨は、造形と呼ばれるプロセスによって長さ及び直径が増大する。骨造形は、骨芽細胞及び破骨細胞の活動によって支配される骨の普遍化した連続的な成長及び形状修正の適応プロセスを表し、成体骨構造に達するまで続く。骨造形は、成犬の骨格質量を維持する骨の吸収及び形成プロセスである骨の再造形(bone remodeling)とは明確に異なる。
【0004】
骨格組織の中には、骨格代謝に影響を与えるプロスタグランジン類、サイトカイン類及び成長因子等の多くの細胞由来の調節因子が存在する。プロスタグランジン類は骨代謝において主役を演じていると信じられているが、関節症に関係しているとも思われてきた。イヌにおける骨格の異常及び症状のあるものは、異常な骨の再造形及び代謝の、或いは関節炎の場合には炎症プロセスの、結果である。
【0005】
長骨の成長軟骨は軟骨細胞を含有し、これは、カルシウムイオンの結合に高い親和性を示す酸性のリン脂質類を含有する脂質を取り込んだ、ミクロ環境と呼ばれているマトリックス小胞を通じて骨の無機質化を開始する。多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、骨の無機質化及び成長に重要な役割を演じていると信じられている。何故なら、リン脂質類並びにプロスタグランジン類は必須PUFAから合成されるからである。
【0006】
最近の研究は、食餌中のn−6/n−3脂肪酸類の比率が発育中の雛の骨及び成長軟骨並びにラットの骨における脂肪酸構成に影響を与えるということを示している。これらの研究において、大豆油を含む食餌を与えられた雛は、メンハーデン油を与えられた雛と比較して、肝臓及び骨培養における半ビボ(ex vivo)でのPGE2(プロスタグランジンE2)の産生について大きい値を示したが、低い骨形成速度を示した。骨において局部的に産生されるPGE2のレベルは、骨形成において重要な因子のようであり、中庸のレベルにおいては刺激性であり、高レベルにおいては阻害性である。プロスタグランジン類が骨代謝を調節するメカニズムは不明確であるが、IGFシステム及び(又は)サイトカイン類を通じて媒介される可能性が示唆されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、発育中のイヌにおいて骨/軟骨の生化学及び健康を促進する食餌の要求は当業界に存続しており、その食餌は、適切な量の食物性n−6及びn−3脂肪酸類を含むものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、発育中のイヌに適切な量及び比率の食物性のn−6及びn−3脂肪酸類を含むペットフード組成物を投与して、骨造形及び軟骨細胞機能を向上する方法を提供することにより、その要求に応えるものである。本発明の一つの態様に従えば、骨造形及び軟骨細胞機能を向上するのに有効な量及び比率のn−6及びn−3脂肪酸類を含むペットフード組成物を発育中のイヌに給餌するステップを含む、発育中のイヌにおける骨造形及び軟骨細胞機能を向上するプロセスが提供される。n−6脂肪酸類対n−3脂肪酸類の比率は、好ましくは約20:1から約1:1であり、より好ましくは約10:1から約5:1であり、最も好ましくは約8:1から約5:1である。ペットフード組成物中の総脂肪酸類の少なくとも約22重量%がn−6脂肪酸類であることが好ましい。又、ペットフード組成物中の総脂肪酸類の少なくとも約3重量%がn−3脂肪酸類であることが好ましい。
【0009】
好ましくは、ペットフード組成物は、乾物基準で、約0.88から約6.6重量%のn−6脂肪酸類及び約0.16から約1.2重量%のn−3脂肪酸類を含む。このように、ペットフード組成物中のn−3脂肪酸類の量が、n−6脂肪酸類対n−3脂肪酸類の比率と同様に重要である。好ましい実施態様において、ペットフード組成物中に配合されるn−3脂肪酸類は、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を含む。
【0010】
好ましくは、ペットフード組成物は、約20から約40重量%の粗タンパク質、約4から約30重量%の脂肪、約2から約20重量%の総食物繊維及び炭水化物源を含む。これらの栄養素の間には、特異的な比率又はパーセンテージは要求されない。
ペットフード組成物は、糞便バクテリアにより24時間の期間発酵した場合、15から60重量パーセントの有機物消失を示す発酵性の繊維類である補充総食物繊維を、約1から約11重量パーセントの量で更に含んでよい。
【0011】
さらに、上記と重複する点もあるが、本明細書により以下の発明が提供される。
発明1 発育中のイヌの骨造形及び軟骨細胞機能を向上する方法であって、n−6及びn−3脂肪酸源を含むペットフード組成物を、骨造形及び軟骨細胞機能を向上するのに有効な量で前記イヌに給餌するステップを含む方法。
発明2 n−6脂肪酸類対n−3脂肪酸類の比率が約20:1から約1:1である、上記発明1記載の方法。
発明3 n−6脂肪酸類対n−3脂肪酸類の比率が約10:1から約5:1である、上記発明1記載の方法。
発明4 n−6脂肪酸類対n−3脂肪酸類の比率が約8:1から約5:1である、上記発明1記載の方法。
発明5 ペットフード組成物中の総脂肪酸類の少なくとも約22重量%がn−6脂肪酸類である、上記発明1記載の方法。
発明6 ペットフード組成物中の総脂肪酸類の少なくとも約3重量%がn−3脂肪酸類である、上記発明1記載の方法。
発明7 ペットフード組成物が、乾物基準で約0.88から約6.6重量%のn−6脂肪酸類及び約0.16から約1.2重量%のn−3脂肪酸類を含む、上記発明1記載の方法。
発明8 ペットフード組成物中のn−3脂肪酸類がエイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を含む、上記発明1記載の方法。
発明9 発育中のイヌの骨造形及び軟骨細胞機能を向上する方法であって、約20から約40重量%の粗タンパク質、約4から約30重量%の脂肪、約2から約20重量%の総食物繊維、炭水化物源、並びにn−6及びn−3脂肪酸源を含むペットフード組成物を、骨造形及び軟骨細胞機能を向上するのに有効な量で、前記イヌに給餌するステップを含む方法。
発明10 糞便バクテリアにより24時間の期間発酵した場合15から60重量パーセントの有機物消失を示す発酵性の繊維類である補充総食物繊維を、約1から約11重量パーセントの量で更に含む、上記発明9記載の方法。
発明11 n−6脂肪酸類対n−3脂肪酸類の比率が約20:1から約1:1である、上記発明9記載の方法。
発明12 n−6脂肪酸類対n−3脂肪酸類の比率が約10:1から約5:1である、上記発明9記載の方法。
発明13 n−6脂肪酸類対n−3脂肪酸類の比率が約8:1から約5:1である、上記発明9記載の方法。
発明14 ペットフード組成物中の総脂肪酸類の少なくとも約22重量%がn−6脂肪酸類である、上記発明9記載の方法。
発明15 ペットフード組成物中の総脂肪酸類の少なくとも約3重量%がn−3脂肪酸類である、上記発明9記載の方法。
発明16 ペットフード組成物が、乾物基準で約0.88から約6.6重量%のn−6脂肪酸類及び約0.16から約1.2重量%のn−3脂肪酸類を含む、上記発明9記載の方法。
発明17 ペットフード組成物中のn−3脂肪酸類がエイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を含む、上記発明9記載の方法。
【0012】
従って、本発明の特徴は、発育中のイヌにおいて骨造形及び軟骨細胞機能を向上するプロセスを提供することである。本発明のこの特徴並びに他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び付属の特許請求の範囲から明白になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(好ましい態様の詳細な説明)
本発明においては、適切な量のn−6脂肪酸類及びn−3脂肪酸類を適切な比率で与えて軟骨細胞機能及び骨の成長を刺激することにより、発育中のイヌにおける骨の成長促進を助長するペットフード組成物が用いられる。ペットフード組成物は、好ましい濃度のn−3及びn−6脂肪酸類を含有してさえいれば、如何なる好適な形態で提供されてもよい。
【0014】
成体のイヌにおいては、異常な骨の再造形及び代謝が骨格上の病理の原因となり得る。本発明のペットフード組成物を発育中のイヌの幼年期に与えることは、これらのうちのある種の病理の発症及び発病率を遅延させ、或いは低減させる可能性がある。従って、発育中のイヌは、本発明のペットフード組成物を給餌されることによって特定の恩恵を得るであろう。
【0015】
ペットフード組成物中のn−6脂肪酸類対n−3脂肪酸類の比率を調整することによって、ある種の前炎症性エイコサノイドプロスタグランジン類(PGE2)のレベルが抑制されることが発見されている。本発明の好ましい実施態様に従えば、ペットフード組成物はn−6脂肪酸類対n−3脂肪酸類の比率が約20:1から約1:1である脂肪酸類を含む。より好ましくは、この重量比は約10:1から約5:1であり、最も好ましくは、この重量比は約8:1から約5:1である。好ましくは、ペットフード組成物中の総脂肪酸類の少なくとも約22重量%はn−6脂肪酸類である。又、ペットフード組成物中の総脂肪酸類の少なくとも約3重量%は、n−3脂肪酸類であることが好ましい。ペットフード組成物は、又、好ましくは、乾物基準で約0.88から約6.6重量%のn−6脂肪酸類及び約0.16から約1.2重量%のn−3脂肪酸類を含む。
【0016】
n−3脂肪酸類、即ち、エイコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸(それぞれ、EPA及びDHA)のような、炎症に対する下方調節要素の合成及び組織内蓄積は、又、本発明のペットフード組成物中のn−6脂肪酸類対n−3脂肪酸類の比率を調整することによって促進され、その比率が骨形成を刺激し骨造形を最適化する。更に、ペットフード組成物に特定のn−3脂肪酸源を配合することによって、抗炎症性のPGE3系列のプロスタグランジン類を組織内に蓄積することが同様に促進される。好ましくは、本発明のペットフード組成物のn−3脂肪酸類は、EPA及びDHAを含む。
【0017】
ペットフード組成物は、動物に対して適切な栄養素も提供する如何なる好適なペットフードの処方も可能である。例えば、本発明で使用される典型的なイヌの食餌は、約20から40重量%の粗タンパク質、約4から約30重量%の脂肪、及び約2から約20重量%の総食物繊維を炭水化物源と共に含有してよい。ペットフード組成物に使用される好適なタンパク質源としては、鶏肉及び鶏肉副産物、鶏肉消化物、醸造乾燥酵母、及びDL−メチオニンが挙げられる。好適な脂肪源としては、鶏脂(混合トコフェロール類と共に保存される)、魚油、及び亜麻仁油が挙げられる。
【0018】
本発明のペットフード組成物は、又、所望により一定の有機物消失パーセンテージを示す発酵性の繊維源を含有してよい。使用可能な発酵性の繊維類は、糞便バクテリアによりイン・ビトロで24時間の期間発酵した場合、約15から60パーセントの有機物消失(OMD)を示すものである。即ち、最初に存在した総有機物の約15から60パーセントが、糞便バクテリアにより発酵し転換する。繊維類の有機物消失は、好ましくは20から50パーセント、最も好ましくは30から40パーセントである。
【0019】
従って、イン・ビトロでのOMDパーセンテージは以下のように計算することができる:
{1−[(OM残分−OMブランク)/OM初期]}×100
ここで、OM残分は24時間の発酵後回収された有機物であり、OMブランクは対応するブランク試験管(即ち、培養液及び希釈糞便を含み基材を含まない試験管)で回収された有機物であり、そしてOM初期は発酵前に試験管に入れた有機物である。更に詳細な手順については、Sunvoldら、J.Anim.Sci.1995、Vol.73、1099−1109に記載されている。
【0020】
発酵性の繊維類は、動物に存在する腸内バクテリアによって発酵して有意な量の短鎖脂肪酸類(SCFA類)を産生し得る繊維源であれば、如何なるものでもよい。本発明の目的のためのSCFA類の「有意な量」とは、24時間の期間において基材1グラム当たり0.5ミリモルを超える総SCFA類の量をいう。好ましい繊維類としては、ビートパルプ、アラビアゴム(タラゴムを含む)、オオバコ、米ぬか、キャロブガム、シトラスパルプ、ペクチン、フラクトオリゴ糖及びイヌリン、マンナンオリゴ糖及びこれらの繊維の混合物が挙げられる。
【0021】
発酵性の繊維類は、補充総食物繊維の1から11重量パーセント、好ましくは2から9重量パーセント、より好ましくは3から7重量パーセント、そして最も好ましくは4から7重量パーセントの量でペットフード組成物に使用される。
【0022】
「補充総食物繊維」の定義の説明の前に、先ず、「総食物繊維」の説明が必要である。「総食物繊維」は、動物の消化酵素類によって加水分解しにくい植物性食物の残分として定義される。総食物繊維の主成分は、セルロース、ヘミセルロース、ペクチン、リグニン及びゴムである(これに対し「粗繊維」はある形態のセルロース及びリグニンのみを含む)。「補充総食物繊維」は、食物製品の他の成分に天然に存在する如何なる食物繊維をも上回って、食物製品に添加される食物繊維である。又、「繊維源」は、それが主に繊維から構成される場合に繊維源であると考えられる。
【実施例】
【0023】
本発明をより簡単に理解する目的で、以下に実施例を記載するが、これらは本発明を例示することを意図するものであり、範囲を限定することを意図するものではない。
【0024】
例1
イヌを用いた研究を行い、クーンハウンド種の骨区分における脂肪酸構成に対する食物性n−3及びn−6脂肪酸の効果を評価した。特定の目的で飼育された8週令の子犬、合計32頭を、脂肪酸源のみが異なる4つの食餌処理に配置した。処理用食餌は、等窒素、等カロリーであり、n−6/n−3比率が5:1から50:1に亘るように配合した。イヌの成長食餌は、n−6/n−3脂肪酸類の比率が5:1、5:1、50:1、及び25:1と異なるように、以下の脂質源を用いて配合した:ドコサヘキサエン酸(DHA)、メンハーデン油(MEN)、ベニバナ油(SAF)及び家きん脂肪(対照)。処理3及び処理4ではn−3脂肪酸源の効果を評価した(処理3=DHA;処理4=DHA)。子犬群に対し、2週間コンディショニングした後16週間処理の、合計18週間に亘って処理用食餌を給餌した。研究結果を以下に報告する。
【0025】
【表1】

【0026】
応答の判定基準は以下の通りであった。
【0027】
【表2】

【0028】
MEN及びDHA配合食餌は、22:6n−3(DHA)においては対照食餌と比較して、けい骨皮質、小柱骨、骨髄及び骨膜の中性及び極性脂質類の有意な上昇をもたらした。MEN配合食餌は、全ての組織の両脂質画分において、20:5n−3(EPA)の有意な濃度上昇をもたらした。18:2n−6(リノレン酸)の濃度は、SAF配合食餌を給餌された群の骨髄極性脂質類を除いて、全ての組織の両脂質画分において有意に高かった。MEN及びDHA配合食餌は、小柱骨及び骨髄の極性脂質画分において、18:2n−6を抑制した。MEN及びDHA強化食餌においては、骨膜の中性脂質画分においてアラキドン酸(AA;20:4n−6)濃度は有意に抑制され、22:6n−3は上昇した。MEN及びDHA配合食餌の両者とも、対照及びSAF配合食餌を給餌された犬の値と比較して、じん帯における18:2n−6を低減し、n−3脂肪酸を増加させた。
【0029】
これらのデータから、EPA及びDHAの両者は骨区分に濃縮され、DHAは骨皮質極性脂質類にEPAより多く蓄積されるということが分った。腸骨稜組織における半ビボでのPGE2産生に基づき、MEN配合食餌はプロスタノイド類の形成を低減させる傾向があった。更に、炎症の下方調節要素(PGE3)はEPAの存在によって刺激される。これらの結果は、n−3脂肪酸類に富む食餌が、イヌの骨区分において前炎症性エイコサノイド(PGE2)の合成を低減し、炎症の下方調節要素(EPA及びDHA)の組織内蓄積を促進することを示唆する。これらの結果は、又、食餌中のn−6/n−3脂肪酸比率が25:1以上であると前炎症性PGE2の産生が高められ、それにより骨形成が抑制され、一方、比率が5:1の場合はPGE2のレベルが低下し、それにより骨形成が刺激され、発育中のイヌの骨造形を最適化するということを示唆する。食餌中の特定のn−3脂肪酸(20:5n−3又は22:6n−3)は、又、発育中のイヌの軟骨及び骨代謝への影響を特異的に調整するものと思われる。
【0030】
例2
ラットを用いた研究を実施した。収集すべきデータの性質及び発育中のイヌからそのようなデータを収集することの非現実性から、本研究が必要とされた。収集データは、(1)器官及び組織の採取、(2)骨造形の目安として骨形成速度(BFR)の定量及び成長軟骨の形態測定、及び(3)無傷骨の機械的性質の評価、を包含した。
【0031】
合計40匹のHarlan Sprague−Dawleyラット、離乳子、雄(21日令)を、4つの食餌処理に配置し40日間試験した。対照の食餌(処理1)は、AIN93G[Reevesら、「AIN−93実験室げっ歯類用精製食餌(AIN−93 Purified Diets for Laboratory Rodents)」、123、J.Nutrition、1939−51(1993)に報告されている食餌]であり、大豆油を含み、n−6/n−3脂肪酸比率8:1のものであった。他の3つの処理用食餌には補充脂肪酸類を配合し、イヌの実験におけるn−6/n−3脂肪酸比率に可能な限り近いものとした。対照の食餌は70g/kgの添加脂肪を含有した。他の3つの処理用食餌には以下の(n−6)/(n−3)脂肪酸類比率を供給するように脂質類を配合した。8:1[大豆油(SBO)]、50:1[ベニバナ油(SAF)]、5:1[ドコサヘキサエン酸(DHA)]、及び5:1[メンハーデン油(MEN)]。処理用食餌を要約して以下の表に示す。
【0032】
【表3】

【0033】
評価した応答の判定基準は以下の通りであった。
【0034】
【表4】

【0035】
MEN及びDHA配合食餌は、SAF配合食餌を給餌された群の値に比べて、けい骨皮質及び骨髄における20:5n−3(EPA)及び22:6n−3(DHA)の濃度を有意に高めた。骨区分における20:4n−6(AA)の濃度は、食餌処理によって変わらなかった。骨中のDHA濃度は、SAF配合食餌を給餌されたラットにおいて最低であった。
【0036】
これらのデータは、EPA及びDHAの両者が骨区分に濃縮され、DHAが皮質骨極性脂質類中にEPAより多く蓄積されることを示した。DHA配合食餌を給餌されたラットにおいて、けい骨における半ビボでのPGE2産生は、SAF配合食餌を給餌された群に比べて低減した。MEN配合食餌を給餌されたラットの血清の骨特異的アルカリ性フォスファターゼは、他の食餌を給餌されたラットの値に比較して高められた。DHAグループにおける総小柱数及び骨髄面積は、SBOグループのそれらに比べて高かったが、骨膜BFRはSBO及びSAF配合食餌を給餌された群において高かった。骨内膜の骨形成速度に関しては、食餌処理間で差異は認められなかった。
【0037】
この結果は、n−3脂肪酸類に富んだ食餌が、前炎症性エイコサノイド(PGE2)の合成を低減させ、骨区分での炎症の下方調節要素(EPA及びDHA)の組織内蓄積を促進することを示唆する。
【0038】
本発明を例示する目的で特定の代表的な実施態様が示されているが、付属の特許請求の範囲に定義される本発明の請求範囲から逸脱することなしに、本明細書に開示された方法及び装置に関して多くの変更がなされてよいということは、当業者には明白であると思われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発育中のイヌにおける骨造形及び軟骨細胞機能を向上するために使用するペットフード製品の製造における、n−6及びn−3脂肪酸源を含むペットフード組成物の使用。
【請求項2】
n−6脂肪酸類対n−3脂肪酸類の比率が約20:1から約1:1である、請求項1記載のペットフード組成物の使用。
【請求項3】
n−6脂肪酸類対n−3脂肪酸類の比率が約10:1から約5:1である、請求項1記載のペットフード組成物の使用。
【請求項4】
n−6脂肪酸類対n−3脂肪酸類の比率が約8:1から約5:1である、請求項1記載のペットフード組成物の使用。
【請求項5】
ペットフード組成物中の総脂肪酸類の少なくとも約22重量%がn−6脂肪酸類である、請求項1記載のペットフード組成物の使用。
【請求項6】
ペットフード組成物中の総脂肪酸類の少なくとも約3重量%がn−3脂肪酸類である、請求項1記載のペットフード組成物の使用。
【請求項7】
ペットフード組成物が、乾物基準で約0.88から約6.6重量%のn−6脂肪酸類及び約0.16から約1.2重量%のn−3脂肪酸類を含む、請求項1記載のペットフード組成物の使用。
【請求項8】
ペットフード組成物中のn−3脂肪酸類がエイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を含む、請求項1記載のペットフード組成物の使用。
【請求項9】
発育中のイヌにおける骨造形及び軟骨細胞機能を向上するために使用するペットフード製品の製造における、約20から約40重量%の粗タンパク質、約4から約30重量%の脂肪、2から約20重量%の総食物繊維、炭水化物源、並びにn−6及びn−3脂肪酸源を含むペットフード組成物の使用。
【請求項10】
糞便バクテリアにより24時間の期間発酵した場合15から60重量パーセントの有機物消失を示す発酵性の繊維類である補充総食物繊維を、約1から約11重量パーセントの量で更に含む、請求項9記載のペットフード組成物の使用。
【請求項11】
n−6脂肪酸類対n−3脂肪酸類の比率が約20:1から約1:1である、請求項9記載のペットフード組成物の使用。
【請求項12】
n−6脂肪酸類対n−3脂肪酸類の比率が約10:1から約5:1である、請求項9記載のペットフード組成物の使用。
【請求項13】
n−6脂肪酸類対n−3脂肪酸類の比率が約8:1から約5:1である、請求項9記載のペットフード組成物の使用。
【請求項14】
ペットフード組成物中の総脂肪酸類の少なくとも約22重量%がn−6脂肪酸類である、請求項9記載のペットフード組成物の使用。
【請求項15】
ペットフード組成物中の総脂肪酸類の少なくとも約3重量%がn−3脂肪酸類である、請求項9記載のペットフード組成物の使用。
【請求項16】
ペットフード組成物が、乾物基準で約0.88から約6.6重量%のn−6脂肪酸類及び約0.16から約1.2重量%のn−3脂肪酸類を含む、請求項9記載のペットフード組成物の使用。
【請求項17】
ペットフード組成物中のn−3脂肪酸類がエイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を含む、請求項9記載のペットフード組成物の使用。
【請求項18】
発育中のイヌにおける骨造形及び軟骨細胞機能を向上するために使用する方法であって、発育中のイヌの食餌中にn−6及びn−3脂肪酸類を含有することを含む方法。

【公開番号】特開2011−130774(P2011−130774A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−82367(P2011−82367)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【分割の表示】特願2001−559454(P2001−559454)の分割
【原出願日】平成13年2月16日(2001.2.16)
【出願人】(595056859)ザ・アイムス・カンパニー (52)
【氏名又は名称原語表記】The Iams Company
【Fターム(参考)】