説明

発酵ウコン粉末の製造方法及びそれにより製造された発酵ウコン粉末

【課題】ウコンの有効成分を増進させることができると共に、複雑ないろいろの工程を経ることなくウコン特有の苦味及び匂いを除去することによりウコンの摂取を容易にしてさらに多くの人々に良質のウコンを提供する。
【解決手段】(a)ウコン粉末と水を混合した混合物を殺菌する段階と、(b)前記(a)段階の殺菌した混合物にアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachi)及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)を接種した後、発酵させる段階と、(c)前記(b)段階の発酵させた混合物を乾燥させる段階とを含む発酵ウコン粉末を製造し、その方法により得られた発酵ウコン粉末を含む食品を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)ウコン(鬱金)粉末と水とを混合した混合物を殺菌する段階と、(b)前記(a)段階の殺菌した混合物にアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachi)及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)を接種した後、発酵させる段階と、(c)前記(b)段階の発酵させた混合物を乾燥させる段階とを含んでなることを特徴とする、発酵ウコン粉末の製造方法、前記方法により製造された発酵ウコン粉末、及び前記発酵ウコン粉末を含む食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ウコン(鬱金)は、韓国ではショウガ目ショウガ科の一年生の草である姜黄(キョウオウ、Curcuma longa Linne)の塊根をそのまま或いは周皮を剥がしてから蒸して干したものをいい、葉身が芭蕉やカンナのように長い楕円形で、その根茎から地上に葉が2つの枝に分かれて伸び立ち、完全に成長した場合には高さ1〜1.5m程度となり、根はショウガと同様の形であり、晩夏に花が咲く。
ウコンは、本草綱目や東医宝鑑などの古書に「ウコンは肝臓の解毒を促し、胆汁分泌及び理血作用に優れる」と記録されている。特に、その主要成分のうち、ジケトン化合物であるクルクミン(curcumin)は、抗癌効果に優れると知られており、抗腫瘍や抗酸化、抗アミロイド、抗炎症などの作用がある。また、クルクミンは、酸化によるDNA損傷と酸化を抑制し、抗酸化作用及びフリーラジカルのスカベンジャー作用をする。さらに、クルクミンは、アルツハイマー発病の原因として挙げられる脳内プラークの生成を抑制し、既に生成されたプラークを破壊する効能を持っていることが確認された。
【0003】
ところが、ウコンは、特有の味と匂いによりその飲用が非常に難しいという問題点がある。よって、従来より、ウコンから有効成分を抽出してウコンの有効成分を活用してきた。
例えば、クルクミンをアセトンに溶解し、セライトを加えた後、得られた粉末を、焼結されたガラス漏斗においてジヒドロゲンホスフェートが飽和されたシリカゲル上に位置させ、これを酢酸エチルとヘプタンの1:1混合物から再結晶する方法や、その他の方法などによってウコンの有効成分を抽出し、飲用し易い別の材料に加工してきた。
【0004】
しかし、上述したようにウコンの有効成分を抽出する方法は、非常に多くの工程を必要とし、このように抽出された有効成分から加工される材料は高価で販売されているから、大衆的に広く普及できないという欠点があった。
また、有効成分を抽出せずにウコン自体を飲用しようとする場合には、ウコン特有の苦味と匂いのため、消費者からの拒否反応を引き起こすという問題点があった。
特許文献1には嗜好性に優れた水溶性発酵ウコン抽出粉末及びその製造方法が開示されているが、この方法は本発明の発酵ウコン粉末の製造方法とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第2011−0107971号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述したような要求によって導出されたもので、その目的は、ウコンの有効成分を増進させることができると共に、複雑ないろいろの工程を経ることなくウコン特有の苦味と匂いを除去することによりウコンの摂取を容易にしてさらに多くの人々に良質のウコンが普及できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、(a)ウコン粉末と水とを混合した混合物を殺菌する段階と、(b)前記(a)段階の殺菌した混合物にアスペルギルス・カワチ及びリゾプス・オリゼーを接種した後、発酵させる段階と、(c)前記(b)段階の発酵させた混合物を乾燥させる段階とを含んでなることを特徴とする、発酵ウコン粉末の製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、前記方法によって製造された発酵ウコン粉末を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記発酵ウコン粉末を含む食品を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発酵ウコン粉末は、複雑な工程なしでウコン特有の苦味及び匂いを、本発明の適量の菌株を接種して発酵させる過程で簡単に除去するうえ、ウコンの有効成分を増進させることにより、健康志向食品として効果的に使用することができる。
しかも、ウコンの苦味及び匂いにより消費者が感じる摂取拒否反応を簡単に解消することができて、味及び嗜好度に優れたウコン粉末を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、(a)ウコン粉末と水とを混合した混合物を殺菌する段階と、(b)前記(a)段階の殺菌した混合物にアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachi)及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)を接種した後、発酵させる段階と、(c)前記(b)段階の発酵させた混合物を乾燥させる段階とを含んでなることを特徴とする、発酵ウコン粉末の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の方法において、前記(a)段階のウコン粉末は、ウコンを70〜80℃の温度で5〜7時間熱風乾燥させた後、30〜180メッシュに粉末化して製造することができ、好ましくはウコンを70〜80℃の温度で6時間熱風乾燥させた後、30〜180メッシュに粉末化して製造することができるが、これに限定されない。
【0013】
本発明の方法において、前記(a)段階の混合物は、ウコン粉末と水を0.8〜1.2:8〜10の重量比率で混合して製造することができ、好ましくは1:9の重量比率で混合して製造することができるが、これに限定されない、
【0014】
また、本発明の方法において、前記(a)段階の殺菌は110〜130℃で10〜20分間行うことができ、好ましくは121℃で15分間行うことができるが、これに限定されない。
【0015】
また、本発明の方法において、前記(b)段階の接種は、(a)段階の殺菌した混合物の重量に対してアスパルギルス・カワチ4〜6%及びリゾプス・オリゼー4〜6%を接種することができ、好ましくは(a)段階の殺菌した混合物の重量に対してアスパルギルス・カワチ5%及びリゾプス・オリゼー5%を接種することができる。前記菌株らは、ウコンで特異的によく生長し、ウコンの苦味を改善させることが可能な菌株を選別して適量を接種したものである。菌株の種類及び接種量が前記範囲を外れる場合、ウコンの嗜好度が減少するという問題点がある。
【0016】
また、本発明の方法において、前記(b)段階の発酵は28〜32℃及び100〜200rpmで2〜4日間行うことができ、好ましくは30℃及び150rpmで3日間行うことができるが、前記方法で発酵することがウコン特有の苦味及び香りを減少させる。発酵を介して製造されたウコン粉末は、容易に腐敗又は変質しないという利点がある。さらに、ウコンの有効成分を増進させることができるうえ、体内吸収率を増加させて消化及び吸収が容易である。
【0017】
また、本発明は、前記方法で製造された発酵ウコン粉末を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記発酵ウコン粉末を含む食品を提供する。本発明の発酵ウコン粉末は様々な食品などに混合して使用できる。前記食品の例としては、水、飲料、醤類、コーヒー、ヨーグルト、乳製品、麺類、小麦粉、ジャム類、豆腐、ソーセージ、肉類加工食品、チュインガム、キャンデー、塩、パン、菓子、酢、飲料、チョコレート、食品粉末及びアイスクリームなどを挙げることができるが、これに限定されない。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例を挙げて詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容を限定するものではない。
【0020】
<製造例1:発酵ウコン粉末の製造方法>
(a)ウコンを70〜80℃の温度で6時間熱風乾燥させた後、30〜180メッシュに粉末化して製造されたウコン粉末と、水とを1:9の重量比率で混合した混合物を121℃で15分間殺菌した。
(b)前記(a)段階の殺菌した混合物の重量に対して、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachi)5%及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)5%を接種した後、30℃及び150rpmで3日間発酵させた。
(c)前記(b)段階の発酵させた混合物を乾燥させた。
【0021】
<実施例1:菌株の接種量による発酵ウコン粉末の官能検査>
前記製造例1の方法で製造された発酵ウコン粉末(製造例1)と、前記製造例1の方法で製造するが、前記(b)段階の菌株接種及び発酵を行わずに製造されたウコン粉末(比較例1)と、前記製造例1の方法で製造するが、アスペルギルス・カワチ及びリゾプス・オリゼーを混合物の重量に対してそれぞれ3%ずつ添加して製造された発酵ウコン粉末(比較例2)と、前記製造例1の方法で製造するが、アスペルギルス・カワチ及びリゾプス・オリゼーを混合物の重量に対してそれぞれ7%ずつ添加して製造された発酵ウコン粉末(比較例3)に一定量の水を混合した後、一般人30名を対象として官能検査を行ってその結果を下記表1に示した。
官能検査項目は、色、香り、味及び全体的な嗜好度であり、5点尺度法によって5点を満点として次の評価基準によって被試験者が点数を記録した後、それらの平均値を求めて記録した。5:非常に良い、4:良い、3:普通、2:悪い、1:非常に悪い。
【0022】
官能検査
【表1】

【0023】
その結果、表1から分かるように、色に対する嗜好度では全ての項目間に大きな差を示していないが、香りと味に対する嗜好度では本発明の製造例1の方法で製造された発酵ウコン粉末が最も高い嗜好度を示した。
そして、全体的な嗜好度においても本発明の発酵ウコン粉末が最も高い嗜好度を示した。
よって、本発明のアスペルギルス・カワチ及びリゾプス・オリゼーをそれぞれ5%接種して製造された発酵ウコン粉末は、ウコン特有の苦味が減少して誰でも拒否感なく摂取することができることが分かった。
【0024】
<実施例2:菌株の種類による発酵ウコン粉末の苦味の程度評価>
前記実施例1の結果、最適の菌株添加量をそれぞれ5%と決定し、菌株の種類による発酵ウコン粉末の苦味の程度を評価してその結果を下記表2に示した。
まず、製造例1の方法で製造された発酵ウコン粉末(製造例1)と、前記製造例1の方法で製造するが、前記(b)段階の菌株、すなわちアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)及びアスペルギルス・ソイゼ(Aspergillus soyzae)を2:1の重量比率で混合した菌株混合物を前記(a)段階の殺菌した混合物の重量に対して10%接種して製造された発酵ウコン粉末(比較例4)に一定量の水を混合した後、一般人30名を対象として苦味の程度を評価するようにした。
5点尺度法によって5点を満点として次の評価基準によって被試験者が点数を記録した後、それらの平均値を求めて記録した。5:非常に苦い、4:苦い、3:普通、2:少し苦い、1:苦くない
【0025】
苦味の程度
【表2】

【0026】
表2より、本発明の菌株を接種して製造された発酵ウコン粉末が比較例4に比べて低い苦味を示すため、アスペルギルス・カワチ及びリゾプス・オリゼー菌株が、発酵ウコン粉末におけるウコン特有の苦味を減少させることに最も適した菌株であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵ウコン粉末の製造方法であって、
(a)ウコン粉末と水を混合した混合物を殺菌する段階と、
(b)前記(a)段階の殺菌した混合物にアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachi)及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)を接種した後、発酵させる段階と、
(c)前記(b)段階の発酵させた混合物を乾燥させる段階と、を含んでなることを特徴とする、
発酵ウコン粉末の製造方法。
【請求項2】
発酵ウコン粉末の製造方法であって、
(a)ウコン粉末と水を0.8〜1.2:8〜10の重量比率で混合した混合物を、110〜130℃で10〜20分間殺菌する段階と、
(b)前記(a)段階の殺菌した混合物の重量に対してアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachi)4〜6%及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)4〜6%を接種した後、28〜32℃及び100〜200rpmで2〜4日間発酵させる段階と、
(c)前記(b)段階の発酵させた混合物を乾燥させる段階と、を含んでなることを特徴とする、
発酵ウコン粉末の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2の方法で製造された発酵ウコン粉末。
【請求項4】
請求項3の発酵ウコン粉末を含む食品。