説明

発酵及び培養方法、植物発酵エキス、植物発酵エキス末並びに該植物発酵エキス配合物

【課題】安全、かつ、安価に高濃度に免疫賦活物質を含む植物発酵エキスを製造する方法を提供すること。
【解決手段】小麦やリンゴ等の植物に共生しているグラム陰性菌であるパントエア・アグロメランスを用いて小麦粉等の植物成分を発酵させる。植物の持つ免疫賦活作用を著しく増強することが可能になる。さらに、これらには動物成分由来の不純物の混入の問題がないので安全性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトを含む哺乳動物(具体的には家畜、愛玩動物など)、鳥類(具体的には養鶏、愛玩鳥類など)、両生類、は虫類、魚類(具体的には、水産養殖魚、愛玩魚類など)、無脊椎動物に及ぶ医薬品、動物用医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、機能性食品、飼料及び浴用剤などに添加しても安全な免疫賦活物質を得るための発酵及び培養方法、植物発酵エキスの製造方法、発酵及び培養方法によって得られる免疫賦活物質含有の植物発酵エキス、その植物発酵エキスから得られる免疫賦活物質含有粉末、及び、その植物発酵エキスを配合した植物発酵エキス配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトを含む哺乳動物(具体的には家畜、愛玩動物など)、鳥類(具体的には養鶏、愛玩鳥類など)、両生類、は虫類、魚類(具体的には、水産養殖魚、愛玩魚類など)、無脊椎動物に関して、感染防除技術を含む疾病予防・治療法を確立することは喫緊の課題である。しかもこれを達成する上では、化学物質を用いず、環境汚染がなく、耐性菌を生ずることなく、人体に蓄積性がない方法が強く求められている。本発明者らは如上の課題に関して、すでに小麦水抽出物等の植物由来の免疫賦活物質が疾病予防・治療効果を安全に達成することを発見した(特許文献1、非特許文献1)。また、以上の目的を達成するために小麦共生細菌であるパントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)から得た低分子量リポ多糖を用いることができることを発見した。(非特許文献2)。一方、近年の研究により、リポ多糖以外の種々の物質が免疫賦活効果を示すことが明らかにされ、これら複数の免疫賦活物質を含む天然物素材が注目されている。
【0003】
ところで、微生物を用いた発酵技術は食品分野のみならず、広い分野で汎用されている。例えばワインをはじめとする酒類の製造、醤油や味噌の製造、チーズなど発酵乳製品の製造、医薬品の製造など極めて広い分野に及んでいる。これら発酵に用いられる微生物は広範に及んでおり、麹(真菌)酵母、乳酸菌などが代表的なものであるが、グラム陰性菌を用いるものは殆ど報告されてこなかった。一般に発酵とは有機物が微生物の作用によって分解的に作用する現象であり、広義には微生物による有用な物質の生産を意味する(非特許文献3)。微生物を用いた発酵技術としては代表的なものとしてワインがあげられる。ワインはぶどう果皮に付着しているワイン酵母を用いた発酵技術であり、生産物はアルコールである。また、微生物を用いる発酵技術の中にあって、グラム陰性菌を用いたものとしては、メタン菌を用いたメタン発酵、酢酸菌を用いた酢酸発酵、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)を用いた竜舌蘭の根茎からのエタノール発酵(テキーラ製造)等が知られているが、食用植物を素材として、その植物に専ら共生することを特徴とする微生物を用いる発酵培養はほとんど知られておらず、発酵生産物として免疫賦活物質が注目されたことはない。いわんや免疫賦活物質生産を目的とした発酵及び培養法が注目されたことはない。
【0004】
一方微生物により発酵を行う場合には一般的には微生物が生育するための発酵基質が満たすべき栄養条件がある。すなわち炭素源としてはブドウ糖、果糖などの単糖類を十分に含むことなど微生物が栄養素として利用可能な物質の存在が必須である。このためにもともと果糖を多く含むブドウのような果実のように、なんら加工を加えることなく発酵基質として利用できる場合のほかは、加熱あるいは酵素処理を加えるなどして、微生物による発酵の前段階の処理が必要となる。例えば前述のザイモモナス・モビリス(Zymomonasu mobilis)はテキーラ製造に用いられる微生物であるが、この場合には、食用植物ではない竜舌蘭の根茎から得られた多糖類を加熱して発酵性の単糖に分解し、その後該微生物により発酵して発酵産物としてのアルコールを得る。従って通常の微生物を用いて発酵培養を行う場合には、澱粉などの多糖類は発酵基質として適切といえるものではない。例えばパントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)に関しては澱粉を分解できないと記載する文献がある(非特許文献4)。
【0005】
我々は小麦粉の水抽出物には免疫を賦活化する有効な成分が含まれていることをこれまでに明らかにしてきた(非特許文献5)。また、穀物(小麦、米)、海草(わかめ、昆布、ひじき、のり等)、豆類(大豆、小豆)にも有効な成分が含まれていることを明らかにしてきた(非特許文献6)。この生物活性としては、ヒトやマウスの諸疾患(糖尿病、高脂質血症、アトピー性皮膚炎、がん)等の予防効果があること、魚類や甲殻類、トリの感染予防に有効であることを見いだしている(特許文献1、非特許文献1)。しかし、小麦粉水抽出物で、上述の効果を期待するためには多量の小麦粉の摂取が必要になる。
【0006】
一方、パントエア・アグロメランスは小麦に共生する細菌であり、小麦にリン、窒素の供給を行うことから小麦栽培に有用な菌であると考えられる(非特許文献7)。また、パントエア・アグロメランスは小麦のみならず、梨やリンゴの果実の表皮に付着しており、この菌が付着しているとカビによる腐れ病が予防できることがヨーロッパにおいて明らかにされ、本菌を無毒で、自然環境に優しい防かび剤として利用する開発が進んでいる(非特許文献8)。なお、共生とは、「異種の生物が一緒に生活している現象。この場合、互いに行動的あるいは生理的に緊密な結びつきを定常的に保っていることを意味するのが普通である。従って、同じ生息場所に住んでいるだけでは、この概念には入らない。共生者にとっての生活上の意味・必須性、関係の持続性、共生者の空間的な位置関係などによって、共生はいろいろに類別・区別されている。ふつうには、共生者の生活上の利益・不利益の有無に基準を置いて、共生を相利共生、片利共生、寄生の三つに大きく区分する。」と定義されている(非特許文献9)。パントエア・アグロメランスの場合、小麦からはその産地、種類を問わず分離されている(非特許文献5)こと、また果実からも分離されること(非特許文献10.11)がわかっている。パントエア・アグロメランスは、抗生物質を産生し(非特許文献12,13)カビや他の細菌から植物を保護すること、リン、窒素固定を行うこと(非特許文献7)が報告されている。従って、パントエア・アグロメランスは植物に常在し、植物に益する役割を担うと考えられ、「寄生」ではなく「共生」と捉えられる。さらに、我々はパントエア・アグロメランスには免疫を賦活化する有効な成分が含まれていることをこれまでに明らかにしてきた。また、この菌から得た低分子量リポ多糖はヒトやマウスの諸疾患(糖尿病、高脂質血症、アトピー性皮膚炎、がん)等の予防効果があること、魚類や甲殻類、トリの感染予防に有効であることを見いだしている(特許文献3、非特許文献2)。
【0007】
この様な状況で我々は、安全かつ安価な免疫賦活物質を製造する方法として、パントエア・アグロメランスを用いた植物発酵エキスの製造方法を確立することを着想した。つまり、(1)培養液に含まれるタンパク質の主成分を植物由来のものにした培地を用いてパントエア・アグロメランスを低コストで培養するとともに植物成分を発酵させ、(2)植物に含まれるパントエア・アグロメランス或いは発酵による生産物を多く含む素材を調製し、これを用いることでヒトを含む哺乳動物(具体的には家畜、愛玩動物など)、鳥類(具体的には養鶏、愛玩鳥類など)、両生類、は虫類、魚類(具体的には、水産養殖魚、愛玩魚類など)、無脊椎動物に及ぶ医薬品、動物用医薬品、医薬部外品、化粧品、機能性食品、食品、飼料及び浴用剤を開発すること、に着目した。しかし、植物に共生している微生物が直ちに植物成分例えば食用植物に由来する素材を発酵基質として利用できることを意味するわけではない。例えば小麦粉は小麦粒の中に存在する澱粉質等の複合有機物質であるが、小麦共生微生物であるパントエア・アグロメランスとは外皮を隔てて隔離されており直接の接点はないのであるから、パントエア・アグロメランスを小麦粉を用いて発酵培養できるか否かは単に微生物が小麦に共生していることとの関連で明らにできるわけではないし、事実パントエア・アグロメランスが小麦粉を資化できることはこれまでに知られておらず、全く報告がない。逆に、これまで公知である事実に基づけばパントエア・アグロメランスは小麦澱粉を発酵基質として利用できないとされる。
【0008】
ところで、植物に含まれている糖質は澱粉の状態で保持される場合が多く、これは食用植物、特に穀類で顕著である。通常微生物は澱粉を資化する機能は高いものではない。この点に関して、一部の通性グラム陰性菌が澱粉を発酵できることが知られている。例えば、エルイニア(Erwinia)は澱粉を資化できることが知られている。しかしこの発酵技術は、澱粉を発酵するに際し、別に最適培地などで大量に培養した微生物を加えることによって、微生物の持つアミラーゼ活性を利用することが意図されているのであり、培養そのものを澱粉を用いて行うと共に併せて発酵を行う形態はこれまでに着想されていない。公知技術は、単に微生物の持つアミラーゼ活性を効果的に利用することが目的とされる発酵と捉えることができるのであって、澱粉を基質とした微生物の増殖までが予定されているわけではない。一方本発明の実施例では、澱粉を唯一の炭素源とすることで微生物の増殖に加え発酵産物が産生されることが開示されているのであり、本実施例は単なる発酵ではなく発酵培養である点が公知技術と大きく異なる。
【0009】
他方、仮に、ある微生物が澱粉を分解する機能を保持していたとしても、これが直ちに該微生物が澱粉を基質として増殖できることを意味するわけではない。培養の際に、微生物の増殖をも目的とする場合は、培養出発時点に加える微生物量は極めて少量である。このような場合には仮に微生物がアミラーゼ活性をわずかに持っていたとしても、この活性は基質を十分に分解するにはあまりに微弱であって、微生物の増殖は達成されない。事実微生物の多くは澱粉を唯一の炭素源として増殖することはできないと考えられている。
【0010】
しかしながらもし、パントエア・アグロメランスを用い、小麦粉を主成分として含む培地で発酵及び培養させ、免疫賦活物質を多く含む植物発酵エキス(以下、パントエア・アグロメランスを用い、小麦粉を主成分として含む培地で発酵及び培養させて得た植物発酵エキスを小麦発酵エキスと呼ぶ。)を低コストで製造できれば、具体的な例としてヒト、畜産・水産養殖の分野で環境に優しく、安全で感染予防に有効な医薬品、動物用医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、機能性食品、飼料及び浴用剤などを提供できるはずである。本発明は以上を背景としパントエア・アグロメランスが小麦粉を基質として生育することを新たに発見したことを契機として数多くの実験を重ねて完成されたものである。
【0011】
本発明が提供する植物発酵エキスとは発酵及び培養を行って得られる培養液そのもの、これを固液分離して得られる液体成分、及び固液分離して得られる固体成分に抽出過程を加え得られる液体成分などを総称する名称である。すなわち、植物発酵エキスは本発明に係る発酵及び培養方法によって得られる培養液そのもの、及び、その培養液の全部又は一部分を用いて調製することのできるエキスをすべて含んでいる。言うまでもないが植物発酵エキスは乾燥して植物発酵エキス末として利用することもできるし、植物発酵エキス末を任意の濃度に適当な溶液例えば生理食塩水入りの燐酸緩衝液などに溶解して利用することもできる。

【特許文献1】特開平3−218466号公報
【特許文献2】特開平8−198902号公報
【特許文献3】WO00/57719
【特許文献4】特開平6−78756号公報
【特許文献5】特開平4−187640号公報
【特許文献6】特開平4−49240号公報
【特許文献7】特開平4−99481号公報
【特許文献8】特開平5−155778号公報
【非特許文献1】稲川 裕之 外8名, "Biotherapy",1991年, 第5巻, 4号, p617-621
【非特許文献2】Soma, G-I. 外1名, "Tumor Necrosis Factor: Molecular andCellular Biology and Clinical Revevance", 1993年,p203-220
【非特許文献3】山田 常雄 外6名, "生物学事典 第3版", 1983年, p1021
【非特許文献4】Gavini, F. 外6名, "Int. J. Syst. Bacteriol.", 1989年, 第39巻, p337-345
【非特許文献5】Nishizawa, T. 外7名, "Chem. Pharm. Bull.", 1992年, 第40巻, 2号, p479-483
【非特許文献6】Inagawa, H. 外8名, "Chem. Pharm. Bull.", 1992年, 第40巻, 4号, p994-997
【非特許文献7】Neilson, A. H. "J. Appl.Bacteriol.", 1979年, 第46巻,3号, p483-491
【非特許文献8】Nunes, C. 外3名, "Int. J. Food Microbiol.", 2001年,第70巻,1,2合併号, p53-61
【非特許文献9】山田 常雄 外6名, "生物学事典 第3版", 1983年, p287-288
【非特許文献10】Nunes, C. 外4名, "J. Appl. Microbiol.", 2002年, 第92巻, 2号, p247-255
【非特許文献11】Asis, C. A. Jr. 外1名, "Lett. Appl. Microbiol." 2004年, 第38巻, 1号, p19-23
【非特許文献12】Vanneste, J. L. 外3名, "J. Bacteriol." 1992年, 第174巻, 9号, p2785-2796
【非特許文献13】Kearns, L. P. 外1名, "Appl Environ Microbiol." 1998年,第64巻, 5号, p1837-1844
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
既述したように、免疫賦活物質は植物自身が含有する場合と植物に共生する微生物の構成成分又は生産物である場合が多い。従って、摂取しても安全な天然物由来の免疫賦活物質を得ようとすれば、食用植物自身から成分を抽出するか(例えばリムラス陽性糖脂質、特許文献1)食用植物に共生する微生物を効率よく培養してその構成成分又は生産物を取得すること(例えば低分子量リポ多糖、特許文献2)が有用である。しかし、食用植物に含まれる免疫賦活物質の含量は少なく、食により免疫賦活効果を期待するためには極めて多量の食品を取らなければならず、また免疫賦活物質の摂取量を適正に保つことが一般的には容易でないために、効果が期待できない。さらに植物から抽出して食品や薬剤として利用する場合にも多額のコストがかかり実用性に乏しい。
【0013】
一方植物に共生する微生物に注目すると例えば、小麦共生細菌であるパントエア・アグロメランスは免疫賦活に有効な低分子量リポ多糖を構成成分として含んでいる。しかしこれまで低分子量リポ多糖を抽出するには、培養液に含まれるタンパク質の主成分が動物由来のもの、例えばNZアミンやトリプトンやカザミノ酸など高価な培養液を用いてパントエア・アグロメランスを培養する必要があった。従って、汎用性の高い免疫賦活物質として、安価に供給することが困難である、と同時にBSE他動物由来の未知の有害物質が混在してくる可能性を否定できなかった。
【0014】
上記問題点に鑑み、本発明は、安全な素材を用いて安価に効率よく免疫賦活物質を得ることができる発酵及び培養方法、該方法によって得られる植物発酵エキス、該植物発酵エキスから得られる植物発酵エキス末並びに該植物発酵エキス末が配合されている植物発酵エキス配合物を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の発酵及び培養方法は、食用植物に由来する素材を専ら植物に共生する通性嫌気性グラム陰性菌によって発酵させて、同時に該通性嫌気性グラム陰性菌を培養することを特徴とする。
【0016】
また、炭素源として澱粉を前記通性嫌気性グラム陰性菌によって発酵させることで、単純な過程で発酵及び培養をすることができる。
【0017】
前記通性嫌気性グラム陰性菌は、通性嫌気性桿菌であることが望ましい。
【0018】
前記通性嫌気性桿菌は、腸内細菌科に属するものであることが望ましい。
【0019】
また、前記通性嫌気性桿菌は、パントエア属、セラチア属、又はエンテロバクター属に属するものであることが望ましい。
【0020】
また、前記通性嫌気性桿菌は、パントエア・アグロメランスであることで、澱粉を炭素源とすることができる。
【0021】
また、前記食用植物は、穀物、海草、豆類、又はこれらの混合物であることが望ましい。
【0022】
また、前記穀物に由来する素材は、小麦粉、米粉、小麦ふすま粉、米ぬか、又は酒かすであることが望ましい。とくに小麦粉はタンパク質源としてグルテンを含むので、動物由来の素材を用いなくても効率良く発酵及び培養をすることができる。
【0023】
また、前記海草に由来する素材は、わかめ粉、めかぶ粉、又は昆布粉であることが望ましい。
【0024】
また、前記豆類に由来する素材は、おからであることで、タンパク質を多量に含むため動物由来の素材を用いなくても効率良く発酵及び培養をすることができる。
【0025】
また、本発明の植物発酵エキスは、前記発酵及び培養方法によって得られることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の植物発酵エキス末は、前記植物発酵エキスから得られることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の植物発酵エキス配合物は、前記植物発酵エキス又は植物発酵エキス末が配合されていることを特徴とする。
【0028】
また、前記植物発酵エキス配合物は、医薬品、動物用医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、機能性食品、飼料、又は浴用剤であってもよい。
【0029】
また、前記植物発酵エキスは、以下の理化学的性質を示すことが望ましい。
【0030】
ポリミキシンB存在下でもマクロファージ活性化能を示す。また前記植物発酵エキスは免疫賦活効果を持つ。

【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、動物由来の成分を含まない培地で培養することができるので、動物成分由来の不純物の混入の問題がないので、例えばBSEや未知の有害物質混入の恐れがなく、安全性が高く、安価に多方面の用途に対応することが可能な植物発酵エキスの製造方法が提供され、安全、安価に免疫賦活物質含有植物発酵エキス又は植物発酵エキス末が製造でき、さらに該培養液、免疫賦活物質及びエキス及びエキス末さらに該エキス又はエキス末を配合した医薬品、動物用医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、機能性食品、飼料及び浴用剤などを提供することができる。
【0032】
食用植物に由来する素材を専ら植物に共生する通性嫌気性グラム陰性菌によって発酵させて、同時に該通性嫌気性グラム陰性菌を培養するという単純な過程で発酵及び培養ができることは、これまで着想もされておらず、これまでの発酵技術の知見から容易に推察される事実ではない。
【0033】
また、ある物質が免疫賦活効果を示す指標としてマクロファージからTNFが産生されるか否か(TNF誘導活性)を用いることができる。さらにTNF産生量によって免疫賦活効果を定量化することができる。そこで、小麦粉由来のリムラス陽性植物糖脂質、パントエア・アグロメランス由来の低分子量リポ多糖を用いてマクロファージからのTNF産生を検討すると、小麦粉由来のリムラス陽性植物糖脂質、パントエア・アグロメランス由来の低分子量リポ多糖ではいずれもポリミキシンB処理により、マクロファージからTNFが産生されなくなるが、本発明の植物発酵エキスでは同上の処理を行ってもマクロファージからTNFが産生されることを多くの実施例において示した。このことは発酵培養を行った結果得られる本発明の植物発酵エキスが、その素材となった植物自身、及び、発酵に用いた微生物自身の構成成分それぞれによる免疫賦活効果とは質的に異なる免疫賦活効果を有することを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。

I:パントエア・アグロメランスを用いた植物発酵エキスの製造方法の骨子

本件において、我々は、パントエア・アグロメランスが澱粉を直接炭素源として生育可能であることを始めて見出し、パントエア・アグロメランスを用いた発酵及び培養生産物としての免疫賦活物質を多く含む小麦発酵エキスを安価に製造する方法を発明した。これにより、具体的な例としてヒト、畜産・水産養殖の分野で環境に優しく、安全で感染予防に有効な医薬部外品、化粧品、食品、機能性食品、飼料を提供できる。
【0035】
1:パントエア・アグロメランスの分離
小麦粉を水に懸濁し、上澄み液をLブロス寒天培地に塗り広げ培養を行うと、微生物のコロニーが出現する。これらのコロニーを定法により微生物の同定を行う。例えば、グラム染色陰性、グルコース嫌気的代謝反応陽性、オキシダーゼ活性陰性のコロニーを選択し、さらに、IDテスト・EB-20(日水製薬)等を用いて、スタンダードのパントエア・アグロメランスと同じ性質を有するものを選択する。スタンダードとなるパントエア・アグロメランスは理化学研究所生物基盤研究部微生物系統保存施設より入手可能である(非特許文献4)。以下の説明において、百分率の表示は、特に断りのない限り、重量による値である。
【0036】
2:免疫賦活活性評価
本実施の形態では小麦発酵エキスが示す免疫賦活作用の指標として、マクロファージ活性化能をマクロファージからのTNF産生で評価した。
【0037】
3:パントエア・アグロメランス由来低分子リポ多糖
また、パントエア・アグロメランスを用いた発酵及び培養により、免疫賦活する有効成分の一つとしてパントエア・アグロメランス由来の低分子量リポ多糖の含有も期待される。低分子量リポ多糖は、汎用されている高分子量型のリポ多糖(以下通常のリポ多糖)に比べて極めて安全性が高く、かつ生物活性も通常のリポ多糖に比して優れている。そこで、低分子量リポ多糖含量を測定した。低分子量リポ多糖については特許文献2に詳述されている。なお、本実施例は小麦発酵エキスに関するものであるが、本発明は植物が小麦、免疫賦活物質が低分子量リポ多糖に限定されることを意味する訳ではない。
【0038】
ところでパントエア・アグロメランスは公知の方法を用いて培養できる。(特許文献2、非特許文献8)しかし公知の培養液に含まれるタンパク質の主成分は動物由来のものであり、培地のコストが高い。さらに、動物に例えば機能性食品や機能性飼料を与え、或いは経皮的に用いる場合に、BSEに代表されるように動物由来の不純物の混入が食の安全性の点から問題になること、更に製造コストが高額となり実用性の面から見ると十分な方法ではない。そこで本発明者らは、安全で、安価な免疫賦活作用を持つ天然物を得るために鋭意研究を進めた結果、小麦発酵エキスを得るためにパントエア・アグロメランスを用いる発酵及び培養方法を実施例に示すように完成した。培養液に含まれるタンパク質の主成分は、従来は動物由来のものであったが、本発明はこれを植物由来のものにした。通常、培養液には牛乳由来のカゼイン等のタンパク質を消化酵素で分解した産物を添加する。この場合には培地1lあたりの原価は約250円となるが、これが小麦粉で代替出来れば原価は約16円となる。これまでに植物とそれに共生する微生物の両方の免疫賦活活性を高濃度化しつつ相乗的に融合化する目的での発酵は行われたことがない。
【0039】
以下に実施例として発明内容を詳述するが、本発明は実施例記載の微生物としてパントエア・アグロメランス、食用植物として小麦あるいは素材として小麦粉に限定されたものではなく、免疫賦活物質を多量に含む他の食用植物から通常の工程を経て得られる素材、例えばわかめにも適応できるし、穀物(穀物に由来する素材である小麦粉、米粉、小麦ふすま粉、米ぬか、又は酒かす等を含む)、海草(海草に由来する素材であるわかめ粉、めかぶ粉、又は昆布粉等を含む)、豆類(豆類に由来する素材であるおから等を含む)にも適応できる。これらの植物にはタンパク質、糖類が含まれていることはよく知られており、パントエア・アグロメランスを用いる発酵及び培養に適応できる。また、これらの植物に常在性の細菌、例えばセラチア属、エンテロバクター属が共生していることは広く知られたところであり(非特許文献4)、発酵に用いる微生物もそれら植物に共生する通性嫌気性グラム陰性菌にも適応できるものであることは言うまでもない。
【0040】
II:発明の重要な点のまとめ
(1)小麦、その共生細菌であるパントエア・アグロメランス、及びそれらの組合せによる発酵産物の融合によってできる免疫賦活作用を持つ物質としての小麦発酵エキスそのものが新規。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
(2)グラム陰性菌のパントエア・アグロメランスを用いて植物発酵エキスを製造することが新しい。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
III:小麦発酵エキスの具体的製造方法
(1) パントエア・アグロメランスは小麦粉より定法に従い単離する(非特許文献1)。なお、一度、単離同定すれば、この菌を50%グリセロール等で保存が可能である。
(2) 0.05〜5%の食塩、0.005〜1モルのリン酸緩衝液、または、混合塩類溶液(0.5〜10%のリン酸第二ナトリウム、0.05〜5%のリン酸第一カリウム、0.05から5%の塩化ナトリウム、0.05〜5%の塩化アンモニウム)等を調製する。
(3) 0.05〜10%の濃度になるように小麦粉を水に懸濁する。
(4) 0.2〜3モルの塩化マグネシウム溶液を調製する。
(5) 0.2〜3モルの塩化カルシウム溶液を調製する。
(6) 2から5を場合によってはオートクレーブ等で滅菌操作を行う。
(7) 2から5を適量混合し、水を加え、0.1〜5%の小麦粉を含む懸濁液とする。場合によってはアルカリ溶液や酸性溶液を加えpHを中性にする。
(8) 7に場合によっては培地1リットルあたり10〜50000単位アミラーゼを加えて10℃から80℃で1〜24時間保温して、小麦でんぷんを部分消化させるのもよい。
(9) 7乃至8に1で単離したパントエア・アグロメランスを添加する。
(10) 9を1〜40℃で発酵させる。場合によっては静置や震盪してもよい。また、数時間おきに撹拌を行うことでもよい。
(11) 10を6時間から一週間発酵させる。発酵が進むと小麦粉水溶液が黄色に着色してくる。
(12) 11の発酵途中に適宜アルカリ溶液を加え、pHを中性にすることや、小麦粉懸濁液や無機塩類を添加することもよい。
(13) 発酵を終了させ、遠心分離(1000〜5000rpm、10〜60分間)等の操作により固形分を沈殿物として回収する。沈殿物は小麦粉発酵物として、そのまま飼料として又は飼料に混ぜる原料として使うこともできる。
(14) 小麦発酵エキスを製造する場合は、13を水または塩類緩衝液等で懸濁し、これを80〜140℃で10分から6時間加熱処理する。さらに、これを遠心分離や濾過することで、固形分を除去してもよい。除去した沈殿に再度水や緩衝液を加え、加熱抽出を数回繰り返してもよい。
(15) 14で製造した小麦発酵エキスは用途によってはさらに簡便な精製を追加することが出来る。すなわち、14のエキスに、最終濃度0.05〜1モル/lになるように塩化ナトリウム等の塩を加え、その後、エタノール等の溶媒をエキスの1〜3倍量添加すると沈殿が生じる。これを遠心分離機等で回収してもよい。この沈殿をさらに、エタノール等の溶媒で洗浄してもよい。これを乾燥させれば、粉末とすることも出来る。
【0042】
A.小麦発酵エキスの製造方法に関連する実施例
【実施例1】
【0043】
パントエア・アグロメランスの小麦培地での生育試験
小麦粉を炭素源として小麦常在性の共生細菌であるパントエア・アグロメランスが増殖可能であるか、確認するために、小麦粉固形培地におけるパントエア・アグロメランスの生育を調べた。
(1) 0.5%小麦粉を炭素源として含むM9寒天培地を作成した。
(2) LB寒天培地より、パントエア・アグロメランスのコロニーを1つかきとり、PBS1mlに懸濁した。これをさらにPBSにて10倍から10000倍までに段階的に希釈し、それぞれの0.1mlを1のM9寒天培地に撒いた。
(3) 37℃で6日間培養した後、コロニーの出現を観察した。その結果、10000倍希釈の0.1mlを撒いたシャーレで約300個のコロニーが観察された。
【0044】
このことから、パントエア・アグロメランスは小麦を炭素源として利用できることが確かめられた。

【実施例2】
【0045】
小麦発酵エキスの製造
(1) 小麦粉0.5gに蒸留水5mlを加え懸濁し、上澄みをLブロス寒天培地に0.1ml添加し、37℃で一晩培養した。
(2) 黄色のコロニーを単離し、通常の方法で菌を同定し、パントエア・アグロメランスを単離し、これを50%グリセロール溶液に懸濁し、冷凍庫に保存した。このストックの一部をLB寒天培地にとり、37℃に放置してパントエア・アグロメランスの独立コロニーを作成した。
(3) 2リットルの三角フラスコにリン酸第二ナトリウム・7結晶水64g、リン酸第一カリウム15g、塩化ナトリウム2.5g、塩化アンモニウム5gをとり、精製水を加え全量1リットルとした(無機塩類混合溶液)。塩化マグネシウム・2結晶水13.1gをとり、精製水を加え全量を100mlとした(塩化マグネシウム溶液)。塩化カルシウム11.1gをとり、精製水を加え全量を100mlとした(塩化カルシウム溶液)。4リットルの精製水を5リットルの三角フラスコにいれた(精製水)。上記の溶液、精製水はすべてオートクレーブ(TOMY BS−325、120℃、20分)して滅菌処理を行った。
(4) 1リットルの三角フラスコに小麦粉(日清製粉)24gをとり、精製水を加え全量600mlとした。これを同様にオートクレーブした後、α−アミラーゼ(SIGMA、Bacillus、タンパク質1mg当たり1500〜3000単位の酵素活性)3mgを加え、65℃の水浴で4〜12時間加熱した(小麦粉アミラーゼ処理液)。
(5) 調整した溶液等をそれぞれ表1に示した量を無菌的に滅菌した3リットルの坂口フラスコに入れ小麦粉培地とした。
【0046】
【表1】

(6) 種菌の調製。前もって同じ組成で調製しておいた5の小麦粉培地10mlに、2で小麦粉より単離しておいたパントエア・アグロメランスのコロニーを一つ加え37℃で一晩(12〜15時間)緩やかに撹拌し、発酵させて、小麦粉発酵用の種菌を準備した。
(7) 5に6を全量加え37℃で撹拌しながら、20〜30時間発酵させた。発酵液のpHを測定し、アンモニア水を加え、pHを7に調整した。これに、150mlの小麦粉アミラーゼ処理液と無機塩類混合溶液37.5mlを無菌的に添加し、同様に発酵を20〜30時間行った。同じ操作をさらに、もう一度繰り返し、合計で65から80時間発酵させた。
(8) 7の小麦粉発酵溶液を遠心分離(日立、高速冷却遠心機 SCR−20B、5000rpm、20分間、4℃)し、沈殿を回収した。
(9) 8の沈殿にリン酸緩衝液を加えて懸濁し、全量100mlとして、33mlずつ50ml遠心管に移し、沸騰水浴中で30分間加熱抽出した。加熱終了後、室温まで冷却し、本液を遠心分離(日立、高速冷却遠心機 SCR−20B、10000rpm、20分間、20℃)した。遠心後、淡黄色の上清82mlをデカントで別の容器に回収した。
(10) 9の上清80mlに8.9mlの5モル塩化ナトリウム溶液を加えた。これに178mlのエタノールを加えると白濁を生じた。これを、冷凍庫(−90℃)で一晩放置後、本液を遠心分離(日立、高速冷却遠心機SCR−20B、10000rpm、20分間、4℃)した。上清を除き沈殿を得た。沈殿に冷やした10mlの70%エタノールを加え、懸濁した後、本液を遠心分離(日立、高速冷却遠心機 SCR−20B、10000rpm、20分間、20℃)し、沈殿を洗浄した。沈殿を風乾し、蒸留水に溶解し、11mlの小麦発酵エキス溶液を得た。
(11) 乾燥重量の測定:0.3mlを予め秤量した1.5mlプラスチックチューブに移し、凍結後、凍結乾燥機にて、凍結乾燥を行ったところ7.45mgで衡量となった。したがって、10の小麦発酵エキスの乾燥重量は溶液1ml当たり24.8mg、全量11ml当たり、273mgであった。
(12) 同一の方法で独立に8回の小麦発酵エキスを製造し、それぞれをブラッドフォード法によるタンパク質定量BSAを標準タンパク質として、各サンプルのタンパク質量を測定した。比較対象として精製したリムラス陽性糖脂質(特許文献1)と低分子リポ多糖(特許文献2)を用いた。測定結果を表2に示した。表2〜5、7の小麦発酵エキスについての数値は上記10で得られる小麦発酵エキスを乾燥して得られた重量の1gあたりの含有量をmgで表示した。
(13) 糖含量の測定:フェノール硫酸法によりグルコースを標準糖として測定した。測定結果を表3に示した。
(14) 核酸含有量の測定:100倍希釈したサンプルの210〜340nmの吸光度測定を行った。260nmの吸光度から320nmの吸光度を引いた値と、DNAとしての吸光度1ODあたり、50μgとしての最大含有量を算出した。測定結果を表4に示した。
(15) リムラスアッセイによるリムラス活性物質含有量の測定:リムラス活性物質量は生化学工業のトキシカラーシステムを用い、標準リムラス活性物質として、生化学工業Et-1を用いた。測定結果を表5に示した。
(16) ヨウ素でんぷん反応:ヨウ素試薬1N(ヨウ素12.7gにヨウ化カリウム25gに水10mlを加え、よく混ぜた後、水を加えて100mlとしたもの)を用時、水で200倍希釈し、これを、予め1mg/mlの濃度に溶解させた小麦発酵エキス0.1mlに5μl加えて良く混ぜる。小麦発酵エキスは直ちに溶液は淡紫色から濃紫色の発色を示した(陽性)。リムラス陽性糖脂質、低分子量リポ多糖は同様な操作で発色は認められない(陰性)。以上の結果を表6にまとめた。
【0047】
上記結果から明らかなように、小麦発酵エキスはリムラス陽性糖脂質、低分子量リポ多糖とはタンパク質含量、糖含量、核酸含量(リムラス陽性糖脂質はデータが無いので除く)、リムラス活性物質含量、ヨウ素でんぷん反応のすべての項目で異なることが明白であり、本物質が新規であることが明らかである。以上の結果を簡単に表7にまとめた。すなわち、本実施例の植物発酵エキスは以下のそれぞれの理化学的性質を示す点で、リムラス陽性糖脂質及び低分子量リポ多糖とは異なり新規なものである。タンパク質含量5〜15%、糖含量20〜45%、核酸含量10〜35%、及びリムラス陽性物質含量10〜40%を含み、ヨウ素でんぷん反応に陽性であり、ポリミキシンB存在下でもマクロファージ活性化能を示す。
【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
【表7】

過小:小麦発酵エキスの数値の幅(平均±標準偏差)よりも大幅に少ない値。
過多:小麦発酵エキスの数値の幅(平均±標準偏差)よりも大幅に多い値

【実施例3】
【0054】
小麦発酵エキスの免疫賦活作用
48穴プレートにヒトマクロファージとして用いられる急性骨髄性白血病細胞株のTHP−1(1×10個/250μl:10%ウシ胎児血清入りRPMI1640培地)を入れ、予め30分間前培養した。各サンプルの終濃度が1〜10000ng/mlになるように培地250μl(最終量500μl)を加えた。サンプルにポリミキシンB(12.5μg/ml)を含む群を設けた。4時間培養した後、培養上清と細胞を回収した。上清のTNF活性は、L−929細胞障害試験により測定した。結果を表8に示す。小麦発酵エキスはポリミキシンB存在下でもマクロファージからTNFを産生させたが、低分子量リポ多糖及びリムラス陽性糖脂質はポリミキシンB存在下ではマクロファージからTNFを産生できなかった。このことから小麦発酵エキスは低分子量リポ多糖やリムラス陽性糖脂質とは異なる生物活性を持つ事が明らかである。
【0055】
【表8】

【0056】
B.小麦発酵エキスの飼料への応用実施例
【実施例4】
【0057】
小麦発酵エキス入り養鶏試料(大規模試験によるブロイラー飼育における斃死抑制効果)
実施例2で製造した小麦発酵エキスを430μg/kg含有する飼料を作製した。供与鶏はブロイラーコマーシャル鶏を一群約5500〜6000羽で用いた。対照試験区分は小麦発酵エキスを含まない飼料である。孵化後3週齢で小麦発酵エキス入りエサの投与を開始し7週齢まで毎日投与した。死亡匹数を毎日測定した。出荷時に基準に満たない鶏は廃棄した。結果を表9に示す。試験区(小麦発酵エキス入り飼料)は除去率は1.9%と少なく、対照区では3.3%に達した。育成率は試験区で98.1%となり、対照区で96.7%となったので、1.4%の育成率の向上が見られた。出荷実羽数と除去羽数を試験区と対照区で有意差検定をしたところχ検定でP<0.0001の有意差が見られた。上のことから小麦発酵エキス入り飼料のブロイラー飼育における感染防除効果が示された。
【0058】
【表9】

【実施例5】
【0059】
小麦発酵エキス入り養殖魚用飼料(ブリ野外試験による感染防除効果)
実施例2で製造した小麦発酵エキス入り飼料の感染防御効果を野外試験で一群につき約5200尾のブリを飼育した。結果を表10に示した。連鎖球菌による死亡は非投与対照で4.8%に達した。小麦発酵エキスを100μg/kg/日(体重1kg、1日あたり)を摂取させた群(試験区)と、非投与群(対照区)では、小麦発酵エキス投与群が有意に(P<0.00001)死亡率を低下させることが認められた。
【0060】
【表10】

【実施例6】
【0061】
小麦発酵エキス入り養殖魚用飼料(コイヘルペス症に対する感染防除効果)
(1) コイ:体重70gのマゴイを使用した。試験は1群20匹で行った。
(2) コイヘルペスウイルスの調整:コイヘルペス感染で死亡したコイのエラ1gに10mlのハンクスバランスドソルトソリューション(HBSS)緩衝液を加えてホモジネートし、0.45ミクロンのフィルターでろ過し、そのろ液をウイルス溶液とした。
(3) コイヘルペスウイルスの感染:上記ろ液を600μl/100g 体重で、コイの腹腔内に注射した。
(4) 小麦発酵エキス含有飼料の作成:市販飼料に、0、5、10、20mg/kg飼料の割合で実施例2で製造した小麦発酵エキスを混合して、作成した。
(5) 給餌方法:体重あたり1%の重量のそれぞれの飼料を1日1回給餌した。これは、小麦発酵エキス量に換算すると、それぞれ、0、50、100、200μg/kg体重/日に相当する。
(6) 実験:小麦発酵エキス含有飼料を1週間給餌した後、ウイルスを感染させ、その後10日間小麦発酵エキス含有飼料を給餌した。ウイルス感染操作後10日間のコイの生存率を観察した。その結果を図1に示す。
【0062】
小麦発酵エキス無添加のコイでは、6日目までに全てのコイが死亡した。一方小麦発酵エキス含有飼料を給仕した群では、感染10日目において、生存率はいずれも有意に増加することが示された(カプランマイヤー法・ログランク試験で危険率0.01%以下)。特に小麦発酵エキスを100μg/kg体重/日で給餌した群では65%の生存率が示された。
【0063】
C.小麦発酵エキスの化粧品・浴剤への応用実施例
【実施例7】
【0064】
小麦発酵エキス入りハンドクリームの製造
表11に記載した配合において脂溶性基材1の軟膏に実施例2で製造した小麦発酵エキスを1割前後添加して混合して軟膏を得た。

【0065】
【表11】

【実施例8】
【0066】
小麦発酵エキス入り保湿クリームの製造
1.小麦発酵エキス入り保湿クリーム処方
使用成分を表12に示した。A組を70℃で加熱溶解し、これに1/4量の精製水で溶き70℃で加熱溶解したB組と、1/4量の精製水で溶き70℃で加熱溶解したC組を加え、ホモジナイザーで充分混合した後40℃まで冷却し、D組を加えてpHを6.8まで調整した後、残りの精製水と実施例2で製造した小麦発酵エキスを適量加え、充分混合して乳液を得る。なお、小麦発酵エキスは、5mg/mlになるように予め精製水に溶解しておき、乳液100gに対しては、その0.1mlを添加する。
【0067】
【表12】

【0068】
2.小麦発酵エキス入り保湿クリームの効果
本クリームを男女43人に使用してもらいアンケート調査を行った。その結果、保湿効果について確かに効果ありと答えた者が18名、やや効果ありと答えた者が18名、効果なしと答えたものが2名、無記入が5名であった(一標本符号検定:P<0.0001)。あれ肌の改善の防止効果について、確かに効果あり良いと答えた者が6名、やや効果ありと答えた者が13名で、効果なしと答えたものは0名、無記入が24名であった。(一標本符号検定:P<0.0001)。使用後の肌の症状の悪化について、あると答えた者が0名であった。また、軽度のアトピー様症状を持つ4名に本クリームを使用してもらいアンケート調査を行ったところ、アトピー性皮膚炎の改善について、確かに効果ありと答えた者が3名、やや効果ありと答えた者が1名であった(一標本符号検定:P<0.125)。その他には、にきび跡の治りが早いという者が1名いた。また、本クリームを9名の男性に髭剃り後に使用してもらいアンケート調査を行ったところ、8名が髭剃り後の痛みの軽減、かさつきの防止、かみそり傷の早期治癒などに効果があったと答えた(一標本符号検定:P<0.01)。さらに五十肩の症状のある2名が肩に塗って痛み軽減効果を試したところ、1名は効果ありと答えた。
【0069】
さらに、このクリームを火傷患者に用いた。両手皮膚を同程度に火傷した患者に、片手に実施例2で製造した小麦発酵エキスを含むクリームを、もう片方の手に小麦発酵エキスを含まないクリームを塗り経過を見たところ、小麦発酵エキスを含むクリームを外用した手の方が明らかに早く回復した。この例を含み10名の火傷患者に外用したところ、いずれも小麦発酵エキスを含むクリームを外用した箇所は小麦発酵エキスを含まないクリームを外用した箇所よりも創傷が早く回復した(フィシャーの直接確率:P<0.0001)。以上のことから本小麦発酵エキスは火傷に対する治療効果を有することが示された。
【実施例9】
【0070】
小麦発酵エキス入り化粧水の製造
1.小麦発酵エキス入り化粧水処方
使用成分を表13に示した。小麦発酵エキスは、実施例2で製造した小麦発酵エキスを5mg/mlになるように予め精製水に溶解しておき、化粧水100gに対しては、その0.1mlを添加する。
【0071】
【表13】

【0072】
2.小麦発酵エキス入り化粧水の効果
本化粧水を5人の女性に使用してもらいアンケート調査を行った。その結果、保湿効果について良いと答えた者が3名、普通と答えた者が2名であった。いずれも肌のトラブルはなかった。
【実施例10】
【0073】
小麦発酵エキス入り入浴剤の製造
生体機能の改善を目的として小麦発酵エキスを加えた入浴剤を作製した。入浴剤の基本成分を表14に示した。
【0074】
【表14】

【0075】
小麦発酵エキス入り入浴剤としては実施例2で製造した小麦発酵エキスの110μgを上記成分に添加して作製した。102人の被験者にブラインドでエキス入りとエキスの入っていない対照を渡し、通常の浴槽(160〜200リットル)に入浴時に用いてアンケート((1)体の温まり具合、(2)湯冷めのしにくさ、(3)疲労回復効果、(4)寝付き易さ、(5)肩こりの取れ具合、(6)筋肉痛に対する効果、(7)神経痛に対する効果、(8)腰痛に対する効果、(9)冷え性に対する効果、(10)水虫の改善効果、(11)肌のかさつき改善効果、(12)アトピー性皮膚炎への効果)を行った。その結果、対照に比べて7%以上の改善が見られたのは、(1)体の温まり具合(10%)、(2)湯冷めのしにくさ(7.9%)、(6)筋肉痛に対する効果(13%)、(8)腰痛に対する効果(16%)、(9)冷え性(10%)、(11)肌のかさつき改善効果(7.3%)に対する効果であった(Mantel−Haenszel検定:P<0.04)。以上の結果から、小麦発酵エキスを入浴剤として用いることで、痛みに対する緩和効果と、体の温まりぐあいを改善することが認められた。
【0076】
D.小麦発酵エキスの機能性食品への応用実施例
【実施例11】
【0077】
小麦発酵エキス入りアメの製造
(1) 原材料としてグラニュー糖、水飴、水に実施例2で製造した小麦発酵エキスを加えたものを5:5:5:1の割合で混合し、加熱して120℃〜160℃で煮詰める。
(2) 1で得たものを冷却用鉄板上で冷却し、棒状に引き伸ばして1g前後の粒状に成型し飴を得た。
【0078】
本アメ適量を水20mlに入れ、加熱することで溶解させた。この溶液中の小麦発酵エキス有効成分としてリポ多糖量を測定したところ、4.6μg/gであった。このアメを、風邪をひいてのどの痛みのある男女6名に摂取させた。その後、直ちにのどの痛みに対するアンケート調査を行った。のどの痛みについては、6名とも痛みが軽減したと感じた(一標本符号検定:P<0.03)。
【実施例12】
【0079】
小麦発酵エキス入りアルコール分解機能増強食品の製造
現在、アルコール分解機能増強食品として、市販されている製品に実施例2で製造した小麦発酵エキスを混合し、新たな効果として咽喉痛の緩和が認められるか否かを検討した。
市販製品:商標「飲んでお息」
成分を表15に示した。
【0080】
【表15】

【0081】
現在の「飲んでお息」には、あまちゃずるエキス及び緑茶エキスが含まれているが、植物エキスの有効成分のひとつであるリポ多糖量はわずかに1包あたり0.002μg程度である。従ってリポ多糖含有量が多い小麦発酵エキスを適正量添加することにより、新たな機能を獲得することが期待される。小麦発酵エキスの有効成分のひとつであるリポ多糖を1包2g当たりに1〜30μg(小麦発酵エキスとして5〜150μg)配合するのが望ましいので、先ず1包に50μgの小麦発酵エキスが配合された製品を製造した。飲んでお息の製造工程において100gの製品当たり、実施例2で製造した小麦発酵エキス2.5mgを加えた。その結果、製品2gあたり、50μgの小麦発酵エキスを含む新しい製品が製造された。
【0082】
飲酒しながらカラオケに興じ咽喉痛を訴える成人男女20名を対象にして、これまでの「飲んでお息」と小麦発酵エキスを含んだ「飲んでお息」を10名ずつに服用させ、公知の効果であるアルコール分解能強化効果、及び咽喉痛緩和効果について検討した。その後、直ちに咽喉痛緩和効果に対するアンケート調査を行った。その結果、「小麦発酵エキス入り飲んでお息」には咽喉痛の軽減が10名中8名認められ、対象の「飲んでお息」の10名中2名の効果と比較して統計的に有意な差(フィシャーの直接確率:P<0.012)が認められた。
【0083】
E.小麦発酵エキスの薬効実施例
【実施例13】
【0084】
小麦発酵エキス入りグリセロール溶液の製造(アトピー性皮膚炎に対する治療効果)
顔面、手足、体躯、首、腕、背部等に皮疹が観察され、自覚症状が中等度から高度症状を示す難治性のアトピー性皮膚炎患者男女9人(25歳から34歳)に実施例2で製造した小麦発酵エキス50μg/mlを含む50%グリセロール溶液を患者に一日2〜3回、一回当たり2〜3mlを服用させた。自覚症状(掻痒感)は患者の訴えにより、軽度、中等度、高度に分類した。2週間から2ヶ月使用後に再度受診し、効果を評価した。結果は著効(皮疹の著明改善と自覚症状の殆どの消失)が4名(44%)、有効(皮疹の軽度改善と自覚症状の減少)が4名(44%)、不変が1名(11%)で、悪化が0名であった(一標本符号検定:P<0.03)。以上から有効率89%と判定された。
【実施例14】
【0085】
小麦発酵エキスの鎮痛作用
実施例2で製造した小麦発酵エキスを蒸留水に溶かし、マウスにゾンデを用いて一匹当たり、0.2mlを経口投与した。90分後にマウスに0.7%の酢酸を腹腔内投与し、5分間様子を見た後に、30分間に起こる身もだえ数を測定した。結果を表16に蒸留水投与対照の身もだえ数を30%阻害するのに必要な各試料の量として示した。大腸菌由来の低分子量リポ多糖の有効活性を1とした時に小麦発酵エキスは7となり、小麦発酵エキスが優れた鎮痛作用を示すことが認められた。
【0086】
【表16】

【実施例15】
【0087】
小麦発酵エキスのアトピー性皮膚炎抑制効果
小麦発酵エキスのアトピー性皮膚炎に対する効果を調べるために、I型アレルギーモデルを導入した。一群3〜4匹の雄性のBALB/cマウスに抗ジニトロフェニル、マウスモノクローナル抗体を1μg/マウスで静脈投与した。一時間後に実施例2で製造した小麦発酵エキス(4μg/マウス)を腹部皮内投与または経口投与(100μg/マウス)し、さらに1時間後に、マウスの耳介の表裏に0.25%ジニトロフルオロベンゼン含有アセトン−オリーブオイル混合溶液(4対1)をアレルゲンとして20μl塗布した。塗布後、1、2、24及び48時間目の耳介の厚さをシクネスゲージで測定し、塗布直前の厚さとの差(△)を浮腫の程度とした。薬剤投与の効果は、アレルゲン投与1時間後に認められる早期反応と、24時間後に誘導される遅発反応、それぞれの抑制を以下の式によって求められる抑制率で評価した。{抑制率 = (1−薬剤投与後の△耳介の浮腫/対照の△耳介の浮腫)×100}結果を表17に示す。表から明らかなように、小麦発酵エキスは皮内投与でも、経口投与でもアレルギー反応を抑制した。
【0088】
【表17】

【実施例16】
【0089】
小麦発酵エキスの感染予防効果
小麦発酵エキスの感染予防効果を調べるために、メシチリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染モデルを導入した。一群10匹の雄性のBALB/cマウス(6−8週齢)にサイクロフォスファミド(CY)200mg/kgを腹腔内投与し、5日後に実施例2で製造した小麦発酵エキスを皮内投与した。3時間後にMRSA(3×10コロニーフォーミングユニット(CFU))を静脈内投与し、生存日数を調べた。結果を表18に示した。表から明らかなように小麦発酵エキスは生理食塩水(対照)群に比べて統計学的に有意な(χ検定、P<0.001)差でMRSAに対する感染予防効果が認められた。
【0090】
【表18】

【実施例17】
【0091】
小麦発酵エキスの転移がん治療効果
小麦発酵エキスの転移がん治療効果を調べるために、MethAがん細胞の肺転移モデルを導入した。一群10匹の雄性のBALB/cマウス(6−8週齢)にMethA細胞を1×10細胞静脈内投与し、12日後より4日間連日、実施例2で製造した小麦発酵エキスを皮内投与した。細胞移植20日後に剖検し、肺を摘出し、ホルマリン固定を行った。肺を肉眼で観察し、結節数を測定した。結果を表19に示した。表から明らかなように小麦発酵エキスは生理食塩水(対照)群に比べて統計学的に有意な(t−検定、P<0.001)差でMethAの肺転移癌に対する治療効果が認められた。
【0092】
【表19】

【0093】
F.おから発酵エキスに関連する実施例
【実施例18】
【0094】
おから発酵エキスの製造
(1) 2リットルの三角フラスコに1.0リットルの水と、リン酸第一カリウム0.2g、リン酸第二ナトリウム1.15g、食塩8g、塩化カリウム0.2gを加えた。
(2) 1に乾燥おから20gを加えた。
(3) 2をオートクレーブで滅菌した。
(4) 種菌の調製。前もって同じ組成で調製した2%おから培地5mlに小麦粉より単離しておいたパントエア・アグロメランスのコロニーを一つ加え37℃で一晩(15時間)緩やかに撹拌し、発酵させて、おから発酵用の種菌を準備した。
(5) 3に4を全量加え37℃で緩やかに撹拌しながら、48時間発酵させた。
(6) 5のおから発酵溶液をオートクレーブで120℃20分間の加熱抽出をした。これを遠心分離(クボタ 8800、2000rpm、10分間)し、上澄みを回収し、おから発酵エキスとした。
(7) 乾燥重量の測定 0.3mlを予め秤量した1.5mlプラスチックチューブに移し、凍結後、凍結乾燥機にて、凍結乾燥を行ったところ5.97mgで衡量となった。したがって、6のおから発酵エキスの乾燥重量は溶液1ml当たり19.9mg、全量1000ml当たり、19.9gであった。
(8) ブラッドフォード法によるタンパク質定量BSAを標準タンパク質として、10倍希釈したサンプルでタンパク質量を測定した。結果を表15に示した。
(9) 核酸含有量の測定 100倍希釈したサンプルの210〜340nmの吸光度測定を行った。260nmの吸光度から320nmの吸光度を引いた値と、DNAとしての吸光度1ODあたり、50μgとしての最大含有量を算出した。
(10) 糖含量の測定 フェノール硫酸法によりグルコースを標準糖として測定した。
(11) リムラスアッセイによるリムラス活性物質含有量の測定 リムラス活性物質量は生化学工業のトキシカラーシステムを用い、標準リムラス活性物質として、生化学工業Et−1を用いた。結果を表20に示した
【0095】
【表20】

【実施例19】
【0096】
おから発酵エキスの免疫賦活作用
48穴プレートにヒトマクロファージとして用いられる急性骨髄性白血病細胞株のTHP−1(1×10個/250μl:10%ウシ胎児血清入りRPMI1640培地)を入れ、予め30分間前培養した。各サンプルの終濃度が100〜10000ng/mlになるように培地250μl(最終量500μl)を加えた。サンプルにポリミキシンB(12.5μg/ml)を含む群を設けた(100ng/mlのみポリミキシンBを含む群なし)。4時間培養した後、培養上清と細胞を回収した。上清のTNF活性は、L−929細胞障害試験により測定した。結果を表21に示す。おから発酵エキスはポリミキシンB存在下でもマクロファージからTNFを産生させたが、低分子量リポ多糖はポリミキシンB存在下ではマクロファージからTNFを産生できなかった。このことからおから発酵エキスは低分子量リポ多糖とは異なり、小麦発酵エキスと同様の生物活性を持つ事が明らかである。
【0097】
【表21】

【0098】
G.米粉発酵エキスの関連する実施例
【実施例20】
【0099】
米粉発酵エキスの製造
(1) 2リットルの三角フラスコに1.0リットルの水と、リン酸第一カリウム0.2g、リン酸第二ナトリウム1.15g、食塩8g、塩化カリウム0.2gを加えた。
(2) 1に乾燥米粉20gを加えた。
(3) 2をオートクレーブで滅菌した。
(4) 種菌の調製。前もって同じ組成で調製した2%米粉培地5mlに小麦粉より単離しておいたパントエア・アグロメランスのコロニーを一つ加え37℃で一晩(15時間)緩やかに撹拌し、発酵させて、米粉発酵用の種菌を準備した。
(5) 3に4を全量加え37℃で緩やかに撹拌しながら、72時間発酵させた。
(6) 5の米粉発酵溶液をオートクレーブで120℃20分間の加熱抽出をした。これを遠心分離(クボタ 8800、2000rpm、10分間)し、上澄みを回収し、米粉発酵エキスとした。
(7) リムラスアッセイによるリムラス活性物質含有量の測定 リムラス活性物質量は生化学工業のトキシカラーシステムを用い、標準リムラス活性物質として、生化学工業Et−1を用いた。米粉発酵エキス中のリムラス活性物質含有量は1.7μg/mlと測定された。
【実施例21】
【0100】
米粉発酵エキスの免疫賦活作用
48穴プレートにヒトマクロファージとして用いられる急性骨髄性白血病細胞株のTHP−1(1×10個/250μl:10%ウシ胎児血清入りRPMI1640培地)を入れ、予め30分間前培養した。各サンプルの終濃度が1〜10000ng/mlになるように培地250μl(最終量500μl)を加えた。サンプルにポリミキシンB(12.5μg/ml)を含む群を設けた。4時間培養した後、培養上清と細胞を回収した。4時間培養した後、培養上清と細胞を回収した。上清のTNF活性は、L−929細胞障害試験により測定した。結果を表22に示す。米粉発酵エキスはポリミキシンB存在下でもマクロファージからTNFを産生させたが、低分子量リポ多糖はポリミキシンB存在下ではマクロファージからTNFを産生できなかった。このことから米粉発酵エキスは低分子量リポ多糖やリムラス陽性糖脂質とは異なる生物活性を持つ事が明らかである。
【0101】
【表22】

【0102】
H.わかめ発酵エキスに関連する実施例
【実施例22】
【0103】
わかめめかぶ発酵エキスの製造
(1) 2リットルの三角フラスコに1.0リットルの水と、リン酸第一カリウム0.2g、リン酸第二ナトリウム1.15g、食塩8g、塩化カリウム0.2gを加えた。
(2) 1に乾燥わかめめかぶ20gを加えた。
(3) 2をオートクレーブで滅菌した。
(4) 種菌の調製。前もって同じ組成で調製した2%わかめめかぶ培地5mlに小麦粉より単離しておいたパントエア・アグロメランスのコロニーを一つ加え37℃で一晩(15時間)緩やかに撹拌し、発酵させて、わかめめかぶ発酵用の種菌を準備した。
(5) 3に4を全量加え37℃で緩やかに撹拌しながら、72時間発酵させた。
(6) 5のわかめめかぶ発酵溶液をオートクレーブで120℃20分間の加熱抽出をした。これを遠心分離(クボタ 8800、2000rpm、10分間)し、上澄みを回収し、わかめめかぶ発酵エキスとした。
(7) リムラスアッセイによるリムラス活性物質含有量の測定 リムラス活性物質量は生化学工業のトキシカラーシステムを用い、標準リムラス活性物質として、生化学工業Et−1を用いた。わかめめかぶ発酵エキス中のリムラス活性物質含有量は132μg/mlと測定された。
【実施例23】
【0104】
わかめめかぶ発酵エキスの免疫賦活作用
48穴プレートにヒトマクロファージとして用いられる急性骨髄性白血病細胞株のTHP−1(1×10個/250μl:10%ウシ胎児血清入りRPMI1640培地)を入れ、予め30分間前培養した。各サンプルの終濃度が1〜10000ng/mlになるように培地250μl(最終量500μl)を加えた。サンプルにポリミキシンB(12.5μg/ml)を含む群を設けた。4時間培養した後、培養上清と細胞を回収した。4時間培養した後、培養上清と細胞を回収した。上清のTNF活性は、L−929細胞障害試験により測定した。結果を表23に示す。わかめめかぶ発酵エキスはポリミキシンB存在下でもマクロファージからTNFを産生させたが、低分子量リポ多糖はポリミキシンB存在下ではマクロファージからTNFを産生できなかった。このことからわかめめかぶ発酵エキスは低分子量リポ多糖やリムラス陽性糖脂質とは異なる生物活性を持つ事が明らかである。
【0105】
【表23】

【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明により、安全な免疫賦活物質である植物発酵エキスを安価に製造することが可能となり、こうして得られた植物発酵エキスは、ヒトを含む哺乳動物(具体的には家畜、愛玩動物など)、鳥類(具体的には養鶏、愛玩鳥類など)、両生類、は虫類、魚類(具体的には、水産養殖魚、愛玩魚類など)、無脊椎動物に及ぶ医薬品、動物用医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、機能性食品、飼料及び浴用剤に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】小麦発酵エキス入り飼料によるコイヘルペス発症抑制効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用植物に由来する素材を専ら植物に共生する通性嫌気性グラム陰性菌によって発酵させて、同時に該通性嫌気性グラム陰性菌を培養することを特徴とする発酵及び培養方法。
【請求項2】
前記素材は、専ら食用に供されるものであることを特徴とする請求項1記載の発酵及び培養方法。
【請求項3】
炭素源として澱粉を発酵させることを特徴とする請求項1又は2記載の発酵及び培養方法。
【請求項4】
前記通性嫌気性グラム陰性菌が桿菌であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の発酵及び培養方法。
【請求項5】
前記通性嫌気性桿菌が腸内細菌科に属するものであることを特徴とする請求項4記載の発酵及び培養方法。
【請求項6】
前記通性嫌気性桿菌がパントエア属、セラチア属、又はエンテロバクター属に属するものであることを特徴とする請求項4記載の発酵及び培養方法。
【請求項7】
前記通性嫌気性桿菌がパントエア・アグロメランスであることを特徴とする請求項4記載の発酵及び培養方法。
【請求項8】
前記食用植物が穀物、海草、若しくは豆類、又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の発酵及び培養方法。
【請求項9】
前記穀物に由来する素材が小麦粉、米粉、小麦ふすま粉、米ぬか、又は酒かすであることを特徴とする請求項8記載の発酵及び培養方法。
【請求項10】
前記海草に由来する素材がわかめ粉、めかぶ粉、又は昆布粉であることを特徴とする請求項8記載の発酵及び培養方法。
【請求項11】
前記豆類に由来する素材がおからであることを特徴とする請求項8記載の発酵及び培養方法。
【請求項12】
請求項1乃至11いずれかに記載の発酵及び培養方法で得られることを特徴とする植物発酵エキス。
【請求項13】
請求項12記載の植物発酵エキスから得られることを特徴とする植物発酵エキス末。
【請求項14】
請求項12記載の植物発酵エキス又は請求項13記載の植物発酵エキス末が配合されていることを特徴とする植物発酵エキス配合物。
【請求項15】
前記植物発酵エキス配合物が医薬品、動物用医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、機能性食品、飼料、又は浴用剤であることを特徴とする請求項14記載の植物発酵エキス配合物。
【請求項16】
以下の理化学的性質を示すことを特徴とする請求項12記載の植物発酵エキス。
ポリミキシンB存在下でもマクロファージ活性化能を示す。
【請求項17】
免疫賦活活性を持つことを特徴とする請求項12又は16記載の植物発酵エキス。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−202562(P2007−202562A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50166(P2007−50166)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【分割の表示】特願2005−514195(P2005−514195)の分割
【原出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(390025210)
【出願人】(500315024)有限会社バイオメディカルリサーチグループ (12)
【Fターム(参考)】