説明

発酵物組成物、化粧品組成物及びそれらの製造方法

【課題】安全性が高く、コラーゲン合成作用等を有する発酵物含有組成物及び化粧品組成物並びにこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の発酵物組成物及び化粧品組成物は、米ぬかと豆類由来ペプチドとを枯草菌により発酵させて得られる発酵物と、ペプチド及びビタミンA類の少なくとも1種と、を含有する。また、本発明の製造方法は、米ぬかと豆類由来ペプチドとを枯草菌により発酵させて得られる発酵物とペプチド及びビタミンA類の少なくとも1種とを混合する混合工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵物組成物、化粧品組成物及びそれらの製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、安全性が高く、コラーゲン合成作用等に優れた発酵物組成物に関する。また、本発明は、該発酵物組成物を含む化粧品組成物に関する。更に、本発明は、上記発酵物組成物及び化粧品組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、米ぬか等を発酵させて得られる発酵物を含有する皮膚外用剤等の化粧品等が知られている。例えば、特許文献1には、発酵糠類を含有する化粧品組成物及びそれを用いた化粧品が開示されている。特許文献1において、この化粧品は、保湿性に優れ、皮膚に塗布した際の刺激が少なく、炎症が発生し難く快適であることが記載されている。また、特許文献2には、米ぬかと大豆ペプチドとを枯草菌により発酵させ、その後、精製処理して得られる皮膚外用剤原料の製造方法が開示されている。特許文献2において、この皮膚外用剤原料は安全性が高く、皮膚の活性を高めることができることが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−262829号公報
【特許文献2】特開平8−104647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2記載の発酵物を皮膚外用剤等の化粧品に配合することによる効能は多い。例えば、この発酵物を配合した皮膚外用剤等の化粧品は、しわ、しみ、たるみ等を抑えることができ、しもやけ、あかぎれ及び肌荒れ等を予防することができる。また、この発酵物を配合した皮膚外用剤等の化粧品では、創傷治癒及び火傷等の症状の改善等の効能が得られる。
【0005】
本発明は、安全性が高く、コラーゲン合成作用等に優れた発酵物組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該発酵物組成物を含む化粧品組成物を提供することを目的とする。更に、本発明は、上記発酵物組成物及び化粧品組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のとおりである。
〔1〕米ぬかと豆類由来ペプチドとを枯草菌により発酵させて得られる発酵物と、ペプチド及びビタミンA類の少なくとも1種と、を含有することを特徴とする発酵物組成物。
〔2〕上記ペプチドは、大豆タンパク質が加水分解されたペプチド及びシルクフィブロインの少なくとも1種である上記〔1〕記載の発酵物組成物。
〔3〕上記〔1〕記載の発酵物組成物を含有することを特徴とする化粧品組成物。
〔4〕米ぬかと豆類由来ペプチドとを枯草菌により発酵させて得られる発酵物とペプチド及びビタミンA類の少なくとも1種とを混合する混合工程を備えることを特徴とする発酵物組成物の製造方法。
〔5〕米ぬかと豆類由来ペプチドとを枯草菌により発酵させて得られる発酵物とペプチド及びビタミンA類の少なくとも1種とを混合する混合工程と、該混合工程において得られる発酵物組成物を製剤化して化粧品組成物を得る工程と、を備えることを特徴とする化粧品組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発酵物組成物は、天然物を原料としている。よって、本発明の発酵物組成物は、安全性が高く、且つ優れたコラーゲン合成作用及び細胞増殖作用等を有する。
更に、上記ペプチドが、大豆タンパク質が加水分解されたペプチド及びシルクフィブロインの少なくとも1種である場合は、より入手が容易であり、且つ十分なコラーゲン合成性等を有する発酵物組成物とすることができる。
本発明の化粧品組成物は、上記構成を有することにより、優れたコラーゲン合成作用及び細胞増殖作用を奏する。
本発明の発酵物組成物及び化粧品組成物の製造方法によれば、入手が容易な枯草菌を用いて発酵させることにより製造できる。よって、上記の優れた作用を有する本発明の発酵物組成物等を、小型の製造設備により安全に、且つ容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。
(1)発酵物組成物
本発明の発酵物組成物は、米ぬかと豆類由来ペプチドとを枯草菌により発酵させて得られる発酵物と、ペプチド及びビタミンA類の少なくとも1種と、を含有することを特徴とする。
【0009】
上記「米ぬか」としては、例えば、米ぬか、脱脂米ぬか、米胚芽、及び脱脂米胚芽が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記米ぬかは、市販の米ぬか等に限定されることなく、様々な種類の米ぬかを用いることができる。
【0010】
上記「豆類由来ペプチド」は、豆類に含まれるペプチド又は豆類に含まれるタンパク質に由来するペプチドであれば、その具体的な種類及び構造には特に限定はない。上記「豆類由来ペプチド」は、市販の豆類由来ペプチドに限定されることなく、様々な種類の豆類由来ペプチドを用いることができる。上記豆類由来ペプチドとしては、例えば、大豆ペプチド、小豆ペプチド、エンドウペプチド及びそらまめペプチドが挙げられる。上記豆類由来ペプチドとしては、大豆ペプチドが好ましい。上記豆類由来ペプチドは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
上記豆類由来ペプチドを得る方法には特に限定はない。例えば、上記豆類由来ペプチドは、豆類(例えば、大豆、小豆、エンドウ及びそらまめ等の1種又は2種以上)を溶媒(水、熱水、アルコール(エタノール等)の有機溶媒又は水−有機溶媒混合溶媒)で抽出することにより得ることができる。この過程において、必要に応じて分画及び精製等を行うことができる。更に、プロテアーゼ、酸又はアルカリで加水分解処理をすることにより、得られた豆類由来ペプチド又は豆類タンパク質を更に断片化することができる。更に、上記豆類由来ペプチドは、化学的にアミノ酸同士をペプチド結合させることにより、あるいは公知の遺伝子工学的手法により、人為的に合成されたペプチドでもよい。
【0012】
上記豆類由来ペプチドの形態には特に限定はない。上記豆類由来ペプチドは、上記抽出後、乾燥等により固形化した固形物(例えば、粉状物又は粒状物等)とすることができる。また、上記豆類由来ペプチドとして、上記抽出物自体を用いることができる。即ち、本発明では、上記豆類由来ペプチドとして、上記豆類由来ペプチドを含有する抽出物(豆類エキス、特に大豆エキス等)を用いることができる。例えば、本発明では、上記豆類由来ペプチドとして、豆類(例えば、大豆、小豆、エンドウ及びそらまめ等の1種又は2種以上)を溶媒(水、熱水、アルコール(エタノール等)の有機溶媒又は水−有機溶媒混合溶媒)で抽出することにより得られる抽出物を用いることができる。本発明では、特に大豆ペプチドを含有する抽出物(大豆エキス)等が好ましく用いられる。
【0013】
上記豆類由来ペプチドを含有する抽出物を得るための抽出方法、抽出条件については特に限定はない。例えば、抽出原料である豆類は未粉砕でも、粉砕したものでもよい。また、抽出物の品質を維持できる限り、不純物除去等の前処理をしてもよい。また、抽出溶媒としては、水又は熱水の他、メタノール及びエタノール等のアルコール、酢酸エチル等のエステル、n−ヘキサン等の有機溶媒、並びにこれらの有機溶媒と水又は熱水との混合溶媒等を用いることができる。上記抽出溶媒としては、水又は熱水、アルコール(メタノール及びエタノール等)、及び水又は熱水とアルコールとの混合溶媒が好ましい。上記熱水の温度は、通常、40〜100℃、好ましくは50〜80℃、更に好ましくは50〜70℃である。また、抽出の際の抽出溶媒のpHは通常3〜7、好ましくは4〜6、更に好ましくは4〜5である。pHを上記範囲内とすることにより、抽出原料に含まれている各種成分の安定性を保つことができるので好ましい。抽出温度は特に制限されないが、常温又は加熱抽出が好ましい。加熱抽出の場合、加熱温度としては通常40〜100℃、好ましくは50〜80℃、更に好ましくは50〜70℃である。加熱温度をかかる範囲とすることにより、抽出を効率的に行うことができるので好ましい。
【0014】
上記米ぬかと上記豆類由来ペプチドとの割合には特に限定はない。通常、上記豆類由来ペプチドを100質量部とした場合に、上記米ぬかの割合は1〜20質量部、好ましくは5〜20質量部、更に好ましくは8〜18質量部である。上記米ぬかが上記範囲であれば、十分なコラーゲン合成作用等を有する発酵物を得ることができる。
【0015】
上記「枯草菌」[バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)]は、好気性胞子形成細菌の代表的な種類である。上記枯草菌の種類は、安全性が保証されている限り特に限定されない。上記枯草菌としては、例えば、納豆菌[バチルス・ナットウ(Bacillus natto)]等を用いることができる。上記枯草菌としては、入手が容易であり、且つ安価である納豆菌が好ましい。尚、上記枯草菌としては、市販されている一般的な枯草菌を用いることができる。また、コラーゲン合成作用等を有する発酵物が得られる限り、上記枯草菌としては、自然的に、又はニトロソグアニジン等の化学物質、X線及び紫外線等により人為的な変異手段により生成し、菌学的性質が変異した変異株も用いることができる。
【0016】
上記「発酵物」は、上記米ぬかと上記豆類由来ペプチドとを枯草菌により発酵させて得られる。上記発酵物は通常、上記米ぬか及び上記豆類由来ペプチドを含む培地に枯草菌を摂取し、適切な条件で発酵培養することにより得られる。上記「発酵物」を得るための発酵培養条件には特に限定はない。発酵培養は通常、通気攪拌を行うことにより行われる。また、上記培地についても、上記枯草菌が増殖できる限り特に制限はない。上記培地は通常は液体培地であるが、固形培地でもかまわない。また、上記培地のpH(特に発酵時)は、通常5.5〜8.5、好ましくは6.0〜8.0、更に好ましくは6.5〜7.5である。このpHを上記の範囲内とすると、抽出原料に含まれている各種成分の安定性を保つことができるので好ましい。更に、培養温度についても、発酵が行われる限り特に制限はない。該培養温度は、通常15〜50℃、好ましくは20〜45℃、更に好ましくは30〜45℃、より好ましくは35〜43℃である。また、糖等の各種の栄養素並びにpH調製のための酸及びアルカリ等を培地に添加してもよい。更に、上記発酵は、混合発酵でも連続発酵でもよい。
【0017】
上記発酵物の形態には特に限定はない。上記発酵物は、発酵培養により得られた発酵液又は該発酵液をろ過したままの液でもよい。また、上記発酵物は、上記発酵液に対し、必要に応じて滅菌処理若しくはpH調整をしたり、又はイオン交換樹脂、活性炭カラム若しくは透析膜等を利用し、脱臭・脱色等の後処理をした発酵液でもよい。更に、上記発酵物は、該発酵液を濃縮した濃縮液又はペースト状物でもよい。その他にも、上記発酵物は、該発酵液を凍結乾燥等の公知の方法により溶媒を除去した固形物及び粉末化した粉末物でもよい。更に、上記発酵物は、上記発酵液又は上記固形物及び粉末物を、水若しくはエタノール、プロピレングリコール及び1,3−ブチレングリコール等の有機溶媒、又はこれらの混合溶媒に添加した溶液又は分散液としてもよい。
【0018】
上記「ペプチド」は、アミノ酸がペプチド結合により結合したポリペプチドである。尚、上記アミノ酸は、通常はL−アミノ酸であるが、D−アミノ酸でもよく、あるいは両者の混合物でもよい。即ち、上記ペプチドを構成するアミノ酸は、L−アミノ酸、D−アミノ酸及び両者の混合のいずれでもよい。
【0019】
上記ペプチドの種類、由来、及び構造には特に限定はない。例えば、上記ペプチドは、植物に含まれる植物由来のペプチドでもよく、動物に含まれる動物由来のペプチドでもよい。また、上記ペプチドの構造も、直鎖構造のみならず、ジスルフィド結合を含んでいてもよい。上記ペプチドとして具体的には、例えば、大豆タンパク質(大豆に含まれるタンパク質)を加水分解することにより得られるペプチド及びシルクフィブロイン等の絹ペプチド(絹に含まれるペプチド及び絹に含まれるタンパク質を加水分解して得られるペプチド)等が挙げられる。これらのペプチドを用いると、優れたコラーゲン合成作用及び細胞増殖作用等を有する発酵物組成物を得ることができる。
【0020】
上記ペプチドを得る方法には特に限定はない。上記ペプチドは通常、各種のタンパク質をプロテアーゼ、酸、又はアルカリ等によって加水分解することにより得ることができる。勿論、具体的な加水分解の方法及び条件には特に限定はない。ここで、上記タンパク質の種類には特に限定はない。上記タンパク質として、例えば、大豆タンパク質及び絹に含まれる絹タンパク質が挙げられる。また、上記ペプチドとして、化学的にアミノ酸同士をペプチド結合させることにより、あるいは公知の遺伝子工学的手法により、人為的に合成されたペプチドを用いることもできる。
【0021】
上記ペプチドのアミノ酸数及び分子量も特に限定はない。上記ペプチドのアミノ酸数の下限は、例えば2、3又は4とすることができる。また、上記ペプチドのアミノ酸数の上限は、例えば、100、80、60又は40とすることができる。上記ペプチドの分子量の下限は、例えば、50、100又は200とすることができる。また、上記ペプチドの分子量の上限としては、例えば、300000、200000、100000、50000又は30000とすることができる。特に細胞増殖作用を目的とする場合は、上記ペプチドとして、高分子量のペプチド、例えば、分子量が40000以上のペプチドを用いることが好ましい。尚、上記ペプチドの分子量は公知の各種の方法により測定することができる。上記ペプチドの分子量は、例えば、SDS−PAGEによる電気泳動法及びHPLCとカラムとによるゲルろ過クロマトグラフィー等によって測定することができる。上記ペプチドのアミノ酸数及び分子量は、タンパク質又はペプチドをプロテアーゼ、酸、又はアルカリ等によって加水分解することにより適宜調節することができる。
【0022】
上記ペプチドとして好ましくは、(1)分子量が200〜200000のペプチド、(2)アミノ酸数が4〜40であり、且つ分子量が220〜8000であるペプチド、及び(3)アミノ酸数が2〜3であり、且つ分子量が100以下、100〜250及び250〜500の分子量の異なるペプチドの混合物である。また、これら(1)〜(3)のペプチドとして、シルクフィブロインがより好ましい。これらのペプチドと上記発酵物とを含有させることにより、発酵物のみを含有するときに比べて、より優れたコラーゲン合成作用及び細胞増殖作用等を有する発酵物組成物を得ることができる。
【0023】
また、上記ペプチドとしては、大豆タンパク質が加水分解されたものであり、アミノ酸数が2〜6、且つ分子量が100〜1200であるペプチドも好ましい。この大豆タンパク質を用いたペプチドと発酵物とを含有させることにより、発酵物のみを含有するときに比べて、より優れたコラーゲン合成作用及び細胞増殖作用等を有する発酵物組成物とすることができる。
【0024】
上記ペプチドは1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。例えば、上記ペプチドとしては、上記の各種のペプチドのうちの1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記ペプチドとして、アミノ酸数及び/又は分子量が異なる2種以上のペプチドを含んでいてもよい。更に、上記ペプチドとして、大豆タンパク質が加水分解されてなるペプチド及びシルクフィブロイン等の絹ペプチドのように、種類が異なるペプチドの2種以上を併用することもできる。
【0025】
上記「ビタミンA類」は、イソプレノイド型ポリエンアルコールを基本骨格として有する化合物及び該化合物の誘導体である。上記ビタミンA類として具体的には、例えば、ビタミンA1(レチノール)、ビタミンA2、ビタミンA3及び3,4−ジヒドロレチノール並びにこれらが酸化されたアルデヒド(レチナール等)及びカルボン酸(レチノイン酸)等が挙げられる。また、上記「ビタミンA類」には、薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される誘導体をも含む。上記誘導体としては、例えば、上記レチノール等のカルボン酸エステルが挙げられる。上記誘導体としてより具体的には、例えば、酢酸レチノール及びパルミチン酸レチノール等のC1〜C30エステル等が挙げられる。尚、本発明では、上記ビタミン類は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明において、上記ビタミンA類の含有形態には特に限定はない。上記ビタミンA類自体を本発明の発酵物組成物に含有させてもよく、その他の物質と併用して含有させてもよい。例えば、上記ビタミンA類は、シクロデキストリン等のホスト化合物に包接させた包接化合物として、本発明の発酵物組成物に含有させることができる。また、上記ビタミンA類は、上記ビタミンA類を含む組成物又は混合物として、本発明の発酵物組成物に含有させることができる。例えば、上記ビタミンA類は、肝油等の上記ビタミンA類を含有する組成物として、本発明の発酵物組成物に含有させることができる。更に、上記ビタミンA類は、上記ビタミンA類が溶解又は分散した溶液又は分散液として、本発明の発酵物組成物に含有させることができる。例えば、上記ビタミンA類を動物油又は植物油に溶解させ、当該溶液を本発明の発酵物組成物に含有させることができる。
【0027】
本発明の発酵物組成物において、上記発酵物と上記ペプチド及び上記ビタミンA類との割合には特に限定はない。上記発酵物と上記ペプチド及び上記ビタミンA類との合計を100質量%とした場合に、上記発酵物の割合は、通常0.1〜99.9質量%、好ましくは10〜80質量%、更に好ましくは40〜60質量%である。本発明では、上記発酵物と上記ペプチド及び上記ビタミンA類の1種又は2種以上とを含有することにより、コラーゲン合成作用等が向上する。本発明では、上記発酵物と上記ペプチド及び上記ビタミンA類の1種又は2種以上の各々の含有量に大差がない場合、即ち、上記発酵物の質量割合が40〜60質量%であるときは、コラーゲン合成作用等がより向上するため好ましい。
【0028】
本発明の発酵物組成物は、各種の用途に用いることができる。この用途には特に限定はない。本発明の発酵物組成物は、例えば、皮膚外用剤等の化粧品、化粧品素材、飲食物、飲食物用添加剤及び入浴剤等に用いることができる。
【0029】
本発明の発酵物組成物は、化粧品及び飲食物等に配合することができる。化粧品に配合する場合、本発明の発酵物組成物の配合量には特に限定はない。該配合量は、化粧品の種類等により適量を配合することができる。本発明の発酵物組成物の配合量は、化粧品を100質量%とした場合に、0.001〜100質量%、特に0.001〜50質量%とすることができる。本発明の発酵物組成物の含有量が上記範囲内であれば、優れたコラーゲン合成作用等を有する化粧品とすることができる。
【0030】
本発明の発酵物組成物を配合することができる化粧品の種類も特に限定はない。該化粧品としては、例えば、フリーズドライ、パック、パックシート、ピーリング、パウダー、化粧水、おしろい、固形おしろい、口紅、固形頬紅、ファンデーションクリーム、乳液、ローション、ボディローション、クレンジングローション、洗顔クリーム、スキンケアクリーム、ヘアーリンス、ヘアーリキッド、アイシャドウ及び眉ずみ等が挙げられる。また、これらの化粧品には、その種類により、必要に応じて、他の成分、例えば、植物エキス、ビタミン、ビタミン様物質、ミネラル、低級アルコール類、多価アルコール類、油脂類、界面活性剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、防腐剤及び香料等を添加することもできる。
【0031】
本発明の発酵物組成物を配合する化粧品としては、特に皮膚外用剤が挙げられる。本発明の発酵物組成物は優れたコラーゲン合成作用等を有する。よって、本発明の発酵物組成物は、皮膚に塗布して用いる化粧品に特に有用である。本発明の発酵物組成物を有効成分として含有する皮膚外用剤は、本発明の発酵物組成物と、皮膚外用剤に用いられる他の配合剤とを用いて調製することができる。上記他の配合剤としては、例えば液体油(スクワラン及びホホバ油等)、固体油(ミツロウ及びセチルアルコール等)、各種の活性剤、並びに保湿剤(グリセリン及び1,3ーブチレングリコール等)が挙げられる。この皮膚外用剤の剤形には特に限定はない。この皮膚外用剤は、例えば、ローション、クリーム及び乳液等、目的に応じて種々の剤形とすることができる。この皮膚外用剤において、本発明の発酵物組成物の配合量には特に限定はない。本発明の発酵物組成物の配合量は、皮膚外用剤を100質量%とした場合に、0.001〜100質量%、特に0.001〜50質量%とすることができる。本発明の発酵物組成物の含有量が上記範囲内であれば、優れたコラーゲン合成作用等を有する皮膚外用剤とすることができる。
【0032】
本発明の発酵物組成物を含む飲食物は、例えば、本発明の発酵物組成物を他の食品原料とともに混合し、又は予め混合された食品原料混合物に本発明の発酵物組成物を配合し、次いで、一般的な方法により加工して製造することができる。本発明の発酵物組成物を含む飲食物は、例えば、油脂、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン又はこれらの混合物に本発明の発酵物組成物を溶解させ、これを飲料又は固形食品に配合することにより製造することができる。また、本発明の発酵物組成物を含む飲食物は、本発明の発酵物組成物と、アラビアガム及びデキストリン等のバインダーとを混合して粉末又は顆粒等とし、これを飲料又は固形食品に配合することにより製造することができる。本発明の発酵物組成物を含む飲食物は、健康食品及び機能性食品等として提供することができる。
【0033】
尚、本発明の発酵物組成物を配合した配合物を、化粧品素材、入浴剤、及び飲食物用添加剤等として用いることもできる。
【0034】
(2)化粧品組成物、細胞賦活用皮膚外用剤組成物及び化粧品原料
本発明の化粧品組成物、細胞賦活用皮膚外用剤組成物及び化粧品原料は、本発明の発酵物組成物を含有することを特徴とする。本発明の化粧品組成物、細胞賦活用皮膚外用剤組成物及び化粧品原料に含まれる上記発酵物組成物については、既に説明した内容が適用される。
【0035】
本発明の化粧品組成物、細胞賦活用皮膚外用剤組成物及び化粧品原料における上記発酵物組成物の割合には特に限定はない。上記発酵物組成物の割合は、例えば、本発明の化粧品組成物、細胞賦活用皮膚外用剤組成物及び化粧品原料全体を100質量%とした場合に、0.001〜100質量%、特に0.001〜50質量%とすることができる。上記発酵物組成物の割合が上記範囲内であれば、優れたコラーゲン合成作用等を有する化粧品組成物、細胞賦活用皮膚外用剤組成物及び化粧品原料とすることができる。
【0036】
本発明の化粧品組成物の種類には特に限定はない。上記化粧品組成物としては、例えば、フリーズドライ、パック、パックシート、ピーリング、おしろい、固形おしろい、口紅、固形頬紅、ファンデーションクリーム、乳液、ローション、ボディローション、クレンジングローション、洗顔クリーム、スキンケアクリーム、ヘアーリンス、ヘアーリキッド、アイシャドウ及び眉ずみが挙げられる。また、本発明の化粧品組成物には、その種類により、必要に応じて他の成分(例えば、植物エキス、ビタミン、ビタミン様物質、ミネラル、低級アルコール類、多価アルコール類、油脂類、界面活性剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、防腐剤及び香料)を添加することもできる。
【0037】
本発明の化粧品組成物としてより具体的には、特に皮膚外用剤が挙げられる。上記発酵物組成物は優れたコラーゲン合成作用等を有する。よって、上記発酵物組成物は、皮膚に塗布して用いる化粧品に特に有用である。上記皮膚外用剤は、上記発酵物組成物と、皮膚外用剤に用いられる他の配合剤とを用いて調製することができる。この他の配合剤としては、例えば、液体油(スクワラン及びホホバ油等)、固体油(ミツロウ及びセチルアルコール等)、各種の活性剤、並びに保湿剤(グリセリン及び1,3−ブチレングリコール等)が挙げられる。この皮膚外用剤の剤形には特に限定はない。この皮膚外用剤は、ローション、クリーム及び乳液等、目的に応じて種々の剤形とすることができる。この皮膚外用剤において、上記発酵物組成物の配合量には特に限定はない。上記発酵物組成物の配合量は、皮膚外用剤を100質量%とした場合に、0.001〜100質量%、特に0.001〜50質量%とすることができる。発酵物組成物の含有量が上記範囲内であれば、優れたコラーゲン合成作用等を有する皮膚外用剤とすることができる。
【0038】
本発明の細胞賦活用皮膚外用剤は、上記発酵物組成物を含む。上記発酵物組成物は優れたコラーゲン合成作用等を有する。よって、上記発酵物組成物は、皮膚に塗布して用いる化粧品に配合した場合に特に有用である。本発明の細胞賦活用皮膚外用剤は、上記皮膚外用剤の説明がそのまま適用できる。
【0039】
本発明の化粧品原料は、例えば、フリーズドライ、パック、パックシート、ピーリング、パウダー、化粧水、おしろい、固形おしろい、口紅、固形頬紅、ファンデーションクリーム、乳液、ローション、ボディローション、クレンジングローション、洗顔クリーム、スキンケアクリーム、ヘアーリンス、ヘアーリキッド、アイシャドウ及び眉ずみに配合して用いることができる。
【0040】
(3)発酵物組成物等の製造方法
本発明の発酵物組成物、化粧品組成物、細胞賦活用皮膚外用剤組成物及び化粧品原料の製造方法は、米ぬかと豆類由来ペプチドとを枯草菌により発酵させて得られる発酵物とペプチド及びビタミンA類の少なくとも1種とを混合する混合工程と、を備えることを特徴とする。
【0041】
上記「米ぬか」、上記「豆類由来ペプチド」、上記「枯草菌」、上記「ペプチド」及び上記「ビタミンA類」については、本発明の発酵物組成物で説明した内容が適用される。
【0042】
上記「発酵物」は、通常、米ぬかと豆類由来ペプチドとを含有する培地に枯草菌を接種して発酵させる発酵工程により得られる。上記「発酵工程」における上記「培地」は、米ぬか及び豆由来ペプチドを含有し、枯草菌が増殖して発酵培養をすることができる培地であればよい。上記培地の種類及び組成には特に限定はない。上記培地は、通常、液体培地であるが、固形培地であってもよい。また、上記培地のpH(特に発酵時)は、通常5.5〜8.5、好ましくは6.0〜8.0、更に好ましくは6.5〜7.5である。また、上記培地には、pH及び栄養条件等を好ましい範囲に調整するため、グルコース等の糖類、プロテアーゼ等の酵素、精製水等の水等を添加することができる。
【0043】
上記発酵の際の培養温度は、発酵が行われる限り特に制限はない。該培養温度は、通常15〜50℃、好ましくは20〜45℃、更に好ましくは30〜45℃、より好ましくは35〜43℃である。発酵培養は通常、通気攪拌を行うことにより行われる。
【0044】
上記発酵工程により得られる上記発酵物の形態も特に限定されない。上記発酵物の形態は、本発明の発酵物組成物で説明した内容が適用される。
【0045】
上記「混合工程」において、上記発酵物と上記ペプチド及びビタミンA類の少なくとも1種とを混合する方法には特に限定はない。発酵物とペプチドとは各々の形態、及びそれぞれの質量割合等によってホモミキサー等の混合器などの適宜の装置を用いて混合することができる。また、混合時の温度も特に限定されず、発酵物及びペプチドのそれぞれの種類等によって設定することが好ましい。発酵物とペプチドとは、5〜20℃の範囲で必要に応じて冷却しながら混合することができ、35〜85℃の範囲で必要に応じて加熱しながら混合することもできる。
【0046】
本発明の製造方法は、更に他の工程を備えていてもよい。該他の工程としては、例えば、上記発酵物を精製処理する工程等が挙げられる。発酵工程により得られた発酵物はそのままペプチドと混合してもよく、又は該発酵物を精製処理し、その後、ペプチドと混合してもよい。この精製処理の方法は特に限定されない。例えば、発酵液を圧搾し、ろ過することにより、上記発酵物を精製することができる。また、発酵液を圧搾し、ろ過し、次いで、活性炭等による脱臭、脱色処理、及び/又は沈殿物の除去処理をし、その後、再度ろ過することにより、上記発酵物を精製することもできる。
【0047】
上記発酵物組成物を製剤化して化粧品組成物及び細胞賦活用皮膚外用剤組成物を得る工程の内容は、化粧品組成物及び細胞賦活用皮膚外用剤組成物を得られる限り特に限定はない。通常は、上記発酵物組成物と化粧品組成物及び細胞賦活用皮膚外用剤組成物を構成する他の原料とを混合し、錠剤又は液剤等に製剤化することにより、化粧品組成物及び細胞賦活用皮膚外用剤組成物を得ることができる。勿論、上記発酵物組成物をそのまま、錠剤又は液剤等に製剤化することにより、化粧品組成物及び細胞賦活用皮膚外用剤組成物とすることもできる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
[1]発酵物組成物の製造
米ぬか3kg、大豆ペプチド0.4kg、グルコース0.5kg、アルカリ性プロテアーゼ0.01kg及び精製水50kgを混合し、培地を調製した。その後、培地のpHを6.0〜8.0に調整し、次いで、納豆菌を接種し、37℃で38時間培養して発酵を行った。その後、発酵液を圧搾及びろ過し、次いで、活性炭により脱色、脱臭した。その後、再度発酵液をろ過して精製することにより、発酵物を製造した。
【0049】
[2]シルクフィブロインを含む発酵物組成物の評価
上記[1]で製造した発酵物、ビタミンC(和光純薬工業社製)、及びシルクフィブロイン(オードレマン社製、商品名「フィブロインシート」)を、それぞれ固形分濃度で2%(質量/体積)となるように、緩衝液(PBS)に溶解した。次いで、該溶液を0.22μmのフィルタによりろ過した。その後、各成分が表1及び表2に記載の濃度となるように該溶液を希釈して混合することにより、実験例2〜15の試料溶液を調製した。また、実験例1は、試料溶液として、上記緩衝液(PBS)を使用した。
【0050】
2つの96穴ウエルプレート(表中では「P1」及び「P2」という。)のそれぞれに、1ウエル当たり5000個のヒト皮膚繊維芽細胞を撒布した。次いで、5%FBS添加MEM培地で3日間培養した。5%FBS添加MEM培地に対して実験例1〜15の試料を添加して試料添加培地を調製した。該試料添加培地における実験例1〜15の試料溶液の濃度は1%(質量/体積、但し、上記PBSの質量を除く。)である(従って、培地における発酵物組成物中の各成分の最終濃度は試料溶液中の濃度の1/100である。)。そして、ウエル中の上記5%FBS添加MEM培地を上記試料添加培地に交換し、更に3日間培養した。
【0051】
次いで、「コラーゲンステインキット」(コラーゲン技術研究会製)を用いて、キットに添付されたマニュアルに従ってコラーゲン合成量(μg)を測定した。プレート1(P1)及びプレート2(P2)におけるコラーゲン合成量の平均値を表1及び表2に示す。また、実験例1のコラーゲン合成量を1として、実験例2〜8のコラーゲン合成量の相対値を求めた。同様に、実験例9のコラーゲン合成量を1として、実験例10〜15のコラーゲン合成量の相対値を求めた。この結果を表1及び表2に併記する。尚、表1及び表2において、「VC」はビタミンCを意味し、「SF」はシルクフィブロインを意味する。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
表1及び表2より、シルクフィブロインと発酵物とを併用している実験例5〜8及び13〜15では、発酵物のみを用いている実験例3及び11並びにシルクフィブロインのみを用いている実験例4及び12に比べてコラーゲン合成作用に優れていることが分かる。
【0055】
[3]他のシルク原料由来のペプチドを含む発酵物組成物の評価
上記[1]で製造した発酵物、ビタミンC(和光純薬工業社製)、シルクフィブロイン、及び下記シルクペプチド(a)及び(b)を、それぞれ固形分濃度で2%(質量/体積)となるように、緩衝液(PBS)に溶解した。次いで、該溶液を0.22μmのフィルタによりろ過した。その後、各成分が表3〜表5に記載の濃度となるように該溶液を希釈して混合することにより、実験例17〜19、24〜28、及び33〜35の試料溶液を調製した。また、実験例17〜19、24〜28、及び33〜35の試料溶液を体積で等量混合することにより、実験例20〜22、29〜31、及び36の試料溶液を調製した。尚、実験例16、23及び32では、試料溶液として、上記緩衝液(PBS)を使用した。
【0056】
ビタミンC及びシルクフィブロインは、上記[2]で用いたものと同じである。また、シルクペプチド(a)及び(b)としては下記のものを用いた。尚、シルクペプチド(a)及び(b)はいずれも液体であり、固形分濃度としての終濃度が1%(質量/体積)となるように緩衝液により希釈して用いた。
シルクペプチド(a);コスモ食品社製、商品名「シルクペプチドM−500」
シルクペプチド(b);コスモ食品社製、商品名「シルクペプチドM−500#60」
【0057】
上記[2]と同じ方法により、実験例16〜36のコラーゲン合成量(μg)を測定した。プレート1(P1)及びプレート2(P2)におけるコラーゲン合成量の平均値を表3〜表5に示す。また、実験例16、23及び32の各コラーゲン合成量を1として、他の実験例のコラーゲン合成量の相対値を求めた。この結果を表3〜表5に併記する。尚、表3〜表5において、「VC」はビタミンCを意味し、「SF」はシルクフィブロインを意味し、「SP」はシルクペプチドを意味する。
【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
【表5】

【0061】
表3〜5の結果によれば、シルクフィブロインと発酵物とを併用している実験例22、29及び36では、発酵物のみを用いている実験例18、25及び34、並びにシルクフィブロインのみを用いている実験例19、26及び35に比べて前記と同様により優れたコラーゲン合成作用を有している。更に、シルクペプチドと発酵物とを併用している実験例30及び31も、シルクフィブロインの場合と同様に、より優れたコラーゲン合成作用を有していることが分かる。尚、実験例17、24及び33より、ビタミンCもコラーゲン合成作用を有していることが分かる。しかし、発酵物とビタミンCとを併用した実験例20及びビタミンCとシルクフィブロインとを併用した実験例21では、併用による相乗効果はみられないか、又は極く僅かであることが分かる。従って、発酵物とペプチドとの併用による相乗効果が大きいことが分かる。
【0062】
[4]大豆ペプチドを含む発酵物組成物の評価
上記[1]で製造した発酵物、ビタミンC(和光純薬工業社製)、シルクフィブロイン、及び下記大豆ペプチド(a)〜(c)を、それぞれ固形分濃度で2%(質量/体積)となるように、緩衝液(PBS)に溶解した。次いで、該溶液を0.22μmのフィルタによりろ過した。その後、各成分が表6及び表7に記載の濃度となるように該溶液を希釈して混合することにより、実験例38〜43及び49〜54の試料溶液を調製した。また、実験例38〜43及び49〜54の試料溶液を体積で等量混合することにより、実験例44〜47及び55〜56の試料溶液を調製した。尚、実験例37及び48では、試料溶液として、上記緩衝液(PBS)を使用した。
【0063】
ビタミンC及びシルクフィブロインは、上記[2]で用いたものと同じである。また、大豆ペプチド(a)〜(c)としては下記のものを用いた。尚、大豆ペプチド(a)、(b)及び(c)はいずれも液体であり、固形分濃度としての終濃度が1%(質量/体積)となるように緩衝液により希釈して用いた。
大豆ペプチド(a);不二製油社製、商品名「ハイニュートSMP」
大豆ペプチド(b);不二製油社製、商品名「ハイニュートR」
大豆ペプチド(c);不二製油社製、商品名「ハイニュートDC5」
【0064】
上記[2]と同じ方法により、実験例37〜47のコラーゲン合成量(μg)を測定した。プレート1(P1)及びプレート2(P2)におけるコラーゲン合成量の平均値を表6に示す。また、実験例37のコラーゲン合成量を1として、他の実験例のコラーゲン合成量の相対値を求めた。この結果を表6に併記する。尚、表6において、「VC」はビタミンCを意味し、「SF」はシルクフィブロインを意味し、「SBP(a)〜(c)」は大豆ペプチド(a)〜(c)を意味する。
【0065】
【表6】

【0066】
2つの96穴ウエルプレートのそれぞれに、1ウエル当たり2000個のヒト皮膚繊維芽細胞を撒布した。次いで、5%FBS添加MEM培地で3日間培養した。その後、無血清MEM培地に交換し、更に1日間培養した。0.5%血清添加MEM培地に対して実験例48〜56の試料を添加して試料添加培地を調製した。該試料添加培地における上記実験例48〜56の試料溶液の濃度は1%(質量/体積、但し、上記PBSの質量を除く。)である(従って、培地における発酵物組成物中の各成分の最終濃度は試料溶液中の濃度の1/100である。)。そして、ウエル中の上記無血清MEM培地を上記試料添加培地に交換し、更に4日間培養した。
【0067】
その後、同仁堂「セルカウンティングキット8」に基づき、WST−8テトラゾリウム塩を発色基質とし、生細胞内の脱水素酵素により還元されて生成した水溶性ホルマザンを450nmの波長で測定することにより、吸光度を測定した(生細胞数は当該吸光度の値に比例する。)。また、実験例48の生細胞数を1として、他の実験例の生細胞量の相対値を算出し、細胞増殖作用を評価した。結果を表7に併記する。尚、表7において、「VC」はビタミンCを意味し、「SF」はシルクフィブロインを意味し、「SBP(a)〜(c)」は大豆ペプチド(a)〜(c)を意味する。また、表7における細胞増殖率の項の平均値は、上記吸光度の値の平均値である。
【0068】
【表7】

【0069】
表6より、シルクフィブロインと発酵物とを併用している実験例44は、発酵物のみを用いている実験例39及びシルクフィブロインのみを用いている実験例40に比べて、より優れたコラーゲン合成作用を有することが分かる。更に、発酵物と大豆ペプチドとを併用している実験例45〜47も、シルクフィブロインの場合と同様に、より優れたコラーゲン合成作用を有することが分かる。
【0070】
表7より、発酵物と大豆ペプチド(c)とを併用している実験例56は、発酵物のみを用いている実験例50に比べて細胞増殖作用がより向上していることが分かる。更に、発酵物とシルクフィブロインとを併用した実験例55も、同様に細胞増殖作用が向上していることが分かる。
【0071】
[5]ビタミンA類を含む発酵物組成物の評価
上記[1]で製造した発酵物、ビタミンC(和光純薬工業社製)、及びシクロデキストリン包接レチノール(商品名「CAVAMAX W8/Retinol Complex」 シクロケム社製)を、それぞれ固形分濃度で2%(質量/体積)となるように、緩衝液(PBS)に溶解した。次いで、該溶液を0.22μmのフィルタによりろ過した。その後、各成分が表8に記載の濃度となるように該溶液を希釈して混合することにより、実験例58〜66の試料溶液を調製した。尚、実験例57では、試料溶液として、上記緩衝液(PBS)を使用した。
【0072】
上記[2]及び[4]記載の方法と同じ方法により、実験例57〜66のコラーゲン合成量(μg)及び細胞増殖率を測定した。その平均値を表8に示す。また、実験例57のコラーゲン合成量及び生細胞量を1として、他の実験例のコラーゲン合成量及び生細胞量の相対値を求めた。この結果を表8に併記する。尚、表8において、「VC」はビタミンCを意味し、「CDR」はシクロデキストリン包接レチノールを意味する。また、表8における細胞増殖率の項の平均値は、吸光度の値の平均値である。
【0073】
【表8】

【0074】
表8より、レチノールと発酵物とを併用している実験例64〜66は、発酵物のみを用いている実験例59及びレチノールのみを用いている実験例60〜63に比べて、優れたコラーゲン合成作用及び細胞増殖作用を有することが分かる。
【0075】
[6]ペプチド及びビタミンA類を含む発酵物組成物の評価
上記[1]で製造した発酵物、上記シルクフィブロイン、上記大豆ペプチド(a)、及び上記シクロデキストリン包接レチノールを、それぞれ固形分濃度で2%(質量/体積)となるように、緩衝液(PBS)に溶解した。次いで、該溶液を0.22μmのフィルタによりろ過した。その後、各成分が表9及び表10に記載の濃度となるように該溶液を希釈して混合することにより、実験例68、69、71及び72の試料溶液を調製した。尚、実験例67及び70では、試料溶液として、上記緩衝液(PBS)を使用した。
【0076】
上記[2]及び[4]と同じ方法により、実験例67〜72のコラーゲン合成量(μg)及び細胞増殖率を測定した。その平均値を表9及び表10に示す。また、実験例67及び70のコラーゲン合成量及び生細胞量を1として、他の実験例のコラーゲン合成量及び生細胞量の相対値を求めた。この結果を表9及び表10に併記する。尚、表9及び表10において、「SF」はシルクフィブロインを意味し、「SBP」は大豆ペプチドを意味し、「CDR」はシクロデキストリン包接レチノールを意味する。また、表9及び表10における細胞増殖率の項の平均値は、吸光度の値の平均値である。
【0077】
【表9】

【0078】
【表10】

【0079】
表10より、レチノール及びペプチドと発酵物とを併用している実験例69及び72は、優れたコラーゲン合成作用及び細胞増殖作用を有することが分かる。
【0080】
尚、本発明は、上記具体的実施例に限定されない。本発明は、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の発酵物組成物は、安全性に優れ、コラーゲン合成作用等を有する。本発明の発酵物組成物は、皮膚外用剤等の各種の化粧品並びに健康食品及び機能性食品等の各種の飲食物等に配合して用いることができる。即ち、本発明は、化粧品及び飲食物等の分野において利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米ぬかと豆類由来ペプチドとを枯草菌により発酵させて得られる発酵物と、ペプチド及びビタミンA類の少なくとも1種と、を含有することを特徴とする発酵物組成物。
【請求項2】
上記ペプチドは、大豆タンパク質が加水分解されたペプチド及びシルクフィブロインの少なくとも1種である請求項1記載の発酵物組成物。
【請求項3】
請求項1記載の発酵物組成物を含有することを特徴とする化粧品組成物。
【請求項4】
米ぬかと豆類由来ペプチドとを枯草菌により発酵させて得られる発酵物とペプチド及びビタミンA類の少なくとも1種とを混合する混合工程を備えることを特徴とする発酵物組成物の製造方法。
【請求項5】
米ぬかと豆類由来ペプチドとを枯草菌により発酵させて得られる発酵物とペプチド及びビタミンA類の少なくとも1種とを混合する混合工程と、
該混合工程において得られる発酵物組成物を製剤化して化粧品組成物を得る工程と、を備えることを特徴とする化粧品組成物の製造方法。

【公開番号】特開2011−173921(P2011−173921A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111820(P2011−111820)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【分割の表示】特願2008−514485(P2008−514485)の分割
【原出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(591155884)株式会社東洋発酵 (21)
【Fターム(参考)】