説明

発酵茶抽出物を含有する血液循環改善用及び手足冷え性改善用組成物

本発明は、茶(tea)に醤類由来の菌株を接種して得られた発酵茶、及び前記発酵茶を製造する方法を開示する。前記発酵茶は、味と香りに優れ、優れた血液循環改善効果及び手足冷え性改善効果を示し、健康食品又は医薬品分野において多様に活用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵茶抽出物を有効成分として含有する血液循環改善用及び手足冷え性改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
緑茶を例とする様々な種類の茶が昔から嗜好品として広く知られている。そのうち緑茶は、葉茶の形態で飲用されたりもするが、より深い香りを楽しむために発酵茶として飲用されたりもする。たとえば、発酵緑茶は、発酵の形態及び程度に応じて、緑茶、烏龍茶、紅茶、プーアル茶等のような多様な名称で呼ばれる。発酵茶は、葉茶と比較すると、香りに違いが現れるだけでなく、発酵過程において多様な程度に変化した有効成分を有し得る。
【0003】
一方、現代人は、脂肪の摂取機会及び摂取量が多くなったのに反して運動量は不足し、多種多様なストレスを受けて生きている。こうした生活パターンの変化は、多様な種類の成人病を誘発し、特に、血液循環障害といった循環器系疾患の発病頻度を高める。血液循環障害は、手足のしびれ、慢性疲労、めまい及び無気力症等の症状を誘発して正常な生活を営むことを困難にし、ひどい場合には、高脂血症、動脈硬化、狭心症といった多様な疾病に発展し得る。一般的に、軽度の血液循環障害は看過されやすい。しかし、年齢を重ねるにつれて、血液循環障害は深刻化する傾向を示す。特に、更年期の女性の場合には、手足のしびれ等により苦しむケースが増加している。
【0004】
本発明の発明者らは発酵過程の違いによる茶の効能についての研究を実施し、特に、茶を利用して血液循環を効果的に促進し、ひいては手足冷え性を改善することのできる方案を講じようとした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一側面は、味と香りに優れた発酵茶を提供しようとするものである。
本発明の他の一側面は、血液循環改善用組成物を提供しようとするものである。
本発明の他の一側面は、手足冷え性改善用組成物を提供しようとするものである。
【0006】
本発明の他の一側面は、発酵茶の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、茶(tea)に醤類由来の菌株を接種して得られた発酵茶を提供する。
本発明の他の一側面は、茶(tea)含有発酵液を製造する工程;製造された発酵液に醤類由来の菌株を接種する工程;及び、菌株が接種された発酵液を発酵させる工程を含む発酵茶の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面に係る発酵茶は、味と香りに優れ、優れた血液循環改善効果を示し、健康食品又は医薬品分野において多様に活用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】発酵茶の摂取後の時間経過に伴う手の温度変化を示したグラフである。
【図2】発酵茶の摂取後の時間経過に伴う手の温度変化を示した赤外線撮影写真である。
【図3】発酵茶の摂取後の時間経過に伴う足の温度変化を示したグラフである。
【図4】発酵茶の摂取後の時間経過に伴う足の温度変化を示した赤外線撮影写真である。
【図5】発酵茶の摂取後の嗜好感に関する設問調査の結果を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一側面に係る組成物は、茶(tea)成分に醤類由来の菌株を接種して一定時間発酵させて得られた発酵茶を特徴とする。
前記茶(tea)の種類は、特に制限されず、緑茶、白茶、烏龍茶、紅茶、プーアル茶、黒茶、柿葉茶の他、多様な種類のハーブ茶等を含む。本発明の一側面において、前記茶は、緑茶、白茶、烏龍茶、紅茶、プーアル茶、黒茶及び柿葉茶により構成される群から選択される一つ以上の茶であってよい。他の一側面において、前記茶は緑茶であってよい。
【0011】
また、前記醤類由来の菌株は、麹を利用して製造される醤油、味噌若しくは唐辛子味噌に由来する菌株、又は豆を利用して製造される納豆由来の菌株であってよい。前記醤類由来の菌株は、たとえば、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megateriums)、バチルス・ナットウ(Bacillus natto)、バチルス・シトレウス(Bacillus citreus)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・メセンテリカス(Bacillus mesentericus)及びバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)により構成される群から選択される一つ又は二つ以上の菌株であってよい。前記醤類由来の菌株は、好ましくは、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)であってよく、これは枯草菌とも呼ばれる。バチルス・サブティリスは、アミラーゼ、プロテアーゼ、アミノ酸、抗微生物製剤(antibacterial compound)又は界面活性剤等の生産に利用されている。特に、バチルス・サブティリスは、ヒト、動物及び植物等において毒性を示さないため、食品微生物として広く利用されている。
【0012】
本発明に係る「発酵茶」は、発酵した状態の茶(tea)を意味するものであり、茶の原料又は発酵の程度の異なる多様な茶をすべて包括する概念である。たとえば、前記「発酵茶」は、発酵の程度に応じて、部分発酵茶、強発酵茶及び後発酵茶等をすべて含む。
【0013】
本発明は、また、前記発酵茶を製造する方法を提供する。本発明の一側面に係る発酵茶の製造方法は、茶(tea)成分に醤類由来の菌株を接種した後、一定時間発酵させて発酵茶を製造することができる。本発明に係る一側面において、前記発酵茶は、茶(tea)成分を含有した発酵液を製造する工程;製造された発酵液に醤類由来の菌株を接種する工程;及び、菌株が接種された発酵液を発酵させる工程を含んでいてよい。
【0014】
前記茶(tea)の種類は、特に制限されず、緑茶、白茶、烏龍茶、紅茶、プーアル茶、黒茶、柿葉茶等や、多様な種類のハーブ茶等を含む。本発明に係る一側面において、前記茶は、緑茶、白茶、烏龍茶、紅茶、プーアル茶、黒茶及び柿葉茶により構成される群から選択される一つ以上の茶であってよい。他の一側面において、前記茶は緑茶であってよい。
【0015】
前記醤類由来の菌株は、麹を使用して製造される醤油、味噌若しくは唐辛子味噌に由来する菌株、又は豆を利用して製造される納豆由来の菌株とすることができる。前記醤類由来の菌株は、たとえば、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megateriums)、バチルス・ナットウ(Bacillus natto)、バチルス・シトレウス(Bacillus citreus)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・メセンテリカス(Bacillus mesentericus)及びバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)により構成される群から選択される一つ又は二つ以上の菌株であってよい。
【0016】
また、菌株が接種された発酵液を発酵させる工程は、14時間〜28日間を所要してよい。前記発酵温度は、20〜70℃、具体的には40〜60℃であってよい。発酵温度が40℃を超えると、バチルス・サブティリス菌を除く他の菌は生育が抑制されるか死滅するという効果がある。しかし、発酵温度が過度に高くなると、バチルス・サブティリス菌の生育を阻害し得る。
【0017】
本発明の一側面に係る発酵茶の製造方法を、より具体的に説明すると、次のとおりである。
まず、培養されたバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)菌株を発酵液に接種する。前記発酵液は、微生物に対する水分とエネルギーの供給源となるものであり、たとえば、発酵液の総重量を基準にして、2.0〜3.0重量%の砂糖及び果糖を混合し、大豆粉等を添加して製造することができる。その後、接種された菌株の発酵代謝の円滑化のために、菌株が接種された発酵液を培養器で培養する過程に供してもよい。次に、緑茶を発酵液に混合して発酵させる。混合される発酵液の比率は、緑茶茶葉の乾燥重量を基準にして、10〜80重量%が適切である。発酵は、20〜70℃の恒温発酵槽において、24時間から28日間実施することができる。発酵が完了した後、熱風乾燥を通じて乾燥する過程をさらに施しもよい。
【0018】
本発明の一側面は、前記発酵茶の抽出物を提供する。本発明の一側面において、発酵が完了した発酵茶は、多様な方法を通じて抽出することができる。発酵茶の抽出物は、たとえば、熱水抽出物又はC〜Cの低級アルコール抽出物であってよいが、特に制限されるものではなく、具体的には、熱水抽出物であってよい。前記発酵茶の抽出物は、多様な形態での製剤化が可能である。
【0019】
本発明の一側面は、前記発酵茶の抽出物を含む血液循環改善用組成物を提供する。たとえば、前記血液循環改善用組成物は、茶(tea)成分にバチルス・サブティリス菌株を接種して得られた発酵茶を多様な方法で抽出して得られた抽出物を有効成分として含むことができる。前記血液循環改善用組成物は、醤類由来の菌株を用いて発酵された発酵茶の成分を含有することにより、血清及び肝臓のコレステロールと中性脂肪を減少させ、血管の収縮を抑制する。したがって、前記組成物は、血液循環を改善し、高脂血症又は手足冷え性等の症状を好転させる効果がある。
【0020】
本発明の他の一側面は、前記発酵茶の抽出物を含む手足冷え性改善用組成物を提供する。たとえば、前記手足冷え性改善用組成物は、緑茶にバチルス・サブティリス菌株を接種して得られた発酵茶の抽出物を有効成分として含んでいてよい。前記組成物は、味と香りに優れ、血液の循環を改善して手足冷え性等の症状を改善する効果がある。
【0021】
また、本発明の他の一側面は、前記発酵茶の抽出物を含有する食品添加剤、健康食品及び医薬品等を提供する。たとえば、前記発酵茶の抽出物は、丸剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤又はドリンク剤等に剤形化して、健康食品、医薬品等に使用することができる。また、他の一側面において、別途の抽出過程に供していない発酵茶は、液剤、粉末、顆粒、錠剤又はティーバッグ等の形態に加工し、又は葉茶本来の形態で製剤化することができる。たとえば、緑茶葉の発酵茶はティーバッグの形態に加工することができる。前記発酵茶又は発酵茶の抽出物を含有する組成物は、血液や肝臓の脂質を減少させ、血管の収縮を抑制して血管の弛緩を誘導することにより、血液循環を改善する効果がある。たとえば、前記発酵茶又は発酵茶の抽出物を含有する組成物は、手足冷え性改善用組成物であってよい。
【0022】
本発明の他の一側面は、前記発酵茶の抽出物を含む多様な形態の食品添加剤又は機能性食品を提供する。例えば、前記発酵茶の抽出物は、発酵乳、チーズ、ヨーグルト、ジュース、プロバイオティクス食品及び健康食品等の食品のための添加剤に含まれてもよいが、これらに限定されず、多様な食品添加剤に含まれていてよい。
【0023】
本発明の一側面において、前記発酵茶の抽出物は、本発明が目的とする主たる効果を損なわない範囲内において、主たる効果に相乗効果を与え得る他の成分等を含有していてよい。たとえば、物理的性質の改善のために、香料、色素、殺菌剤、酸化防止剤、防腐剤、保湿剤、増粘剤、無機塩類、乳化剤及び合成高分子物質等の添加剤をさらに含んでいてよい。その他にも、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖及び海藻エキス等の補助成分をさらに含むこともできる。これらの成分は、剤形又は使用目的に応じて、当業者が困難なく適宜に選定して配合することができ、その添加量は、本発明の目的及び効果を損なわない範囲内で選択することができる。たとえば、これらの成分の添加量は、組成物全体の重量を基準にして、0.01〜5重量%、より具体的には、0.01〜3重量%の範囲であってよい。
【0024】
本発明の一側面に係る発酵茶の抽出物は、溶液、乳化物、粘性混合物、タブレット、粉末等の多様な形態で剤形化することができ、これは、飲用、注射、スプレー又はスクイーズ等の多様な方法で投与することができる。
【0025】
本発明の一側面は、また、前記発酵茶の抽出物を含む医薬組成物を提供する。前記医薬組成物は、血液循環改善効果を示す。
本発明の一側面に係る発酵茶の抽出物を医薬品に適用する場合、前記抽出物を有効成分とし、無機又は有機の通常の担体を加えて、固体、半固体又は液状の形態で経口投与剤或いは非経口投与剤に製剤化することができる。
【0026】
前記経口投与剤としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、軟質及び硬質カプセル剤、散剤、細粒剤、粉剤、乳濁剤、シロップ剤、ペレット剤等が挙げられる。また、前記非経口投与剤としては、注射剤、点滴剤、軟膏、ローション、スプレー、懸濁剤、乳剤、坐剤等が挙げられる。本発明の有効成分は、常法に従って容易に製剤化することができ、界面活性剤、賦形剤、着色料、香辛料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、その他通常の補助剤を適当に使用することができる。
【0027】
本発明に係る前記医薬組成物は、経口投与、非経口投与、直腸投与、局所投与、経皮投与、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与等ができる。
また、前記有効成分の投与量は、治療を受ける対象の年齢、性別及び体重、治療する特定の疾患又は病理状態、疾患又は病理状態の深刻度、投与経路、並びに処方者の判断によって変わるであろう。これらの要因に基づいて投与量を決定することは当業者の範疇にある。一般的な投与量は、0.001mg/kg/日〜2000mg/kg/日、より具体的には、0.5mg/kg/日〜1500mg/kg/日である。
【0028】
以下、下記の実施例を通じて本発明をより詳細に説明することとする。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであるに過ぎず、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【0029】
[実施例1]発酵茶の製造
振動培養器を利用して30℃で72時間培養したバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株を回収し、まず、遠心分離器で菌株と活性培地とに分離する。1.0%の生理食塩水を利用して菌株を3回洗浄した後、微生物の適切な代謝のために発酵液を供給する。前記発酵液は、発酵液の総重量に対して2.5重量%の砂糖を混合して製造する。次に、27psi(pounds per square inch)の圧力、120℃の温度で、15分間、高温加圧滅菌する。滅菌が完了した後、常温において25℃まで冷却する。前記洗浄工程において損傷を受けた菌株の発酵代謝の円滑化のために、菌株を発酵液中で安定化させる過程に供される。具体的には、食塩水で3回洗浄した菌株を、大豆粉末を加える前の発酵液300mlに混合し、培養器で24時間培養して安定化させる。
【0030】
滅菌した反応タンク内において、小包装に分けた緑茶成分を、バチルス・サブティリスを発酵液に接種した発酵菌液と混合し、発酵菌株の数が10〜10CFU/mlとなるように調節する。緑茶茶葉の乾燥重量を基準にして、発酵液の割合は30〜60重量%となるように混合する。また、急激な温度上昇によって菌株が損傷を受けないように、発酵菌液を混合した後にも、茶葉を引き続き撹拌して茶の内部温度が急速に上がらないようにする。20分後、反応が完了し、温度が下がった緑茶発酵菌液混合物は、入口を塞いで外気の流入を防ぎ、発酵工程に供される。発酵工程は、60℃の恒温発酵槽で7日間実施する。発酵工程が完了した後、80〜120℃で5時間熱風乾燥することにより、発酵茶を製造する。
【0031】
前記方法により製造された発酵茶は、病原性微生物が検出されず、最終製品内の総菌数(Total microbial account)が10CFU/g以下の規格範囲の製品を得ることができる。
【0032】
[実施例2]飲用条件
前記実施例1において製造した発酵茶を1gずつに量り分けて、ティーバッグを製造する。紙コップにティーバッグを入れて熱湯を注いで5分間放置する。ティーバッグを5回浸した後、被検者に対し右手で持って飲用させるようにした。1杯の量は一般的な紙コップの80%を満たすことができる量に設定する。
【0033】
[実験例1]ヒトの手の温度低下の改善
普段から手足が冷たいと感じる韓国人女性を対象にして、本発明に係る発酵茶の試料を茶の形態で飲用した後、赤外線カメラで手と足を撮影した。撮影結果を基に、試料の摂取前と摂取1時間後の手の皮膚温度の変化を比較した。赤外線撮影(digital infrared thermographic imaging, DITI)は、人体や物体から放射される赤外線を測定してイメージ化するもので、身体表面の体温分布を知ることができる非侵襲的な撮影方法である。実験終了後に設問用紙を被験者に配布し、試料の品質と効能に関する設問調査を実施した。
【0034】
一つの試料当たり30名の被験者を対象に評価した。評価前に各被験者は、手を洗浄し、空気の移動や直射日光のない恒温恒湿の条件(22℃、湿度45%)が保たれた空間において1時間以上安静を取るようにした。被験者の左手の甲を測定部位とし、評価中は手の温度変化を誘発するような姿勢は避けるようにした。
【0035】
赤外線カメラを利用して60cmの距離から手を撮影し、皮膚の放射率は0.98に設定した。撮影時は温度に影響を与え得る外部物質を遮断した状態とし、試料摂取前と、試料摂取直後、15分後、30分後、45分後、60分後の時点で撮影を実施した。温かいコップを手に持つことで表われ得る温度の変化を防止するために、コップは右手で持つようにし、左手を撮影した。飲用条件は、実施例2と同一の条件に設定した。
【0036】
測定データの分析は、FLIR Reporter(スウェーデンのFlir社の商標)プログラムを利用して、一定面積の皮膚温度を分析した。すなわち、各被験者の手の同じ場所を選んで、指定された面積の平均温度値を分析した。試料摂取前の測定温度を基準値0とし、温度の増減を表示するために試料摂取前と試料摂取後の皮膚温度の差を求め、対照群(水)との間の統計的有意性を検証した。実験群は、実施例1に係る発酵茶を使用し、比較群は、非発酵茶である緑茶を使用した。
【0037】
時間経過に伴う温度増減の結果を図1に示し、赤外線撮影写真を図2に示した。図2において、手の色が濃いほど、その温度が高いことを意味する。
図1を参照すると、対照群である水摂取群は、試料摂取直後に最も大きい温度低下を示し、15分経過時点以降から持続的に温度が低下することが分かる。緑茶摂取群は、一時的に温度が上昇したが、15分経過時点以降に最も急激な温度低下を示した。これに比べ、発酵茶摂取群は、時間の経過に伴って最も緩やかな温度低下を示した。
【0038】
また、図2において、発酵茶摂取時には、比較的温度が低い指の先端まで濃い色で表示されることを確認することができた。これは、発酵茶摂取群の手の温度低下が最もよく阻止されていることを意味する。したがって、発酵茶は、手の皮膚温度が低下するのを阻止することにより、手の冷えといった手足冷え性の症状に優れた効果があることが分かる。
【0039】
[実験例2]ヒトの足の温度低下の改善
普段から手足が冷たいと感じる韓国人女性を対象にして、本発明に係る発酵茶の試料を茶の形態で飲用した後、赤外線カメラで手と足を撮影した。撮影結果を基に、試料の摂取前と摂取1時間後の手の皮膚温度の変化を比較した。測定方法は、前記実験例1と同一の条件と方法で行った。
【0040】
一つの試料当たり30名の被験者を対象に評価した。評価前に各被験者は、足を洗浄し、空気の移動や直射日光のない恒温恒湿の条件(22℃、湿度45%)が保たれた空間において1時間以上安静を取るようにした。被験者の両足の甲を測定部位とし、評価中は足の温度変化を誘発するような姿勢は避けるようにした。
【0041】
赤外線カメラを利用して100cmの距離から足を撮影し、皮膚の放射率は0.98に設定した。撮影時は温度に影響を与え得る外部物質を遮断した状態とし、試料摂取前と、試料摂取直後、15分後、30分後、45分後、60分後の時点で撮影を実施した。飲用条件は実施例2と同一の条件に設定した。
【0042】
前記実験例1と同様に、各被験者の両足の同じ場所を選んで、指定された面積の平均温度値を分析した。試料摂取前の測定温度を基準値0とし、温度の増減を表示するために試料摂取前と試料摂取後の皮膚温度の差を求め、対照群(水)との間の統計的有意性を検証した。実験群は、実施例1に係る発酵茶を使用し、比較群は、非発酵茶である緑茶を使用した。
【0043】
時間経過に伴う温度増減の結果を図3に示し、赤外線撮影写真を図4に示した。図4において、足先の色が濃いほど、その温度が低いことを意味する。
図3を参照すると、水摂取群は、持続的かつ最も急激に足の温度が低下しており、緑茶摂取群もまた、類似な様相で足の温度が低下することを確認した。これに比べ、発酵茶摂取群は、試料摂取後に最も小さい温度低下を示し、特に、摂取後30分が経過した後の温度維持効果が最も高いことが観察された。また、図4において、発酵茶摂取群の足先の色が最も薄いことを確認することができ、これは、発酵茶摂取群の足の温度低下の程度が最も低いことを意味する。
【0044】
したがって、本発明の一側面に係る発酵茶は、足の皮膚温度が低下するのを阻止することにより、足の冷えといった手足冷え性の症状に優れた効果があることが分かる。
[実験例3]発酵茶の摂取による嗜好感調査
前記実施例1により製造された緑茶の発酵茶を飲用した後、嗜好感についての調査を行った。飲用条件は、実施例2と同一であった。設問項目には、足及び身体が温まるかどうか、摂取後の腹痛又は排便感の変化の有無、香り、及び全般的な満足度等が含まれ、製品が市販された場合に購買する意思の有無についても質問した。各項目について肯定的な回答をまとめて、その結果を図5に示した。
【0045】
図5に示された結果を参照すると、本発明に係る発酵茶を摂取した場合には、緑茶を摂取した場合と比較して、足が温まったという回答が高いことが示され、発酵茶を摂取した後における腹痛又は排便感の変化は最も低いことが確認された。特に、香りに優れるという回答が高いことが示され、全般的な満足度もまた悪くないことが明らかになった。
【0046】
本発明による発酵茶抽出物含有組成物は、以下のとおり、様々な剤形に応用可能であるが、これらに限定されるものではない。
[製造例1]軟質カプセル剤
発酵茶抽出物100mg、大豆抽出物50mg、大豆油180mg、紅蔘抽出物50mg、パーム油2mg、パーム硬化油8mg、黄蝋4mg及びレシチン6mgを混合し、常法に従い、1カプセル当たり400mgずつ充填して軟質カプセルを製造した。
【0047】
[製造例2]錠剤
発酵茶抽出物100mg、大豆抽出物50mg、ブドウ糖100mg、紅蔘抽出物50mg、澱粉96mg及びマグネシウムステアレート4mgを混合し、30%エタノールを40mg添加して顆粒を形成した後、60℃で乾燥し、打錠機を利用して錠剤に打錠した。
【0048】
[製造例3]顆粒剤
発酵茶抽出物100mg、大豆抽出物50mg、ブドウ糖100mg、紅蔘抽出物50mg及び澱粉600mgを混合し、30%エタノールを100mg添加して顆粒を形成した後、60℃で乾燥して顆粒を形成した後、包みに充填した。内容物の最終重量は1gとした。
[製造例4]ドリンク剤
発酵茶抽出物100mg、大豆抽出物50mg、ブドウ糖10g、紅蔘抽出物50mg、クエン酸2g及び精製水187.8gを混合してドリンク剤を製造した後、壜に充填した。内容物の最終容量は200mlとした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶(tea)に、醤類由来の菌株を接種して得られた発酵茶。
【請求項2】
前記茶(tea)は、緑茶、白茶、烏龍茶、紅茶、プーアル茶、黒茶及び柿葉茶により構成される群から選択される一つ以上である、請求項1に記載の発酵茶。
【請求項3】
前記醤類由来の菌株は、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megateriums)、バチルス・ナットウ(Bacillus natto)、バチルス・シトレウス(Bacillus citreus)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・メセンテリカス(Bacillus mesentericus)及びバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)により構成される群から選択される一つ以上の菌株である、請求項1に記載の発酵茶。
【請求項4】
前記茶(tea)は、緑茶であり、前記醤類由来の菌株は、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)である、請求項1に記載の発酵茶。
【請求項5】
茶(tea)含有発酵液を製造する工程;
製造された発酵液に、醤類由来の菌株を接種する工程;及び
菌株が接種された発酵液を発酵させる工程を含む、発酵茶の製造方法。
【請求項6】
前記茶(tea)は、緑茶、白茶、烏龍茶、紅茶、プーアル茶、黒茶及び柿葉茶により構成される群から選択される一つ以上である、請求項5に記載の発酵茶の製造方法。
【請求項7】
前記醤類由来の菌株は、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megateriums)、バチルス・ナットウ(Bacillus natto)、バチルス・シトレウス(Bacillus citreus)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・メセンテリカス(Bacillus mesentericus)及びバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)により構成される群から選択される一以上の菌株である、請求項5に記載の発酵茶の製造方法。
【請求項8】
菌株が接種された発酵液を発酵させる工程は、20〜70℃の温度で、24時間〜28日間発酵させる工程である、請求項5に記載の発酵茶の製造方法。
【請求項9】
菌株が接種された発酵液を発酵させる工程は、40〜60℃の温度で発酵させる工程である、請求項8に記載の発酵茶の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の発酵茶の抽出物を含む、血液循環改善用組成物。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の発酵茶の抽出物を含む、手足冷え性改善用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−507912(P2013−507912A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534120(P2012−534120)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007092
【国際公開番号】WO2011/046392
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(506213681)株式会社アモーレパシフィック (24)
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】181,2−ga,Hangang−ro,Yongsan−gu,Seoul,Republic of Korea
【Fターム(参考)】